出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律
法令番号: 法律第195号
公布年月日: 昭和29年6月23日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

最近、出資金として一般大衆から金銭を受け入れる際に、後日必ず返還を約束したり誤解を招く方法が用いられ、事業不成功時に支払不能となるケースが増加している。また、預金の受入れ等についても、金融機関以外による脱法的行為が巧妙化している。さらに、貸金業者の届出制が不要となり弊害が生じている状況である。これらの問題に対応するため、出資金の性格を誤認させるような受入れを禁止し、預金の受入れ等の禁止範囲を明確化する。また、貸金業者の取締りに関する法律を廃止するとともに、不当に高い金銭貸付の利息等を罰則をもって取り締まることとする。これにより、一般大衆の保護と金融秩序の維持を図ることを目的とする。

参照した発言:
第19回国会 衆議院 大蔵委員会 第18号

審議経過

第19回国会

衆議院
(昭和29年3月9日)
参議院
(昭和29年3月9日)
(昭和29年3月15日)
衆議院
(昭和29年4月6日)
(昭和29年4月7日)
(昭和29年4月21日)
(昭和29年4月27日)
(昭和29年4月28日)
(昭和29年5月6日)
(昭和29年5月7日)
(昭和29年5月11日)
(昭和29年5月14日)
(昭和29年5月18日)
(昭和29年5月20日)
(昭和29年5月25日)
参議院
(昭和29年5月28日)
(昭和29年5月29日)
衆議院
(昭和29年6月15日)
参議院
(昭和29年6月15日)
出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十九年六月二十三日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百九十五号
出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律
(出資金の受入の制限)
第一条 何人も、不特定且つ多数の者に対し、後日出資の払いもどしとして出資金の全額若しくはこれをこえる金額に相当する金銭を支払うべき旨を明示し、又は暗黙のうちに示して、出資金の受入をしてはならない。
(預り金の禁止)
第二条 業として預り金をするにつき他の法律に特別の規定のある者を除く外、何人も業として預り金をしてはならない。
2 前項の「預り金」とは、不特定且つ多数の者からの金銭の受入で、預金、貯金又は定期積金の受入及び、借入金その他何らの名義をもつてするを問わず、これらと同様の経済的性質を有するものをいう。
3 主として金銭の貸付の業務を営む株式会社(銀行を除く。)が、社債の発行により、不特定且つ多数の者から貸付資金を受け入れるときは、業として預り金をするものとみなす。
(浮貸し等の禁止)
第三条 金融機関(銀行、信託会社、保険会社、信用金庫、信用金庫連合会、労働金庫、労働金庫連合会、農林中央金庫、商工組合中央金庫並びに信用協同組合及び農業協同組合、水産業協同組合、塩業組合その他の貯金の受入を行う組合をいう。)の役員、職員その他の従業者は、その地位を利用し、自己又は当該金融機関以外の第三者の利益を図るため、金銭の貸付、金銭の貸借の媒介又は債務の保証をしてはならない。
(金銭貸借の媒介手数料の制限)
第四条 金銭の貸借の媒介を行う者は、その媒介に係る貸借の金額の百分の五に相当する金額をこえる手数料の契約をし、又はこれをこえる手数料を受領してはならない。
2 金銭の貸借の媒介を行う者がその媒介に関し受ける金銭は、礼金、調査料その他何らの名義をもつてするを問わず、手数料とみなして前項の規定を適用する。
(高金利の処罰)
第五条 金銭の貸付を行う者が、百円につき一日三十銭をこえる割合による利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。以下同じ。)の契約をし、又はこれをこえる割合による利息を受領したときは、三年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 前項の規定の適用については、貸付の期間が十五日未満であるときは、これを十五日として利息を計算するものとする。
3 第一項の規定の適用については、利息を天引する方法による金銭の貸付にあつては、その交付額を元本額として利息を計算するものとする。
4 一年分に満たない利息を元本に組み入れる契約がある場合においては、元利金のうち当初の元本をこえる金額を利息とみなして第一項の規定を適用する。
5 金銭の貸付を行う者がその貸付に関し受ける金銭は、礼金、割引料、手数料、調査料その他何らの名義をもつてするを問わず、利息とみなして第一項の規定を適用する。
(物価統制令との関係)
第六条 金銭の貸付についての利息及び金銭の貸借の媒介についての手数料に関しては、物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第九条ノ二(不当高価契約等の禁止)の規定は、適用しない。
(貸金業の届出)
