朕府縣制施行令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
攝政名
大正十五年六月二十四日
內閣總理大臣 若槻禮次郞
內務大臣 濱口雄幸
勅令第二百號
府縣制施行令
第一章 府縣會議員ノ選擧
第一條 府縣制第六條第二項ノ規定ニ依リ除外スベキ學生生徒左ノ如シ
一 陸軍各部依託學生生徒
二 海軍軍醫學生藥劑學生主計學生造船學生造機學生造兵學生竝ニ海軍豫備生徒及海軍豫備練習生
第二條 府縣制第十五條第四項ノ規定ニ依リ市町村ノ區域ヲ分チテ數投票區ヲ設ケ又ハ數町村ノ區域ヲ合セテ一投票區ヲ設ケタルトキハ府縣知事ハ直ニ其ノ區劃ヲ告示スベシ
第三條 府縣制第十五條第四項ノ規定ニ依リ市町村ノ區域ヲ分チテ數投票區ヲ設ケタル場合ニ於テハ左ノ規定ニ依ル
一 投票管理者ハ投票區ノ一ニ於テハ市町村長トシ其ノ他ノ投票區ニ於テハ市町村長ノ指定シタル市町村吏員ヲ以テ之ニ充ツ
二 市町村長ハ選擧人名簿ニ依リ投票區(市町村長投票管理者タル投票區ヲ除ク)每ニ名簿ノ抄本ヲ調製シ選擧ノ期日ノ告示アリタルトキハ直ニ之ヲ關係投票管理者ニ送付スベシ
三 市町村長ノ指定シタル市町村吏員投票管理者タル投票區ニ於テハ府縣制第十八條第三項及第二十一條竝ニ本令第八條中選擧人名簿トアルハ選擧人名簿ノ抄本トス
四 選擧人名簿ノ抄本ハ市町村長ニ於テ議員ノ任期間之ヲ保存スベシ
第四條 府縣制第十五條第四項ノ規定ニ依リ數町村ノ區域ヲ合セテ一投票區ヲ設ケタル場合ニ於テハ左ノ規定ニ依ル
一 投票管理者ハ府縣知事ニ於テ關係町村長ノ中ニ就キ之ヲ指定ス
二 町村長ハ選擧ノ期日ノ告示アリタルトキハ直ニ選擧人名簿ヲ投票管理者ニ送付スベシ
三 町村費ヲ以テ支辨スベキ投票所ノ費用ハ之ヲ關係町村ニ平分スベシ
第五條 府縣制第十八條第七項ノ規定ニ依リ盲人ガ投票ニ關スル記載ニ使用スルコトヲ得ル點字ハ市制町村制施行令別表ノ定ムル所ニ依ル
點字ニ依リ投票ヲ爲サントスル選擧人ハ投票管理者ニ對シ其ノ旨ヲ申立ツベシ、此ノ場合ニ於テハ投票管理者ハ投票用紙ニ點字投票ナル旨ノ印ヲ押捺シテ交付スベシ
點字ニ依ル投票ノ拒否ニ付テハ府縣制第十九條ノ例ニ依ル、此ノ場合ニ於テハ封筒ニ點字投票ナル旨ノ印ヲ押捺シテ交付スベシ
前項ノ規定ニ依リ假ニ爲サシメタル投票ハ府縣制第二十五條第二項及第三項ノ規定ノ適用ニ付テハ同法第十九條第二項及第四項ノ投票ト看做ス
第六條 府縣制第二十三條ノ二ノ規定ニ依リ開票區ヲ設ケタルトキハ府縣知事ハ直ニ其ノ區劃ヲ告示スベシ
第七條 開票管理者ハ府縣知事ノ指定シタル官吏又ハ吏員ヲ以テ之ニ充ツ
開票管理者ハ開票ニ關スル事務ヲ擔任ス
開票所ハ開票管理者ノ指定シタル場所ニ之ヲ設ク
開票管理者ハ豫メ開票ノ場所及日時ヲ告示スベシ
第八條 開票區ノ區劃內ノ投票管理者ハ其ノ指定シタル投票立會人ト共ニ町村ノ投票區ニ於テハ投票ノ翌日迄ニ、市ノ投票區ニ於テハ投票ノ當日投票函、投票錄及選擧人名簿ヲ開票管理者ニ送致スベシ
第九條 投票ノ點檢終リタルトキハ開票管理者ハ直ニ其ノ結果ヲ選擧長ニ報告スベシ
第十條 開票管理者ハ開票錄ヲ作リ開票ニ關スル顚末ヲ記載シ之ヲ朗讀シ二人以上ノ開票立會人ト共ニ之ニ署名シ直ニ投票錄及投票ト併セテ之ヲ選擧長ニ送致スベシ
第十一條 開票管理者ハ第九條ノ報告ヲ爲シタルトキハ直ニ選擧人名簿(選擧人名簿ノ抄本アルトキハ併セテ其ノ抄本)ヲ町村長ニ返付スベシ
第十二條 選擧長ハ總テノ開票管理者ヨリ第九條ノ報告ヲ受ケタル日若ハ其ノ翌日(又ハ總テノ投票函ノ送致ヲ受ケタル日若ハ其ノ翌日)選擧會ニ於テ選擧立會人立會ノ上其ノ報告ヲ調查シ府縣制第二十五條第三項ノ規定ニ依リ爲シタル點檢ノ結果ト併セテ各議員候補者ノ得票總數ヲ計算スベシ
第十三條 選擧ノ一部無效ト爲リ更ニ選擧ヲ行ヒタル場合ニ於テハ選擧長ハ前條ノ規定ニ準ジ其ノ部分ニ付前條ノ手續ヲ爲シ他ノ部分ニ於ケル各議員候補者ノ得票數ト併セテ其ノ得票總數ヲ計算スベシ
第十四條 開票區ヲ設ケタル場合ニ於テハ選擧長ハ府縣制第三十一條第一項ノ報告ニ開票錄ノ寫ヲ添附スベシ
第十五條 第四條第一號若ハ第七條第一項又ハ府縣制第二十三條第一項ノ規定ニ依リ投票管理者、開票管理者又ハ選擧長ヲ指定シタルトキハ府縣知事ハ直ニ之ヲ告示スベシ
前項ノ規定ハ第三條第一號ノ規定ニ依リ市町村長ニ於テ投票管理者ヲ指定シタル場合ニ之ヲ準用ス
第十六條 府縣制第十六條ノ規定ハ開票立會人ニ、同法第十七條第一項及第二項ノ規定ハ開票所ニ、同法第二十二條、第二十五條、第二十六條及第二十八條ノ規定ハ開票所ニ於ケル開票ニ之ヲ準用ス
