府県会議員選挙規則
法令番号: 法律第六號
公布年月日: 明治22年2月28日
法令の形式: 法律
朕府縣會議員選擧規則ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十二年二月二十六日
內閣總理大臣 伯爵 黑田淸隆
內務大臣 伯爵 松方正義
法律第六號
府縣會議員選擧規則
第一條 戶長ハ每年九月十五日ヲ期トシ其役場管內ノ選擧人名原簿ヲ調査シ其副本ヲ十月一日迄ニ郡長ニ差出スヘシ
選擧人名原簿ニハ選擧人ノ氏名、住所、生年月、納ムル所ノ地租ノ總額竝ニ其納稅地ヲ記載スヘシ
第二條 郡長ハ戶長ヨリ差出ス所ノ原簿ヲ調査シ每年十月十五日ヲ期トシ其役所管內ノ選擧人名簿ヲ調製スヘシ
第三條 區長ハ每年九月十五日ヲ期トシ其役所管內ノ選擧人名原簿ヲ調製シ十月十五日ヲ期トシ選擧人名簿ヲ調製スヘシ
選擧人名原簿ニ記載スヘキ事項ハ第一條第二項ニ同シ
第四條 府縣會規則第十三條ノ年齡及ヒ年限ヲ算スルハ選擧人名簿調製ノ期日ヲ以テ限界ト爲シ其地租納額ヲ算スルハ原簿調製ノ期日ヨリ前一年以上之ヲ納メ猶引續キ納ムル者ニ限ルヘシ但家督ニ依リ財產ヲ相續シタル者ハ前財產主ノ納稅額ヲ以テ其者ノ納稅額ニ算入スヘシ
第五條 選擧人其住居スル區町村ノ外ニ於テ地租ヲ納ムルトキハ其納稅地區戶長ノ證狀ヲ添ヘ選擧人名原簿調製ノ期日迄ニ其住居地ノ區戶長ニ屆出ヘシ
前項ノ屆出ヲ爲サヽル納稅額ハ選擧及ヒ被選擧ノ資格ニ算入スルコトヲ得ス
第六條 郡區長ハ十月二十日ヨリ十五日間其役所管內ノ選擧人名原簿及ヒ選擧人名簿ノ寫ヲ其郡區役所ニ於テ縱覽セシムヘシ但關係者ノ請求アルトキハ戶長役場ニ於テモ其調製シタル原簿ノ寫ヲ示スヘシ
第七條 選擧資格アル者選擧人名簿ニ於テ脫漏又ハ誤載アルコトヲ發見シタルトキハ其縱覽期限內ニ之ヲ郡區長ニ申立ヘシ
第八條 郡區長ニ於テ脫漏又ハ誤載ノ申立ヲ受ケタルトキハ十日以內ニ之ヲ審査判定シ其申立正當ナルトキハ直ニ其人名ヲ記入又ハ削除シ其由ヲ管內ニ吿示スヘシ但郡ニ在テハ仍ホ當人住居地ノ戶長ニ通知スヘシ
第九條 前條審査ノ爲メ必要アル場合ニ於テハ申立人又ハ當人ヲ召喚審問スルコトヲ得
第十條 申立人又ハ當人ニ於テ郡區長ノ判定ニ不服アルトキハ判定ノ日ヨリ七日以內ニ始審裁判所ニ出訴スルコトヲ得但其判定ハ出訴ノ爲メ停止セサルモノトス
第十一條 始審裁判所ニ於テ前條ノ訴訟ヲ受取リタルトキハ他ノ訴訟ノ順序ニ抅ハラス速ニ其裁判ヲ爲スヘシ
第十二條 前條始審裁判所ノ裁判ハ上吿スルコトヲ得ト雖モ控訴スルコトヲ許サス但其裁判ハ上吿ノ爲メ停止セサルモノトス
第十三條 選擧人名簿ハ十一月十五日ヲ以テ確定期限トシ次年ノ改正期日迄之ヲ据置クモノトス但裁判言渡ニ依リ訂正スヘキモノハ郡區長ニ於テ其言渡ヲ受ケタルトキヨリ二十四時間以內ニ之ヲ訂正シ其由ヲ管內ニ吿示スヘシ但郡ニ在テハ仍ホ當人住居地ノ戶長ニ通知スヘシ
前項ノ外次年ノ改正期日前ト雖モ選擧ヲ行フ前ニ於テ選擧權ヲ失ヒ若クハ選擧權ヲ有セサリシコトヲ發見シタル場合ニ於テハ郡區長ハ其人名ヲ削除スヘシ
每年確定ノ選擧人名簿ハ臨時ノ補闕選擧ニモ之ヲ使用スルモノトス
第十四條 選擧投票ハ通常二月若クハ三月ニ於テ之ヲ行フヘシ但解散及ヒ補闕選擧ノ場合ハ此限ニ在ラス
前項ノ時期ハ府縣ノ情況ニ依リ府縣知事ニ於テ府縣會ノ議決ヲ取リ內務大臣ノ認可ヲ經テ之ヲ變更スルコトヲ得
第十五條 議員ヲ選擧スヘキトキハ少クトモ一箇月前ニ府縣知事ヨリ其月日、選擧開會竝ニ投票函閉鎖ノ時刻、選擧ヲ行フヘキ郡區ノ名及ヒ選擧スヘキ議員ノ數ヲ記シ之ヲ管內ニ吿示スヘシ若シ正議員ノ外補闕員ノ增選ヲ要スルトキハ各別ニ其數ヲ記スヘシ
選擧開會ヨリ投票函閉鎖迄ノ時間ハ四時間以上十時間以內タルヘシ
第十六條 前條ノ吿示アリタルトキハ郡區長ハ前條各事項竝ニ選擧開會ノ場所ヲ管內ニ吿示スヘシ
第十七條 郡區長ハ其管內ノ選擧人中ヨリ立會人五名ヲ定メ遲クトモ選擧ノ期日ヨリ五日以前ニ之ヲ本人ニ通知シ選擧ノ當日選擧會場ニ參會セシムヘシ
