朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル銀行法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二年三月二十九日
內閣總理大臣 若槻禮次郞
大藏大臣 片岡直溫
法律第二十一號
銀行法
第一條 左ニ揭グル業務ヲ營ム者ハ之ヲ銀行トス
一 預金ノ受入ト金錢ノ貸付又ハ手形ノ割引トヲ併セ爲スコト
二 爲替取引ヲ爲スコト
營業トシテ預金ノ受入ヲ爲ス者ハ之ヲ銀行ト看做ス
第二條 銀行業ハ主務大臣ノ免許ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ營ムコトヲ得ズ
第三條 銀行業ハ資本金百萬圓以上ノ株式會社ニ非ザレバ之ヲ營ムコトヲ得ズ但シ勅令ヲ以テ指定スル地域ニ本店又ハ支店ヲ有スル銀行ノ資本金ハ二百萬圓ヲ下ルコトヲ得ズ
前項但書ノ規定ニ依リ地域ノ指定アリタル場合ニ於テ其ノ地域ニ本店又ハ支店ヲ有スル銀行ニシテ資本金二百萬圓未滿ノモノハ指定ノ日ヨリ五年ヲ限リ前項但書ノ資本金ニ依ラザルコトヲ得
第四條 銀行ハ其ノ商號中ニ銀行ナル文字ヲ用フベシ
銀行ニ非ザルモノハ其ノ商號中ニ銀行タルコトヲ示スベキ文字ヲ用フルコトヲ得ズ
第五條 銀行ハ擔保附社債信託法ニ依リ擔保附社債ニ關スル信託業ヲ營ミ又ハ保護預リ其ノ他ノ銀行業ニ附隨スル業務ヲ營ムノ外他ノ業務ヲ營ムコトヲ得ズ
第六條 銀行ハ左ノ場合ニ於テハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
一 商號ヲ變更セントスルトキ
二 資本金ヲ變更セントスルトキ
三 支店其ノ他ノ營業所又ハ代理店ヲ設置セントスルトキ
四 本店其ノ他ノ營業所ノ位置ヲ變更セントスルトキ
五 支店以外ノ營業所ヲ支店ニ變更セントスルトキ
第七條 銀行ハ代理店主ヲシテ其ノ代理事務ニ關シ代理店ノ出張所其ノ他ノ從タル營業所又ハ復代理店ヲ設ケシムルコトヲ得ズ
銀行ノ代理店主ハ其ノ代理事務ニ關シ代理店ノ出張所其ノ他ノ從タル營業所又ハ復代理店ヲ設クルコトヲ得ズ
第八條 銀行ハ資本ノ總額ニ達スル迄ハ利益ヲ配當スル每ニ準備金トシテ其ノ利益ノ十分ノ一以上ヲ積立ツベシ
第九條 銀行ノ營業年度ハ一月ヨリ六月迄及七月ヨリ十二月迄トス
第十條 銀行ハ營業年度每ニ業務報告書ヲ作成シテ之ヲ主務大臣ニ提出スベシ
第十一條 銀行ハ營業年度每ニ主務大臣ノ定ムル樣式ニ依リ貸借對照表ヲ作成シテ之ヲ公告スベシ
第十二條 銀行ノ監查役ハ銀行ノ業務及財產ノ狀況ニ關スル調查ノ結果ヲ記載シタル監查書ヲ每營業年度二囘作成シテ之ヲ本店ニ備ヘ置クベシ
第十三條 銀行ノ常務ニ從事スル取締役又ハ支配人ガ他ノ會社ノ常務ニ從事セントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第十四條 銀行ノ合併ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第十五條 銀行ガ合併ノ決議ヲ爲シタル場合ニ於テ商法第七十八條第二項ノ規定ニ依リテ爲スベキ催告ハ預金者ニ對シテハ之ヲ爲スコトヲ要セズ
第十六條 銀行ガ合併ノ決議ヲ爲シタル場合ニ於テ商法第七十八條第二項但書ノ期間ハ一月迄之ヲ下スコトヲ得合併ニ因ル株式併合ノ場合ニ於テ商法第二百二十條ノ二但書ノ期間ニ付亦同ジ