第二章 府縣會議員ノ選擧運動及其ノ費用竝ニ公立學校等ノ設備ノ使用
第十七條 選擧事務所ハ議員候補者一人ニ付選擧區ノ配當議員數ヲ以テ選擧人名簿確定ノ日ニ於テ之ニ登錄セラレタル者ノ總數ヲ除シテ得タル數一萬以上ナルトキハ三箇所ヲ、一萬未滿ナルトキハ二箇所ヲ超ユルコトヲ得ズ
選擧ノ一部無效ト爲リ更ニ選擧ヲ行フ場合又ハ府縣制第十三條第二項ノ規定ニ依リ投票ヲ行フ場合ニ於テハ選擧事務所ハ前項ノ規定ニ依ル數ヲ超エザル範圍內ニ於テ府縣知事(東京府ニ於テハ警視總監)ノ定メタル數ヲ超ユルコトヲ得ズ
府縣知事(東京府ニ於テハ警視總監)ハ選擧ノ期日ノ告示アリタル後直ニ前二項ノ規定ニ依ル選擧事務所ノ數ヲ告示スベシ
第十八條 選擧委員及選擧事務員ハ議員候補者一人ニ付選擧區ノ配當議員數ヲ以テ選擧人名簿確定ノ日ニ於テ之ニ登錄セラレタル者ノ總數ヲ除シテ得タル數一萬以上ナルトキハ通ジテ二十人ヲ、一萬未滿ナルトキハ通ジテ十五人ヲ超ユルコトヲ得ズ
前條第二項及第三項ノ規定ハ選擧委員及選擧事務員ニ之ヲ準用ス
第十九條 選擧運動ノ費用ハ議員候補者一人ニ付左ノ各號ノ額ヲ超ユルコトヲ得ズ
一 選擧區ノ配當議員數ヲ以テ選擧人名簿確定ノ日ニ於テ之ニ登錄セラレタル者ノ總數ヲ除シテ得タル數ヲ四十錢ニ乘ジテ得タル額
二 選擧ノ一部無效ト爲リ更ニ選擧ヲ行フ場合ニ於テハ選擧區ノ配當議員數ヲ以テ選擧人名簿確定ノ日ニ於テ關係區域ノ選擧人名簿ニ登錄セラレタル者ノ總數ヲ除シテ得タル數ヲ四十錢ニ乘ジテ得タル額
三 府縣制第十三條第二項ノ規定ニ依リ投票ヲ行フ場合ニ於テハ前號ノ規定ニ準ジテ算出シタル額但シ府縣知事(東京府ニ於テハ警視總監)必要アリト認ムルトキハ之ヲ減額スルコトヲ得
府縣知事(東京府ニ於テハ警視總監)ハ選擧ノ期日ノ告示アリタル後直ニ前項ノ規定ニ依ル額ヲ告示スベシ
第二十條 衆議院議員選擧法施行令第八章、第九章及第十二章ノ規定ハ府縣會議員ノ選擧ニ之ヲ準用ス
第三章 府縣出納吏及府縣吏員ノ身元保證及賠償責任
第二十一條 府縣出納吏其ノ管掌ニ屬スル現金、證券其ノ他ノ財產ヲ亡失又ハ毀損シタルトキハ府縣知事ハ期間ヲ指定シ其ノ損害ヲ賠償セシムベシ但シ避クベカラザル事故ニ原因シタルトキ又ハ他ノ者ノ使用ニ供シタル場合ニ於テ合規ノ監督ヲ怠ラザリシトキハ府縣參事會ノ議決ヲ經テ其ノ賠償ノ責任ヲ免除スベシ
第二十二條 府縣出納吏以外ノ吏員其ノ執務上必要ナル物品ノ交付ヲ受ケ故意又ハ怠慢ニ因リ之ヲ亡失又ハ毀損シタルトキハ府縣知事ハ期間ヲ指定シ其ノ損害ヲ賠償セシムベシ
第二十三條 前二條ノ處分ヲ受ケタル者其ノ處分ニ不服アルトキハ府縣知事ニ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
前項ノ異議ノ申立アリタルトキハ府縣知事ハ七日以內ニ之ヲ府縣參事會ノ決定ニ付スベシ、府縣參事會ハ其ノ送付ヲ受ケタル日ヨリ三月以內ニ之ヲ決定スベシ
前項ノ決定ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第二項ノ決定ニ付テハ府縣知事ヨリモ訴訟ヲ提起スルコトヲ得
府縣制第三十八條及第百二十八條ノ規定ハ本條ノ規定ノ適用ニ付之ヲ準用ス
第二十四條 賠償金ノ徵收ニ付テハ府縣制第百十六條ノ例ニ依ル
第二十五條 府縣出納吏ニ對シ身元保證ヲ徵スルノ必要アリト認ムルトキハ府縣知事ハ其ノ種類、價格、程度其ノ他必要ナル事項ヲ定ムベシ
第四章 府縣費ノ分賦
第二十六條 府縣ハ臨時少額ノ費用ノ爲特ニ賦課徵收ヲ爲スヲ要スル場合ニ於テハ當該年度ノ府縣稅旣定豫算額ノ十分ノ一ノ範圍內ニ於テ其ノ費用ヲ府縣內市町村ニ分賦スルコトヲ得
第二十七條 前條分賦ノ割合ハ豫算ノ屬スル年度ノ前前年度ニ於ケル市町村ノ直接國稅及直接府縣稅ノ賦課額ニ依ル但シ本條ノ分賦方法ニ依リ難キ事情アルトキハ府縣知事ハ府縣會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ受ケ特別ノ分賦方法ヲ設クルコトヲ得
第二十八條 市部會及郡部會ヲ設ケタル府縣ニ於テハ府縣會ノ議決ヲ經テ其ノ市部ニ屬スル部分ニ賦課スベキ額ヲ市ニ分賦スルコトヲ得
第二十九條 第二十七條ニ規定スル直接國稅及直接府縣稅ノ種類左ノ如シ
國稅
地租 所得稅(所得稅法第三條第二種ニ係ル所得稅ヲ除ク) 營業稅 營業收益稅 鑛業稅 砂鑛區稅 取引所營業稅
府縣稅
特別地稅 戶數割 家屋稅 營業稅 雜種稅(遊興稅及觀覽稅ヲ除ク)
第五章 府縣稅ノ賦課徵收
第三十條 府縣ノ內外ニ涉リ營業所ヲ定メテ爲ス營業ニ付營業收益稅ヲ分別シテ納メザル者ニ對スル營業收益稅附加稅ノ賦課ニ關シテハ府縣制第百八條第一項ノ例ニ依ル
