農林中央金庫と信用農業協同組合連合会との合併等に関する法律
法令番号: 法律第118号
公布年月日: 平成8年12月26日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

農協系統は農業者の協同組織として重要な役割を果たしてきたが、近年の農業・農村を取り巻く環境変化により経営環境が厳しくなっている。特に信用事業は金融自由化の進展で他業態との競争が激化しており、機能強化と効率化が急務となっている。こうした状況を踏まえ、信用事業を中心とする農協系統の事業・組織改革を推進するため、農林中央金庫と信用農業協同組合連合会の合併等を可能とし、組織二段化を進める必要がある。このため、両者の合併および事業譲渡に関する手続き等を定める本法案を提出するものである。

参照した発言:
第139回国会 衆議院 農林水産委員会 第1号

審議経過

第139回国会

衆議院
(平成8年12月12日)
(平成8年12月12日)
(平成8年12月13日)
参議院
(平成8年12月16日)
(平成8年12月17日)
(平成8年12月17日)
農林中央金庫と信用農業協同組合連合会との合併等に関する法律をここに公布する。
御名御璽
平成八年十二月二十六日
内閣総理大臣 橋本龍太郎
法律第百十八号
農林中央金庫と信用農業協同組合連合会との合併等に関する法律
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
合併(第三条―第十七条)
第三章
事業譲渡(第十八条―第二十四条)
第四章
雑則(第二十五条―第二十八条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、農林中央金庫と信用農業協同組合連合会との合併及び信用農業協同組合連合会から農林中央金庫への事業譲渡の制度を設けることにより、農業者の協同組織を基盤とする系統団体による金融業務の効率化及び健全な運営の確保を図り、もって国民経済の発展に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「信用農業協同組合連合会」とは、農業協同組合法(昭和二十二年法律第百三十二号)第十条第一項第一号及び第二号の事業を併せ行う農業協同組合連合会をいう。
2 この法律において「事業譲渡」とは、信用農業協同組合連合会がその信用事業(農業協同組合法第十条第一項第一号及び第二号の事業(これらの事業に附帯する事業を含む。)並びに同条第六項から第九項までの事業をいう。以下同じ。)の全部を農林中央金庫に譲り渡し、当該信用事業の全部を農林中央金庫が譲り受けることをいう。
第二章 合併
(合併)
第三条 農林中央金庫と信用農業協同組合連合会とは、合併を行うことができる。この場合において、合併後存続する法人は、農林中央金庫とする。
(合併契約書の承認)
第四条 農林中央金庫及び信用農業協同組合連合会は、合併を行うには、合併契約書を作成して、それぞれ総会の承認を受けなければならない。
2 農林中央金庫における前項の承認の決議(以下「合併決議」という。)については、総出資者(協同組織金融機関の優先出資に関する法律(平成五年法律第四十四号)に規定する優先出資者を除く。以下同じ。)の半数以上が出席し、その議決権の四分の三以上の多数による議決を必要とする。
3 農林中央金庫は、合併決議を総代会で行うことができる。この場合には、総代の半数以上が出席し、その議決権の四分の三以上の多数による議決を必要とする。
4 信用農業協同組合連合会における合併決議については、農業協同組合法第四十六条の規定を準用する。
(総会招集の手続)
第五条 農林中央金庫及び信用農業協同組合連合会が合併決議を行う場合には、前条第一項の総会(同条第三項の総代会を含む。以下「合併総会」という。)の招集は、合併総会の日の二週間前までに、会議の目的たる事項のほか、合併契約書の要領を示してしなければならない。
(農林中央金庫の総代会における合併決議の通知)
第六条 農林中央金庫は、総代会において合併決議をしたときは、当該決議の日から十日以内に、出資者(協同組織金融機関の優先出資に関する法律に規定する優先出資者を除く。以下同じ。)に当該決議の内容を通知しなければならない。
2 出資者が総出資者の五分の一以上の同意を得て、会議の目的たる事項及び招集の理由を記載した書面を理事長に提出して、総会の招集を請求したときは、理事長は、その請求のあった日から三週間以内に総会を招集すべきことを決しなければならない。この場合において、書面の提出は、前項の通知に係る事項についての総代会の合併決議の日から一月以内にしなければならない。
3 前項の請求の日から二週間以内に理事長が正当な理由がないのに総会招集の手続をしないときは、監事は、総会を招集しなければならない。