第七条 業としての金銭の貸付又は金銭の貸借の媒介(その業を行うにつき他の法律に特別の規定のある者の行うもの並びに物品の売買、運送、保管及び売買の媒介を業とする者がその取引に附随して行うものを除く。以下「貸金業」という。)を行う者は、その業を開始したときは、遅滞なく、政令で定める事項を記載した書面を添えて、その旨を大蔵大臣に届け出なければならない、届け出た事項に変更があつたときも、その変更があつた部分について、また同様とする。
2 貸金業を行う者は、左の各号の一に該当するときは、遅滞なく、政令で定めるところにより、その旨を大蔵大臣に届け出なければならない。
一 貸金業を三月以上の期間にわたつて休止するとき
二 貸金業を三月以上の期間にわたつて休止した後貸金業を再開したとき
三 貸金業を廃止したとき
(報告及び調査)
第八条 大蔵大臣は、貸金業の実態の調査のため必要があるときは、貸金業を行う者からその業務に関し報告を徴し、又は当該職員をして貸金業を行う者の営業所又は事務所に立ち入り、その業務に関し調査をさせることができる。
2 前項の規定により立入調査をする職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係人にこれを呈示しなければならない。
(金銭の貸付等とみなす場合)
第九条 第二条第三項及び第三条から第七条までの規定の適用については、手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付又は授受は、金銭の貸付又は金銭の貸借とみなす。
(権限の委任)
第十条 大蔵大臣は、政令で定めるところにより、この法律の規定に基く権限の全部又は一部を都道府県知事に委任することができる。
(その他の罰則)
第十一条 左の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第一条、第二条第一項、第三条又は第四条第一項の規定に違反した者
二 何らの名義をもつてするを問わず、また、いかなる方法をもつてするを問わず、第一条、第二条第一項、第三条、第四条第一項又は第五条第一項の規定に係る禁止を免かれる行為をした者
2 前項の規定中第一条及び第三条に係る部分は、刑法(明治四十年法律第四十五号)に正条がある場合には、適用しない。
第十二条 左の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第七条の規定による届出を怠り、又は虚偽の届出をした者
二 第八条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による調査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
第十三条 法人(法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定のあるものを含む。以下この項において同じ。)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が法人又は人の業務又は財産に関して第五条又は前二条(第三条に係る部分を除く。)の違反行為をしたときは、その行為者を罰する外、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
2 前項の規定により法人でない社団又は財団を処罰する場合においては、その代表者又は管理人がその訴訟行為につきその社団又は財団を代表する外、法人を被告人とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。
附 則
1 この法律の施行期日は、公布の日から六月をこえない範囲内において政令で定める。但し、第三条、第七条、第八条並びに第九条中第三条及び第七条に係る部分、第十条、第十一条中第三条に係る部分、第十二条並びに次項から第十一項までの規定は、公布の日から施行する。
2 第二条及び第三条の規定の適用については、相互銀行法(昭和二十六年法律第百九十九号)附則第三項に規定する既存無尽会社は、同法による改正前の無尽業法(昭和六年法律第四十二号)が同項の規定によりその効力を有する間、銀行とみなす。
3 第七条の規定の施行前から引き続いて貸金業を行つている者(その業を休止している者を含む。)は、この法律施行後二月以内に、政令で定めるところにより、大蔵大臣に届け出なければならない。但し、当該期間内にその業を廃止する場合においては、この限りでない。
4 前項の規定による届出を怠り、又は虚偽の届出をした者は、三万円以下の罰金に処する。
5 貸金業等の取締に関する法律(昭和二十四年法律第百七十号)は、廃止する。
6 銀行法(昭和二年法律第二十一号)の一部を次のように改正する。
第三十三条中「五千円以下ノ罰金ニ処ス」を「三年以下ノ懲役若ハ三十万円以下ノ罰金ニ処シ又ハ之ヲ併科ス」に改める。
第三十四条中「若ハ禁錮又ハ千円以下ノ罰金」を「又ハ十万円以下ノ罰金」に改め、同条の次に次の一条を加える。
