第一條 本法ニ於テ蠶絲トハ蠶種、繭、生絲其ノ他命令ヲ以テ定ムル蠶絲類ヲ謂フ
第二條 蠶種製造業ヲ營マントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ許可ヲ受クベシ
第四條 原原蠶種ハ政府又ハ當該原原蠶種ノ品種ノ選出育成者ニ非ザレバ之ヲ製造スルコトヲ得ズ
原原蠶種ノ品種ノ選出育成者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ許可ヲ受ケ他ノ者ヲシテ其ノ選出育成ニ係ル品種ノ原原蠶種ノ製造ヲ行ハシムルコトヲ得
第五條 政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ蠶種ノ品種ノ選出育成者ヲシテ其ノ選出育成ニ係ル品種ノ蠶種ヲ提出セシメ當該品種ノ原原蠶種ヲ製造シ之ヲ配付スルコトヲ得
第六條 蠶種ノ品種ノ選出育成者ハ其ノ選出育成ニ係ル品種ノ原原蠶種ニ付蠶種製造業者ヨリ其ノ買受ノ申込アリタルトキハ正當ノ事由アルニ非ザレバ之ヲ拒ムコトヲ得ズ
第七條 原蠶種ハ都道府縣又ハ命令ヲ以テ定ムル蠶種製造業者ニ非ザレバ之ヲ製造スルコトヲ得ズ
原蠶種ハ原原蠶種ヨリ產出シタル繭ヲ用フルニ非ザレバ之ヲ製造スルコトヲ得ズ
第八條 普通蠶種ノ製造ハ主務大臣ノ定ムル交配形式ニ依ルベシ
普通蠶種ハ原原蠶種又ハ原蠶種ヨリ產出シタル繭ヲ用フルニ非ザレバ之ヲ製造スルコトヲ得ズ
第九條 蠶種製造業者ハ自己ノ製造スル蠶種ニ關シ命令ノ定ムル所ニ依リ都道府縣若ハ其ノ者ノ所屬スル團體ノ檢査ヲ受ケ又ハ自ラ檢査ヲ行フベシ
前項ノ規定ニ依リ蠶種製造業者ガ其ノ者ノ所屬スル團體ノ檢査ヲ受ケ又ハ自ラ檢査ヲ行ヒタル場合ニ於テ監督上必要アリト認ムルトキハ都道府縣ハ更ニ檢査ヲ行フコトヲ得
第一項ノ檢査(前項ノ檢査アリタル場合ニ於テハ其ノ檢査)ニ合格シタル蠶種及其ノ蠶兒ニ非ザレバ之ヲ讓渡シ又ハ飼育スルコトヲ得ズ
第十條 行政官廳ハ蠶兒ノ飼育又ハ生繭ノ取扱ヲ爲ス者ニ對シ蠶病ノ驅除又ハ豫防ニ關シ必要ナル施設ヲ命ジ其ノ他取締上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第十一條 學術硏究ノ爲ニ蠶種ノ製造又ハ蠶兒ノ飼育ヲ爲ス場合ニ於テ行政官廳第三條、第四條又ハ第六條乃至第九條ノ規定ヲ適用スル必要ナシト認ムルトキハ命令ヲ以テ其ノ適用ヲ除外スルコトヲ得
第十二條 都道府縣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ蠶種ニ關スル檢査其ノ他蠶病ノ驅除又ハ豫防ノ爲必要ナル吏員ヲ置クベシ
第十三條 蠶種ノ輸出又ハ輸入ハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得ズ
第十四條 行政官廳ハ桑苗ノ檢査又ハ桑苗若ハ野蠶ノ病蟲害ノ驅除若ハ豫防ニ關シ取締上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第十五條 繭ハ命令ノ定ムル所ニ依リ都道府縣ノ行フ檢定ニ依ル品位ニ依ルニ非ザレバ其ノ賣買取引ヲ爲スコトヲ得ズ
第十六條 生絲ハ命令ノ定ムル所ニ依リ國ノ生絲檢査所ノ檢査ヲ受ケタルモノニ非ザレバ之ヲ輸出スルコトヲ得ズ
生絲ハ前項ノ檢査又ハ命令ヲ以テ定ムル檢査ニ依ル正量及品位ニ依ルニ非ザレバ其ノ賣買取引ヲ爲スコトヲ得ズ
第十七條 主務大臣前二條ノ規定ヲ適用スル必要ナシト認ムルトキハ命令ヲ以テ其ノ適用ヲ除外スルコトヲ得
第十八條 主務大臣必要アリト認ムルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ蠶絲業ヲ營マントスル者ニ對シ行政官廳ノ許可ヲ受クベキコトヲ命ズルコトヲ得
第十九條 行政官廳ハ第二條又ハ前條ノ許可ヲ受ケタル者ノ行爲ガ本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シ又ハ公益ヲ害シタルトキハ其ノ許可ヲ取消シ又ハ其ノ業務ヲ制限シ若ハ停止スルコトヲ得
