郵便為替法
法令番号: 法律第五十五號
公布年月日: 明治33年3月13日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル郵便爲替法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十三年三月十二日
內閣總理大臣 侯爵 山縣有朋
遞信大臣 子爵 芳川顯正
法律第五十五號
郵便爲替法
第一條 郵便爲替ハ通常爲替電信爲替及小爲替ノ三種トス
第二條 通常爲替證書及小爲替證書ハ命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外差出人ニ於テ之ヲ其ノ受取人ニ送達ス
電信爲替證書ハ郵便官署ニ於テ之ヲ其ノ受取人ニ送達ス
第三條 郵便官署ハ差出人ノ請求ニ因リ通常爲替證書及電信爲替證書ニ對スル郵便爲替金ノ拂渡前ニ於テ其ノ拂渡ヲ停止シ又ハ其ノ拂戾ヲ爲スコトヲ得
第四條 郵便爲替ニ關シ無能力者ノ郵便官署ニ對シテ爲シタル行爲ハ能力者ノ爲シタルモノト看做ス
第五條 郵便官署ハ受取人ノ眞僞ヲ調査スル爲受取人ヲシテ必要ナル證明ヲ爲サシムルコトヲ得
第六條 郵便爲替ニ關スル書類ニ付テハ印紙稅ヲ課セス
第七條 郵便爲替金額ノ制限及郵便爲替ニ關スル料金ハ命令ノ定ムル所ニ依ル
第八條 郵便爲替ニ關スル料金ハ命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外郵便切手ヲ以テ納付スヘシ
第九條 郵便爲替ニ關スル旣納及過納ノ料金ハ命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外之ヲ還付セス
第十條 郵便爲替證書ノ有效期間ハ其ノ發行ノ日ヨリ通常爲替及電信爲替ニ在リテハ九十日小爲替ニ在リテハ六十日トス
前項ノ期間ハ交通不便ノ地方ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ延長スルコトヲ得
第十一條 郵便官署ニ於テ郵便爲替金ノ拂渡ヲ遲延シタル爲經過シタル日數ハ前條ノ有效期間ニ算入セス
第十二條 郵便爲替證書ノ有效期間ヲ經過シタルトキ又ハ郵便爲替證書ヲ亡失毀損若ハ汚斑シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ差出人又ハ受取人ニ於テ再度證書ノ交付又ハ爲替金ノ拂戾ヲ請求スルコトヲ得
再度證書ヲ發行シタルトキハ原證書ハ無效トス
第十三條 郵便爲替證書ノ有效期間滿了ノ日ヨリ三箇年間前條ノ請求ヲ爲ササルトキハ其ノ郵便爲替金ハ國庫ノ所有ニ歸ス
第十四條 成規ノ手續ヲ經テ爲替金ヲ交付シタルトキハ正當ノ拂渡ヲ爲シタルモノト看做ス
第十五條 郵便官署ハ郵便爲替金拂渡ノ遲延ニ因リ生シタル損害ニ付賠償ノ責ニ任セス
第十六條 郵便爲替ニ關シ條約ニ別段ノ規定アルモノハ各其ノ規定ニ依ル
附 則
第十七條 本法ハ明治三十三年十月一日ヨリ之ヲ施行ス
郵便條例第十二章及第二百四十二條ハ之ヲ廢止ス
第十八條 本法施行前ニ發行シタル郵便爲替證書及郵便小爲替證書ニ關シテハ本法ノ規定ヲ適用ス但シ本法施行前其ノ有效期間滿了シタルモノニ在リテハ第十三條ノ期間ハ五箇年トシ其ノ有效期間滿了セサルモノニ在リテハ第十條第一項ノ期間ハ郵便爲替證書ニ付テハ百二十日郵便小爲替證書ニ付テハ六十日トス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル郵便為替法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十三年三月十二日
内閣総理大臣 侯爵 山県有朋
逓信大臣 子爵 芳川顕正
法律第五十五号
郵便為替法
第一条 郵便為替ハ通常為替電信為替及小為替ノ三種トス
第二条 通常為替証書及小為替証書ハ命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外差出人ニ於テ之ヲ其ノ受取人ニ送達ス
電信為替証書ハ郵便官署ニ於テ之ヲ其ノ受取人ニ送達ス
第三条 郵便官署ハ差出人ノ請求ニ因リ通常為替証書及電信為替証書ニ対スル郵便為替金ノ払渡前ニ於テ其ノ払渡ヲ停止シ又ハ其ノ払戻ヲ為スコトヲ得
第四条 郵便為替ニ関シ無能力者ノ郵便官署ニ対シテ為シタル行為ハ能力者ノ為シタルモノト看做ス
第五条 郵便官署ハ受取人ノ真偽ヲ調査スル為受取人ヲシテ必要ナル証明ヲ為サシムルコトヲ得
第六条 郵便為替ニ関スル書類ニ付テハ印紙税ヲ課セス
第七条 郵便為替金額ノ制限及郵便為替ニ関スル料金ハ命令ノ定ムル所ニ依ル
第八条 郵便為替ニ関スル料金ハ命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外郵便切手ヲ以テ納付スヘシ
第九条 郵便為替ニ関スル既納及過納ノ料金ハ命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外之ヲ還付セス
第十条 郵便為替証書ノ有効期間ハ其ノ発行ノ日ヨリ通常為替及電信為替ニ在リテハ九十日小為替ニ在リテハ六十日トス
前項ノ期間ハ交通不便ノ地方ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ延長スルコトヲ得
第十一条 郵便官署ニ於テ郵便為替金ノ払渡ヲ遅延シタル為経過シタル日数ハ前条ノ有効期間ニ算入セス
第十二条 郵便為替証書ノ有効期間ヲ経過シタルトキ又ハ郵便為替証書ヲ亡失毀損若ハ汚斑シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ差出人又ハ受取人ニ於テ再度証書ノ交付又ハ為替金ノ払戻ヲ請求スルコトヲ得
再度証書ヲ発行シタルトキハ原証書ハ無効トス
第十三条 郵便為替証書ノ有効期間満了ノ日ヨリ三箇年間前条ノ請求ヲ為ササルトキハ其ノ郵便為替金ハ国庫ノ所有ニ帰ス
第十四条 成規ノ手続ヲ経テ為替金ヲ交付シタルトキハ正当ノ払渡ヲ為シタルモノト看做ス
第十五条 郵便官署ハ郵便為替金払渡ノ遅延ニ因リ生シタル損害ニ付賠償ノ責ニ任セス
第十六条 郵便為替ニ関シ条約ニ別段ノ規定アルモノハ各其ノ規定ニ依ル
附 則
第十七条 本法ハ明治三十三年十月一日ヨリ之ヲ施行ス
郵便条例第十二章及第二百四十二条ハ之ヲ廃止ス
第十八条 本法施行前ニ発行シタル郵便為替証書及郵便小為替証書ニ関シテハ本法ノ規定ヲ適用ス但シ本法施行前其ノ有効期間満了シタルモノニ在リテハ第十三条ノ期間ハ五箇年トシ其ノ有効期間満了セサルモノニ在リテハ第十条第一項ノ期間ハ郵便為替証書ニ付テハ百二十日郵便小為替証書ニ付テハ六十日トス