選擧分會ヲ設ケタル場合ニ於テハ本會分會トモ各其會場所屬ノ選擧人ニ就キ前項ニ依リ立會人ヲ定ムヘシ
立會人ハ正當ノ事故ナクシテ其職ヲ辭スルコトヲ得ス立會人若シ選擧開會ノ時刻ニ至リ出頭セサルトキハ參會ノ選擧人中最多額ノ地租ヲ納ムル者ヲ以テ假ニ其闕ヲ補フヘシ
第十八條 郡區長ハ選擧會長トナリ選擧會場ヲ管理スヘシ郡區長事故アルトキハ代理書記ヲ以テ之ニ充ツヘシ
選擧會書記ハ郡區長ニ於テ郡區書記中ヨリ之ヲ命スヘシ
第十九條 選擧人ハ選擧開會ノ時刻ヨリ投票函閉鎖ノ時刻ニ至ル迄何時タリトモ到著ノ順序ニ從ヒ投票スルコトヲ得
第二十條 選擧會場ニハ錠ヲ付シタル投票函及ヒ選擧錄竝ニ筆墨ヲ備ヘ置クヘシ
投票函ハ投票ニ先チ參集シタル選擧人ノ面前ニ於テ之ヲ開キ其空虛ナルコトヲ示スヘシ
第二十一條 投票用紙ハ府縣知事ノ定ムル所ニ依リ各郡區ニ於テ一定ノ式ヲ用井投票ノ當日選擧會場ニ備ヘ置キ選擧會長又ハ書記ヨリ之ヲ各選擧人ニ交付スヘシ
用紙ハ正議員ノ外補闕員ノ增選ヲ要スル場合ニ於テハ之ヲ甲乙二種ニ分チ甲種ハ正議員ノ爲メノ用紙ト爲シ乙種ハ補闕員ノ爲メノ用紙ト爲スヘシ
第二十二條 選擧人ハ自ラ投票ヲ行フヘシ代人ニ託スルコトヲ得ス
第二十三條 選擧人ハ選擧會場ニ於テ投票用紙ニ被選擧人竝ニ自己ノ氏名ヲ記シ捺印スヘシ但氏名ノ外住所若クハ位階勳等其他敬稱ノ類ヲ記スルハ妨ナシ
第二十四條 選擧人投票ヲ爲サントスルトキハ選擧會長ハ其住所氏名ヲ選擧人名簿ニ照シ名簿ニ消印ヲ捺シ選擧人ヲシテ自ラ之ヲ投票函ニ投入セシムヘシ
第二十五條 選擧人ニシテ文字ヲ書スルコト能ハサル由ヲ申立ルトキハ選擧會長ハ書記ヲシテ代書セシメ之ヲ本人ニ讀聞セ竝ニ立會人ニ示シタル後捺印投票セシムヘシ
第二十六條 選擧ニ關スル吏員及ヒ選擧人ノ外何人タリトモ選擧會場ニ入ルコトヲ得ス但會場臨視ノ職權アル官吏ハ此限ニ在ラス
第二十七條 選擧人名簿ニ記載セラレタル者ノ外投票スルコトヲ得ス但記載セラルヘキ裁判言渡書ヲ所持シテ參會スル者ハ此限ニ在ラス
第二十八條 選擧人ハ會場ニ於テ演說討論ヲ爲シ若クハ喧噪ニ涉リ又ハ互ニ投票ヲ勸誘スルコトヲ得ス
第二十九條 選擧會場ニ於テ秩序ヲ紊ル者アルトキハ選擧會長ハ之ヲ警戒シ其命ニ從ハサルトキハ之ヲ會場外ニ退出セシムヘシ但其投票ヲ爲サシムル爲メ再ヒ之ヲ呼入ルヽコトヲ得
選擧會長ハ會場取締ノ爲メ必要ト認ムルトキハ警察官ノ助力ヲ求ムルコトヲ得
第三十條 選擧權ナク又ハ他人ノ氏名ヲ詐稱シテ投票セントスル者アルトキハ選擧會長ハ其投票ヲ取上クヘシ
第三十一條 投票函閉鎖ノ時刻ニ至ルトキハ選擧會長ハ其由ヲ宣吿シ書記ヲシテ一時選擧會場ノ入口ヲ鎖サシメ參會者ニ問フニ未タ投票セサリシ者ナキヤヲ以テシ若シ之アルニ於テハ直ニ投票セシメタル後投票函ヲ閉鎖スヘシ
第三十二條 選擧會場ニハ㸃數簿二册ヲ備ヘ書記二人ヲシテ各一册ヲ擔任セシムヘシ
第三十三條 投票函閉鎖後十分時間ヲ經過スレハ選擧會長ハ立會人ノ面前ニ於テ投票函ヲ開キ逐次投票ヲ取出シ披封㸃檢シテ之ヲ書記ニ付シ選擧人被選擧人ノ氏名ヲ朗讀セシメ㸃數簿擔任ノ書記ヲシテ被選擧人ノ得㸃ヲ㸃數簿ニ記入セシムヘシ
前項ノ㸃檢中若シ無効ノ投票ヲ發見シタルトキハ之ニ抹線ヲ加ヘ一部分無効ノモノハ其部分ニ抹線ヲ加フヘシ
第三十四條 選擧人ハ投票㸃檢ノ際之ヲ參觀スルコトヲ得
第三十五條 投票㸃數ノ記入ヲ終リタルトキハ選擧會長ハ書記ヲシテ各被選擧人得㸃ノ合計ヲ㸃數簿ニ記入シテ之ヲ朗讀セシムヘシ
第三十六條 㸃數記入竝ニ計算其他書記ノ事務ハ總テ選擧會長竝ニ立會人ノ面前ニ於テ之ヲ爲スヘシ
第三十七條 㸃數ノ合計ヲ記入シ終リタルトキハ選擧會長ハ立會人ノ面前ニ於テ多數ヲ得タル者ヨリ順次ニ其被選擧權ノ有無ヲ査定シ同數ハ年長ヲ取リ同年ハ抽籤ヲ用井其當選ヲ定ムヘシ但即時ニ其當選ニ必要ナル事實ヲ確知シ得サルトキハ調査ニ必要ナル時日ノ間其査定ヲ延ハスコトヲ得
分會ヲ設ケタル場合ニ於テハ第五十條ニ依リ當選ヲ定ムルモノトス