第三十四条ノ二 法人(法人ニ非ザル社団又ハ財団ニシテ代表者又ハ管理人ノ定アルモノヲ含ム以下本項ニ於テ同ジ)ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ代理人、使用人其ノ他ノ従業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ関シ前二条ノ違反行為ヲ為シタルトキハ其ノ行為者ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ対シ各本条ノ罰金刑ヲ科ス
前項ノ規定ニ依リ法人ニ非ザル社団又ハ財団ヲ処罰スル場合ニ於テハ其ノ代表者又ハ管理人ガ其ノ訴訟行為ニ付其ノ社団又ハ財団ヲ代表スルノ外法人ヲ被告人トスル場合ノ刑事訴訟ニ関スル法律ノ規定ヲ準用ス
第三十五条中「十円以上千円以下」を「一万円以下」に改める。
第三十六条中「十円以上百円以下」を「一万円以下」に改める。
7 貯蓄銀行法(大正十年法律第七十四号)の一部を次のように改正する。
第十八条中「五千円以下ノ罰金ニ処ス」を「三年以下ノ懲役若ハ三十万円以下ノ罰金ニ処シ又ハ之ヲ併科ス」に改める。
第二十二条を削り、第二十一条を第二十二条とし、第二十条中「十円以上百円以下」を「一万円以下」に改め、同条を第二十一条とする。
第十九条中「十円以上千円以下」を「一万円以下」に改め、同条を第二十条とし、第十八条の次に次の一条を加える。
第十九条 法人(法人ニ非ザル社団又ハ財団ニシテ代表者又ハ管理人ノ定アルモノヲ含ム以下本項ニ於テ同ジ)ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ代理人、使用人其ノ他ノ従業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ関シ前条ノ違反行為ヲ為シタルトキハ其ノ行為者ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ対シ同条ノ罰金刑ヲ科ス
前項ノ規定ニ依リ法人ニ非ザル社団又ハ財団ヲ処罰スル場合ニ於テハ其ノ代表者又ハ管理人ガ其ノ訴訟行為ニ付其ノ社団又ハ財団ヲ代表スルノ外法人ヲ被告人トスル場合ノ刑事訴訟ニ関スル法律ノ規定ヲ準用ス
8 信託業法(大正十一年法律第六十五号)の一部を次のように改正する。
第二十条中「五千円以下ノ罰金ニ処ス」を「三年以下ノ懲役若ハ三十万円以下ノ罰金ニ処シ又ハ之ヲ併科ス」に改める。
第二十二条中「十円以上百円以下」を「一万円以下」に改め、同条を第二十三条とする。
第二十一条中「十円以上千円以下」を「一万円以下」に改め、同条を第二十二条とし、第二十条の次に次の一条を加える。
第二十一条 法人(法人ニ非ザル社団又ハ財団ニシテ代表者又ハ管理人ノ定アルモノヲ含ム以下本項ニ於テ同ジ)ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ代理人、使用人其ノ他ノ従業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ関シ前条ノ違反行為ヲ為シタルトキハ其ノ行為者ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ対シ同条ノ罰金刑ヲ科ス
前項ノ規定ニ依リ法人ニ非ザル社団又ハ財団ヲ処罰スル場合ニ於テハ其ノ代表者又ハ管理人ガ其ノ訴訟行為ニ付其ノ社団又ハ財団ヲ代表スルノ外法人ヲ被告人トスル場合ノ刑事訴訟ニ関スル法律ノ規定ヲ準用ス
9 普通銀行等の貯蓄銀行業務又は信託業務の兼営等に関する法律(昭和十八年法律第四十三号)の一部を次のように改正する。
第十条中「千円以下」を「一万円以下」に改める。
10 無尽業法の一部を次のように改正する。
第三十六条中「三千円以下ノ罰金ニ処ス」を「三年以下ノ懲役若ハ三十万円以下ノ罰金ニ処シ又ハ之ヲ併科ス」に改める。
第三十七条中「若ハ禁錮又ハ千円以下ノ罰金」を「又ハ十万円以下ノ罰金」に改める。
第四十一条を削り、第四十条中「十円以上百円以下」を「一万円以下」に改め、同条を第四十一条とする。
第三十八条及び第三十九条中「十円以上千円以下」を「一万円以下」に改め、第三十九条を第四十条とし、第三十八条を第三十九条とし、第三十七条の次に次の一条を加える。
第三十八条 法人(法人ニ非ザル社団又ハ財団ニシテ代表者又ハ管理人ノ定アルモノヲ含ム以下本項ニ於テ同ジ)ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ代理人、使用人其ノ他ノ従業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ関シ前二条ノ違反行為ヲ為シタルトキハ其ノ行為者ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ対シ各本条ノ罰金刑ヲ科ス
前項ノ規定ニ依ル法人ニ非ザル社団又ハ財団ヲ処罰スル場合ニ於テハ其ノ代表者又ハ管理人ガ其ノ訴訟行為ニ付其ノ社団又ハ財団ヲ代表スルノ外法人ヲ被告人トスル場合ノ刑事訴訟ニ関スル法律ノ規定ヲ準用ス
11 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
12 大蔵省設置法(昭和二十四年法律第百四十四号)の一部を次のように改正する。
第十二条第一項に次の一号を加える。
十四 貸金業の実態を調査し及び預り金となるべき金銭の受入についての情報の収集その他法令違反の防止に関すること。
法務大臣 小原直
大蔵大臣 小笠原三九郎
内閣総理大臣 吉田茂