蚕糸業統制法
法令番号: 法律第六十七號
公布年月日: 昭和16年3月13日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル蠶絲業統制法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十六年三月十二日
內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
商工大臣 小林一三
大藏大臣 河田烈
農林大臣 石黑忠篤
法律第六十七號
蠶絲業統制法
第一條 本法ハ蠶絲ニ對スル內外ノ需要ニ應ジ蠶絲業ノ統制ヲ行ヒ以テ其ノ安定及發達ヲ圖ルト共ニ蠶絲業ニ對スル國民經濟上ノ要求ヲ充足スルコトヲ目的トス
第二條 本法ニ於テ蠶絲トハ蠶種、繭、生絲其ノ他命令ヲ以テ定ムル蠶絲類ヲ謂フ
第三條 主務大臣ハ蠶絲委員會ニ諮問シ命令ヲ以テ定ムル蠶絲ノ生產ニ關スル計畫ヲ定ム
主務大臣ハ勅令ヲ以テ定ムル蠶絲業者ノ團體ニ對シ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ團體員(其ノ團體員ノ團體員ヲ含ム)ニ對スル生產數量又ハ品種ノ指定其ノ他前項ノ計畫ノ實施ニ關シ必要ナル統制ヲ行フベキコトヲ命ズルコトヲ得
前項ノ團體員ハ同項ノ規定ニ依リ團體ノ行フ指定其ノ他ノ統制ニ從フベシ
蠶絲委員會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四條 蠶種、繭又ハ生絲ノ生產、輸入又ハ移入ヲ業トスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ生產、輸入又ハ移入ニ係ル蠶種、繭又ハ生絲ヲ日本蠶絲統制株式會社ニ賣渡スベシ但シ命令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
命令ヲ以テ定ムル蠶絲業者ハ其ノ生產ノ用ニ供スル蠶種又ハ繭ヲ日本蠶絲統制株式會社以外ノ者ヨリ買入ルルコトヲ得ズ但シ命令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第五條 繭ノ生產數量ノ減少其ノ他ノ事由ニ因リ特ニ必要アル場合ニ於テ日本蠶絲統制株式會社ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ生絲ノ生產ヲ業トスル者ニ對シ其ノ所有スル繭ノ買取ノ申込ヲ爲スコトヲ得
前項ノ申込ヲ受ケタル者ハ其ノ申込ニ應ジ繭ノ賣渡ヲ爲スコトヲ要ス但シ命令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第六條 主務大臣繭又ハ生絲ノ價格ノ調整上必要アリト認ムルトキハ日本蠶絲統制株式會社ニ對シ其ノ行フ繭又ハ生絲ノ買入又ハ賣渡ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第七條 主務大臣ハ蠶絲委員會ニ諮問シ前三條ノ規定ニ依リ日本蠶絲統制株式會社ガ買入又ハ賣渡ヲ爲ス蠶種、繭及生絲ノ標準買入價格及標準賣渡價格ヲ定ム
前項ノ標準買入價格及標準賣渡價格ハ夫夫蠶種、繭又ハ生絲ノ生產費ヲ基準トシ蠶絲ノ需給狀況、物價其ノ他ノ經濟事情ヲ參酌シテ之ヲ定ム
第八條 日本蠶絲統制株式會社ハ前條ノ標準買入價格及標準賣渡價格ニ準據シテ蠶種、繭及生絲ノ買入價格及賣渡價格ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
主務大臣前項ノ認可ヲ爲シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ吿示ス
第九條 第四條乃至第六條ノ規定ニ依ル蠶種、繭又ハ生絲ノ買入及賣渡ハ前條ノ規定ニ依リ主務大臣ノ認可シタル價格ニ依ルニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得ズ
第十條 主務大臣ハ第八條ノ規定ニ依リ其ノ認可シタル價格ヲ除クノ外蠶絲ノ價格ノ指定ヲ爲スコトヲ得
主務大臣前項ノ指定ヲ爲シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ吿示ス
第十一條 前條ノ場合ニ於テハ蠶絲ノ買入及賣渡ハ同條ノ規定ニ依リ主務大臣ノ指定シタル價格ニ依ルニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得ズ但シ命令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第十二條 主務大臣ハ蠶絲ノ需給ノ調整又ハ輸出ノ振興上特ニ必要アリト認ムルトキハ蠶絲委員會ニ諮問シ蠶絲ノ生產、加工、輸出、輸入、移出、移入若ハ取扱ヲ業トスル者又ハ勅令ヲ以テ定ムル纖維製品ノ製造ヲ業トスル者ニ對シ勅令ノ定ムル所ニ依リ蠶絲ノ生產、配給、消費、使用、輸出、輸入、移出又ハ移入ノ統制ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第十三條 政府ハ日本蠶絲統制株式會社ノ所有スル生絲ガ命令ヲ以テ定ムル數量ヲ超ユル場合ニ於テ生絲ノ價格又ハ數量ノ調整ヲ圖ル爲必要アリト認ムルトキハ日本蠶絲統制株式會社ノ所有スル生絲ノ買入ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ政府ノ買入ルル生絲ノ買入價格ハ其ノ時ニ於ケル日本蠶絲統制株式會社ノ買入價格ニ準據シテ主務大臣之ヲ定ム