當選タルヘキ多數ヲ得タル者ノ被選擧權ヲ有セサルコトヲ發見シタルトキハ順次其次㸃者ヲ以テ當選ト爲スヘシ此場合ニ於テハ郡區長ハ當選者ノ氏名ト共ニ其事由ヲ吿示スヘシ
當選タルヘキ多數ヲ得タル被選擧人他郡區ノ人ニシテ直ニ其當選ヲ定メ難キトキハ第四十一條ニ依リ之ヲ定ムヘシ
第三十八條 㸃檢濟ノ投票ハ之ヲ取纒メ封緘ノ上選擧會長立會人竝ニ書記之ニ捺印スヘシ
前項ノ投票ハ封印ノ儘附屬書類ト共ニ一年間郡區役所ニ保存スヘシ若シ選擧ニ關シ訟訴又ハ吿訴吿發アルトキハ一年ヲ過クルモ其裁判確定ニ至ルマテ之ヲ保存スヘシ
第三十九條 左ノ事項ハ之ヲ選擧錄中ニ記入スヘシ
一 選擧開會ノ月日竝ニ時刻
二 選擧會長及ヒ書記ノ氏名
三 立會人ノ住所氏名
四 第二十七條但書ニ依リ投票セシメタルトキハ其顚末
五 第三十條ノ處分ヲ爲シタルトキハ其顚末
六 投票函閉鎖ノ時刻
七 各被選擧人ノ得㸃數
八 當選人ノ住所氏名若シ直ニ當選ヲ定メ難キトキハ其事由
九 選擧閉會ノ時刻
十 右ノ外選擧會長ニ於テ緊要ト認ムル事項
當選ノ査定ヲ延シタルトキハ其結果ヲ追記スヘシ
第四十條 選擧錄ニハ選擧會長立會人竝ニ書記之ニ署名捺印スヘシ
第四十一條 當選タルヘキ多數ヲ得タル被選擧人他郡區ノ人ナルトキハ郡區長ハ其本籍地ノ郡區長ニ照會シ被選擧權ヲ有スルヤ否ヤノ證明ヲ求ムヘシ若シ其權ヲ有セサルトキハ第三十七條第三項ノ例ニ依ル
第四十二條 左ノ投票ハ無効トス
一 選擧人名簿ニ記載ナキ者ノ投票但裁判言渡書ヲ所持シタルニ依リ投票シタル者ハ此限ニ在ラス
二 成規ノ用紙ヲ用井サルモノ
三 選擧人又ハ被選擧人ノ氏名ヲ記載セサルモノ
四 選擧人ノ氏名ノ讀ミ難キモノ又ハ何人タルヲ知ルヘカラサルモノ
五 選擧人被選擧人ノ住所氏名ノ外餘事ヲ記入スルモノ但位階勳等其他敬稱ノ類ヲ記入スルモノハ餘事ト見做スノ限ニ在ラス
六 被選擧人ノ氏名ノ讀ミ難キモノ又ハ其何人タルヲ知ルヘカラサルモノ但列記ノ被選擧人ニ付テハ仍ホ其効アリトス
七 被選擧權ナキ者ヲ記載シタルモノ但列記ノ被選擧人ニ付テハ仍ホ其効アリトス
第四十三條 投票ニ記載ノ被選擧人其選擧スヘキ定數ニ足ラサルモ之ヲ無効トセス又定數ニ過クルトキハ前條第六第七ニ觸ルヽモノアルト否トヲ問ハス末尾ヨリ其過數ヲ順次ニ棄却スヘシ
一人ノ氏名ヲ複記シタルモノハ一人トシテ計算スヘシ
第四十四條 選擧人又ハ被選擧人ノ住所氏名ニ誤字脫字アリ又ハ假名字ヲ用ユルモ其何人ノ何人ヲ選擧シタルコト明瞭ナルトキハ其投票ヲ有効トスヘシ
第四十五條 投票効力ノ有無ニ付疑義アルトキハ立會人ノ意見ヲ聞キ選擧會長之ヲ決定スヘシ其決定ニ對シテハ選擧會場ニ於テ異議ヲ申立ルコトヲ得ス
第四十六條 郡區ノ區域廣濶ニ過クルカ又ハ郡區內島嶼ノ地アリテ選擧人ノ參會ニ不便ナル爲メ已ムヲ得サル場合ニ於テハ郡區長ハ府縣知事ノ指揮ニ依リ又ハ府縣知事ノ許可ヲ得テ選擧分會ヲ設クルコトヲ得
分會ノ爲メ特ニ選擧人名簿ヲ調製スルヲ要セスト雖モ選擧人名簿中ニ各選擧人所屬ノ會場ヲ區別シ豫メ分會場所屬ノ區域竝ニ會場ヲ管內ニ吿示スヘシ
第四十七條 分會ハ本會ト同日時ニ之ヲ開キ投票時間モ亦本會ト同一タルヘシ其他選擧ノ手續會場ノ取締選擧錄ノ記載等ハ總テ本會ニ準スヘシ但島嶼其他遠隔ノ地ニ限リ府縣知事ニ於テ適宜其投票ノ期日ヲ異ニシテ選擧本會ノ投票期日迄ニ其投票函ヲ送致セシムルコトヲ得
第四十八條 分會選擧會長ハ上席郡區書記ヲ以テ之ニ充ツヘシ
分會書記ハ郡區長ニ於テ其郡區書記又ハ其地ノ戶長又ハ戶長役場吏員中ヨリ之ヲ命スヘシ
第四十九條 分會ニ於テ投票函ヲ閉鎖シタルトキハ之ニ封印シ選擧會長及ヒ書記ノ中少クトモ一名付添直ニ本會場ニ送付スヘシ若シ立會人又ハ他ノ選擧人中同行ヲ望ム者アルトキハ之ヲ許スヘシ
第五十條 分會ヲ設ケタルトキハ本會場ニ於テハ投票函閉鎖ノ後分會投票函ノ到著ヲ待チ第三十三條ノ手續ヲ爲シ合算ノ上總數ヲ以テ當選ヲ定ムヘシ
第五十一條 當選者ノ定マリタルトキハ郡區長ハ直ニ其旨ヲ當選者ニ通知スヘシ