第三十一條 市町村ハ其ノ市町村內ノ府縣稅ヲ徵收シ之ヲ府縣ニ納入スルノ義務ヲ負フ
府縣ハ前項徵收ノ費用トシテ地租附加稅及特別地稅ニ對シテハ其ノ徵收金額ノ千分ノ七、其ノ他ノ府縣稅ニ對シテハ其ノ徵收金額ノ百分ノ四ヲ其ノ市町村ニ交付スベシ
第三十二條 市町村ハ避クベカラザル災害ニ因リ旣收ノ稅金ヲ失ヒタルトキハ其ノ稅金納入義務ノ免除ヲ府縣知事ニ申請スルコトヲ得
府縣知事前項ノ申請ヲ受ケタルトキハ七日以內ニ之ヲ府縣參事會ノ決定ニ付スベシ、府縣參事會ハ其ノ送付ヲ受ケタル日ヨリ三月以內ニ之ヲ決定スベシ
前項ノ決定ニ不服アル者ハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第二項ノ決定ニ付テハ府縣知事ヨリモ訴願ヲ提起スルコトヲ得
府縣制第三十八條及第百二十八條ノ規定ハ本條ノ規定ノ適用ニ付之ヲ準用ス
第三十三條 府縣稅ヲ徵收セントスルトキハ府縣知事又ハ其ノ委任ヲ受ケタル官吏吏員ハ市町村ニ對シ徵稅令書ヲ發シ市町村長ハ徵稅令書ニ依リ徵稅傳令書ヲ調製シ之ヲ納稅人ニ交付スベシ
府縣知事又ハ其ノ委任ヲ受ケタル官吏吏員ハ直ニ納稅人ニ對シ徵稅令書ヲ發スルコトヲ得
府縣ハ內務大臣及大藏大臣ノ許可ヲ得タル場合ニ限リ前二項ノ規定ニ依ラズ其ノ府縣ニ於テ發行スル證紙ヲ以テ府縣稅ヲ納入セシムルコトヲ得
第三十四條 徵稅傳令書ヲ受ケタル納稅人ハ其ノ稅金ヲ市町村ニ拂込ミ其ノ領收證ヲ得テ納稅ノ義務ヲ了ス
徵稅令書ヲ受ケタル納稅人ハ其ノ稅金ヲ府縣金庫ニ拂込ミ其ノ領收證ヲ得テ納稅ノ義務ヲ了ス但シ府縣知事ハ市町村吏員ヲシテ納稅人ニ對シ徵稅令書ヲ發セシムル場合ニ於テハ前項ノ例ニ依ラシムルコトヲ得
市町村ハ其ノ徵收シタル府縣稅ヲ府縣金庫ニ拂込ミ其ノ領收證ヲ得テ稅金納入ノ義務ヲ了ス
稅金ノ拂込又ハ其ノ拂込金ノ納入ニ付郵便振替貯金ノ方法ニ依リタル場合ニ於テハ納稅人又ハ市町村ハ稅金ヲ郵便官署ニ拂込ミ又ハ納入スルニ依リテ其ノ義務ヲ了ス
第三十五條 第三十三條第二項ノ規定ニ依リ市町村吏員ヲシテ徵稅令書ヲ發セシメタル場合ニ於テハ府縣知事ノ定ムル所ニ依リ其ノ市町村ニ對シ取扱費ヲ交付スルコトヲ得
第三十六條 徵稅令書又ハ徵稅傳令書ヲ受ケタル納稅人期限內ニ稅金ヲ完納セザルトキハ府縣知事又ハ其ノ委任ヲ受ケタル官吏吏員ハ直ニ督促狀ヲ發スベシ
督促狀ニハ府縣知事ノ定メタル期間內ニ於テ相當ノ期限ヲ指定スベシ
第三十七條 督促狀ヲ發シタルトキハ手數料ヲ徵收ス
手數料ノ額ハ府縣知事之ヲ定ム
市町村吏員ヲシテ督促狀ヲ發セシメタル場合ニ於ケル手數料ハ其ノ市町村ノ收入トス
第三十八條 市制町村制施行令第四十五條乃至第五十二條ノ規定ハ府縣稅ノ賦課徵收ニ之ヲ準用ス
第三十九條 府縣ハ內務大臣及大藏大臣ノ指定シタル府縣稅ニ付テハ第三十一條第一項ノ規定ニ拘ラズ其ノ徵收ノ便宜ヲ有スル者ヲシテ之ヲ徵收セシムルコトヲ得
前項ノ府縣稅ノ徵收ニ付テハ第三十三條ノ規定ニ依ラザルコトヲ得
第四十條 前條第一項ノ規定ニ依リ府縣稅ヲ徵收セシムル場合ニ於テハ納稅人ハ其ノ稅金ヲ徵收義務者ニ拂込ムニ依リテ納稅ノ義務ヲ了ス
第四十一條 第三十九條第一項ノ規定ニ依ル徵收義務者ハ徵收スベキ府縣稅ヲ府縣知事ノ指定シタル期日迄ニ府縣金庫又ハ郵便官署ニ拂込ムベシ其ノ期日迄ニ拂込マザルトキハ府縣知事ハ相當ノ期限ヲ指定シ督促狀ヲ發スベシ
第四十二條 第三十一條第二項、第三十二條及第三十四條第三項、第四項竝ニ市制町村制施行令第四十五條乃至第四十八條ノ規定ハ第三十九條第一項ノ規定ニ依リ府縣稅ヲ徵收セシムル場合ノ拂込金ニ之ヲ準用ス
第四十三條 府縣稅ノ徵收期ハ府縣知事之ヲ定ム
第四十四條 府縣稅ノ徵收ニ關スル細則ハ府縣知事之ヲ定ム
第四十五條 町村制ヲ施行セザル地ニ於ケル府縣稅ノ徵收ニ關シテハ本章ノ規定ヲ準用ス、其ノ準用シ難キ事項ハ府縣知事之ヲ定ム
第六章 府縣ノ監督
第四十六條 府縣行政ニ關シ主務大臣ノ許可ヲ要スル事項中左ニ揭グルモノハ其ノ許可ヲ受クルコトヲ要セズ
一 公會堂、公園、病院、試驗場、商品陳列所、倉庫、敎員養成所、產婆看護婦養成所、棧橋、墓地、火葬場、上屋、荷揚場、繫船浮標、種畜、種畜場、用水其ノ他之ニ類スルモノノ使用料ニ關スルコト
二 市部會及郡部會ヲ設ケタル府縣ニ於テ府縣ノ費用ヲ以テ支辨スベキ事件ニシテ其ノ市部ト郡部ト利益ノ程度ヲ異ニシ均一ノ賦課ヲ爲シ難キ事情アルトキ其ノ費用ニ限リ不均一ノ賦課ヲ爲スコト
三 支出總額五十萬圓以內ノ繼續費ニ關スルコト
四 繼續費ヲ減額スルコト
