第五十四條 府縣有財產及營造物管理ノ費用府縣會府縣參事會及委員ノ費用府縣吏員ノ給料退隱料其他諸給與及從來法律命令若ハ慣例ニ依リ竝ニ將來法律勅令ニ依リ府縣ノ負擔ト定ムル事件ノ費用ハ府縣ニ於テ之ヲ支辨スヘシ
第五十五條 名譽職參事會員及委員ニハ旅費滯在手當及出務日當ヲ給スルコトヲ得府縣會議員ニハ旅費及滯在手當ニ限リ之ヲ給スルコトヲ得但滯在手當出務日當ヲ併セ一日一圓五十錢ヲ超ユルコトヲ得ス
第五十六條 府縣ノ支出ハ府縣稅其他府縣ノ收入ヲ以テ之ニ充ツ
第五十七條 府縣稅目及其賦課徵收方法ニ關スル規定ハ此法律ニ依リ變更シタルモノヲ除クノ外從前地方稅ニ關スル規定ニ依ル
第五十八條 府縣知事ハ府縣會ノ議決ニ依リ內務大臣及大藏大臣ノ許可ヲ受ケ其府縣ノ全部若ハ市制施行ノ地ニ家屋稅ヲ賦課スルコトヲ得但家屋稅賦課ノ地ニ於テハ戶數割ヲ賦課スルコトヲ得ス
第五十九條 府縣內ニ土地家屋ヲ所有シ又ハ店舖ヲ定メテ營業ヲ爲ス者ハ其土地家屋營業ニ對シテ賦課スル府縣稅ヲ納ムルモノトス其法人タルトキモ亦同シ但郵便電信及官設鐵道ノ業ハ此限ニ在ラス
府縣內ニ一戶ヲ構ヘ三箇月以上ニ及フ者ハ其戶數ニ對シテ府縣稅ヲ納ムルモノトス但其課稅ハ一戶ヲ構ヘタル初ニ遡リ徵收スヘシ
第六十條 府縣稅ノ賦課ニ付テハ納稅者其府縣外ニ於テ店舖ヲ定メタル營業ノ收入ヲ其標準ニ算入スルコトヲ得ス
第六十一條 府縣會ハ各市町村內ニ於テ徵收スル府縣稅賦課ノ細目ニ係ル事項ヲ關係市町村會ノ議決ニ付スルコトヲ得
前項市町村會ノ議決ハ法律命令又ハ府縣會ノ議決ニ牴觸スルコトヲ得ス
市町村會ニ於テ府縣會ノ指定シタル期限內ニ其議決ヲ爲サヽルトキハ府縣參事會之ヲ議決スヘシ
第六十二條 營業ノ狀況又ハ收入ヲ標準トシテ賦課スル府縣稅ニ付テハ府縣知事ハ府縣會ノ議決ヲ經テ賦課額調査ノ爲其府縣內郡市ニ調査委員ヲ置クコトヲ得
第六十三條 府縣稅ノ免除ハ市町村稅免除ノ規定ニ依ル
第六十四條 府縣會ハ府縣內郡市町村ノ土木工事又ハ府縣內ノ敎育衞生勸業及慈善ノ事業若ハ營造物ニ對シ補助金ヲ與フルコトヲ議決スルコトヲ得
第六十五條 府縣會ハ家屋稅又ハ戶數割ノ全部又ハ一部ノ代納トシテ府縣ノ費用ヲ以テ支辨スル事業ニ對シ夫役又ハ現品ヲ出スヲ許スコトヲ議決スルコトヲ得
第六十六條 府縣稅ハ納稅義務ノ起リタル翌月ノ初ヨリ免稅理由ノ生シタル月ノ終迄月割ヲ以テ之ヲ徵收スヘシ但日割ヲ以テ徵收スルモノハ此限ニ在ラス
納稅義務消滅シ又ハ變更スルトキハ納稅者ヨリ之ヲ當該官廳ニ屆出ヘシ其屆出ヲ爲シタル月ノ終迄ハ從前ノ稅ヲ徵收スヘシ
