証券取引法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第120号
公布年月日: 昭和30年8月1日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

有価証券市場の機能強化のため、証券金融会社に対する適正な規制を行い、信用取引の円滑な運営を図ることで、有価証券市場における売買取引の公正化と有価証券の円滑な流通を実現する必要がある。また、証券業者に対する監督規定の整備も必要とされている。具体的には、証券金融会社の定義を明確化し、大蔵大臣による免許制や資本金規制を導入するとともに、商号変更や貸出条件変更時の認可制度を設ける。さらに、証券業者の監督規定について、名義貸の禁止や有価証券の割賦販売に関する規定の整備を行う。

参照した発言:
第22回国会 参議院 大蔵委員会 第13号

審議経過

第22回国会

参議院
(昭和30年6月7日)
衆議院
(昭和30年6月9日)
参議院
(昭和30年6月9日)
衆議院
(昭和30年6月11日)
参議院
(昭和30年6月16日)
(昭和30年6月17日)
(昭和30年6月21日)
(昭和30年6月22日)
衆議院
(昭和30年7月12日)
(昭和30年7月14日)
(昭和30年7月15日)
(昭和30年7月19日)
(昭和30年7月22日)
(昭和30年7月26日)
(昭和30年7月27日)
(昭和30年7月29日)
(昭和30年7月30日)
(昭和30年7月30日)
参議院
(昭和30年7月30日)
衆議院
(昭和30年7月25日)
証券取引法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和三十年八月一日
内閣総理大臣 鳩山一郎
法律第百二十号
証券取引法の一部を改正する法律
証券取引法(昭和二十三年法律第二十五号)の一部を次のように改正する。
目次中「第六章 仲介」を
第五章の二
証券金融会社
第六章
仲介
に改める。
第二条に次の一項を加える。
この法律において証券金融会社とは、第百五十六条の三の規定により大蔵大臣の免許を受けた者をいう。
第三十四条第一項を削り、同条第三項中「前二項」を「前項」に、「前項」を「同項」に改める。
第三十五条中「登録申請者の営業用純資本額が前条第一項に規定する金額に満たない場合、又は」を削り、「同条第二項」を「前条第一項」に改める。
第四十条第一項中「証券業者の営業用純資本額が第三十四条第一項に規定する金額を下ることとなつたとき、又は」を削り、「同条第二項」を「第三十四条第一項」に改め、同条第二項及び第三項中「第三十四条」の下に「第一項」を加える。
第四十一条第三項中「本店の所在地を管轄する法務局又は地方法務局」を「本店のもよりの供託所」に改める。
第四十三条中「同一の商号により」を削り、同条の次に次の一条を加える。
第四十三条の二 証券業者は、自己の名義をもつて、他人に証券業を営ませてはならない。
第四十九条第一項中「売買その他の取引」の下に(「以下信用取引という。)」を加える。
第五十一条第一項中「その他の者の有価証券と混同して」を削り、「書面」を「大蔵省令で定める事項を記載した書面」に改める。
第五十四条第一項第五号の二を削り、同項第六号中「第三十四条第二項」を「第三十四条第一項」に改める。
第六十六条を次のように改める。
第六十六条 割賦販売の方法により有価証券を売り付け、又は顧客からあらかじめ金銭を預り、若しくは借り受け、当該金銭を対価として有価証券を売り付けることを営業としようとする者は、政令の定めるところにより、大蔵大臣の承認を受けなければならない。
第九十一条第五項中「第三十四条第三項及び第四項」を「第三十四条第二項及び第三項」に改める。
第五章の次に次の一章を加える。
第五章の二 証券金融会社
第百五十六条の二 証券金融会社は、資本の額が五千万円以上の株式会社でなければならない。
第百五十六条の三 証券取引所の会員に対し、信用取引の決済に必要な金銭又は有価証券を、当該証券取引所の決済機構を利用して貸し付ける業務を営もうとする者は、大蔵大臣の免許を受けなければならない。
前項の免許を受けようとする株式会社は、次に掲げる事項を記載した申請書を大蔵大臣に提出しなければならない。
一 商号及び資本の額
二 本店、支店その他の営業所の名称及び所在の場所
三 役員の氏名
前項の申請書には、定款、業務の種類及び方法を記載した書面その他大蔵省令で定める書類を添附しなければならない。
