特定多目的ダム法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十二年三月三十一日
内閣総理大臣 岸信介
法律第三十五号
特定多目的ダム法
目次
第一章
総則(第一条―第三条)
第二章
多目的ダムの建設(第四条―第十四条)
第三章
ダム使用権(第十五条―第二十八条)
第四章
多目的ダムの管理(第二十九条―第三十三条)
第五章
雑則(第三十四条―第三十八条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、多目的ダムの建設及び管理に関し河川法(明治二十九年法律第七十一号)の特例を定めるとともに、ダム使用権を創設し、もつて多目的ダムの効用をすみやかに、かつ、十分に発揮させることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「多目的ダム」とは、建設大臣が河川法第八条第一項の規定により自ら新築するダムで、これによる流水の貯留を利用して流水が発電、水道又は工業用水道の用(以下「特定用途」という。)に供されるものをいい、余水路、副ダムその他ダムと一体となつてその効用を全うする施設又は工作物(もつぱら特定用途に供されるものを除く。)を含むものとする。
2 この法律において「ダム使用権」とは、多目的ダムによる一定量の流水の貯留を一定の地域において確保する権利をいう。
(特定用途のための流水占用の制限)
第三条 多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水を特定用途に供する者は、河川法第十八条の規定による流水の占用の許可によつて生ずる権利(以下「流水占用権」という。)を有するほか、ダム使用権を有する者(以下「ダム使用権者」という。)でなければならない。
第二章 多目的ダムの建設
(基本計画)
第四条 建設大臣は、多目的ダムを新築しようとするときは、その建設に関する基本計画(以下「基本計画」という。)を作成しなければならない。
2 基本計画には、新築しようとする多目的ダムに関し、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 建設の目的
二 位置及び名称
三 規模及び型式
四 貯留量、取水量及び放流量並びに貯留量の用途別配分に関する事項
五 ダム使用権の設定予定者
六 建設に要する費用及びその負担に関する事項
七 工期
八 その他建設に関する基本的事項
3 建設大臣は、基本計画を作成し、変更し、又は廃止しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、関係都道府県知事及び基本計画に定められるべき、又は定められたダム使用権の設定予定者の意見をきかなければならない。この場合において、関係都道府県知事は、意見を述べようとするときは、当該都道府県の議会の議決を経なければならない。
4 建設大臣は、基本計画を作成し、変更し、又は廃止したときは、すみやかに、その旨を公示するとともに、関係行政機関の長、関係都道府県知事及びダム使用権の設定予定者に通知しなければならない。
(ダム使用権の設定予定者の要件)
第五条 ダム使用権の設定予定者は、ダム使用権の設定を申請した者で、第十五条第二項各号に掲げる要件を備える者でなければならない。
(ダム使用権の設定予定者の地位の承継)
第六条 相続人、合併により設立される法人その他のダム使用権の設定予定者の一般承継人は、被承継人が有していたこの法律の規定に基く地位を承継する。
(建設費の負担)
第七条 ダム使用権の設定予定者は、多目的ダムの建設に要する費用のうち、建設の目的である各用途について、多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水を当該用途に供することによつて得られる効用から算定される推定の投資額及び当該用途のみに供される工作物でその効用と同等の効用を有するものの設置に要する推定の費用の額を勘案して、政令で定めるところにより算出した額の費用を負担しなければならない。
2 多目的ダムの建設に要する費用の範囲、負担金の納付の方法及び期限その他前項の負担金に関し必要な事項は、政令で定める。
第八条 多目的ダムの建設に要する費用について河川法第二十七条ただし書の規定により都道府県が負担すべき負担金の額は、その建設に要する費用の額から前条第一項の負担金及び政令で定めるその他の負担金の額を控除した額に同法第二十七条ただし書に定める都道府県の負担割合を乗じた額及びその額に対応する政令で定める利息があるときはその利息の額並びに都道府県が収納する政令で定めるその他の負担金の額を合算した額とする。
(受益者負担金)
第九条 多目的ダムの建設によつて著しく利益を受ける者がある場合において、その者が流水を政令で定める用途に供する者であるときは建設大臣、その他の者であるときは都道府県知事は、その利益を受ける限度において、多目的ダムの建設に要する費用の一部を負担させることができる。
2 前項の負担金を徴収する場合における負担金の徴収を受ける者の範囲及び徴収の方法については、建設大臣が負担させる場合にあつては政令で、都道府県知事が負担させる場合にあつては都道府県の条例で定める。
3 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百十七条第三項及び第四項の規定は、前項の規定による条例を制定し、又は改正する場合について準用する。
第十条 専用の施設を新設し、又は拡張して、新築される多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水をかんがいの用に供する者は、多目的ダムの建設に要する費用につき当該用途について第七条第一項に規定する方法と同一の方法により算出した額のうち十分の一以内で政令で定める割合の額及びその額に対応する建設期間中の利息の額を合算した額の負担金を負担しなければならない。
2 前項の負担金は、都道府県知事が徴収する。
3 前条第二項及び第三項の規定は、前項の負担金について準用する。
(負担金等の帰属)
第十一条 前二条の規定により都道府県知事が負担させ、又は徴収した負担金及びその負担金の納付義務者から徴収した延滞金は、当該都道府県に帰属する。
(建設費負担金の還付)