第十七條 銀行ガ合併ニ因リテ貯蓄銀行法第一條第一項ノ業務ニ屬スル契約ニ基ク權利義務ヲ承繼シタル場合ニ於テハ其ノ契約ノ完了スル迄仍其ノ契約ニ關スル業務ニ限リ之ヲ繼續スルコトヲ妨ゲズ
貯蓄銀行法第九條、第十條及第十五條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十八條 銀行ノ休日ハ祭日、祝日、日曜日其ノ他銀行ノ營業所所在地ニ行ハルル一般ノ休日ニ限ル
銀行ガ天災其ノ他避クベカラザル事變ニ因リ臨時ニ休業スルトキハ直ニ其ノ旨ヲ公告シ地方長官ニ屆出ヅベシ
第十九條 銀行ガ預金ノ拂戾ヲ停止スルトキハ直ニ其ノ旨ヲ公告シ事由ヲ具シテ主務大臣ニ屆出ヅベシ
第二十條 主務大臣ハ何時ニテモ銀行ヲシテ其ノ業務ニ關スル報告ヲ爲サシメ又ハ監查書其ノ他ノ書類帳簿ヲ提出セシムルコトヲ得
第二十一條 主務大臣ハ何時ニテモ部下ノ官吏ニ命ジテ銀行ノ業務及財產ノ狀況ヲ檢查セシムルコトヲ得
第二十二條 主務大臣ハ銀行ノ業務又ハ財產ノ狀況ニ依リ必要ト認ムルトキハ業務ノ停止又ハ財產ノ供託ヲ命ジ其ノ他必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第二十三條 銀行ガ法令、定款若ハ主務大臣ノ命令ニ違反シ又ハ公益ヲ害スベキ行爲ヲ爲シタルトキハ主務大臣ハ業務ノ停止若ハ取締役、監查役ノ改任ヲ命ジ又ハ營業ノ免許ヲ取消スコトヲ得
第二十四條 主務大臣ハ業務ノ停止ヲ命ゼラレタル銀行ニ對シ其ノ整理ノ狀況ニ依リ必要ト認ムルトキハ營業ノ免許ヲ取消スコトヲ得
第二十五條 銀行業ノ廢止又ハ銀行ノ解散ノ決議ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第二十六條 銀行ガ其ノ目的ヲ變更シ他ノ業務ヲ營ム會社トシテ存續スル場合ニ於テハ銀行ニ關スル事務ヲ管理スル主務大臣ハ其ノ會社ガ預金債務ヲ完濟スルニ至ル迄財產ノ供託ヲ命ジ其ノ他必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得合併ニ因リ銀行ニ非ザル會社ガ銀行ノ預金債務ヲ承繼シタル場合亦同ジ
第二十條及第二十一條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十七條 銀行ガ營業ノ免許ヲ取消サレタルトキハ之ニ因リテ解散ス
前項ノ場合ニ於テ淸算人ハ利害關係人ノ請求ニ因リ又ハ職權ヲ以テ裁判所之ヲ選任ス其ノ淸算人ノ解任亦同ジ
第二十八條 前條ノ場合ヲ除クノ外裁判所ハ利害關係人ノ請求ニ因リ又ハ職權ヲ以テ淸算人ヲ解任スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ淸算人ヲ解任シタルトキハ裁判所ハ淸算人ヲ選任スルコトヲ得
第二十九條 裁判所ハ銀行ノ淸算事務及財產ノ狀況ヲ檢查シ、財產ノ供託ヲ命ジ其ノ他淸算ノ監督ニ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第三十條 銀行ノ淸算、破產又ハ强制和議ノ場合ニ於テ裁判所ハ銀行ノ檢查監督ニ從事スル官吏ニ對シ意見ヲ求メ又ハ檢查若ハ調查ヲ囑託スルコトヲ得
第三十一條 銀行ノ淸算、破產又ハ强制和議ノ場合ニ於テ銀行ノ檢查監督ニ從事スル官吏ハ裁判所ニ對シ意見ヲ述ブルコトヲ得