4 第一項の通知に係る事項についての前二項の総会の承認の決議については、第四条第二項の規定を準用する。
5 第二項又は第三項の総会において第一項の通知に係る事項を承認しなかった場合には、当該事項についての総代会の合併決議は、その効力を失う。
(債権者の異議)
第七条 農林中央金庫及び信用農業協同組合連合会は、合併決議の日から二週間以内に、債権者に対して、異議があれば一定の期間内にこれを述べるべき旨を公告し、かつ、農林債券の権利者、預金者又は貯金者、定期積金の積金者その他政令で定める債権者以外の知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。
2 前項の期間は、一月を下ってはならない。
3 債権者が第一項の期間内に異議を述べなかったときは、合併を承認したものとみなす。
4 債権者が第一項の期間内に異議を述べたときは、農林中央金庫又は信用農業協同組合連合会は、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は債権者に弁済を受けさせることを目的として信託業務を営む銀行若しくは信託会社に相当の財産を信託しなければならない。
(合併に反対する出資者の持分払戻請求権)
第八条 農林中央金庫の出資者で、合併総会に先立って農林中央金庫に対し書面をもつて合併に反対の意思を通知したものは、合併決議の日から二十日以内に書面をもって持分の払戻しを請求することにより、合併の日に農林中央金庫を脱退することができる。
2 農林中央金庫の出資者は、前項の規定により脱退したときは、定款で定めるところにより、その持分の全部又は一部の払戻しを請求することができる。
3 前項の持分は、合併の日における農林中央金庫の財産によってこれを定める。
(合併に反対する会員等の持分払戻請求権)
第九条 信用農業協同組合連合会の会員で、合併総会に先立って当該信用農業協同組合連合会に対し書面をもって合併に反対の意思を通知したもの(第三項の規定に該当するものを除く。)は、合併決議の日から二十日以内に書面をもって持分の払戻しを請求することにより、合併の日に当該信用農業協同組合連合会を脱退することができる。
2 農業協同組合法第二十三条の規定は、前項の規定により脱退する場合について準用する。この場合には、合併の日を同条第二項に規定する脱退した事業年度の終わりとみなす。
3 信用農業協同組合連合会の会員で、農林中央金庫の出資者となる資格を有しないものは、合併の日に当該信用農業協同組合連合会を脱退したものとみなして、農業協同組合法第二十三条の規定を適用する。この場合においては、前項後段の規定を準用する。
(合併の認可)
第十条 農林中央金庫と信用農業協同組合連合会との合併は、主務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
2 主務大臣は、前項の認可をしようとするときは、次に掲げる基準に適合するかどうかを審査しなければならない。
一 合併が農業者の協同組織を基盤とする系統団体による金融業務の効率化及び健全な発展に資するものであること。
二 合併を行う信用農業協同組合連合会の地区内における農業者その他の信用事業の利用者の利便に支障を生じないこと。
三 合併後の農林中央金庫の経営の健全性が確保されること。
3 主務大臣は、その必要の限度において、第一項の認可に条件を付することができる。
(合併の登記)
第十一条 農林中央金庫と信用農業協同組合連合会とが合併を行うときは、農林中央金庫については変更の登記を、当該信用農業協同組合連合会については解散の登記をしなければならない。
2 前項の登記の申請書に添付すべき書類については、政令で別段の定めをすることができる。
(合併の効力発生及び効果)
第十二条 農林中央金庫と信用農業協同組合連合会との合併は、農林中央金庫が、その主たる事務所の所在地において、合併による変更の登記をすることによってその効力を生ずる。
2 農林中央金庫は、合併する信用農業協同組合連合会の権利義務を承継する。
(業務の継続の特例)
第十三条 信用農業協同組合連合会と合併した農林中央金庫は、農林中央金庫法(大正十二年法律第四十二号)第十六条の規定にかかわらず、合併の日において当該信用農業協同組合連合会の会員であった者に対し、貸付け又は手形の割引を行うことができる。
2 前項に規定するもののほか、農林中央金庫は、農林中央金庫法その他の農林中央金庫の業務に関する法令により行うことができない業務に属する契約又は制限されている契約に係る権利義務を合併により承継した場合には、これらの契約のうち、期限の定めのあるものについては期限満了まで、期限の定めのないものについては承継の日から一年以内の期間に限り、これらの契約に関する業務を継続することができる。
