(使用者及び労働者の義務)
第五条 使用者及び粉じん作業に従事する労働者は、じん肺の予防に関し、労働基準法及び鉱山保安法(昭和二十四年法律第七十号)の規定によるほか、粉じんの発散の抑制、保護具の使用その他について適切な措置を講ずるように努めなければならない。
(教育)
第六条 使用者は、労働基準法及び鉱山保安法の規定によるほか、常時粉じん作業に従事する労働者に対してじん肺に関する予防及び健康管理のために必要な教育を行なわなければならない。
(就業時診断)
第七条 使用者は、新たに常時粉じん作業に従事することとなつた労働者に対して、その就業の際、じん肺健康診断を行なわなければならない。ただし、当該作業に従事することとなつた前に常時粉じん作業に従事すべき職業に従事したことがない者であつて、その時前三月以内に労働基準法第五十二条第一項の健康診断を受けたものその他労働省令で定める労働者については、この限りでない。
(定期診断)
第八条 使用者は、次の各号に掲げる労働者に対して、それぞれ当該各号に掲げる期間以内ごとに一回、定期的に、じん肺健康診断を行なわなければならない。
一 常時粉じん作業に従事する労働者(次号に掲げる者を除く。) 三年
二 常時粉じん作業に従事する労働者で健康管理の区分が管理二又は管理三であるもの 一年
三 第二十一条第一項の勧告を受けて、当該事業場において、常時粉じん作業以外の作業に従事している労働者で健康管理の区分が管理三であるもの 一年
(定期外診断)
第九条 使用者は、次の各号の場合には、当該労働者に対して、遅滞なく、じん肺健康診断を行なわなければならない。この場合において、当該じん肺健康診断は、労働省令で定めるところにより、その一部を省略することができる。
一 常時粉じん作業に従事する労働者が、労働基準法第五十二条第一項の健康診断において、当該健康診断の直前のじん肺健康診断の後新たに肺結核にかかつたと診断されたとき(当該健康診断を行なう前において、じん肺にかかつており、かつ、健康管理の区分が管理一、管理二又は管理三と決定された労働者について、当該肺結核が活動性のものであると診断されたときを除く。)。
二 第二十一条第一項の勧告を受けて当該事業場において常時粉じん作業以外の作業に従事している労働者が、労働基準法第五十二条第一項の健康診断において、当該健康診断の直前のじん肺健康診断の後新たに肺結核にかかり、かつ、それが不活動性のものであると診断されたとき。
三 健康管理の区分が管理四である労働者が、医師により療養を要しなくなつたと診断されたとき。
(労働基準法の健康診断との関係)
第十条 使用者は、じん肺健康診断を行なつた場合においては、その限度において、労働基準法第五十二条第一項の健康診断を行なわなくてもよい。
(受診義務)
第十一条 関係労働者は、正当な理由がある場合を除き、第七条から第九条までの規定により使用者が行なうじん肺健康診断を受けなければならない。ただし、使用者が指定した医師の行なうじん肺健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師の行なうじん肺健康診断を受け、当該エックス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書面その他労働省令で定める書面を使用者に提出したときは、この限りでない。
(エックス線写真等の提出)
第十二条 使用者は、第七条から第九条までの規定によりじん肺健康診断を行なつたとき、又は前条ただし書の規定によりエックス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書面その他の書面が提出されたときは、遅滞なく、じん肺にかかつていると診断された労働者について、当該エックス線写真及び次の各号に掲げる書面を都道府県労働基準局長に提出しなければならない。
2 使用者は、常時粉じん作業に従事する労働者(じん肺にかかつており、かつ、健康管理の区分が管理一、管理二又は管理三と決定された者に限る。)又は第二十一条第一項の勧告を受けて当該事業場において常時粉じん作業以外の作業に従事している労働者が、労働基準法第五十二条第一項の健康診断の結果次の各号の一に該当する場合は、遅滞なく、当該エックス線写真及び健康診断の結果を証明する書面その他労働省令で定める書面を都道府県労働基準局長に提出しなければならない。
一 直前のじん肺健康診断の後、新たに肺結核にかかり、かつ、それが活動性のものであると診断されたとき。
二 直前のじん肺健康診断の後、従前不活動性であつた肺結核が活動性のものになつたと診断されたとき。
三 直前のじん肺健康診断の後、従前病勢の進行のおそれがないと認められた肺結核(健康管理の区分が管理二である者に係るものに限る。)が、病勢の進行のおそれがある不活動性のものになつたと診断されたとき。
(健康管理の区分の決定等)
第十三条 第七条から第九条まで又は第十一条ただし書の規定によるじん肺健康診断の結果、じん肺にかかつていないと診断された者の健康管理の区分は、管理一とする。
2 都道府県労働基準局長は、前条の規定により、エックス線写真及びじん肺健康診断又は労働基準法第五十二条第一項の健康診断に関する書面が提出されたときは、これらを基礎として、地方じん肺診査医の診断又は審査により、当該労働者がじん肺にかかつているかどうかの別及び健康管理の区分の決定をするものとする。
3 都道府県労働基準局長は、地方じん肺診査医の意見により、じん肺が相当に進行している疑いがあると認められる労働者について、前項の決定を行なうため必要があると認めるときは、使用者に対し、期日又は方法を指定してエックス線写真の撮影又は労働省令で定める範囲内の検査を行なうべきことを命ずることができる。
