郵便爲替法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十三年六月二十六日
内閣総理大臣 芦田均
法律第五十九号
郵便爲替法
第一章 総則
第一條(この法律の目的) この法律は、郵便爲替を簡易で確実な送金の手段としてあまねく公平に利用させることによつて、國民の円滑な経済活動に資することを目的とする。
第二條(郵便爲替の國営及び逓信大臣の職責) 郵便爲替は、國の行う事業であつて、逓信大臣が、これを管理する。
逓信大臣は、この法律の目的を達成するため、左の職責を有する。
一 郵便爲替に関する條約及び法律に從い、省令を発すること。
二 法律に触れない範囲において、郵便爲替の取扱をする郵便局を指定し、郵便局における郵便爲替事務の窓口取扱時間を定めること。
三 法律に触れない範囲において、郵便爲替の総括計算の事務を取り扱う官署を設置し、又は廃止すること。
四 郵便爲替の業務に從事する者をその職務につき指揮監督すること。
五 法律に触れない範囲において、郵便爲替の業務に從事する者の能率の向上を図るため必要な厚生、保健その他の施設をし、且つ、郵便爲替の業務に從事する者の訓練を行うこと。
六 郵便爲替事業を行うため、財政及び会計に関する法令の定めるところに從い、必要な契約をすること。
七 前各号に掲げるものを除いて、郵便爲替に関し逓信大臣の職責として法令の定める事項を掌理すること。
第三條(逓信大臣の職権の委任) 逓信大臣は、この法律に定める職権で細目の事項に関するものを、條件を定めて、逓信局長又は郵便局長に委任することができる。
第四條(郵便爲替の業務に從事する官吏) 郵便爲替の業務に從事する官吏の身分、給與及び服務に関する事項は、別に法律でこれを定める。
第五條(印紙税の免除) 郵便爲替に関する書類には、印紙税を課さない。
第六條(郵便爲替に関する條約) 郵便爲替に関し條約に別段の定のある場合には、その規定による。
第七條(郵便爲替の種類) 郵便爲替は、通常爲替、電信爲替及び小爲替とする。
第八條(通常爲替) 通常爲替においては、差出人が現金を振出請求書とともに郵便局に差し出したときに、その郵便局において、差し出された現金の額を表示する通常爲替証書を発行してこれを差出人に交付するとともに、振出請求書を差出人の指定する拂渡郵便局に送付し、その拂渡郵便局において、送付を受けた振出請求書と通常爲替証書とを対照した上通常爲替証書と引き換えに差出人の指定する受取人に爲替金を拂い渡す。
第九條(電信爲替) 電信爲替においては、差出人が現金を振出請求書とともに郵便局に差し出したときに、その郵便局において、その旨を省令の定める郵便局に電信で通知し、その通知を受けた郵便局において、差し出された現金の額を表示する電信爲替証書を発行してこれを差出人の指定する受取人に送達するとともに、その電報を差出人の指定する拂渡郵便局(差出人の指定のないときは、電信爲替証書を発行する郵便局の指定する拂渡郵便局)に送達し、その拂渡郵便局において、送達を受けた電報と電信爲替証書とを対照した上電信爲替証書と引き換えに受取人に爲替金を拂い渡す。
第十條(小爲替) 小爲替においては、差出人が現金を郵便局に差し出したときに、その郵便局において、差し出された現金の額を表示する小爲替証書を発行してこれを差出人に交付し、差出人の指定する拂渡郵便局(差出人の指定のないときは、受取人の選択する拂渡郵便局)において、差出人が小爲替証書に記載した受取人に小爲替証書と引き換えに爲替金を拂い渡す。
第十一條(交換決済による拂渡) 前三條の規定は、爲替金を手形交換所における交換決済により拂い渡すことを妨げない。
第十二條(爲替金に関する権利の譲渡) 爲替金に関する受取人の権利は、銀行以外の者にこれを譲り渡すことができない。
爲替金に関する受取人の権利の銀行への譲渡は、当該郵便爲替証書を銀行に引き渡さなければ、これを以て逓信官署その他の第三者に対抗することができない。
前項の譲渡には、民法第四百六十七條及び第四百六十八條の規定を適用しない。