3 第一項の信用農業協同組合連合会が信託業務を営んでいる場合には、前項の規定は、当該信託業務については、適用しない。
4 農林中央金庫は、第二項に規定する契約に関する業務の利用者の利便等に照らし特別の事情がある場合において、合併の日における当該契約の総額を超えない範囲内において、かつ、期間を定めて当該業務を整理することを内容とする計画を作成し、当該計画につき主務大臣の承認を受けたときは、当該計画に従い同項の期限が満了した契約を更新して、又は同項の期間を超えて、当該業務を継続することができる。
(農林中央金庫の持分取得の特例)
第十四条 農林中央金庫は、その出資者たる信用農業協同組合連合会と合併したときは、農林中央金庫法第八条において準用する産業組合法(明治三十三年法律第三十四号)第四十八条の規定にかかわらず、当該出資者の持分を取得することができる。
2 農林中央金庫が前項の規定によってその出資者の持分を取得したときは、速やかに、これを処分しなければならない。
(準備金の積立て)
第十五条 農林中央金庫と信用農業協同組合連合会とが合併を行った場合において、当該信用農業協同組合連合会から承継した財産の価額が、当該信用農業協同組合連合会から承継した債務の額及び当該信用農業協同組合連合会の会員に支払った金額並びに農林中央金庫の増加した資本金の額を超えるときは、その超える額については、政令で定める額を除くほか、農林中央金庫が農林中央金庫法第二十三条ノ二の規定により積み立てるべき準備金として積み立てなければならない。
(商法等の準用)
第十六条 商法(明治三十二年法律第四十八号)第四百八条ノ二の規定は、合併を行う農林中央金庫及び信用農業協同組合連合会について準用する。
2 商法第百四条第一項及び第三項、第百五条、第百六条、第百八条から第百十一条まで並びに第四百十五条並びに非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第百三十五条ノ八の規定は、農林中央金庫と信用農業協同組合連合会との合併について準用する。
(信用農業協同組合連合会の合併に関する適用法規の原則)
第十七条 この法律に定めるものを除くほか、信用農業協同組合連合会の合併に関する事項については、農業協同組合法に定める合併の場合の例による。
第三章 事業譲渡
(事業譲渡)
第十八条 信用農業協同組合連合会は、信用事業の全部を農林中央金庫に譲り渡すことができる。
2 農林中央金庫は、信用農業協同組合連合会から信用事業の全部を譲り受けることができる。
(事業譲渡契約書の承認)
第十九条 農林中央金庫及び信用農業協同組合連合会は、事業譲渡を行うには、事業譲渡契約書を作成して、それぞれ総会の承認を受けなければならない。
2 前項の承認の決議については、第四条第二項から第四項まで、第五条及び第六条の規定を準用する。
(合併に関する規定の準用)
第二十条 第七条、第八条、第九条第一項及び第二項、第十条並びに第十三条の規定は、事業譲渡について準用する。この場合において、第十三条第一項中「と合併した」とあるのは、「から信用事業の全部を譲り受けた」と読み替えるものとする。
(事業譲渡の公告)
第二十一条 信用農業協同組合連合会は、事業譲渡を行ったときは、遅滞なく、その旨を公告しなければならない。
2 前項の規定による公告がされたときは、信用農業協同組合連合会の債務者に対して民法(明治二十九年法律第八十九号)第四百六十七条の規定による確定日付のある証書による通知があったものとみなす。この場合においては、その公告の日付をもって確定日付とする。
(解散又は定款の変更)
第二十二条 信用農業協同組合連合会は、事業譲渡を行ったときは、遅滞なく、解散し、又は信用事業を廃止するため必要な定款の変更をしなければならない。
(商法の準用)
第二十三条 商法第四百八条ノ二の規定は、事業譲渡を行う農林中央金庫及び信用農業協同組合連合会について準用する。
2 商法第三百八十条の規定は、事業譲渡について準用する。
(農業協同組合法の適用除外)
第二十四条 農業協同組合法第五十条の二の規定は、この章に規定する事業譲渡には、適用しない。
第四章 雑則
(認可を受けた合併等の実行の届出及び認可の失効)
第二十五条 農林中央金庫又は信用農業協同組合連合会は、第十条第一項(第二十条において準用する場合を含む。次項において同じ。)の認可を受けた合併又は事業譲渡を行ったときは、遅滞なく、その旨を主務大臣に届け出なければならない。
2 農林中央金庫又は信用農業協同組合連合会が第十条第一項の認可を受けた日から六月以内に、その認可を受けた合併又は事業譲渡を行わないときは、その認可は、効力を失う。
3 前項の規定は、やむを得ない理由がある場合において、あらかじめ主務大臣の承認を受けたときは、適用しない。