第百五十六条の四 大蔵大臣は、前条第二項の規定による申請書の提出があつた場合において、その申請者の人的構成、信用状態及び資金調達の能力並びに有価証券市場の状況等に照らし、その申請者が証券金融会社としての業務を行うにつき十分な適格性を有するものであるかどうかを審査しなければならない。
大蔵大臣は、前項の規定により審査した結果、その申請が同項の基準に適合していると認めたときは、次の各号の一に該当する場合を除いて、その免許を与えなければならない。
一 申請者が資本の額が五千万円以上の株式会社でないとき。
二 申請者がこの法律の規定により罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終つた後又は執行を受けることがないこととなつた日から五年を経過するまでの会社であるとき。
三 申請者が第百五十六条の十二の規定により免許を取り消され、又は第三十九条、第四十条第三項、第五十七条第一項若しくは第五十九条の規定により登録を取り消され、取消の日から五年を経過するまでの会社であるとき。
四 申請者がその役員のうちに次のイからハまでの一に該当する者のある会社であるとき。
イ 第三十一条第一項第九号イからホまでに掲げる者
ロ 証券金融会社が第百五十六条の十二の規定により免許を取り消された場合において、その取消の日以前三十日内に当該証券金融会社の取締役であつた者で、その取消の日から五年を経過するまでのもの
ハ 第百三条又は第百五十六条の十第三項の規定により解任を命ぜられた役員で、当該処分のあつた日から五年を経過するまでのもの
五 申請書又はその添附書類のうちに重要な事項について虚偽の記載があるとき。
第百五十六条の五 第八十四条及び第八十五条の規定は、証券金融会社の免許について準用する。この場合において、第八十五条中「第八十三条第二項各号の一」とあるのは、「第百五十六条の四第二項各号の一」と読み替えるものとする。
第百五十六条の六 証券金融会社は、証券取引所の会員に対する金銭又は有価証券の貸付に関する業務以外の業務を営もうとするときは、大蔵大臣の承認を受けなければならない。
大蔵大臣は、前項の承認を受けようとする証券金融会社がある場合において、当該証券金融会社がその承認を受けようとする業務を兼ねて営むことが証券取引所の会員に対する金銭又は有価証券の貸付に関する業務の遂行をさまたげるものであると認めるときは、当該証券金融会社に通知して当該職員に審問を行わせた後、理由を示し、同項の承認を与えないことができる。
第百五十六条の七 証券金融会社は、次に掲げる行為をしようとする場合においては、大蔵大臣の認可を受けなければならない。
一 商号の変更
二 発行する株式の総数又は資本の額の変更
三 金銭又は有価証券の貸付の方法又は条件の決定又は変更
四 第百五十六条の九の規定による定款の定の変更
第百五十六条の八 大蔵大臣は、証券金融会社の金銭又は有価証券の貸付の方法又は条件について、これらが一般の経済状況にかんがみて適正を欠くに至つたと認められる場合又は有価証券市場に不健全な取引の傾向がある場合において、有価証券市場における売買取引を公正にし、又は有価証券の流通を円滑にするために特に必要があると認めるときは、証券金融会社に通知して当該職員に審問を行わせた後、理由を示し、その変更を命ずることができる。
第百五十六条の九 証券金融会社の代表取締役は、証券業者の役員及び使用人以外の者でなければならない。
証券金融会社は、その業務の中正な運営を図るため、その定款において、その取締役の総数のうちに占める証券業者の役員又は使用人である取締役の割合の制限に関する定を設けなければならない。
第百五十六条の十 第百五十六条の四第二項第四号イからハまでの一に該当する者は、証券金融会社の役員となることができない。
証券会融会社の役員が前項に規定する者に該当することとなつたときは、その職を失う。
大蔵大臣は、不正の手段により証券金融会社の役員となつたものがあることを発見したとき、又は証券金融会社若しくはその役員がこの法律若しくはこの法律に基く命令若しくはこれらに基く処分に違反したときは、その役員に通知して当該職員に審問を行わせた後、当該証券金融会社に対し、理由を示し、その役員の解任を命ずることができる。
第百五十六条の十一 第百六条の規定は、証券金融会社の役員若しくは職員又はこれらの職にあつた者について準用する。