第三十二條 本法施行地外ニ本店ヲ有スル銀行ガ本法施行地內ニ支店、出張所又ハ代理店ヲ設ケ銀行業ヲ營マントスルトキハ各營業所每ニ代表者ヲ定メ第二條ノ規定ニ依ル免許ヲ受クベシ
前項ノ規定ニ依リ免許ヲ受ケタルトキハ該營業所ハ本法ノ適用ニ付之ヲ銀行ト看做ス此ノ場合ニ於テハ第三條乃至第六條、第八條、第十二條乃至第十七條、第二十五條及第二十七條乃至前條ノ規定ニ拘ラズ命令ヲ以テ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第一項ノ免許ニ付テハ主務大臣ハ特ニ必要ナル制限ヲ附スルコトヲ得
第三十三條 主務大臣ノ免許ヲ受ケズシテ銀行業ヲ營ミタル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十四條 左ノ場合ニ於テハ取締役、監查役、支配人、淸算人又ハ本法施行地外ニ本店ヲ有スル銀行ノ本法施行地ニ於ケル代表者ヲ一年以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 業務報告書又ハ監查書ノ不實ノ記載、虛僞ノ公告其ノ他ノ方法ニ依リ官廳又ハ公衆ヲ欺罔シタルトキ
二 本法ニ依ル檢查ニ際シ帳簿書類ノ隱蔽、不實ノ申立其ノ他ノ方法ニ依リ檢查ヲ妨ゲタルトキ
第三十五條 左ノ場合ニ於テハ取締役、監查役、支配人、代理店主(代理店主法人ナルトキハ其ノ業務ヲ執行スル社員、取締役其ノ他法人ノ代表者又ハ外國會社ノ代表者)、淸算人又ハ本法施行地外ニ本店ヲ有スル銀行ノ本法施行地ニ於ケル代表者ヲ十圓以上千圓以下ノ過料ニ處ス但シ其ノ行爲ニ付刑ヲ科スベキトキハ此ノ限ニ在ラズ
一 第五條乃至第八條又ハ第十三條ノ規定ニ違反シタルトキ
二 第十七條ニ於テ準用スル貯蓄銀行法第九條ノ規定ニ違反シタルトキ
三 本法ニ依リ銀行ニ備ヘ置クベキ書類ノ備付若ハ主務大臣ニ提出スベキ書類ノ提出ヲ怠リ、之ニ記載スベキ事項ヲ記載セズ又ハ之ニ不實ノ記載ヲ爲シタルトキ
四 本法ニ定メタル屆出若ハ公告ヲ爲スコトヲ怠リ又ハ不實ノ屆出若ハ公告ヲ爲シタルトキ
五 第二十二條、第二十三條、第二十六條又ハ第二十九條ノ規定ニ依リ主務大臣又ハ裁判所ノ爲シタル命令ニ違反シタルトキ
六 本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シタルトキ
第三十六條 第四條第二項ノ規定ニ違反シタル者ハ十圓以上百圓以下ノ過料ニ處ス
第三十七條 銀行ガ本法ニ依リ爲スベキ公告ハ新聞紙ニ依ルベシ
附 則
第三十八條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十九條 銀行條例ハ之ヲ廢止ス
舊法ニ依リテ營業ノ認可ヲ受ケタル銀行ニシテ本法施行ノ際現ニ存スルモノハ第四十條及第四十一條ノ定ムル制限ニ從ヒ本法ニ依リテ免許ヲ受ケタル銀行ト看做ス
舊法ニ依リテ爲シタル認可、處分其ノ他ノ行爲ハ本法中之ニ相當スル規定アル場合ニ於テハ本法ニ依リテ之ヲ爲シタルモノト看做ス
第四十條 前條第二項ノ銀行ニシテ株式會社又ハ外國銀行以外ノモノハ本法施行後五年ヲ限リ仍其ノ營業ヲ繼續スルコトヲ得
商法施行前ニ設立シタル合資會社ニシテ舊法ニ依リ營業ノ認可ヲ受ケタル銀行ガ本法施行後五年內ニ其ノ組織ヲ變更シ又ハ合併ニ因リ株式會社ト爲リタルトキハ前項ノ規定ニ拘ラズ其ノ營業ヲ繼續スルコトヲ得