第十四條 政府ハ生絲ノ價格又ハ數量ノ調整ヲ圖ル爲必要アリト認ムルトキハ蠶絲委員會ニ諮問シ日本蠶絲統制株式會社ニ對シ其ノ所有スル生絲ノ賣渡ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ政府ノ賣渡ス生絲ノ賣渡價格ハ其ノ時ニ於ケル日本蠶絲統制株式會社ノ賣渡價格ニ準據シテ主務大臣之ヲ定ム
第十五條 前二條ノ規定ニ依ル生絲ノ買入及賣渡ニ關スル一切ノ歲入歲出ハ絲價安定施設特別會計ニ屬セシム
第十六條 生絲ハ命令ノ定ムル所ニ依リ國ノ生絲檢査所ノ檢査ヲ受ケタルモノニ非ザレバ之ヲ輸出スルコトヲ得ズ
生絲ハ前項ノ檢査又ハ命令ヲ以テ定ムル檢査ニ依ル正量及品位ニ依ルニ非ザレバ其ノ賣買取引ヲ爲スコトヲ得ズ
繭ハ命令ノ定ムル所ニ依リ道府縣ノ行フ檢定ニ依ル品位ニ依ルニ非ザレバ其ノ賣買取引ヲ爲スコトヲ得ズ
主務大臣前三項ノ規定ヲ適用スル必要ナシト認ムル場合ハ命令ヲ以テ其ノ適用ヲ除外スルコトヲ得
第十七條 主務大臣ノ指定スル生絲ノ生產ヲ業トスル者ニ非ザレバ其ノ生產ニ係ル生絲ニ付前條第一項ノ檢査ヲ受クルコトヲ得ズ
前項ノ者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ指定スル數量又ハ品種ノ生絲ニ付前條第一項ノ檢査ヲ受クルコトヲ要ス
第十八條 主務大臣必要アリト認ムルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ蠶絲業ヲ營マントスル者ニ對シ行政官廳ノ許可ヲ受クベキコトヲ命ズルコトヲ得
行政官廳ハ前項ノ許可ヲ受ケタル者ノ行爲ガ本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキハ其ノ許可ヲ取消シ又ハ其ノ業務ヲ制限シ若ハ停止スルコトヲ得
第十九條 主務大臣必要アリト認ムルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ桑園ヲ新設又ハ擴張セントスル者ニ對シ地方長官ノ許可ヲ受クベキコトヲ命ズルコトヲ得
第二十條 主務大臣必要アリト認ムルトキハ蠶種、繭又ハ生絲ノ生產又ハ取扱ヲ業トスル者其ノ他命令ヲ以テ定ムル者ニ對シ其ノ業務及財產ノ狀況ニ關シ報吿ヲ爲サシメ又ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ノ檢査ヲ爲スコトヲ得
第二十一條 主務大臣ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ本法ニ規定シタル職權ノ一部ヲ地方長官ニ委任スルコトヲ得
第二十二條 日本蠶絲統制株式會社ハ蠶絲ノ價格ノ安定又ハ需給ノ調整ヲ圖ル爲必要ナル事業ヲ營ムコトヲ目的トスル株式會社トス
第二十三條 日本蠶絲統制株式會社ノ資本ハ八千萬圓トス但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ增加スルコトヲ得
第二十四條 日本蠶絲統制株式會社ノ株式ハ記名式トシ政府、公共團體、帝國臣民又ハ帝國法人ニシテ社員、株主若ハ業務ヲ執行スル役員ノ半數以上、資本ノ半額以上若ハ議決權ノ過半數ガ外國人若ハ外國法人ニ屬セザルモノニ限リ之ヲ所有スルコトヲ得
第二十五條 政府ハ四千萬圓ヲ限リ日本蠶絲統制株式會社ニ出資スベシ
政府所有ノ株式ノ株金拂込ハ其ノ他ノ株式ノ株金拂込ト之ヲ異ニスルコトヲ得
第二十六條 日本蠶絲統制株式會社ニ非ザルモノハ日本蠶絲統制株式會社又ハ之ニ類似ノ名稱ヲ以テ其ノ商號ト爲スコトヲ得ズ
第二十七條 日本蠶絲統制株式會社ニ役員トシテ社長副社長各一人、理事三人以上及監事二人以上ヲ置ク
第二十八條 社長ハ日本蠶絲統制株式會社ヲ代表シ其ノ業務ヲ總理ス
副社長ハ社長事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ社長缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
副社長及理事ハ社長ヲ輔佐シ定款ノ定ムル所ニ依リ日本蠶絲統制株式會社ノ業務ヲ分掌ス
監事ハ日本蠶絲統制株式會社ノ業務ヲ監査ス
第二十九條 社長及副社長ハ主務大臣之ヲ命ジ其ノ任期ヲ四年トス
理事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ主務大臣ノ認可ヲ受クルモノトシ其ノ任期ヲ三年トス
監事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ其ノ任期ヲ二年トス
蠶絲業ヲ監督スル官廳ノ官吏タリシ者ハ其ノ職ヲ退キタル後五年間日本蠶絲統制株式會社ノ役員ト爲リ又ハ其ノ給與ヲ受クル事務ニ從事スルコトヲ得ズ但シ主務大臣ニ於テ特ニ必要アリト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第三十條 社長、副社長及理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ從事スルコトヲ得ズ但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第三十一條 日本蠶絲統制株式會社ハ蠶種、繭及生絲ノ買入及賣渡ヲ爲スモノトス
日本蠶絲統制株式會社ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ前項ノ事業ノ外本會社ノ目的達成上必要ナル諸事業ヲ營ムコトヲ得