第十二条 ダム使用権の設定予定者のダム使用権の設定の申請が却下され、又は取り下げられたときは、その者がすでに納付した第七条第一項の負担金を還付するものとする。ただし、建設大臣は、基本計画を廃止する場合を除き、新たにダム使用権の設定予定者が定められるまでその還付を停止することができる。
(ダム使用権設定前の多目的ダムの利用)
第十三条 ダム使用権の設定予定者は、第三条の規定にかかわらず、ダム使用権の設定を受ける前に、建設大臣の許可を受けて、多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水を特定用途に供することができる。
(建設の完了)
第十四条 建設大臣は、多目的ダムの建設を完了したときは、遅滞なく、その旨を公示するとともに、その多目的ダムを河川の附属物として認定するものとする。
第三章 ダム使用権
(設定の要件)
第十五条 ダム使用権は、建設大臣が、流水を特定用途に供しようとする者の申請によつて設定する。
2 建設大臣は、次の各号に掲げる要件に適合すると認めた場合でなければ、ダム使用権を設定してはならない。
一 申請人が多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水を当該特定用途に供することが、河川の総合開発の目的に適合すること。
二 申請人が、流水を当該特定用途に供することについて、及び流水を当該特定用途に供することによつて営もうとする事業について必要な行政庁の許可、認可その他の処分を受けていること又は受ける見込が十分であること。
(設定の申請の却下)
第十六条 建設大臣は、基本計画を作成したときは、基本計画にダム使用権の設定予定者として定められた者以外の者の設定の申請を却下することができる。
2 建設大臣は、次の各号の一に該当すると認めたときは、ダム使用権の設定予定者の設定の申請を却下しなければならない。
一 ダム使用権の設定予定者が、前条第二項の要件を備えなくなつたとき。
二 第七条第一項の負担金を納付しないとき。
三 基本計画を廃止したとき。
(設定)
第十七条 建設大臣は、第十四条の規定による河川の附属物としての認定をしたときは、ただちに、ダム使用権の設定予定者にダム使用権の設定をしなければならない。
第十八条 ダム使用権の設定は、次の各号に掲げる事項を明らかにして行わなければならない。
一 設定の目的
二 ダム使用権により貯留が確保される流水の最高及び最低の水位並びに量
2 前項第二号に掲げる事項は、当該多目的ダムが十分にその効用を果すために適切なものでなければならない。
(流水の貯留が確保される地域)
第十九条 ダム使用権によつて流水の貯留が確保される地域は、前条第一項第二号に規定する流水の最高水位における水平面が土地に接する線によつて囲まれる地域とする。
(性質)
第二十条 ダム使用権は、物権とみなし、この法律に別段の定がある場合を除き、不動産に関する規定を準用する。
第二十一条 ダム使用権は、相続、法人の合併その他の一般承継、譲渡、滞納処分及び強制執行並びに一般の先取特権及び抵当権の目的となるほか、権利の目的となることができない。
(処分の制限)
第二十二条 ダム使用権は、建設大臣の許可を受けなければ、移転(相続、法人の合併その他の一般承継によるものを除く。)の目的とし、分割し、併合し、又はその設定の目的を変更することができない。
第二十三条 抵当権の設定が登録されているダム使用権については、その抵当権者の同意がなければ、分割、併合若しくは設定の目的の変更の許可を申請し、又はこれを放棄することができない。
(取消の処分等)
第二十四条 建設大臣は、ダム使用権者の有する流水占用権につき、河川法第十八条の規定による許可の全部又は一部を取り消す場合において、何人にも従前どおりの流水の占用を認めることができないときは、ダム使用権につき、これに相当する取消又は変更の処分をしなければならない。
第二十五条 建設大臣は、ダム使用権者の有する流水占用権につき、河川法第十八条の規定による許可の全部又は一部を取り消した場合において、他の者に新たに流水の占用を認めるため必要があるときは、ダム使用権者に対し、相当の期間を定めてダム使用権の全部又は一部を他の者に譲渡すべきことを命ずることができる。
2 前項の期間内にダム使用権の譲渡がされないときは、建設大臣は、ダム使用権者の有していた流水占用権の全部又は一部と同一の流水占用権につき他の者が河川法第十八条の規定による許可を受ける見込が十分であるときに限り、ダム使用権の全部又は一部につき取消の処分をすることができる。
(登録)
第二十六条 ダム使用権又はダム使用権を目的とする抵当権の設定、変更、移転、消滅及び処分の制限は、ダム使用権登録簿に登録する。
2 前項の規定による登録は、登記に代るものとする。
3 前二項に規定するもののほか、登録に関し必要な事項は、政令で定める。
(納付金)
第二十七条 ダム使用権の設定を受ける者は、第十七条の規定により設定を受ける場合を除き、多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水を当該ダム使用権の設定の目的である用途に供することによつて得られる効用から算定される推定の投資額を勘案して、政令で定めるところにより算出した額の納付金を国に納付しなければならない。
(負担金等の還付)
第二十八条 ダム使用権につき、第二十四条又は第二十五条第二項の規定による取消又は変更の処分があつたときは、国は、すでに納付された第七条第一項の負担金又は前条の納付金のうち、同条に規定する方法と同一の方法により算出した金額を還付するものとする。ただし、第十七条の規定によりダム使用権の設定を受けた者に対して還付する額は、第七条第一項の負担金の額から政令で定めるところにより算定した償却額を控除した額をこえないものとする。
2 第二十四条又は第二十五条第二項の規定による取消又は変更の処分により消滅した全部又は一部のダム使用権の上に抵当権の設定が登録されているときは、国は、その抵当権者の承諾を得た場合を除き、前項の還付金を供託しなければならない。
3 抵当権者は、前項の規定により供託された還付金に対して、その権利を行うことができる。
第四章 多目的ダムの管理
(建設大臣の管理)
第二十九条 多目的ダムで、二以上の都府県の区域にわたる河川に存するもの及び政令で定めるその他のものについては、建設大臣が、河川法第六条第一項ただし書の規定によりその管理を行う。