第十三條(証明) 逓信官署は、郵便爲替の差出人又は受取人の眞偽を調査するため必要な証明を求めることができる。
第十四條(正当の拂渡及び拂もどし) この法律又はこの法律に基く省令に規定する手続を経て、爲替金を拂い渡し、又は拂いもどしたときは、正当の拂渡又は拂もどしをしたものとみなす。
第十五條(免責) 逓信官署は、左の場合において爲替金の拂渡又は拂もどしを延期したときは、これに因り生じた損害を賠償しない。
一 爲替金を拂い渡し、又は拂いもどすべき郵便局において現金に余裕のないとき。
二 爲替金の拂渡又は拂もどしに関する書類が整つていないとき。
三 不可抗力に因り拂い渡し、又は拂いもどすことができないとき。
第十六條(郵便爲替証書の金額の制限) 通常爲替証書、電信爲替証書及び小爲替証書(以下郵便爲替証書と総称する。)の金額は、一枚につき、通常爲替証書及び電信爲替証書にあつては五千円以下、小爲替証書にあつては千円以下とする。但し、郵便、電信、電話、郵便爲替、郵便貯金及び郵便振替貯金の業務に関し逓信官署相互間又は逓信官署とこれらの業務に從事する者との間において公金を郵便爲替によつて授受する場合における郵便爲替証書及び代金引換の取扱において郵便物の差出人の指定に從い逓信官署において引換金を通常爲替によつて送金する場合における通常爲替証書については、逓信大臣は、その制限額を引き上げることができない。
電信爲替証書の金額には、一円未満の端数をつけることができない。
第十七條(郵便爲替の料金) 郵便爲替の料金は、郵便爲替証書一枚につき左の通りとする。
一 通常爲替
爲替金額千円以下の場合
十五円
同   三千円以下の場合
二十円
同   五千円以下の場合
二十五円
二 電信爲替
爲替金額百円以下の場合
二十五円
同   三百円以下の場合
五十円
同   千円以下の場合
七十円
同   三千円以下の場合
九十円
同   五千円以下の場合
百円
三 小爲替
爲替金額五十円以下の場合
二円
同   五百円以下の場合
四円
同   千円以下の場合
六円
電信爲替に関する通知を至急電報でする場合における電信爲替の料金は、前項第二号に規定する料金の倍額とする。
前條第一項但書の規定により制限額を引き上げた場合における郵便爲替については、同項本文に規定する制限額又はその端数ごとに各別に郵便爲替証書を発行したものとみなして、前二項の例による。
郵便爲替の料金は、差出人が第八條乃至第十條の規定により現金を郵便局に差し出す際、これを納付しなければならない。
第十八條(郵便爲替の料金の免除及び低減) 郵便、電信、電話、郵便爲替、郵便貯金及び郵便振替貯金の業務に関し逓信官署相互間又は逓信官署とこれらの業務に從事する者との間において公金を授受する場合における郵便爲替については、逓信大臣は、その料金を免除し、又は低減することができる。
第十九條(料金の還付) 郵便爲替に関する既納の料金は、左のものに限り、これを納付した者の請求に因り還付する。
一 過納又は誤納の料金
二 第二十五條第一項の規定により通常爲替証書を速達郵便物として送達する取扱において、郵便爲替に関する業務に從事する者の過失に因つて特殊取扱をしない郵便物として送達するのと同様の結果を生じた場合における郵便物の速達料に相当する金額
三 電信爲替において、郵便爲替に関する業務に從事する者の過失に因つて通常爲替によつたのと同様の結果を生じた場合における当該爲替金額に対する電信爲替の料金と通常爲替の料金との差額
四 前二号に掲げるものを除いて、郵便爲替に関する業務に從事する者の過失に因つて請求に係る取扱をしなかつた場合におけるその取扱の料金
前項の請求は、その料金を納付した時から一年を経過したときは、これをすることができない。
第二十條(郵便爲替証書の有効期間) 郵便爲替証書の有効期間は、その発行の日から二箇月とする。
逓信大臣は、必要と認めるときは、離島その他交通不便の地域につき、前項の有効期間を延長することができる。
第十五條に規定する場合において爲替金の拂渡又は拂もどしを延期した日数は、これを第一項の有効期間に算入しない。