第三十二條 日本蠶絲統制株式會社ハ每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ四ノ割合ニ達スル迄政府ノ所有スル株式ニ對シ利益ノ配當ヲ爲スコトヲ要セズ
第三十三條 日本蠶絲統制株式會社ノ每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ四ノ割合ニ達セザルトキハ政府ハ初營業年度及爾後五年間ヲ限リ之ニ達セシムベキ金額ヲ補給スベシ但シ其ノ額ハ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ四ノ割合ニ相當スル額及當該營業年度ニ於テ支拂ヒタル借入金ノ利息額ノ合計額ヲ超ユルコトヲ得ズ
每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ四ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過額ハ先ヅ之ヲ前項ノ規定ニ依ル補給金ノ償還ニ充ツベシ
初營業年度及爾後五年間ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ四ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ二分ノ一ヲ配當準備ノ爲別ニ積立ツベシ
第二項ノ規定ニ依リ補給金ヲ償還シ尙殘餘アリタルトキハ之ヲ前項ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ四ノ割合ヲ超過シタル當該營業年度ノ利益金ト看做ス
前二項ノ規定ニ依ル積立金ハ後營業年度ニ於ケル第一項ノ規定ニ依ル補給金ノ計算ニ付テハ之ヲ配當シ得ベキ利益金ト看做ス
第三十四條 日本蠶絲統制株式會社ハ每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ四ノ割合ヲ超過スル場合ニ於テ政府以外ノ者ノ所有スル株式ニ對シ年百分ノ四ノ割合ヲ超エ利益配當ヲ爲サントスルトキハ其ノ超過スル利益金額ハ利益配當ガ總株式ニ付拂込ミタル株金額ニ對シ均一ノ割合ニ達スル迄政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額及政府ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ一ト三トノ割合ヲ以テ之ヲ配當スベシ
第三十五條 主務大臣ハ日本蠶絲統制株式會社ノ業務ヲ監督ス
第三十六條 日本蠶絲統制株式會社借入金ヲ爲サントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第三十七條 日本蠶絲統制株式會社ノ定款ノ變更、利益金ノ處分、合併及解散ノ決議ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第三十八條 日本蠶絲統制株式會社ハ每營業年度ノ事業計畫ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
第三十九條 主務大臣ハ日本蠶絲統制株式會社ノ業務ニ關シ監督上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第四十條 主務大臣ハ日本蠶絲統制株式會社監理官ヲ置キ日本蠶絲統制株式會社ノ業務ヲ監視セシム
日本蠶絲統制株式會社監理官ハ何時ニテモ日本蠶絲統制株式會社ノ帳簿書類、金庫其ノ他ノ物件ヲ檢査スルコトヲ得
日本蠶絲統制株式會社監理官必要ト認ムルトキハ何時ニテモ日本蠶絲統制株式會社ニ命ジ業務ニ關スル諸般ノ計算及狀況ヲ報吿セシムルコトヲ得
日本蠶絲統制株式會社監理官ハ株主總會其ノ他諸般ノ會議ニ出席シ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第四十一條 主務大臣ハ日本蠶絲統制株式會社ノ決議又ハ役員ノ行爲ガ法令、法令ニ基キテ爲ス處分若ハ定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキハ其ノ決議ヲ取消シ又ハ役員ヲ解任スルコトヲ得
第四十二條 日本蠶絲統制株式會社ハ繭及生絲ノ價格ノ安定ヲ圖ル爲命令ノ定ムル所ニ依リ繭絲價格安定資金ヲ設定スベシ
前項ノ規定ニ依リ繭絲價格安定資金ニ繰入レタル金額ハ法人稅法ニ依ル所得、營業稅法ニ依ル純益及臨時利得稅法ニ依ル利益ノ計算上之ヲ損金ニ算入ス
第四十三條 第四條、第九條若ハ第十一條ノ規定又ハ第六條若ハ第十二條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十四條 第十六條第一項又ハ第二項ノ規定ニ違反シタル者ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十五條 第三條第三項、第五條第二項若ハ第十六條第三項ノ規定又ハ第十八條第一項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十六條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第十七條ノ規定ニ違反シタル者
二 第二十條ノ規定ニ依ル報吿ヲ爲サズ又ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シタル者
