朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル府縣制改正法律ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年三月十五日
內閣總理大臣　侯爵　山縣有朋
內務大臣　侯爵　西鄕從道
法律第六十四號
府縣制
第一章
總則
第二章
府縣會
第一款
組織及選擧
第二款
職務權限及處務規程
第三章
府縣參事會
第一款
組織及選擧
第二款
職務權限及處務規程
第四章
府縣行政
第一款
府縣吏員ノ組織及任免
第二款
府縣官吏府縣吏員ノ職務權限及處務規程
第三款
給料及給與
第五章
府縣ノ財務
第一款
財產營造物及府縣稅
第二款
歲入出豫算及決算
第六章
府縣行政ノ監督
第七章
附則
府縣制
第一章　總則
第一條　府縣ハ從來ノ區域ニ依リ郡市及島嶼ヲ包括ス
第二條　府縣ハ法人トシ官ノ監督ヲ承ケ法律命令ノ範圍內ニ於テ其ノ公共事務竝從來法律命令又ハ慣例ニ依リ及將來法律勅令ニ依リ府縣ニ屬スル事務ヲ處理ス
第三條　府縣ノ廢置分合又ハ境界變更ヲ要スルトキハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
府縣ノ境界ニ涉リテ郡市町村境界ノ變更アリタルトキハ府縣ノ境界モ亦自ラ變更ス所屬未定地ヲ市町村ノ區域ニ編入シタルトキ亦同シ
本條ノ處分ニ付財產處分ヲ要スルトキハ內務大臣ハ關係アル府縣郡市參事會及町村會ノ意見ヲ徵シテ之ヲ定ム但シ特ニ法律ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
第二章　府縣會
第一款　組織及選擧
第四條　府縣會議員ハ各選擧區ニ於テ之ヲ選擧ス
選擧區ハ郡市ノ區域ニ依ル但シ東京市京都市大阪市其ノ他勅令ヲ以テ指定シタル市ニ於テハ區ノ區域ニ依ル
第五條　府縣會議員ハ府縣ノ人口七十萬未滿ハ議員三十人ヲ以テ定員トシ七十萬以上百萬未滿ハ五萬ヲ加フル每ニ一人ヲ增シ百萬以上ハ七萬ヲ加フル每ニ一人ヲ增ス
各選擧區ニ於テ選擧スヘキ府縣會議員ノ數ハ府縣會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ得テ府縣知事之ヲ定ム
前項議員ノ配當方法ニ關スル必要ナル事項ハ內務大臣之ヲ定ム
第六條　府縣內ノ市町村公民ニシテ市町村會議員ノ選擧權ヲ有シ且其ノ府縣內ニ於テ一年以來直接國稅年額三圓以上ヲ納ムル者ハ府縣會議員ノ選擧權ヲ有ス
府縣內ノ市町村公民ニシテ市町村會議員ノ選擧權ヲ有シ且其ノ府縣內ニ於テ一年以來直接國稅年額十圓以上ヲ納ムル者ハ府縣會議員ノ被選擧權ヲ有ス
家督相續ニ依リ財產ヲ取得シタル者ハ其ノ財產ニ付被相續人ノ爲シタル納稅ヲ以テ其ノ者ノ納稅シタルモノト看做ス
府縣會議員ハ住所ヲ移シタル爲市町村ノ公民權ヲ失フコトアルモ其ノ住所同府縣內ニ在ルトキハ之カ爲其ノ職ヲ失フコトナシ
府縣會議員ノ選擧權及被選擧權ノ要件中其ノ年限ニ關スルモノハ府縣郡市町村ノ廢置分合若ハ境界變更ノ爲中斷セラルルコトナシ
左ニ揭クル者ハ府縣會議員ノ被選擧權ヲ有セス其ノ之ヲ罷メタル後一箇月ヲ經過セサル者亦同シ
一　其ノ府縣ノ官吏及有給吏員
二　檢事警察官吏及收稅官吏
三　神官僧侶其ノ他諸宗敎師
四　小學校敎員
前項ノ外ノ官吏ニシテ當選シ之ニ應セントスルトキハ所屬長官ノ許可ヲ受クヘシ
選擧事務ニ關係アル官吏吏員ハ其ノ關係區域內ニ於テ被選擧權ヲ有セス其ノ之ヲ罷メタル後一箇月ヲ經過セサル者亦同シ
府縣ノ爲請負ヲ爲ス者又ハ府縣ノ爲請負ヲ爲ス法人ノ役員ハ其ノ府縣ノ府縣會議員ノ被選擧權ヲ有セス
府縣會議員ハ衆議院議員ト相兼ヌルコトヲ得ス
第七條　府縣會議員ハ名譽職トス
府縣會議員ノ任期ハ四年トス
議員ノ定數ニ異動ヲ生シタル爲又ハ議員ノ配當ヲ更正シタル爲解任ヲ要スル者ハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
第八條　府縣會議員中闕員アルトキ及府縣會議員ノ定數ニ異動ヲ生シタル爲又ハ議員ノ配當ヲ更正シタル爲議員ノ選擧ヲ要スルトキハ三箇月以內ニ之ヲ行フヘシ
補闕議員ハ其ノ前任者ノ殘任期間在任ス
補闕議員ヲ除ク外本條第一項ニ依リ選擧セラレタル議員ハ次ノ改選期マテ在任ス
第九條　町村長ハ每年九月十五日ヲ期トシ其ノ日ノ現在ニ依リ其ノ町村內ノ選擧人名簿二本ヲ調製シ其ノ一本ヲ十月一日マテニ郡長ニ送付スヘシ
郡長ハ町村長ヨリ送付シタル名簿ヲ合シ每年十月十五日マテニ其ノ選擧區ノ選擧人名簿ヲ調製スヘシ
第十條　市長ハ每年九月十五日ヲ期トシ其ノ日ノ現在ニ依リ十月十五日マテニ其ノ選擧區ノ選擧人名簿ヲ調製スヘシ
第十一條　選擧人其ノ住所ヲ有スル市町村外ニ於テ直接國稅ヲ納ムルトキハ九月十五日マテニ當該行政廳ノ證明ヲ得テ其ノ住所地ノ市町村長ニ屆出ツヘシ其ノ期限內ニ屆出ヲ爲ササルトキハ其ノ納稅ハ選擧人名簿ニ記載セラルヘキ要件ニ算入セス
第十二條　郡市長ハ十月二十日ヨリ十五日間其ノ郡市役所ニ於テ選擧人名簿ヲ關係者ノ縱覽ニ供スヘシ若關係者ニ於テ異議アルトキ又ハ正當ノ事故ニ依リ前條ノ手續ヲ爲スコト能ハスシテ名簿ニ登錄セラレサルトキハ縱覽期限內ニ之ヲ郡市長ニ申立ルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ郡市長ハ其ノ申立ヲ受ケタル日ヨリ十日以內ニ之ヲ決定スヘシ
前項郡市長ノ決定ニ不服アル者ハ府縣參事會ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ關シテハ府縣知事郡市長ヨリモ亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
選擧人名簿ハ十二月十五日ヲ以テ確定期限トシ確定名簿ハ次年ノ十二月十四日マテ之ヲ据置クヘシ
府縣參事會ノ裁決確定シ又ハ訴訟ノ判決ニ依リ名簿ノ修正ヲ要スルトキハ郡市長ニ於テ直ニ之ヲ修正スヘシ
本條ニ依リ郡市長ニ於テ名簿ヲ修正シタルトキハ其ノ要領ヲ吿示シ郡長ハ本人住所地ノ町村長ニ通知シ町村長ハ之ヲ吿示スヘシ
確定名簿ニ登錄セラレサル者ハ選擧ニ參與スルコトヲ得ス但シ選擧人名簿ニ記載セラルヘキ確定裁決書若ハ判決書ヲ所持シ選擧ノ當日投票所ニ到ル者ハ此ノ限ニ在ラス
確定名簿ニ登錄セラレタル者選擧權ヲ有セサルトキハ選擧ニ參與スルコトヲ得ス但シ名簿ハ之ヲ修正スル限ニ在ラス
異議ノ決定若ハ訴願ノ裁決確定シ又ハ訴訟ノ判決アリタルニ依リ名簿無效トナリタルトキハ九月十五日ノ現在ニ依リ更ニ名簿ヲ調製スヘシ但シ名簿調製ノ期日マテニ選擧權ヲ失ヒタル者ハ名簿ニ登錄スル限ニ在ラス
前項名簿調製ノ期日縱覽修正及確定ニ關スル期限等ハ府縣知事ノ定ムル所ニ依ル
第十三條　府縣會議員ノ選擧ハ府縣知事ノ吿示ニ依リ之ヲ行フ其ノ吿示ニハ選擧ヲ行フヘキ選擧區投票ヲ行フヘキ日時及選擧スヘキ議員ノ員數ヲ記載シ選擧ノ日ヨリ少クトモ二十日前ニ之ヲ發スヘシ
第十四條　府縣會議員ノ選擧ハ郡市長之ヲ管理ス
第十五條　投票所ハ市役所町村役場又ハ市町村長ノ指定シタル場所ニ於テ之ヲ設ケ市町村長其ノ事務ヲ管理ス
前項投票所ハ市町村長ニ於テ選擧ノ日ヨリ少クトモ五日前ニ之ヲ吿示スヘシ
特別ノ事情アル地ニ於テハ命令ヲ以テ二箇以上ノ投票所ヲ設ケ其ノ投票ニ關シ特別ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第十六條　市町村長ハ臨時ニ其ノ管理スル投票區域內ニ於ケル選擧人中ヨリ投票立會人二名乃至四名ヲ選任スヘシ
投票立會人ハ名譽職トス
第十七條　選擧人ノ外投票所ニ入ルコトヲ得ス但シ投票所ノ事務ニ從事スル者投票所ヲ監視スル職權ヲ有スル者ハ此ノ限ニ在ラス
選擧人ハ投票所ニ於テ協議又ハ勸誘ヲ爲スコトヲ得ス
第十八條　選擧ハ投票ニ依リ之ヲ行フ
投票ハ一人一票ニ限ル
選擧人ハ選擧ノ當日自ラ投票所ニ到リ選擧人名簿ノ對照ヲ經投票簿ニ捺印シ投票スヘシ
選擧人ハ投票所ニ於テ投票用紙ニ自ラ被選擧人一名ノ氏名ヲ記載シテ投函スヘシ
投票用紙ニハ選擧人ノ氏名ヲ記載スルコトヲ得ス
自ラ被選擧人ノ氏名ヲ書スルコト能ハサル者ハ投票ヲ爲スコトヲ得ス
投票用紙ハ府縣知事ノ定ムル所ニ依リ一定ノ式ヲ用ウヘシ
第十九條　投票ノ拒否ハ投票立會人之ヲ議決ス可否同數ナルトキハ市町村長之ヲ決スヘシ
第二十條　市町村長ハ投票錄ヲ製シ投票ニ關スル顚末ヲ記載シ投票立會人ト共ニ之ニ署名スヘシ
第二十一條　投票ヲ終リタルトキハ町村長ハ其ノ指定シタル投票立會人ト共ニ直ニ投票函及投票錄ヲ選擧會場ニ送致スヘシ
第二十二條　島嶼其ノ他交通不便ノ地ニ對シテハ府縣知事ハ適宜ニ其ノ投票期日ヲ定メ選擧會ノ期日マテニ其ノ投票函ヲ送致セシムルコトヲ得
第二十三條　選擧會ハ郡役所市役所又ハ郡市長ノ指定シタル場所ニ於テ之ヲ開クヘシ
前項選擧會ノ場所ハ郡市長豫メ之ヲ吿示スヘシ
第二十四條　郡長ハ各投票所ヨリ參會シタル投票立會人ノ中ヨリ抽籤ヲ以テ選擧立會人二名乃至六名ヲ定ムヘシ
市長ハ選擧人中ヨリ選擧立會人二名乃至六名ヲ選任スヘシ
選擧立會人ハ名譽職トス
第二十五條　郡市長ハ選擧長ト爲リ郡ニ於テハ投票函ノ總テ到達シタル翌日市ニ於テハ投票ノ翌日選擧立會人立會ノ上投票函ヲ開キ投票ノ總數ト投票人ノ總數トヲ計算スヘシ若投票ト投票人トノ總數ニ差異ヲ生シタルトキハ其ノ由ヲ選擧錄ニ記載スヘシ但シ場合ニ依リ選擧會ハ郡ニ於テハ投票函到達ノ日市ニ於テハ投票ノ日之ヲ開クコトヲ得
前項ノ計算終リタルトキハ選擧長ハ選擧立會人ト共ニ投票ヲ㸃檢スヘシ
第二十六條　選擧人ハ其ノ選擧會ニ參觀ヲ求ムルコトヲ得
第二十七條　左ノ投票ハ之ヲ無效トス
一　成規ノ用紙ヲ用井サルモノ
二　一投票中二人以上ノ被選擧人ヲ記載シタルモノ
三　被選擧人ノ何人タルヲ確認シ難キモノ
四　被選擧權ナキ者ノ氏名ヲ記載シタルモノ
五　被選擧人ノ氏名ノ外他事ヲ記入シタルモノ但シ爵位職業身分住所又ハ敬稱ノ類ヲ記入シタルモノハ此ノ限ニ在ラス
第二十八條　投票ノ效力ハ選擧立會人之ヲ議決ス可否同數ナルトキハ選擧長之ヲ決スヘシ
第二十九條　府縣會議員ノ選擧ハ有效投票ノ最多數ヲ得タル者ヲ以テ當選トス投票ノ數相同キトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ選擧長抽籤シテ其ノ當選者ヲ定ム
同時ニ補闕員數名ヲ選擧スルトキハ投票ノ數多キ者、投票ノ數相同キトキハ年長者ヲ以テ殘任期ノ長キ前任者ノ補闕ト爲シ同年月ナルトキハ選擧長抽籤シテ之ヲ定ム
第三十條　選擧長ハ選擧錄ヲ製シテ選擧ノ顚末ヲ記載シ選擧ヲ終リタル後之ヲ朗讀シ選擧立會人二名以上ト共ニ之ニ署名シ投票選擧人名簿其ノ他關係書類ト共ニ選擧ノ效力確定スルニ至ルマテ之ヲ保存スヘシ
第三十一條　選擧ヲ終リタルトキハ選擧長ハ直ニ當選者ニ當選ノ旨ヲ吿知シ同時ニ選擧錄ノ寫ヲ添ヘ當選者ノ住所氏名ヲ府縣知事ニ報吿スヘシ
