朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル砂糖消費稅法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十四年三月三十日
內閣總理大臣 侯爵 伊藤博文
大藏大臣 子爵 渡邊國武
法律第十三號
砂糖消費稅法
第一條 內地消費ノ目的ヲ以テ製造場、稅關又ハ保稅倉庫ヨリ引取ラルル砂糖、糖蜜及糖水ニハ本法ニ依リ消費稅ヲ課ス
第二條 製品ノ原料トシテ砂糖、糖蜜又ハ糖水ヲ使用スルハ其ノ消費ト看做ス
第三條 消費稅ノ割合左ノ如シ
第一種 砂糖色相和蘭標本第八號未滿ノ砂糖及糖蜜 百斤ニ付金一圓
第二種 砂糖色相和蘭標本第八號以上第十五號未滿ノ砂糖 百斤ニ付金一圓六十錢
第三種 砂糖色相和蘭標本第十五號以上第二十號以下ノ砂糖及糖水 百斤ニ付金二圓二十錢
第四種 砂糖色相和蘭標本第二十號ヲ超ユル砂糖及氷砂糖 百斤ニ付金二圓八十錢
第四條 前條ノ消費稅ハ製造場、稅關又ハ保稅倉庫ヨリ砂糖、糖蜜又ハ糖水ヲ引取ルトキ之ヲ徵收ス但シ政府ニ於テ相當ト認ムル擔保ヲ提供スルトキハ六箇月以內消費稅ノ徵收ヲ猶豫スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ政府ハ其ノ砂糖、糖蜜又ハ糖水ノ見本ヲ採取スルコトヲ得
前項ニ依リ擔保ヲ提供シタル者期限內ニ稅金ヲ納付セサルトキハ擔保ヲ以テ之ニ充ツ但シ金錢以外ノ擔保ハ之ヲ公賣ニ付シ消費稅及公賣ノ費用ニ充テ殘金アルトキハ之ヲ擔保提供者ニ還付ス
擔保物ノ種類ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條 內地消費ノ目的ニ非スシテ製造場、稅關又ハ保稅倉庫ヨリ引取ラルル砂糖、糖蜜又ハ糖水ニ付テハ消費稅ニ相當スル擔保ヲ提供スルコトヲ要ス擔保物ノ種類ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
前項ニ依リ擔保ヲ供シタル砂糖、糖蜜又ハ糖水ニシテ引取後六箇月內ニ外國ニ輸出セラレタルノ證明ナキモノハ內地消費ニ供セラレタルモノト看做シ擔保ヲ以テ消費稅ニ充ツ但シ金錢以外ノ擔保ハ之ヲ公賣ニ付シ消費稅及公賣ノ費用ニ充テ殘金アルトキハ之ヲ擔保提供者ニ還付ス
第六條 消費稅納付前又ハ擔保提供前ニ於テハ製造場、稅關又ハ保稅倉庫ヨリ砂糖、糖蜜又ハ糖水ヲ引取ルコトヲ得ス
第七條 砂糖、糖蜜又ハ糖水ヲ製造スル者ハ消費稅納付前又ハ擔保提供前ニ於テ砂糖、糖蜜又ハ糖水ヲ他ニ引渡シ又ハ政府ノ承認ヲ得スシテ之ヲ製造場外ニ移出スルコトヲ得ス
第八條 砂糖、糖蜜又ハ糖水ヲ製造セムトスル者ハ政府ニ申吿スヘシ其ノ製造ヲ廢止セムトスルトキ亦同シ
第九條 砂糖、糖蜜又ハ糖水ヲ製造スル者又ハ之ヲ販賣スル者ハ帳簿ヲ備ヘ砂糖、糖蜜又ハ糖水ノ製造、出入ヲ詳細明瞭ニ記載スヘシ
第十條 收稅官吏ハ砂糖、糖蜜又ハ糖水ヲ製造スル者又ハ之ヲ販賣スル者ノ所持ニ係ル砂糖、糖蜜、糖水、其ノ製造、出入ニ關スル帳簿書類及其ノ製造又ハ販賣上必要ナル建築物、器械、材料其ノ他ノ物件ヲ檢査シ又ハ監督上必要ノ處分ヲ爲スコトヲ得
第十一條 政府ノ承認ヲ得消費稅ヲ課セラレタル砂糖又ハ糖蜜ヲ原料トシテ砂糖、糖水又ハ酒精ヲ製造シタル者ハ原料トシタル砂糖又ハ糖蜜ノ消費稅ニ相當スル金額ノ下付ヲ政府ニ請求スルコトヲ得
