輸出生糸取引法
法令番号: 法律第四十三號
公布年月日: 昭和9年4月7日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル輸出生絲取引法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和九年四月六日
內閣總理大臣 子爵 齋藤實
農林大臣 後藤文夫
法律第四十三號
輸出生絲取引法
第一條 本法ニ於テ輸出生絲問屋ト稱スルハ輸出ノ目的ヲ以テスル生絲ノ賣買取引(取引所ノ賣買取引ヲ含マズ以下之ニ同ジ)ノ仲立又ハ取次ヲ業トスル者ヲ謂フ
主務大臣ノ指定スル地ニ於テ生絲ノ輸出ヲ業トスル者ニ對シ其ノ地ニ事務所ヲ設ケ生絲ノ販賣ヲ爲ス者ハ本法ノ適用ニ付テハ之ヲ輸出生絲問屋ト看做ス
第二條 主務大臣ノ指定スル地ニ於テ生絲ノ輸出ヲ業トスル者ヲ買主トスル生絲ノ賣買取引ハ本法ノ適用ニ付テハ之ヲ輸出ノ目的ヲ以テスル生絲ノ賣買取引ト看做ス
第三條 輸出生絲問屋タラントスル者ハ主務大臣ノ免許ヲ受クベシ
前項ノ免許ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第四條 輸出生絲問屋ノ免許ノ期間ハ十年以內トス
第五條 輸出生絲問屋支店其ノ他ノ事務所ヲ設置セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第六條 主務大臣ハ輸出生絲問屋ノ業務ノ狀況ニ依リ必要ト認ムルトキハ其ノ業務ヲ停止シ又ハ必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第七條 主務大臣ハ輸出生絲問屋ノ所爲ニシテ本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキハ其ノ業務ヲ停止シ又ハ其ノ認可若ハ免許ヲ取消スコトヲ得
第八條 輸出ノ目的ヲ以テスル生絲ノ賣買取引若ハ其ノ仲立ヲ爲ス者又ハ生絲ノ輸出ヲ爲ス者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ賣買取引又ハ輸出ニ關スル事項ヲ輸出生絲登錄原簿ニ登錄スルコトヲ要ス
第九條 前條ノ規定ニ依リ登錄ヲ爲シタル者又ハ其ノ利害關係人ハ命令ノ定ムル所ニ依リ輸出生絲登錄原簿ノ閱覽又ハ其ノ謄本若ハ抄本ノ交付ヲ請求スルコトヲ得
第十條 主務大臣ハ輸出ノ目的ヲ以テスル生絲ノ賣買取引若ハ其ノ仲立ヲ爲ス者又ハ生絲ノ輸出ヲ爲ス者ニ對シ生絲ノ販賣ノ統制上必要ナル事項ヲ命ジ又ハ必要ナル處分ヲ爲スコトヲ得
第十一條 主務大臣取締上必要アリト認ムルトキハ輸出生絲問屋又ハ生絲ノ輸出ヲ業トスル者ニ對シ業務ニ關スル報吿ヲ爲サシメ又ハ當該官吏ヲシテ事務所、倉庫其ノ他ノ場所ニ臨檢シ業務ノ狀況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢查セシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ當該官吏ハ其ノ身分ヲ證明スベキ證票ヲ携帶スベシ
第十二條 主務大臣ノ免許ヲ受ケズシテ輸出生絲問屋ノ業務ヲ行ヒタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第十三條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第五條ノ規定ニ違反シタル者
二 第六條ノ規定ニ依ル命令又ハ第六條若ハ第七條ノ規定ニ依ル業務停止ノ處分ニ違反シタル者
三 第十條ノ規定ニ依ル命令又ハ處分ニ違反シタル者
第十四條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第八條ノ規定ニ依ル登錄ヲ怠リ又ハ不正ノ登錄ヲ爲シタル者
二 第十一條ノ規定ニ依ル報吿ヲ怠リ又ハ臨檢檢查ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ尋問ニ對シ答辯ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シタル者
第十五條 第八條ノ規定ニ依ル登錄ノ事務ニ從事シ又ハ從事シタル者故ナク其ノ職務ニ關シ知得タル他人ノ業務上ノ祕密ヲ漏泄シタルトキハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第十六條 輸出ノ目的ヲ以テスル生絲ノ賣買取引若ハ其ノ仲立ヲ爲ス者又ハ生絲ノ輸出ヲ爲ス者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第十七條 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ輸出ノ目的ヲ以テスル生絲ノ賣買取引若ハ其ノ仲立ヲ爲ス者又ハ生絲ノ輸出ヲ爲ス者ニ適用スベキ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際命令ノ定ムル所ニ依リ引續キ六月以上輸出生絲問屋タル者又ハ其ノ承繼人ハ本法施行ノ日ヨリ五年間之ヲ本法ニ依リ免許ヲ受ケタル者ト看做ス
