戦没者の父母等に対する特別給付金支給法
法令番号: 法律第57号
公布年月日: 昭和42年7月14日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

日華事変以後に公務上の負傷・疾病により死亡した軍人軍属等の遺族のうち、戦没者の死亡時に他に子も孫もなく、その後も子孫が出生しなかった父母・祖父母に対し、特別給付金を支給する制度を創設するものである。最愛の子や孫を国に捧げ、子孫が絶えたことによる寂寥感や孤独感と戦いながら生きてきた特別な事情を考慮し、その精神的痛苦に対する国としての慰謝の意を表すため、該当する遺族(約1万件)に対し、10万円の特別給付金を5年償還の無利子記名国債として交付することとした。

参照した発言:
第55回国会 衆議院 社会労働委員会 第6号

審議経過

第55回国会

参議院
(昭和42年4月17日)
衆議院
(昭和42年4月27日)
(昭和42年5月31日)
(昭和42年6月1日)
(昭和42年6月7日)
(昭和42年6月8日)
(昭和42年6月8日)
参議院
(昭和42年6月20日)
(昭和42年7月4日)
(昭和42年7月11日)
(昭和42年7月12日)
(昭和42年7月21日)
戦没者の父母等に対する特別給付金支給法をここに公布する。
御名御璽
昭和四十二年七月十四日
内閣総理大臣 佐藤栄作
法律第五十七号
戦没者の父母等に対する特別給付金支給法
(この法律の趣旨)
第一条 この法律は、戦没者の父母等に対する特別給付金の支給に関し必要な事項を規定するものとする。
(定義)
第二条 この法律において「戦没者の父母等」とは、昭和十二年七月七日以後に死亡した者(同日前の負傷又は疾病により死亡した者を除く。)の父母又は祖父母であつたことにより、昭和四十二年四月一日において次の各号に掲げる給付を受ける権利を有する者であつて、当該死亡した者の死亡の当時その死亡した者以外には子も孫もいなかつたものをいう。ただし、その後昭和四十二年三月三十一日までの間に子(養子、その者を継父母とする継子及びその者を嫡母とする庶子を除く。)又は孫(当該死亡した者の死亡後にその者の養子又はその者を継父母とする継子若しくはその者を嫡母とする庶子となつた者の子である孫を除く。)を有するに至つた者を除く。
一 死亡した者が、恩給法の一部を改正する法律(昭和二十一年法律第三十一号)による改正前の恩給法(大正十二年法律第四十八号)第十九条に規定する軍人、準軍人その他もとの陸軍又は海軍部内の公務員又は公務員に準ずべき者(戦時又は事変に際し臨時特設の部局又は陸海軍の部隊に配属せしめたる文官補闕の件(明治三十八年勅令第四十三号)に規定する文官を含む。)であつたことにより支給される恩給法第七十五条第一項第二号に規定する扶助料
二 恩給法の一部を改正する法律(昭和二十八年法律第百五十五号。以下「法律第百五十五号」という。)附則第二十九条の二の規定の適用により支給される恩給法第七十五条第一項第二号に規定する扶助料、法律第百五十五号附則第三十五条の三に規定する扶助料、恩給法の一部を改正する法律(昭和二十九年法律第二百号)附則第四項に規定する扶助料又は旧軍人等の遺族に対する恩給等の特例に関する法律(昭和三十一年法律第百七十七号)第三条第二項に規定する扶助料
三 戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和二十七年法律第百二十七号。以下「遺族援護法」という。)第二十三条第一項第一号に掲げる遺族に支給される同法による遺族年金又は戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律(昭和二十八年法律第百八十一号)附則第二十項若しくは戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律(昭和三十年法律第百四十四号)附則第十一項の規定により支給される遺族年金
四 遺族援護法第二十三条第二項第一号に掲げる遺族に支給される同法による遺族給与金
五 旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法(昭和二十五年法律第二百五十六号)第三条の規定により承継した義務に基づき、又は同法第七条の三の規定により国家公務員共済組合連合会が支給する年金たる給付のうち、公務による死亡を支給事由とするもの