第二十一條(郵便爲替証書の再交付) 逓信官署は、左の場合において、郵便爲替の差出人又は受取人の請求があるときは、郵便爲替証書を再交付する。
一 小爲替証書が亡失された場合において、当該小爲替証書の有効期間が経過したとき、又は小爲替証書以外の郵便爲替証書が亡失されたとき。
二 郵便爲替証書が汚染され、又はき損されたため記載事項がわからなくなつたとき。三 郵便爲替証書の有効期間が経過したとき。
差出人又は受取人は、前項の規定による再交付を受けるときは、その料金として郵便爲替証書一枚につき一円を納付しなければならない。
第二十二條(爲替金に関する権利の消滅) 郵便爲替証書の有効期間の経過後三年間、郵便爲替証書の再交付又は爲替金の拂もどしの請求がないときは、爲替金に関する差出人及び受取人の権利は、消滅する。
第二十三條(利用の制限及び業務の停止) 逓信大臣は、天災その他やむを得ない事由がある場合において、重要な業務の遂行を確保するため必要があるときは、逓信官署を指定し、且つ、期間を定めて、郵便爲替の利用を制限し、又は業務の一部を停止することができる。
第二十四條(非常取扱) 逓信大臣は、天災その他非常の災害があつた場合において、その災害を受けた郵便爲替の差出人又は受取人の緊急な需要を充たすため必要があるときは、省令の定めるところにより、郵便局を指定し、且つ、期間を定めて、郵便爲替に関し、料金を免除し、又は便宜の取扱をすることができる。
第二章 通常爲替
第二十五條(証書送達) 差出人が第八條の規定により郵便局に現金を差し出す際請求したときは、郵便局において、通常爲替証書を差出人の指定に從い特殊取扱をしない郵便物又は速達郵便物として、受取人に送達する。
前項の規定による取扱については、差出人は、郵便に関する料金を基準として省令の定める料金を納付しなければならない。
第二十六條(引換金の郵便爲替) 代金引換の取扱において郵便物の差出人の指定に從い逓信官署において引換金を通常爲替によつて送金する場合における郵便爲替の料金は、第十七條第四項の規定にかかわらず、爲替金の拂渡を受け、又は当該郵便爲替証書を郵便振替貯金の拂込金に充てる際、当該郵便爲替の受取人が、これを納付しなければならない。
前項の通常爲替の料金は、第十七條第一項の規定にかかわらず、爲替金額が千円以下の場合には、小爲替の料金と同額とする。
第二十七條(振出請求書の記載事項の訂正) 第八條の規定により差出人が現金を差し出した郵便局において、差出人の訂正の請求があるときは、振出請求書の記載事項を訂正し、又は拂渡郵便局に訂正の請求があつた旨を差出人の指定に從い郵便若しくは電信で通知する。
前項の通知があつたときは、拂渡郵便局において振出請求書を訂正する。但し、既に爲替金を拂い渡した後であるときは、その旨を差出人に通知するに止める。
第一項に規定する通知の取扱については、差出人は、郵便又は電信に関する料金を基準として省令の定める料金を納付しなければならない。
第二十八條(便宜拂) 銀行に爲替金を拂い渡す場合において、銀行の請求があるときは、第八條に規定する拂渡郵便局以外の郵便局において、爲替金を拂い渡すことができる。
前項の規定により爲替金を拂い渡すことのできる郵便局は、銀行の申出に因り、逓信官署において承認した郵便局に限る。
第一項の規定により爲替金を拂い渡した場合において、その爲替金が拂渡の停止その他の事由に因り拂い渡すことができないものであつたときは、逓信官署は、その拂い渡した金額を返還させる。
第二十九條(拂渡の停止) 通常爲替の差出人が爲替金の拂渡の停止を請求したときは、郵便局において、爲替金を拂い渡さず、又は拂渡郵便局に拂渡の停止の請求があつた旨を差出人の指定に從い郵便若しくは電信で通知する。
前項の通知があつたときは、拂渡郵便局において、爲替金を拂い渡さない。但し、既に拂渡金を拂い渡した後であるときは、その旨を差出人に通知するに止める。
爲替金の拂渡の停止の解除の請求があつた場合において、その請求を受けた郵便局が拂渡郵便局でないときは、差出人の指定に從い郵便又は電信で拂渡郵便局に解除の請求のあつた旨を通知する。