三 第二十條ノ規定ニ依ル檢査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
第四十七條 第十九條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十八條 日本蠶絲統制株式會社ノ役員又ハ使用人其ノ職務ニ關シ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ要求シ若ハ約束シタルトキハ二年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス因テ不正ノ行爲ヲ爲シ又ハ相當ノ行爲ヲ爲サザルトキハ五年以下ノ懲役又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ場合ニ於テ收受シタル賄賂ハ之ヲ沒收ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能ハザルトキハ其ノ價額ヲ追徵ス
第四十九條 前條第一項ニ揭グル者ニ賄賂ヲ交付シ又ハ之ヲ提供シ若ハ約束シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減輕シ又ハ免除スルコトヲ得
第五十條 人又ハ法人ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ人又ハ法人ノ業務ニ關シ第四十三條乃至第四十五條、第四十六條第一號若ハ第二號又ハ第四十七條ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ其ノ人又ハ法人ハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第五十一條 第四十三條乃至第四十五條、第四十六條第一號及第二號竝ニ第四十七條ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第五十二條 日本蠶絲統制株式會社左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ社長又ハ社長ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副社長ヲ五千圓以下ノ過料ニ處ス副社長又ハ理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副社長又ハ理事ヲ過料ニ處スルコト亦同ジ
一 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 第三十一條第一項ノ規定ニ依ラズシテ業務ヲ營ミタルトキ
三 第三十九條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタルトキ
第五十三條 日本蠶絲統制株式會社ノ社長、副社長又ハ理事第三十條ノ規定ニ違反シタルトキハ千圓以下ノ過料ニ處ス
第五十四條 第二十六條ノ規定ニ違反シタル者ハ千圓以下ノ過料ニ處ス
附 則
第五十五條 本法施行ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十六條 政府ハ設立委員ヲ命ジ日本蠶絲統制株式會社ノ設立ニ關スル事務ヲ處理セシム
第五十七條 設立委員ハ定款ヲ作成シ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第五十八條 前條ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ株式總數ヨリ政府ニ割當ツベキ株式ヲ控除シタル殘餘ノ株式ニ付株主ヲ募集スベシ
第五十九條 株式申込證ニハ定款認可ノ年月日竝ニ商法第百七十五條第二項第二號及第四號乃至第七號ニ規定スル事項ヲ記載スベシ
第六十條 設立委員株主ノ募集ヲ終リタルトキハ株式申込證ヲ主務大臣ニ提出シ其ノ檢査ヲ受クベシ
第六十一條 設立委員ハ前條ノ檢査ヲ受ケタル後遲滯ナク各株ニ付第一囘ノ拂込ヲ爲サシムベシ
前項ノ拂込アリタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク創立總會ヲ招集スベシ
第六十二條 創立總會ニ於テハ第二十九條ノ規定ニ準ジ理事及監事ノ選任ヲ行フベシ
第六十三條 創立總會終結シタルトキハ設立委員ハ其ノ事務ヲ日本蠶絲統制株式會社社長ニ引渡スベシ
第六十四條 商法第百六十七條、第百八十一條及第百八十五條ノ規定ハ日本蠶絲統制株式會社ノ設立ニハ之ヲ適用セズ
第六十五條 第二十六條ノ規定施行ノ際現ニ日本蠶絲統制株式會社又ハ之ニ類似ノ名稱ヲ以テ商號ト爲ス會社ハ同條ノ規定施行後六月以內ニ其ノ商號ヲ變更スルコトヲ要ス
第二十六條ノ規定ハ前項ノ期間內同項ニ揭グル者ニ之ヲ適用セズ
第六十六條 產繭處理統制法ハ之ヲ廢止ス
第六十七條 輸出生絲檢査法ハ之ヲ廢止ス
第六十八條 絲價安定施設法中左ノ通改正ス
第二條乃至第九條、第十三條乃至第二十八條及第三十一條ヲ削除ス
第十條中「絲價安定施設組合」ヲ「政府」ニ改ム
第十二條第一項及第三十條中「絲價安定委員會」ヲ「蠶絲委員會」ニ改ム
第十二條第二項及第三十三條乃至第四十條ヲ削ル
第六十九條 絲價安定施設組合ハ前條ノ規定施行ノ日ニ於テ解散ス
絲價安定施設組合ノ淸算ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七十條 絲價安定施設特別會計法中左ノ通改正ス
第一條中「交付、」ヲ削ル