(操作の基本原則)
第三十条 多目的ダムの操作は、流水によつて生ずる公利を増進し、及び公害を除却し、又は軽減するとともに、ダム使用権を侵害しないように行わなければならない。
(操作規則)
第三十一条 建設大臣は、多目的ダムの操作の基本原則に従い、多目的ダムの操作規則を定めなければならない。
2 多目的ダムの操作規則に定める事項については、政令で定める。
3 建設大臣は、多目的ダムの操作規則を定め、又は変更しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、ダム使用権の設定予定者又はダム使用権者の意見をきかなければならない。
(放流に関する通知等)
第三十二条 建設大臣又は多目的ダムを管理する都道府県知事は、多目的ダムによつて貯留された流水を放流することによつて流水の状況に著しい変化を生ずると認める場合において、これによつて生ずる危害を防止するため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、あらかじめ、関係市町村長及び関係警察署長に通知するとともに、一般に周知させるため必要な措置をとらなければならない。
(管理費用の負担)
第三十三条 多目的ダムの維持、修繕その他の管理に要する費用は、河川法第二十四条第一項又は第二十七条の規定にかかわらず、都道府県知事がその多目的ダムを管理するときは当該都道府県及びダム使用権者、建設大臣がその多目的ダムを管理するときは国及びダム使用権者が負担するものとし、国が負担する費用のうち二分の一は、その多目的ダムの存する都道府県が負担するものとする。
2 前項の規定は、流水占用権を有しないダム使用権者については、適用しない。
3 前二項に定めるもののほか、第一項の規定による費用の負担の割合その他その負担に関し必要な事項は、政令で定める。
第五章 雑則
(建設大臣の権限)
第三十四条 基本計画の作成の公示があつた後は、次の各号に掲げる処分は、河川法の規定にかかわらず、建設大臣が行う。ただし、基本計画の廃止の公示があつた後は、この限りでない。
一 多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水を特定用途に供するため、又は多目的ダムによる流水の貯留量を増加させ、若しくは多目的ダムによつて貯留される流水とあわせて他の流水を同一の特定用途に供するため必要な工作物の新築、改築若しくは除却又は河川の敷地若しくは流水の占用に関する河川法第十七条から第十九条まで又は第二十一条の規定による許可
二 前号の許可(基本計画の作成の公示前にされた許可を含む。)を受けた者に対する河川法第二十条又は第二十二条の規定による許可の取消その他の処分
三 河川法第十七条から第十九条までの規定による許可のうち第一号の許可(基本計画の作成の公示前にされた許可を含む。)以外の許可を受けた者に対する同法第二十条の規定による許可の取消その他の処分で、多目的ダムを建設し、又は第一号の許可を与えるため必要なもの
四 河川法第五条の規定によつて同法の規定が準用される水流、水面又は河川についての前各号の処分に相当する処分
2 建設大臣は、前項各号の処分をしようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、関係都道府県知事の意見をきかなければならない。
(特別の納付金)
第三十五条 第十三条の規定による許可を受けたダム使用権の設定予定者又はダム使用権者で、三月三十一日現在において多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水を発電の用に供している者は、翌年の六月三十日までに、国又は都道府県が当該多目的ダムに関し国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律(昭和三十一年法律第八十二号)第二十一条の二の規定により地方公共団体に交付する交付金に相当する額の納付金を、国又は都道府県に納付しなければならない。
(強制徴収)
第三十六条 第七条第一項、第九条第一項若しくは第十条第一項の負担金、第三十三条第一項のダム使用権者の負担金又は第二十七条若しくは前条の納付金(以下この条において「負担金等」という。)を納付しない者があるときは、建設大臣又は都道府県知事は、督促状によつて納付すべき期限を指定して督促しなければならない。
2 前項の場合においては、建設大臣又は都道府県知事は、建設省令で定めるところにより、延滞金を徴収することができる。ただし、延滞金は、百円につき一日四銭の割合を乗じて計算した額をこえない範囲内で定めなければならない。
3 第一項の規定による督促を受けた者がその指定する期限までにその納付すべき金額を納付しないときは、建設大臣又は都道府県知事は、国税滞納処分の例により前二項に規定する負担金等及び延滞金を徴収することができる。この場合における負担金等及び延滞金の先取特権は、地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第一条第一項第十四号に規定する地方団体の徴収金以外の都道府県の徴収金と同順位とする。
4 延滞金は、負担金等に先だつものとする。
5 負担金等及び延滞金を徴収する権利は、五年間行わないときは、時効により消滅する。
(訴願)
第三十七条 次の各号に掲げる処分について不服のある者は、処分のあつた日から三十日以内に、建設大臣に訴願をすることができる。
一 第十六条の規定によるダム使用権の設定の申請の却下
二 第二十二条の規定によるダム使用権の移転、分割、併合又は設定の目的の変更の許可の申請の却下
三 第二十四条の規定によるダム使用権の取消又は変更の処分
四 第二十五条第一項の規定によるダム使用権の譲渡の命令
五 第二十五条第二項の規定によるダム使用権の取消の処分
六 第七条第一項、第九条第一項若しくは第十条第一項の負担金、第三十三条第一項のダム使用権者の負担金又は第二十七条若しくは第三十五条の納付金の決定
(政令への委任)
第三十八条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、政令で定める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、昭和三十二年四月一日から施行する。