第一項及び前項に規定する通知の取扱については、第二十七條第三項の規定を準用する。
第三十條(拂渡済の通知) 差出人が第八條の規定により郵便局に現金を差し出す際請求したときは、拂渡郵便局において、爲替金を拂い渡したときにその旨を差出人に通知する。
前項の規定による取扱については、第二十七條第三項の規定を準用する。
第三十一條(拂渡済否の調査) 通常爲替の差出人の請求があるときは、郵便局において、爲替金が拂渡済であるかどうかを調査してその結果を差出人に通知する。
前項の場合において、同項の請求を受けた郵便局が他の逓信官署に照会しなければならないときは、当該郵便局において、差出人の指定に從い郵便又は電信で照会する。
前項の規定による取扱については、第二十七條第三項の規定を準用する。
第三十二條(拂もどし) 差出人の請求があるときは、第八條の規定により差出人が現金を差し出した郵便局において、郵便爲替証書と引き換えに爲替金を当該差出人に拂いもどす。
郵便爲替証書が亡失され、若しくは汚染され、若しくはき損されたため記載事項がわからなくなつた場合又は郵便爲替証書の有効期間が経過した後において、爲替金がまだ拂い渡されていないときは、前項の規定にかかわらず、同項に規定する郵便局において、爲替金を拂いもどす。
前項の規定による取扱については、差出人は、その料金として一円を納付しなければならない。
第三十三條(拂渡郵便局及び拂もどし郵便局の変更) 爲替金を拂い渡し、又は拂いもどすべき郵便局は、省令の定めるところにより、通常爲替の差出人又は受取人の請求があるときは、これを変更することができる。
前項の規定による取扱については、差出人又は受取人は、その料金として一円を納付しなければならない。
第三章 電信爲替
第三十四條(特殊取扱) 差出人が第九條の規定により郵便局に現金を差し出す際請求したときは、郵便局において、省令の定めるところにより、電信爲替に関する書類を特別に速やかに到達させる方法により送達する。
前項の規定による取扱については、第二十七條第三項の規定を準用する。
第三十五條(電信爲替証書の留置) 差出人が第九條の規定により郵便局に現金を差し出す際請求したときは、同條に規定する省令の定める郵便局において、電信爲替証書を拂渡郵便局に送付し、拂渡郵便局において、送付を受けた電信爲替証書を留め置き、受取人の出頭をまつてその者に交付する。
前項の場合において、当該電信爲替証書の発行の日から七日以内に受取人が出頭しないときは、当該電信爲替証書は、これを差出人に送付する。
第三十六條(準用規定) 電信爲替については、第二十七條乃至第三十三條の規定を準用する。この場合において、第二十七條第一項、第二十八條第一項、第三十條第一項及び第三十二條第一項中「第八條」とあるのは、これを「第九條」と読み替えるものとする。
第四章 小爲替
第三十七條(小爲替証書の記載事項の訂正等) 小爲替証書の記載事項の訂正又は拂渡郵便局の指定の抹消は、郵便局において、差出人の請求に因りこれをする。
第三十八條(準用規定) 小爲替については、第二十八條、第三十條乃至第三十二條及び第三十三條第一項の規定を準用する。この場合において、第二十八條第一項、第三十條第一項及び第三十二條第一項中「第八條」とあるのは、これを「第十條」と読み替えるものとする。
前項において準用する第三十二條第二項の規定による拂もどしは、小爲替証書の亡失に係る場合には、当該小爲替証書の有効期限内は、これをしない。
附 則
第三十九條 この法律は、公布の日から起算し、二十日を経過した日から、これを施行する。
第四十條 明治三十三年法律第五十五号郵便爲替法は、これを廃止する。
第四十一條 この法律施行前に差出人が現金を郵便局に差し出した郵便爲替については、第三十一條の規定を除いて、この法律を適用する。
第四十二條 金融緊急措置令の規定による封鎖支拂のための郵便爲替については、同令施行中は、昭和二十一年閣令第六十一号金融緊急措置令に基く封鎖支拂の取扱に関する件は、なおその効力を有する。
内閣総理大臣 芦田均
大藏大臣 北村徳太郎
逓信大臣 冨吉榮二