當選者當選ノ吿知ヲ受ケタルトキハ十日以內ニ其ノ當選ヲ承諾スルヤ否ヲ府縣知事ニ申立ツヘシ
一人ニシテ數選擧區ノ選擧ニ當リタルトキハ最終ニ當選ノ吿知ヲ受ケタル日ヨリ十日以內ニ何レノ選擧ニ應スヘキカヲ府縣知事ニ申立ツヘシ
定期改選增員選擧補闕選擧等ヲ同時ニ行ヒタル場合ニ於テ一人ニシテ其ノ數選擧ニ當リタルトキハ前項ノ例ニ依ル
前三項ノ申立ヲ其ノ期限內ニ爲ササルトキハ當選ヲ辭シタルモノト看做ス
第六條第七項ノ官吏ニシテ當選シタル者ニ關シテハ本條ニ定ムル期間ヲ二十日以內トス
第三十二條　府縣會議員ノ當選ヲ辭シタル者アルトキハ更ニ選擧ヲ行フヘシ
二人以上投票同數ニシテ年長ニ由テ當選シタル者其ノ當選ヲ辭シタルトキハ年少ニ由テ當選セサリシ者ヲ以テ當選トス但シ年少ニ由テ當選セサリシ者二人以上アルトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ選擧長抽籤シテ其ノ當選者ヲ定ム
二人以上投票同數ニシテ抽籤ニ依テ當選シタル者其ノ當選ヲ辭シタルトキハ抽籤ノ爲當選セサリシ者ヲ以テ當選トス但シ抽籤ノ爲當選セサリシ者二人以上アルトキハ選擧長抽籤シテ其ノ當選者ヲ定ム
第三十三條　當選者其ノ當選ヲ承諾シタルトキハ府縣知事ハ直ニ當選證書ヲ付與シ及其ノ住所氏名ヲ吿示スヘシ
第三十四條　選擧人選擧若ハ當選ノ效力ニ關シ異議アルトキハ選擧ノ日ヨリ十四日以內ニ之ヲ府縣知事ニ申立ツルコトヲ得
前項ノ異議ハ之ヲ府縣參事會ノ決定ニ付スヘシ
府縣知事ニ於テ選擧若ハ當選ノ效力ニ關シ異議アルトキハ第一項申立ノ有無ニ拘ラス第三十一條第一項ノ報吿ヲ受ケタル日ヨリ三十日以內ニ府縣參事會ノ決定ニ付スルコトヲ得
本條府縣參事會ノ決定ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ決定ニ關シテハ府縣知事郡市長ヨリモ亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第三十五條　選擧ノ規定ニ違背スルコトアルトキハ其ノ選擧ヲ無效トス但シ選擧ノ結果ニ異動ヲ生スルノ虞ナキモノハ此ノ限ニ在ラス
當選者ニシテ被選擧權ヲ有セサルトキハ其ノ當選ヲ無效トス
第三十六條　選擧若ハ當選無效ト確定シタルトキハ更ニ選擧ヲ行フヘシ但シ得票數ノ査定ニ錯誤アリタル爲又ハ選擧ノ際被選擧權ヲ有セサル爲當選無效ト確定シタルトキハ第二十九條及第三十一條ノ例ニ依ル
第三十七條　府縣會議員ニシテ被選擧權ヲ有セサル者ハ其ノ職ヲ失フ其ノ被選擧權ニ關スル異議ハ府縣參事會之ヲ決定ス
府縣會ニ於テ其ノ議員中被選擧權ヲ有セサル者アリト認ムルトキハ之ヲ府縣知事ニ通知スヘシ但シ議員ハ自己ノ資格ニ關スル會議ニ於テ辯明スルコトヲ得ルモ其ノ議決ニ加ハルコトヲ得ス
府縣知事ハ前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ之ヲ府縣參事會ノ決定ニ付スヘシ府縣知事ニ於テ被選擧權ヲ有セサル者アリト認ムルトキ亦同シ
本條府縣參事會ノ決定ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ決定ニ關シテハ府縣知事ヨリモ亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
府縣會議員ハ其ノ被選擧權ヲ有セストスル決定確定シ又ハ判決アルマテハ會議ニ列席シ及發言スルノ權ヲ失ハス
第三十八條　本款ニ規定スル異議ノ決定及訴願ノ裁決ハ其ノ決定書若ハ裁決書ヲ交付シタルトキ直ニ之ヲ吿示スヘシ
第三十九條　第四條第二項但書ノ市ニ於テハ市長トアルハ區長又市トアルハ區、市役所トアルハ區役所ト看做シ本款ノ規定ヲ準用ス
町村組合ニシテ町村ノ事務ノ全部ヲ共同處理スルモノハ之ヲ一町村ト看做シ本款ノ規定ヲ準用ス
第四十條　府縣會議員ノ選擧ニ付テハ衆議院議員選擧ニ關スル罰則ヲ準用ス
第二款　職務權限及處務規程
第四十一條　府縣會ノ議決スヘキ事件左ノ如シ
一　歲入出豫算ヲ定ムル事
二　決算報吿ニ關スル事
三　法律命令ニ定ムルモノヲ除ク外使用料手數料府縣稅及夫役現品ノ賦課徵收ニ關スル事
四　不動產ノ處分竝買受讓受ニ關スル事
五　積立金穀等ノ設置及處分ニ關スル事
六　歲入出豫算ヲ以テ定ムルモノヲ除ク外新ニ義務ノ負擔ヲ爲シ及權利ノ抛棄ヲ爲ス事
七　財產及營造物ノ管理方法ヲ定ムル事但シ法律命令中別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
八　其ノ他法律命令ニ依リ府縣會ノ權限ニ屬スル事項
第四十二條　府縣會ハ其ノ權限ニ屬スル事項ヲ府縣參事會ニ委任スルコトヲ得
第四十三條　府縣會ハ法律命令ニ依リ選擧ヲ行フヘシ
第四十四條　府縣會ハ府縣ノ公益ニ關スル事件ニ付意見書ヲ府縣知事若ハ內務大臣ニ呈出スルコトヲ得
第四十五條　府縣會ハ官廳ノ諮問アルトキハ意見ヲ答申スヘシ
府縣會ノ意見ヲ徵シテ處分ヲ爲スヘキ場合ニ於テ府縣會招集ニ應セス若ハ成立セス又ハ意見ヲ呈出セサルトキハ當該官廳ハ其ノ意見ヲ俟タスシテ直ニ處分ヲ爲スコトヲ得
第四十六條　府縣會議員ハ選擧人ノ指示若ハ委囑ヲ受クヘカラス
第四十七條　府縣會ハ議員中ヨリ議長副議長各一名ヲ選擧スヘシ
議長副議長ハ議員ノ定期改選每ニ之ヲ改選スヘシ
第四十八條　議長故障アルトキハ副議長之ニ代リ議長副議長共ニ故障アルトキハ臨時ニ議員中ヨリ假議長ヲ選擧スヘシ
第四十九條　府縣知事及其ノ委任若ハ囑託ヲ受ケタル官吏吏員ハ會議ニ列席シテ議事ニ參與スルコトヲ得但シ議決ニ加ハルコトヲ得ス
前項ノ列席者ニ於テ發言ヲ求ムルトキハ議長ハ直ニ之ヲ許スヘシ但シ之カ爲議員ノ演說ヲ中止セシムルコトヲ得ス
第五十條　府縣會ハ通常會及臨時會トス
通常會ハ每年一囘之ヲ開ク其ノ會期ハ三十日以內トス臨時會ハ必要アル場合ニ於テ其ノ事件ニ限リ之ヲ開ク其ノ會期ハ七日以內トス
臨時會ニ付スヘキ事件ハ豫メ之ヲ吿示スヘシ但シ其ノ開會中急施ヲ要スル事件アルトキハ府縣知事ハ直ニ之ヲ其ノ會議ニ付スルコトヲ得
第五十一條　府縣會ハ府縣知事之ヲ招集ス
招集ハ開會ノ日ヨリ少クトモ十四日前ニ吿示スヘシ但シ急施ヲ要スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
府縣會ハ府縣知事之ヲ開閉ス
第五十二條　府縣會ハ議員定員ノ半數以上出席スルニ非サレハ會議ヲ開クコトヲ得ス
第五十三條　府縣會ノ議事ハ過半數ヲ以テ決ス可否同數ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第五十四條　議長及議員ハ自己若ハ父母祖父母妻子孫兄弟姊妹ノ一身上ニ關スル事件ニ付テハ府縣會ノ同意ヲ得ルニ非サレハ其ノ議事ニ參與スルコトヲ得ス
第五十五條　法律命令ノ規定ニ依リ府縣會ニ於テ選擧ヲ行フトキハ一名每ニ匿名投票ヲ爲シ有效投票ノ過半數ヲ得タル者ヲ以テ當選トス若過半數ヲ得タル者ナキトキハ最多數ヲ得タル者二名ヲ取リ之ニ就キ決選投票ヲ爲サシム其ノ二名ヲ取ルニ當リ同數者アルトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ議長抽籤シテ之ヲ定ム此ノ決選投票ニ於テハ最多數ヲ得タル者ヲ以テ當選トス若同數ナルトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ議長抽籤シテ之ヲ定ム其ノ他ハ第十八條第二十七條及第二十八條ノ規定ヲ準用ス
前項ノ選擧ニ付テハ府縣會ハ其ノ議決ヲ以テ指名推選若ハ連名投票ノ法ヲ用ウルコトヲ得其ノ連名投票ノ法ヲ用ウル場合ニ於テハ前項ノ例ニ依ル
第五十六條　府縣會ノ會議ハ公開ス但シ左ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
一　府縣知事ヨリ傍聽禁止ノ要求ヲ受ケタルトキ
二　議長若ハ議員三名以上ノ發議ニ依リ傍聽禁止ヲ可決シタルトキ
前項議長若ハ議員ノ發議ハ討論ヲ須ヒス其ノ可否ヲ決スヘシ
第五十七條　議長ハ會議ノ事ヲ總理シ會議ノ順序ヲ定メ其ノ日ノ會議ヲ開閉シ議場ノ秩序ヲ保持ス
第五十八條　府縣會議員ハ會議中無禮ノ語ヲ用井又ハ他人ノ身上ニ涉リ言論スルコトヲ得ス
第五十九條　會議中此ノ法律若ハ會議規則ニ違ヒ其ノ他議場ノ秩序ヲ紊ル議員アルトキハ議長ハ之ヲ制止シ若ハ發言ヲ取消サシメ命ニ從ハサルトキハ議長ハ當日ノ會議ヲ終ルマテ發言ヲ禁止シ又ハ議場ノ外ニ退去セシメ必要ナル場合ニ於テハ警察官吏ノ處分ヲ求ムルコトヲ得
議場騷擾ニシテ整理シ難キトキハ議長ハ當日ノ會議ヲ中止シ又ハ之ヲ閉ツルコトヲ得
第六十條　傍聽人公然可否ヲ表シ又ハ喧騷ニ涉リ其ノ他會議ノ妨害ヲ爲ストキハ議長ハ之ヲ制止シ命ニ從ハサルトキハ之ヲ退場セシメ必要ナル場合ニ於テハ警察官吏ノ處分ヲ求ムルコトヲ得
傍聽席騷擾ナルトキハ議長ハ總テノ傍聽人ヲ退場セシメ必要ナル場合ニ於テハ警察官吏ノ處分ヲ求ムルコトヲ得
第六十一條　議場ノ秩序ヲ紊リ又ハ會議ノ妨害ヲ爲ス者アルトキハ議員若ハ第四十九條ノ列席者ハ議長ノ注意ヲ喚起スルコトヲ得
第六十二條　府縣會ニ書記ヲ置キ議長ニ隸屬シテ庶務ヲ處理セシム
書記ハ議長之ヲ任免ス
第六十三條　議長ハ書記ヲシテ會議錄ヲ製シ會議ノ顚末竝出席議員ノ氏名ヲ記載セシムヘシ會議錄ハ議長及議員二名以上之ニ署名スルヲ要ス其ノ議員ハ府縣會ニ於テ之ヲ定ムヘシ
議長ハ會議錄ヲ添ヘ會議ノ結果ヲ府縣知事ニ報吿スヘシ
第六十四條　府縣會ハ會議規則及傍聽人取締規則ヲ設ケ內務大臣ノ許可ヲ受クヘシ
會議規則ニハ此ノ法律竝會議規則ニ違背シタル議員ニ對シ府縣會ノ議決ニ依リ五日以內出席ヲ停止スル規定ヲ設クルコトヲ得
第三章　府縣參事會
第一款　組織及選擧
第六十五條　府縣ニ府縣參事會ヲ置キ府縣知事府縣高等官二名及名譽職參事會員ヲ以テ之ヲ組織ス
府ノ名譽職參事會員ハ八名トシ縣ノ名譽職參事會員ハ六名トス
府縣高等官ニシテ府縣參事會員タルヘキ者ハ內務大臣之ヲ命ス
第六十六條　名譽職參事會員ハ府縣會ニ於テ議員中ヨリ之ヲ選擧スヘシ
府縣會ハ名譽職參事會員ト同數ノ補充員ヲ選擧スヘシ
名譽職參事會員中闕員アルトキハ府縣知事ハ補充員ノ中ニ就キ之ヲ補闕ス其ノ順序ハ選擧同時ナルトキハ投票數ニ依リ投票同數ナルトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ抽籤ニ依リ選擧ノ時ヲ異ニスルトキハ選擧ノ前後ニ依ル仍闕員ヲ生シタル場合ニ於テハ臨時補闕選擧ヲ行フヘシ
補闕員ハ前任者ノ殘任期間在任ス
名譽職參事會員及其ノ補充員ハ府縣會議員ノ定期改選每ニ之ヲ改選スヘシ但シ名譽職參事會員ハ後任者就任ノ日マテ在任ス
第六十七條　府縣參事會ハ府縣知事ヲ以テ議長トス府縣知事故障アルトキハ高等官參事會員議長ノ職務ヲ代理ス