當選者當選ノ通知ヲ受ケタルトキハ五日以內ニ當選承諾ノ屆出ヲ爲スヘシ若シ當選ノ通知ヲ爲シタル日ヨリ十日以內ニ承諾ノ屆出ヲ爲サヽルトキハ當選ヲ辭シタルモノト見做スヘシ
當選ヲ辭シタル者アルトキハ郡區長ハ次㸃者ヲ以テ當選者ト爲スヘシ
第五十二條 選擧ノ結果ハ郡區長ヨリ之ヲ府縣知事ニ報吿スヘシ
第五十三條 當選者ノ住所氏名ハ府縣知事ニ於テ之ヲ管內ニ吿示スヘシ
第五十四條 府縣會規則第十條第二項ニ依リ補闕員ヲ增選スルトキハ其選擧ハ正議員選擧ト同會ニ於テ同時ニ之ヲ行フ但其投票函ハ正議員ノ投票函ト異ニスヘシ
第五十五條 一人ニシテ正議員補闕員ノ選ニ併セ當ルトキハ之ヲ正議員ト爲シ其次㸃者ヲ以テ補闕員當選ト爲スヘシ
第五十六條 當選ノ査定ニ不服アル關係者ハ當選者ノ氏名吿示ヨリ十日以內ニ府縣知事ニ其更正又ハ選擧取消ノ申立ヲ爲スコトヲ得府縣知事ノ判定ニ服セサル者ハ二十日以內ニ控訴院ニ出訴スルコトヲ得但其判決ハ終審トス
第五十七條 當選者確定ノ後其當選者ノ被選擧權ヲ有セサリシコトヲ發見スルトキハ府縣知事ハ其當選ヲ取消シ其次㸃者ヲ以テ當選ト爲スヘシ但此場合ニ於テハ其事由ヲ管內ニ吿示スヘシ
第五十八條 選擧全會ヲ取消シ更ニ選擧ヲ命スルハ其選擧ノ選擧規定ニ違フ場合ニ限ル但規定ニ違フ所アルモ其事ノ輕微ニシテ選擧ノ結果ニ異動ヲ生セス又ハ其事ノ更正シ得ヘキモノハ取消ノ限ニ在ラス
選擧全會ノ取消ハ府縣知事ヨリ內務大臣ニ具狀シ其認可ヲ經テ之ヲ爲スヘシ但其事由ヲ管內ニ吿示スヘシ
第五十九條 納稅額年齡其他選擧資格ニ必要ナル事項ヲ詐稱シ選擧人名簿ニ記載セラレタル者ハ二圓以上二十圓以下ノ罰金ニ處ス其被選擧資格ニ必要ナル事項ヲ詐稱シテ當選者ト爲リタル者又ハ其資格ヲ有セサルモ其事ヲ吿ケスシテ當選者ト爲リタル者ハ十圓以上百圓以下ノ罰金ニ處ス
第六十條 投票ヲ得又ハ他人ニ投票ヲ得セシメ若クハ他人ノ爲メニ投票ヲ爲スコトヲ抑止スルノ目的ヲ以テ直接又ハ間接ニ金錢物品ヲ授與シ又ハ授與スルコトヲ約束シタル者ハ五圓以上五十圓以下ノ罰金ニ處ス其授與又ハ約束ヲ受ケタル者モ亦同シ
直接又ハ間接ニ金錢物品ヲ授與シ又ハ授與スルコトヲ約束シテ投票ヲ得又ハ他人ニ投票ヲ得セシメ若クハ他人ノ爲メニ投票ヲ爲スコトヲ抑止シタル者ハ刑法第二百三十四條ノ例ヲ以テ論ス其授與又ハ約束ヲ受ケテ投票ヲ爲シ又ハ投票ヲ爲サヽル者モ亦同シ
第六十一條 戎器又ハ兇器ヲ携帶シテ選擧會場ニ入リタル者ハ二圓以上二十圓以下ノ罰金ニ處ス
第六十二條 投票ヲ得又ハ他人ニ投票ヲ得セシメ若クハ他人ノ爲メニ投票ヲ爲スコトヲ抑止スルノ目的ヲ以テ選擧人ニ暴行ヲ加ヘタル者ハ十五日以上三月以下ノ輕禁錮ニ處シ二圓以上二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第六十三條 投票ヲ妨害スルノ目的ヲ以テ途中又ハ其他ニ於テ選擧人ニ暴行ヲ加ヘ又ハ選擧人ヲ脅嚇スル者又ハ選擧ニ關スル吏員若クハ立會人ニ暴行ヲ加ヘ又ハ暴行ヲ以テ選擧會場ヲ騷擾シ又ハ投票函ヲ抑留毀壞若クハ劫奪シタル者ハ二月以上一年以下ノ輕禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第六十四條 多衆ヲ嘯集シテ前條ノ罪ヲ犯シタル者ハ六月以上二年以下ノ重禁錮ニ處ス其情ヲ知リ嘯集ニ應シタル者ハ一月以上六月以下ノ輕禁錮ニ處ス
第六十五條 當選者第五十九條乃至第六十四條ノ刑ニ處セラレタルトキハ其當選ハ無効トス
第六十六條 選擧權ナク又ハ他人ノ氏名ヲ詐稱シテ投票ヲ爲サントシ又ハ投票ヲ爲シタル者ハ二圓以上二十圓以下ノ罰金ニ處ス
第六十七條 選擧ニ關スル犯罪ハ六箇月ヲ以テ期滿免除トス
第六十八條 府縣會規則第十五條第十七條第十八條第十九條其他本規則ニ牴觸スル規定ハ總テ之ヲ廢止ス
附 則
明治二十二年ニ於テハ府縣知事ハ本規則規定ノ時期ニ拘ハラス選擧人名原簿及ヒ人名簿ヲ調製セシメ規定ノ時期ニ至リ仍ホ之ヲ訂正セシムヘシ
前項ノ名簿調製前議員ノ選擧ヲ要スル府縣ニ於テハ舊名簿ヲ用ユルコトヲ得ト雖モ其他ハ總テ本規則ニ依ルヘシ