(建設中又は既設のダムに関する経過措置)
2 この法律の施行の際、現に建設大臣と流水を特定用途に供しようとし、又は供している者とが共同して建設し、又は設置しているダム(余水路、副ダムその他ダムと一体となつてその効用を全うする施設又は工作物で、もつぱら特定用途に供されるもの以外のものを含む。以下同じ。)は、その者の持分が国に帰属した時において、多目的ダムとなるものとする。この場合において必要な事項は、政令で定める。
3 この法律の施行の際、現に建設大臣が建設しているダムで政令で定めるものについては、第十条の規定は、適用しない。
(登録税法の一部改正)
4 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第十五ノ三の次に次の一条を加える。
第十五条ノ四 ダム使用権ニ関シダム使用権登録簿ニ登録ヲ受クルトキハ左ノ区別ニ従ヒ登録税ヲ納ムベシ
設定
ダム使用権価格
千分ノ一
取得
 相続
ダム使用権価格
千分ノ一
 相続以外ノ原因ニ因ル取得
ダム使用権価格
千分ノ五
抵当権ノ取得
債権金額
千分ノ六・五
信託ノ登録
ダダ使用権価格
千分ノ一
滞納処分以外ノ原因ニ因ルダム使用権又ハ抵当権ノ処分ノ制限
債権金額
千分ノ五
抹消シタル登録ノ回復
毎一件
六十円
仮登録
毎一件
六十円
附記登録
毎一件
三十円
登録ノ更生、変更又ハ抹消
毎一件
三十円
(河川法の一部改正)
5 河川法の一部を次のように改正する。
第六条に次の一項を加える。
主務大臣ハ前項但書ノ規定ニ依リ地方行政庁ニ代テ政令ヲ以テ定ムル流水ノ占用ニ関スル第十七条乃至第二十一条ノ処分ヲナサムトスルトキハ関係行政機関ノ長ニ協議スベシ
第二十七条中「第六条但書」を「第六条第一項但書」に改める。
第四十九条第四項を同条第六項とし、同条第三項中「此ノ法律ニ規定シタル事項」の上に「第三項ニ規定シタルモノノ外」を加え、同項を同条第五項とし、同条第二項の次に次の二項を加える。
地方行政庁ハ政令ヲ以テ定ムル流水ノ占用ニ関スル第十七条乃至第二十一条ノ規定ニ依ル処分ヲナサムトスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第六条第二項ノ規定ハ主務大臣ガ前項ノ規定ニ依リ認可ヲナサムトスルトキニ之ヲ準用ス
(工場抵当法の一部改正)
6 工場抵当法(明治三十八年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。
第十一条に次の一号を加える。
六 ダム使用権
第二十三条第四項中「工業所有権又ハ自動車」を「工業所有権、自動車又ハダム使用権」に、「特許庁又ハ管轄陸運局長」を「特許庁、管轄陸運局長又ハ建設大臣」に改める。
第二十八条第二項及び第三項中「特許庁又ハ陸運局長」を「特許庁、陸運局長又ハ建設大臣」に改める。
第四十四条第四項中「工業所有権若ハ自動車」を「工業所有権、自動車若ハダム使用権」に、「特許庁又ハ陸運局長」を「特許庁、陸運局長又ハ建設大臣」に改める。
第四十七条中「工業所有権又ハ自動車」を「工業所有権、自動車又ハダム使用権」に、「特許庁又ハ管轄陸運局長」を「特許庁、管轄陸運局長又ハ建設大臣」に改める。
(国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部改正)
7 国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を次のように改正する。
第二十一条の次に次の一条を加える。
(発電の用に供する多目的ダムに係る市町村交付金等)
第二十一条の二 特定多目的ダム法(昭和三十二年法律第三十五号)第二条第一項に規定する多目的ダムで、当該多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水が発電の用に供されているものについては、当該多目的ダムを、建設大臣が管理する場合(同法第十七条の規定によるダム使用権の設定前の場合を含む。)にあつては国が、都道府県知事が管理する場合にあつては当該都道府県が所有する第二条第一項第三号に掲げる固定資産と、当該多目的ダム及び当該用途につき同法第二十七条に規定する方法と同一の方法により算出した額を国有財産台帳等に記載された当該固定資産の価格とみなして、この法律の規定(第二十条を除く。)を適用する。この場合において、当該多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水を発電の用に供する者が、地方税法第三百四十八条第一項の規定により固定資産税を課することができない者以外の者であるときは、第四条第二項中「課税標準となるべき額の十分の五の額」とあるのは、「課税標準となるべき額」とする。
8 四月一日から翌年の一月一日までの間に附則第二項の規定により多目的ダムとなつたもので、その年(一月一日に多目的ダムとなつたものについては、その前年。以下同じ。)の三月三十一日に当該ダムによる流水の貯留を利用して流水が発電の用に供されていたものについては、その年の三月三十一日に多目的ダムとなつたものとみなして、第三十五条及び前項の規定による改正後の国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の規定を適用する。この場合において、当該ダムが多目的ダムとなる前に当該ダムによる流水の貯留を利用して流水を発電の用に供する者があつたダムについて、課した、若しくは課すべき固定資産税又は交付した、若しくは交付すべき国有資産等所在市町村交付金若しくは国有資産等所在都道府県交付金があるときは、当該ダムが多目的ダムとなつた後の国有資産等所在市町村交付金及び国有資産等所在都道府県交付金並びに第三十五条の納付金の額に関して、政令で、調整のため必要な措置を定めることができる。
(建設省設置法の一部改正)
9 建設省設置法(昭和二十三年法律第百十三号)の一部を次のように改正する。
第三条第八号の次に次の一号を加える。
八の二 ダム使用権の登録に関する事務その他特定多目的ダム法(昭和三十二年法律第三十五号)の施行に関する事務を管理すること。
内閣総理大臣 岸信介
法務大臣 中村梅吉
大蔵大臣 池田勇人
厚生大臣 神田博
農林大臣 井出一太郎
通商産業大臣 水田三喜男
建設大臣 南條徳男