五 元本總額五十萬圓ニ達スル迄ノ府縣債ニ關スルコト
六 借入ノ翌年度ニ於テ償還スル府縣債ニ關スルコト但シ借入金ヲ以テ償還スルモノニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
七 府縣債ノ借入額ヲ減少シ利息ノ定率ヲ低減スルコト
八 府縣債ノ借入先ヲ變更シ又ハ債券發行ノ方法ニ依ル府縣債ヲ其ノ他ノ方法ニ依ル府縣債ニ變更スルコト
九 府縣債ノ償還年限ヲ短縮シ又ハ其ノ償還年限ヲ延長セズシテ低利借替ヲ爲シ若ハ繰上償還ヲ爲スコト但シ外資ニ依リタル府縣債ノ借入又ハ外資ヲ以テスル借替ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
十 府縣債ノ償還年限ヲ延長セズシテ不均等償還ヲ元利均等償還ニ變更シ又ハ年度內ノ償還期若ハ償還期數ヲ變更スルコト
第七章 市部及郡部ノ經濟ヲ分別シタル府縣ノ行政ニ關スル特例
第四十七條 從來市部及郡部ノ經濟ヲ分別シタル府縣ニ於テハ內務大臣ハ其ノ區域ニ依リ市部及郡部ノ經濟ヲ分別シ市部會及市部參事會竝ニ郡部會及郡部參事會ヲ設ケシムルコトヲ得
第四十八條 市部會及郡部會ハ各市部郡部ニ於テ選出シタル府縣會議員ヲ以テ之ヲ組織ス
市部又ハ郡部ニ於テ選出スベキ府縣會議員ノ數十二人ニ滿チザルトキハ府縣制第五條ノ定員ニ拘ラズ之ヲ十二人トス
第四十九條 府縣會ノ權限ニ屬スル事件ニシテ府縣會ノ議決ヲ經ベキモノト市部會又ハ郡部會ノ議決ヲ經ベキモノトノ分別ハ府縣會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ受ケ府縣知事之ヲ定ム、許司スベカラズト認ムルトキハ內務大臣之ヲ定ム
第五十條 市部會及郡部會ヲ設ケタル府縣ニ於テハ名譽職參事會員ノ定員ヲ十二人トス
市部會及郡部會ヲ設ケタル府縣ノ名譽職參事會員ハ各會ニ於テ其ノ定員ノ半數ヲ選擧ス
市部參事會及郡部參事會ハ議長及各部會ニ於テ選擧シタル名譽職參事會員ヲ以テ之ヲ組織ス
第五十一條 府縣費ニ關スル市部及郡部ノ分擔及收入ノ割合ハ府縣會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ受ケ府縣知事之ヲ定ム、許可スベカラズト認ムルトキハ內務大臣之ヲ定ム
第五十二條 第四十九條及前條ノ事件ニ付テハ議員定員ノ五分ノ四以上出席スルニ非ザレバ會議ヲ開クコトヲ得ズ
第五十三條 市部及郡部ノ經濟ヲ分別スル府縣ノ行政ニ關シテハ本章ニ規定スルモノノ外府縣制ノ規定ヲ準用ス
第五十四條 市部會又ハ郡部會解散ヲ命ゼラレタルトキハ其ノ議員ハ府縣會議員ノ職ヲ失フ
第八章 島嶼ニ於ケル府縣ノ行政ニ關スル特例
第五十五條 島嶼ノ經濟ト所屬本地ノ經濟トハ府縣會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ受ケ之ヲ分別スルコトヲ得
第五十六條 東京府下伊豆七島及小笠原島ニ於ケル府稅ノ賦課及府會議員ノ選擧ニ關シテハ當分從前ノ例ニ依ル
第九章 雜則
第五十七條 町村組合ニシテ町村ノ事務ノ全部又ハ役場事務ヲ共同處理スルモノハ本令ノ適用ニ付テハ之ヲ一町村、其ノ組合管理者ハ之ヲ町村長、其ノ組合吏員ハ之ヲ町村吏員ト看做ス
附 則
本令中議員選擧ニ關スル規定ハ次ノ總選擧ヨリ、其ノ他ノ規定ハ大正十五年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
左ノ勅令ハ之ヲ廢止ス
明治三十二年勅令第二百二十七號
明治三十二年勅令第二百二十八號
明治三十二年勅令第二百八十五號
明治三十二年勅令第三百十六號
明治三十三年勅令第八十一號
明治三十三年勅令第二百四十八號
府縣會議員選擧區分區令
大正十三年勅令第二百二十七號
從前ノ規定ニ依ル手續其ノ他ノ行爲ハ本令ニ別段ノ規定アルモノヲ除クノ外之ヲ本令ニ依リ爲シタルモノト看做ス
明治三十三年勅令第二百四十八號第二條ノ規定ニ依ル處分ニ關シ提起シタル訴願ニ付テハ仍從前ノ規定ニ依ル
明治三十三年勅令第二百四十八號第二條又ハ同年勅令第八十一號第三條ノ規定ニ依リ爲シタル決定又ハ處分ニ對スル異議ノ申立期間又ハ訴願ノ提起期間ハ決定又ハ處分アリタル日ノ翌日ヨリ之ヲ起算ス
明治三十三年勅令第八十一號第二條ノ規定ニ依リ府縣知事ニ爲シタル申請又ハ同令第三條ノ規定ニ依リ府縣參事會ノ決定ニ付セラレタル申請ニシテ大正十五年六月三十日迄ニ府縣參事會ノ決定ニ付セラレザルモノ又ハ府縣參事會ノ決定ナキモノニ付テハ第三十二條第二項ノ期間ハ同年七月一日ヨリ之ヲ起算ス