島司ヲ置キタル地ニ於テハ郡長ノ事務ハ島司ニ於テ之ヲ行フヘシ
朕府県会議員選挙規則ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十二年二月二十六日
内閣総理大臣 伯爵 黒田清隆
内務大臣 伯爵 松方正義
法律第六号
府県会議員選挙規則
第一条 戸長ハ毎年九月十五日ヲ期トシ其役場管内ノ選挙人名原簿ヲ調査シ其副本ヲ十月一日迄ニ郡長ニ差出スヘシ
選挙人名原簿ニハ選挙人ノ氏名、住所、生年月、納ムル所ノ地租ノ総額並ニ其納税地ヲ記載スヘシ
第二条 郡長ハ戸長ヨリ差出ス所ノ原簿ヲ調査シ毎年十月十五日ヲ期トシ其役所管内ノ選挙人名簿ヲ調製スヘシ
第三条 区長ハ毎年九月十五日ヲ期トシ其役所管内ノ選挙人名原簿ヲ調製シ十月十五日ヲ期トシ選挙人名簿ヲ調製スヘシ
選挙人名原簿ニ記載スヘキ事項ハ第一条第二項ニ同シ
第四条 府県会規則第十三条ノ年齢及ヒ年限ヲ算スルハ選挙人名簿調製ノ期日ヲ以テ限界ト為シ其地租納額ヲ算スルハ原簿調製ノ期日ヨリ前一年以上之ヲ納メ猶引続キ納ムル者ニ限ルヘシ但家督ニ依リ財産ヲ相続シタル者ハ前財産主ノ納税額ヲ以テ其者ノ納税額ニ算入スヘシ
第五条 選挙人其住居スル区町村ノ外ニ於テ地租ヲ納ムルトキハ其納税地区戸長ノ証状ヲ添ヘ選挙人名原簿調製ノ期日迄ニ其住居地ノ区戸長ニ届出ヘシ
前項ノ届出ヲ為サヽル納税額ハ選挙及ヒ被選挙ノ資格ニ算入スルコトヲ得ス
第六条 郡区長ハ十月二十日ヨリ十五日間其役所管内ノ選挙人名原簿及ヒ選挙人名簿ノ写ヲ其郡区役所ニ於テ縦覧セシムヘシ但関係者ノ請求アルトキハ戸長役場ニ於テモ其調製シタル原簿ノ写ヲ示スヘシ
第七条 選挙資格アル者選挙人名簿ニ於テ脱漏又ハ誤載アルコトヲ発見シタルトキハ其縦覧期限内ニ之ヲ郡区長ニ申立ヘシ
第八条 郡区長ニ於テ脱漏又ハ誤載ノ申立ヲ受ケタルトキハ十日以内ニ之ヲ審査判定シ其申立正当ナルトキハ直ニ其人名ヲ記入又ハ削除シ其由ヲ管内ニ告示スヘシ但郡ニ在テハ仍ホ当人住居地ノ戸長ニ通知スヘシ
第九条 前条審査ノ為メ必要アル場合ニ於テハ申立人又ハ当人ヲ召喚審問スルコトヲ得
第十条 申立人又ハ当人ニ於テ郡区長ノ判定ニ不服アルトキハ判定ノ日ヨリ七日以内ニ始審裁判所ニ出訴スルコトヲ得但其判定ハ出訴ノ為メ停止セサルモノトス
第十一条 始審裁判所ニ於テ前条ノ訴訟ヲ受取リタルトキハ他ノ訴訟ノ順序ニ拘ハラス速ニ其裁判ヲ為スヘシ
第十二条 前条始審裁判所ノ裁判ハ上告スルコトヲ得ト雖モ控訴スルコトヲ許サス但其裁判ハ上告ノ為メ停止セサルモノトス
第十三条 選挙人名簿ハ十一月十五日ヲ以テ確定期限トシ次年ノ改正期日迄之ヲ据置クモノトス但裁判言渡ニ依リ訂正スヘキモノハ郡区長ニ於テ其言渡ヲ受ケタルトキヨリ二十四時間以内ニ之ヲ訂正シ其由ヲ管内ニ告示スヘシ但郡ニ在テハ仍ホ当人住居地ノ戸長ニ通知スヘシ
前項ノ外次年ノ改正期日前ト雖モ選挙ヲ行フ前ニ於テ選挙権ヲ失ヒ若クハ選挙権ヲ有セサリシコトヲ発見シタル場合ニ於テハ郡区長ハ其人名ヲ削除スヘシ
毎年確定ノ選挙人名簿ハ臨時ノ補闕選挙ニモ之ヲ使用スルモノトス
第十四条 選挙投票ハ通常二月若クハ三月ニ於テ之ヲ行フヘシ但解散及ヒ補闕選挙ノ場合ハ此限ニ在ラス
前項ノ時期ハ府県ノ情況ニ依リ府県知事ニ於テ府県会ノ議決ヲ取リ内務大臣ノ認可ヲ経テ之ヲ変更スルコトヲ得
第十五条 議員ヲ選挙スヘキトキハ少クトモ一箇月前ニ府県知事ヨリ其月日、選挙開会並ニ投票函閉鎖ノ時刻、選挙ヲ行フヘキ郡区ノ名及ヒ選挙スヘキ議員ノ数ヲ記シ之ヲ管内ニ告示スヘシ若シ正議員ノ外補闕員ノ増選ヲ要スルトキハ各別ニ其数ヲ記スヘシ
選挙開会ヨリ投票函閉鎖迄ノ時間ハ四時間以上十時間以内タルヘシ
第十六条 前条ノ告示アリタルトキハ郡区長ハ前条各事項並ニ選挙開会ノ場所ヲ管内ニ告示スヘシ
第十七条 郡区長ハ其管内ノ選挙人中ヨリ立会人五名ヲ定メ遅クトモ選挙ノ期日ヨリ五日以前ニ之ヲ本人ニ通知シ選挙ノ当日選挙会場ニ参会セシムヘシ
選挙分会ヲ設ケタル場合ニ於テハ本会分会トモ各其会場所属ノ選挙人ニ就キ前項ニ依リ立会人ヲ定ムヘシ