第二十條 主務大臣ハ蠶絲ノ需給ノ調整、價格ノ安定又ハ輸出ノ振興上特ニ必要アリト認ムルトキハ蠶絲ノ生產、加工、輸出、輸入又ハ取扱ヲ業トスル者(以下蠶絲業者ト稱ス)ニ對シ勅令ノ定ムル所ニ依リ蠶絲ノ生產、配給、消費、使用、價格、輸出又ハ輸入ノ統制ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第二十一條 蠶絲業者ハ其ノ蠶絲業ノ改良發達ヲ圖ル爲共同ノ施設ヲ爲ス目的ヲ以テ蠶絲協同組合ヲ設立スルコトヲ得
第二十二條 蠶絲協同組合ハ其ノ目的ヲ達スル爲左ノ事業ヲ行フコトヲ得
二 組合員ノ事業ニ必要ナル物ノ共同購入及共同設備ノ設置
四 前各號ニ揭グルモノノ外蠶絲協同組合ノ目的ヲ達スルニ必要ナル施設
第二十三條 蠶絲協同組合ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ名稱中ニ蠶絲協同組合タルコトヲ示スベキ文字ヲ用フベシ
蠶絲協同組合ニ非ザルモノハ其ノ名稱中ニ蠶絲協同組合タルコトヲ示スベキ文字ヲ用フルコトヲ得ズ
第二十四條 蠶絲協同組合ヲ設立セントスルトキハ蠶絲業者七人以上設立者ト爲リ定款ヲ作成シ出資第一囘ノ拂込ヲ爲サシメタル後二週間以內ニ勅令ノ定ムル所ニ依リ主タル事務所ノ所在地ニ於テ設立ノ登記ヲ爲スベシ
蠶絲協同組合ハ前項ノ設立ノ登記ヲ爲スニ因リテ成立ス
第二十五條 蠶絲協同組合ノ組合員ハ出資一口以上ヲ有スベシ
蠶絲協同組合ハ定款ノ定ムル所ニ依リ總會ニ代ルベキ總代會ヲ設クルコトヲ得
第二十七條 組合員ハ總會ニ於テ各一個ノ議決權ヲ有ス但シ定款ノ定ムル所ニ依リ一人ニ付議決權總數ノ十分ノ二ヲ超エザル範圍內ニ於テ出資口數ニ應ジ二個以上ノ議決權ヲ有セシムルコトヲ得
理事及監事ハ組合員又ハ組合員タル法人ノ業務ヲ執行スル役員ノ中ヨリ總會ニ於テ之ヲ選任ス但シ組合設立當時ノ理事及監事ハ定款ヲ以テ之ヲ定ムベシ
特別ノ事由アルトキハ理事及監事ハ前項ニ該當セザル者ヨリ之ヲ選任スルコトヲ得
第二十九條 蠶絲業者又ハ其ノ團體(農業團體ヲ含ム)ハ蠶絲業ノ改良發達及統制ヲ圖ル目的ヲ以テ蠶絲業會ヲ設立スルコトヲ得
蠶絲業ニ密接ナル關係アル事業ヲ營ム者又ハ其ノ團體ハ蠶絲業會ノ定款ノ定ムル所ニ依リ其ノ會員ト爲ルコトヲ得
第三十條 蠶絲業會ハ其ノ目的ヲ達スル爲左ノ事業ヲ行フ
四 前各號ニ揭グルモノノ外蠶絲業會ノ目的ヲ達スルニ必要ナル施設
蠶絲業會ハ前項各號ニ揭グル事業ノ外第二十二條第一號乃至第三號ニ揭グル事業ヲ行フコトヲ得
第三十一條 蠶絲業會ヲ設立セントスルトキハ蠶絲業者十人以上設立者ト爲リ地區內ノ會員タル資格ヲ有スル者ノ三分ノ二以上ノ同意ヲ得テ創立總會ヲ開キ定款其ノ他必要ナル事項ヲ議決スベシ
全國ヲ地區トスル蠶絲業會ヲ設立セントスル場合ニ於テ特別ノ事由ニ因リ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ蠶絲業者二十五人以上設立者ト爲リ設立ニ關スル一切ノ行爲ヲ爲スコトヲ得
第三十二條 蠶絲業會ハ其ノ會員ニ對シ經費ヲ賦課スルコトヲ得
蠶絲業會其ノ事業ヲ行フ爲必要アルトキハ會員ヲシテ出資ヲ爲サシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ會員ヲシテ出資ヲ爲サシムル蠶絲業會ノ會員ハ出資一口以上ヲ有スベシ
第二項ノ規定ニ依リ會員ヲシテ出資ヲ爲サシムル蠶絲業會ノ會員ノ責任ハ第一項ノ規定ニ依ル費用負擔ノ外其ノ出資額ヲ限度トス
第三十三條 蠶絲業會ハ定款ノ定ムル所ニ依リ會員ニ對シ過怠金ヲ課スルコトヲ得
第三十五條 議員ハ定款ノ定ムル所ニ依リ會員ノ中ヨリ會員之ヲ選擧ス但シ特別ノ事由アル場合ニ於テハ定款ヲ以テ別段ノ定ヲ爲スコトヲ得
特別議員ハ蠶絲業ニ關シ學識經驗アル者ノ中ヨリ總會ニ於テ之ヲ選任ス
評議員ハ議員及特別議員ノ中ヨリ總會ニ於テ之ヲ選任ス
第三十六條 議員及特別議員ハ總會ニ於テ各一個ノ議決權ヲ有ス
第三十七條 主務大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ蠶絲業會ノ申請ニ因リ其ノ會員タル資格ヲ有スル者ニ對シ當該蠶絲業會ニ加入スベキコトヲ命ズルコトヲ得