本令中議員選擧ニ關スル規定施行ノ際大正十五年勅令第三號衆議院議員選擧法施行令又ハ市制町村制施行令中公民權及議員選擧ニ關スル規定未ダ施行セラレザル場合ニ於テハ本令ノ適用ニ付テハ同令又ハ同規定ハ旣ニ施行セラレタルモノト看做ス
朕府県制施行令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
摂政名
大正十五年六月二十四日
内閣総理大臣 若槻礼次郎
内務大臣 浜口雄幸
勅令第二百号
府県制施行令
第一章 府県会議員ノ選挙
第一条 府県制第六条第二項ノ規定ニ依リ除外スベキ学生生徒左ノ如シ
一 陸軍各部依託学生生徒
二 海軍軍医学生薬剤学生主計学生造船学生造機学生造兵学生並ニ海軍予備生徒及海軍予備練習生
第二条 府県制第十五条第四項ノ規定ニ依リ市町村ノ区域ヲ分チテ数投票区ヲ設ケ又ハ数町村ノ区域ヲ合セテ一投票区ヲ設ケタルトキハ府県知事ハ直ニ其ノ区画ヲ告示スベシ
第三条 府県制第十五条第四項ノ規定ニ依リ市町村ノ区域ヲ分チテ数投票区ヲ設ケタル場合ニ於テハ左ノ規定ニ依ル
一 投票管理者ハ投票区ノ一ニ於テハ市町村長トシ其ノ他ノ投票区ニ於テハ市町村長ノ指定シタル市町村吏員ヲ以テ之ニ充ツ
二 市町村長ハ選挙人名簿ニ依リ投票区(市町村長投票管理者タル投票区ヲ除ク)毎ニ名簿ノ抄本ヲ調製シ選挙ノ期日ノ告示アリタルトキハ直ニ之ヲ関係投票管理者ニ送付スベシ
三 市町村長ノ指定シタル市町村吏員投票管理者タル投票区ニ於テハ府県制第十八条第三項及第二十一条並ニ本令第八条中選挙人名簿トアルハ選挙人名簿ノ抄本トス
四 選挙人名簿ノ抄本ハ市町村長ニ於テ議員ノ任期間之ヲ保存スベシ
第四条 府県制第十五条第四項ノ規定ニ依リ数町村ノ区域ヲ合セテ一投票区ヲ設ケタル場合ニ於テハ左ノ規定ニ依ル
一 投票管理者ハ府県知事ニ於テ関係町村長ノ中ニ就キ之ヲ指定ス
二 町村長ハ選挙ノ期日ノ告示アリタルトキハ直ニ選挙人名簿ヲ投票管理者ニ送付スベシ
三 町村費ヲ以テ支弁スベキ投票所ノ費用ハ之ヲ関係町村ニ平分スベシ
第五条 府県制第十八条第七項ノ規定ニ依リ盲人ガ投票ニ関スル記載ニ使用スルコトヲ得ル点字ハ市制町村制施行令別表ノ定ムル所ニ依ル
点字ニ依リ投票ヲ為サントスル選挙人ハ投票管理者ニ対シ其ノ旨ヲ申立ツベシ、此ノ場合ニ於テハ投票管理者ハ投票用紙ニ点字投票ナル旨ノ印ヲ押捺シテ交付スベシ
点字ニ依ル投票ノ拒否ニ付テハ府県制第十九条ノ例ニ依ル、此ノ場合ニ於テハ封筒ニ点字投票ナル旨ノ印ヲ押捺シテ交付スベシ
前項ノ規定ニ依リ仮ニ為サシメタル投票ハ府県制第二十五条第二項及第三項ノ規定ノ適用ニ付テハ同法第十九条第二項及第四項ノ投票ト看做ス
第六条 府県制第二十三条ノ二ノ規定ニ依リ開票区ヲ設ケタルトキハ府県知事ハ直ニ其ノ区画ヲ告示スベシ
第七条 開票管理者ハ府県知事ノ指定シタル官吏又ハ吏員ヲ以テ之ニ充ツ
開票管理者ハ開票ニ関スル事務ヲ担任ス
開票所ハ開票管理者ノ指定シタル場所ニ之ヲ設ク
開票管理者ハ予メ開票ノ場所及日時ヲ告示スベシ
第八条 開票区ノ区画内ノ投票管理者ハ其ノ指定シタル投票立会人ト共ニ町村ノ投票区ニ於テハ投票ノ翌日迄ニ、市ノ投票区ニ於テハ投票ノ当日投票函、投票録及選挙人名簿ヲ開票管理者ニ送致スベシ
第九条 投票ノ点検終リタルトキハ開票管理者ハ直ニ其ノ結果ヲ選挙長ニ報告スベシ
第十条 開票管理者ハ開票録ヲ作リ開票ニ関スル顛末ヲ記載シ之ヲ朗読シ二人以上ノ開票立会人ト共ニ之ニ署名シ直ニ投票録及投票ト併セテ之ヲ選挙長ニ送致スベシ
第十一条 開票管理者ハ第九条ノ報告ヲ為シタルトキハ直ニ選挙人名簿(選挙人名簿ノ抄本アルトキハ併セテ其ノ抄本)ヲ町村長ニ返付スベシ
第十二条 選挙長ハ総テノ開票管理者ヨリ第九条ノ報告ヲ受ケタル日若ハ其ノ翌日(又ハ総テノ投票函ノ送致ヲ受ケタル日若ハ其ノ翌日)選挙会ニ於テ選挙立会人立会ノ上其ノ報告ヲ調査シ府県制第二十五条第三項ノ規定ニ依リ為シタル点検ノ結果ト併セテ各議員候補者ノ得票総数ヲ計算スベシ
第十三条 選挙ノ一部無効ト為リ更ニ選挙ヲ行ヒタル場合ニ於テハ選挙長ハ前条ノ規定ニ準ジ其ノ部分ニ付前条ノ手続ヲ為シ他ノ部分ニ於ケル各議員候補者ノ得票数ト併セテ其ノ得票総数ヲ計算スベシ
第十四条 開票区ヲ設ケタル場合ニ於テハ選挙長ハ府県制第三十一条第一項ノ報告ニ開票録ノ写ヲ添附スベシ
第十五条 第四条第一号若ハ第七条第一項又ハ府県制第二十三条第一項ノ規定ニ依リ投票管理者、開票管理者又ハ選挙長ヲ指定シタルトキハ府県知事ハ直ニ之ヲ告示スベシ
前項ノ規定ハ第三条第一号ノ規定ニ依リ市町村長ニ於テ投票管理者ヲ指定シタル場合ニ之ヲ準用ス