前項ノ組織變更ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第四十一條 第三十九條第二項ノ銀行ノ資本金ニ付テハ本法施行後五年ヲ限リ第三條第一項本文ノ規定ヲ適用セズ第三十九條第二項ノ銀行ノ合併ニ因リテ設立シタル銀行ノ資本金ニ付亦同ジ
命令ヲ以テ定ムル人口一萬未滿ノ地ニ本法施行ノ際現ニ本店ヲ有スル銀行ニ付テハ第三條第一項本文ノ規定ヲ適用セズ但シ其ノ資本金ハ本法施行後五年內ニ五十萬圓以上ト爲スコトヲ要ス
第四十二條 本法施行ノ際現ニ銀行ニシテ其ノ商號中ニ銀行ナル文字ヲ用ヒザルモノ及銀行ニ非ズシテ其ノ商號中ニ銀行タルコトヲ示スベキ文字ヲ用フルモノニ付テハ本法施行後六月ヲ限リ第四條ノ規定ヲ適用セズ
第四十三條 本法施行ノ際現ニ第五條ノ業務以外ノ業務ヲ營ム銀行ハ本法施行後五年ヲ限リ仍其ノ業務ヲ繼續スルコトヲ得
第四十四條 第三十九條第二項ノ銀行ノ本法施行ノ際現ニ有スル本店及支店以外ノ營業所又ハ代理店ハ本法施行後一年內ニ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ存續スルコトヲ得ズ
前項ノ認可申請書ハ本法施行後三月內ニ主務大臣ニ提出スベシ
第四十五條 本法施行ノ際現ニ銀行ノ常務ニ從事スル取締役又ハ支配人ニシテ他ノ會社ノ常務ニ從事スル者ハ本法施行後一年ヲ限リ主務大臣ノ認可ヲ受ケズシテ引續キ其ノ會社ノ常務ニ從事スルコトヲ得
第四十六條 第三十九條第二項ノ銀行ニシテ株式會社又ハ外國銀行以外ノモノノ業務廢止ニ付テハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第四十七條 本法中取締役ニ關スル規定ハ第三十九條第二項ノ銀行ニシテ株式會社又ハ外國銀行以外ノモノニ付テハ其ノ營業主(營業主法人ナルトキハ其ノ業務ヲ執行スル社員)ニ之ヲ準用ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル銀行法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二年三月二十九日
内閣総理大臣 若槻礼次郎
大蔵大臣 片岡直温
法律第二十一号
銀行法
第一条 左ニ掲グル業務ヲ営ム者ハ之ヲ銀行トス
一 預金ノ受入ト金銭ノ貸付又ハ手形ノ割引トヲ併セ為スコト
二 為替取引ヲ為スコト
営業トシテ預金ノ受入ヲ為ス者ハ之ヲ銀行ト看做ス
第二条 銀行業ハ主務大臣ノ免許ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ営ムコトヲ得ズ
第三条 銀行業ハ資本金百万円以上ノ株式会社ニ非ザレバ之ヲ営ムコトヲ得ズ但シ勅令ヲ以テ指定スル地域ニ本店又ハ支店ヲ有スル銀行ノ資本金ハ二百万円ヲ下ルコトヲ得ズ
前項但書ノ規定ニ依リ地域ノ指定アリタル場合ニ於テ其ノ地域ニ本店又ハ支店ヲ有スル銀行ニシテ資本金二百万円未満ノモノハ指定ノ日ヨリ五年ヲ限リ前項但書ノ資本金ニ依ラザルコトヲ得
第四条 銀行ハ其ノ商号中ニ銀行ナル文字ヲ用フベシ
銀行ニ非ザルモノハ其ノ商号中ニ銀行タルコトヲ示スベキ文字ヲ用フルコトヲ得ズ
第五条 銀行ハ担保附社債信託法ニ依リ担保附社債ニ関スル信託業ヲ営ミ又ハ保護預リ其ノ他ノ銀行業ニ附随スル業務ヲ営ムノ外他ノ業務ヲ営ムコトヲ得ズ
第六条 銀行ハ左ノ場合ニ於テハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