第三十八條 全國ヲ地區トスル蠶絲業會ニシテ命令ヲ以テ定ムル者ヲ會員トスルモノハ繭及生絲ノ價格ノ安定ヲ圖ル爲命令ノ定ムル所ニ依リ繭絲價格安定資金ヲ設定スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ繭絲價格安定資金ニ繰入レタル金額ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ特別法人稅法ニ依ル剩餘金ノ計算上之ヲ益金ニ算入セザルコトヲ得
第三十九條 第二十三條及第二十八條ノ規定ハ蠶絲業會ニ之ヲ準用ス
第四十條 蠶絲協同組合又ハ蠶絲業會ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ登記ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項ハ登記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ズ
第四十一條 行政官廳ハ蠶絲協同組合又ハ蠶絲業會フ決議又ハ役員ノ行爲ガ法令、法令ニ基キテ爲ス處分若ハ定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害シタルトキハ其ノ決議ヲ取消シ、役員ノ改選ヲ命ジ、業務ヲ停止シ又ハ解散ヲ命ズルコトヲ得
第四十二條 本法ニ規定スルモノノ外蠶絲協同組合又ハ蠶絲業會ノ設立、管理、解散、淸算其ノ他蠶絲協同組合又ハ蠶絲業會ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十三條 蠶絲協同組合及蠶絲業會ニハ所得稅、法人稅及營業稅ヲ課セズ
第四十四條 行政官廳必要アリト認ムルトキハ蠶絲業者、蠶絲協同組合、蠶絲業會其ノ他命令ヲ以テ定ムル者ニ對シ其ノ業務及財產ノ狀況ニ關シ報吿ヲ爲サシメ又ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ノ檢査ヲ爲スコトヲ得
第四十五條 第二條、第四條第一項、第七條、第八條、第九條第三項、第十三條、第十五條若ハ第十六條ノ規定又ハ第十八條、第二十條若ハ第三十七條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス第四條第二項ノ規定ニ依ル許可ヲ受ケズシテ原原蠶種ノ製造ヲ行ハシメタル者亦同ジ
第四十六條 第九條第二項ノ規定ニ依ル檢査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十七條 第六條ノ規定又ハ第十條若ハ第十四條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十八條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第四十四條ノ規定ニ依ル報吿ヲ爲サズ又ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シタル者
二 第四十四條ノ規定ニ依ル檢査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
第四十九條 人又ハ法人ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ人又ハ法人ノ業務ニ關シ第四十五條、第四十七條又ハ前條第一號ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ其ノ人又ハ法人ハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第四十五條、第四十七條又ハ前條第一號ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第五十條 蠶絲協同組合又ハ蠶絲業會本法中蠶絲協同組合若ハ蠶絲業會ニ關スル規定若ハ之ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキハ理事、監事又ハ淸算人ヲ五千圓以下ノ過料ニ處ス
第五十一條 第二十三條第二項(第三十九條ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ違反シタル者ハ千圓以下ノ過料ニ處ス