特定多目的ダム法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十二年三月三十一日
内閣総理大臣 岸信介
法律第三十五号
特定多目的ダム法
目次
第一章
総則(第一条―第三条)
第二章
多目的ダムの建設(第四条―第十四条)
第三章
ダム使用権(第十五条―第二十八条)
第四章
多目的ダムの管理(第二十九条―第三十三条)
第五章
雑則(第三十四条―第三十八条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、多目的ダムの建設及び管理に関し河川法(明治二十九年法律第七十一号)の特例を定めるとともに、ダム使用権を創設し、もつて多目的ダムの効用をすみやかに、かつ、十分に発揮させることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「多目的ダム」とは、建設大臣が河川法第八条第一項の規定により自ら新築するダムで、これによる流水の貯留を利用して流水が発電、水道又は工業用水道の用(以下「特定用途」という。)に供されるものをいい、余水路、副ダムその他ダムと一体となつてその効用を全うする施設又は工作物(もつぱら特定用途に供されるものを除く。)を含むものとする。
2 この法律において「ダム使用権」とは、多目的ダムによる一定量の流水の貯留を一定の地域において確保する権利をいう。
(特定用途のための流水占用の制限)
第三条 多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水を特定用途に供する者は、河川法第十八条の規定による流水の占用の許可によつて生ずる権利(以下「流水占用権」という。)を有するほか、ダム使用権を有する者(以下「ダム使用権者」という。)でなければならない。
第二章 多目的ダムの建設
(基本計画)
第四条 建設大臣は、多目的ダムを新築しようとするときは、その建設に関する基本計画(以下「基本計画」という。)を作成しなければならない。
2 基本計画には、新築しようとする多目的ダムに関し、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 建設の目的
二 位置及び名称
三 規模及び型式
四 貯留量、取水量及び放流量並びに貯留量の用途別配分に関する事項
五 ダム使用権の設定予定者
六 建設に要する費用及びその負担に関する事項
七 工期
八 その他建設に関する基本的事項
3 建設大臣は、基本計画を作成し、変更し、又は廃止しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、関係都道府県知事及び基本計画に定められるべき、又は定められたダム使用権の設定予定者の意見をきかなければならない。この場合において、関係都道府県知事は、意見を述べようとするときは、当該都道府県の議会の議決を経なければならない。
4 建設大臣は、基本計画を作成し、変更し、又は廃止したときは、すみやかに、その旨を公示するとともに、関係行政機関の長、関係都道府県知事及びダム使用権の設定予定者に通知しなければならない。
(ダム使用権の設定予定者の要件)
第五条 ダム使用権の設定予定者は、ダム使用権の設定を申請した者で、第十五条第二項各号に掲げる要件を備える者でなければならない。
(ダム使用権の設定予定者の地位の承継)
第六条 相続人、合併により設立される法人その他のダム使用権の設定予定者の一般承継人は、被承継人が有していたこの法律の規定に基く地位を承継する。
(建設費の負担)
第七条 ダム使用権の設定予定者は、多目的ダムの建設に要する費用のうち、建設の目的である各用途について、多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水を当該用途に供することによつて得られる効用から算定される推定の投資額及び当該用途のみに供される工作物でその効用と同等の効用を有するものの設置に要する推定の費用の額を勘案して、政令で定めるところにより算出した額の費用を負担しなければならない。
2 多目的ダムの建設に要する費用の範囲、負担金の納付の方法及び期限その他前項の負担金に関し必要な事項は、政令で定める。
第八条 多目的ダムの建設に要する費用について河川法第二十七条ただし書の規定により都道府県が負担すべき負担金の額は、その建設に要する費用の額から前条第一項の負担金及び政令で定めるその他の負担金の額を控除した額に同法第二十七条ただし書に定める都道府県の負担割合を乗じた額及びその額に対応する政令で定める利息があるときはその利息の額並びに都道府県が収納する政令で定めるその他の負担金の額を合算した額とする。
(受益者負担金)
第九条 多目的ダムの建設によつて著しく利益を受ける者がある場合において、その者が流水を政令で定める用途に供する者であるときは建設大臣、その他の者であるときは都道府県知事は、その利益を受ける限度において、多目的ダムの建設に要する費用の一部を負担させることができる。
2 前項の負担金を徴収する場合における負担金の徴収を受ける者の範囲及び徴収の方法については、建設大臣が負担させる場合にあつては政令で、都道府県知事が負担させる場合にあつては都道府県の条例で定める。
3 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百十七条第三項及び第四項の規定は、前項の規定による条例を制定し、又は改正する場合について準用する。
第十条 専用の施設を新設し、又は拡張して、新築される多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水をかんがいの用に供する者は、多目的ダムの建設に要する費用につき当該用途について第七条第一項に規定する方法と同一の方法により算出した額のうち十分の一以内で政令で定める割合の額及びその額に対応する建設期間中の利息の額を合算した額の負担金を負担しなければならない。
2 前項の負担金は、都道府県知事が徴収する。
3 前条第二項及び第三項の規定は、前項の負担金について準用する。
(負担金等の帰属)
第十一条 前二条の規定により都道府県知事が負担させ、又は徴収した負担金及びその負担金の納付義務者から徴収した延滞金は、当該都道府県に帰属する。
(建設費負担金の還付)