立会人ハ正当ノ事故ナクシテ其職ヲ辞スルコトヲ得ス立会人若シ選挙開会ノ時刻ニ至リ出頭セサルトキハ参会ノ選挙人中最多額ノ地租ヲ納ムル者ヲ以テ仮ニ其闕ヲ補フヘシ
第十八条 郡区長ハ選挙会長トナリ選挙会場ヲ管理スヘシ郡区長事故アルトキハ代理書記ヲ以テ之ニ充ツヘシ
選挙会書記ハ郡区長ニ於テ郡区書記中ヨリ之ヲ命スヘシ
第十九条 選挙人ハ選挙開会ノ時刻ヨリ投票函閉鎖ノ時刻ニ至ル迄何時タリトモ到著ノ順序ニ従ヒ投票スルコトヲ得
第二十条 選挙会場ニハ錠ヲ付シタル投票函及ヒ選挙録並ニ筆墨ヲ備ヘ置クヘシ
投票函ハ投票ニ先チ参集シタル選挙人ノ面前ニ於テ之ヲ開キ其空虚ナルコトヲ示スヘシ
第二十一条 投票用紙ハ府県知事ノ定ムル所ニ依リ各郡区ニ於テ一定ノ式ヲ用井投票ノ当日選挙会場ニ備ヘ置キ選挙会長又ハ書記ヨリ之ヲ各選挙人ニ交付スヘシ
用紙ハ正議員ノ外補闕員ノ増選ヲ要スル場合ニ於テハ之ヲ甲乙二種ニ分チ甲種ハ正議員ノ為メノ用紙ト為シ乙種ハ補闕員ノ為メノ用紙ト為スヘシ
第二十二条 選挙人ハ自ラ投票ヲ行フヘシ代人ニ託スルコトヲ得ス
第二十三条 選挙人ハ選挙会場ニ於テ投票用紙ニ被選挙人並ニ自己ノ氏名ヲ記シ捺印スヘシ但氏名ノ外住所若クハ位階勲等其他敬称ノ類ヲ記スルハ妨ナシ
第二十四条 選挙人投票ヲ為サントスルトキハ選挙会長ハ其住所氏名ヲ選挙人名簿ニ照シ名簿ニ消印ヲ捺シ選挙人ヲシテ自ラ之ヲ投票函ニ投入セシムヘシ
第二十五条 選挙人ニシテ文字ヲ書スルコト能ハサル由ヲ申立ルトキハ選挙会長ハ書記ヲシテ代書セシメ之ヲ本人ニ読聞セ並ニ立会人ニ示シタル後捺印投票セシムヘシ
第二十六条 選挙ニ関スル吏員及ヒ選挙人ノ外何人タリトモ選挙会場ニ入ルコトヲ得ス但会場臨視ノ職権アル官吏ハ此限ニ在ラス
第二十七条 選挙人名簿ニ記載セラレタル者ノ外投票スルコトヲ得ス但記載セラルヘキ裁判言渡書ヲ所持シテ参会スル者ハ此限ニ在ラス
第二十八条 選挙人ハ会場ニ於テ演説討論ヲ為シ若クハ喧噪ニ渉リ又ハ互ニ投票ヲ勧誘スルコトヲ得ス
第二十九条 選挙会場ニ於テ秩序ヲ紊ル者アルトキハ選挙会長ハ之ヲ警戒シ其命ニ従ハサルトキハ之ヲ会場外ニ退出セシムヘシ但其投票ヲ為サシムル為メ再ヒ之ヲ呼入ルヽコトヲ得
選挙会長ハ会場取締ノ為メ必要ト認ムルトキハ警察官ノ助力ヲ求ムルコトヲ得
第三十条 選挙権ナク又ハ他人ノ氏名ヲ詐称シテ投票セントスル者アルトキハ選挙会長ハ其投票ヲ取上クヘシ
第三十一条 投票函閉鎖ノ時刻ニ至ルトキハ選挙会長ハ其由ヲ宣告シ書記ヲシテ一時選挙会場ノ入口ヲ鎖サシメ参会者ニ問フニ未タ投票セサリシ者ナキヤヲ以テシ若シ之アルニ於テハ直ニ投票セシメタル後投票函ヲ閉鎖スヘシ
第三十二条 選挙会場ニハ点数簿二冊ヲ備ヘ書記二人ヲシテ各一冊ヲ担任セシムヘシ
第三十三条 投票函閉鎖後十分時間ヲ経過スレハ選挙会長ハ立会人ノ面前ニ於テ投票函ヲ開キ逐次投票ヲ取出シ披封点検シテ之ヲ書記ニ付シ選挙人被選挙人ノ氏名ヲ朗読セシメ点数簿担任ノ書記ヲシテ被選挙人ノ得点ヲ点数簿ニ記入セシムヘシ
前項ノ点検中若シ無効ノ投票ヲ発見シタルトキハ之ニ抹線ヲ加ヘ一部分無効ノモノハ其部分ニ抹線ヲ加フヘシ
第三十四条 選挙人ハ投票点検ノ際之ヲ参観スルコトヲ得
第三十五条 投票点数ノ記入ヲ終リタルトキハ選挙会長ハ書記ヲシテ各被選挙人得点ノ合計ヲ点数簿ニ記入シテ之ヲ朗読セシムヘシ
第三十六条 点数記入並ニ計算其他書記ノ事務ハ総テ選挙会長並ニ立会人ノ面前ニ於テ之ヲ為スヘシ
第三十七条 点数ノ合計ヲ記入シ終リタルトキハ選挙会長ハ立会人ノ面前ニ於テ多数ヲ得タル者ヨリ順次ニ其被選挙権ノ有無ヲ査定シ同数ハ年長ヲ取リ同年ハ抽籤ヲ用井其当選ヲ定ムヘシ但即時ニ其当選ニ必要ナル事実ヲ確知シ得サルトキハ調査ニ必要ナル時日ノ間其査定ヲ延ハスコトヲ得
分会ヲ設ケタル場合ニ於テハ第五十条ニ依リ当選ヲ定ムルモノトス
当選タルヘキ多数ヲ得タル者ノ被選挙権ヲ有セサルコトヲ発見シタルトキハ順次其次点者ヲ以テ当選ト為スヘシ此場合ニ於テハ郡区長ハ当選者ノ氏名ト共ニ其事由ヲ告示スヘシ