製造後一年ヲ經過シタルトキハ前項ノ請求ヲ爲スコトヲ得ス
第十二條 第六條又ハ第七條ノ禁令ヲ犯シタル者ハ消費稅五倍ニ相當スル罰金ニ處ス但シ五十圓ヲ下ルコトヲ得ス
第十三條 政府ニ申吿セスシテ砂糖、糖蜜又ハ糖水ヲ製造シタル者ハ二十圓以上二百圓以下ノ罰金ニ處ス
第十四條 砂糖、糖蜜又ハ糖水ヲ製造スル者又ハ之ヲ販賣スル者、砂糖、糖蜜又ハ糖水ノ製造、出入ニ關シ帳簿ノ記載又ハ事實ノ申吿ヲ詐リ若ハ怠リタルトキハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス
第十五條 收稅官吏其ノ職務ヲ執行スルニ當リ之ニ對シテ其ノ執行ヲ拒ミ又ハ之ヲ忌避シ又ハ之ニ支障ヲ加ヘタル者ハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス其ノ刑法ニ正條アルモノハ刑法ニ依ル
第十六條 本法ヲ犯シタル者ニハ刑法ノ不論罪及減輕、再犯加重、數罪俱發ノ例ヲ用井ス但シ刑法第七十五條第一項ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
第十七條 砂糖、糖蜜又ハ糖水ヲ製造スル者又ハ之ヲ販賣スル者ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ニシテ其ノ業務ニ關シ本法ヲ犯シタルトキハ製造者又ハ販賣者ヲ處罰ス
附 則
第十八條 本法ハ明治三十四年十月一日ヨリ之ヲ施行ス
第十九條 本法施行前ヨリ引續キ砂糖、糖蜜又ハ糖水ヲ製造スル者ハ本法施行後一箇月以內ニ其ノ旨ヲ政府ニ申吿スヘシ
前項ニ違反シタル者ニハ第十三條ヲ適用ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル砂糖消費税法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十四年三月三十日
内閣総理大臣 侯爵 伊藤博文
大蔵大臣 子爵 渡辺国武
法律第十三号
砂糖消費税法
第一条 内地消費ノ目的ヲ以テ製造場、税関又ハ保税倉庫ヨリ引取ラルル砂糖、糖蜜及糖水ニハ本法ニ依リ消費税ヲ課ス
第二条 製品ノ原料トシテ砂糖、糖蜜又ハ糖水ヲ使用スルハ其ノ消費ト看做ス
第三条 消費税ノ割合左ノ如シ
第一種 砂糖色相和蘭標本第八号未満ノ砂糖及糖蜜 百斤ニ付金一円
第二種 砂糖色相和蘭標本第八号以上第十五号未満ノ砂糖 百斤ニ付金一円六十銭
第三種 砂糖色相和蘭標本第十五号以上第二十号以下ノ砂糖及糖水 百斤ニ付金二円二十銭
第四種 砂糖色相和蘭標本第二十号ヲ超ユル砂糖及氷砂糖 百斤ニ付金二円八十銭
第四条 前条ノ消費税ハ製造場、税関又ハ保税倉庫ヨリ砂糖、糖蜜又ハ糖水ヲ引取ルトキ之ヲ徴収ス但シ政府ニ於テ相当ト認ムル担保ヲ提供スルトキハ六箇月以内消費税ノ徴収ヲ猶予スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ政府ハ其ノ砂糖、糖蜜又ハ糖水ノ見本ヲ採取スルコトヲ得
前項ニ依リ担保ヲ提供シタル者期限内ニ税金ヲ納付セサルトキハ担保ヲ以テ之ニ充ツ但シ金銭以外ノ担保ハ之ヲ公売ニ付シ消費税及公売ノ費用ニ充テ残金アルトキハ之ヲ担保提供者ニ還付ス
担保物ノ種類ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五条 内地消費ノ目的ニ非スシテ製造場、税関又ハ保税倉庫ヨリ引取ラルル砂糖、糖蜜又ハ糖水ニ付テハ消費税ニ相当スル担保ヲ提供スルコトヲ要ス担保物ノ種類ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
前項ニ依リ担保ヲ供シタル砂糖、糖蜜又ハ糖水ニシテ引取後六箇月内ニ外国ニ輸出セラレタルノ証明ナキモノハ内地消費ニ供セラレタルモノト看做シ担保ヲ以テ消費税ニ充ツ但シ金銭以外ノ担保ハ之ヲ公売ニ付シ消費税及公売ノ費用ニ充テ残金アルトキハ之ヲ担保提供者ニ還付ス
第六条 消費税納付前又ハ担保提供前ニ於テハ製造場、税関又ハ保税倉庫ヨリ砂糖、糖蜜又ハ糖水ヲ引取ルコトヲ得ス
第七条 砂糖、糖蜜又ハ糖水ヲ製造スル者ハ消費税納付前又ハ担保提供前ニ於テ砂糖、糖蜜又ハ糖水ヲ他ニ引渡シ又ハ政府ノ承認ヲ得スシテ之ヲ製造場外ニ移出スルコトヲ得ス
第八条 砂糖、糖蜜又ハ糖水ヲ製造セムトスル者ハ政府ニ申告スヘシ其ノ製造ヲ廃止セムトスルトキ亦同シ
第九条 砂糖、糖蜜又ハ糖水ヲ製造スル者又ハ之ヲ販売スル者ハ帳簿ヲ備ヘ砂糖、糖蜜又ハ糖水ノ製造、出入ヲ詳細明瞭ニ記載スヘシ
第十条 収税官吏ハ砂糖、糖蜜又ハ糖水ヲ製造スル者又ハ之ヲ販売スル者ノ所持ニ係ル砂糖、糖蜜、糖水、其ノ製造、出入ニ関スル帳簿書類及其ノ製造又ハ販売上必要ナル建築物、器械、材料其ノ他ノ物件ヲ検査シ又ハ監督上必要ノ処分ヲ為スコトヲ得
第十一条 政府ノ承認ヲ得消費税ヲ課セラレタル砂糖又ハ糖蜜ヲ原料トシテ砂糖、糖水又ハ酒精ヲ製造シタル者ハ原料トシタル砂糖又ハ糖蜜ノ消費税ニ相当スル金額ノ下付ヲ政府ニ請求スルコトヲ得
製造後一年ヲ経過シタルトキハ前項ノ請求ヲ為スコトヲ得ス
第十二条 第六条又ハ第七条ノ禁令ヲ犯シタル者ハ消費税五倍ニ相当スル罰金ニ処ス但シ五十円ヲ下ルコトヲ得ス
第十三条 政府ニ申告セスシテ砂糖、糖蜜又ハ糖水ヲ製造シタル者ハ二十円以上二百円以下ノ罰金ニ処ス
第十四条 砂糖、糖蜜又ハ糖水ヲ製造スル者又ハ之ヲ販売スル者、砂糖、糖蜜又ハ糖水ノ製造、出入ニ関シ帳簿ノ記載又ハ事実ノ申告ヲ詐リ若ハ怠リタルトキハ三円以上三十円以下ノ罰金ニ処ス
第十五条 収税官吏其ノ職務ヲ執行スルニ当リ之ニ対シテ其ノ執行ヲ拒ミ又ハ之ヲ忌避シ又ハ之ニ支障ヲ加ヘタル者ハ三円以上三十円以下ノ罰金ニ処ス其ノ刑法ニ正条アルモノハ刑法ニ依ル
第十六条 本法ヲ犯シタル者ニハ刑法ノ不論罪及減軽、再犯加重、数罪俱発ノ例ヲ用井ス但シ刑法第七十五条第一項ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
第十七条 砂糖、糖蜜又ハ糖水ヲ製造スル者又ハ之ヲ販売スル者ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ニシテ其ノ業務ニ関シ本法ヲ犯シタルトキハ製造者又ハ販売者ヲ処罰ス
附 則
第十八条 本法ハ明治三十四年十月一日ヨリ之ヲ施行ス
第十九条 本法施行前ヨリ引続キ砂糖、糖蜜又ハ糖水ヲ製造スル者ハ本法施行後一箇月以内ニ其ノ旨ヲ政府ニ申告スヘシ
前項ニ違反シタル者ニハ第十三条ヲ適用ス