第十六条 府県制第十六条ノ規定ハ開票立会人ニ、同法第十七条第一項及第二項ノ規定ハ開票所ニ、同法第二十二条、第二十五条、第二十六条及第二十八条ノ規定ハ開票所ニ於ケル開票ニ之ヲ準用ス
第二章 府県会議員ノ選挙運動及其ノ費用並ニ公立学校等ノ設備ノ使用
第十七条 選挙事務所ハ議員候補者一人ニ付選挙区ノ配当議員数ヲ以テ選挙人名簿確定ノ日ニ於テ之ニ登録セラレタル者ノ総数ヲ除シテ得タル数一万以上ナルトキハ三箇所ヲ、一万未満ナルトキハ二箇所ヲ超ユルコトヲ得ズ
選挙ノ一部無効ト為リ更ニ選挙ヲ行フ場合又ハ府県制第十三条第二項ノ規定ニ依リ投票ヲ行フ場合ニ於テハ選挙事務所ハ前項ノ規定ニ依ル数ヲ超エザル範囲内ニ於テ府県知事(東京府ニ於テハ警視総監)ノ定メタル数ヲ超ユルコトヲ得ズ
府県知事(東京府ニ於テハ警視総監)ハ選挙ノ期日ノ告示アリタル後直ニ前二項ノ規定ニ依ル選挙事務所ノ数ヲ告示スベシ
第十八条 選挙委員及選挙事務員ハ議員候補者一人ニ付選挙区ノ配当議員数ヲ以テ選挙人名簿確定ノ日ニ於テ之ニ登録セラレタル者ノ総数ヲ除シテ得タル数一万以上ナルトキハ通ジテ二十人ヲ、一万未満ナルトキハ通ジテ十五人ヲ超ユルコトヲ得ズ
前条第二項及第三項ノ規定ハ選挙委員及選挙事務員ニ之ヲ準用ス
第十九条 選挙運動ノ費用ハ議員候補者一人ニ付左ノ各号ノ額ヲ超ユルコトヲ得ズ
一 選挙区ノ配当議員数ヲ以テ選挙人名簿確定ノ日ニ於テ之ニ登録セラレタル者ノ総数ヲ除シテ得タル数ヲ四十銭ニ乗ジテ得タル額
二 選挙ノ一部無効ト為リ更ニ選挙ヲ行フ場合ニ於テハ選挙区ノ配当議員数ヲ以テ選挙人名簿確定ノ日ニ於テ関係区域ノ選挙人名簿ニ登録セラレタル者ノ総数ヲ除シテ得タル数ヲ四十銭ニ乗ジテ得タル額
三 府県制第十三条第二項ノ規定ニ依リ投票ヲ行フ場合ニ於テハ前号ノ規定ニ準ジテ算出シタル額但シ府県知事(東京府ニ於テハ警視総監)必要アリト認ムルトキハ之ヲ減額スルコトヲ得
府県知事(東京府ニ於テハ警視総監)ハ選挙ノ期日ノ告示アリタル後直ニ前項ノ規定ニ依ル額ヲ告示スベシ
第二十条 衆議院議員選挙法施行令第八章、第九章及第十二章ノ規定ハ府県会議員ノ選挙ニ之ヲ準用ス
第三章 府県出納吏及府県吏員ノ身元保証及賠償責任
第二十一条 府県出納吏其ノ管掌ニ属スル現金、証券其ノ他ノ財産ヲ亡失又ハ毀損シタルトキハ府県知事ハ期間ヲ指定シ其ノ損害ヲ賠償セシムベシ但シ避クベカラザル事故ニ原因シタルトキ又ハ他ノ者ノ使用ニ供シタル場合ニ於テ合規ノ監督ヲ怠ラザリシトキハ府県参事会ノ議決ヲ経テ其ノ賠償ノ責任ヲ免除スベシ
第二十二条 府県出納吏以外ノ吏員其ノ執務上必要ナル物品ノ交付ヲ受ケ故意又ハ怠慢ニ因リ之ヲ亡失又ハ毀損シタルトキハ府県知事ハ期間ヲ指定シ其ノ損害ヲ賠償セシムベシ
第二十三条 前二条ノ処分ヲ受ケタル者其ノ処分ニ不服アルトキハ府県知事ニ異議ノ申立ヲ為スコトヲ得
前項ノ異議ノ申立アリタルトキハ府県知事ハ七日以内ニ之ヲ府県参事会ノ決定ニ付スベシ、府県参事会ハ其ノ送付ヲ受ケタル日ヨリ三月以内ニ之ヲ決定スベシ
前項ノ決定ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第二項ノ決定ニ付テハ府県知事ヨリモ訴訟ヲ提起スルコトヲ得
府県制第三十八条及第百二十八条ノ規定ハ本条ノ規定ノ適用ニ付之ヲ準用ス
第二十四条 賠償金ノ徴収ニ付テハ府県制第百十六条ノ例ニ依ル
第二十五条 府県出納吏ニ対シ身元保証ヲ徴スルノ必要アリト認ムルトキハ府県知事ハ其ノ種類、価格、程度其ノ他必要ナル事項ヲ定ムベシ
第四章 府県費ノ分賦
第二十六条 府県ハ臨時少額ノ費用ノ為特ニ賦課徴収ヲ為スヲ要スル場合ニ於テハ当該年度ノ府県税既定予算額ノ十分ノ一ノ範囲内ニ於テ其ノ費用ヲ府県内市町村ニ分賦スルコトヲ得
第二十七条 前条分賦ノ割合ハ予算ノ属スル年度ノ前前年度ニ於ケル市町村ノ直接国税及直接府県税ノ賦課額ニ依ル但シ本条ノ分賦方法ニ依リ難キ事情アルトキハ府県知事ハ府県会ノ議決ヲ経内務大臣ノ許可ヲ受ケ特別ノ分賦方法ヲ設クルコトヲ得
第二十八条 市部会及郡部会ヲ設ケタル府県ニ於テハ府県会ノ議決ヲ経テ其ノ市部ニ属スル部分ニ賦課スベキ額ヲ市ニ分賦スルコトヲ得
第二十九条 第二十七条ニ規定スル直接国税及直接府県税ノ種類左ノ如シ
国税
地租 所得税(所得税法第三条第二種ニ係ル所得税ヲ除ク) 営業税 営業収益税 鉱業税 砂鉱区税 取引所営業税
府県税
特別地税 戸数割 家屋税 営業税 雑種税(遊興税及観覧税ヲ除ク)
第五章 府県税ノ賦課徴収