第二款　職務權限及處務規程
第六十八條　府縣參事會ノ職務權限左ノ如シ
一　府縣會ノ權限ニ屬スル事件ニシテ其ノ委任ヲ受ケタルモノヲ議決スル事
二　府縣會ノ權限ニ屬スル事件ニシテ臨時急施ヲ要シ府縣知事ニ於テ之ヲ招集スルノ暇ナシト認ムルトキ府縣會ニ代テ議決スル事
三　府縣知事ヨリ府縣會ニ提出スル議案ニ付府縣知事ニ對シ意見ヲ述フル事
四　府縣會ノ議決シタル範圍內ニ於テ財產及營造物ノ管理ニ關シ重要ナル事項ヲ議決スル事
五　府縣費ヲ以テ支辨スヘキ工事ノ執行ニ關スル規定ヲ議決スル事但シ法律命令中別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
六　府縣ニ係ル訴願訴訟及和解ニ關スル事項ヲ議決スル事
七　其ノ他法律命令ニ依リ府縣參事會ノ權限ニ屬スル事項
第六十九條　府縣參事會ハ名譽職參事會員中ヨリ委員ヲ選擧シ之ヲシテ府縣ニ係ル出納ヲ檢査セシムルコトヲ得
前項ノ檢査ニハ府縣知事又ハ其ノ指命シタル官吏若ハ吏員之ニ立會フコトヲ要ス
第七十條　第四十四條第四十五條第四十九條及第六十二條ノ規定ハ府縣參事會ニ之ヲ準用ス
第七十一條　府縣參事會ハ府縣知事之ヲ招集ス若名譽職參事會員半數以上ノ請求アル場合ニ於テ相當ノ理由アリト認ムルトキハ府縣知事ハ府縣參事會ヲ招集スヘシ
府縣參事會ノ會期ハ府縣知事之ヲ定ム
第七十二條　府縣參事會ノ會議ハ傍聽ヲ許サス
第七十三條　府縣參事會ハ議長又ハ其ノ代理者及名譽職參事會員定員ノ半數以上出席スルニ非サレハ會議ヲ開クコトヲ得ス
第六十八條第二ノ議決ヲ爲ストキハ府縣知事高等官參事會員ハ其ノ議決ニ加ハルコトヲ得ス
府縣參事會ノ議事ハ過半數ヲ以テ決ス可否同數ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
會議ノ顚末ハ之ヲ會議錄ニ記載シ議長及參事會員二名以上之ニ署名スヘシ
第七十四條　第五十四條ノ規定ハ府縣參事會員ニ之ヲ準用ス但シ同條ノ規定ニ依リ會員ノ數減少シテ前條第一項ノ數ヲ得サルトキハ府縣知事ハ補充員ニシテ其ノ事件ニ關係ナキ者ヲ以テ第六十六條第三項ノ順序ニ依リ臨時之ニ充テ仍其ノ數ヲ得サルトキハ府縣會議員ニシテ其ノ事件ニ關係ナキ者ヲ臨時ニ指名シ其ノ闕員ヲ補充スヘシ
議長及其ノ代理者共ニ除席セラレタルトキハ年長ノ會員ヲ以テ假議長ト爲スヘシ
第四章　府縣行政
第一款　府縣吏員ノ組織及任免
第七十五條　府縣ニ有給ノ府縣吏員ヲ置クコトヲ得
前項ノ府縣吏員ハ府縣知事之ヲ任免ス
第七十六條　府縣ニ府縣出納吏ヲ置キ官吏吏員ノ中ニ就キ府縣知事之ヲ命ス
第七十七條　府縣ハ府縣會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ得テ臨時若ハ常設ノ委員ヲ置クコトヲ得
委員ハ名譽職トス
委員ノ組織選任任期等ニ關スル事項ハ府縣會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ得テ府縣知事之ヲ定ム
第二款　府縣官吏府縣吏員ノ職務權限及處務規程
第七十八條　府縣知事ハ府縣ヲ統轄シ府縣ヲ代表ス
府縣知事ノ擔任スル事務ノ槪目左ノ如シ
一　府縣費ヲ以テ支辨スヘキ事件ヲ執行スル事
二　府縣會及府縣參事會ノ議決ヲ經ヘキ事件ニ付其ノ議案ヲ發スル事
三　財產及營造物ヲ管理スル事但シ特ニ之カ管理者アルトキハ其ノ事務ヲ監督スル事
四　收入支出ヲ命令シ及會計ヲ監督スル事
五　證書及公文書類ヲ保管スル事
六　法律命令又ハ府縣會若ハ府縣參事會ノ議決ニ依リ使用料手數料府縣稅及夫役現品ヲ賦課徵收スル事
七　其ノ他法律命令ニ依リ府縣知事ノ職權ニ屬スル事項
第七十九條　府縣知事ハ議案ヲ府縣會ニ提出スル前之ヲ府縣參事會ノ審査ニ付シ若府縣參事會ト其ノ意見ヲ異ニスルトキハ府縣參事會ノ意見ヲ議案ニ添ヘ府縣會ニ提出スヘシ
第八十條　府縣知事ハ府縣ノ行政ニ關シ其ノ職權ニ屬スル事務ノ一部ヲ郡島ノ官吏吏員又ハ市町村吏員ニ補助執行セシメ若ハ委任スルコトヲ得
府縣知事ハ府縣ノ行政ニ關シ其ノ職權ニ屬スル事務ノ一部ヲ府縣吏員ニ臨時代理セシムルコトヲ得
第八十一條　府縣知事ハ府縣吏員ヲ監督シ懲戒處分ヲ行フコトヲ得其ノ懲戒處分ハ譴責二十五圓以下ノ過怠金及解職トス
府縣知事ハ府縣吏員ノ懲戒處分ヲ行ハントスル前其ノ吏員ノ停職ヲ命シ竝給料ヲ支給セサルコトヲ得
懲戒ニ依リ解職セラレタル者ハ二年間其ノ府縣ノ公職ニ選擧セラレ若ハ任命セラルルコトヲ得ス
第八十二條　府縣會若ハ府縣參事會ノ議決若ハ選擧其ノ權限ヲ越エ又ハ法律命令ニ背クト認ムルトキハ府縣知事ハ自己ノ意見ニ依リ又ハ內務大臣ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シテ直ニ其ノ議決若ハ選擧ヲ取消シ又ハ議決ニ付テハ再議ニ付シタル上仍其ノ議決ヲ改メサルトキハ之ヲ取消スヘシ
前項取消處分ニ不服アル府縣會若ハ府縣參事會ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
府縣會若ハ府縣參事會ノ議決公益ニ害アリト認ムルトキハ府縣知事ハ自己ノ意見ニ依リ又ハ內務大臣ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シテ之ヲ再議ニ付シ仍其ノ議決ヲ改メサルトキハ內務大臣ニ具狀シテ指揮ヲ請フヘシ
第八十三條　府縣會若ハ府縣參事會ニ於テ府縣ノ收支ニ關シ不適當ノ議決ヲ爲シタルトキハ府縣知事ハ自己ノ意見ニ依リ又ハ內務大臣ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シテ之ヲ再議ニ付シ仍其ノ議決ヲ改メサルトキハ內務大臣ニ具狀シテ指揮ヲ請フヘシ但シ場合ニ依リ再議ニ付セスシテ直ニ內務大臣ノ指揮ヲ請フコトヲ得
第八十四條　府縣知事ハ期日ヲ定メテ府縣會ノ停會ヲ命スルコトヲ得
第八十五條　府縣會若ハ府縣參事會招集ニ應セス又ハ成立セサルトキハ府縣知事ハ內務大臣ニ具狀シテ指揮ヲ請ヒ其ノ議決スヘキ事件ヲ處分スルコトヲ得第五十四條第七十四條ノ場合ニ於テ會議ヲ開クコト能ハサルトキ亦同シ
府縣會若ハ府縣參事會ニ於テ其ノ議決スヘキ事件ヲ議決セス又ハ府縣會ニ於テ其ノ招集前吿示セラレタル事件ニ關シ議案ヲ議了セサルトキハ前項ノ例ニ依ル
府縣參事會ノ決定若ハ裁決スヘキ事項ニ關シテハ本條第一項第二項ノ例ニ依ル此ノ場合ニ於ケル府縣知事ノ處分ニ關シテハ各本條ノ規定ニ準シ訴願及訴訟ヲ提起スルコトヲ得
本條ノ處分ハ次ノ會期ニ於テ之ヲ府縣會若ハ府縣參事會ニ報吿スヘシ
第八十六條　府縣參事會ノ權限ニ屬スル事件ニシテ臨時急施ヲ要シ府縣知事ニ於テ之ヲ招集スルノ暇ナシト認ムルトキハ府縣知事ハ專決處分シ次ノ會期ニ於テ其ノ處分ヲ府縣參事會ニ報吿スヘシ
第八十七條　府縣參事會ノ權限ニ屬スル事項ハ其ノ議決ニ依リ府縣知事ニ於テ專決處分スルコトヲ得
第八十八條　官吏ノ府縣行政ニ關スル職務關係ハ此ノ法律中規定アルモノヲ除ク外國ノ行政ニ關スル其ノ職務關係ノ例ニ依ル
第八十九條　府縣出納吏ハ出納事務ヲ掌ル
第九十條　府縣吏員ハ府縣知事ノ命ヲ承ケ事務ニ從事ス
第九十一條　委員ハ府縣知事ノ指揮監督ヲ承ケ財產若ハ營造物ヲ管理シ其ノ他府縣行政事務ノ一部ヲ調査シ又ハ一時ノ委託ニ依リ事務ヲ處辨ス
第九十二條　府縣ノ事務ニ關スル處務規程ハ府縣知事之ヲ定ム
第三款　給料及給與
第九十三條　有給府縣吏員ノ給料額竝旅費額及其ノ支給方法ハ府縣知事之ヲ定ム
第九十四條　府縣會議員名譽職參事會員其ノ他名譽職員ハ職務ノ爲要スル費用ノ辨償ヲ受クルコトヲ得
費用辨償額及其ノ支給方法ハ府縣會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ得テ府縣知事之ヲ定ム若之ヲ許可スヘカラスト認ムルトキハ內務大臣之ヲ定ム
第九十五條　有給府縣吏員ノ退隱料退職給與金遺族扶助料及其ノ支給方法ハ前條第二項ノ例ニ依リテ之ヲ定ム
第九十六條　退隱料退職給與金遺族扶助料及費用辨償ノ給與ニ關シ異議アルトキハ之ヲ府縣知事ニ申立ツルコトヲ得
前項ノ異議ハ之ヲ府縣參事會ノ決定ニ付スヘシ其ノ決定ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ決定ニ關シテハ府縣知事ヨリモ亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第九十七條　給料旅費退隱料退職給與金遺族扶助料費用辨償其ノ他諸給與ハ府縣ノ負擔トス
第五章　府縣ノ財務
第一款　財產營造物及府縣稅
第九十八條　府縣ハ積立金穀等ヲ設クルコトヲ得
第九十九條　府縣ハ營造物若ハ公共ノ用ニ供シタル財產ノ使用ニ付使用料ヲ徵收シ又ハ特ニ一個人ノ爲ニスル事務ニ付手數料ヲ徵收スルコトヲ得
第百條　此ノ法律中別ニ規定アルモノヲ除ク外使用料手數料ニ關スル細則ハ府縣會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ得テ府縣知事之ヲ定ム其ノ細則ニハ過料二圓以下ノ罰則ヲ設クルコトヲ得
過料ニ處シ及之ヲ徵收スルハ府縣知事之ヲ掌ル其ノ處分ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第百一條　府縣ハ其ノ公益上必要アル場合ニ於テハ寄附若ハ補助ヲ爲スコトヲ得
第百二條　府縣ハ其ノ必要ナル費用及法律勅令又ハ從來ノ慣例ニ依リ府縣ノ負擔ニ屬スル費用ヲ支辨スル義務ヲ負フ
第百三條　府縣稅及其ノ賦課徵收方法ニ關シテハ法律ニ規定アルモノヲ除ク外勅令ノ定ムル所ニ依ル
府縣ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ費用ヲ市町村ニ分賦スルコトヲ得
第百四條　府縣內ニ住所ヲ有スル者ハ府縣稅ヲ納ムル義務ヲ負フ
第百五條　三箇月以上府縣內ニ滯在スル者ハ其ノ滯在ノ初ニ遡リ府縣稅ヲ納ムル義務ヲ負フ
第百六條　府縣內ニ住所ヲ有セス又ハ三箇月以上滯在スルコトナシト雖府縣內ニ於テ土地家屋物件ヲ所有シ若ハ使用シ又ハ營業所ヲ定メテ營業ヲ爲シ又ハ府縣內ニ於テ特定ノ行爲ヲ爲ス者ハ其ノ土地家屋物件營業若ハ其ノ收入ニ對シ又ハ行爲ニ對シテ賦課スル府縣稅ヲ納ムル義務ヲ負フ其ノ法人タルトキ亦同シ但シ國ノ事業若ハ行爲ニ對シテハ此ノ限ニ在ラス
第百七條　納稅者ノ府縣外ニ於テ所有シ若ハ使用スル土地家屋物件又ハ府縣外ニ於テ營業所ヲ定メタル營業ヨリ生スル收入ニ對シテハ府縣稅ヲ賦課スルコトヲ得ス
住所滯在一府縣以上ニ涉ル者ノ收入ニ對シ府縣稅ヲ賦課スルトキハ其ノ收入ヲ各府縣ニ平分シ其ノ一部ニノミ賦課スヘシ但シ土地家屋物件又ハ營業所ヲ定メタル營業ヨリ生スル收入ハ此ノ限ニ在ラス