第六條中「七千萬圓」ヲ「二億五千萬圓」ニ改ム
第八條中「交付」ヲ削ル
第七十一條 第六十六條乃至第六十八條ノ規定施行前產繭處理統制法、輸出生絲檢査法又ハ絲價安定施設法ノ罰則ヲ適用スベキ行爲アリタルトキハ第六十六條乃至第六十八條ノ規定施行後ト雖モ仍其ノ罰則ヲ適用ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル蚕糸業統制法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十六年三月十二日
内閣総理大臣 公爵 近衛文麿
商工大臣 小林一三
大蔵大臣 河田烈
農林大臣 石黒忠篤
法律第六十七号
蚕糸業統制法
第一条 本法ハ蚕糸ニ対スル内外ノ需要ニ応ジ蚕糸業ノ統制ヲ行ヒ以テ其ノ安定及発達ヲ図ルト共ニ蚕糸業ニ対スル国民経済上ノ要求ヲ充足スルコトヲ目的トス
第二条 本法ニ於テ蚕糸トハ蚕種、繭、生糸其ノ他命令ヲ以テ定ムル蚕糸類ヲ謂フ
第三条 主務大臣ハ蚕糸委員会ニ諮問シ命令ヲ以テ定ムル蚕糸ノ生産ニ関スル計画ヲ定ム
主務大臣ハ勅令ヲ以テ定ムル蚕糸業者ノ団体ニ対シ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ団体員(其ノ団体員ノ団体員ヲ含ム)ニ対スル生産数量又ハ品種ノ指定其ノ他前項ノ計画ノ実施ニ関シ必要ナル統制ヲ行フベキコトヲ命ズルコトヲ得
前項ノ団体員ハ同項ノ規定ニ依リ団体ノ行フ指定其ノ他ノ統制ニ従フベシ
蚕糸委員会ニ関スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四条 蚕種、繭又ハ生糸ノ生産、輸入又ハ移入ヲ業トスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ生産、輸入又ハ移入ニ係ル蚕種、繭又ハ生糸ヲ日本蚕糸統制株式会社ニ売渡スベシ但シ命令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
命令ヲ以テ定ムル蚕糸業者ハ其ノ生産ノ用ニ供スル蚕種又ハ繭ヲ日本蚕糸統制株式会社以外ノ者ヨリ買入ルルコトヲ得ズ但シ命令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第五条 繭ノ生産数量ノ減少其ノ他ノ事由ニ因リ特ニ必要アル場合ニ於テ日本蚕糸統制株式会社ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ生糸ノ生産ヲ業トスル者ニ対シ其ノ所有スル繭ノ買取ノ申込ヲ為スコトヲ得
前項ノ申込ヲ受ケタル者ハ其ノ申込ニ応ジ繭ノ売渡ヲ為スコトヲ要ス但シ命令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第六条 主務大臣繭又ハ生糸ノ価格ノ調整上必要アリト認ムルトキハ日本蚕糸統制株式会社ニ対シ其ノ行フ繭又ハ生糸ノ買入又ハ売渡ニ関シ必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第七条 主務大臣ハ蚕糸委員会ニ諮問シ前三条ノ規定ニ依リ日本蚕糸統制株式会社ガ買入又ハ売渡ヲ為ス蚕種、繭及生糸ノ標準買入価格及標準売渡価格ヲ定ム
前項ノ標準買入価格及標準売渡価格ハ夫夫蚕種、繭又ハ生糸ノ生産費ヲ基準トシ蚕糸ノ需給状況、物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シテ之ヲ定ム
第八条 日本蚕糸統制株式会社ハ前条ノ標準買入価格及標準売渡価格ニ準拠シテ蚕種、繭及生糸ノ買入価格及売渡価格ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
主務大臣前項ノ認可ヲ為シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ告示ス
第九条 第四条乃至第六条ノ規定ニ依ル蚕種、繭又ハ生糸ノ買入及売渡ハ前条ノ規定ニ依リ主務大臣ノ認可シタル価格ニ依ルニ非ザレバ之ヲ為スコトヲ得ズ
第十条 主務大臣ハ第八条ノ規定ニ依リ其ノ認可シタル価格ヲ除クノ外蚕糸ノ価格ノ指定ヲ為スコトヲ得
主務大臣前項ノ指定ヲ為シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ告示ス
第十一条 前条ノ場合ニ於テハ蚕糸ノ買入及売渡ハ同条ノ規定ニ依リ主務大臣ノ指定シタル価格ニ依ルニ非ザレバ之ヲ為スコトヲ得ズ但シ命令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第十二条 主務大臣ハ蚕糸ノ需給ノ調整又ハ輸出ノ振興上特ニ必要アリト認ムルトキハ蚕糸委員会ニ諮問シ蚕糸ノ生産、加工、輸出、輸入、移出、移入若ハ取扱ヲ業トスル者又ハ勅令ヲ以テ定ムル繊維製品ノ製造ヲ業トスル者ニ対シ勅令ノ定ムル所ニ依リ蚕糸ノ生産、配給、消費、使用、輸出、輸入、移出又ハ移入ノ統制ニ関シ必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第十三条 政府ハ日本蚕糸統制株式会社ノ所有スル生糸ガ命令ヲ以テ定ムル数量ヲ超ユル場合ニ於テ生糸ノ価格又ハ数量ノ調整ヲ図ル為必要アリト認ムルトキハ日本蚕糸統制株式会社ノ所有スル生糸ノ買入ヲ為スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ政府ノ買入ルル生糸ノ買入価格ハ其ノ時ニ於ケル日本蚕糸統制株式会社ノ買入価格ニ準拠シテ主務大臣之ヲ定ム