第三十条 府県ノ内外ニ渉リ営業所ヲ定メテ為ス営業ニ付営業収益税ヲ分別シテ納メザル者ニ対スル営業収益税附加税ノ賦課ニ関シテハ府県制第百八条第一項ノ例ニ依ル
第三十一条 市町村ハ其ノ市町村内ノ府県税ヲ徴収シ之ヲ府県ニ納入スルノ義務ヲ負フ
府県ハ前項徴収ノ費用トシテ地租附加税及特別地税ニ対シテハ其ノ徴収金額ノ千分ノ七、其ノ他ノ府県税ニ対シテハ其ノ徴収金額ノ百分ノ四ヲ其ノ市町村ニ交付スベシ
第三十二条 市町村ハ避クベカラザル災害ニ因リ既収ノ税金ヲ失ヒタルトキハ其ノ税金納入義務ノ免除ヲ府県知事ニ申請スルコトヲ得
府県知事前項ノ申請ヲ受ケタルトキハ七日以内ニ之ヲ府県参事会ノ決定ニ付スベシ、府県参事会ハ其ノ送付ヲ受ケタル日ヨリ三月以内ニ之ヲ決定スベシ
前項ノ決定ニ不服アル者ハ内務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第二項ノ決定ニ付テハ府県知事ヨリモ訴願ヲ提起スルコトヲ得
府県制第三十八条及第百二十八条ノ規定ハ本条ノ規定ノ適用ニ付之ヲ準用ス
第三十三条 府県税ヲ徴収セントスルトキハ府県知事又ハ其ノ委任ヲ受ケタル官吏吏員ハ市町村ニ対シ徴税令書ヲ発シ市町村長ハ徴税令書ニ依リ徴税伝令書ヲ調製シ之ヲ納税人ニ交付スベシ
府県知事又ハ其ノ委任ヲ受ケタル官吏吏員ハ直ニ納税人ニ対シ徴税令書ヲ発スルコトヲ得
府県ハ内務大臣及大蔵大臣ノ許可ヲ得タル場合ニ限リ前二項ノ規定ニ依ラズ其ノ府県ニ於テ発行スル証紙ヲ以テ府県税ヲ納入セシムルコトヲ得
第三十四条 徴税伝令書ヲ受ケタル納税人ハ其ノ税金ヲ市町村ニ払込ミ其ノ領収証ヲ得テ納税ノ義務ヲ了ス
徴税令書ヲ受ケタル納税人ハ其ノ税金ヲ府県金庫ニ払込ミ其ノ領収証ヲ得テ納税ノ義務ヲ了ス但シ府県知事ハ市町村吏員ヲシテ納税人ニ対シ徴税令書ヲ発セシムル場合ニ於テハ前項ノ例ニ依ラシムルコトヲ得
市町村ハ其ノ徴収シタル府県税ヲ府県金庫ニ払込ミ其ノ領収証ヲ得テ税金納入ノ義務ヲ了ス
税金ノ払込又ハ其ノ払込金ノ納入ニ付郵便振替貯金ノ方法ニ依リタル場合ニ於テハ納税人又ハ市町村ハ税金ヲ郵便官署ニ払込ミ又ハ納入スルニ依リテ其ノ義務ヲ了ス
第三十五条 第三十三条第二項ノ規定ニ依リ市町村吏員ヲシテ徴税令書ヲ発セシメタル場合ニ於テハ府県知事ノ定ムル所ニ依リ其ノ市町村ニ対シ取扱費ヲ交付スルコトヲ得
第三十六条 徴税令書又ハ徴税伝令書ヲ受ケタル納税人期限内ニ税金ヲ完納セザルトキハ府県知事又ハ其ノ委任ヲ受ケタル官吏吏員ハ直ニ督促状ヲ発スベシ
督促状ニハ府県知事ノ定メタル期間内ニ於テ相当ノ期限ヲ指定スベシ
第三十七条 督促状ヲ発シタルトキハ手数料ヲ徴収ス
手数料ノ額ハ府県知事之ヲ定ム
市町村吏員ヲシテ督促状ヲ発セシメタル場合ニ於ケル手数料ハ其ノ市町村ノ収入トス
第三十八条 市制町村制施行令第四十五条乃至第五十二条ノ規定ハ府県税ノ賦課徴収ニ之ヲ準用ス
第三十九条 府県ハ内務大臣及大蔵大臣ノ指定シタル府県税ニ付テハ第三十一条第一項ノ規定ニ拘ラズ其ノ徴収ノ便宜ヲ有スル者ヲシテ之ヲ徴収セシムルコトヲ得
前項ノ府県税ノ徴収ニ付テハ第三十三条ノ規定ニ依ラザルコトヲ得
第四十条 前条第一項ノ規定ニ依リ府県税ヲ徴収セシムル場合ニ於テハ納税人ハ其ノ税金ヲ徴収義務者ニ払込ムニ依リテ納税ノ義務ヲ了ス
第四十一条 第三十九条第一項ノ規定ニ依ル徴収義務者ハ徴収スベキ府県税ヲ府県知事ノ指定シタル期日迄ニ府県金庫又ハ郵便官署ニ払込ムベシ其ノ期日迄ニ払込マザルトキハ府県知事ハ相当ノ期限ヲ指定シ督促状ヲ発スベシ
第四十二条 第三十一条第二項、第三十二条及第三十四条第三項、第四項並ニ市制町村制施行令第四十五条乃至第四十八条ノ規定ハ第三十九条第一項ノ規定ニ依リ府県税ヲ徴収セシムル場合ノ払込金ニ之ヲ準用ス
第四十三条 府県税ノ徴収期ハ府県知事之ヲ定ム
第四十四条 府県税ノ徴収ニ関スル細則ハ府県知事之ヲ定ム
第四十五条 町村制ヲ施行セザル地ニ於ケル府県税ノ徴収ニ関シテハ本章ノ規定ヲ準用ス、其ノ準用シ難キ事項ハ府県知事之ヲ定ム
第六章 府県ノ監督
第四十六条 府県行政ニ関シ主務大臣ノ許可ヲ要スル事項中左ニ掲グルモノハ其ノ許可ヲ受クルコトヲ要セズ
一 公会堂、公園、病院、試験場、商品陳列所、倉庫、教員養成所、産婆看護婦養成所、桟橋、墓地、火葬場、上屋、荷揚場、繋船浮標、種畜、種畜場、用水其ノ他之ニ類スルモノノ使用料ニ関スルコト
二 市部会及郡部会ヲ設ケタル府県ニ於テ府県ノ費用ヲ以テ支弁スベキ事件ニシテ其ノ市部ト郡部ト利益ノ程度ヲ異ニシ均一ノ賦課ヲ為シ難キ事情アルトキ其ノ費用ニ限リ不均一ノ賦課ヲ為スコト
三 支出総額五十万円以内ノ継続費ニ関スルコト