前項ノ規定ニ依リ免許ヲ受ケタル者ト看做サルル者本法施行ノ際現ニ支店其ノ他ノ事務所ヲ有スル場合ニ於テハ其ノ支店其ノ他ノ事務所ニ付第五條ノ規定ニ依ル認可ヲ受ケタルモノト看做ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル輸出生糸取引法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和九年四月六日
内閣総理大臣 子爵 斎藤実
農林大臣 後藤文夫
法律第四十三号
輸出生糸取引法
第一条 本法ニ於テ輸出生糸問屋ト称スルハ輸出ノ目的ヲ以テスル生糸ノ売買取引(取引所ノ売買取引ヲ含マズ以下之ニ同ジ)ノ仲立又ハ取次ヲ業トスル者ヲ謂フ
主務大臣ノ指定スル地ニ於テ生糸ノ輸出ヲ業トスル者ニ対シ其ノ地ニ事務所ヲ設ケ生糸ノ販売ヲ為ス者ハ本法ノ適用ニ付テハ之ヲ輸出生糸問屋ト看做ス
第二条 主務大臣ノ指定スル地ニ於テ生糸ノ輸出ヲ業トスル者ヲ買主トスル生糸ノ売買取引ハ本法ノ適用ニ付テハ之ヲ輸出ノ目的ヲ以テスル生糸ノ売買取引ト看做ス
第三条 輸出生糸問屋タラントスル者ハ主務大臣ノ免許ヲ受クベシ
前項ノ免許ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第四条 輸出生糸問屋ノ免許ノ期間ハ十年以内トス
第五条 輸出生糸問屋支店其ノ他ノ事務所ヲ設置セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第六条 主務大臣ハ輸出生糸問屋ノ業務ノ状況ニ依リ必要ト認ムルトキハ其ノ業務ヲ停止シ又ハ必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第七条 主務大臣ハ輸出生糸問屋ノ所為ニシテ本法若ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ違反シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキハ其ノ業務ヲ停止シ又ハ其ノ認可若ハ免許ヲ取消スコトヲ得
第八条 輸出ノ目的ヲ以テスル生糸ノ売買取引若ハ其ノ仲立ヲ為ス者又ハ生糸ノ輸出ヲ為ス者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ売買取引又ハ輸出ニ関スル事項ヲ輸出生糸登録原簿ニ登録スルコトヲ要ス
第九条 前条ノ規定ニ依リ登録ヲ為シタル者又ハ其ノ利害関係人ハ命令ノ定ムル所ニ依リ輸出生糸登録原簿ノ閲覧又ハ其ノ謄本若ハ抄本ノ交付ヲ請求スルコトヲ得
第十条 主務大臣ハ輸出ノ目的ヲ以テスル生糸ノ売買取引若ハ其ノ仲立ヲ為ス者又ハ生糸ノ輸出ヲ為ス者ニ対シ生糸ノ販売ノ統制上必要ナル事項ヲ命ジ又ハ必要ナル処分ヲ為スコトヲ得
第十一条 主務大臣取締上必要アリト認ムルトキハ輸出生糸問屋又ハ生糸ノ輸出ヲ業トスル者ニ対シ業務ニ関スル報告ヲ為サシメ又ハ当該官吏ヲシテ事務所、倉庫其ノ他ノ場所ニ臨検シ業務ノ状況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ当該官吏ハ其ノ身分ヲ証明スベキ証票ヲ携帯スベシ
第十二条 主務大臣ノ免許ヲ受ケズシテ輸出生糸問屋ノ業務ヲ行ヒタル者ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
第十三条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
一 第五条ノ規定ニ違反シタル者
二 第六条ノ規定ニ依ル命令又ハ第六条若ハ第七条ノ規定ニ依ル業務停止ノ処分ニ違反シタル者
三 第十条ノ規定ニ依ル命令又ハ処分ニ違反シタル者
第十四条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ三百円以下ノ罰金ニ処ス
一 第八条ノ規定ニ依ル登録ヲ怠リ又ハ不正ノ登録ヲ為シタル者
二 第十一条ノ規定ニ依ル報告ヲ怠リ又ハ臨検検査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ尋問ニ対シ答弁ヲ為サズ若ハ虚偽ノ陳述ヲ為シタル者
第十五条 第八条ノ規定ニ依ル登録ノ事務ニ従事シ又ハ従事シタル者故ナク其ノ職務ニ関シ知得タル他人ノ業務上ノ秘密ヲ漏泄シタルトキハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
第十六条 輸出ノ目的ヲ以テスル生糸ノ売買取引若ハ其ノ仲立ヲ為ス者又ハ生糸ノ輸出ヲ為ス者ハ其ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ガ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第十七条 本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依リ輸出ノ目的ヲ以テスル生糸ノ売買取引若ハ其ノ仲立ヲ為ス者又ハ生糸ノ輸出ヲ為ス者ニ適用スベキ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際命令ノ定ムル所ニ依リ引続キ六月以上輸出生糸問屋タル者又ハ其ノ承継人ハ本法施行ノ日ヨリ五年間之ヲ本法ニ依リ免許ヲ受ケタル者ト看做ス
前項ノ規定ニ依リ免許ヲ受ケタル者ト看做サルル者本法施行ノ際現ニ支店其ノ他ノ事務所ヲ有スル場合ニ於テハ其ノ支店其ノ他ノ事務所ニ付第五条ノ規定ニ依ル認可ヲ受ケタルモノト看做ス