当選タルヘキ多数ヲ得タル被選挙人他郡区ノ人ニシテ直ニ其当選ヲ定メ難キトキハ第四十一条ニ依リ之ヲ定ムヘシ
第三十八条 点検済ノ投票ハ之ヲ取纒メ封緘ノ上選挙会長立会人並ニ書記之ニ捺印スヘシ
前項ノ投票ハ封印ノ儘附属書類ト共ニ一年間郡区役所ニ保存スヘシ若シ選挙ニ関シ訟訴又ハ告訴告発アルトキハ一年ヲ過クルモ其裁判確定ニ至ルマテ之ヲ保存スヘシ
第三十九条 左ノ事項ハ之ヲ選挙録中ニ記入スヘシ
一 選挙開会ノ月日並ニ時刻
二 選挙会長及ヒ書記ノ氏名
三 立会人ノ住所氏名
四 第二十七条但書ニ依リ投票セシメタルトキハ其顛末
五 第三十条ノ処分ヲ為シタルトキハ其顛末
六 投票函閉鎖ノ時刻
七 各被選挙人ノ得点数
八 当選人ノ住所氏名若シ直ニ当選ヲ定メ難キトキハ其事由
九 選挙閉会ノ時刻
十 右ノ外選挙会長ニ於テ緊要ト認ムル事項
当選ノ査定ヲ延シタルトキハ其結果ヲ追記スヘシ
第四十条 選挙録ニハ選挙会長立会人並ニ書記之ニ署名捺印スヘシ
第四十一条 当選タルヘキ多数ヲ得タル被選挙人他郡区ノ人ナルトキハ郡区長ハ其本籍地ノ郡区長ニ照会シ被選挙権ヲ有スルヤ否ヤノ証明ヲ求ムヘシ若シ其権ヲ有セサルトキハ第三十七条第三項ノ例ニ依ル
第四十二条 左ノ投票ハ無効トス
一 選挙人名簿ニ記載ナキ者ノ投票但裁判言渡書ヲ所持シタルニ依リ投票シタル者ハ此限ニ在ラス
二 成規ノ用紙ヲ用井サルモノ
三 選挙人又ハ被選挙人ノ氏名ヲ記載セサルモノ
四 選挙人ノ氏名ノ読ミ難キモノ又ハ何人タルヲ知ルヘカラサルモノ
五 選挙人被選挙人ノ住所氏名ノ外余事ヲ記入スルモノ但位階勲等其他敬称ノ類ヲ記入スルモノハ余事ト見做スノ限ニ在ラス
六 被選挙人ノ氏名ノ読ミ難キモノ又ハ其何人タルヲ知ルヘカラサルモノ但列記ノ被選挙人ニ付テハ仍ホ其効アリトス
七 被選挙権ナキ者ヲ記載シタルモノ但列記ノ被選挙人ニ付テハ仍ホ其効アリトス
第四十三条 投票ニ記載ノ被選挙人其選挙スヘキ定数ニ足ラサルモ之ヲ無効トセス又定数ニ過クルトキハ前条第六第七ニ触ルヽモノアルト否トヲ問ハス末尾ヨリ其過数ヲ順次ニ棄却スヘシ
一人ノ氏名ヲ複記シタルモノハ一人トシテ計算スヘシ
第四十四条 選挙人又ハ被選挙人ノ住所氏名ニ誤字脱字アリ又ハ仮名字ヲ用ユルモ其何人ノ何人ヲ選挙シタルコト明瞭ナルトキハ其投票ヲ有効トスヘシ
第四十五条 投票効力ノ有無ニ付疑義アルトキハ立会人ノ意見ヲ聞キ選挙会長之ヲ決定スヘシ其決定ニ対シテハ選挙会場ニ於テ異議ヲ申立ルコトヲ得ス
第四十六条 郡区ノ区域広濶ニ過クルカ又ハ郡区内島嶼ノ地アリテ選挙人ノ参会ニ不便ナル為メ已ムヲ得サル場合ニ於テハ郡区長ハ府県知事ノ指揮ニ依リ又ハ府県知事ノ許可ヲ得テ選挙分会ヲ設クルコトヲ得
分会ノ為メ特ニ選挙人名簿ヲ調製スルヲ要セスト雖モ選挙人名簿中ニ各選挙人所属ノ会場ヲ区別シ予メ分会場所属ノ区域並ニ会場ヲ管内ニ告示スヘシ
第四十七条 分会ハ本会ト同日時ニ之ヲ開キ投票時間モ亦本会ト同一タルヘシ其他選挙ノ手続会場ノ取締選挙録ノ記載等ハ総テ本会ニ準スヘシ但島嶼其他遠隔ノ地ニ限リ府県知事ニ於テ適宜其投票ノ期日ヲ異ニシテ選挙本会ノ投票期日迄ニ其投票函ヲ送致セシムルコトヲ得
第四十八条 分会選挙会長ハ上席郡区書記ヲ以テ之ニ充ツヘシ
分会書記ハ郡区長ニ於テ其郡区書記又ハ其地ノ戸長又ハ戸長役場吏員中ヨリ之ヲ命スヘシ
第四十九条 分会ニ於テ投票函ヲ閉鎖シタルトキハ之ニ封印シ選挙会長及ヒ書記ノ中少クトモ一名付添直ニ本会場ニ送付スヘシ若シ立会人又ハ他ノ選挙人中同行ヲ望ム者アルトキハ之ヲ許スヘシ
第五十条 分会ヲ設ケタルトキハ本会場ニ於テハ投票函閉鎖ノ後分会投票函ノ到著ヲ待チ第三十三条ノ手続ヲ為シ合算ノ上総数ヲ以テ当選ヲ定ムヘシ
第五十一条 当選者ノ定マリタルトキハ郡区長ハ直ニ其旨ヲ当選者ニ通知スヘシ
当選者当選ノ通知ヲ受ケタルトキハ五日以内ニ当選承諾ノ届出ヲ為スヘシ若シ当選ノ通知ヲ為シタル日ヨリ十日以内ニ承諾ノ届出ヲ為サヽルトキハ当選ヲ辞シタルモノト見做スヘシ