六 遺族援護法第二条第一項第二号に規定する軍属であつた者で同法第三条第一項第二号に規定する在職期間内における負傷又は疾病により死亡したものの遺族に対し、国家公務員共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号)第三条の規定に基づく郵政省共済組合又は公共企業体職員等共済組合法(昭和三十一年法律第百三十四号)第三条第一項に規定する国鉄共済組合若しくは日本電信電話公社共済組合が支給する年金たる給付のうち、公務による死亡を支給事由とするもの
2 前項ただし書に規定する「継父母」、「継子」、「嫡母」及び「庶子」は、それぞれ民法の一部を改正する法律(昭和二十二年法律第二百二十二号)による改正前の民法(明治二十九年法律第八十九号)に規定する継父母、継子、嫡母又は庶子をいうものとする。
3 昭和四十二年四月一日において次の各号のいずれかに該当する者は、第一項の規定の適用については、同日において同項各号に掲げる給付を受ける権利を有する者とみなす。
一 第一項各号に規定する法律(同項第五号に掲げる給付については、当該給付に係る法令)の規定による先順位者又は同項各号に掲げる給付を受ける権利を有する者がいるためこれらの給付を受ける権利を有しない父母及び祖父母
二 遺族援護法第二十五条第一項第三号又は第五号に規定する条件に該当していないため第一項第三号又は第四号に掲げる給付を受ける権利を有しない父母及び祖父母
(特別給付金の支給)
第三条 戦没者の父母等には、特別給付金を支給する。
2 特別給付金を受けるべき戦没者の父母等の順位は、父母、祖父母の順序による。この場合においては、父母及び祖父母について、それぞれ当該死亡した者の死亡の当時その者によつて生計を維持し、又はその者と生計をともにしていた者を先にし、同順位の父母については、養父母を先にし実父母を後にし、同順位の祖父母については、養父母の父母を先にし実父母の父母を後にし、父母の養父母を先にし実父母を後にする。
3 前項の規定により特別給付金を受けるべき順位にある戦没者の父母等が、昭和四十二年四月一日において生死不明であり、かつ、同日以後引き続き二年以上(その者が同日までに二年以上生死不明であるときは、一年以上)生死不明である場合において、同順位者がないときは、次順位者の申請により、当該次順位者(当該次順位者と同順位の他の戦没者の父母等があるときは、そのすべての同順位者)を特別給付金を受けるべき順位の戦没者の父母等とみなすことができる。
4 前項に規定する次順位者が、昭和四十二年四月一日において生死不明であり、かつ、同日以後引き続き二年以上(その者が同日までに二年以上生死不明であるときは、一年以上)生死不明である場合も、同項と同様とする。
(裁定)
第四条 特別給付金を受ける権利の裁定は、これを受けようとする者の請求に基づいて、厚生大臣が行なう。
(特別給付金の額及び記名国債の交付)
第五条 特別給付金の額は、十万円とし、五年以内に償還すべき記名国債をもつて交付する。
2 前項の規定により交付するため、政府は、必要な金額を限度として国債を発行することができる。
3 前項の規定により発行する国債は、無利子とする。
4 第二項の規定により発行する国債については、政令で定める場合を除くほか、譲渡、担保権の設定その他の処分をすることができない。
5 前四項に定めるもののほか、第二項の規定により発行する国債に関し必要な事項は、大蔵省令で定める。
(特別給付金を受ける権利を有する者が数人ある場合の請求)
第六条 同一の支給事由により特別給付金を受ける権利を有する者が数人ある場合においては、これらの者は、全員のために、そのうち一人を選定して、当該特別給付金の請求を行なわなければならない。
(特別給付金を受ける権利の受継)
第七条 特別給付金を受ける権利を有する者が死亡した場合において、死亡した者がその死亡前に特別給付金の請求をしていなかつたときは、死亡した者の相続人は、自己の名で、死亡した者の特別給付金を請求することができる。