第百八條　一府縣以上ニ涉リ營業所ヲ定メテ營業ヲ爲シ且其ノ本稅ヲ分別シテ納メサル者ニ對シ關係府縣ニ於テ營業稅ノ附加稅ヲ賦課スルトキハ關係府縣知事協議ノ上其ノ步合ヲ定メ內務大臣及大藏大臣ノ許可ヲ受クヘシ若協議調ハサルトキハ內務大臣及大藏大臣之ヲ定ム
第百九條　府縣稅賦課ノ細目ニ係ル事項ハ府縣會ノ議決ニ依リ關係市町村會ノ議決ニ付スルコトヲ得
市町村會ニ於テ府縣會ノ議決ニ依リ定マリタル期限內ニ其ノ議決ヲ爲ササルトキ若ハ不適當ノ議決ヲ爲シタルトキハ府縣參事會之ヲ議決スヘシ
第百十條　府縣稅ヲ賦課スルコトヲ得サルモノニ關シテハ法律勅令ヲ以テ別段ノ規定ヲ設クルモノヲ除ク外市町村稅ノ例ニ依ル
第百十一條　府縣內ノ一部ニ對シ特ニ利益アル事件ニ關シテハ勅令ノ定ムル所ニ依リ不均一ノ賦課ヲ爲スコトヲ得
第百十二條　府縣ハ其ノ必要ニ依リ夫役及現品ヲ府縣內一部ノ市町村其ノ他公共團體若ハ一部ノ納稅義務者ニ賦課スルコトヲ得但シ學藝美術及手工ニ關スル勞役ヲ課スルコトヲ得ス
夫役及現品ハ急迫ノ場合ヲ除ク外金額ニ算出シテ賦課スヘシ
夫役ヲ課セラレタル者ハ其ノ便宜ニ從ヒ本人自ラ之ニ當リ又ハ適當ノ代人ヲ出スコトヲ得又夫役及現品ハ急迫ノ場合ヲ除ク外金錢ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
第百十三條　府縣稅ノ減免若ハ納稅ノ延期ハ特別ノ事情アル者ニ限リ府縣知事ハ府縣參事會ノ議決ヲ經テ之ヲ許スコトヲ得
第百十四條　市制施行ノ府縣ニ於テハ郡廳舍建築修繕費及郡役所費ハ郡ニ屬スル部分ノ負擔トス
第百十五條　府縣稅ノ賦課ヲ受ケタル者其ノ賦課ニ付違法若ハ錯誤アリト認ムルトキハ徵稅令書又ハ徵稅傳令書ノ交付後三箇月以內ニ府縣知事ニ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
第百三條第二項ノ場合ニ於テ市町村ハ府縣費ノ分賦ニ關シ違法若ハ錯誤アリト認ムルトキハ其ノ吿知ヲ受ケタル時ヨリ三箇月以內ニ府縣知事ニ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
前二項ノ異議ハ之ヲ府縣參事會ノ決定ニ付スヘシ其ノ決定ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
使用料及手數料ノ徵收ニ關シテモ亦第一項及第三項ノ例ニ依ル
本條ノ決定ニ關シテハ府縣知事郡島ノ官吏吏員市町村吏員ヨリモ亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第百十六條　府縣稅ノ賦課ニ關シ必要アル場合ニ於テハ當該行政廳ハ日出ヨリ日沒マテノ間營業者ニ關シテハ仍其ノ營業時間家宅ニ臨檢シ又ハ帳簿物件ノ檢査ヲ爲スコトヲ得
府縣稅使用料手數料夫役現品ニ代フル金錢過料其ノ他府縣ノ收入ヲ定期內ニ納メサル者アルトキハ國稅滯納處分ノ例ニ依リ之ヲ處分スヘシ
本條ニ記載スル徵收金ハ國ノ徵收金ニ次テ先取特權ヲ有シ其ノ追徵還付及時效ニ付テハ國稅ノ例ニ依ル
本條第二項ノ場合ニ於テ郡島ノ官吏吏員市町村吏員ノ處分ニ不服アル者ハ府縣參事會ニ訴願シ其ノ裁決又ハ府縣知事ノ處分ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ關シテハ府縣知事郡島ノ官吏吏員市町村吏員ヨリモ亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
本條第二項ノ處分ハ其ノ確定ニ至ルマテ執行ヲ停止ス
第百十七條　府縣ハ其ノ負債ヲ償還スル爲又ハ府縣ノ永久ノ利益ト爲ルヘキ支出ヲ要スル爲又ハ天災事變等ノ爲必要アル場合ニ限リ府縣會ノ議決ヲ經テ府縣債ヲ起スコトヲ得
府縣債ヲ起スニ付府縣會ノ議決ヲ經ルトキハ併セテ起債ノ方法利息ノ定率及償還ノ方法ニ付議決ヲ經ヘシ
府縣ハ豫算內ノ支出ヲ爲ス爲本條ノ例ニ依ラス府縣參事會ノ議決ヲ經テ一時ノ借入金ヲ爲スコトヲ得
第二款　歲入出豫算及決算
第百十八條　府縣知事ハ每會計年度歲入出豫算ヲ調製シ年度開始前府縣會ノ議決ヲ經ヘシ
府縣ノ會計年度ハ政府ノ會計年度ニ同シ
豫算ヲ府縣會ニ提出スルトキハ府縣知事ハ併セテ財產表ヲ提出スヘシ
第百十九條　府縣知事ハ府縣會ノ議決ヲ經テ旣定豫算ノ追加若ハ更正ヲ爲スコトヲ得
第百二十條　府縣費ヲ以テ支辨スル事件ニシテ數年ヲ期シテ施行スヘキモノ又ハ數年ヲ期シテ其ノ費用ヲ支出スヘキモノハ府縣會ノ議決ヲ經テ其ノ年期間各年度ノ支出額ヲ定メ繼續費ト爲スコトヲ得
第百二十一條　豫算外ノ支出若ハ豫算超過ノ支出ニ充ツル爲豫備費ヲ設クヘシ但シ府縣會ノ否決シタル費途ニ充ツルコトヲ得ス
第百二十二條　豫算ハ議決ヲ經タル後直ニ之ヲ內務大臣ニ報吿シ竝其ノ要領ヲ吿示スヘシ
第百二十三條　府縣知事ハ府縣會ノ議決ヲ經テ特別會計ヲ設クルコトヲ得
第百二十四條　決算ハ翌翌年ノ通常會ニ於テ之ヲ府縣會ニ報吿スヘシ
府縣知事ハ決算ヲ府縣會ニ報吿スル前府縣參事會ノ審査ニ付スヘシ若府縣知事ト府縣參事會ト意見ヲ異ニスルトキハ府縣知事ハ府縣參事會ノ意見ヲ決算ニ添ヘ府縣會ニ提出スヘシ
決算ハ之ヲ內務大臣ニ報吿シ竝其ノ要領ヲ吿示スヘシ
第百二十五條　豫算調製ノ式竝費目流用其ノ他財務ニ關スル必要ナル規定ハ內務大臣之ヲ定ム
第百二十六條　府縣吏員ノ身元保證及賠償責任ニ關スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六章　府縣行政ノ監督
第百二十七條　府縣ノ行政ハ內務大臣之ヲ監督ス
第百二十八條　此ノ法律ニ規定スル異議若ハ訴願ハ處分ヲ爲シ又ハ決定書若ハ裁決書ノ交付ヲ受ケタル翌日ヨリ起算シ十四日以內ニ之ヲ提起スヘシ但シ此ノ法律中別ニ期限ヲ定メタルモノハ此ノ限ニ在ラス
此ノ法律ニ規定スル行政訴訟ハ處分ヲ爲シ決定書若ハ裁決書ノ交付ヲ受ケタル翌日ヨリ起算シ二十一日以內ニ之ヲ提起スヘシ
決定書若ハ裁決書ノ交付ヲ受ケサル者ニ關シテハ前二項ノ期間ハ吿示ノ翌日ヨリ起算ス
此ノ法律ニ規定スル異議ノ決定ハ文書ヲ以テ之ヲ爲シ其ノ理由ヲ付スヘシ
前項異議ノ決定書ハ之ヲ申立人ニ交付スヘシ
此ノ法律ニ規定スル異議ノ申立若ハ訴願ノ提起ニ關スル期間ノ計算竝天災事變ノ場合ニ於ケル特例ニ付テハ民事訴訟法ノ規定ヲ準用ス
異議ヲ申立又ハ訴願訴訟ヲ提起スル者アルトキハ行政廳及行政裁判所ハ其ノ職權ニ依リ又ハ關係者ノ請求ニ依リ必要ト認ムル場合ニ限リ處分ノ執行ヲ停止スルコトヲ得
第百二十九條　內務大臣ハ府縣行政ノ法律命令ニ背戾セサルヤ又ハ公益ヲ害セサルヤ否ヲ監視スヘシ內務大臣ハ之カ爲行政事務ニ關シテ報吿ヲ爲サシメ書類帳簿ヲ徵シ竝實地ニ就キ事務ヲ視察シ出納ヲ檢閱スルノ權ヲ有ス
內務大臣ハ府縣行政ノ監督上必要ナル命令ヲ發シ處分ヲ爲スノ權ヲ有ス
第百三十條　內務大臣ハ府縣ノ豫算中不適當ト認ムルモノアルトキハ之ヲ削減スルコトヲ得
第百三十一條　內務大臣ハ勅裁ヲ經テ府縣會ノ解散ヲ命スルコトヲ得
府縣會解散ノ場合ニ於テハ三箇月以內ニ議員ヲ選擧スヘシ
解散後始メテ府縣會ヲ招集スルトキハ府縣知事ハ第五十條第二項ノ規定ニ拘ラス內務大臣ノ許可ヲ得テ別ニ會期ヲ定ムルコトヲ得
第百三十二條　府縣吏員ノ服務規律ハ內務大臣之ヲ定ム
第百三十三條　左ニ揭クル事件ハ內務大臣ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
一　學藝美術又ハ歷史上貴重ナル物件ヲ處分シ若ハ大ナル變更ヲ爲ス事
二　使用料手數料ヲ新設シ增額シ又ハ變更スル事
三　寄附若ハ補助ヲ爲ス事
四　不動產ノ處分ニ關スル事
五　第百十二條ニ依リ夫役及現品ヲ賦課スル事但シ急迫ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
六　繼續費ヲ定メ若ハ變更スル事
七　特別會計ヲ設クル事
第百三十四條　左ニ揭クル事件ハ內務大臣及大藏大臣ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
一　府縣債ヲ起シ竝起債ノ方法利息ノ定率及償還ノ方法ヲ定メ若ハ變更スル事但シ第百十七條末項ノ借入金ハ此ノ限ニ在ラス
二　地租三分ノ一ヲ超過スル附加稅ヲ賦課スル事但シ法律勅令中別段ノ規定アル場合ハ此ノ限ニ在ラス
三　法律勅令ノ規定ニ依リ官廳ヨリ下渡ス步合金ニ對シ支出金額ヲ定ムル事
第百三十五條　府縣ノ行政ニ關シ主務大臣ノ許可ヲ要スヘキ事項ニ付テハ主務大臣ハ許可申請ノ趣旨ニ反セスト認ムル範圍內ニ於テ更正シテ許可ヲ與フルコトヲ得
第百三十六條　府縣ノ行政ニ關シ主務大臣ノ許可ヲ要スヘキ事項中其ノ輕易ナルモノハ勅令ノ規定ニ依リ許可ヲ經スシテ處分スルコトヲ得
第七章　附則
第百三十七條　此ノ法律ハ明治二十三年法律第三十五號府縣制ヲ施行シタル府縣ニハ明治三十二年七月一日ヨリ之ヲ施行シ其ノ他ノ府縣ニ關スル施行ノ時期ハ府縣知事ノ具申ニ依リ內務大臣之ヲ定ム
第百三十八條　島嶼ニ關スル府縣ノ行政ニ付テハ勅令ヲ以テ特例ヲ設クルコトヲ得
町村制ヲ施行セサル島嶼ヨリ選出スヘキ府縣會議員ノ選擧ニ關スル事項ハ勅令ノ定ムル所ニ依ル
第百三十九條　法律命令中別段ノ規定アルモノヲ除ク外此ノ法律ニ規定スル郡長ノ職務ハ島司ヲ置ケル島嶼ニ於テハ島司之ヲ行ヒ町村長ノ職務ハ町村制ヲ施行セサル地ニ於テハ戶長又ハ之ニ準スヘキ者之ヲ行フ
第百四十條　從前郡市經濟ヲ異ニシタル府縣ノ財產處分ニ關スル規定ハ內務大臣之ヲ定ム
特別ノ事情アル府縣ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ市部郡部ノ經濟ヲ分別シ市部會郡部會市部參事會郡部參事會ヲ置キ其ノ他必要ナル事項ニ關シ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第百四十一條　明治二十三年法律第八十八號府縣稅徵收法及地方稅ニ關スル從前ノ規定ハ此ノ法律ニ依リ變更シタルモノヲ除ク外勅令ヲ以テ別段ノ規定ヲ設クルマテ其ノ效力ヲ有ス
第百四十二條　明治二十三年法律第三十五號府縣制ノ規定ニ依リ選擧セラレタル府縣會議員府縣參事會員ハ此ノ法律施行ノ日ヨリ其ノ職ヲ失フ
本法發布後施行ノ日ニ至ルマテノ間ニ明治二十三年法律第三十五號府縣制ヲ施行シタル府縣ニ於テハ府縣會議員ノ改選ヲ要スルコトアルモ其ノ改選ヲ行ハス議員ハ本法施行ノ日マテ在任ス
第百四十三條　此ノ法律施行ノ際府縣會及府縣參事會ノ職務ニ屬スル事項ニシテ急施ヲ要スルモノハ其ノ成立ニ至ルマテノ間府縣知事之ヲ行フ
第百四十四條　此ノ法律施行ノ際議員ヲ選擧スルニ必要ナル選擧人名簿ノ調製ニ限リ第九條乃至第十二條ノ期日及期間ハ勅令ヲ以テ別ニ之ヲ定ムルコトヲ得但シ其ノ選擧人名簿ハ翌年調製スル選擧人名簿確定ノ日マテ其ノ效力ヲ有ス
第百四十五條　此ノ法律ニ定ムル直接稅ノ種類ハ內務大臣及大藏大臣之ヲ吿示ス