第十四条 政府ハ生糸ノ価格又ハ数量ノ調整ヲ図ル為必要アリト認ムルトキハ蚕糸委員会ニ諮問シ日本蚕糸統制株式会社ニ対シ其ノ所有スル生糸ノ売渡ヲ為スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ政府ノ売渡ス生糸ノ売渡価格ハ其ノ時ニ於ケル日本蚕糸統制株式会社ノ売渡価格ニ準拠シテ主務大臣之ヲ定ム
第十五条 前二条ノ規定ニ依ル生糸ノ買入及売渡ニ関スル一切ノ歳入歳出ハ糸価安定施設特別会計ニ属セシム
第十六条 生糸ハ命令ノ定ムル所ニ依リ国ノ生糸検査所ノ検査ヲ受ケタルモノニ非ザレバ之ヲ輸出スルコトヲ得ズ
生糸ハ前項ノ検査又ハ命令ヲ以テ定ムル検査ニ依ル正量及品位ニ依ルニ非ザレバ其ノ売買取引ヲ為スコトヲ得ズ
繭ハ命令ノ定ムル所ニ依リ道府県ノ行フ検定ニ依ル品位ニ依ルニ非ザレバ其ノ売買取引ヲ為スコトヲ得ズ
主務大臣前三項ノ規定ヲ適用スル必要ナシト認ムル場合ハ命令ヲ以テ其ノ適用ヲ除外スルコトヲ得
第十七条 主務大臣ノ指定スル生糸ノ生産ヲ業トスル者ニ非ザレバ其ノ生産ニ係ル生糸ニ付前条第一項ノ検査ヲ受クルコトヲ得ズ
前項ノ者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ指定スル数量又ハ品種ノ生糸ニ付前条第一項ノ検査ヲ受クルコトヲ要ス
第十八条 主務大臣必要アリト認ムルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ蚕糸業ヲ営マントスル者ニ対シ行政官庁ノ許可ヲ受クベキコトヲ命ズルコトヲ得
行政官庁ハ前項ノ許可ヲ受ケタル者ノ行為ガ本法若ハ本法ニ基キテ発スル命令又ハ之ニ基キテ為ス処分ニ違反シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキハ其ノ許可ヲ取消シ又ハ其ノ業務ヲ制限シ若ハ停止スルコトヲ得
第十九条 主務大臣必要アリト認ムルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ桑園ヲ新設又ハ拡張セントスル者ニ対シ地方長官ノ許可ヲ受クベキコトヲ命ズルコトヲ得
第二十条 主務大臣必要アリト認ムルトキハ蚕種、繭又ハ生糸ノ生産又ハ取扱ヲ業トスル者其ノ他命令ヲ以テ定ムル者ニ対シ其ノ業務及財産ノ状況ニ関シ報告ヲ為サシメ又ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ノ検査ヲ為スコトヲ得
第二十一条 主務大臣ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ本法ニ規定シタル職権ノ一部ヲ地方長官ニ委任スルコトヲ得
第二十二条 日本蚕糸統制株式会社ハ蚕糸ノ価格ノ安定又ハ需給ノ調整ヲ図ル為必要ナル事業ヲ営ムコトヲ目的トスル株式会社トス
第二十三条 日本蚕糸統制株式会社ノ資本ハ八千万円トス但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ増加スルコトヲ得
第二十四条 日本蚕糸統制株式会社ノ株式ハ記名式トシ政府、公共団体、帝国臣民又ハ帝国法人ニシテ社員、株主若ハ業務ヲ執行スル役員ノ半数以上、資本ノ半額以上若ハ議決権ノ過半数ガ外国人若ハ外国法人ニ属セザルモノニ限リ之ヲ所有スルコトヲ得
第二十五条 政府ハ四千万円ヲ限リ日本蚕糸統制株式会社ニ出資スベシ
政府所有ノ株式ノ株金払込ハ其ノ他ノ株式ノ株金払込ト之ヲ異ニスルコトヲ得
第二十六条 日本蚕糸統制株式会社ニ非ザルモノハ日本蚕糸統制株式会社又ハ之ニ類似ノ名称ヲ以テ其ノ商号ト為スコトヲ得ズ
第二十七条 日本蚕糸統制株式会社ニ役員トシテ社長副社長各一人、理事三人以上及監事二人以上ヲ置ク
第二十八条 社長ハ日本蚕糸統制株式会社ヲ代表シ其ノ業務ヲ総理ス
副社長ハ社長事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ社長欠員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
副社長及理事ハ社長ヲ輔佐シ定款ノ定ムル所ニ依リ日本蚕糸統制株式会社ノ業務ヲ分掌ス
監事ハ日本蚕糸統制株式会社ノ業務ヲ監査ス
第二十九条 社長及副社長ハ主務大臣之ヲ命ジ其ノ任期ヲ四年トス
理事ハ株主総会ニ於テ之ヲ選任シ主務大臣ノ認可ヲ受クルモノトシ其ノ任期ヲ三年トス
監事ハ株主総会ニ於テ之ヲ選任シ其ノ任期ヲ二年トス
蚕糸業ヲ監督スル官庁ノ官吏タリシ者ハ其ノ職ヲ退キタル後五年間日本蚕糸統制株式会社ノ役員ト為リ又ハ其ノ給与ヲ受クル事務ニ従事スルコトヲ得ズ但シ主務大臣ニ於テ特ニ必要アリト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第三十条 社長、副社長及理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ従事スルコトヲ得ズ但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第三十一条 日本蚕糸統制株式会社ハ蚕種、繭及生糸ノ買入及売渡ヲ為スモノトス
日本蚕糸統制株式会社ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ前項ノ事業ノ外本会社ノ目的達成上必要ナル諸事業ヲ営ムコトヲ得