4 使用者は、前項の規定による命令を受けてエックス線写真の撮影又は検査を行なつたときは、遅滞なく、都道府県労働基準局長に、当該エックス線写真又は検査の結果を証明する書面その他その指定する当該検査に係る物件を提出しなければならない。
5 第十一条本文の規定は、第三項の規定による命令を受けてエックス線写真の撮影又は検査を行なう場合に準用する。
(通知)
第十四条 都道府県労働基準局長は、前条第二項の決定をしたときは、労働省令で定めるところにより、その旨を当該使用者に通知するとともに、遅滞なく、第十二条又は前条第四項の規定により提出されたエックス線写真その他の物件を返還しなければならない。
2 使用者は、前項の規定による通知を受けたときは、遅滞なく、その内容を当該労働者に通知しなければならない。
(随時申請)
第十五条 常時粉じん作業に従事する労働者又は常時粉じん作業に従事する労働者であつた者は、何時でも、じん肺健康診断を受けて、都道府県労働基準局長にじん肺にかかつているかどうかの別及び健康管理の区分を決定すべきことを申請することができる。
2 前項の規定による申請は、エックス線写真、粉じん作業についての職歴を証明する書面、当該じん肺健康診断の結果を証明する書面その他労働省令で定める書面を添えてしなければならない。
3 第十三条第二項から第四項まで及び前条第一項の規定は、第一項の規定による申請があつた場合に準用する。この場合において、第十三条第三項及び第四項中「使用者」とあるのは「申請者」と、前条第一項中「当該使用者」とあるのは「申請者及び申請者を使用する使用者」と読み替えるものとする。
第十六条 使用者は、何時でも、常時粉じん作業に従事する労働者又は常時粉じん作業に従事する労働者であつた者について、じん肺健康診断を行ない、都道府県労働基準局長にじん肺にかかつているかどうかの別及び健康管理の区分を決定すべきことを申請することができる。
2 前条第二項の規定は前項の規定による申請に、第十三条第二項から第四項まで及び第十四条の規定は前項の規定による申請があつた場合に準用する。
(記録)
第十七条 使用者は、労働省令で定めるところにより、その行なつたじん肺健康診断及び第十一条ただし書の規定によるじん肺健康診断に関する記録を作成し、これを五年間保存しなければならない。
(不服の申立て)
第十八条 第十三条第二項(第十五条第三項及び第十六条第二項において準用する場合を含む。)の決定に不服のある者は、労働大臣に不服の申立てをすることができる。
2 前項の不服の申立てをしようとする者は、第十四条第一項(第十五条第三項及び第十六条第二項において準用する場合を含む。)の規定による通知を受けた日から六十日以内に、労働省令で定める事項を記載した申立書を提出しなければならない。
3 第一項の不服の申立ては、当該決定をした都道府県労働基準局長を経由して行なわなければならない。
4 第二項の申立書には、労働省令で定めるところにより、当該決定に係るエックス線写真その他の物件及び証拠となる物件を添附しなければならない。
5 訴願法(明治二十三年法律第百五号)第八条第三項の規定は、第一項の不服の由立てに準用する。
(裁決)
第十九条 労働大臣は、中央じん肺診査医の診断又は審査により、前条第一項の不服の申立てに理由があると認めるときは、裁決において、当該決定を取り消し、かつ、当該労働者又は労働者であつた者がじん肺にかかつているかどうかの別及びその者の健康管理の区分を決定するものとする。
2 労働大臣は、中央じん肺診査医の診断又は審査により前条第一項の不服の申立てに理由がないと認めるとき、又はその申立てが不適法であると認めるときは、裁決において理由を附して却下しなければならない。ただし、申立ての手続の方式に欠けたものがあるときは、これを補正させなければならない。
3 第十三条第三項及び第四項の規定は、前条第一項の不服の申立てがあつた場合に準用する。この場合において、これらの規定中「地方じん肺診査医」とあるのは「中央じん肺診査医」と、「使用者」とあるのは「申立人」と読み替えるものとする。
4 労働大臣は、裁決をしたときは、労働省令で定める事項を記載した裁決書をもつて、当該都道府県労働基準局長を経由して、申立人に通知するとともに、前条第四項の規定又は第三項において準用する第十三条第四項の規定により提出されたエックス線写真その他の物件を返還しなければならない。
5 労働大臣は、裁決をしたときは、当該都道府県労働基準局長を経由して、裁決書の写を労働省令で定める利害関係者に送付するものとする。
(労働省令への委任)
第二十条 前二条に規定するもののほか、第十八条第一項の不服の申立てに関し必要な事項は、労働省令で定める。
(作業の転換)
第二十一条 都道府県労働基準局長は、健康管理の区分が管理三である労働者が現に常時粉じん作業に従事しているときは、使用者に対して、その者を粉じん作業以外の作業に常時従事させるべきことを勧告することができる。
2 使用者は、前項の勧告を受けたときは、当該労働者を粉じん作業以外の作業に常時従事させることとするように努めなければならない。
3 使用者は、第一項の勧告を受けた労働者が常時粉じん作業に従事しなくなつたときは、遅滞なく、その旨を都道府県労働基準局長に通知しなければならない。
(転換手当)
第二十二条 使用者は、前条第一項の勧告を受けた労働者が常時粉じん作業に従事しなくなつたときは、労働省令で定めるところにより、その者に対して、労働基準法第十二条に規定する平均賃金の三十日分に相当する額の転換手当を支払わなければならない。
(療養)
第二十三条 健康管理の区分が管理四と決定された者は、療養を要するものとする。
2 使用者は、第十四条第一項(第十六条第二項において準用する場合を含む。)の規定によりその使用する労働者の健康管理の区分が管理四と決定された旨の通知を受けたときは、第十四条第二項(第十六条第二項において準用する場合を含む。)の規定による通知において、その者が療養を要する旨を明らかにしなければならない。