郵便為替法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十三年六月二十六日
内閣総理大臣 芦田均
法律第五十九号
郵便為替法
第一章 総則
第一条(この法律の目的) この法律は、郵便為替を簡易で確実な送金の手段としてあまねく公平に利用させることによつて、国民の円滑な経済活動に資することを目的とする。
第二条(郵便為替の国営及び逓信大臣の職責) 郵便為替は、国の行う事業であつて、逓信大臣が、これを管理する。
逓信大臣は、この法律の目的を達成するため、左の職責を有する。
一 郵便為替に関する条約及び法律に従い、省令を発すること。
二 法律に触れない範囲において、郵便為替の取扱をする郵便局を指定し、郵便局における郵便為替事務の窓口取扱時間を定めること。
三 法律に触れない範囲において、郵便為替の総括計算の事務を取り扱う官署を設置し、又は廃止すること。
四 郵便為替の業務に従事する者をその職務につき指揮監督すること。
五 法律に触れない範囲において、郵便為替の業務に従事する者の能率の向上を図るため必要な厚生、保健その他の施設をし、且つ、郵便為替の業務に従事する者の訓練を行うこと。
六 郵便為替事業を行うため、財政及び会計に関する法令の定めるところに従い、必要な契約をすること。
七 前各号に掲げるものを除いて、郵便為替に関し逓信大臣の職責として法令の定める事項を掌理すること。
第三条(逓信大臣の職権の委任) 逓信大臣は、この法律に定める職権で細目の事項に関するものを、条件を定めて、逓信局長又は郵便局長に委任することができる。
第四条(郵便為替の業務に従事する官吏) 郵便為替の業務に従事する官吏の身分、給与及び服務に関する事項は、別に法律でこれを定める。
第五条(印紙税の免除) 郵便為替に関する書類には、印紙税を課さない。
第六条(郵便為替に関する条約) 郵便為替に関し条約に別段の定のある場合には、その規定による。
第七条(郵便為替の種類) 郵便為替は、通常為替、電信為替及び小為替とする。
第八条(通常為替) 通常為替においては、差出人が現金を振出請求書とともに郵便局に差し出したときに、その郵便局において、差し出された現金の額を表示する通常為替証書を発行してこれを差出人に交付するとともに、振出請求書を差出人の指定する払渡郵便局に送付し、その払渡郵便局において、送付を受けた振出請求書と通常為替証書とを対照した上通常為替証書と引き換えに差出人の指定する受取人に為替金を払い渡す。
第九条(電信為替) 電信為替においては、差出人が現金を振出請求書とともに郵便局に差し出したときに、その郵便局において、その旨を省令の定める郵便局に電信で通知し、その通知を受けた郵便局において、差し出された現金の額を表示する電信為替証書を発行してこれを差出人の指定する受取人に送達するとともに、その電報を差出人の指定する払渡郵便局(差出人の指定のないときは、電信為替証書を発行する郵便局の指定する払渡郵便局)に送達し、その払渡郵便局において、送達を受けた電報と電信為替証書とを対照した上電信為替証書と引き換えに受取人に為替金を払い渡す。
第十条(小為替) 小為替においては、差出人が現金を郵便局に差し出したときに、その郵便局において、差し出された現金の額を表示する小為替証書を発行してこれを差出人に交付し、差出人の指定する払渡郵便局(差出人の指定のないときは、受取人の選択する払渡郵便局)において、差出人が小為替証書に記載した受取人に小為替証書と引き換えに為替金を払い渡す。
第十一条(交換決済による払渡) 前三条の規定は、為替金を手形交換所における交換決済により払い渡すことを妨げない。
第十二条(為替金に関する権利の譲渡) 為替金に関する受取人の権利は、銀行以外の者にこれを譲り渡すことができない。
為替金に関する受取人の権利の銀行への譲渡は、当該郵便為替証書を銀行に引き渡さなければ、これを以て逓信官署その他の第三者に対抗することができない。
前項の譲渡には、民法第四百六十七条及び第四百六十八条の規定を適用しない。
