朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル特別法人稅法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十五年三月二十九日
內閣總理大臣 米內光政
大藏大臣 櫻內幸雄
拓務大臣 小磯國昭
法律第二十六號
特別法人稅法
第一條 本法施行地ニ主タル事務所ヲ有スル特別ノ法人ハ本法ニ依リ特別法人稅ヲ納ムル義務アルモノトス
第二條 本法ニ於テ特別ノ法人トハ左ニ揭グル法人ヲ謂フ
一 產業組合及產業組合聯合會
二 商業組合及商業組合聯合會(所屬ノ組合員、組合又ハ聯合會ヲシテ出資ヲ爲サシメザルモノヲ除ク)
三 工業組合及工業組合聯合會(所屬ノ組合員、組合又ハ聯合會ヲシテ出資ヲ爲サシメザルモノヲ除ク)
四 貿易組合及貿易組合聯合會(所屬ノ組合員、組合又ハ聯合會ヲシテ出資ヲ爲サシメザルモノヲ除ク)
五 漁業協同組合及漁業組合聯合會
六 蠶絲共同施設組合
七 產業組合中央金庫
八 商工組合中央金庫
第三條 特別法人稅ハ特別ノ法人ノ剩餘金ニ付之ヲ賦課ス
第四條 特別ノ法人ノ剩餘金ハ各事業年度ノ總益金ヨリ總損金ヲ控除シタル金額ニ依ル
特別ノ法人ガ取扱ヒタル物ノ數量、價額其ノ他事業ノ分量ニ對シテ配當スベキ金額ハ前項ノ剩餘金ノ計算上之ヲ損金ニ算入ス
特別ノ法人ガ各事業年度ニ於テ納付シタル又ハ納付スベキ特別法人稅ハ第一項ノ剩餘金ノ計算上之ヲ損金ニ算入セズ
特別ノ法人ノ各事業年度開始前三年以內ニ開始シタル事業年度ニ於テ生ジタル損金ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノハ第一項ノ剩餘金ノ計算上之ヲ損金ニ算入ス
前三項ニ規定スルモノノ外第一項ノ剩餘金ノ計算ニ關シテハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條 前條ノ規定ニ依リ特別ノ法人ノ各事業年度ノ剩餘金ヲ計算スル場合ニ於テ特別ノ法人ガ國債ヲ所有スルトキハ國債ノ利子額中其ノ國債ヲ所有シタル期間分ノ利子額ノ百分ノ七十ニ相當スル金額ヲ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ剩餘金ヨリ控除ス
第六條 特別ノ法人ノ前條ノ規定ニ依ル控除前ノ剩餘金額ガ其ノ拂込濟出資金額ニ對シ年百分ノ三ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超エザルトキハ特別法人稅ヲ課セズ
前項ノ拂込濟出資金額ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ計算ス
第七條 特別ノ法人ガ事業年度中ニ解散シ又ハ合併ニ因リテ消滅シタル場合ニ於テハ其ノ事業年度ノ始ヨリ解散又ハ合併ニ至ル迄ノ期間ヲ以テ一事業年度ト看做ス
第八條 合併後存續スル特別ノ法人又ハ合併ニ因リテ設立シタル特別ノ法人ハ合併ニ因リテ消滅シタル特別ノ法人ノ剩餘金ニ付特別法人稅ヲ納ムル義務アルモノトス
分割ニ因リテ設立シタル特別ノ法人ハ分割ニ因リテ消滅シタル特別ノ法人ノ剩餘金又ハ分割後存續スル特別ノ法人ノ分割前ノ剩餘金ニ付分割ニ因リテ設立シタル他ノ特別ノ法人又ハ分割後存續スル特別ノ法人ト連帶シテ特別法人稅ヲ納ムル義務アルモノトス
前二項ノ規定ハ合併若ハ分割後存續スル法人又ハ合併若ハ分割ニ因リテ設立シタル法人ガ特別ノ法人ニ非ザル場合ニ付之ヲ準用ス
第九條 特別法人稅ノ稅率ハ百分ノ六トス
第十條 納稅義務アル特別ノ法人ハ命令ノ定ムル所ニ依リ財產目錄、貸借對照表、損益計算書竝ニ第四條及第六條第二項ノ規定ニ依リ計算シタル剩餘金額及拂込濟出資金額ノ明細書ヲ添附シ其ノ剩餘金ヲ政府ニ申吿スベシ
前項ノ規定ハ特別ノ法人ニ特別法人稅ヲ課スベキ剩餘金ナキ場合ニ付之ヲ準用ス
第十一條 特別ノ法人ノ剩餘金額ハ前條ノ申吿ニ依リ、申吿ナキトキ又ハ申吿ヲ不相當ト認ムルトキハ政府ノ調査ニ依リ政府ニ於テ之ヲ決定ス
第十二條 稅務署長又ハ其ノ代理官ハ調査上必要アルトキハ特別ノ法人ニ質問ヲ爲シ又ハ其ノ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢査スルコトヲ得
第十三條 第十一條ノ規定ニ依リ特別ノ法人ノ剩餘金額ヲ決定シタルトキハ政府ハ之ヲ特別ノ法人ニ通知スベシ
第十四條 特別ノ法人前條ノ規定ニ依リ政府ノ通知シタル剩餘金額ニ對シ異議アルトキハ通知ヲ受ケタル日ヨリ二十日以內ニ不服ノ事由ヲ具シ政府ニ審査ノ請求ヲ爲スコトヲ得
前項ノ請求アリタル場合ト雖モ政府ハ稅金ノ徵收ヲ猶豫セズ