(主務大臣)
第二十六条 この法律における主務大臣は、農林水産大臣及び大蔵大臣とする。
(政令への委任)
第二十七条 第四条第一項の合併契約書又は第十九条第一項の事業譲渡契約書に記載すべき事項その他この法律の実施に関し必要な事項は、政令で定める。
(罰則)
第二十八条 農林中央金庫の役員又は信用農業協同組合連合会の役員若しくは清算人は、次の各号の一に該当する場合には、三十万円以下の過料に処する。
一 第六条第一項(第十九条第二項において準用する場合を含む。)、第七条第一項(第二十条において準用する場合を含む。)又は第二十一条第一項の規定に違反して公告、通知若しくは催告をすることを怠り、又は不正の公告、通知若しくは催告をしたとき。
二 第六条第二項又は第三項(これらの規定を第十九条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反したとき。
三 第七条第四項(第二十条において準用する場合を含む。)の規定に違反して合併又は事業譲渡を行ったとき。
四 第十条第三項(第二十条において準用する場合を含む。)の規定により付した条件に違反したとき。
五 第十一条第一項の規定に違反して登記をすることを怠り、又は不実の登記をしたとき。
六 第十五条の規定に違反したとき。
七 第十六条第一項又は第二十三条第一項において準用する商法第四百八条ノ二の規定に違反して貸借対照表を備えて置かず、正当な理由がないのにその貸借対照表の閲覧を拒み、又はその謄本若しくは抄本の交付を拒んだとき。
八 第二十二条又は第二十五条第一項の規定に違反したとき。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一月を経過した日から施行する。
(経過措置)
第二条 この法律の施行の日から平成九年三月三十一日までの間における第十五条の規定の適用については、同条中「第二十三条ノ二」とあるのは、「第二十三条」とする。
(農林中央金庫法の一部改正)
第三条 農林中央金庫法の一部を次のように改正する。
第八条中「第一項第四号」を「第一項第三号及第四号」に改め、「損失処理案」の下に「トシ同法第三十八条ノ二第二項及第六十二条第二項中解散及合併トアルハ解散トシ同法第六十五条中解散又ハ合併トアルハ解散」を加える。
(協同組織金融機関の優先出資に関する法律の一部改正)
第四条 協同組織金融機関の優先出資に関する法律の一部を次のように改正する。
第二十一条第二項第一号中「(明治三十一年法律第十四号)」を削り、同項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。
2 商法第百四条第一項及び第三項、第百五条、第百六条並びに第百八条から第百十一条まで(会社の合併無効の訴え)並びに非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第百三十五条ノ八(債務の負担部分の決定)の規定は、農林中央金庫の優先出資者の合併の無効の訴えについて準用する。
第三十一条第二号中「又は」の下に「農林中央金庫若しくは」を加える。
(金融機関等の経営の健全性確保のための関係法律の整備に関する法律の一部改正)
第五条 金融機関等の経営の健全性確保のための関係法律の整備に関する法律(平成八年法律第九十四号)の一部を次のように改正する。
第十条のうち農林中央金庫法第八条の改正規定中「損失処理案」を「商法特例法」を「損失処理案トシ同法第三十八条ノ二第二項」を「同法第三十八条ノ二第二項」に、「又ハ合併トアルハ解散」を「又ハ合併トアルハ解散トシ商法特例法」に改める。
第十二条中協同組織金融機関の優先出資に関する法律第二十一条の改正規定を次のように改める。
第二十一条第二項を次のように改める。
2 次の各号に掲げる規定は、農林中央金庫の優先出資者の当該各号に定める訴えについて準用する。
一 商法第百四条第一項及び第三項、第百五条、第百六条並びに第百八条から第百十一条まで(会社の合併無効の訴え)並びに非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第百三十五条ノ八(債務の負担部分の決定) 合併の無効の訴え
二 商法第二百五十二条(株主総会の決議の不存在又は無効確認の訴え) 普通出資者総会の決議の不存在又は無効確認の訴え
三 商法第二百六十七条から第二百六十八条ノ三まで(取締役に対する訴え)(同法第二百八十条第一項(監査役への準用)において準用する場合を含む。) 理事長、副理事長、理事及び監事の責任を追及する訴え
四 商法第三百八十条(株式会社の資本減少の無効の訴え) 資本減少の無効の訴え
大蔵大臣 三塚博
農林水産大臣 藤本孝雄
内閣総理大臣 橋本龍太郎