第百四十六條　明治十三年第十五號布吿府縣會規則明治十四年第八號布吿區郡部會規則明治二十二年法律第六號府縣會議員選擧規則其ノ他此ノ法律ニ牴觸スル法規ハ此ノ法律施行ノ府縣ニ於テハ其ノ效力ヲ失フ
第百四十七條　此ノ法律ヲ施行スル爲必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル府県制改正法律ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年三月十五日
内閣総理大臣　侯爵　山県有朋
内務大臣　侯爵　西郷従道
法律第六十四号
府県制
第一章
総則
第二章
府県会
第一款
組織及選挙
第二款
職務権限及処務規程
第三章
府県参事会
第一款
組織及選挙
第二款
職務権限及処務規程
第四章
府県行政
第一款
府県吏員ノ組織及任免
第二款
府県官吏府県吏員ノ職務権限及処務規程
第三款
給料及給与
第五章
府県ノ財務
第一款
財産営造物及府県税
第二款
歳入出予算及決算
第六章
府県行政ノ監督
第七章
附則
府県制
第一章　総則
第一条　府県ハ従来ノ区域ニ依リ郡市及島嶼ヲ包括ス
第二条　府県ハ法人トシ官ノ監督ヲ承ケ法律命令ノ範囲内ニ於テ其ノ公共事務並従来法律命令又ハ慣例ニ依リ及将来法律勅令ニ依リ府県ニ属スル事務ヲ処理ス
第三条　府県ノ廃置分合又ハ境界変更ヲ要スルトキハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
府県ノ境界ニ渉リテ郡市町村境界ノ変更アリタルトキハ府県ノ境界モ亦自ラ変更ス所属未定地ヲ市町村ノ区域ニ編入シタルトキ亦同シ
本条ノ処分ニ付財産処分ヲ要スルトキハ内務大臣ハ関係アル府県郡市参事会及町村会ノ意見ヲ徴シテ之ヲ定ム但シ特ニ法律ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
第二章　府県会
第一款　組織及選挙
第四条　府県会議員ハ各選挙区ニ於テ之ヲ選挙ス
選挙区ハ郡市ノ区域ニ依ル但シ東京市京都市大阪市其ノ他勅令ヲ以テ指定シタル市ニ於テハ区ノ区域ニ依ル
第五条　府県会議員ハ府県ノ人口七十万未満ハ議員三十人ヲ以テ定員トシ七十万以上百万未満ハ五万ヲ加フル毎ニ一人ヲ増シ百万以上ハ七万ヲ加フル毎ニ一人ヲ増ス
各選挙区ニ於テ選挙スヘキ府県会議員ノ数ハ府県会ノ議決ヲ経内務大臣ノ許可ヲ得テ府県知事之ヲ定ム
前項議員ノ配当方法ニ関スル必要ナル事項ハ内務大臣之ヲ定ム
第六条　府県内ノ市町村公民ニシテ市町村会議員ノ選挙権ヲ有シ且其ノ府県内ニ於テ一年以来直接国税年額三円以上ヲ納ムル者ハ府県会議員ノ選挙権ヲ有ス
府県内ノ市町村公民ニシテ市町村会議員ノ選挙権ヲ有シ且其ノ府県内ニ於テ一年以来直接国税年額十円以上ヲ納ムル者ハ府県会議員ノ被選挙権ヲ有ス
家督相続ニ依リ財産ヲ取得シタル者ハ其ノ財産ニ付被相続人ノ為シタル納税ヲ以テ其ノ者ノ納税シタルモノト看做ス
府県会議員ハ住所ヲ移シタル為市町村ノ公民権ヲ失フコトアルモ其ノ住所同府県内ニ在ルトキハ之カ為其ノ職ヲ失フコトナシ
府県会議員ノ選挙権及被選挙権ノ要件中其ノ年限ニ関スルモノハ府県郡市町村ノ廃置分合若ハ境界変更ノ為中断セラルルコトナシ
左ニ掲クル者ハ府県会議員ノ被選挙権ヲ有セス其ノ之ヲ罷メタル後一箇月ヲ経過セサル者亦同シ
一　其ノ府県ノ官吏及有給吏員
二　検事警察官吏及収税官吏
三　神官僧侶其ノ他諸宗教師
四　小学校教員
前項ノ外ノ官吏ニシテ当選シ之ニ応セントスルトキハ所属長官ノ許可ヲ受クヘシ
選挙事務ニ関係アル官吏吏員ハ其ノ関係区域内ニ於テ被選挙権ヲ有セス其ノ之ヲ罷メタル後一箇月ヲ経過セサル者亦同シ
府県ノ為請負ヲ為ス者又ハ府県ノ為請負ヲ為ス法人ノ役員ハ其ノ府県ノ府県会議員ノ被選挙権ヲ有セス
府県会議員ハ衆議院議員ト相兼ヌルコトヲ得ス
第七条　府県会議員ハ名誉職トス
府県会議員ノ任期ハ四年トス
議員ノ定数ニ異動ヲ生シタル為又ハ議員ノ配当ヲ更正シタル為解任ヲ要スル者ハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
第八条　府県会議員中闕員アルトキ及府県会議員ノ定数ニ異動ヲ生シタル為又ハ議員ノ配当ヲ更正シタル為議員ノ選挙ヲ要スルトキハ三箇月以内ニ之ヲ行フヘシ
補闕議員ハ其ノ前任者ノ残任期間在任ス
補闕議員ヲ除ク外本条第一項ニ依リ選挙セラレタル議員ハ次ノ改選期マテ在任ス
第九条　町村長ハ毎年九月十五日ヲ期トシ其ノ日ノ現在ニ依リ其ノ町村内ノ選挙人名簿二本ヲ調製シ其ノ一本ヲ十月一日マテニ郡長ニ送付スヘシ
郡長ハ町村長ヨリ送付シタル名簿ヲ合シ毎年十月十五日マテニ其ノ選挙区ノ選挙人名簿ヲ調製スヘシ
第十条　市長ハ毎年九月十五日ヲ期トシ其ノ日ノ現在ニ依リ十月十五日マテニ其ノ選挙区ノ選挙人名簿ヲ調製スヘシ
第十一条　選挙人其ノ住所ヲ有スル市町村外ニ於テ直接国税ヲ納ムルトキハ九月十五日マテニ当該行政庁ノ証明ヲ得テ其ノ住所地ノ市町村長ニ届出ツヘシ其ノ期限内ニ届出ヲ為ササルトキハ其ノ納税ハ選挙人名簿ニ記載セラルヘキ要件ニ算入セス
第十二条　郡市長ハ十月二十日ヨリ十五日間其ノ郡市役所ニ於テ選挙人名簿ヲ関係者ノ縦覧ニ供スヘシ若関係者ニ於テ異議アルトキ又ハ正当ノ事故ニ依リ前条ノ手続ヲ為スコト能ハスシテ名簿ニ登録セラレサルトキハ縦覧期限内ニ之ヲ郡市長ニ申立ルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ郡市長ハ其ノ申立ヲ受ケタル日ヨリ十日以内ニ之ヲ決定スヘシ
前項郡市長ノ決定ニ不服アル者ハ府県参事会ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ関シテハ府県知事郡市長ヨリモ亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
選挙人名簿ハ十二月十五日ヲ以テ確定期限トシ確定名簿ハ次年ノ十二月十四日マテ之ヲ据置クヘシ
府県参事会ノ裁決確定シ又ハ訴訟ノ判決ニ依リ名簿ノ修正ヲ要スルトキハ郡市長ニ於テ直ニ之ヲ修正スヘシ
本条ニ依リ郡市長ニ於テ名簿ヲ修正シタルトキハ其ノ要領ヲ告示シ郡長ハ本人住所地ノ町村長ニ通知シ町村長ハ之ヲ告示スヘシ
確定名簿ニ登録セラレサル者ハ選挙ニ参与スルコトヲ得ス但シ選挙人名簿ニ記載セラルヘキ確定裁決書若ハ判決書ヲ所持シ選挙ノ当日投票所ニ到ル者ハ此ノ限ニ在ラス
確定名簿ニ登録セラレタル者選挙権ヲ有セサルトキハ選挙ニ参与スルコトヲ得ス但シ名簿ハ之ヲ修正スル限ニ在ラス
異議ノ決定若ハ訴願ノ裁決確定シ又ハ訴訟ノ判決アリタルニ依リ名簿無効トナリタルトキハ九月十五日ノ現在ニ依リ更ニ名簿ヲ調製スヘシ但シ名簿調製ノ期日マテニ選挙権ヲ失ヒタル者ハ名簿ニ登録スル限ニ在ラス
前項名簿調製ノ期日縦覧修正及確定ニ関スル期限等ハ府県知事ノ定ムル所ニ依ル
第十三条　府県会議員ノ選挙ハ府県知事ノ告示ニ依リ之ヲ行フ其ノ告示ニハ選挙ヲ行フヘキ選挙区投票ヲ行フヘキ日時及選挙スヘキ議員ノ員数ヲ記載シ選挙ノ日ヨリ少クトモ二十日前ニ之ヲ発スヘシ
第十四条　府県会議員ノ選挙ハ郡市長之ヲ管理ス
第十五条　投票所ハ市役所町村役場又ハ市町村長ノ指定シタル場所ニ於テ之ヲ設ケ市町村長其ノ事務ヲ管理ス
前項投票所ハ市町村長ニ於テ選挙ノ日ヨリ少クトモ五日前ニ之ヲ告示スヘシ
特別ノ事情アル地ニ於テハ命令ヲ以テ二箇以上ノ投票所ヲ設ケ其ノ投票ニ関シ特別ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第十六条　市町村長ハ臨時ニ其ノ管理スル投票区域内ニ於ケル選挙人中ヨリ投票立会人二名乃至四名ヲ選任スヘシ
投票立会人ハ名誉職トス
第十七条　選挙人ノ外投票所ニ入ルコトヲ得ス但シ投票所ノ事務ニ従事スル者投票所ヲ監視スル職権ヲ有スル者ハ此ノ限ニ在ラス
選挙人ハ投票所ニ於テ協議又ハ勧誘ヲ為スコトヲ得ス
第十八条　選挙ハ投票ニ依リ之ヲ行フ
投票ハ一人一票ニ限ル
選挙人ハ選挙ノ当日自ラ投票所ニ到リ選挙人名簿ノ対照ヲ経投票簿ニ捺印シ投票スヘシ
選挙人ハ投票所ニ於テ投票用紙ニ自ラ被選挙人一名ノ氏名ヲ記載シテ投函スヘシ
投票用紙ニハ選挙人ノ氏名ヲ記載スルコトヲ得ス
自ラ被選挙人ノ氏名ヲ書スルコト能ハサル者ハ投票ヲ為スコトヲ得ス
投票用紙ハ府県知事ノ定ムル所ニ依リ一定ノ式ヲ用ウヘシ
第十九条　投票ノ拒否ハ投票立会人之ヲ議決ス可否同数ナルトキハ市町村長之ヲ決スヘシ
第二十条　市町村長ハ投票録ヲ製シ投票ニ関スル顛末ヲ記載シ投票立会人ト共ニ之ニ署名スヘシ
第二十一条　投票ヲ終リタルトキハ町村長ハ其ノ指定シタル投票立会人ト共ニ直ニ投票函及投票録ヲ選挙会場ニ送致スヘシ
第二十二条　島嶼其ノ他交通不便ノ地ニ対シテハ府県知事ハ適宜ニ其ノ投票期日ヲ定メ選挙会ノ期日マテニ其ノ投票函ヲ送致セシムルコトヲ得
第二十三条　選挙会ハ郡役所市役所又ハ郡市長ノ指定シタル場所ニ於テ之ヲ開クヘシ
前項選挙会ノ場所ハ郡市長予メ之ヲ告示スヘシ
第二十四条　郡長ハ各投票所ヨリ参会シタル投票立会人ノ中ヨリ抽籤ヲ以テ選挙立会人二名乃至六名ヲ定ムヘシ
市長ハ選挙人中ヨリ選挙立会人二名乃至六名ヲ選任スヘシ
選挙立会人ハ名誉職トス
第二十五条　郡市長ハ選挙長ト為リ郡ニ於テハ投票函ノ総テ到達シタル翌日市ニ於テハ投票ノ翌日選挙立会人立会ノ上投票函ヲ開キ投票ノ総数ト投票人ノ総数トヲ計算スヘシ若投票ト投票人トノ総数ニ差異ヲ生シタルトキハ其ノ由ヲ選挙録ニ記載スヘシ但シ場合ニ依リ選挙会ハ郡ニ於テハ投票函到達ノ日市ニ於テハ投票ノ日之ヲ開クコトヲ得
前項ノ計算終リタルトキハ選挙長ハ選挙立会人ト共ニ投票ヲ点検スヘシ
第二十六条　選挙人ハ其ノ選挙会ニ参観ヲ求ムルコトヲ得
第二十七条　左ノ投票ハ之ヲ無効トス
一　成規ノ用紙ヲ用井サルモノ
二　一投票中二人以上ノ被選挙人ヲ記載シタルモノ
三　被選挙人ノ何人タルヲ確認シ難キモノ
四　被選挙権ナキ者ノ氏名ヲ記載シタルモノ
五　被選挙人ノ氏名ノ外他事ヲ記入シタルモノ但シ爵位職業身分住所又ハ敬称ノ類ヲ記入シタルモノハ此ノ限ニ在ラス
第二十八条　投票ノ効力ハ選挙立会人之ヲ議決ス可否同数ナルトキハ選挙長之ヲ決スヘシ
第二十九条　府県会議員ノ選挙ハ有効投票ノ最多数ヲ得タル者ヲ以テ当選トス投票ノ数相同キトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ選挙長抽籤シテ其ノ当選者ヲ定ム
同時ニ補闕員数名ヲ選挙スルトキハ投票ノ数多キ者、投票ノ数相同キトキハ年長者ヲ以テ残任期ノ長キ前任者ノ補闕ト為シ同年月ナルトキハ選挙長抽籤シテ之ヲ定ム
第三十条　選挙長ハ選挙録ヲ製シテ選挙ノ顛末ヲ記載シ選挙ヲ終リタル後之ヲ朗読シ選挙立会人二名以上ト共ニ之ニ署名シ投票選挙人名簿其ノ他関係書類ト共ニ選挙ノ効力確定スルニ至ルマテ之ヲ保存スヘシ
