第一條 本法ニ於テ蠶絲業者ト稱スルハ養蠶、蠶種製造、生絲製造、眞綿製造、殺蛹乾繭又ハ蠶種、繭、生絲、屑物類ノ賣買、仲立若ハ保管ヲ業トスル者ヲ謂フ
第二條 本法ニ於テ蠶種製造者ト稱スルハ他人ニ讓渡スノ目的ヲ以テ蠶種ヲ製造スル者ヲ謂フ
第三條 本法ニ於テ蠶病ト稱スルハ微粒子病、軟化病、硬化病、膿病及蠁蛆病ヲ謂フ
第四條 蠶兒ノ飼育又ハ生繭ノ取扱ヲ爲ス者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ病蠶及斃蠶ノ病原微生物竝蠁蛆及其ノ蛹、蠅ヲ滅殺シ其ノ他蠶病豫防ノ爲必要ナル施設ヲ爲スヘシ
主務大臣ハ學術硏究ノ爲蠶兒ノ飼育又ハ生繭ノ取扱ヲ爲ス者ニ對シ前項ノ規定ヲ適用セサルコトヲ得
第五條 蠶種製造者タラムトスル者ハ地方長官ノ免許ヲ受クヘシ
第六條 蠶種製造者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ蠶室及蠶具ノ消毒ヲ行フヘシ
第七條 蠶種製造者ハ第十一條第二項及第十二條ノ規定ニ依ル特別蠶種ヨリ產出シタル繭ヲ用ウルニ非サレハ蠶種ヲ製造スルコトヲ得ス
第八條 蠶種製造者ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル繭又ハ蛾ヲ以テ蠶種ヲ製造スルコトヲ得ス
三 繭層ノ量繭ノ全量百ニ對シ一化性ニ在リテハ十一、二化性ニ在リテハ八、多化性ニ在リテハ七ニ達セサルモノ
四 蠶兒ノ發育不良ニシテ收繭ノ量著シク減少シタルモノ
六 免許ヲ受ケタル蠶種製造者ニ非サル者ノ飼育シタル蠶兒ヨリ產出シタル繭
第九條 蠶種製造者ハ蠶種製造用ノ蠶兒ト同一ノ飼育時期ニ於テ製絲用ノ蠶兒ヲ飼育スルコトヲ得ス
蠶種製造者ハ地方長官ノ許可ヲ受クルニ非サレハ蠶種製造用ノ蠶兒ヲ讓渡シ又ハ讓受クルコトヲ得ス
第十條 蠶種製造者ハ蠶種製造用ノ蠶兒ノ掃立ヨリ蠶種ノ製造ヲ終ル迄他ノ蠶種製造者又ハ養蠶者ト同一ノ建物又ハ蠶具ヲ共用スルコトヲ得ス
第十一條 蠶種製造者ハ收繭後ニ於テ掃殼及繭、產卵後ニ於テ越年蠶種ニ在リテハ出殼繭及卵、不越年蠶種ニ在リテハ出殼繭ニ付檢査ヲ受クヘシ但シ不越年蠶種ニ在リテモ卵ノ檢査ヲ受ケシムルコトヲ得
蠶種製造者蠶種ヲ特別蠶種ト爲サムトスルトキハ之ヲ框製トシ前項ノ檢査ノ外越年蠶種ニ在リテハ母蛾、不越年蠶種ニ在リテハ卵及母蛾ノ檢査ヲ受クヘシ
第十二條 主務大臣ハ前條ノ規定ニ拘ラス原蠶種製造所、學校、講習所、試驗場等ニ於テ製造シタル蠶種ヲ特別蠶種ト指定スルコトヲ得
第十三條 地方長官ハ第十一條ノ檢査ニ合格シタル蠶種ニハ證印ヲ押捺シ其ノ檢査ニ合格セサル蠶種ハ之ヲ燒棄スヘシ
第十四條 檢査合格ノ證印ナキ蠶種及其ノ蠶兒ハ之ヲ讓渡シ又ハ飼育スルコトヲ得ス但シ第十二條ノ規定ニ依リ指定セラレタル特別蠶種及其ノ蠶兒ヲ讓渡シ若ハ飼育シ又ハ第十七條但書ノ規定ニ依リ移入若ハ輸入シタル蠶種ノ蠶兒ヲ飼育スルコトヲ妨ケス
第十五條 地方長官ハ錯誤ニ依リ又ハ不法ニ押捺セラレタル檢査合格ノ證印ヲ發見シタルトキハ遲滯ナク之ヲ抹消スヘシ
第十六條 蠶種製造者ニ非サル者ハ蠶種ヲ製造スルコトヲ得ス
主務大臣必要ト認ムルトキハ學術硏究又ハ自家用ノ爲ニスル蠶種ノ製造及其ノ蠶兒ノ飼育ヲ許可スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ命令ノ定ムル所ニ依リ本法中蠶種製造者ニ關スル規定ノ全部又ハ一部ヲ準用スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ製造シタル蠶種及其ノ蠶兒ハ第十二條ノ規定ニ依リ指定セラレタル特別蠶種及其ノ蠶兒ヲ除クノ外之ヲ讓渡スコトヲ得ス