物件ヲ目的トシ納期ヲ定メテ一定ノ額ヲ賦課スル府縣稅ハ其納期ニ於テ納稅義務ヲ負フ者其額ヲ納ムヘシ
府縣稅ノ前納ニ係ルモノハ其義務ノ消滅シ又ハ他人ニ移轉シタル場合ト雖之ヲ還付セス但其義務ノ移轉ヲ受ケタル者ハ其前納期限ノ終迄納稅セサルモノトス
第六十七條 府縣稅ハ法律命令ヲ以テ別段ノ規定ヲ設クルモノヲ除クノ外各市町村長ニ於テ市町村稅徵收ノ手續ニ依リ之ヲ徵收スヘシ
第六十八條 府縣稅ノ賦課ニ對シ錯誤アルコトヲ發見シタル者ハ徵稅傳令書ノ交付後三箇月以內ニ之ヲ其傳令書ヲ發シタル廳ニ申立ルコトヲ得但申立ノ爲其納稅ヲ拒ムコトヲ得ス
第六十九條 前條ノ申立ヲ爲シタル後二十一日以內ニ其更正ヲ得サルトキ又ハ其更正ヲ得ルモ之ニ不服ナルトキハ十四日以內ニ郡參事會ニ訴願シ郡參事會ノ裁決ニ不服ナルトキハ其裁決書ヲ交付シ又ハ之ヲ吿知シタル日ヨリ十四日以內ニ府縣參事會ニ訴願シ府縣參事會ノ裁決ニ不服ナルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得但市ニ在テハ府縣參事會ニ訴願シ府縣參事會ノ裁決ニ不服ナルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第七十條 府縣稅ノ免稅若ハ納稅延期ハ特別ノ事情アルモノニ限リ府縣知事ニ於テ府縣參事會ノ議決ヲ經テ之ヲ許スコトヲ得
第七十一條 東京府京都府大阪府ニ在テハ府ノ支出ニ充ツヘキ府稅ヲ市部及郡部ニ分賦ス其分賦ノ割合ハ府會ニ於テ之ヲ議決シ內務大臣ノ認可ヲ受ケテ施行スヘシ
前項市部ノ分賦額ハ市ニ於テ之ヲ市ノ豫算ニ編入シ市稅トシテ徵收シ其總額ヲ府金庫ニ納ムヘシ郡部ノ分賦額ハ此法律ノ規定ニ依リ之ヲ徵收ス但市部議員ハ其徵收ニ關スル議事ニ參與シ及議決ニ加ハラサルモノトス此場合ニ於テ若議長副議長市部議員ナルトキハ郡部議員ニ於テ臨時議長ヲ互選スヘシ
第七十二條 市制施行ノ府縣ニ在テハ郡廳舍建築修繕費郡吏員給料旅費及廳費ハ市ヲ除キ其他ノ部分ノミヲシテ其負擔ニ任セシムヘシ
前項ノ府縣ニ在テハ其府縣ノ支出費目中市ト其他ノ部分ト利害ノ厚薄ヲ異ニシ均一ノ負擔ニ任セシムルコトヲ得サルモノアルトキハ其費目ニ限リ其一方ノ負擔ヲ增加スルコトヲ得但負擔ノ割合ハ府縣會ニ於テ之ヲ議決シ內務大臣ノ許可ヲ受クヘシ若之ヲ許可スヘカラスト認ムルトキハ內務大臣之ヲ確定ス
第一項ノ負擔ニ任セシメ及第二項ニ依リ一方ノ負擔ヲ增加スルハ賦課ノ稅率ヲ增加スルニ止メ其會計ヲ異ニスルコトヲ得ス但東京府京都府大阪府ニ在テハ前條ニ依ル
前項ニ依リ稅率ヲ增加スヘキ稅目ハ府縣會ノ議決スル所ニ依ル