第三十一条　選挙ヲ終リタルトキハ選挙長ハ直ニ当選者ニ当選ノ旨ヲ告知シ同時ニ選挙録ノ写ヲ添ヘ当選者ノ住所氏名ヲ府県知事ニ報告スヘシ
当選者当選ノ告知ヲ受ケタルトキハ十日以内ニ其ノ当選ヲ承諾スルヤ否ヲ府県知事ニ申立ツヘシ
一人ニシテ数選挙区ノ選挙ニ当リタルトキハ最終ニ当選ノ告知ヲ受ケタル日ヨリ十日以内ニ何レノ選挙ニ応スヘキカヲ府県知事ニ申立ツヘシ
定期改選増員選挙補闕選挙等ヲ同時ニ行ヒタル場合ニ於テ一人ニシテ其ノ数選挙ニ当リタルトキハ前項ノ例ニ依ル
前三項ノ申立ヲ其ノ期限内ニ為ササルトキハ当選ヲ辞シタルモノト看做ス
第六条第七項ノ官吏ニシテ当選シタル者ニ関シテハ本条ニ定ムル期間ヲ二十日以内トス
第三十二条　府県会議員ノ当選ヲ辞シタル者アルトキハ更ニ選挙ヲ行フヘシ
二人以上投票同数ニシテ年長ニ由テ当選シタル者其ノ当選ヲ辞シタルトキハ年少ニ由テ当選セサリシ者ヲ以テ当選トス但シ年少ニ由テ当選セサリシ者二人以上アルトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ選挙長抽籤シテ其ノ当選者ヲ定ム
二人以上投票同数ニシテ抽籤ニ依テ当選シタル者其ノ当選ヲ辞シタルトキハ抽籤ノ為当選セサリシ者ヲ以テ当選トス但シ抽籤ノ為当選セサリシ者二人以上アルトキハ選挙長抽籤シテ其ノ当選者ヲ定ム
第三十三条　当選者其ノ当選ヲ承諾シタルトキハ府県知事ハ直ニ当選証書ヲ付与シ及其ノ住所氏名ヲ告示スヘシ
第三十四条　選挙人選挙若ハ当選ノ効力ニ関シ異議アルトキハ選挙ノ日ヨリ十四日以内ニ之ヲ府県知事ニ申立ツルコトヲ得
前項ノ異議ハ之ヲ府県参事会ノ決定ニ付スヘシ
府県知事ニ於テ選挙若ハ当選ノ効力ニ関シ異議アルトキハ第一項申立ノ有無ニ拘ラス第三十一条第一項ノ報告ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ府県参事会ノ決定ニ付スルコトヲ得
本条府県参事会ノ決定ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ決定ニ関シテハ府県知事郡市長ヨリモ亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第三十五条　選挙ノ規定ニ違背スルコトアルトキハ其ノ選挙ヲ無効トス但シ選挙ノ結果ニ異動ヲ生スルノ虞ナキモノハ此ノ限ニ在ラス
当選者ニシテ被選挙権ヲ有セサルトキハ其ノ当選ヲ無効トス
第三十六条　選挙若ハ当選無効ト確定シタルトキハ更ニ選挙ヲ行フヘシ但シ得票数ノ査定ニ錯誤アリタル為又ハ選挙ノ際被選挙権ヲ有セサル為当選無効ト確定シタルトキハ第二十九条及第三十一条ノ例ニ依ル
第三十七条　府県会議員ニシテ被選挙権ヲ有セサル者ハ其ノ職ヲ失フ其ノ被選挙権ニ関スル異議ハ府県参事会之ヲ決定ス
府県会ニ於テ其ノ議員中被選挙権ヲ有セサル者アリト認ムルトキハ之ヲ府県知事ニ通知スヘシ但シ議員ハ自己ノ資格ニ関スル会議ニ於テ弁明スルコトヲ得ルモ其ノ議決ニ加ハルコトヲ得ス
府県知事ハ前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ之ヲ府県参事会ノ決定ニ付スヘシ府県知事ニ於テ被選挙権ヲ有セサル者アリト認ムルトキ亦同シ
本条府県参事会ノ決定ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ決定ニ関シテハ府県知事ヨリモ亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
府県会議員ハ其ノ被選挙権ヲ有セストスル決定確定シ又ハ判決アルマテハ会議ニ列席シ及発言スルノ権ヲ失ハス
第三十八条　本款ニ規定スル異議ノ決定及訴願ノ裁決ハ其ノ決定書若ハ裁決書ヲ交付シタルトキ直ニ之ヲ告示スヘシ
第三十九条　第四条第二項但書ノ市ニ於テハ市長トアルハ区長又市トアルハ区、市役所トアルハ区役所ト看做シ本款ノ規定ヲ準用ス
町村組合ニシテ町村ノ事務ノ全部ヲ共同処理スルモノハ之ヲ一町村ト看做シ本款ノ規定ヲ準用ス
第四十条　府県会議員ノ選挙ニ付テハ衆議院議員選挙ニ関スル罰則ヲ準用ス
第二款　職務権限及処務規程
第四十一条　府県会ノ議決スヘキ事件左ノ如シ
一　歳入出予算ヲ定ムル事
二　決算報告ニ関スル事
三　法律命令ニ定ムルモノヲ除ク外使用料手数料府県税及夫役現品ノ賦課徴収ニ関スル事
四　不動産ノ処分並買受譲受ニ関スル事
五　積立金穀等ノ設置及処分ニ関スル事
六　歳入出予算ヲ以テ定ムルモノヲ除ク外新ニ義務ノ負担ヲ為シ及権利ノ抛棄ヲ為ス事
七　財産及営造物ノ管理方法ヲ定ムル事但シ法律命令中別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
八　其ノ他法律命令ニ依リ府県会ノ権限ニ属スル事項
第四十二条　府県会ハ其ノ権限ニ属スル事項ヲ府県参事会ニ委任スルコトヲ得
第四十三条　府県会ハ法律命令ニ依リ選挙ヲ行フヘシ
第四十四条　府県会ハ府県ノ公益ニ関スル事件ニ付意見書ヲ府県知事若ハ内務大臣ニ呈出スルコトヲ得
第四十五条　府県会ハ官庁ノ諮問アルトキハ意見ヲ答申スヘシ
府県会ノ意見ヲ徴シテ処分ヲ為スヘキ場合ニ於テ府県会招集ニ応セス若ハ成立セス又ハ意見ヲ呈出セサルトキハ当該官庁ハ其ノ意見ヲ俟タスシテ直ニ処分ヲ為スコトヲ得
第四十六条　府県会議員ハ選挙人ノ指示若ハ委嘱ヲ受クヘカラス
第四十七条　府県会ハ議員中ヨリ議長副議長各一名ヲ選挙スヘシ
議長副議長ハ議員ノ定期改選毎ニ之ヲ改選スヘシ
第四十八条　議長故障アルトキハ副議長之ニ代リ議長副議長共ニ故障アルトキハ臨時ニ議員中ヨリ仮議長ヲ選挙スヘシ
第四十九条　府県知事及其ノ委任若ハ嘱託ヲ受ケタル官吏吏員ハ会議ニ列席シテ議事ニ参与スルコトヲ得但シ議決ニ加ハルコトヲ得ス
前項ノ列席者ニ於テ発言ヲ求ムルトキハ議長ハ直ニ之ヲ許スヘシ但シ之カ為議員ノ演説ヲ中止セシムルコトヲ得ス
第五十条　府県会ハ通常会及臨時会トス
通常会ハ毎年一回之ヲ開ク其ノ会期ハ三十日以内トス臨時会ハ必要アル場合ニ於テ其ノ事件ニ限リ之ヲ開ク其ノ会期ハ七日以内トス
臨時会ニ付スヘキ事件ハ予メ之ヲ告示スヘシ但シ其ノ開会中急施ヲ要スル事件アルトキハ府県知事ハ直ニ之ヲ其ノ会議ニ付スルコトヲ得
第五十一条　府県会ハ府県知事之ヲ招集ス
招集ハ開会ノ日ヨリ少クトモ十四日前ニ告示スヘシ但シ急施ヲ要スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
府県会ハ府県知事之ヲ開閉ス
第五十二条　府県会ハ議員定員ノ半数以上出席スルニ非サレハ会議ヲ開クコトヲ得ス
第五十三条　府県会ノ議事ハ過半数ヲ以テ決ス可否同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第五十四条　議長及議員ハ自己若ハ父母祖父母妻子孫兄弟姉妹ノ一身上ニ関スル事件ニ付テハ府県会ノ同意ヲ得ルニ非サレハ其ノ議事ニ参与スルコトヲ得ス
第五十五条　法律命令ノ規定ニ依リ府県会ニ於テ選挙ヲ行フトキハ一名毎ニ匿名投票ヲ為シ有効投票ノ過半数ヲ得タル者ヲ以テ当選トス若過半数ヲ得タル者ナキトキハ最多数ヲ得タル者二名ヲ取リ之ニ就キ決選投票ヲ為サシム其ノ二名ヲ取ルニ当リ同数者アルトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ議長抽籤シテ之ヲ定ム此ノ決選投票ニ於テハ最多数ヲ得タル者ヲ以テ当選トス若同数ナルトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ議長抽籤シテ之ヲ定ム其ノ他ハ第十八条第二十七条及第二十八条ノ規定ヲ準用ス
前項ノ選挙ニ付テハ府県会ハ其ノ議決ヲ以テ指名推選若ハ連名投票ノ法ヲ用ウルコトヲ得其ノ連名投票ノ法ヲ用ウル場合ニ於テハ前項ノ例ニ依ル
第五十六条　府県会ノ会議ハ公開ス但シ左ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
一　府県知事ヨリ傍聴禁止ノ要求ヲ受ケタルトキ
二　議長若ハ議員三名以上ノ発議ニ依リ傍聴禁止ヲ可決シタルトキ
前項議長若ハ議員ノ発議ハ討論ヲ須ヒス其ノ可否ヲ決スヘシ
第五十七条　議長ハ会議ノ事ヲ総理シ会議ノ順序ヲ定メ其ノ日ノ会議ヲ開閉シ議場ノ秩序ヲ保持ス
第五十八条　府県会議員ハ会議中無礼ノ語ヲ用井又ハ他人ノ身上ニ渉リ言論スルコトヲ得ス
第五十九条　会議中此ノ法律若ハ会議規則ニ違ヒ其ノ他議場ノ秩序ヲ紊ル議員アルトキハ議長ハ之ヲ制止シ若ハ発言ヲ取消サシメ命ニ従ハサルトキハ議長ハ当日ノ会議ヲ終ルマテ発言ヲ禁止シ又ハ議場ノ外ニ退去セシメ必要ナル場合ニ於テハ警察官吏ノ処分ヲ求ムルコトヲ得
議場騒擾ニシテ整理シ難キトキハ議長ハ当日ノ会議ヲ中止シ又ハ之ヲ閉ツルコトヲ得
第六十条　傍聴人公然可否ヲ表シ又ハ喧騒ニ渉リ其ノ他会議ノ妨害ヲ為ストキハ議長ハ之ヲ制止シ命ニ従ハサルトキハ之ヲ退場セシメ必要ナル場合ニ於テハ警察官吏ノ処分ヲ求ムルコトヲ得
傍聴席騒擾ナルトキハ議長ハ総テノ傍聴人ヲ退場セシメ必要ナル場合ニ於テハ警察官吏ノ処分ヲ求ムルコトヲ得
第六十一条　議場ノ秩序ヲ紊リ又ハ会議ノ妨害ヲ為ス者アルトキハ議員若ハ第四十九条ノ列席者ハ議長ノ注意ヲ喚起スルコトヲ得
第六十二条　府県会ニ書記ヲ置キ議長ニ隷属シテ庶務ヲ処理セシム
書記ハ議長之ヲ任免ス
第六十三条　議長ハ書記ヲシテ会議録ヲ製シ会議ノ顛末並出席議員ノ氏名ヲ記載セシムヘシ会議録ハ議長及議員二名以上之ニ署名スルヲ要ス其ノ議員ハ府県会ニ於テ之ヲ定ムヘシ
議長ハ会議録ヲ添ヘ会議ノ結果ヲ府県知事ニ報告スヘシ
第六十四条　府県会ハ会議規則及傍聴人取締規則ヲ設ケ内務大臣ノ許可ヲ受クヘシ
会議規則ニハ此ノ法律並会議規則ニ違背シタル議員ニ対シ府県会ノ議決ニ依リ五日以内出席ヲ停止スル規定ヲ設クルコトヲ得
第三章　府県参事会
第一款　組織及選挙
第六十五条　府県ニ府県参事会ヲ置キ府県知事府県高等官二名及名誉職参事会員ヲ以テ之ヲ組織ス
府ノ名誉職参事会員ハ八名トシ県ノ名誉職参事会員ハ六名トス
府県高等官ニシテ府県参事会員タルヘキ者ハ内務大臣之ヲ命ス
第六十六条　名誉職参事会員ハ府県会ニ於テ議員中ヨリ之ヲ選挙スヘシ
府県会ハ名誉職参事会員ト同数ノ補充員ヲ選挙スヘシ
名誉職参事会員中闕員アルトキハ府県知事ハ補充員ノ中ニ就キ之ヲ補闕ス其ノ順序ハ選挙同時ナルトキハ投票数ニ依リ投票同数ナルトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ抽籤ニ依リ選挙ノ時ヲ異ニスルトキハ選挙ノ前後ニ依ル仍闕員ヲ生シタル場合ニ於テハ臨時補闕選挙ヲ行フヘシ