四 継続費ヲ減額スルコト
五 元本総額五十万円ニ達スル迄ノ府県債ニ関スルコト
六 借入ノ翌年度ニ於テ償還スル府県債ニ関スルコト但シ借入金ヲ以テ償還スルモノニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
七 府県債ノ借入額ヲ減少シ利息ノ定率ヲ低減スルコト
八 府県債ノ借入先ヲ変更シ又ハ債券発行ノ方法ニ依ル府県債ヲ其ノ他ノ方法ニ依ル府県債ニ変更スルコト
九 府県債ノ償還年限ヲ短縮シ又ハ其ノ償還年限ヲ延長セズシテ低利借替ヲ為シ若ハ繰上償還ヲ為スコト但シ外資ニ依リタル府県債ノ借入又ハ外資ヲ以テスル借替ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
十 府県債ノ償還年限ヲ延長セズシテ不均等償還ヲ元利均等償還ニ変更シ又ハ年度内ノ償還期若ハ償還期数ヲ変更スルコト
第七章 市部及郡部ノ経済ヲ分別シタル府県ノ行政ニ関スル特例
第四十七条 従来市部及郡部ノ経済ヲ分別シタル府県ニ於テハ内務大臣ハ其ノ区域ニ依リ市部及郡部ノ経済ヲ分別シ市部会及市部参事会並ニ郡部会及郡部参事会ヲ設ケシムルコトヲ得
第四十八条 市部会及郡部会ハ各市部郡部ニ於テ選出シタル府県会議員ヲ以テ之ヲ組織ス
市部又ハ郡部ニ於テ選出スベキ府県会議員ノ数十二人ニ満チザルトキハ府県制第五条ノ定員ニ拘ラズ之ヲ十二人トス
第四十九条 府県会ノ権限ニ属スル事件ニシテ府県会ノ議決ヲ経ベキモノト市部会又ハ郡部会ノ議決ヲ経ベキモノトノ分別ハ府県会ノ議決ヲ経内務大臣ノ許可ヲ受ケ府県知事之ヲ定ム、許司スベカラズト認ムルトキハ内務大臣之ヲ定ム
第五十条 市部会及郡部会ヲ設ケタル府県ニ於テハ名誉職参事会員ノ定員ヲ十二人トス
市部会及郡部会ヲ設ケタル府県ノ名誉職参事会員ハ各会ニ於テ其ノ定員ノ半数ヲ選挙ス
市部参事会及郡部参事会ハ議長及各部会ニ於テ選挙シタル名誉職参事会員ヲ以テ之ヲ組織ス
第五十一条 府県費ニ関スル市部及郡部ノ分担及収入ノ割合ハ府県会ノ議決ヲ経内務大臣ノ許可ヲ受ケ府県知事之ヲ定ム、許可スベカラズト認ムルトキハ内務大臣之ヲ定ム
第五十二条 第四十九条及前条ノ事件ニ付テハ議員定員ノ五分ノ四以上出席スルニ非ザレバ会議ヲ開クコトヲ得ズ
第五十三条 市部及郡部ノ経済ヲ分別スル府県ノ行政ニ関シテハ本章ニ規定スルモノノ外府県制ノ規定ヲ準用ス
第五十四条 市部会又ハ郡部会解散ヲ命ゼラレタルトキハ其ノ議員ハ府県会議員ノ職ヲ失フ
第八章 島嶼ニ於ケル府県ノ行政ニ関スル特例
第五十五条 島嶼ノ経済ト所属本地ノ経済トハ府県会ノ議決ヲ経内務大臣ノ許可ヲ受ケ之ヲ分別スルコトヲ得
第五十六条 東京府下伊豆七島及小笠原島ニ於ケル府税ノ賦課及府会議員ノ選挙ニ関シテハ当分従前ノ例ニ依ル
第九章 雑則
第五十七条 町村組合ニシテ町村ノ事務ノ全部又ハ役場事務ヲ共同処理スルモノハ本令ノ適用ニ付テハ之ヲ一町村、其ノ組合管理者ハ之ヲ町村長、其ノ組合吏員ハ之ヲ町村吏員ト看做ス
附 則
本令中議員選挙ニ関スル規定ハ次ノ総選挙ヨリ、其ノ他ノ規定ハ大正十五年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
左ノ勅令ハ之ヲ廃止ス
明治三十二年勅令第二百二十七号
明治三十二年勅令第二百二十八号
明治三十二年勅令第二百八十五号
明治三十二年勅令第三百十六号
明治三十三年勅令第八十一号
明治三十三年勅令第二百四十八号
府県会議員選挙区分区令
大正十三年勅令第二百二十七号
従前ノ規定ニ依ル手続其ノ他ノ行為ハ本令ニ別段ノ規定アルモノヲ除クノ外之ヲ本令ニ依リ為シタルモノト看做ス
明治三十三年勅令第二百四十八号第二条ノ規定ニ依ル処分ニ関シ提起シタル訴願ニ付テハ仍従前ノ規定ニ依ル
明治三十三年勅令第二百四十八号第二条又ハ同年勅令第八十一号第三条ノ規定ニ依リ為シタル決定又ハ処分ニ対スル異議ノ申立期間又ハ訴願ノ提起期間ハ決定又ハ処分アリタル日ノ翌日ヨリ之ヲ起算ス
明治三十三年勅令第八十一号第二条ノ規定ニ依リ府県知事ニ為シタル申請又ハ同令第三条ノ規定ニ依リ府県参事会ノ決定ニ付セラレタル申請ニシテ大正十五年六月三十日迄ニ府県参事会ノ決定ニ付セラレザルモノ又ハ府県参事会ノ決定ナキモノニ付テハ第三十二条第二項ノ期間ハ同年七月一日ヨリ之ヲ起算ス
本令中議員選挙ニ関スル規定施行ノ際大正十五年勅令第三号衆議院議員選挙法施行令又ハ市制町村制施行令中公民権及議員選挙ニ関スル規定未ダ施行セラレザル場合ニ於テハ本令ノ適用ニ付テハ同令又ハ同規定ハ既ニ施行セラレタルモノト看做ス