(目的)
第一條 この法律は、貸金業等の取締を行い、その公正な運営を保障するとともに不正金融を防止し、もつて、金融の健全な発達に資することを目的とする。
(定義)
第二條 この法律において「貸金業」とは、何らの名義をもつてするを問わず、金銭の貸付又は金銭の貸借の媒介をする行爲で業として行うものをいう。但し、左に掲げるものを除く。
二 國民金融公庫、復興金融金庫、金融機関(銀行、信託会社、保險会社、無盡会社、市街地信用組合、農林中央金庫、商工組合中央金庫及び農業協同組合、水産業協同組合その他貯金の受入を行う組合をいう。以下同じ。)その他その業を行うにつき他の法律に特別の規定のある者の行うもの
三 物品の賣買、運送若しくは保管又は物品の賣買の媒介を業とする者がその取引に附随して行うもの
2 手形の割引、賣渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付は、前項の金銭の貸付とみなす。
3 この法律において「貸金業者」とは、貸金業を行う者で第四條第二項の規定による届出受理書の交付を受けたものをいう。
(貸金業の届出)
第三條 貸金業を行おうとする者は、あらかじめ左に掲げる事項を記載した届出書を大藏大臣に提出しなければならない。
三 法人又は法人でない社團若しくは財團であるときは、その資本金額若しくは出資金額又は寄附財産の金額並びにその代表者又は管理人の氏名及び住所
2 前項の届出書には、左に掲げる書類を添附しなければならない。
一 法人又は法人でない社團若しくは財團であるときは、定款又は寄附行爲、主要な株主又は出資者の氏名若しくは名称又は商号及びその者の有する株式の数又はその者のした出資の金額を記載した書面、代表者又は管理人の履歴書、戸籍謄本及び直前事業年度の貸借対照表及び損益計算書
二 個人であるときは、その者及び法定代理人の履歴書、戸籍謄本及び大藏大臣の定める樣式により作成した資産に関する調書
(届出の受理)
第四條 大藏大臣は、前條の規定による届出があつた場合において、その届出をした者が左の各号の一に該当するとき、又は届出書若しくはその添附書類に法令の規定に違反する記載若しくは重要な事項につき虚僞の記載があり、若しくは重要な事項の記載が欠けているときは、その届出を受理してはならない。この場合においては、大藏大臣は、届出を受理しない旨を届出をした者に通知しなければならない。
二 禁こ以上の刑又はこの法律の規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることがないこととなつた日から三年を経過するまでの者
三 第十三條第一項若しくは第三項又は第十四條第二項の規定により二回以上業務の停止を命ぜられ、最後に業務の停止を命ぜられた日から二年を経過するまでの者
四 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者又は禁治産者でその法定代理人が前各号の一に該当するもの
五 法人又は法人でない社團若しくは財團でその役員若しくは代表者又は管理人のうちに前各号の一に該当する者のあるもの
2 大藏大臣は、前條の規定による届出書を受理したときは、その届出をした者に届出受理書を交付しなければならない。
(貸金業の制限)
第五條 貸金業者でなければ貸金業を行つてはならない。
(変更の届出)
第六條 貸金業者は、第三條の規定による届出書又はその添附書類に記載された事項について変更があつたときは、遅滯なく、その旨の変更届出書を大藏大臣に提出しなければならない。
2 前項の規定による変更の届出が、新たに就任した代表者又は管理人に係るものであるときは、当該代表者又は管理人の履歴書及び戸籍謄本を変更届出書に添附しなければならない。
(預り金の禁止)
2 前項の「預り金」とは、不特定多数の者からの金銭の受入で預金、貯金、掛金その他、何らの名義をもつてするを問わず、これらと同樣の経済的性質を有するものをいう。
(貸付の利率及び媒介の手数料)
第八條 臨時金利調整法(昭和二十二年法律第百八十一号)第二條から第五條まで及び第六條第二項の規定(金利の最高限度)は、貸金業者の金銭の貸付の利率及び金銭の貸借の媒介の手数料について準用する。
(業務報告書)
第九條 貸金業者は、事業年度(事業年度の定がないときは、毎年四月から九月まで及び十月から翌年三月までとする。)ごとに業務報告書を作成して、当該事業年度経過後二月以内に、これを大藏大臣に提出し、且つ、これを営業所又は事務所に備えて置かなければならない。但し、やむを得ない事由がある場合において期限を定めあらかじめ大藏大臣の承認を受けたときは、その提出を延期することができる。
(報告及び帳簿書類の領置)
第十條 大藏大臣は、貸金業の公正な運営を保障するため必要があると認めるときは、貸金業を行つている者からその業務及び財産の状況に関し報告を徴し、又はその任意に提出した帳簿書類を領置することができる。
(檢査)
第十一條 大藏大臣は、貸金業の公正な運営を保障するため必要があると認めるときは、部下の職員をして貸金業を行つている者の営業所又は事務所に立ち入り、その帳簿書類その他業務に関係のある物件を檢査させることができる。
2 当該職員は、前項の規定により立入檢査をする場合においては、その身分を示す証票を携帶し、利害関係人の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。
3 第一項の規定による立入檢査の権限は、犯罪搜査のために認められたものと解してはならない。