第三十二条 日本蚕糸統制株式会社ハ毎営業年度ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ四ノ割合ニ達スル迄政府ノ所有スル株式ニ対シ利益ノ配当ヲ為スコトヲ要セズ
第三十三条 日本蚕糸統制株式会社ノ毎営業年度ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ四ノ割合ニ達セザルトキハ政府ハ初営業年度及爾後五年間ヲ限リ之ニ達セシムベキ金額ヲ補給スベシ但シ其ノ額ハ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ四ノ割合ニ相当スル額及当該営業年度ニ於テ支払ヒタル借入金ノ利息額ノ合計額ヲ超ユルコトヲ得ズ
毎営業年度ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ四ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過額ハ先ヅ之ヲ前項ノ規定ニ依ル補給金ノ償還ニ充ツベシ
初営業年度及爾後五年間ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ四ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ二分ノ一ヲ配当準備ノ為別ニ積立ツベシ
第二項ノ規定ニ依リ補給金ヲ償還シ尚残余アリタルトキハ之ヲ前項ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ四ノ割合ヲ超過シタル当該営業年度ノ利益金ト看做ス
前二項ノ規定ニ依ル積立金ハ後営業年度ニ於ケル第一項ノ規定ニ依ル補給金ノ計算ニ付テハ之ヲ配当シ得ベキ利益金ト看做ス
第三十四条 日本蚕糸統制株式会社ハ毎営業年度ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ四ノ割合ヲ超過スル場合ニ於テ政府以外ノ者ノ所有スル株式ニ対シ年百分ノ四ノ割合ヲ超エ利益配当ヲ為サントスルトキハ其ノ超過スル利益金額ハ利益配当ガ総株式ニ付払込ミタル株金額ニ対シ均一ノ割合ニ達スル迄政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額及政府ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ一ト三トノ割合ヲ以テ之ヲ配当スベシ
第三十五条 主務大臣ハ日本蚕糸統制株式会社ノ業務ヲ監督ス
第三十六条 日本蚕糸統制株式会社借入金ヲ為サントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第三十七条 日本蚕糸統制株式会社ノ定款ノ変更、利益金ノ処分、合併及解散ノ決議ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第三十八条 日本蚕糸統制株式会社ハ毎営業年度ノ事業計画ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ之ヲ変更セントスルトキ亦同ジ
第三十九条 主務大臣ハ日本蚕糸統制株式会社ノ業務ニ関シ監督上必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第四十条 主務大臣ハ日本蚕糸統制株式会社監理官ヲ置キ日本蚕糸統制株式会社ノ業務ヲ監視セシム
日本蚕糸統制株式会社監理官ハ何時ニテモ日本蚕糸統制株式会社ノ帳簿書類、金庫其ノ他ノ物件ヲ検査スルコトヲ得
日本蚕糸統制株式会社監理官必要ト認ムルトキハ何時ニテモ日本蚕糸統制株式会社ニ命ジ業務ニ関スル諸般ノ計算及状況ヲ報告セシムルコトヲ得
日本蚕糸統制株式会社監理官ハ株主総会其ノ他諸般ノ会議ニ出席シ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第四十一条 主務大臣ハ日本蚕糸統制株式会社ノ決議又ハ役員ノ行為ガ法令、法令ニ基キテ為ス処分若ハ定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキハ其ノ決議ヲ取消シ又ハ役員ヲ解任スルコトヲ得
第四十二条 日本蚕糸統制株式会社ハ繭及生糸ノ価格ノ安定ヲ図ル為命令ノ定ムル所ニ依リ繭糸価格安定資金ヲ設定スベシ
前項ノ規定ニ依リ繭糸価格安定資金ニ繰入レタル金額ハ法人税法ニ依ル所得、営業税法ニ依ル純益及臨時利得税法ニ依ル利益ノ計算上之ヲ損金ニ算入ス
第四十三条 第四条、第九条若ハ第十一条ノ規定又ハ第六条若ハ第十二条ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者ハ五千円以下ノ罰金ニ処ス
第四十四条 第十六条第一項又ハ第二項ノ規定ニ違反シタル者ハ三千円以下ノ罰金ニ処ス
第四十五条 第三条第三項、第五条第二項若ハ第十六条第三項ノ規定又ハ第十八条第一項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
第四十六条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
一 第十七条ノ規定ニ違反シタル者
二 第二十条ノ規定ニ依ル報告ヲ為サズ又ハ虚偽ノ報告ヲ為シタル者
三 第二十条ノ規定ニ依ル検査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