一 商号ヲ変更セントスルトキ
二 資本金ヲ変更セントスルトキ
三 支店其ノ他ノ営業所又ハ代理店ヲ設置セントスルトキ
四 本店其ノ他ノ営業所ノ位置ヲ変更セントスルトキ
五 支店以外ノ営業所ヲ支店ニ変更セントスルトキ
第七条 銀行ハ代理店主ヲシテ其ノ代理事務ニ関シ代理店ノ出張所其ノ他ノ従タル営業所又ハ復代理店ヲ設ケシムルコトヲ得ズ
銀行ノ代理店主ハ其ノ代理事務ニ関シ代理店ノ出張所其ノ他ノ従タル営業所又ハ復代理店ヲ設クルコトヲ得ズ
第八条 銀行ハ資本ノ総額ニ達スル迄ハ利益ヲ配当スル毎ニ準備金トシテ其ノ利益ノ十分ノ一以上ヲ積立ツベシ
第九条 銀行ノ営業年度ハ一月ヨリ六月迄及七月ヨリ十二月迄トス
第十条 銀行ハ営業年度毎ニ業務報告書ヲ作成シテ之ヲ主務大臣ニ提出スベシ
第十一条 銀行ハ営業年度毎ニ主務大臣ノ定ムル様式ニ依リ貸借対照表ヲ作成シテ之ヲ公告スベシ
第十二条 銀行ノ監査役ハ銀行ノ業務及財産ノ状況ニ関スル調査ノ結果ヲ記載シタル監査書ヲ毎営業年度二回作成シテ之ヲ本店ニ備ヘ置クベシ
第十三条 銀行ノ常務ニ従事スル取締役又ハ支配人ガ他ノ会社ノ常務ニ従事セントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第十四条 銀行ノ合併ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第十五条 銀行ガ合併ノ決議ヲ為シタル場合ニ於テ商法第七十八条第二項ノ規定ニ依リテ為スベキ催告ハ預金者ニ対シテハ之ヲ為スコトヲ要セズ
第十六条 銀行ガ合併ノ決議ヲ為シタル場合ニ於テ商法第七十八条第二項但書ノ期間ハ一月迄之ヲ下スコトヲ得合併ニ因ル株式併合ノ場合ニ於テ商法第二百二十条ノ二但書ノ期間ニ付亦同ジ
第十七条 銀行ガ合併ニ因リテ貯蓄銀行法第一条第一項ノ業務ニ属スル契約ニ基ク権利義務ヲ承継シタル場合ニ於テハ其ノ契約ノ完了スル迄仍其ノ契約ニ関スル業務ニ限リ之ヲ継続スルコトヲ妨ゲズ
貯蓄銀行法第九条、第十条及第十五条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十八条 銀行ノ休日ハ祭日、祝日、日曜日其ノ他銀行ノ営業所所在地ニ行ハルル一般ノ休日ニ限ル
銀行ガ天災其ノ他避クベカラザル事変ニ因リ臨時ニ休業スルトキハ直ニ其ノ旨ヲ公告シ地方長官ニ届出ヅベシ
第十九条 銀行ガ預金ノ払戻ヲ停止スルトキハ直ニ其ノ旨ヲ公告シ事由ヲ具シテ主務大臣ニ届出ヅベシ
第二十条 主務大臣ハ何時ニテモ銀行ヲシテ其ノ業務ニ関スル報告ヲ為サシメ又ハ監査書其ノ他ノ書類帳簿ヲ提出セシムルコトヲ得
第二十一条 主務大臣ハ何時ニテモ部下ノ官吏ニ命ジテ銀行ノ業務及財産ノ状況ヲ検査セシムルコトヲ得
第二十二条 主務大臣ハ銀行ノ業務又ハ財産ノ状況ニ依リ必要ト認ムルトキハ業務ノ停止又ハ財産ノ供託ヲ命ジ其ノ他必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第二十三条 銀行ガ法令、定款若ハ主務大臣ノ命令ニ違反シ又ハ公益ヲ害スベキ行為ヲ為シタルトキハ主務大臣ハ業務ノ停止若ハ取締役、監査役ノ改任ヲ命ジ又ハ営業ノ免許ヲ取消スコトヲ得
第二十四条 主務大臣ハ業務ノ停止ヲ命ゼラレタル銀行ニ対シ其ノ整理ノ状況ニ依リ必要ト認ムルトキハ営業ノ免許ヲ取消スコトヲ得
第二十五条 銀行業ノ廃止又ハ銀行ノ解散ノ決議ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第二十六条 銀行ガ其ノ目的ヲ変更シ他ノ業務ヲ営ム会社トシテ存続スル場合ニ於テハ銀行ニ関スル事務ヲ管理スル主務大臣ハ其ノ会社ガ預金債務ヲ完済スルニ至ル迄財産ノ供託ヲ命ジ其ノ他必要ナル命令ヲ為スコトヲ得合併ニ因リ銀行ニ非ザル会社ガ銀行ノ預金債務ヲ承継シタル場合亦同ジ
第二十条及第二十一条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十七条 銀行ガ営業ノ免許ヲ取消サレタルトキハ之ニ因リテ解散ス
前項ノ場合ニ於テ清算人ハ利害関係人ノ請求ニ因リ又ハ職権ヲ以テ裁判所之ヲ選任ス其ノ清算人ノ解任亦同ジ
第二十八条 前条ノ場合ヲ除クノ外裁判所ハ利害関係人ノ請求ニ因リ又ハ職権ヲ以テ清算人ヲ解任スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ清算人ヲ解任シタルトキハ裁判所ハ清算人ヲ選任スルコトヲ得
第二十九条 裁判所ハ銀行ノ清算事務及財産ノ状況ヲ検査シ、財産ノ供託ヲ命ジ其ノ他清算ノ監督ニ必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第三十条 銀行ノ清算、破産又ハ強制和議ノ場合ニ於テ裁判所ハ銀行ノ検査監督ニ従事スル官吏ニ対シ意見ヲ求メ又ハ検査若ハ調査ヲ嘱託スルコトヲ得
第三十一条 銀行ノ清算、破産又ハ強制和議ノ場合ニ於テ銀行ノ検査監督ニ従事スル官吏ハ裁判所ニ対シ意見ヲ述ブルコトヲ得
第三十二条 本法施行地外ニ本店ヲ有スル銀行ガ本法施行地内ニ支店、出張所又ハ代理店ヲ設ケ銀行業ヲ営マントスルトキハ各営業所毎ニ代表者ヲ定メ第二条ノ規定ニ依ル免許ヲ受クベシ
前項ノ規定ニ依リ免許ヲ受ケタルトキハ該営業所ハ本法ノ適用ニ付之ヲ銀行ト看做ス此ノ場合ニ於テハ第三条乃至第六条、第八条、第十二条乃至第十七条、第二十五条及第二十七条乃至前条ノ規定ニ拘ラズ命令ヲ以テ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第一項ノ免許ニ付テハ主務大臣ハ特ニ必要ナル制限ヲ附スルコトヲ得
第三十三条 主務大臣ノ免許ヲ受ケズシテ銀行業ヲ営ミタル者ハ五千円以下ノ罰金ニ処ス
第三十四条 左ノ場合ニ於テハ取締役、監査役、支配人、清算人又ハ本法施行地外ニ本店ヲ有スル銀行ノ本法施行地ニ於ケル代表者ヲ一年以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
一 業務報告書又ハ監査書ノ不実ノ記載、虚偽ノ公告其ノ他ノ方法ニ依リ官庁又ハ公衆ヲ欺罔シタルトキ
二 本法ニ依ル検査ニ際シ帳簿書類ノ隠蔽、不実ノ申立其ノ他ノ方法ニ依リ検査ヲ妨ゲタルトキ
第三十五条 左ノ場合ニ於テハ取締役、監査役、支配人、代理店主(代理店主法人ナルトキハ其ノ業務ヲ執行スル社員、取締役其ノ他法人ノ代表者又ハ外国会社ノ代表者)、清算人又ハ本法施行地外ニ本店ヲ有スル銀行ノ本法施行地ニ於ケル代表者ヲ十円以上千円以下ノ過料ニ処ス但シ其ノ行為ニ付刑ヲ科スベキトキハ此ノ限ニ在ラズ
一 第五条乃至第八条又ハ第十三条ノ規定ニ違反シタルトキ
二 第十七条ニ於テ準用スル貯蓄銀行法第九条ノ規定ニ違反シタルトキ
三 本法ニ依リ銀行ニ備ヘ置クベキ書類ノ備付若ハ主務大臣ニ提出スベキ書類ノ提出ヲ怠リ、之ニ記載スベキ事項ヲ記載セズ又ハ之ニ不実ノ記載ヲ為シタルトキ
四 本法ニ定メタル届出若ハ公告ヲ為スコトヲ怠リ又ハ不実ノ届出若ハ公告ヲ為シタルトキ
五 第二十二条、第二十三条、第二十六条又ハ第二十九条ノ規定ニ依リ主務大臣又ハ裁判所ノ為シタル命令ニ違反シタルトキ
六 本法ニ基キテ発スル命令ニ違反シタルトキ
第三十六条 第四条第二項ノ規定ニ違反シタル者ハ十円以上百円以下ノ過料ニ処ス
第三十七条 銀行ガ本法ニ依リ為スベキ公告ハ新聞紙ニ依ルベシ
附 則
第三十八条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十九条 銀行条例ハ之ヲ廃止ス
旧法ニ依リテ営業ノ認可ヲ受ケタル銀行ニシテ本法施行ノ際現ニ存スルモノハ第四十条及第四十一条ノ定ムル制限ニ従ヒ本法ニ依リテ免許ヲ受ケタル銀行ト看做ス
旧法ニ依リテ為シタル認可、処分其ノ他ノ行為ハ本法中之ニ相当スル規定アル場合ニ於テハ本法ニ依リテ之ヲ為シタルモノト看做ス
第四十条 前条第二項ノ銀行ニシテ株式会社又ハ外国銀行以外ノモノハ本法施行後五年ヲ限リ仍其ノ営業ヲ継続スルコトヲ得
商法施行前ニ設立シタル合資会社ニシテ旧法ニ依リ営業ノ認可ヲ受ケタル銀行ガ本法施行後五年内ニ其ノ組織ヲ変更シ又ハ合併ニ因リ株式会社ト為リタルトキハ前項ノ規定ニ拘ラズ其ノ営業ヲ継続スルコトヲ得
前項ノ組織変更ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第四十一条 第三十九条第二項ノ銀行ノ資本金ニ付テハ本法施行後五年ヲ限リ第三条第一項本文ノ規定ヲ適用セズ第三十九条第二項ノ銀行ノ合併ニ因リテ設立シタル銀行ノ資本金ニ付亦同ジ
命令ヲ以テ定ムル人口一万未満ノ地ニ本法施行ノ際現ニ本店ヲ有スル銀行ニ付テハ第三条第一項本文ノ規定ヲ適用セズ但シ其ノ資本金ハ本法施行後五年内ニ五十万円以上ト為スコトヲ要ス
第四十二条 本法施行ノ際現ニ銀行ニシテ其ノ商号中ニ銀行ナル文字ヲ用ヒザルモノ及銀行ニ非ズシテ其ノ商号中ニ銀行タルコトヲ示スベキ文字ヲ用フルモノニ付テハ本法施行後六月ヲ限リ第四条ノ規定ヲ適用セズ
第四十三条 本法施行ノ際現ニ第五条ノ業務以外ノ業務ヲ営ム銀行ハ本法施行後五年ヲ限リ仍其ノ業務ヲ継続スルコトヲ得
第四十四条 第三十九条第二項ノ銀行ノ本法施行ノ際現ニ有スル本店及支店以外ノ営業所又ハ代理店ハ本法施行後一年内ニ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ存続スルコトヲ得ズ
前項ノ認可申請書ハ本法施行後三月内ニ主務大臣ニ提出スベシ
第四十五条 本法施行ノ際現ニ銀行ノ常務ニ従事スル取締役又ハ支配人ニシテ他ノ会社ノ常務ニ従事スル者ハ本法施行後一年ヲ限リ主務大臣ノ認可ヲ受ケズシテ引続キ其ノ会社ノ常務ニ従事スルコトヲ得
第四十六条 第三十九条第二項ノ銀行ニシテ株式会社又ハ外国銀行以外ノモノノ業務廃止ニ付テハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第四十七条 本法中取締役ニ関スル規定ハ第三十九条第二項ノ銀行ニシテ株式会社又ハ外国銀行以外ノモノニ付テハ其ノ営業主(営業主法人ナルトキハ其ノ業務ヲ執行スル社員)ニ之ヲ準用ス