第十七條 本法ヲ施行セサル地又ハ外國ニ於テ製造シタル蠶種ハ之ヲ移入シ又ハ輸入スルコトヲ得ス但シ學術硏究ノ爲主務大臣ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第十八條 主務大臣必要ト認ムルトキハ原蠶種ノ製造若ハ其ノ讓渡讓受又ハ原蠶種ノ種類ヲ制限スルコトヲ得
主務大臣ハ地方特別ノ狀況ニ依リ地方長官ヲシテ前項ノ制限ヲ爲サシムルコトヲ得
第十九條 主務大臣ハ蠶種又ハ繭ノ賣買又ハ取引市場ニ關シ取締上必要ナル命令ヲ發スルコトヲ得
第二十條 蠶種ノ臺紙ニ關シ取締上必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十一條 蠶種ノ冷藏ヲ業トセムトスル者ハ地方長官ノ免許ヲ受クヘシ
第二十二條 府縣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ第十一條ノ檢査其ノ他蠶病豫防ノ爲必要ナル吏員ヲ置クヘシ
第二十三條 主務大臣及地方長官ハ必要ニ應シ種繭ノ審査及原蠶種ノ選定ヲ行ハシムル爲種繭審査會ヲ設クヘシ
種繭審査會ノ設置、組織、權限及審査選定ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十四條 第五條、第七條、第八條第六號、第十一條及第三十八條乃至第四十一條ノ規定ハ府縣ニ之ヲ適用セス
第二十五條 地方長官必要ト認ムルトキハ野蠶ノ飼育、採種又ハ野蠶生繭ノ取扱ヲ業トスル者ニ第四條第一項ノ規定ヲ準用スルコトヲ得
第二十六條 蠶病豫防事務及地方種繭審査會ニ關シ必要ナル費用ハ府縣ノ負擔トス但シ國庫ハ其ノ半額以內ヲ補助スルコトヲ得
第二十七條 府縣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ蠶種檢査ニ關シ手數料ヲ徵收スヘシ
第二十八條 蠶絲業者ヲ以テ組織スル同業組合聯合會ノ設置ニ付テハ重要物產同業組合法第三條及第四條ノ規定ヲ準用ス
第二十九條 前條ノ同業組合聯合會及一府縣以上ヲ地區トスル蠶絲業者ノ同業組合ニシテ同業組合聯合會ニ加入セサル者ハ相互ノ氣脈ヲ通シ及蠶絲類ノ海外貿易ノ發展其ノ他蠶絲業ノ利益增進ヲ圖ル爲全國ヲ地區トシテ蠶絲業同業組合中央會ヲ設置スルコトヲ得
主務大臣必要ト認ムルトキハ前項ニ揭ケタル者ノ外同業組合聯合會ニ加入セサル蠶絲業者ノ同業組合ニシテ蠶絲業同業組合中央會ニ加入スヘキ者ヲ指定スルコトヲ得
第三十條 蠶絲業同業組合中央會ノ設置ヲ發起セムトスル者ハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
前項ノ認可アリタルトキハ發起人ハ同業組合聯合會、一府縣以上ヲ地區トスル同業組合ニシテ同業組合聯合會ニ加入セサル者及前條第二項ノ規定ニ依リ主務大臣ノ指定シタル同業組合ノ三分ノ二以上ノ同意ヲ得テ創立總會ヲ開キ定款ヲ議定シ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第三十一條 蠶絲業同業組合中央會成立シタルトキハ同業組合聯合會、一府縣以上ヲ地區トスル同業組合ニシテ同業組合聯合會ニ加入セサル者及第二十九條第二項ノ規定ニ依リ主務大臣ノ指定シタル同業組合ハ之ニ加入スヘシ
第三十二條 蠶絲業同業組合中央會ノ會議ハ之ヲ組織スル同業組合聯合會及同業組合ニ於テ同業組合ノ組合員中ヨリ選擧シタル議員ヲ以テ組織スヘシ
主務大臣ハ蠶絲業同業組合中央會ノ議員定數ノ五分ノ一ヲ超エサル特別議員ヲ命スルコトヲ得
第三十三條 蠶絲業同業組合中央會議員ノ定數配當及選出方法竝役員ノ名稱選任解任及權限ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十四條 重要物產同業組合法第六條、第七條及第十一條乃至第十六條ノ規定ハ蠶絲業同業組合中央會ニ之ヲ準用ス
第三十五條 當該官吏吏員ハ蠶病豫防ニ關シ蠶種又ハ生繭ノ取扱ヲ爲ス者ノ店舖、倉庫、製造場、飼育場等ニ臨檢シ物品及帳簿其ノ他ノ書類ヲ調査シ又ハ必要ナル分量ニ限リ無償ニテ物品ヲ收去スルコトヲ得
地方長官本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反スル所爲アリト認ムルトキハ當該官吏吏員ヲシテ前項ニ揭ケタル場所ニ臨檢シ犯罪嫌疑者若ハ參考人ヲ尋問シ又ハ犯罪ノ事實ヲ證明スヘキ物件、帳簿、書類ヲ搜索シ若ハ之カ差押ヲ爲サシムルコトヲ得
臨檢、尋問、搜索又ハ差押ニ關シテハ間接國稅犯則者處分法ヲ準用ス
第三十六條 當該官吏吏員ハ自己、親族又ハ同居者ニ對シ第十一條ノ檢査ヲ爲スコトヲ得ス
第三十七條 蠶絲業者ノ所爲ニシテ本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シ又ハ公益ヲ害スルノ虞アリト認ムルトキハ地方長官ハ其ノ業務ヲ停止シ若ハ制限シ又ハ其ノ免許ヲ取消スコトヲ得
前項ノ處分ニ不服アル者ハ訴願ヲ提起スルコトヲ得其ノ違法ニ權利ヲ傷害セラレタリトスル者ハ行政訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第三十八條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十九條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 免許ヲ受ケスシテ他人ニ讓渡スノ目的ヲ以テ蠶種ヲ製造シタル者
四 第七條、第八條又ハ第十六條第三項ノ規定ニ違反シタル者
第四十條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ二百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第四十一條 第三十八條、第三十九條第一號第四號又ハ前條第二號ノ犯罪ニ係ル蠶種、蠶兒又ハ繭ハ之ヲ沒收シ旣ニ讓渡シタル場合ニ於テハ其ノ價額ヲ追徵ス
前項ノ蠶種又ハ蠶兒犯人以外ノ者ニ屬スルトキハ行政官廳ノ處分ヲ以テ之ヲ沒收スルコトヲ得
第四十二條 第三十五條ノ規定ニ依ル職務ノ執行ヲ拒ミ若ハ妨ケタル者又ハ臨檢ノ際當該官吏吏員ノ尋問ニ對シ答辯ヲ爲ササル者ハ二百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第四十三條 蠶絲業者未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ之ニ適用スヘキ罰則ハ之ヲ法定代理人ニ適用ス但シ其ノ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第四十四條 蠶絲業者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ニシテ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反スル所爲ヲ爲シタルトキハ自己ノ指揮ニ出テサルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ス但シ相當ノ注意ヲ爲シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第四十五條 明治三十三年法律第五十二號ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依ル犯罪ニ之ヲ準用ス
第四十六條 本法中府縣ニ關スル規定ハ北海道ニ於テハ北海道地方費ニ之ヲ準用ス