第百五十六条の十二 大蔵大臣は、証券金融会社が、この法律若しくはこの法律に基く命令又はこれらに基く処分に違反したときは、当該証券金融会社に通知して当該職員に審問を行わせた後、理由を示し、その免許を取り消し、又は六月以内の期間を定めてその業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
第百五十六条の十三 大蔵大臣は、有価証券市場における売買取引を公正にし、又は有価証券の流通を円滑にするために必要であると認めるときは、証券金融会社に対し、その業務若しくは財産に関し参考となるべき報告若しくは資料の提出を命じ、又は当該職員にその業務若しくは財産の状況若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
第百五十六条の十四 証券金融会社の業務の廃止又は解散の決議は、大蔵大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
第百八十五条第一項中「第百五十四条、」の下に「第百五十六条の十三、」を加える。
第百九十七条第三号を同条第四号とし、同条第二号の次に次の一号を加える。
三 第百五十六条の三第一項の規定による免許を受けないで同項に規定する業務を営んだ者
第百九十九条各号列記以外の部分中「又は証券取引所」を「、証券取引所又は証券金融会社」に改め、同条第四号中「又は禁止」を「若しくは禁止又は第百五十六条の十二の規定による停止」に改め、同号の次に次の一号を加える。
五 第百五十六条の六第一項の規定に違反して業務を営んだとき
第二百条第三号中「又は第八十二条」を「、第八十二条又は第百五十六条の三」に改め、同条第三号の二の次に次の一号を加える。
三の三 第四十三条の二の規定に違反して他人に証券業を営ませた者
第二百三条第一項中「又は職員」を「若しくは職員又は証券金融会社の役員若しくは職員」に改める。
第二百四条中「第百六条」の下に「(第百五十六条の十一において準用する場合を含む。)」を加える。
第二百五条第十五号中「第百五十四条、」の下に「第百五十六条の十三、」を加える。
第二百六条各号列記以外の部分中「証券取引所」の下に「又は証券金融会社」を加え、同条第八号中「第百五十四条」の下に「又は第百五十六条の十三」を加え、同号の次に次の一号を加える。
九 第百五十六条の七の規定による認可を受けないで同条各号に掲げる行為をしたとき
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 改正前の証券取引法(以下「旧法」という。)第四十一条第三項の規定により証券業者の本店の所在地を管轄する法務局又は地方法務局のうちもよりの供託所に該当しないものに供託した営業保証金については、なお従前の例による。
3 この法律の施行の際現に証券業者が顧客から預託を受けた有価証券又はその計算において自己が占有する有価証券で担保に供し、又は他人に貸し付けているものがあるときは、当該有価証券については、改正後の証券取引法(以下「新法」という。)第五十一条第一項の規定を適用せず、なお従前の例による。
4 この法律の施行の際現に旧法第六十六条に定める制限の範囲内において同条に規定する営業をしている者は、新法第六十六条の規定による大蔵大臣の承認を受けたものとみなす。
5 この法律の施行の際現に新法第百五十六条の三第一項に規定する業務を営んでいる者については、この法律の施行の日から六月以内は、同項の規定は、適用しない。その者がその期間内に当該業務の免許を申請した場合において、その申請について免許をする旨又は免許をしない旨の通知を受けるまでの間も、また同様とする。
6 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
7 出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律(昭和二十九年法律第百九十五号)の一部を次のように改正する。
第二条第三項中「銀行」の下に「及び証券取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第十三項に規定する証券金融会社」を加える。
8 大蔵省設置法(昭和二十四年法律第百四十四号)の一部を次のように改正する。
第十条第二十一号の次に次の一号を加える。
二十一の二 証券金融会社を免許し、これを監督すること。
大蔵大臣 一万田尚登
内閣総理大臣 鳩山一郎