第十三条(証明) 逓信官署は、郵便為替の差出人又は受取人の真偽を調査するため必要な証明を求めることができる。
第十四条(正当の払渡及び払もどし) この法律又はこの法律に基く省令に規定する手続を経て、為替金を払い渡し、又は払いもどしたときは、正当の払渡又は払もどしをしたものとみなす。
第十五条(免責) 逓信官署は、左の場合において為替金の払渡又は払もどしを延期したときは、これに因り生じた損害を賠償しない。
一 為替金を払い渡し、又は払いもどすべき郵便局において現金に余裕のないとき。
二 為替金の払渡又は払もどしに関する書類が整つていないとき。
三 不可抗力に因り払い渡し、又は払いもどすことができないとき。
第十六条(郵便為替証書の金額の制限) 通常為替証書、電信為替証書及び小為替証書(以下郵便為替証書と総称する。)の金額は、一枚につき、通常為替証書及び電信為替証書にあつては五千円以下、小為替証書にあつては千円以下とする。但し、郵便、電信、電話、郵便為替、郵便貯金及び郵便振替貯金の業務に関し逓信官署相互間又は逓信官署とこれらの業務に従事する者との間において公金を郵便為替によつて授受する場合における郵便為替証書及び代金引換の取扱において郵便物の差出人の指定に従い逓信官署において引換金を通常為替によつて送金する場合における通常為替証書については、逓信大臣は、その制限額を引き上げることができない。
電信為替証書の金額には、一円未満の端数をつけることができない。
第十七条(郵便為替の料金) 郵便為替の料金は、郵便為替証書一枚につき左の通りとする。
一 通常為替
為替金額千円以下の場合
十五円
同   三千円以下の場合
二十円
同   五千円以下の場合
二十五円
二 電信為替
為替金額百円以下の場合
二十五円
同   三百円以下の場合
五十円
同   千円以下の場合
七十円
同   三千円以下の場合
九十円
同   五千円以下の場合
百円
三 小為替
為替金額五十円以下の場合
二円
同   五百円以下の場合
四円
同   千円以下の場合
六円
電信為替に関する通知を至急電報でする場合における電信為替の料金は、前項第二号に規定する料金の倍額とする。
前条第一項但書の規定により制限額を引き上げた場合における郵便為替については、同項本文に規定する制限額又はその端数ごとに各別に郵便為替証書を発行したものとみなして、前二項の例による。
郵便為替の料金は、差出人が第八条乃至第十条の規定により現金を郵便局に差し出す際、これを納付しなければならない。
第十八条(郵便為替の料金の免除及び低減) 郵便、電信、電話、郵便為替、郵便貯金及び郵便振替貯金の業務に関し逓信官署相互間又は逓信官署とこれらの業務に従事する者との間において公金を授受する場合における郵便為替については、逓信大臣は、その料金を免除し、又は低減することができる。
第十九条(料金の還付) 郵便為替に関する既納の料金は、左のものに限り、これを納付した者の請求に因り還付する。
一 過納又は誤納の料金
二 第二十五条第一項の規定により通常為替証書を速達郵便物として送達する取扱において、郵便為替に関する業務に従事する者の過失に因つて特殊取扱をしない郵便物として送達するのと同様の結果を生じた場合における郵便物の速達料に相当する金額
三 電信為替において、郵便為替に関する業務に従事する者の過失に因つて通常為替によつたのと同様の結果を生じた場合における当該為替金額に対する電信為替の料金と通常為替の料金との差額
四 前二号に掲げるものを除いて、郵便為替に関する業務に従事する者の過失に因つて請求に係る取扱をしなかつた場合におけるその取扱の料金
前項の請求は、その料金を納付した時から一年を経過したときは、これをすることができない。
第二十条(郵便為替証書の有効期間) 郵便為替証書の有効期間は、その発行の日から二箇月とする。
逓信大臣は、必要と認めるときは、離島その他交通不便の地域につき、前項の有効期間を延長することができる。
第十五条に規定する場合において為替金の払渡又は払もどしを延期した日数は、これを第一項の有効期間に算入しない。
第二十一条(郵便為替証書の再交付) 逓信官署は、左の場合において、郵便為替の差出人又は受取人の請求があるときは、郵便為替証書を再交付する。
一 小為替証書が亡失された場合において、当該小為替証書の有効期間が経過したとき、又は小為替証書以外の郵便為替証書が亡失されたとき。
二 郵便為替証書が汚染され、又はき損されたため記載事項がわからなくなつたとき。三 郵便為替証書の有効期間が経過したとき。
差出人又は受取人は、前項の規定による再交付を受けるときは、その料金として郵便為替証書一枚につき一円を納付しなければならない。
第二十二条(為替金に関する権利の消滅) 郵便為替証書の有効期間の経過後三年間、郵便為替証書の再交付又は為替金の払もどしの請求がないときは、為替金に関する差出人及び受取人の権利は、消滅する。
第二十三条(利用の制限及び業務の停止) 逓信大臣は、天災その他やむを得ない事由がある場合において、重要な業務の遂行を確保するため必要があるときは、逓信官署を指定し、且つ、期間を定めて、郵便為替の利用を制限し、又は業務の一部を停止することができる。
第二十四条(非常取扱) 逓信大臣は、天災その他非常の災害があつた場合において、その災害を受けた郵便為替の差出人又は受取人の緊急な需要を充たすため必要があるときは、省令の定めるところにより、郵便局を指定し、且つ、期間を定めて、郵便為替に関し、料金を免除し、又は便宜の取扱をすることができる。
第二章 通常為替
第二十五条(証書送達) 差出人が第八条の規定により郵便局に現金を差し出す際請求したときは、郵便局において、通常為替証書を差出人の指定に従い特殊取扱をしない郵便物又は速達郵便物として、受取人に送達する。
前項の規定による取扱については、差出人は、郵便に関する料金を基準として省令の定める料金を納付しなければならない。
第二十六条(引換金の郵便為替) 代金引換の取扱において郵便物の差出人の指定に従い逓信官署において引換金を通常為替によつて送金する場合における郵便為替の料金は、第十七条第四項の規定にかかわらず、為替金の払渡を受け、又は当該郵便為替証書を郵便振替貯金の払込金に充てる際、当該郵便為替の受取人が、これを納付しなければならない。
前項の通常為替の料金は、第十七条第一項の規定にかかわらず、為替金額が千円以下の場合には、小為替の料金と同額とする。
第二十七条(振出請求書の記載事項の訂正) 第八条の規定により差出人が現金を差し出した郵便局において、差出人の訂正の請求があるときは、振出請求書の記載事項を訂正し、又は払渡郵便局に訂正の請求があつた旨を差出人の指定に従い郵便若しくは電信で通知する。
前項の通知があつたときは、払渡郵便局において振出請求書を訂正する。但し、既に為替金を払い渡した後であるときは、その旨を差出人に通知するに止める。
第一項に規定する通知の取扱については、差出人は、郵便又は電信に関する料金を基準として省令の定める料金を納付しなければならない。
第二十八条(便宜払) 銀行に為替金を払い渡す場合において、銀行の請求があるときは、第八条に規定する払渡郵便局以外の郵便局において、為替金を払い渡すことができる。
前項の規定により為替金を払い渡すことのできる郵便局は、銀行の申出に因り、逓信官署において承認した郵便局に限る。
第一項の規定により為替金を払い渡した場合において、その為替金が払渡の停止その他の事由に因り払い渡すことができないものであつたときは、逓信官署は、その払い渡した金額を返還させる。
第二十九条(払渡の停止) 通常為替の差出人が為替金の払渡の停止を請求したときは、郵便局において、為替金を払い渡さず、又は払渡郵便局に払渡の停止の請求があつた旨を差出人の指定に従い郵便若しくは電信で通知する。
前項の通知があつたときは、払渡郵便局において、為替金を払い渡さない。但し、既に払渡金を払い渡した後であるときは、その旨を差出人に通知するに止める。
為替金の払渡の停止の解除の請求があつた場合において、その請求を受けた郵便局が払渡郵便局でないときは、差出人の指定に従い郵便又は電信で払渡郵便局に解除の請求のあつた旨を通知する。