第十五條 前條第一項ノ請求アリタルトキハ所得稅法ノ所得審査委員會ノ決議ニ依リ政府ニ於テ之ヲ決定ス
所得稅法第三十八條及第六十八條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第十六條 前條第一項ノ決定ニ對シ不服アル特別ノ法人ハ訴願ヲ爲シ又ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第十七條 特別法人稅ハ事業年度每ニ之ヲ徵收ス
第十八條 特別ノ法人解散シタル場合ニ於テ特別法人稅ヲ納付セズシテ殘餘財產ヲ分配シタルトキハ其ノ稅金ニ付淸算人連帶シテ納稅ノ義務アルモノトス
第十九條 詐僞其ノ他不正ノ行爲ニ依リ特別法人稅ヲ逋脫シタル者ハ其ノ逋脫シタル稅金ノ三倍ニ相當スル罰金又ハ科料ニ處シ直ニ其ノ稅金ヲ徵收ス但シ自首シ又ハ稅務署長ニ申出デタル者ハ其ノ罪ヲ問ハズ
第二十條 第十二條ノ規定ニ依ル帳簿書類其ノ他物件ノ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ虛僞ノ記載ヲ爲シタル帳簿書類ヲ呈示シタル者ハ千圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第二十一條 特別ノ法人ノ剩餘金ノ調査又ハ審査ノ事務ニ從事シ又ハ從事シタル者其ノ調査又ハ審査ニ關シ知得タル祕密ヲ正當ノ事由ナクシテ漏洩シタルトキハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十二條 第十九條ノ罪ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八條第三項但書、第三十九條第二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及第六十六條ノ規定ヲ適用セズ
附 則
本法ハ昭和十五年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
本法ハ昭和十五年四月一日以後終了スル事業年度分ヨリ之ヲ適用ス
本法ニ依ル特別法人稅ノ賦課ハ支那事變終了ノ年ノ翌年十二月三十一日迄ニ終了スル事業年度分限リトス
明治四十年法律第二十一號第一條第一項ニ左ノ一號ヲ加フ
二十 特別法人稅
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル特別法人税法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十五年三月二十九日
内閣総理大臣 米内光政
大蔵大臣 桜内幸雄
拓務大臣 小磯国昭
法律第二十六号
特別法人税法
第一条 本法施行地ニ主タル事務所ヲ有スル特別ノ法人ハ本法ニ依リ特別法人税ヲ納ムル義務アルモノトス
第二条 本法ニ於テ特別ノ法人トハ左ニ掲グル法人ヲ謂フ
一 産業組合及産業組合連合会
二 商業組合及商業組合連合会(所属ノ組合員、組合又ハ連合会ヲシテ出資ヲ為サシメザルモノヲ除ク)
三 工業組合及工業組合連合会(所属ノ組合員、組合又ハ連合会ヲシテ出資ヲ為サシメザルモノヲ除ク)
四 貿易組合及貿易組合連合会(所属ノ組合員、組合又ハ連合会ヲシテ出資ヲ為サシメザルモノヲ除ク)
五 漁業協同組合及漁業組合連合会
六 蚕糸共同施設組合
七 産業組合中央金庫
八 商工組合中央金庫
第三条 特別法人税ハ特別ノ法人ノ剰余金ニ付之ヲ賦課ス
第四条 特別ノ法人ノ剰余金ハ各事業年度ノ総益金ヨリ総損金ヲ控除シタル金額ニ依ル
特別ノ法人ガ取扱ヒタル物ノ数量、価額其ノ他事業ノ分量ニ対シテ配当スベキ金額ハ前項ノ剰余金ノ計算上之ヲ損金ニ算入ス
特別ノ法人ガ各事業年度ニ於テ納付シタル又ハ納付スベキ特別法人税ハ第一項ノ剰余金ノ計算上之ヲ損金ニ算入セズ
特別ノ法人ノ各事業年度開始前三年以内ニ開始シタル事業年度ニ於テ生ジタル損金ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノハ第一項ノ剰余金ノ計算上之ヲ損金ニ算入ス
前三項ニ規定スルモノノ外第一項ノ剰余金ノ計算ニ関シテハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五条 前条ノ規定ニ依リ特別ノ法人ノ各事業年度ノ剰余金ヲ計算スル場合ニ於テ特別ノ法人ガ国債ヲ所有スルトキハ国債ノ利子額中其ノ国債ヲ所有シタル期間分ノ利子額ノ百分ノ七十ニ相当スル金額ヲ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ剰余金ヨリ控除ス
第六条 特別ノ法人ノ前条ノ規定ニ依ル控除前ノ剰余金額ガ其ノ払込済出資金額ニ対シ年百分ノ三ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超エザルトキハ特別法人税ヲ課セズ
前項ノ払込済出資金額ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ計算ス
第七条 特別ノ法人ガ事業年度中ニ解散シ又ハ合併ニ因リテ消滅シタル場合ニ於テハ其ノ事業年度ノ始ヨリ解散又ハ合併ニ至ル迄ノ期間ヲ以テ一事業年度ト看做ス
第八条 合併後存続スル特別ノ法人又ハ合併ニ因リテ設立シタル特別ノ法人ハ合併ニ因リテ消滅シタル特別ノ法人ノ剰余金ニ付特別法人税ヲ納ムル義務アルモノトス
分割ニ因リテ設立シタル特別ノ法人ハ分割ニ因リテ消滅シタル特別ノ法人ノ剰余金又ハ分割後存続スル特別ノ法人ノ分割前ノ剰余金ニ付分割ニ因リテ設立シタル他ノ特別ノ法人又ハ分割後存続スル特別ノ法人ト連帯シテ特別法人税ヲ納ムル義務アルモノトス
前二項ノ規定ハ合併若ハ分割後存続スル法人又ハ合併若ハ分割ニ因リテ設立シタル法人ガ特別ノ法人ニ非ザル場合ニ付之ヲ準用ス
第九条 特別法人税ノ税率ハ百分ノ六トス
第十条 納税義務アル特別ノ法人ハ命令ノ定ムル所ニ依リ財産目録、貸借対照表、損益計算書並ニ第四条及第六条第二項ノ規定ニ依リ計算シタル剰余金額及払込済出資金額ノ明細書ヲ添附シ其ノ剰余金ヲ政府ニ申告スベシ
前項ノ規定ハ特別ノ法人ニ特別法人税ヲ課スベキ剰余金ナキ場合ニ付之ヲ準用ス
第十一条 特別ノ法人ノ剰余金額ハ前条ノ申告ニ依リ、申告ナキトキ又ハ申告ヲ不相当ト認ムルトキハ政府ノ調査ニ依リ政府ニ於テ之ヲ決定ス
第十二条 税務署長又ハ其ノ代理官ハ調査上必要アルトキハ特別ノ法人ニ質問ヲ為シ又ハ其ノ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査スルコトヲ得
第十三条 第十一条ノ規定ニ依リ特別ノ法人ノ剰余金額ヲ決定シタルトキハ政府ハ之ヲ特別ノ法人ニ通知スベシ
第十四条 特別ノ法人前条ノ規定ニ依リ政府ノ通知シタル剰余金額ニ対シ異議アルトキハ通知ヲ受ケタル日ヨリ二十日以内ニ不服ノ事由ヲ具シ政府ニ審査ノ請求ヲ為スコトヲ得
前項ノ請求アリタル場合ト雖モ政府ハ税金ノ徴収ヲ猶予セズ
第十五条 前条第一項ノ請求アリタルトキハ所得税法ノ所得審査委員会ノ決議ニ依リ政府ニ於テ之ヲ決定ス
所得税法第三十八条及第六十八条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第十六条 前条第一項ノ決定ニ対シ不服アル特別ノ法人ハ訴願ヲ為シ又ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第十七条 特別法人税ハ事業年度毎ニ之ヲ徴収ス
第十八条 特別ノ法人解散シタル場合ニ於テ特別法人税ヲ納付セズシテ残余財産ヲ分配シタルトキハ其ノ税金ニ付清算人連帯シテ納税ノ義務アルモノトス
第十九条 詐偽其ノ他不正ノ行為ニ依リ特別法人税ヲ逋脱シタル者ハ其ノ逋脱シタル税金ノ三倍ニ相当スル罰金又ハ科料ニ処シ直ニ其ノ税金ヲ徴収ス但シ自首シ又ハ税務署長ニ申出デタル者ハ其ノ罪ヲ問ハズ
第二十条 第十二条ノ規定ニ依ル帳簿書類其ノ他物件ノ検査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ虚偽ノ記載ヲ為シタル帳簿書類ヲ呈示シタル者ハ千円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
第二十一条 特別ノ法人ノ剰余金ノ調査又ハ審査ノ事務ニ従事シ又ハ従事シタル者其ノ調査又ハ審査ニ関シ知得タル秘密ヲ正当ノ事由ナクシテ漏洩シタルトキハ千円以下ノ罰金ニ処ス
第二十二条 第十九条ノ罪ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八条第三項但書、第三十九条第二項、第四十条、第四十一条、第四十八条第二項、第六十三条及第六十六条ノ規定ヲ適用セズ
附 則
本法ハ昭和十五年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
本法ハ昭和十五年四月一日以後終了スル事業年度分ヨリ之ヲ適用ス
本法ニ依ル特別法人税ノ賦課ハ支那事変終了ノ年ノ翌年十二月三十一日迄ニ終了スル事業年度分限リトス
明治四十年法律第二十一号第一条第一項ニ左ノ一号ヲ加フ
二十 特別法人税