第十二条 ダム使用権の設定予定者のダム使用権の設定の申請が却下され、又は取り下げられたときは、その者がすでに納付した第七条第一項の負担金を還付するものとする。ただし、建設大臣は、基本計画を廃止する場合を除き、新たにダム使用権の設定予定者が定められるまでその還付を停止することができる。
(ダム使用権設定前の多目的ダムの利用)
第十三条 ダム使用権の設定予定者は、第三条の規定にかかわらず、ダム使用権の設定を受ける前に、建設大臣の許可を受けて、多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水を特定用途に供することができる。
(建設の完了)
第十四条 建設大臣は、多目的ダムの建設を完了したときは、遅滞なく、その旨を公示するとともに、その多目的ダムを河川の附属物として認定するものとする。
第三章 ダム使用権
(設定の要件)
第十五条 ダム使用権は、建設大臣が、流水を特定用途に供しようとする者の申請によつて設定する。
2 建設大臣は、次の各号に掲げる要件に適合すると認めた場合でなければ、ダム使用権を設定してはならない。
一 申請人が多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水を当該特定用途に供することが、河川の総合開発の目的に適合すること。
二 申請人が、流水を当該特定用途に供することについて、及び流水を当該特定用途に供することによつて営もうとする事業について必要な行政庁の許可、認可その他の処分を受けていること又は受ける見込が十分であること。
(設定の申請の却下)
第十六条 建設大臣は、基本計画を作成したときは、基本計画にダム使用権の設定予定者として定められた者以外の者の設定の申請を却下することができる。
2 建設大臣は、次の各号の一に該当すると認めたときは、ダム使用権の設定予定者の設定の申請を却下しなければならない。
一 ダム使用権の設定予定者が、前条第二項の要件を備えなくなつたとき。
二 第七条第一項の負担金を納付しないとき。
三 基本計画を廃止したとき。
(設定)
第十七条 建設大臣は、第十四条の規定による河川の附属物としての認定をしたときは、ただちに、ダム使用権の設定予定者にダム使用権の設定をしなければならない。
第十八条 ダム使用権の設定は、次の各号に掲げる事項を明らかにして行わなければならない。
一 設定の目的
二 ダム使用権により貯留が確保される流水の最高及び最低の水位並びに量
2 前項第二号に掲げる事項は、当該多目的ダムが十分にその効用を果すために適切なものでなければならない。
(流水の貯留が確保される地域)
第十九条 ダム使用権によつて流水の貯留が確保される地域は、前条第一項第二号に規定する流水の最高水位における水平面が土地に接する線によつて囲まれる地域とする。
(性質)
第二十条 ダム使用権は、物権とみなし、この法律に別段の定がある場合を除き、不動産に関する規定を準用する。
第二十一条 ダム使用権は、相続、法人の合併その他の一般承継、譲渡、滞納処分及び強制執行並びに一般の先取特権及び抵当権の目的となるほか、権利の目的となることができない。
(処分の制限)
第二十二条 ダム使用権は、建設大臣の許可を受けなければ、移転(相続、法人の合併その他の一般承継によるものを除く。)の目的とし、分割し、併合し、又はその設定の目的を変更することができない。
第二十三条 抵当権の設定が登録されているダム使用権については、その抵当権者の同意がなければ、分割、併合若しくは設定の目的の変更の許可を申請し、又はこれを放棄することができない。
(取消の処分等)
第二十四条 建設大臣は、ダム使用権者の有する流水占用権につき、河川法第十八条の規定による許可の全部又は一部を取り消す場合において、何人にも従前どおりの流水の占用を認めることができないときは、ダム使用権につき、これに相当する取消又は変更の処分をしなければならない。
第二十五条 建設大臣は、ダム使用権者の有する流水占用権につき、河川法第十八条の規定による許可の全部又は一部を取り消した場合において、他の者に新たに流水の占用を認めるため必要があるときは、ダム使用権者に対し、相当の期間を定めてダム使用権の全部又は一部を他の者に譲渡すべきことを命ずることができる。
2 前項の期間内にダム使用権の譲渡がされないときは、建設大臣は、ダム使用権者の有していた流水占用権の全部又は一部と同一の流水占用権につき他の者が河川法第十八条の規定による許可を受ける見込が十分であるときに限り、ダム使用権の全部又は一部につき取消の処分をすることができる。
(登録)
第二十六条 ダム使用権又はダム使用権を目的とする抵当権の設定、変更、移転、消滅及び処分の制限は、ダム使用権登録簿に登録する。
2 前項の規定による登録は、登記に代るものとする。
3 前二項に規定するもののほか、登録に関し必要な事項は、政令で定める。
(納付金)
第二十七条 ダム使用権の設定を受ける者は、第十七条の規定により設定を受ける場合を除き、多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水を当該ダム使用権の設定の目的である用途に供することによつて得られる効用から算定される推定の投資額を勘案して、政令で定めるところにより算出した額の納付金を国に納付しなければならない。
(負担金等の還付)
第二十八条 ダム使用権につき、第二十四条又は第二十五条第二項の規定による取消又は変更の処分があつたときは、国は、すでに納付された第七条第一項の負担金又は前条の納付金のうち、同条に規定する方法と同一の方法により算出した金額を還付するものとする。ただし、第十七条の規定によりダム使用権の設定を受けた者に対して還付する額は、第七条第一項の負担金の額から政令で定めるところにより算定した償却額を控除した額をこえないものとする。
2 第二十四条又は第二十五条第二項の規定による取消又は変更の処分により消滅した全部又は一部のダム使用権の上に抵当権の設定が登録されているときは、国は、その抵当権者の承諾を得た場合を除き、前項の還付金を供託しなければならない。
3 抵当権者は、前項の規定により供託された還付金に対して、その権利を行うことができる。
第四章 多目的ダムの管理
(建設大臣の管理)
第二十九条 多目的ダムで、二以上の都府県の区域にわたる河川に存するもの及び政令で定めるその他のものについては、建設大臣が、河川法第六条第一項ただし書の規定によりその管理を行う。