第一項及び前項に規定する通知の取扱については、第二十七条第三項の規定を準用する。
第三十条(払渡済の通知) 差出人が第八条の規定により郵便局に現金を差し出す際請求したときは、払渡郵便局において、為替金を払い渡したときにその旨を差出人に通知する。
前項の規定による取扱については、第二十七条第三項の規定を準用する。
第三十一条(払渡済否の調査) 通常為替の差出人の請求があるときは、郵便局において、為替金が払渡済であるかどうかを調査してその結果を差出人に通知する。
前項の場合において、同項の請求を受けた郵便局が他の逓信官署に照会しなければならないときは、当該郵便局において、差出人の指定に従い郵便又は電信で照会する。
前項の規定による取扱については、第二十七条第三項の規定を準用する。
第三十二条(払もどし) 差出人の請求があるときは、第八条の規定により差出人が現金を差し出した郵便局において、郵便為替証書と引き換えに為替金を当該差出人に払いもどす。
郵便為替証書が亡失され、若しくは汚染され、若しくはき損されたため記載事項がわからなくなつた場合又は郵便為替証書の有効期間が経過した後において、為替金がまだ払い渡されていないときは、前項の規定にかかわらず、同項に規定する郵便局において、為替金を払いもどす。
前項の規定による取扱については、差出人は、その料金として一円を納付しなければならない。
第三十三条(払渡郵便局及び払もどし郵便局の変更) 為替金を払い渡し、又は払いもどすべき郵便局は、省令の定めるところにより、通常為替の差出人又は受取人の請求があるときは、これを変更することができる。
前項の規定による取扱については、差出人又は受取人は、その料金として一円を納付しなければならない。
第三章 電信為替
第三十四条(特殊取扱) 差出人が第九条の規定により郵便局に現金を差し出す際請求したときは、郵便局において、省令の定めるところにより、電信為替に関する書類を特別に速やかに到達させる方法により送達する。
前項の規定による取扱については、第二十七条第三項の規定を準用する。
第三十五条(電信為替証書の留置) 差出人が第九条の規定により郵便局に現金を差し出す際請求したときは、同条に規定する省令の定める郵便局において、電信為替証書を払渡郵便局に送付し、払渡郵便局において、送付を受けた電信為替証書を留め置き、受取人の出頭をまつてその者に交付する。
前項の場合において、当該電信為替証書の発行の日から七日以内に受取人が出頭しないときは、当該電信為替証書は、これを差出人に送付する。
第三十六条(準用規定) 電信為替については、第二十七条乃至第三十三条の規定を準用する。この場合において、第二十七条第一項、第二十八条第一項、第三十条第一項及び第三十二条第一項中「第八条」とあるのは、これを「第九条」と読み替えるものとする。
第四章 小為替
第三十七条(小為替証書の記載事項の訂正等) 小為替証書の記載事項の訂正又は払渡郵便局の指定の抹消は、郵便局において、差出人の請求に因りこれをする。
第三十八条(準用規定) 小為替については、第二十八条、第三十条乃至第三十二条及び第三十三条第一項の規定を準用する。この場合において、第二十八条第一項、第三十条第一項及び第三十二条第一項中「第八条」とあるのは、これを「第十条」と読み替えるものとする。
前項において準用する第三十二条第二項の規定による払もどしは、小為替証書の亡失に係る場合には、当該小為替証書の有効期限内は、これをしない。
附 則
第三十九条 この法律は、公布の日から起算し、二十日を経過した日から、これを施行する。
第四十条 明治三十三年法律第五十五号郵便為替法は、これを廃止する。
第四十一条 この法律施行前に差出人が現金を郵便局に差し出した郵便為替については、第三十一条の規定を除いて、この法律を適用する。
第四十二条 金融緊急措置令の規定による封鎖支払のための郵便為替については、同令施行中は、昭和二十一年閣令第六十一号金融緊急措置令に基く封鎖支払の取扱に関する件は、なおその効力を有する。
内閣総理大臣 芦田均
大蔵大臣 北村徳太郎
逓信大臣 冨吉栄二