第四十七条 第十九条ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者ハ三百円以下ノ罰金ニ処ス
第四十八条 日本蚕糸統制株式会社ノ役員又ハ使用人其ノ職務ニ関シ賄賂ヲ収受シ又ハ之ヲ要求シ若ハ約束シタルトキハ二年以下ノ懲役又ハ三千円以下ノ罰金ニ処ス因テ不正ノ行為ヲ為シ又ハ相当ノ行為ヲ為サザルトキハ五年以下ノ懲役又ハ五千円以下ノ罰金ニ処ス
前項ノ場合ニ於テ収受シタル賄賂ハ之ヲ没収ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ没収スルコト能ハザルトキハ其ノ価額ヲ追徴ス
第四十九条 前条第一項ニ掲グル者ニ賄賂ヲ交付シ又ハ之ヲ提供シ若ハ約束シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減軽シ又ハ免除スルコトヲ得
第五十条 人又ハ法人ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ガ其ノ人又ハ法人ノ業務ニ関シ第四十三条乃至第四十五条、第四十六条第一号若ハ第二号又ハ第四十七条ノ違反行為ヲ為シタルトキハ其ノ人又ハ法人ハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第五十一条 第四十三条乃至第四十五条、第四十六条第一号及第二号並ニ第四十七条ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第五十二条 日本蚕糸統制株式会社左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ社長又ハ社長ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副社長ヲ五千円以下ノ過料ニ処ス副社長又ハ理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副社長又ハ理事ヲ過料ニ処スルコト亦同ジ
一 本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依リ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 第三十一条第一項ノ規定ニ依ラズシテ業務ヲ営ミタルトキ
三 第三十九条ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタルトキ
第五十三条 日本蚕糸統制株式会社ノ社長、副社長又ハ理事第三十条ノ規定ニ違反シタルトキハ千円以下ノ過料ニ処ス
第五十四条 第二十六条ノ規定ニ違反シタル者ハ千円以下ノ過料ニ処ス
附 則
第五十五条 本法施行ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十六条 政府ハ設立委員ヲ命ジ日本蚕糸統制株式会社ノ設立ニ関スル事務ヲ処理セシム
第五十七条 設立委員ハ定款ヲ作成シ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第五十八条 前条ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ株式総数ヨリ政府ニ割当ツベキ株式ヲ控除シタル残余ノ株式ニ付株主ヲ募集スベシ
第五十九条 株式申込証ニハ定款認可ノ年月日並ニ商法第百七十五条第二項第二号及第四号乃至第七号ニ規定スル事項ヲ記載スベシ
第六十条 設立委員株主ノ募集ヲ終リタルトキハ株式申込証ヲ主務大臣ニ提出シ其ノ検査ヲ受クベシ
第六十一条 設立委員ハ前条ノ検査ヲ受ケタル後遅滞ナク各株ニ付第一回ノ払込ヲ為サシムベシ
前項ノ払込アリタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク創立総会ヲ招集スベシ
第六十二条 創立総会ニ於テハ第二十九条ノ規定ニ準ジ理事及監事ノ選任ヲ行フベシ
第六十三条 創立総会終結シタルトキハ設立委員ハ其ノ事務ヲ日本蚕糸統制株式会社社長ニ引渡スベシ
第六十四条 商法第百六十七条、第百八十一条及第百八十五条ノ規定ハ日本蚕糸統制株式会社ノ設立ニハ之ヲ適用セズ
第六十五条 第二十六条ノ規定施行ノ際現ニ日本蚕糸統制株式会社又ハ之ニ類似ノ名称ヲ以テ商号ト為ス会社ハ同条ノ規定施行後六月以内ニ其ノ商号ヲ変更スルコトヲ要ス
第二十六条ノ規定ハ前項ノ期間内同項ニ掲グル者ニ之ヲ適用セズ
第六十六条 産繭処理統制法ハ之ヲ廃止ス
第六十七条 輸出生糸検査法ハ之ヲ廃止ス
第六十八条 糸価安定施設法中左ノ通改正ス
第二条乃至第九条、第十三条乃至第二十八条及第三十一条ヲ削除ス
第十条中「糸価安定施設組合」ヲ「政府」ニ改ム
第十二条第一項及第三十条中「糸価安定委員会」ヲ「蚕糸委員会」ニ改ム
第十二条第二項及第三十三条乃至第四十条ヲ削ル
第六十九条 糸価安定施設組合ハ前条ノ規定施行ノ日ニ於テ解散ス
糸価安定施設組合ノ清算ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七十条 糸価安定施設特別会計法中左ノ通改正ス
第一条中「交付、」ヲ削ル
第六条中「七千万円」ヲ「二億五千万円」ニ改ム
第八条中「交付」ヲ削ル
第七十一条 第六十六条乃至第六十八条ノ規定施行前産繭処理統制法、輸出生糸検査法又ハ糸価安定施設法ノ罰則ヲ適用スベキ行為アリタルトキハ第六十六条乃至第六十八条ノ規定施行後ト雖モ仍其ノ罰則ヲ適用ス