(操作の基本原則)
第三十条 多目的ダムの操作は、流水によつて生ずる公利を増進し、及び公害を除却し、又は軽減するとともに、ダム使用権を侵害しないように行わなければならない。
(操作規則)
第三十一条 建設大臣は、多目的ダムの操作の基本原則に従い、多目的ダムの操作規則を定めなければならない。
2 多目的ダムの操作規則に定める事項については、政令で定める。
3 建設大臣は、多目的ダムの操作規則を定め、又は変更しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、ダム使用権の設定予定者又はダム使用権者の意見をきかなければならない。
(放流に関する通知等)
第三十二条 建設大臣又は多目的ダムを管理する都道府県知事は、多目的ダムによつて貯留された流水を放流することによつて流水の状況に著しい変化を生ずると認める場合において、これによつて生ずる危害を防止するため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、あらかじめ、関係市町村長及び関係警察署長に通知するとともに、一般に周知させるため必要な措置をとらなければならない。
(管理費用の負担)
第三十三条 多目的ダムの維持、修繕その他の管理に要する費用は、河川法第二十四条第一項又は第二十七条の規定にかかわらず、都道府県知事がその多目的ダムを管理するときは当該都道府県及びダム使用権者、建設大臣がその多目的ダムを管理するときは国及びダム使用権者が負担するものとし、国が負担する費用のうち二分の一は、その多目的ダムの存する都道府県が負担するものとする。
2 前項の規定は、流水占用権を有しないダム使用権者については、適用しない。
3 前二項に定めるもののほか、第一項の規定による費用の負担の割合その他その負担に関し必要な事項は、政令で定める。
第五章 雑則
(建設大臣の権限)
第三十四条 基本計画の作成の公示があつた後は、次の各号に掲げる処分は、河川法の規定にかかわらず、建設大臣が行う。ただし、基本計画の廃止の公示があつた後は、この限りでない。
一 多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水を特定用途に供するため、又は多目的ダムによる流水の貯留量を増加させ、若しくは多目的ダムによつて貯留される流水とあわせて他の流水を同一の特定用途に供するため必要な工作物の新築、改築若しくは除却又は河川の敷地若しくは流水の占用に関する河川法第十七条から第十九条まで又は第二十一条の規定による許可
二 前号の許可(基本計画の作成の公示前にされた許可を含む。)を受けた者に対する河川法第二十条又は第二十二条の規定による許可の取消その他の処分
三 河川法第十七条から第十九条までの規定による許可のうち第一号の許可(基本計画の作成の公示前にされた許可を含む。)以外の許可を受けた者に対する同法第二十条の規定による許可の取消その他の処分で、多目的ダムを建設し、又は第一号の許可を与えるため必要なもの
四 河川法第五条の規定によつて同法の規定が準用される水流、水面又は河川についての前各号の処分に相当する処分
2 建設大臣は、前項各号の処分をしようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、関係都道府県知事の意見をきかなければならない。
(特別の納付金)
第三十五条 第十三条の規定による許可を受けたダム使用権の設定予定者又はダム使用権者で、三月三十一日現在において多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水を発電の用に供している者は、翌年の六月三十日までに、国又は都道府県が当該多目的ダムに関し国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律(昭和三十一年法律第八十二号)第二十一条の二の規定により地方公共団体に交付する交付金に相当する額の納付金を、国又は都道府県に納付しなければならない。
(強制徴収)
第三十六条 第七条第一項、第九条第一項若しくは第十条第一項の負担金、第三十三条第一項のダム使用権者の負担金又は第二十七条若しくは前条の納付金(以下この条において「負担金等」という。)を納付しない者があるときは、建設大臣又は都道府県知事は、督促状によつて納付すべき期限を指定して督促しなければならない。
2 前項の場合においては、建設大臣又は都道府県知事は、建設省令で定めるところにより、延滞金を徴収することができる。ただし、延滞金は、百円につき一日四銭の割合を乗じて計算した額をこえない範囲内で定めなければならない。
3 第一項の規定による督促を受けた者がその指定する期限までにその納付すべき金額を納付しないときは、建設大臣又は都道府県知事は、国税滞納処分の例により前二項に規定する負担金等及び延滞金を徴収することができる。この場合における負担金等及び延滞金の先取特権は、地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第一条第一項第十四号に規定する地方団体の徴収金以外の都道府県の徴収金と同順位とする。
4 延滞金は、負担金等に先だつものとする。
5 負担金等及び延滞金を徴収する権利は、五年間行わないときは、時効により消滅する。
(訴願)
第三十七条 次の各号に掲げる処分について不服のある者は、処分のあつた日から三十日以内に、建設大臣に訴願をすることができる。
一 第十六条の規定によるダム使用権の設定の申請の却下
二 第二十二条の規定によるダム使用権の移転、分割、併合又は設定の目的の変更の許可の申請の却下
三 第二十四条の規定によるダム使用権の取消又は変更の処分
四 第二十五条第一項の規定によるダム使用権の譲渡の命令
五 第二十五条第二項の規定によるダム使用権の取消の処分
六 第七条第一項、第九条第一項若しくは第十条第一項の負担金、第三十三条第一項のダム使用権者の負担金又は第二十七条若しくは第三十五条の納付金の決定
(政令への委任)
第三十八条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、政令で定める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、昭和三十二年四月一日から施行する。