(貸金業者の届出事項)
第十二條 貸金業者が貸金業を開始したとき、三月以上の期間にわたつて休業しようとするとき、又は三月以上の期間にわたつて休業した後貸金業を再開したときは、遅滯なく、その旨を大藏大臣に届け出なければならない。
2 貸金業者が左の各号の一に該当することとなつた場合には、当該各号に掲げる者は、遅滯なく、その旨を大藏大臣に届け出なければならない。
一 第四條第一項各号の一に該当することとなつた場合においては、当該貸金業者
二 貸金業者であつた法人又は法人でない社團若しくは財團が解散した場合においては、その代表者又は管理人であつた者
三 貸金業者であつた個人が死亡した場合においては、その相続人
四 貸金業を廃止した場合においては、貸金業者であつた個人又は貸金業者であつた法人若しくは法人でない社團若しくは財團の代表者若しくは管理人
3 貸金業者が前項各号の一に該当することとなつたときは、その時から第三條の規定によりした届出は、その効力を失う。
(業務の停止)
第十三條 大藏大臣は、貸金業者がこの法律の規定又はこの法律の規定に基く大藏大臣の処分に違反したと認めるときは、当該貸金業者に対し十日以上一年以内の範囲において期間を定めてその業務の停止を命ずることができる。
2 大藏大臣は、前項の規定により業務の停止を命じようとするときは、あらかじめ貸金業者に対しその旨を通知し、当該貸金業者又はその代理人の出頭を求め、釈明のための証拠を提出する機会を與えるため、部下の職員をして聽聞させなければならない。
3 大藏大臣は、前項の規定により通知をしてから一月を経過してもなおその者から答弁がないときは、十日以上一年以内の範囲において期間を定めてその業務の停止を命ずることができる。
(脱法行爲の禁止等)
第十四條 何らの名義をもつてするを問わず、又、いかなる方法をもつてするを問わず、第五條及び第七條並びに第八條において準用する臨時金利調整法第五條の規定による禁止を免れる行爲をしてはならない。
2 大藏大臣は、第五條の規定に違反して貸金業を行つている者を発見したときは、前條第二項及び第三項に規定する手続に準じて、その者に対し、その業務の停止を命ずることができる。
(浮貸し等の禁止)
第十五條 金融機関の役員、職員その他の從業者は、その地位を利用し、自己又は当該金融機関以外の第三者の利益を図るため、金銭の貸付(第二條第二項に規定する金銭の交付を含む。)、金銭の貸借の媒介又は債務の保証をしてはならない。
2 小切手の呈示の時において自己の処分し得る資金のない者が、小切手を振り出した場合において、金融機関の役員、職員その他の從業者が、その情を知りながら、当該小切手の支拂をし、これを買い入れ、又はこれによつて弁済を受けたときは、前項の規定の適用については、金銭の貸付をしたものとみなす。
(非営業無盡の取締)
第十六條 第三條、第四條第二項、第六條、第十條、第十一條、第十二條第二項第二号及び第四号並びに第十三條の規定は、営業として行われない無盡(無盡業法(昭和六年法律第四十二号)第一條に規定する無盡をいう。)のうち、その規模が大きく公共の利益に影響を及ぼすと認められるもので大藏大臣の指定するものについて準用する。
(権限の委任)
第十七條 大藏大臣は、財務部長又は財務部の支部長をしてこの法律に基く大藏大臣の権限の一部を行わせることができる。
(罰則)
第十八條 左の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
三 第八條において準用する臨時金利調整法第五條の規定に違反した者
四 第十三條第一項若しくは第三項(第十六條において準用する場合を含む。)又は第十四條第二項の規定による業務の停止の命令に違反した者
第十九條 第十五條第一項の規定に違反した者は、三年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。但し、刑法(明治四十年法律第四十五号)に正條がある場合には、刑法による。
第二十條 左の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第三條(第十六條において準用する場合を含む。)の規定による届出書又はその添附書類に虚僞の記載をした者
二 第六條(第十六條において準用する場合を含む。)の規定による変更の届出を怠り、又は変更届出書若しくはその添附書類に虚僞の記載をした者
三 第九條第一項の規定による業務報告書の提出を怠り、又は業務報告書に虚僞の記載をした者
四 第十條(第十六條において準用する場合を含む。)の規定に違反して、報告をせず、又は虚僞の報告をした者
五 第十一條第一項(第十六條において準用する場合を含む。)の規定による檢査を拒み、妨げ、又は忌避した者
六 第十二條第一項又は第二項(第十六條において準用する場合を含む。)の規定による届出を怠つた者
第二十一條 法人(法人でない社團又は財團で代表者又は管理人の定のあるものを含む。以下この項において同じ。)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が法人又は人の業務又は財産に関して第十八條又は前條の違反行爲をしたときは、その行爲者を罰する外、その法人又は人に対して各本條の罰金刑を科する。
2 前項の規定により法人でない社團又は財團を処罰する場合においては、その代表者又は管理人がその訴訟行爲につきその社團又は財團を代表する外、法人を被告人とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。