補闕員ハ前任者ノ残任期間在任ス
名誉職参事会員及其ノ補充員ハ府県会議員ノ定期改選毎ニ之ヲ改選スヘシ但シ名誉職参事会員ハ後任者就任ノ日マテ在任ス
第六十七条　府県参事会ハ府県知事ヲ以テ議長トス府県知事故障アルトキハ高等官参事会員議長ノ職務ヲ代理ス
第二款　職務権限及処務規程
第六十八条　府県参事会ノ職務権限左ノ如シ
一　府県会ノ権限ニ属スル事件ニシテ其ノ委任ヲ受ケタルモノヲ議決スル事
二　府県会ノ権限ニ属スル事件ニシテ臨時急施ヲ要シ府県知事ニ於テ之ヲ招集スルノ暇ナシト認ムルトキ府県会ニ代テ議決スル事
三　府県知事ヨリ府県会ニ提出スル議案ニ付府県知事ニ対シ意見ヲ述フル事
四　府県会ノ議決シタル範囲内ニ於テ財産及営造物ノ管理ニ関シ重要ナル事項ヲ議決スル事
五　府県費ヲ以テ支弁スヘキ工事ノ執行ニ関スル規定ヲ議決スル事但シ法律命令中別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
六　府県ニ係ル訴願訴訟及和解ニ関スル事項ヲ議決スル事
七　其ノ他法律命令ニ依リ府県参事会ノ権限ニ属スル事項
第六十九条　府県参事会ハ名誉職参事会員中ヨリ委員ヲ選挙シ之ヲシテ府県ニ係ル出納ヲ検査セシムルコトヲ得
前項ノ検査ニハ府県知事又ハ其ノ指命シタル官吏若ハ吏員之ニ立会フコトヲ要ス
第七十条　第四十四条第四十五条第四十九条及第六十二条ノ規定ハ府県参事会ニ之ヲ準用ス
第七十一条　府県参事会ハ府県知事之ヲ招集ス若名誉職参事会員半数以上ノ請求アル場合ニ於テ相当ノ理由アリト認ムルトキハ府県知事ハ府県参事会ヲ招集スヘシ
府県参事会ノ会期ハ府県知事之ヲ定ム
第七十二条　府県参事会ノ会議ハ傍聴ヲ許サス
第七十三条　府県参事会ハ議長又ハ其ノ代理者及名誉職参事会員定員ノ半数以上出席スルニ非サレハ会議ヲ開クコトヲ得ス
第六十八条第二ノ議決ヲ為ストキハ府県知事高等官参事会員ハ其ノ議決ニ加ハルコトヲ得ス
府県参事会ノ議事ハ過半数ヲ以テ決ス可否同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
会議ノ顛末ハ之ヲ会議録ニ記載シ議長及参事会員二名以上之ニ署名スヘシ
第七十四条　第五十四条ノ規定ハ府県参事会員ニ之ヲ準用ス但シ同条ノ規定ニ依リ会員ノ数減少シテ前条第一項ノ数ヲ得サルトキハ府県知事ハ補充員ニシテ其ノ事件ニ関係ナキ者ヲ以テ第六十六条第三項ノ順序ニ依リ臨時之ニ充テ仍其ノ数ヲ得サルトキハ府県会議員ニシテ其ノ事件ニ関係ナキ者ヲ臨時ニ指名シ其ノ闕員ヲ補充スヘシ
議長及其ノ代理者共ニ除席セラレタルトキハ年長ノ会員ヲ以テ仮議長ト為スヘシ
第四章　府県行政
第一款　府県吏員ノ組織及任免
第七十五条　府県ニ有給ノ府県吏員ヲ置クコトヲ得
前項ノ府県吏員ハ府県知事之ヲ任免ス
第七十六条　府県ニ府県出納吏ヲ置キ官吏吏員ノ中ニ就キ府県知事之ヲ命ス
第七十七条　府県ハ府県会ノ議決ヲ経内務大臣ノ許可ヲ得テ臨時若ハ常設ノ委員ヲ置クコトヲ得
委員ハ名誉職トス
委員ノ組織選任任期等ニ関スル事項ハ府県会ノ議決ヲ経内務大臣ノ許可ヲ得テ府県知事之ヲ定ム
第二款　府県官吏府県吏員ノ職務権限及処務規程
第七十八条　府県知事ハ府県ヲ統轄シ府県ヲ代表ス
府県知事ノ担任スル事務ノ概目左ノ如シ
一　府県費ヲ以テ支弁スヘキ事件ヲ執行スル事
二　府県会及府県参事会ノ議決ヲ経ヘキ事件ニ付其ノ議案ヲ発スル事
三　財産及営造物ヲ管理スル事但シ特ニ之カ管理者アルトキハ其ノ事務ヲ監督スル事
四　収入支出ヲ命令シ及会計ヲ監督スル事
五　証書及公文書類ヲ保管スル事
六　法律命令又ハ府県会若ハ府県参事会ノ議決ニ依リ使用料手数料府県税及夫役現品ヲ賦課徴収スル事
七　其ノ他法律命令ニ依リ府県知事ノ職権ニ属スル事項
第七十九条　府県知事ハ議案ヲ府県会ニ提出スル前之ヲ府県参事会ノ審査ニ付シ若府県参事会ト其ノ意見ヲ異ニスルトキハ府県参事会ノ意見ヲ議案ニ添ヘ府県会ニ提出スヘシ
第八十条　府県知事ハ府県ノ行政ニ関シ其ノ職権ニ属スル事務ノ一部ヲ郡島ノ官吏吏員又ハ市町村吏員ニ補助執行セシメ若ハ委任スルコトヲ得
府県知事ハ府県ノ行政ニ関シ其ノ職権ニ属スル事務ノ一部ヲ府県吏員ニ臨時代理セシムルコトヲ得
第八十一条　府県知事ハ府県吏員ヲ監督シ懲戒処分ヲ行フコトヲ得其ノ懲戒処分ハ譴責二十五円以下ノ過怠金及解職トス
府県知事ハ府県吏員ノ懲戒処分ヲ行ハントスル前其ノ吏員ノ停職ヲ命シ並給料ヲ支給セサルコトヲ得
懲戒ニ依リ解職セラレタル者ハ二年間其ノ府県ノ公職ニ選挙セラレ若ハ任命セラルルコトヲ得ス
第八十二条　府県会若ハ府県参事会ノ議決若ハ選挙其ノ権限ヲ越エ又ハ法律命令ニ背クト認ムルトキハ府県知事ハ自己ノ意見ニ依リ又ハ内務大臣ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シテ直ニ其ノ議決若ハ選挙ヲ取消シ又ハ議決ニ付テハ再議ニ付シタル上仍其ノ議決ヲ改メサルトキハ之ヲ取消スヘシ
前項取消処分ニ不服アル府県会若ハ府県参事会ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
府県会若ハ府県参事会ノ議決公益ニ害アリト認ムルトキハ府県知事ハ自己ノ意見ニ依リ又ハ内務大臣ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シテ之ヲ再議ニ付シ仍其ノ議決ヲ改メサルトキハ内務大臣ニ具状シテ指揮ヲ請フヘシ
第八十三条　府県会若ハ府県参事会ニ於テ府県ノ収支ニ関シ不適当ノ議決ヲ為シタルトキハ府県知事ハ自己ノ意見ニ依リ又ハ内務大臣ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シテ之ヲ再議ニ付シ仍其ノ議決ヲ改メサルトキハ内務大臣ニ具状シテ指揮ヲ請フヘシ但シ場合ニ依リ再議ニ付セスシテ直ニ内務大臣ノ指揮ヲ請フコトヲ得
第八十四条　府県知事ハ期日ヲ定メテ府県会ノ停会ヲ命スルコトヲ得
第八十五条　府県会若ハ府県参事会招集ニ応セス又ハ成立セサルトキハ府県知事ハ内務大臣ニ具状シテ指揮ヲ請ヒ其ノ議決スヘキ事件ヲ処分スルコトヲ得第五十四条第七十四条ノ場合ニ於テ会議ヲ開クコト能ハサルトキ亦同シ
府県会若ハ府県参事会ニ於テ其ノ議決スヘキ事件ヲ議決セス又ハ府県会ニ於テ其ノ招集前告示セラレタル事件ニ関シ議案ヲ議了セサルトキハ前項ノ例ニ依ル
府県参事会ノ決定若ハ裁決スヘキ事項ニ関シテハ本条第一項第二項ノ例ニ依ル此ノ場合ニ於ケル府県知事ノ処分ニ関シテハ各本条ノ規定ニ準シ訴願及訴訟ヲ提起スルコトヲ得
本条ノ処分ハ次ノ会期ニ於テ之ヲ府県会若ハ府県参事会ニ報告スヘシ
第八十六条　府県参事会ノ権限ニ属スル事件ニシテ臨時急施ヲ要シ府県知事ニ於テ之ヲ招集スルノ暇ナシト認ムルトキハ府県知事ハ専決処分シ次ノ会期ニ於テ其ノ処分ヲ府県参事会ニ報告スヘシ
第八十七条　府県参事会ノ権限ニ属スル事項ハ其ノ議決ニ依リ府県知事ニ於テ専決処分スルコトヲ得
第八十八条　官吏ノ府県行政ニ関スル職務関係ハ此ノ法律中規定アルモノヲ除ク外国ノ行政ニ関スル其ノ職務関係ノ例ニ依ル
第八十九条　府県出納吏ハ出納事務ヲ掌ル
第九十条　府県吏員ハ府県知事ノ命ヲ承ケ事務ニ従事ス
第九十一条　委員ハ府県知事ノ指揮監督ヲ承ケ財産若ハ営造物ヲ管理シ其ノ他府県行政事務ノ一部ヲ調査シ又ハ一時ノ委託ニ依リ事務ヲ処弁ス
第九十二条　府県ノ事務ニ関スル処務規程ハ府県知事之ヲ定ム
第三款　給料及給与
第九十三条　有給府県吏員ノ給料額並旅費額及其ノ支給方法ハ府県知事之ヲ定ム
第九十四条　府県会議員名誉職参事会員其ノ他名誉職員ハ職務ノ為要スル費用ノ弁償ヲ受クルコトヲ得
費用弁償額及其ノ支給方法ハ府県会ノ議決ヲ経内務大臣ノ許可ヲ得テ府県知事之ヲ定ム若之ヲ許可スヘカラスト認ムルトキハ内務大臣之ヲ定ム
第九十五条　有給府県吏員ノ退隠料退職給与金遺族扶助料及其ノ支給方法ハ前条第二項ノ例ニ依リテ之ヲ定ム
第九十六条　退隠料退職給与金遺族扶助料及費用弁償ノ給与ニ関シ異議アルトキハ之ヲ府県知事ニ申立ツルコトヲ得
前項ノ異議ハ之ヲ府県参事会ノ決定ニ付スヘシ其ノ決定ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ決定ニ関シテハ府県知事ヨリモ亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第九十七条　給料旅費退隠料退職給与金遺族扶助料費用弁償其ノ他諸給与ハ府県ノ負担トス
第五章　府県ノ財務
第一款　財産営造物及府県税
第九十八条　府県ハ積立金穀等ヲ設クルコトヲ得
第九十九条　府県ハ営造物若ハ公共ノ用ニ供シタル財産ノ使用ニ付使用料ヲ徴収シ又ハ特ニ一個人ノ為ニスル事務ニ付手数料ヲ徴収スルコトヲ得
第百条　此ノ法律中別ニ規定アルモノヲ除ク外使用料手数料ニ関スル細則ハ府県会ノ議決ヲ経内務大臣ノ許可ヲ得テ府県知事之ヲ定ム其ノ細則ニハ過料二円以下ノ罰則ヲ設クルコトヲ得
過料ニ処シ及之ヲ徴収スルハ府県知事之ヲ掌ル其ノ処分ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第百一条　府県ハ其ノ公益上必要アル場合ニ於テハ寄附若ハ補助ヲ為スコトヲ得
第百二条　府県ハ其ノ必要ナル費用及法律勅令又ハ従来ノ慣例ニ依リ府県ノ負担ニ属スル費用ヲ支弁スル義務ヲ負フ
第百三条　府県税及其ノ賦課徴収方法ニ関シテハ法律ニ規定アルモノヲ除ク外勅令ノ定ムル所ニ依ル
府県ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ費用ヲ市町村ニ分賦スルコトヲ得
第百四条　府県内ニ住所ヲ有スル者ハ府県税ヲ納ムル義務ヲ負フ
第百五条　三箇月以上府県内ニ滞在スル者ハ其ノ滞在ノ初ニ遡リ府県税ヲ納ムル義務ヲ負フ
第百六条　府県内ニ住所ヲ有セス又ハ三箇月以上滞在スルコトナシト雖府県内ニ於テ土地家屋物件ヲ所有シ若ハ使用シ又ハ営業所ヲ定メテ営業ヲ為シ又ハ府県内ニ於テ特定ノ行為ヲ為ス者ハ其ノ土地家屋物件営業若ハ其ノ収入ニ対シ又ハ行為ニ対シテ賦課スル府県税ヲ納ムル義務ヲ負フ其ノ法人タルトキ亦同シ但シ国ノ事業若ハ行為ニ対シテハ此ノ限ニ在ラス
第百七条　納税者ノ府県外ニ於テ所有シ若ハ使用スル土地家屋物件又ハ府県外ニ於テ営業所ヲ定メタル営業ヨリ生スル収入ニ対シテハ府県税ヲ賦課スルコトヲ得ス
住所滞在一府県以上ニ渉ル者ノ収入ニ対シ府県税ヲ賦課スルトキハ其ノ収入ヲ各府県ニ平分シ其ノ一部ニノミ賦課スヘシ但シ土地家屋物件又ハ営業所ヲ定メタル営業ヨリ生スル収入ハ此ノ限ニ在ラス
第百八条　一府県以上ニ渉リ営業所ヲ定メテ営業ヲ為シ且其ノ本税ヲ分別シテ納メサル者ニ対シ関係府県ニ於テ営業税ノ附加税ヲ賦課スルトキハ関係府県知事協議ノ上其ノ歩合ヲ定メ内務大臣及大蔵大臣ノ許可ヲ受クヘシ若協議調ハサルトキハ内務大臣及大蔵大臣之ヲ定ム