当選ヲ辞シタル者アルトキハ郡区長ハ次点者ヲ以テ当選者ト為スヘシ
第五十二条 選挙ノ結果ハ郡区長ヨリ之ヲ府県知事ニ報告スヘシ
第五十三条 当選者ノ住所氏名ハ府県知事ニ於テ之ヲ管内ニ告示スヘシ
第五十四条 府県会規則第十条第二項ニ依リ補闕員ヲ増選スルトキハ其選挙ハ正議員選挙ト同会ニ於テ同時ニ之ヲ行フ但其投票函ハ正議員ノ投票函ト異ニスヘシ
第五十五条 一人ニシテ正議員補闕員ノ選ニ併セ当ルトキハ之ヲ正議員ト為シ其次点者ヲ以テ補闕員当選ト為スヘシ
第五十六条 当選ノ査定ニ不服アル関係者ハ当選者ノ氏名告示ヨリ十日以内ニ府県知事ニ其更正又ハ選挙取消ノ申立ヲ為スコトヲ得府県知事ノ判定ニ服セサル者ハ二十日以内ニ控訴院ニ出訴スルコトヲ得但其判決ハ終審トス
第五十七条 当選者確定ノ後其当選者ノ被選挙権ヲ有セサリシコトヲ発見スルトキハ府県知事ハ其当選ヲ取消シ其次点者ヲ以テ当選ト為スヘシ但此場合ニ於テハ其事由ヲ管内ニ告示スヘシ
第五十八条 選挙全会ヲ取消シ更ニ選挙ヲ命スルハ其選挙ノ選挙規定ニ違フ場合ニ限ル但規定ニ違フ所アルモ其事ノ軽微ニシテ選挙ノ結果ニ異動ヲ生セス又ハ其事ノ更正シ得ヘキモノハ取消ノ限ニ在ラス
選挙全会ノ取消ハ府県知事ヨリ内務大臣ニ具状シ其認可ヲ経テ之ヲ為スヘシ但其事由ヲ管内ニ告示スヘシ
第五十九条 納税額年齢其他選挙資格ニ必要ナル事項ヲ詐称シ選挙人名簿ニ記載セラレタル者ハ二円以上二十円以下ノ罰金ニ処ス其被選挙資格ニ必要ナル事項ヲ詐称シテ当選者ト為リタル者又ハ其資格ヲ有セサルモ其事ヲ告ケスシテ当選者ト為リタル者ハ十円以上百円以下ノ罰金ニ処ス
第六十条 投票ヲ得又ハ他人ニ投票ヲ得セシメ若クハ他人ノ為メニ投票ヲ為スコトヲ抑止スルノ目的ヲ以テ直接又ハ間接ニ金銭物品ヲ授与シ又ハ授与スルコトヲ約束シタル者ハ五円以上五十円以下ノ罰金ニ処ス其授与又ハ約束ヲ受ケタル者モ亦同シ
直接又ハ間接ニ金銭物品ヲ授与シ又ハ授与スルコトヲ約束シテ投票ヲ得又ハ他人ニ投票ヲ得セシメ若クハ他人ノ為メニ投票ヲ為スコトヲ抑止シタル者ハ刑法第二百三十四条ノ例ヲ以テ論ス其授与又ハ約束ヲ受ケテ投票ヲ為シ又ハ投票ヲ為サヽル者モ亦同シ
第六十一条 戎器又ハ兇器ヲ携帯シテ選挙会場ニ入リタル者ハ二円以上二十円以下ノ罰金ニ処ス
第六十二条 投票ヲ得又ハ他人ニ投票ヲ得セシメ若クハ他人ノ為メニ投票ヲ為スコトヲ抑止スルノ目的ヲ以テ選挙人ニ暴行ヲ加ヘタル者ハ十五日以上三月以下ノ軽禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス
第六十三条 投票ヲ妨害スルノ目的ヲ以テ途中又ハ其他ニ於テ選挙人ニ暴行ヲ加ヘ又ハ選挙人ヲ脅嚇スル者又ハ選挙ニ関スル吏員若クハ立会人ニ暴行ヲ加ヘ又ハ暴行ヲ以テ選挙会場ヲ騒擾シ又ハ投票函ヲ抑留毀壊若クハ劫奪シタル者ハ二月以上一年以下ノ軽禁錮ニ処シ五円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス
第六十四条 多衆ヲ嘯集シテ前条ノ罪ヲ犯シタル者ハ六月以上二年以下ノ重禁錮ニ処ス其情ヲ知リ嘯集ニ応シタル者ハ一月以上六月以下ノ軽禁錮ニ処ス
第六十五条 当選者第五十九条乃至第六十四条ノ刑ニ処セラレタルトキハ其当選ハ無効トス
第六十六条 選挙権ナク又ハ他人ノ氏名ヲ詐称シテ投票ヲ為サントシ又ハ投票ヲ為シタル者ハ二円以上二十円以下ノ罰金ニ処ス
第六十七条 選挙ニ関スル犯罪ハ六箇月ヲ以テ期満免除トス
第六十八条 府県会規則第十五条第十七条第十八条第十九条其他本規則ニ牴触スル規定ハ総テ之ヲ廃止ス
附 則
明治二十二年ニ於テハ府県知事ハ本規則規定ノ時期ニ拘ハラス選挙人名原簿及ヒ人名簿ヲ調製セシメ規定ノ時期ニ至リ仍ホ之ヲ訂正セシムヘシ
前項ノ名簿調製前議員ノ選挙ヲ要スル府県ニ於テハ旧名簿ヲ用ユルコトヲ得ト雖モ其他ハ総テ本規則ニ依ルヘシ
島司ヲ置キタル地ニ於テハ郡長ノ事務ハ島司ニ於テ之ヲ行フヘシ