(建設中又は既設のダムに関する経過措置)
2 この法律の施行の際、現に建設大臣と流水を特定用途に供しようとし、又は供している者とが共同して建設し、又は設置しているダム(余水路、副ダムその他ダムと一体となつてその効用を全うする施設又は工作物で、もつぱら特定用途に供されるもの以外のものを含む。以下同じ。)は、その者の持分が国に帰属した時において、多目的ダムとなるものとする。この場合において必要な事項は、政令で定める。
3 この法律の施行の際、現に建設大臣が建設しているダムで政令で定めるものについては、第十条の規定は、適用しない。
(登録税法の一部改正)
4 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第十五ノ三の次に次の一条を加える。
第十五条ノ四 ダム使用権ニ関シダム使用権登録簿ニ登録ヲ受クルトキハ左ノ区別ニ従ヒ登録税ヲ納ムベシ
設定
ダム使用権価格
千分ノ一
取得
 相続
ダム使用権価格
千分ノ一
 相続以外ノ原因ニ因ル取得
ダム使用権価格
千分ノ五
抵当権ノ取得
債権金額
千分ノ六・五
信託ノ登録
ダダ使用権価格
千分ノ一
滞納処分以外ノ原因ニ因ルダム使用権又ハ抵当権ノ処分ノ制限
債権金額
千分ノ五
抹消シタル登録ノ回復
毎一件
六十円
仮登録
毎一件
六十円
附記登録
毎一件
三十円
登録ノ更生、変更又ハ抹消
毎一件
三十円
(河川法の一部改正)
5 河川法の一部を次のように改正する。
第六条に次の一項を加える。
主務大臣ハ前項但書ノ規定ニ依リ地方行政庁ニ代テ政令ヲ以テ定ムル流水ノ占用ニ関スル第十七条乃至第二十一条ノ処分ヲナサムトスルトキハ関係行政機関ノ長ニ協議スベシ
第二十七条中「第六条但書」を「第六条第一項但書」に改める。
第四十九条第四項を同条第六項とし、同条第三項中「此ノ法律ニ規定シタル事項」の上に「第三項ニ規定シタルモノノ外」を加え、同項を同条第五項とし、同条第二項の次に次の二項を加える。
地方行政庁ハ政令ヲ以テ定ムル流水ノ占用ニ関スル第十七条乃至第二十一条ノ規定ニ依ル処分ヲナサムトスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第六条第二項ノ規定ハ主務大臣ガ前項ノ規定ニ依リ認可ヲナサムトスルトキニ之ヲ準用ス
(工場抵当法の一部改正)
6 工場抵当法(明治三十八年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。
第十一条に次の一号を加える。
六 ダム使用権
第二十三条第四項中「工業所有権又ハ自動車」を「工業所有権、自動車又ハダム使用権」に、「特許庁又ハ管轄陸運局長」を「特許庁、管轄陸運局長又ハ建設大臣」に改める。
第二十八条第二項及び第三項中「特許庁又ハ陸運局長」を「特許庁、陸運局長又ハ建設大臣」に改める。
第四十四条第四項中「工業所有権若ハ自動車」を「工業所有権、自動車若ハダム使用権」に、「特許庁又ハ陸運局長」を「特許庁、陸運局長又ハ建設大臣」に改める。
第四十七条中「工業所有権又ハ自動車」を「工業所有権、自動車又ハダム使用権」に、「特許庁又ハ管轄陸運局長」を「特許庁、管轄陸運局長又ハ建設大臣」に改める。
(国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部改正)
7 国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を次のように改正する。
第二十一条の次に次の一条を加える。
(発電の用に供する多目的ダムに係る市町村交付金等)
第二十一条の二 特定多目的ダム法(昭和三十二年法律第三十五号)第二条第一項に規定する多目的ダムで、当該多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水が発電の用に供されているものについては、当該多目的ダムを、建設大臣が管理する場合(同法第十七条の規定によるダム使用権の設定前の場合を含む。)にあつては国が、都道府県知事が管理する場合にあつては当該都道府県が所有する第二条第一項第三号に掲げる固定資産と、当該多目的ダム及び当該用途につき同法第二十七条に規定する方法と同一の方法により算出した額を国有財産台帳等に記載された当該固定資産の価格とみなして、この法律の規定(第二十条を除く。)を適用する。この場合において、当該多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水を発電の用に供する者が、地方税法第三百四十八条第一項の規定により固定資産税を課することができない者以外の者であるときは、第四条第二項中「課税標準となるべき額の十分の五の額」とあるのは、「課税標準となるべき額」とする。
8 四月一日から翌年の一月一日までの間に附則第二項の規定により多目的ダムとなつたもので、その年(一月一日に多目的ダムとなつたものについては、その前年。以下同じ。)の三月三十一日に当該ダムによる流水の貯留を利用して流水が発電の用に供されていたものについては、その年の三月三十一日に多目的ダムとなつたものとみなして、第三十五条及び前項の規定による改正後の国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の規定を適用する。この場合において、当該ダムが多目的ダムとなる前に当該ダムによる流水の貯留を利用して流水を発電の用に供する者があつたダムについて、課した、若しくは課すべき固定資産税又は交付した、若しくは交付すべき国有資産等所在市町村交付金若しくは国有資産等所在都道府県交付金があるときは、当該ダムが多目的ダムとなつた後の国有資産等所在市町村交付金及び国有資産等所在都道府県交付金並びに第三十五条の納付金の額に関して、政令で、調整のため必要な措置を定めることができる。
(建設省設置法の一部改正)
9 建設省設置法(昭和二十三年法律第百十三号)の一部を次のように改正する。
第三条第八号の次に次の一号を加える。
八の二 ダム使用権の登録に関する事務その他特定多目的ダム法(昭和三十二年法律第三十五号)の施行に関する事務を管理すること。
内閣総理大臣 岸信介
法務大臣 中村梅吉
大蔵大臣 池田勇人
厚生大臣 神田博
農林大臣 井出一太郎
通商産業大臣 水田三喜男
建設大臣 南条徳男