第百九条　府県税賦課ノ細目ニ係ル事項ハ府県会ノ議決ニ依リ関係市町村会ノ議決ニ付スルコトヲ得
市町村会ニ於テ府県会ノ議決ニ依リ定マリタル期限内ニ其ノ議決ヲ為ササルトキ若ハ不適当ノ議決ヲ為シタルトキハ府県参事会之ヲ議決スヘシ
第百十条　府県税ヲ賦課スルコトヲ得サルモノニ関シテハ法律勅令ヲ以テ別段ノ規定ヲ設クルモノヲ除ク外市町村税ノ例ニ依ル
第百十一条　府県内ノ一部ニ対シ特ニ利益アル事件ニ関シテハ勅令ノ定ムル所ニ依リ不均一ノ賦課ヲ為スコトヲ得
第百十二条　府県ハ其ノ必要ニ依リ夫役及現品ヲ府県内一部ノ市町村其ノ他公共団体若ハ一部ノ納税義務者ニ賦課スルコトヲ得但シ学芸美術及手工ニ関スル労役ヲ課スルコトヲ得ス
夫役及現品ハ急迫ノ場合ヲ除ク外金額ニ算出シテ賦課スヘシ
夫役ヲ課セラレタル者ハ其ノ便宜ニ従ヒ本人自ラ之ニ当リ又ハ適当ノ代人ヲ出スコトヲ得又夫役及現品ハ急迫ノ場合ヲ除ク外金銭ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
第百十三条　府県税ノ減免若ハ納税ノ延期ハ特別ノ事情アル者ニ限リ府県知事ハ府県参事会ノ議決ヲ経テ之ヲ許スコトヲ得
第百十四条　市制施行ノ府県ニ於テハ郡庁舎建築修繕費及郡役所費ハ郡ニ属スル部分ノ負担トス
第百十五条　府県税ノ賦課ヲ受ケタル者其ノ賦課ニ付違法若ハ錯誤アリト認ムルトキハ徴税令書又ハ徴税伝令書ノ交付後三箇月以内ニ府県知事ニ異議ノ申立ヲ為スコトヲ得
第百三条第二項ノ場合ニ於テ市町村ハ府県費ノ分賦ニ関シ違法若ハ錯誤アリト認ムルトキハ其ノ告知ヲ受ケタル時ヨリ三箇月以内ニ府県知事ニ異議ノ申立ヲ為スコトヲ得
前二項ノ異議ハ之ヲ府県参事会ノ決定ニ付スヘシ其ノ決定ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
使用料及手数料ノ徴収ニ関シテモ亦第一項及第三項ノ例ニ依ル
本条ノ決定ニ関シテハ府県知事郡島ノ官吏吏員市町村吏員ヨリモ亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第百十六条　府県税ノ賦課ニ関シ必要アル場合ニ於テハ当該行政庁ハ日出ヨリ日没マテノ間営業者ニ関シテハ仍其ノ営業時間家宅ニ臨検シ又ハ帳簿物件ノ検査ヲ為スコトヲ得
府県税使用料手数料夫役現品ニ代フル金銭過料其ノ他府県ノ収入ヲ定期内ニ納メサル者アルトキハ国税滞納処分ノ例ニ依リ之ヲ処分スヘシ
本条ニ記載スル徴収金ハ国ノ徴収金ニ次テ先取特権ヲ有シ其ノ追徴還付及時効ニ付テハ国税ノ例ニ依ル
本条第二項ノ場合ニ於テ郡島ノ官吏吏員市町村吏員ノ処分ニ不服アル者ハ府県参事会ニ訴願シ其ノ裁決又ハ府県知事ノ処分ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ関シテハ府県知事郡島ノ官吏吏員市町村吏員ヨリモ亦訴訟ヲ提起スルコトヲ得
本条第二項ノ処分ハ其ノ確定ニ至ルマテ執行ヲ停止ス
第百十七条　府県ハ其ノ負債ヲ償還スル為又ハ府県ノ永久ノ利益ト為ルヘキ支出ヲ要スル為又ハ天災事変等ノ為必要アル場合ニ限リ府県会ノ議決ヲ経テ府県債ヲ起スコトヲ得
府県債ヲ起スニ付府県会ノ議決ヲ経ルトキハ併セテ起債ノ方法利息ノ定率及償還ノ方法ニ付議決ヲ経ヘシ
府県ハ予算内ノ支出ヲ為ス為本条ノ例ニ依ラス府県参事会ノ議決ヲ経テ一時ノ借入金ヲ為スコトヲ得
第二款　歳入出予算及決算
第百十八条　府県知事ハ毎会計年度歳入出予算ヲ調製シ年度開始前府県会ノ議決ヲ経ヘシ
府県ノ会計年度ハ政府ノ会計年度ニ同シ
予算ヲ府県会ニ提出スルトキハ府県知事ハ併セテ財産表ヲ提出スヘシ
第百十九条　府県知事ハ府県会ノ議決ヲ経テ既定予算ノ追加若ハ更正ヲ為スコトヲ得
第百二十条　府県費ヲ以テ支弁スル事件ニシテ数年ヲ期シテ施行スヘキモノ又ハ数年ヲ期シテ其ノ費用ヲ支出スヘキモノハ府県会ノ議決ヲ経テ其ノ年期間各年度ノ支出額ヲ定メ継続費ト為スコトヲ得
第百二十一条　予算外ノ支出若ハ予算超過ノ支出ニ充ツル為予備費ヲ設クヘシ但シ府県会ノ否決シタル費途ニ充ツルコトヲ得ス
第百二十二条　予算ハ議決ヲ経タル後直ニ之ヲ内務大臣ニ報告シ並其ノ要領ヲ告示スヘシ
第百二十三条　府県知事ハ府県会ノ議決ヲ経テ特別会計ヲ設クルコトヲ得
第百二十四条　決算ハ翌翌年ノ通常会ニ於テ之ヲ府県会ニ報告スヘシ
府県知事ハ決算ヲ府県会ニ報告スル前府県参事会ノ審査ニ付スヘシ若府県知事ト府県参事会ト意見ヲ異ニスルトキハ府県知事ハ府県参事会ノ意見ヲ決算ニ添ヘ府県会ニ提出スヘシ
決算ハ之ヲ内務大臣ニ報告シ並其ノ要領ヲ告示スヘシ
第百二十五条　予算調製ノ式並費目流用其ノ他財務ニ関スル必要ナル規定ハ内務大臣之ヲ定ム
第百二十六条　府県吏員ノ身元保証及賠償責任ニ関スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六章　府県行政ノ監督
第百二十七条　府県ノ行政ハ内務大臣之ヲ監督ス
第百二十八条　此ノ法律ニ規定スル異議若ハ訴願ハ処分ヲ為シ又ハ決定書若ハ裁決書ノ交付ヲ受ケタル翌日ヨリ起算シ十四日以内ニ之ヲ提起スヘシ但シ此ノ法律中別ニ期限ヲ定メタルモノハ此ノ限ニ在ラス
此ノ法律ニ規定スル行政訴訟ハ処分ヲ為シ決定書若ハ裁決書ノ交付ヲ受ケタル翌日ヨリ起算シ二十一日以内ニ之ヲ提起スヘシ
決定書若ハ裁決書ノ交付ヲ受ケサル者ニ関シテハ前二項ノ期間ハ告示ノ翌日ヨリ起算ス
此ノ法律ニ規定スル異議ノ決定ハ文書ヲ以テ之ヲ為シ其ノ理由ヲ付スヘシ
前項異議ノ決定書ハ之ヲ申立人ニ交付スヘシ
此ノ法律ニ規定スル異議ノ申立若ハ訴願ノ提起ニ関スル期間ノ計算並天災事変ノ場合ニ於ケル特例ニ付テハ民事訴訟法ノ規定ヲ準用ス
異議ヲ申立又ハ訴願訴訟ヲ提起スル者アルトキハ行政庁及行政裁判所ハ其ノ職権ニ依リ又ハ関係者ノ請求ニ依リ必要ト認ムル場合ニ限リ処分ノ執行ヲ停止スルコトヲ得
第百二十九条　内務大臣ハ府県行政ノ法律命令ニ背戻セサルヤ又ハ公益ヲ害セサルヤ否ヲ監視スヘシ内務大臣ハ之カ為行政事務ニ関シテ報告ヲ為サシメ書類帳簿ヲ徴シ並実地ニ就キ事務ヲ視察シ出納ヲ検閲スルノ権ヲ有ス
内務大臣ハ府県行政ノ監督上必要ナル命令ヲ発シ処分ヲ為スノ権ヲ有ス
第百三十条　内務大臣ハ府県ノ予算中不適当ト認ムルモノアルトキハ之ヲ削減スルコトヲ得
第百三十一条　内務大臣ハ勅裁ヲ経テ府県会ノ解散ヲ命スルコトヲ得
府県会解散ノ場合ニ於テハ三箇月以内ニ議員ヲ選挙スヘシ
解散後始メテ府県会ヲ招集スルトキハ府県知事ハ第五十条第二項ノ規定ニ拘ラス内務大臣ノ許可ヲ得テ別ニ会期ヲ定ムルコトヲ得
第百三十二条　府県吏員ノ服務規律ハ内務大臣之ヲ定ム
第百三十三条　左ニ掲クル事件ハ内務大臣ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
一　学芸美術又ハ歴史上貴重ナル物件ヲ処分シ若ハ大ナル変更ヲ為ス事
二　使用料手数料ヲ新設シ増額シ又ハ変更スル事
三　寄附若ハ補助ヲ為ス事
四　不動産ノ処分ニ関スル事
五　第百十二条ニ依リ夫役及現品ヲ賦課スル事但シ急迫ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
六　継続費ヲ定メ若ハ変更スル事
七　特別会計ヲ設クル事
第百三十四条　左ニ掲クル事件ハ内務大臣及大蔵大臣ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
一　府県債ヲ起シ並起債ノ方法利息ノ定率及償還ノ方法ヲ定メ若ハ変更スル事但シ第百十七条末項ノ借入金ハ此ノ限ニ在ラス
二　地租三分ノ一ヲ超過スル附加税ヲ賦課スル事但シ法律勅令中別段ノ規定アル場合ハ此ノ限ニ在ラス
三　法律勅令ノ規定ニ依リ官庁ヨリ下渡ス歩合金ニ対シ支出金額ヲ定ムル事
第百三十五条　府県ノ行政ニ関シ主務大臣ノ許可ヲ要スヘキ事項ニ付テハ主務大臣ハ許可申請ノ趣旨ニ反セスト認ムル範囲内ニ於テ更正シテ許可ヲ与フルコトヲ得
第百三十六条　府県ノ行政ニ関シ主務大臣ノ許可ヲ要スヘキ事項中其ノ軽易ナルモノハ勅令ノ規定ニ依リ許可ヲ経スシテ処分スルコトヲ得
第七章　附則
第百三十七条　此ノ法律ハ明治二十三年法律第三十五号府県制ヲ施行シタル府県ニハ明治三十二年七月一日ヨリ之ヲ施行シ其ノ他ノ府県ニ関スル施行ノ時期ハ府県知事ノ具申ニ依リ内務大臣之ヲ定ム
第百三十八条　島嶼ニ関スル府県ノ行政ニ付テハ勅令ヲ以テ特例ヲ設クルコトヲ得
町村制ヲ施行セサル島嶼ヨリ選出スヘキ府県会議員ノ選挙ニ関スル事項ハ勅令ノ定ムル所ニ依ル
第百三十九条　法律命令中別段ノ規定アルモノヲ除ク外此ノ法律ニ規定スル郡長ノ職務ハ島司ヲ置ケル島嶼ニ於テハ島司之ヲ行ヒ町村長ノ職務ハ町村制ヲ施行セサル地ニ於テハ戸長又ハ之ニ準スヘキ者之ヲ行フ
第百四十条　従前郡市経済ヲ異ニシタル府県ノ財産処分ニ関スル規定ハ内務大臣之ヲ定ム
特別ノ事情アル府県ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ市部郡部ノ経済ヲ分別シ市部会郡部会市部参事会郡部参事会ヲ置キ其ノ他必要ナル事項ニ関シ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第百四十一条　明治二十三年法律第八十八号府県税徴収法及地方税ニ関スル従前ノ規定ハ此ノ法律ニ依リ変更シタルモノヲ除ク外勅令ヲ以テ別段ノ規定ヲ設クルマテ其ノ効力ヲ有ス
第百四十二条　明治二十三年法律第三十五号府県制ノ規定ニ依リ選挙セラレタル府県会議員府県参事会員ハ此ノ法律施行ノ日ヨリ其ノ職ヲ失フ
本法発布後施行ノ日ニ至ルマテノ間ニ明治二十三年法律第三十五号府県制ヲ施行シタル府県ニ於テハ府県会議員ノ改選ヲ要スルコトアルモ其ノ改選ヲ行ハス議員ハ本法施行ノ日マテ在任ス
第百四十三条　此ノ法律施行ノ際府県会及府県参事会ノ職務ニ属スル事項ニシテ急施ヲ要スルモノハ其ノ成立ニ至ルマテノ間府県知事之ヲ行フ
第百四十四条　此ノ法律施行ノ際議員ヲ選挙スルニ必要ナル選挙人名簿ノ調製ニ限リ第九条乃至第十二条ノ期日及期間ハ勅令ヲ以テ別ニ之ヲ定ムルコトヲ得但シ其ノ選挙人名簿ハ翌年調製スル選挙人名簿確定ノ日マテ其ノ効力ヲ有ス
第百四十五条　此ノ法律ニ定ムル直接税ノ種類ハ内務大臣及大蔵大臣之ヲ告示ス
第百四十六条　明治十三年第十五号布告府県会規則明治十四年第八号布告区郡部会規則明治二十二年法律第六号府県会議員選挙規則其ノ他此ノ法律ニ牴触スル法規ハ此ノ法律施行ノ府県ニ於テハ其ノ効力ヲ失フ
第百四十七条　此ノ法律ヲ施行スル為必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム