朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル工場抵當法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十八年三月十一日
內閣總理大臣 伯爵 桂太郞
農商務大臣 男爵 淸浦奎吾
司法大臣 波多野敬直
法律第五十四號
工場抵當法
第一條 本法ニ於テ工場ト稱スルハ營業ノ爲物品ノ製造若ハ加工又ハ印刷若ハ撮影ノ目的ニ使用スル場所ヲ謂フ
營業ノ爲電氣又ハ瓦斯ノ供給ノ目的ニ使用スル場所ハ之ヲ工場ト看做ス
第二條 工場ノ所有者カ工場ニ屬スル土地ノ上ニ設定シタル抵當權ハ建物ヲ除クノ外其ノ土地ニ附加シテ之ト一體ヲ成シタル物及其ノ土地ニ備附ケタル機械、器具其ノ他工場ノ用ニ供スル物ニ及フ但シ設定行爲ニ別段ノ定アルトキ及民法第四百二十四條ノ規定ニ依リ債權者カ債務者ノ行爲ヲ取消スコトヲ得ル場合ハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ハ工場ノ所有者カ工場ニ屬スル建物ノ上ニ設定シタル抵當權ニ之ヲ準用ス
第三條 工場ノ所有者カ工場ニ屬スル土地又ハ建物ニ付抵當權設定ノ登記ヲ申請スル場合ニ於テハ其ノ土地又ハ建物ニ備附ケタル機械、器具其ノ他工場ノ用ニ供スル物ニシテ前條ノ規定ニ依リ抵當權ノ目的タルモノノ目錄ヲ提出スヘシ
第二十二條第二項、第三十五條及第三十八條乃至第四十二條ノ規定ハ前項ノ目錄ニ之ヲ準用ス
第四條 第二條第一項但書ニ揭ケタル別段ノ定アルトキハ抵當權設定ノ登記ノ申請書ニ之ヲ記載スヘシ
第五條 抵當權ハ第二條ノ規定ニ依リテ其ノ目的タル物カ第三取得者ニ引渡サレタル後ト雖其ノ物ニ付之ヲ行フコトヲ得
前項ノ規定ハ民法第百九十二條乃至第百九十四條ノ適用ヲ妨ケス
第六條 工場ノ所有者カ抵當權者ノ同意ヲ得テ土地又ハ建物ニ附加シテ之ト一體ヲ成シタル物ヲ土地又ハ建物ト分離シタルトキハ抵當權ハ其ノ物ニ付消滅ス
工場ノ所有者カ抵當權者ノ同意ヲ得テ土地又ハ建物ニ備附ケタル機械、器具其ノ他ノ物ノ備附ヲ止メタルトキハ抵當權ハ其ノ物ニ付消滅ス
工場ノ所有者カ抵當權者ノ爲差押、假差押又ハ假處分アル前ニ於テ正當ナル事由ニ因リ前二項ノ同意ヲ求メタルトキハ抵當權者ハ其ノ同意ヲ拒ムコトヲ得ス
第七條 抵當權ノ目的タル土地又ハ建物ノ差押、假差押又ハ假處分ハ第二條ノ規定ニ依リテ抵當權ノ目的タル物ニ及フ
第二條ノ規定ニ依リテ抵當權ノ目的タル物ハ土地又ハ建物ト共ニスルニ非サレハ差押、假差押又ハ假處分ノ目的ト爲スコトヲ得ス
第八條 工場ノ所有者ハ抵當權ノ目的ト爲ス爲一箇又ハ數箇ノ工場ニ付工場財團ヲ設クルコトヲ得數箇ノ工場カ各別ノ所有者ニ屬スルトキ亦同シ
工場財團ニ屬スルモノハ同時ニ他ノ財團ニ屬スルコトヲ得ス
工場財團ハ抵當權ノ消滅ニ因リテ消滅ス
第九條 工場財團ノ設定ハ工場財團登記簿ニ所有權保存ノ登記ヲ爲スニ依リテ之ヲ爲ス
第十條 工場財團ノ所有權保存ノ登記ハ其ノ登記後二箇月內ニ抵當權設定ノ登記ヲ受ケサルトキハ其ノ效力ヲ失フ
第十一條 工場財團ハ左ニ揭クルモノノ全部又ハ一部ヲ以テ之ヲ組成スルコトヲ得
一 工場ニ屬スル土地及工作物
二 機械、器具、電柱、電線、配置諸管、軌條其ノ他ノ附屬物
三 地上權
四 賃貸人ノ承諾アルトキハ物ノ賃借權
五 工業所有權
第十二條 工場ニ屬スル土地又ハ建物ニシテ未登記ノモノアルトキハ工場財團ヲ設クル前其ノ所有權保存ノ登記ヲ受クヘシ
第十三條 他人ノ權利ノ目的タルモノ又ハ差押、假差押若ハ假處分ノ目的タルモノハ工場財團ニ屬セシムルコトヲ得ス
工場財團ニ屬スルモノハ之ヲ讓渡シ又ハ所有權以外ノ權利、差押、假差押若ハ假處分ノ目的ト爲スコトヲ得ス但シ抵當權者ノ同意ヲ得テ賃貸ヲ爲スハ此ノ限ニ在ラス
第十四條 工場財團ハ之ヲ一箇ノ不動產ト看做ス
工場財團ハ所有權及抵當權以外ノ權利ノ目的タルコトヲ得ス但シ抵當權者ノ同意ヲ得テ之ヲ賃貸スルハ此ノ限ニ在ラス
第十五條 工場ノ所有者カ抵當權者ノ同意ヲ得テ工場財團ニ屬スルモノヲ財團ヨリ分離シタルトキハ抵當權ハ其ノモノニ付消滅ス
第六條第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十六條 第二條、民法第三百七十一條、第三百八十八條及第三百八十九條ノ規定ハ土地又ハ建物カ抵當權ノ目的タル工場財團ニ屬スル場合ニ之ヲ準用ス
民法第二百八十一條ノ規定ハ要役地カ抵當權ノ目的タル工場財團ニ屬スル場合ニ之ヲ準用ス
民法第三百九十八條ノ規定ハ地上權カ抵當權ノ目的タル工場財團ニ屬スル場合ニ之ヲ準用ス
第十七條 工場財團ノ登記ニ付テハ工場所在地ノ區裁判所又ハ其ノ出張所ヲ以テ管轄登記所トス
不動產登記法第八條第二項ノ規定ハ工場カ數箇ノ登記所ノ管轄地ニ跨カリ又ハ工場財團ヲ組成スル數箇ノ工場カ數箇ノ登記所ノ管轄地內ニ在ル場合ニ之ヲ準用ス
第十八條 各登記所ニ工場財團登記簿ヲ備フ
第十九條 工場財團登記簿ハ一箇ノ工場財團ニ付一用紙ヲ備フ
第二十條 工場財團登記簿ハ其ノ一用紙ヲ登記番號欄、表題部及甲乙ノ二區ニ分チ表題部ニ表示欄、表示番號欄ヲ設ケ各區ニ事項欄、順位番號欄ヲ設ク
登記番號欄ニハ各財團ニ付登記簿ニ始メテ登記ヲ爲シタル順序ヲ記載ス
表示欄ニハ工場財團ノ表示ヲ爲シ及其ノ變更ニ關スル事項ヲ記載シ表示番號欄ニハ表示欄ニ登記事項ヲ記載シタル順序ヲ記載ス
甲區事項欄ニハ所有權ニ關スル事項ヲ記載ス
乙區事項欄ニハ抵當權ニ關スル事項ヲ記載ス
順位番號欄ニハ事項欄ニ登記事項ヲ記載シタル順序ヲ記載ス
第二十一條 登記ノ申請書ニハ不動產登記法第三十六條第三號乃至第八號ニ揭ケタル事項ノ外左ノ事項ヲ記載スヘシ
一 工場ノ名稱及位置
二 主タル營業所
三 營業ノ種類
第二十二條 工場財團ニ付所有權保存ノ登記ヲ申請スル場合ニ於テハ不動產登記法第三十五條第一項ニ揭ケタル書面ノ外工場財團目錄ヲ提出スヘシ
前項ノ目錄ニハ工場財團ヲ組成スルモノノ表示ヲ揭ケ申請人之ニ署名、捺印スヘシ
第二十三條 所有權保存ノ登記ノ申請アリタルトキハ其ノ財團ニ屬スヘキモノニシテ登記アルモノニ付テハ登記官吏ハ職權ヲ以テ其ノ登記用紙中相當區事項欄ニ工場財團ニ屬スヘキモノトシテ其ノ財團ニ付所有權保存ノ登記ノ申請アリタル旨、申請書受付ノ年月日及受付番號ヲ記載スヘシ
前項ニ揭ケタルモノカ他ノ登記所ノ管轄ニ屬スルトキハ前項ノ規定ニ依リ記載スヘキ事項ヲ遲滯ナク管轄登記所ニ通知スヘシ
前項ノ通知ヲ受ケタル登記所ハ第一項ノ手續ヲ爲シ其ノ登記簿ノ謄本ヲ通知ヲ爲シタル登記所ニ送付スヘシ但シ其ノ謄本ニハ抹消ニ係ル事項ヲ記載スルコトヲ要セス
前三項ノ規定ハ工業所有權カ工場財團ニ屬スヘキ場合ニ之ヲ準用ス但シ通知ハ之ヲ特許局ニ爲スヘシ
第二十四條 前條ノ場合ニ於テ登記官吏ハ官報ヲ以テ工場財團ニ屬スヘキ動產ニ付權利ヲ有スル者又ハ差押、假差押若ハ假處分ノ債權者ハ一定ノ期間內ニ其ノ權利ヲ申出ツヘキ旨ヲ公吿スヘシ但シ其ノ期間ハ一箇月以上三箇月以下トス
前項ノ公吿ハ所有權保存ノ登記ノ申請カ期間ノ滿了前ニ却下セラレタルトキハ遲滯ナク之ヲ取消スヘシ
第二十五條 前條第一項ノ期間內ニ權利ノ申出ナキトキハ其ノ權利ハ存在セサルモノト看做シ差押、假差押又ハ假處分ハ其ノ效力ヲ失フ但シ所有權保存ノ登記ノ申請カ却下セラレタルトキ又ハ其ノ登記カ效力ヲ失ヒタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第二十六條 第二十四條第一項ノ期間內ニ權利ノ申出アリタルトキハ遲滯ナク其ノ旨ヲ所有權保存ノ登記ノ申請人ニ通知スヘシ
第二十七條 所有權保存ノ登記ノ申請ハ不動產登記法第四十九條ニ揭ケタル場合ノ外左ノ場合ニ於テ之ヲ却下スヘシ
一 登記簿若ハ其ノ謄本又ハ登錄ニ關スル原簿ノ謄本ニ依リ工場財團ニ屬スヘキモノカ他人ノ權利ノ目的タルコト又ハ差押、假差押若ハ假處分ノ目的タルコト明白ナルトキ
二 工場財團目錄ニ揭ケタルモノノ表示カ登記簿若ハ其ノ謄本又ハ登錄ニ關スル原簿ノ謄本ト牴觸スルトキ
三 工場財團ニ屬スヘキ動產ニ付權利ヲ有スル者又ハ差押、假差押若ハ假處分ノ債權者カ其ノ權利ヲ申出テタル場合ニ於テ遲クトモ第二十四條第一項ノ期間滿了後一週間內ニ其ノ申出ノ取消アラサルトキ又ハ其ノ申出ノ理由ナキコトノ證明アラサルトキ
第二十八條 登記官吏カ所有權保存ノ登記ノ申請ヲ却下シタルトキハ第二十三條第一項ノ規定ニ依リテ爲シタル記載ヲ抹消スヘシ
他ノ登記所又ハ特許局ニ所有權保存ノ登記ノ申請アリタル旨ヲ通知シタル場合ニ於テハ其ノ申請ヲ却下シタル旨ヲ遲滯ナク通知スヘシ
前項ノ通知ヲ受ケタル登記所又ハ特許局ハ第二十三條第三項又ハ第四項ノ規定ニ依リテ爲シタル記載ヲ抹消スヘシ
第二十九條 工場財團ニ屬スヘキモノニシテ登記又ハ登錄アルモノハ第二十三條ノ記載アリタル後ハ之ヲ讓渡シ又ハ所有權以外ノ權利ノ目的ト爲スコトヲ得ス
第三十條 第二十三條ノ記載アリタル後競賣申立ノ登記アリタル場合ニ於テハ所有權保存ノ登記ノ申請カ却下セラレサル間及其ノ登記カ效力ヲ失ハサル間ハ競落ヲ許ス決定ヲ爲スコトヲ得ス
第三十一條 第二十三條ノ記載アリタル後ニ爲シタル差押、假差押若ハ假處分ノ登記又ハ先取特權ノ保存ノ登記ハ抵當權設定ノ登記アリタルトキハ其ノ效力ヲ失フ
第三十二條 前條ノ規定ニ依リ差押、假差押又ハ假處分ノ登記カ其ノ效力ヲ失ヒタルトキハ裁判所ハ利害關係人ノ申立ニ因リ差押、假差押又ハ假處分ノ命令ヲ取消スヘシ
第三十三條 工場財團ニ屬スヘキ動產ハ第二十四條第一項ノ公吿アリタル後ハ之ヲ讓渡シ又ハ所有權以外ノ權利ノ目的ト爲スコトヲ得ス
第二十四條第一項ノ公吿アリタル後差押アリタルトキハ第三十條ノ規定ヲ準用ス
第二十四條第一項ノ公吿アリタル後差押、假差押又ハ假處分アリタル場合ニ於テ抵當權設定ノ登記アリタルトキハ差押、假差押又ハ假處分ハ其ノ效力ヲ失フ
第三十四條 登記官吏カ所有權保存ノ登記ヲ爲シタルトキハ其ノ財團ニ屬シタルモノノ登記用紙中相當區事項欄ニ工場財團ニ屬シタル旨ヲ記載スヘシ
第二十三條第二項乃至第四項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス但シ登記簿又ハ登錄ニ關スル原簿ノ謄本ノ送付ヲ要セス
第三十五條 所有權保存ノ登記アリタルトキハ工場財團目錄ハ之ヲ登記簿ノ一部ト看做シ其ノ記載ハ之ヲ登記ト看做ス
第三十六條 工場財團ノ抵當權設定ノ登記ノ申請ハ不動產登記法第四十九條ニ揭ケタル場合ノ外第十條ノ期間ヲ經過シタル場合ニ於テ之ヲ却下スヘシ
第三十七條 登記官吏カ抵當權設定ノ登記ヲ爲シタルトキハ第三十一條ノ規定ニ依リ效力ヲ失ヒタル登記ヲ抹消スヘシ
第二十三條第二項及第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス但シ登記簿謄本ノ送付ヲ要セス
第三十八條 工場財團目錄ニ揭ケタル事項ニ變更ヲ生シタルトキハ所有者ハ遲滯ナク工場財團目錄ノ記載ノ變更ノ登記ヲ申請スヘシ
前項ノ登記ノ申請書ニハ抵當權者ノ同意書又ハ之ニ代ルヘキ裁判ノ謄本ヲ添附スヘシ
第三十九條 工場財團ニ屬スルモノニ變更ヲ生シ又ハ新ニ他ノモノヲ財團ニ屬セシメタルニ因リ變更ノ登記ヲ申請スルトキハ變更シタルモノ又ハ新ニ屬シタルモノノ表示ヲ揭ケタル目錄ヲ提出スヘシ
前項ノ規定ニ依リ提出シタル目錄ハ工場財團目錄ニ編綴シ登記官吏其ノ綴目ニ契印スヘシ
第四十條 工場財團ニ屬スルモノニ變更ヲ生シタルニ因リ變更ノ登記ノ申請アリタルトキハ前ノ目錄中其ノモノノ表示ノ側ニ其ノモノニ變更ヲ生シタル旨、申請書受付ノ年月日及受付番號ヲ記載スヘシ
第四十一條 新ニ他ノモノヲ財團ニ屬セシメタルニ因リ變更ノ登記ノ申請アリタルトキハ前ノ目錄ノ末尾ニ新ニ他ノモノヲ財團ニ屬セシメタル旨、申請書受付ノ年月日及受付番號ヲ記載スヘシ
第四十二條 工場財團ニ屬シタルモノカ滅失シ又ハ財團ニ屬セサルニ至リタルニ因リ變更ノ登記ノ申請アリタルトキハ目錄中其ノ登記ノ目的タルモノノ表示ノ側ニ其ノモノカ滅失シ又ハ財團ニ屬セサルニ至リタル旨、申請書受付ノ年月日及受付番號ヲ記載シ其ノモノノ表示ヲ朱抹スヘシ
第四十三條 第二十三條乃至第三十四條及第三十七條ノ規定ハ新ニ他ノモノヲ財團ニ屬セシメタルニ因リ變更ノ登記ノ申請アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第四十四條 工場財團ニ屬シタルモノニシテ登記アルモノカ滅失シ又ハ財團ニ屬セサルニ至リタルニ因リ變更ノ登記ノ申請アリタルトキハ其ノモノノ登記用紙中相當區事項欄ニ其ノ旨ヲ記載シ第二十三條及第三十四條ノ記載ヲ抹消スヘシ
前項ニ揭ケタルモノカ他ノ登記所ノ管轄ニ屬スルトキハ其ノモノカ滅失シ又ハ財團ニ屬セサルニ至リタル旨ヲ遲滯ナク管轄登記所ニ通知スヘシ
前項ノ通知ヲ受ケタル登記所ハ第一項ノ手續ヲ爲スヘシ
前三項ノ規定ハ工場財團ニ屬シタル工業所有權カ消滅シ又ハ財團ニ屬セサルニ至リタル場合ニ之ヲ準用ス但シ通知ハ之ヲ特許局ニ爲スヘシ
第四十五條 工場財團ノ差押、假差押又ハ假處分ハ工場所在地ノ區裁判所ノ管轄トス
民事訴訟法第二十六條ノ規定ハ工場カ數箇ノ區裁判所ノ管轄地ニ跨カリ又ハ工場財團ヲ組成スル數箇ノ工場カ數箇ノ區裁判所ノ管轄地內ニ在ル場合ニ之ヲ準用ス
第四十六條 裁判所ハ抵當權者ノ申立ニ因リ工場財團ヲ箇箇ノモノトシテ競賣又ハ入札ニ付スヘキ旨ヲ命スルコトヲ得
第四十七條 民事訴訟法第七百條又ハ競賣法第三十三條ノ規定ニ依リ登記ノ囑託ヲ爲スヘキ場合ニ於テ工場財團ノ抵當權カ競落ニ因リ消滅シタルトキハ裁判所ハ同時ニ工場財團ニ屬シタル土地、建物、船舶又ハ工業所有權ニ付第二十三條及第三十四條ノ記載ノ抹消及競落人ノ取得シタル權利ノ登記又ハ登錄ヲ管轄登記所又ハ特許局ニ囑託スヘシ
第四十八條 工場財團登記簿ハ所有權保存ノ登記カ其ノ效力ヲ失ヒタルトキ又ハ抵當權ノ登記カ全部抹消セラレタルトキハ其ノ用紙ヲ閉鎖スヘシ
第四十四條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第四十九條 工場ノ所有者又ハ法律ニ依リ之ニ代リテ一切ノ行爲ヲ爲ス權限ヲ有スル者カ讓渡又ハ質入ノ目的ヲ以テ第二條ノ規定ニ依リ抵當權ノ目的タル物ヲ第三者ニ引渡シ又ハ引渡サシメタルトキハ十五日以上二月以下ノ重禁錮ニ處ス
前項ニ規定シタル行爲ト雖刑法ニ正條アルモノハ刑法ニ從フ
第五十條 工場ノ所有者カ抵當權ノ目的ト爲シタル物又ハ抵當權ノ目的ト爲シタル工場財團ニ屬スル物ヲ毀損シ又ハ毀損セシメタルトキハ刑法第四百十七條乃至第四百二十三條ノ例ニ照シ各一等ヲ減ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル工場抵当法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十八年三月十一日
内閣総理大臣 伯爵 桂太郎
農商務大臣 男爵 清浦奎吾
司法大臣 波多野敬直
法律第五十四号
工場抵当法
第一条 本法ニ於テ工場ト称スルハ営業ノ為物品ノ製造若ハ加工又ハ印刷若ハ撮影ノ目的ニ使用スル場所ヲ謂フ
営業ノ為電気又ハ瓦斯ノ供給ノ目的ニ使用スル場所ハ之ヲ工場ト看做ス
第二条 工場ノ所有者カ工場ニ属スル土地ノ上ニ設定シタル抵当権ハ建物ヲ除クノ外其ノ土地ニ附加シテ之ト一体ヲ成シタル物及其ノ土地ニ備附ケタル機械、器具其ノ他工場ノ用ニ供スル物ニ及フ但シ設定行為ニ別段ノ定アルトキ及民法第四百二十四条ノ規定ニ依リ債権者カ債務者ノ行為ヲ取消スコトヲ得ル場合ハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ハ工場ノ所有者カ工場ニ属スル建物ノ上ニ設定シタル抵当権ニ之ヲ準用ス
第三条 工場ノ所有者カ工場ニ属スル土地又ハ建物ニ付抵当権設定ノ登記ヲ申請スル場合ニ於テハ其ノ土地又ハ建物ニ備附ケタル機械、器具其ノ他工場ノ用ニ供スル物ニシテ前条ノ規定ニ依リ抵当権ノ目的タルモノノ目録ヲ提出スヘシ
第二十二条第二項、第三十五条及第三十八条乃至第四十二条ノ規定ハ前項ノ目録ニ之ヲ準用ス
第四条 第二条第一項但書ニ掲ケタル別段ノ定アルトキハ抵当権設定ノ登記ノ申請書ニ之ヲ記載スヘシ
第五条 抵当権ハ第二条ノ規定ニ依リテ其ノ目的タル物カ第三取得者ニ引渡サレタル後ト雖其ノ物ニ付之ヲ行フコトヲ得
前項ノ規定ハ民法第百九十二条乃至第百九十四条ノ適用ヲ妨ケス
第六条 工場ノ所有者カ抵当権者ノ同意ヲ得テ土地又ハ建物ニ附加シテ之ト一体ヲ成シタル物ヲ土地又ハ建物ト分離シタルトキハ抵当権ハ其ノ物ニ付消滅ス
工場ノ所有者カ抵当権者ノ同意ヲ得テ土地又ハ建物ニ備附ケタル機械、器具其ノ他ノ物ノ備附ヲ止メタルトキハ抵当権ハ其ノ物ニ付消滅ス
工場ノ所有者カ抵当権者ノ為差押、仮差押又ハ仮処分アル前ニ於テ正当ナル事由ニ因リ前二項ノ同意ヲ求メタルトキハ抵当権者ハ其ノ同意ヲ拒ムコトヲ得ス
第七条 抵当権ノ目的タル土地又ハ建物ノ差押、仮差押又ハ仮処分ハ第二条ノ規定ニ依リテ抵当権ノ目的タル物ニ及フ
第二条ノ規定ニ依リテ抵当権ノ目的タル物ハ土地又ハ建物ト共ニスルニ非サレハ差押、仮差押又ハ仮処分ノ目的ト為スコトヲ得ス
第八条 工場ノ所有者ハ抵当権ノ目的ト為ス為一箇又ハ数箇ノ工場ニ付工場財団ヲ設クルコトヲ得数箇ノ工場カ各別ノ所有者ニ属スルトキ亦同シ
工場財団ニ属スルモノハ同時ニ他ノ財団ニ属スルコトヲ得ス
工場財団ハ抵当権ノ消滅ニ因リテ消滅ス
第九条 工場財団ノ設定ハ工場財団登記簿ニ所有権保存ノ登記ヲ為スニ依リテ之ヲ為ス
第十条 工場財団ノ所有権保存ノ登記ハ其ノ登記後二箇月内ニ抵当権設定ノ登記ヲ受ケサルトキハ其ノ効力ヲ失フ
第十一条 工場財団ハ左ニ掲クルモノノ全部又ハ一部ヲ以テ之ヲ組成スルコトヲ得
一 工場ニ属スル土地及工作物
二 機械、器具、電柱、電線、配置諸管、軌条其ノ他ノ附属物
三 地上権
四 賃貸人ノ承諾アルトキハ物ノ賃借権
五 工業所有権
第十二条 工場ニ属スル土地又ハ建物ニシテ未登記ノモノアルトキハ工場財団ヲ設クル前其ノ所有権保存ノ登記ヲ受クヘシ
第十三条 他人ノ権利ノ目的タルモノ又ハ差押、仮差押若ハ仮処分ノ目的タルモノハ工場財団ニ属セシムルコトヲ得ス
工場財団ニ属スルモノハ之ヲ譲渡シ又ハ所有権以外ノ権利、差押、仮差押若ハ仮処分ノ目的ト為スコトヲ得ス但シ抵当権者ノ同意ヲ得テ賃貸ヲ為スハ此ノ限ニ在ラス
第十四条 工場財団ハ之ヲ一箇ノ不動産ト看做ス
工場財団ハ所有権及抵当権以外ノ権利ノ目的タルコトヲ得ス但シ抵当権者ノ同意ヲ得テ之ヲ賃貸スルハ此ノ限ニ在ラス
第十五条 工場ノ所有者カ抵当権者ノ同意ヲ得テ工場財団ニ属スルモノヲ財団ヨリ分離シタルトキハ抵当権ハ其ノモノニ付消滅ス
第六条第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十六条 第二条、民法第三百七十一条、第三百八十八条及第三百八十九条ノ規定ハ土地又ハ建物カ抵当権ノ目的タル工場財団ニ属スル場合ニ之ヲ準用ス
民法第二百八十一条ノ規定ハ要役地カ抵当権ノ目的タル工場財団ニ属スル場合ニ之ヲ準用ス
民法第三百九十八条ノ規定ハ地上権カ抵当権ノ目的タル工場財団ニ属スル場合ニ之ヲ準用ス
第十七条 工場財団ノ登記ニ付テハ工場所在地ノ区裁判所又ハ其ノ出張所ヲ以テ管轄登記所トス
不動産登記法第八条第二項ノ規定ハ工場カ数箇ノ登記所ノ管轄地ニ跨カリ又ハ工場財団ヲ組成スル数箇ノ工場カ数箇ノ登記所ノ管轄地内ニ在ル場合ニ之ヲ準用ス
第十八条 各登記所ニ工場財団登記簿ヲ備フ
第十九条 工場財団登記簿ハ一箇ノ工場財団ニ付一用紙ヲ備フ
第二十条 工場財団登記簿ハ其ノ一用紙ヲ登記番号欄、表題部及甲乙ノ二区ニ分チ表題部ニ表示欄、表示番号欄ヲ設ケ各区ニ事項欄、順位番号欄ヲ設ク
登記番号欄ニハ各財団ニ付登記簿ニ始メテ登記ヲ為シタル順序ヲ記載ス
表示欄ニハ工場財団ノ表示ヲ為シ及其ノ変更ニ関スル事項ヲ記載シ表示番号欄ニハ表示欄ニ登記事項ヲ記載シタル順序ヲ記載ス
甲区事項欄ニハ所有権ニ関スル事項ヲ記載ス
乙区事項欄ニハ抵当権ニ関スル事項ヲ記載ス
順位番号欄ニハ事項欄ニ登記事項ヲ記載シタル順序ヲ記載ス
第二十一条 登記ノ申請書ニハ不動産登記法第三十六条第三号乃至第八号ニ掲ケタル事項ノ外左ノ事項ヲ記載スヘシ
一 工場ノ名称及位置
二 主タル営業所
三 営業ノ種類
第二十二条 工場財団ニ付所有権保存ノ登記ヲ申請スル場合ニ於テハ不動産登記法第三十五条第一項ニ掲ケタル書面ノ外工場財団目録ヲ提出スヘシ
前項ノ目録ニハ工場財団ヲ組成スルモノノ表示ヲ掲ケ申請人之ニ署名、捺印スヘシ
第二十三条 所有権保存ノ登記ノ申請アリタルトキハ其ノ財団ニ属スヘキモノニシテ登記アルモノニ付テハ登記官吏ハ職権ヲ以テ其ノ登記用紙中相当区事項欄ニ工場財団ニ属スヘキモノトシテ其ノ財団ニ付所有権保存ノ登記ノ申請アリタル旨、申請書受付ノ年月日及受付番号ヲ記載スヘシ
前項ニ掲ケタルモノカ他ノ登記所ノ管轄ニ属スルトキハ前項ノ規定ニ依リ記載スヘキ事項ヲ遅滞ナク管轄登記所ニ通知スヘシ
前項ノ通知ヲ受ケタル登記所ハ第一項ノ手続ヲ為シ其ノ登記簿ノ謄本ヲ通知ヲ為シタル登記所ニ送付スヘシ但シ其ノ謄本ニハ抹消ニ係ル事項ヲ記載スルコトヲ要セス
前三項ノ規定ハ工業所有権カ工場財団ニ属スヘキ場合ニ之ヲ準用ス但シ通知ハ之ヲ特許局ニ為スヘシ
第二十四条 前条ノ場合ニ於テ登記官吏ハ官報ヲ以テ工場財団ニ属スヘキ動産ニ付権利ヲ有スル者又ハ差押、仮差押若ハ仮処分ノ債権者ハ一定ノ期間内ニ其ノ権利ヲ申出ツヘキ旨ヲ公告スヘシ但シ其ノ期間ハ一箇月以上三箇月以下トス
前項ノ公告ハ所有権保存ノ登記ノ申請カ期間ノ満了前ニ却下セラレタルトキハ遅滞ナク之ヲ取消スヘシ
第二十五条 前条第一項ノ期間内ニ権利ノ申出ナキトキハ其ノ権利ハ存在セサルモノト看做シ差押、仮差押又ハ仮処分ハ其ノ効力ヲ失フ但シ所有権保存ノ登記ノ申請カ却下セラレタルトキ又ハ其ノ登記カ効力ヲ失ヒタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第二十六条 第二十四条第一項ノ期間内ニ権利ノ申出アリタルトキハ遅滞ナク其ノ旨ヲ所有権保存ノ登記ノ申請人ニ通知スヘシ
第二十七条 所有権保存ノ登記ノ申請ハ不動産登記法第四十九条ニ掲ケタル場合ノ外左ノ場合ニ於テ之ヲ却下スヘシ
一 登記簿若ハ其ノ謄本又ハ登録ニ関スル原簿ノ謄本ニ依リ工場財団ニ属スヘキモノカ他人ノ権利ノ目的タルコト又ハ差押、仮差押若ハ仮処分ノ目的タルコト明白ナルトキ
二 工場財団目録ニ掲ケタルモノノ表示カ登記簿若ハ其ノ謄本又ハ登録ニ関スル原簿ノ謄本ト牴触スルトキ
三 工場財団ニ属スヘキ動産ニ付権利ヲ有スル者又ハ差押、仮差押若ハ仮処分ノ債権者カ其ノ権利ヲ申出テタル場合ニ於テ遅クトモ第二十四条第一項ノ期間満了後一週間内ニ其ノ申出ノ取消アラサルトキ又ハ其ノ申出ノ理由ナキコトノ証明アラサルトキ
第二十八条 登記官吏カ所有権保存ノ登記ノ申請ヲ却下シタルトキハ第二十三条第一項ノ規定ニ依リテ為シタル記載ヲ抹消スヘシ
他ノ登記所又ハ特許局ニ所有権保存ノ登記ノ申請アリタル旨ヲ通知シタル場合ニ於テハ其ノ申請ヲ却下シタル旨ヲ遅滞ナク通知スヘシ
前項ノ通知ヲ受ケタル登記所又ハ特許局ハ第二十三条第三項又ハ第四項ノ規定ニ依リテ為シタル記載ヲ抹消スヘシ
第二十九条 工場財団ニ属スヘキモノニシテ登記又ハ登録アルモノハ第二十三条ノ記載アリタル後ハ之ヲ譲渡シ又ハ所有権以外ノ権利ノ目的ト為スコトヲ得ス
第三十条 第二十三条ノ記載アリタル後競売申立ノ登記アリタル場合ニ於テハ所有権保存ノ登記ノ申請カ却下セラレサル間及其ノ登記カ効力ヲ失ハサル間ハ競落ヲ許ス決定ヲ為スコトヲ得ス
第三十一条 第二十三条ノ記載アリタル後ニ為シタル差押、仮差押若ハ仮処分ノ登記又ハ先取特権ノ保存ノ登記ハ抵当権設定ノ登記アリタルトキハ其ノ効力ヲ失フ
第三十二条 前条ノ規定ニ依リ差押、仮差押又ハ仮処分ノ登記カ其ノ効力ヲ失ヒタルトキハ裁判所ハ利害関係人ノ申立ニ因リ差押、仮差押又ハ仮処分ノ命令ヲ取消スヘシ
第三十三条 工場財団ニ属スヘキ動産ハ第二十四条第一項ノ公告アリタル後ハ之ヲ譲渡シ又ハ所有権以外ノ権利ノ目的ト為スコトヲ得ス
第二十四条第一項ノ公告アリタル後差押アリタルトキハ第三十条ノ規定ヲ準用ス
第二十四条第一項ノ公告アリタル後差押、仮差押又ハ仮処分アリタル場合ニ於テ抵当権設定ノ登記アリタルトキハ差押、仮差押又ハ仮処分ハ其ノ効力ヲ失フ
第三十四条 登記官吏カ所有権保存ノ登記ヲ為シタルトキハ其ノ財団ニ属シタルモノノ登記用紙中相当区事項欄ニ工場財団ニ属シタル旨ヲ記載スヘシ
第二十三条第二項乃至第四項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス但シ登記簿又ハ登録ニ関スル原簿ノ謄本ノ送付ヲ要セス
第三十五条 所有権保存ノ登記アリタルトキハ工場財団目録ハ之ヲ登記簿ノ一部ト看做シ其ノ記載ハ之ヲ登記ト看做ス
第三十六条 工場財団ノ抵当権設定ノ登記ノ申請ハ不動産登記法第四十九条ニ掲ケタル場合ノ外第十条ノ期間ヲ経過シタル場合ニ於テ之ヲ却下スヘシ
第三十七条 登記官吏カ抵当権設定ノ登記ヲ為シタルトキハ第三十一条ノ規定ニ依リ効力ヲ失ヒタル登記ヲ抹消スヘシ
第二十三条第二項及第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス但シ登記簿謄本ノ送付ヲ要セス
第三十八条 工場財団目録ニ掲ケタル事項ニ変更ヲ生シタルトキハ所有者ハ遅滞ナク工場財団目録ノ記載ノ変更ノ登記ヲ申請スヘシ
前項ノ登記ノ申請書ニハ抵当権者ノ同意書又ハ之ニ代ルヘキ裁判ノ謄本ヲ添附スヘシ