第七十三條 府縣內ノ或ル部分ニ對シ特ニ利益アル土木事業ヲ起ストキハ府縣會ノ議決ニ依リ該部分ニ對シ通常府縣稅賦課ノ外其利益ノ厚薄ニ應シ特ニ夫役現品ヲ增課スルコトヲ得
第七十四條 府縣ハ其舊債元額ヲ償還スル爲又ハ天災事變ノ爲已ムヲ得サル支出又ハ府縣ノ永久ノ利益ト爲ルヘキ支出ヲ要スルニ方リ通常ノ歲入ヲ增加スルトキハ府縣ノ負擔ニ堪ヘサルノ場合ニ限リ勅令ノ定ムル所ニ依リ府縣會ノ議決ヲ以テ府縣債ヲ起スコトヲ得
府縣債ヲ起スノ議決ヲ爲ストキハ併セテ起債ノ方法利息ノ定率及償還ノ方法ヲ定ムヘシ
府縣債償還ノ初期ハ三年以內ト爲シ年々ノ償還步合ヲ定メ起債ノ時ヨリ三十年以內ニ還了スヘシ
歲入出豫算內ノ支出ヲ爲スカ爲必要ナル一時ノ借入金ニシテ其年度內ノ收入ヲ以テ償還スヘキモノハ本條ノ例ニ依ルノ限ニ在ラス但府縣參事會ノ議決ヲ經ルコトヲ要ス
第七十五條 府縣知事ハ每年其翌年度ニ係ル歲入出豫算ヲ調製スヘシ但府縣ノ會計年度ハ政府ノ會計年度ニ同シ
豫算ハ府縣會ノ議決ニ付スルノ前府縣參事會ノ審査ニ付スヘシ若府縣知事ト府縣參事會ト意見ヲ異ニスルトキハ知事ハ參事會ノ意見ヲ豫算ニ添ヘ府縣會ニ提出スヘシ追加又ハ臨時ノ豫算ニ付テモ亦同シ
內務大臣ハ省令ヲ以テ豫算調製ノ式ヲ定メ竝ニ費目流用ニ關スル規定ヲ設クルコトヲ得
第七十六條 豫算ハ每年府縣會ノ議決ヲ取リ之ヲ內務大臣ニ報吿シ竝ニ府縣ノ公吿式ニ依リ其要領ヲ吿示スヘシ追加又ハ臨時ノ豫算ヲ議決シタル場合ニ於テモ亦同シ
府縣ノ費用ヲ以テ支辨スル事業ニシテ數年ヲ期シ施行スヘキモノ又ハ數年ヲ期シテ其費用ヲ支出スヘキモノハ府縣會ノ議決ヲ以テ其年期間各年度ノ支出額ヲ定メ繼續費ト爲スコトヲ得
豫算ヲ府縣會ニ提出スルトキハ府縣知事ハ併セテ其府縣有財產表ヲ提出スヘシ
第七十七條 歲入出豫算中ニ豫備費ヲ設クヘシ豫備費ハ府縣知事ニ於テ府縣參事會ノ議決ヲ經テ已ムヲ得サル豫算外ノ支出又ハ豫算超過ノ支出ニ充ツルコトヲ得但府縣會ノ否決シタル費途ニ充ツルコトヲ得ス
第七十九條 會計事務ヲ管理スル官吏ハ前條ノ命令アルニ非サレハ支拂ヲ爲スコトヲ得ス及其命令アルモ支出ノ豫算ナキカ又ハ豫備費支出及費目流用ノ規定ニ依ラサルトキハ支拂ヲ爲スコトヲ得ス
第八十條 決算ハ會計事務ヲ管理スル官吏ニ於テ會計年度後三箇月以內ニ之ヲ府縣知事ニ提出シ府縣知事ハ府縣參事會ヲシテ之ヲ檢査セシメ次囘ノ通常府縣會ノ認定ニ付スヘシ
決算報吿書竝ニ之ニ關スル府縣會ノ議決ハ府縣知事ヨリ之ヲ內務大臣ニ報吿シ竝ニ決算ハ府縣ノ公吿式ニ依リ其要領ヲ吿示スヘシ