2 前項の場合において、同順位の相続人が数人あるときは、その一人のした特別給付金の請求は、全員のためにその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした特別給付金の裁定は、全員に対してしたものとみなす。
3 第五条第一項に規定する国債の記名者が死亡した場合において、同順位の相続人が数人あるときは、その一人のした当該死亡した者の死亡前に支払うべきであつた同項に規定する国債の償還金の請求又は同項に規定する国債の記名変更の請求は、全員のためにその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした同項に規定する国債の償還金の支払又は同項に規定する国債の記名変更は、全員に対してしたものとみなす。
(時効)
第八条 特別給付金を受ける権利は、三年間行なわないときは、時効によつて消滅する。
(時効の中断)
第九条 特別給付金に関する処分についての行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)による不服申立ては、時効の中断については、裁判上の請求とみなす。
(譲渡又は担保の禁止)
第十条 特別給付金を受ける権利は、譲渡し、又は担保に供することができない。
(差押えの禁止)
第十一条 特別給付金を受ける権利及び第五条第一項に規定する国債は、差し押えることができない。
(非課税)
第十二条 租税その他の公課は、特別給付金を標準として、課することができない。
2 特別給付金に関する書類及び第五条第一項に規定する国債の譲渡又は当該国債を担保とする金銭の貸借に関する書類には、印紙税を課さない。
(国債の償還金の支払)
第十三条 第五条第一項に規定する国債の償還金の支払に関する事務は、郵政大臣が取り扱うことができる。
2 郵政大臣は、前項の規定により取り扱う事務を処理する場合において、特に必要があるときは、同項の規定にかかわらず、その事務の一部を政令で定める者に委託して取り扱わせることができる。
3 前項の場合においては、郵政大臣は、同項の政令で定める者に対し、その支払に必要な資金を交付することができる。
4 第二項の規定による支払事務の委託事項及び前項の規定による資金交付の手続は、郵政大臣が大蔵大臣と協議して定める。
5 前三項に定めるもののほか、第一項の規定により郵政大臣が取り扱う事務について必要な事項は、郵政省令で定める。
(国債の償還金の返還の免除)
第十四条 死亡したものと認定されていた者が生存していることが判明した場合において、その者の父母又は祖父母に第五条第一項に規定する国債の償還金が支払われているときは、当該生存の事実が判明した日までにすでに支払われていた当該国債の償還金は、国庫に返還させないことができる。
2 前項に規定する場合において、第五条第一項に規定する国債の償還金の支払を受けていた者は、生存の事実を遅滞なく厚生大臣に届け出なければ、前項の規定の適用を受けることができない。
(権限の委任)
第十五条 この法律により厚生大臣に属する権限は、政令で定めるところにより、都道府県知事その他政令で定める者にその一部を委任することができる。
(省令への委任)
第十六条 この法律に特別の規定がある場合を除くほか、この法律の実施のための手続その他その執行について必要な細則は、厚生省令で定める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行し、昭和四十二年四月一日から適用する。
(国債の発行の日)
2 第五条第二項に規定する国債の発行の日は、昭和四十二年五月十六日とする。
(厚生省設置法の一部改正)
3 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。
第五条第六十三号の五の次に次の一号を加える。
六十三の六 戦没者の父母等に対する特別給付金支給法(昭和四十二年法律第五十七号)の定めるところにより、特別給付金を受ける権利を裁定すること。
第十四条の三第四号の五の次に次の一号を加える。
四の六 戦没者の父母等に対する特別給付金支給法を施行すること。
法務大臣 田中伊三次
大蔵大臣 水田三喜男
厚生大臣 坊秀男
郵政大臣 小林武治
自治大臣 藤枝泉介
内閣総理大臣 佐藤栄作