第三十九条 工場財団ニ属スルモノニ変更ヲ生シ又ハ新ニ他ノモノヲ財団ニ属セシメタルニ因リ変更ノ登記ヲ申請スルトキハ変更シタルモノ又ハ新ニ属シタルモノノ表示ヲ掲ケタル目録ヲ提出スヘシ
前項ノ規定ニ依リ提出シタル目録ハ工場財団目録ニ編綴シ登記官吏其ノ綴目ニ契印スヘシ
第四十条 工場財団ニ属スルモノニ変更ヲ生シタルニ因リ変更ノ登記ノ申請アリタルトキハ前ノ目録中其ノモノノ表示ノ側ニ其ノモノニ変更ヲ生シタル旨、申請書受付ノ年月日及受付番号ヲ記載スヘシ
第四十一条 新ニ他ノモノヲ財団ニ属セシメタルニ因リ変更ノ登記ノ申請アリタルトキハ前ノ目録ノ末尾ニ新ニ他ノモノヲ財団ニ属セシメタル旨、申請書受付ノ年月日及受付番号ヲ記載スヘシ
第四十二条 工場財団ニ属シタルモノカ滅失シ又ハ財団ニ属セサルニ至リタルニ因リ変更ノ登記ノ申請アリタルトキハ目録中其ノ登記ノ目的タルモノノ表示ノ側ニ其ノモノカ滅失シ又ハ財団ニ属セサルニ至リタル旨、申請書受付ノ年月日及受付番号ヲ記載シ其ノモノノ表示ヲ朱抹スヘシ
第四十三条 第二十三条乃至第三十四条及第三十七条ノ規定ハ新ニ他ノモノヲ財団ニ属セシメタルニ因リ変更ノ登記ノ申請アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第四十四条 工場財団ニ属シタルモノニシテ登記アルモノカ滅失シ又ハ財団ニ属セサルニ至リタルニ因リ変更ノ登記ノ申請アリタルトキハ其ノモノノ登記用紙中相当区事項欄ニ其ノ旨ヲ記載シ第二十三条及第三十四条ノ記載ヲ抹消スヘシ
前項ニ掲ケタルモノカ他ノ登記所ノ管轄ニ属スルトキハ其ノモノカ滅失シ又ハ財団ニ属セサルニ至リタル旨ヲ遅滞ナク管轄登記所ニ通知スヘシ
前項ノ通知ヲ受ケタル登記所ハ第一項ノ手続ヲ為スヘシ
前三項ノ規定ハ工場財団ニ属シタル工業所有権カ消滅シ又ハ財団ニ属セサルニ至リタル場合ニ之ヲ準用ス但シ通知ハ之ヲ特許局ニ為スヘシ
第四十五条 工場財団ノ差押、仮差押又ハ仮処分ハ工場所在地ノ区裁判所ノ管轄トス
民事訴訟法第二十六条ノ規定ハ工場カ数箇ノ区裁判所ノ管轄地ニ跨カリ又ハ工場財団ヲ組成スル数箇ノ工場カ数箇ノ区裁判所ノ管轄地内ニ在ル場合ニ之ヲ準用ス
第四十六条 裁判所ハ抵当権者ノ申立ニ因リ工場財団ヲ箇箇ノモノトシテ競売又ハ入札ニ付スヘキ旨ヲ命スルコトヲ得
第四十七条 民事訴訟法第七百条又ハ競売法第三十三条ノ規定ニ依リ登記ノ嘱託ヲ為スヘキ場合ニ於テ工場財団ノ抵当権カ競落ニ因リ消滅シタルトキハ裁判所ハ同時ニ工場財団ニ属シタル土地、建物、船舶又ハ工業所有権ニ付第二十三条及第三十四条ノ記載ノ抹消及競落人ノ取得シタル権利ノ登記又ハ登録ヲ管轄登記所又ハ特許局ニ嘱託スヘシ
第四十八条 工場財団登記簿ハ所有権保存ノ登記カ其ノ効力ヲ失ヒタルトキ又ハ抵当権ノ登記カ全部抹消セラレタルトキハ其ノ用紙ヲ閉鎖スヘシ
第四十四条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第四十九条 工場ノ所有者又ハ法律ニ依リ之ニ代リテ一切ノ行為ヲ為ス権限ヲ有スル者カ譲渡又ハ質入ノ目的ヲ以テ第二条ノ規定ニ依リ抵当権ノ目的タル物ヲ第三者ニ引渡シ又ハ引渡サシメタルトキハ十五日以上二月以下ノ重禁錮ニ処ス
前項ニ規定シタル行為ト雖刑法ニ正条アルモノハ刑法ニ従フ
第五十条 工場ノ所有者カ抵当権ノ目的ト為シタル物又ハ抵当権ノ目的ト為シタル工場財団ニ属スル物ヲ毀損シ又ハ毀損セシメタルトキハ刑法第四百十七条乃至第四百二十三条ノ例ニ照シ各一等ヲ減ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム