漁船法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十五年五月十三日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百七十八号
漁船法
目次
第一章
総則(第一條・第二條)
第二章
漁船の建造調整(第三條―第八條)
第三章
漁船の登録(第九條―第二十一條)
第四章
漁船に関する検査(第二十二條―第二十四條)
第五章
漁船に関する試験(第二十五條・第二十六條)
第六章
雑則(第二十七條・第二十八條)
第七章
罰則(第二十九條―第三十一條)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一條 この法律は、漁船の建造を調整し、漁船の登録及び検査に関する制度を確立し、且つ、漁船に関する試験を行い、もつて漁船の性能の向上を図り、あわせて漁業生産力の合理的発展に資することを目的とする。
(定義)
第二條 この法律において「漁船」とは、左の各号の一に該当する日本船舶をいう。
一 もつぱら漁業に従事する船舶
二 漁業に従事する船舶で漁獲物の保蔵又は製造の設備を有するもの
三 もつぱら漁場から漁獲物又はその製品を運搬する船舶
四 もつぱら漁業に関する試験、調査、指導若しくは練習に従事する船舶又は漁業の取締に従事する船舶であつて漁ろう設備を有するもの
2 この法律において「動力漁船」とは、推進機関を備える漁船をいう。
3 この法律において「改造」とは、船舶の長さ、幅若しくは深さを変更し、推進機関をあらたに据えつけ、若しくはその種類若しくはその出力を変更し、又は船舶の用途若しくは従事する漁業の種類を変更するために船舶の構造若しくは設備に変更を加えることをいう。
第二章 漁船の建造調整
(建造、改造及び転用の許可)
第三條 船舶製造業者その他の者に注文して、左に掲げる動力漁船を建造し、又は船舶を左に掲げる動力漁船に改造しようとする者は、その動力漁船が第一号又は第二号に該当する場合にあつては農林大臣の許可を受け、その動力漁船が第三号に該当する場合にあつてはその主たる根拠地(改造の場合にあつては改造後の主たる根拠地)を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。動力漁船以外の船舶を改造しないで左に掲げる動力漁船として転用しようとする者についても、同樣とする。
一 長さ十五メートル以上の動力漁船
二 長さ十五メートル未満の動力漁船で漁業法(昭和二十四年法律第二百六十七号)第六十五條の規定に基く命令により農林大臣の許可を要する漁業に従事するもの
三 前二号に掲げるもの以外の動力漁船
2 前項の場合の外、同項各号に掲げる動力漁船を建造し、又は船舶を同項各号に掲げる動力漁船に改造しようとする者についても、同項と同樣とする。
3 前二項の許可を受けようとする者は、左に掲げる事項について記載した申請書を農林大臣又は都道府県知事に提出しなければならない。
一 申請者の氏名又は名称及び住所
二 船名(改造又は転用の場合にあつては改造又は転用前及び改造又は転用後の船名)
三 漁業種類又は用途、操業区域及び主たる根拠地(改造の場合にあつては改造前及び改造後の漁業種類又は用途、操業区域及び主たる根拠地)
四 計画総トン数(改造の場合にあつては改造前の総トン数及び改造後の計画総トン数、転用の場合にあつては総トン数)
五 船舶の長さ、幅及び深さ(改造の場合にあつては改造前及び改造後の長さ、幅及び深さ)
六 船質(木船又は鋼船の別)
七 建造又は改造を行う造船所の名称及び所在地
八 推進機関の種類及び馬力数並びにシリンダの数及び直径(改造の場合にあつては改造前及び改造後の推進機関の種類及び馬力数並びにシリンダの数及び直径)
九 推進機関の製作所の名称及び所在地
十 起工、進水及びしゆん工、改造工事の着手及び完成又は転用の予定期日
十一 建造、改造又は転用に要する費用及びその調達方法の概要
十二 建造、改造又は転用を必要とする事情
4 農林大臣又は都道府県知事は、第一項又は第二項の許可の申請者に、図面、仕樣書その他第一項又は第二項の許可に関し必要な書類を提出させることができる。
5 第三項の申請書の提出があつたときは、農林大臣又は都道府県知事は、その申請書を受理した後、第一項又は第二項の許可に関してした照会中の期間を除いて二箇月以内に、その申請者に対し、許可又は不許可の通知を発しなければならない。
6 都道府県知事は、第一項又は第二項の許可をしたときは、その旨を農林大臣に報告しなければならない。
7 第一項又は第二項の許可を受けた者は、その許可に係る建造、改造又は転用について第三項第三号から第八号までに掲げる事項のいずれかを変更しようとするときは、その変更につき、その許可をした行政庁の許可を受けなければならない。
8 前項の場合には、第四項から第六項までの規定を準用する。
9 第一項又は第二項の許可を受けた者は、その許可に係る建造、改造又は転用について第三項第一号、第二号及び第九号から第十一号までに掲げる事項のいずれかに変更を生じたときは、遅滯なくその旨をその許可をした行政庁に報告しなければならない。
(許可の基準)
第四條 農林大臣又は都道府県知事は、左の各号の一に該当する場合を除き、前條第一項又は第二項の許可をしなければならない。
一 農林大臣が、漁業法第百十二條の規定により設置される中央漁業調整審議会の意見をきき、漁業種類別、操業区域別、根拠地の属する都道府県の区域別又は動力漁船の種類別に漁業(漁場から漁獲物又はその製品を運搬する事業を含む。以下本号において同じ。)に従事することができる動力漁船の隻数又は総トン数の最高限度を定めた場合において、その申請に係る前條第一項又は第二項の許可をすることによつてその漁業に従事する動力漁船の隻数又は総トン数がその最高限度をこえることとなるとき。
二 農林大臣が、中央漁業調整審議会の意見をきき、動力漁船の性能につき漁業種類別又は操業区域別に基準を定めた場合において、その申請に係る動力漁船の性能がその基準に適合しないとき。
三 その申請に係る動力漁船の従事する漁業が漁業法第五十二條の指定遠洋漁業又は同法第六十五條の規定に基く命令により許可を要する漁業に該当し、且つ、同法第五十四條の規定又は同法第六十五條の規定に基く命令により起業の認可を要する場合において、その漁業につき起業の認可がないとき。
四 その申請に係る建造又は改造をその造船所又は推進機関製作所において行うことが技術的に著しく困難と認められるとき。
五 その申請に係る建造、改造又は転用に要する費用の調達が著しく困難と認められるとき。
(許可の失効)
第五條 左の各号の一に該当する場合には、第三條第一項又は第二項の許可は、その効力を失う。
一 その許可が建造に係る場合にあつては、その許可の日から一年以内にしゆん工しないとき。
二 その許可が改造に係る場合にあつては、その許可の日から六箇月以内にその改造の工事が完成しないとき。
三 その許可が転用に係る場合にあつては、その許可の日から二箇月以内に転用による使用を開始しないとき。
四 その許可に係る漁船の従事する漁業が前條第三号の漁業に該当し、且つ、同号の起業の許可を要する場合において、その起業の認可が取り消されたとき。
2 農林大臣又は都道府県知事は、やむを得ない事由があると認めるときは、第三條第一項又は第二項の許可を受けた者の申請により、前項第一号から第三号までの期間を延長することができる。
(許可の取消)
第六條 農林大臣又は都道府県知事は、第三條第一項又は第二項の許可を受けた者が同條第七項の規定に違反したときは、その許可を取り消すことができる。
2 農林大臣又は都道府県知事は、前項の規定による許可の取消をしようとするときは、あらかじめ、その許可を受けた者に対し、取消の理由並びに聽聞の期日及び場所を文書をもつて通知し、その許可を受けた者又はその代理人が公開の聽聞において弁明し、且つ、有利な証拠を提出する機会を與えなければならない。
(完了報告)
第七條 第三條第一項又は第二項の許可を受けた者は、省令の定めるところにより、その許可に係る建造若しくは改造の工事の状況又は転用による使用開始につき、その許可をした行政庁に報告しなければならない。
(臨時船舶管理法の適用除外)
第八條 漁船の建造及び改造並びに漁船にするための船舶の改造については、臨時船舶管理法(昭和十二年法律第九十三号)第八條の規定に基く命令の規定による運輸大臣の許可を受けることを要しない。但し、左に掲げる漁船については、この限りでない。
一 母船式漁業(製造、冷蔵その他の処理設備を有する母船又はその附属漁船により営む漁業をいう。)に従事する母船
二 捕鯨業(もりづつを使用してミンクを除くひげ鯨又はまつこう鯨をとる漁業をいう。)に従事する動力漁船
三 トロール漁業(オツタートロール又はビームトロールを使用して営む漁業をいう。)に従事する動力漁船
四 もつぱら漁場から前二号の漁業の漁獲物又はその製品を運搬する動力漁船
第三章 漁船の登録
(漁船の登録)
第九條 漁船は、その所有者がその主たる根拠地を管轄する都道府県知事の備える漁船原簿に登録を受けたものでなければ、これを漁船として使用してはならない。
2 前項の登録を受けようとする者は、左に掲げる事項について記載した申請書を都道府県知事に提出しなければならない。
一 申請者の氏名又は名称及び住所
二 船名
三 総トン数
四 船舶の長さ、幅及び深さ
五 船質(木船又は鋼船の別)
六 進水年月日
七 造船所の名称及び所在地
八 推進機関の種類及び馬力数、シリンダの数及び直径並びに推進機関の製作所の名称
九 燃料の種類
十 無線電波の型式及び空中線電力
十一 漁船の使用者の氏名又は名称及び住所
十二 主たる根拠地
十三 漁業種類又は用途
十四 漁船の建造、取得等登録の原因
3 都道府県知事は、前項の申請者に第三條第一項又は第二項の許可(同條第七項の変更の許可を含む。)を証する書面その他登録に関し必要な書類を提出させることができる。
(登録の基準)
第十條 都道府県知事は、左の各号の一に該当する場合を除き、前條第一項の登録をしなければならない。
一 その申請に係る漁船について第三條第一項又は第二項の許可(同條第七項の変更の許可を含む。)を受けなければならない場合において、その許可がないとき。
二 その申請に係る漁船の従事する漁業が、漁業法第五十二條の指定遠洋漁業又は同法第六十五條の規定に基く命令により許可を要する漁業に該当する場合において、その漁業につき、起業の認可又は許可がないとき。
三 その申請に係る事項が虚僞であるとき。
(登録票の交付)
第十一條 都道府県知事は、第九條第一項の登録をしたときは、申請者に登録票を交付しなければならない。
2 前項の規定により登録票の交付を受けた者がその漁船の使用者でないときは、その交付を受けた者は、遅滯なく登録票をその漁船の使用者に交付しなければならない。
(登録票の備えつけ)
第十二條 漁船の使用者は、漁船を運航し、又は操業する場合には、漁船の船内に前條の登録票を備えつけておかなければならない。但し、省令で定める正当な事由がある場合は、この限りでない。
(登録番号の表示)
第十三條 漁船の所有者は、第十一條第一項の規定により登録票の交付を受けたときは、同條第二項の場合を除き、遅滯なく登録票に記載された登録番号を当該漁船に表示しなければならない。同項の規定により登録票の交付を受けた漁船の使用者についても同樣とする。
(変更の登録)
第十四條 第九條第一項の登録を受けた漁船の所有者は、その漁船について同條第二項第一号から第四号まで及び第八号から第十三号までに掲げる事項について変更が生じたときは、その変更の生じた日(第二項の場合にあつては同項の通知を受けた日)から二週間以内に、その変更の事由を具してその登録をした都道府県知事に対し変更の登録を申請しなければならない。
2 第九條第一項の登録を受けた漁船の所有者がその漁船の使用者でない場合において、その漁船について同條第二項第八号から第十三号までに掲げる事項に変更を生じたときは、その使用者は、遅滯なくその旨を所有者に通知しなければならない。
3 都道府県知事は、第一項の申請があつたときは、第十條各号の場合を除き、漁船原簿に変更の登録をするとともに、登録票を書き換えて交付しなければならない。
(登録の失効)
第十五條 左に掲げる場合には、漁船の登録は、その効力を失う。
一 登録を受けた漁船が漁船でなくなつたとき。
二 登録を受けた漁船が滅失し、沈沒し、又は解てつされたとき。
三 登録を受けた漁船の存否が三箇月間知れないとき。
四 登録を受けた漁船が讓渡されたとき。
五 登録を受けた漁船の主たる根拠地がその登録をした都道府県知事の管轄する都道府県の区域外に変更されたとき。
六 登録を受けた漁船の所有者が死亡し、又は解散したとき。
2 前項第六号の場合において、相続人又は合併により設立した法人若しくは合併後存続する法人が、死亡又は解散の日から一箇月以内に第九條の規定により登録を申請したときは、これに対する登録に関する処分があるまでは、被相続人又は合併により解散した法人についてした登録及びこれらの者に交付した登録票は、その効力を有し、且つ、その登録又は登録票は、その申請人についてし、又は交付したものとみなす。
(登録の取消)
第十六條 都道府県知事は、第九條第一項の登録を受けた漁船が第三條の規定に違反して改造されたとき、又は老朽若しくは破損等のため漁船として使用することができなくなつたと認めるときは、その漁船の登録を取り消すことができる。この場合には、第六條第二項の規定を準用する。
(登録票の返納及び登録番号のまつ消)
第十七條 左に掲げる場合には、漁船の所有者は、遅滯なく、その登録をした都道府県知事に登録票を返納しなければならない。但し、登録票を返納することができない正当な事由がある場合において、事由を具してその旨をその都道府県知事に届け出たときは、その返納をすることを要しない。
一 第十五條の規定により登録がその効力を失つたとき。
二 前條の規定により登録が取り消されたとき。
2 前項各号の場合において、漁船の所有者が漁船の使用者でないときは、その使用者は、遅滯なく、所有者にその登録票を返還しなければならない。
3 第一項各号の場合には、漁船の所有者(漁船の所有者がその使用者でない場合にあつては、その使用者)は、遅滯なく、第十三條の規定によりその漁船に表示された登録番号をまつ消しなければならない。
(登録謄本の交付)
第十八條 何人でも、都道府県知事に対し、漁船の登録の謄本の交付を請求することができる。
(手数料)
第十九條 左の表の上欄に掲げる者は、それぞれ同表下欄に掲げる金額の範囲内において省令で定める額の手数料を納めなければならない。
手数料を納めなければならない者
金額
第九條第一項の登録の申請をする者
二千円
第十四條第一項の変更の登録又は登録票の再交付を申請する者
千円
前條の登録謄本の交付を請求する者
一枚につき五十円
(船舶法の適用除外)
第二十條 漁船については、船舶法(明治三十二年法律第四十六号)第二十一條の規定に基く命令(船舶の積量の測度に関する部分を除く。)を適用しない。
(省令への委任)
第二十一條 この法律に定めるものの外、漁船の登録に関し必要な事項は、省令で定める。
第四章 漁船に関する検査
(依頼検査)
第二十二條 農林大臣は、漁船の所有者(第三條第一項又は第二項の許可を受けた者を含む。)から、その漁船について左に掲げる事項に関する検査を依頼されたときは、設計及び工事の期間中の省令で定める時並びにしゆん工又は改造工事完成の時において、検査を行わなければならない。
一 船体
二 機関
三 漁ろう設備
四 漁獲物の保蔵又は製造の設備
五 電気設備
六 航海測器設備
2 省令で定める場合は、前項の規定にかかわらず、設計及び工事の期間中の検査を省略することができる。
3 第一項の検査においては、その設計、材料、工事及び性能が省令で定める技術基準に適合しているかどうかを検査するものとする。
4 農林大臣は、前項の技術基準を定めるには、中央漁業調整審議会の意見をきかなければならない。
(検査成績)
第二十三條 農林大臣は、前條第一項のしゆん工若しくは改造工事完成の時における検査又は同條第一項に掲げるすべての事項についての検査の結果、同條第三項の技術基準に適合すると認める場合は、その検査に合格したことを証する検査合格証を、その技術基準に適合しないと認める場合は、改善を要すべき事項を記載した検査成績書を申請者に交付しなければならない。
(手数料)
第二十四條 第二十二條第一項の規定により検査を受けようとする者は、検査に要する費用の範囲内において省令で定める額の手数料を納めなければならない。
第五章 漁船に関する試験
(設計及び試験の依頼)
第二十五條 何人でも、漁船又は漁船用機関、漁船用機械その他の漁船用施設(以下この章において「漁船等」という。)に関する設計又は試験を農林大臣に依頼することができる。
(模範設計)
第二十六條 農林大臣は、漁船の改善及び発達に資するため、漁船等に関する模範設計を定めて、これを公表するものとする。
第六章 雑則
(訴願)
第二十七條 第三條第一項に掲げる動力漁船の建造、改造若しくは転用又は漁船の登録に関する処分(第六條の規定による農林大臣の処分を除く。)に不服のある者は、農林大臣に訴願することができる。
2 農林大臣は、前項の訴願の裁決をしようとするときは、あらかじめ、その訴願をした者に対し、期日及び場所を文書をもつて通知し、その訴願をした者又はその代理人が公開の聽聞において意見を述べ、且つ、有利な証拠を提出する機会を與えなければならない。
(立入検査)
第二十八條 農林大臣又は都道府県知事は、第二章又は第三章の規定の施行に関し必要があると認めるときは、その職員に、漁船の所有者若しくは管理者の事務所、漁船の建造若しくは改造の工事の場所、漁船用機関、漁船用機械その他の漁船用施設の製作の場所又は漁船(第三條第一項若しくは第二項の許可に係る建造若しくは改造中の船舶又はその許可の申請に係る改造若しくは転用前の船舶を含む。以下本條において同じ。)に立ち入り、漁船若しくは漁船用機関、漁船用機械その他の漁船用施設又は登録票その他の書類を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証票を携帶し、且つ、関係人の請求があるときは、これを示さなければならない。
3 第一項の立入検査は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
第七章 罰則
第二十九條 第三條第一項、第二項若しくは第七項又は第九條第一項の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
第三十條 左の各号の一に該当する者は、一万円以下の罰金に処する。
一 第七條の規定に違反して報告をせず、又は虚僞の報告をした者
二 第十二條、第十三條、第十四條第一項若しくは第二項又は第十七條の規定に違反した者
三 第二十八條第一項の規定による当該職員の立入又は検査を拒み、妨げ又は忌避した者
第三十一條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が法人又は人の業務に関して前二條の違反行為をしたときは、その法人又は人が、違反の計画を知りその防止に必要な措置を講じなかつたとき、違反行為を知りその是正に必要な措置を講じなかつたとき、又は違反を教唆したときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対し各本條の罰金刑を科する。
附 則
1 この法律施行の期日は、公布の日から起算して三箇月をこえない期間内において、政令で定める。
2 漁船登録規則(昭和二十二年総理庁令・農林省令第五号)は、廃止する。但し、この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
3 この法律施行前に漁船登録規則による登録及び登録票は、この法律の規定による登録及び登録票とみなす。
4 この法律施行前に臨時船舶管理法第八條の規定に基く命令の規定により運輸大臣がした建造又は改造の許可は、この法律の規定の適用については、第三條第一項又は第二項の規定により農林大臣又は都道府県知事がこの法律施行の日においてした建造又は改造の許可とみなす。
5 水産庁設置法(昭和二十三年法律第七十八号)の一部を次のように改正する。
第二條第一号中「(漁船及び漁船用機関の生産及び検査に関するものを除く。)」を削る。
第二條第四号を次のように改める。
四 漁船保險に関する事務を処理すること。
同條同号の次に次の一号を加える。
四の二 漁船の建造、改造又は転用の許可、漁船の登録及び漁船の検査に関する事務を処理すること。
農林大臣 森幸太郎
運輸大臣 大屋晋三
内閣総理大臣 吉田茂
漁船法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十五年五月十三日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百七十八号
漁船法
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
漁船の建造調整(第三条―第八条)
第三章
漁船の登録(第九条―第二十一条)
第四章
漁船に関する検査(第二十二条―第二十四条)
第五章
漁船に関する試験(第二十五条・第二十六条)
第六章
雑則(第二十七条・第二十八条)
第七章
罰則(第二十九条―第三十一条)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、漁船の建造を調整し、漁船の登録及び検査に関する制度を確立し、且つ、漁船に関する試験を行い、もつて漁船の性能の向上を図り、あわせて漁業生産力の合理的発展に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「漁船」とは、左の各号の一に該当する日本船舶をいう。
一 もつぱら漁業に従事する船舶
二 漁業に従事する船舶で漁獲物の保蔵又は製造の設備を有するもの
三 もつぱら漁場から漁獲物又はその製品を運搬する船舶
四 もつぱら漁業に関する試験、調査、指導若しくは練習に従事する船舶又は漁業の取締に従事する船舶であつて漁ろう設備を有するもの
2 この法律において「動力漁船」とは、推進機関を備える漁船をいう。
3 この法律において「改造」とは、船舶の長さ、幅若しくは深さを変更し、推進機関をあらたに据えつけ、若しくはその種類若しくはその出力を変更し、又は船舶の用途若しくは従事する漁業の種類を変更するために船舶の構造若しくは設備に変更を加えることをいう。
第二章 漁船の建造調整
(建造、改造及び転用の許可)
第三条 船舶製造業者その他の者に注文して、左に掲げる動力漁船を建造し、又は船舶を左に掲げる動力漁船に改造しようとする者は、その動力漁船が第一号又は第二号に該当する場合にあつては農林大臣の許可を受け、その動力漁船が第三号に該当する場合にあつてはその主たる根拠地(改造の場合にあつては改造後の主たる根拠地)を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。動力漁船以外の船舶を改造しないで左に掲げる動力漁船として転用しようとする者についても、同様とする。
一 長さ十五メートル以上の動力漁船
二 長さ十五メートル未満の動力漁船で漁業法(昭和二十四年法律第二百六十七号)第六十五条の規定に基く命令により農林大臣の許可を要する漁業に従事するもの
三 前二号に掲げるもの以外の動力漁船
2 前項の場合の外、同項各号に掲げる動力漁船を建造し、又は船舶を同項各号に掲げる動力漁船に改造しようとする者についても、同項と同様とする。
3 前二項の許可を受けようとする者は、左に掲げる事項について記載した申請書を農林大臣又は都道府県知事に提出しなければならない。
一 申請者の氏名又は名称及び住所
二 船名(改造又は転用の場合にあつては改造又は転用前及び改造又は転用後の船名)
三 漁業種類又は用途、操業区域及び主たる根拠地(改造の場合にあつては改造前及び改造後の漁業種類又は用途、操業区域及び主たる根拠地)
四 計画総トン数(改造の場合にあつては改造前の総トン数及び改造後の計画総トン数、転用の場合にあつては総トン数)
五 船舶の長さ、幅及び深さ(改造の場合にあつては改造前及び改造後の長さ、幅及び深さ)
六 船質(木船又は鋼船の別)
七 建造又は改造を行う造船所の名称及び所在地
八 推進機関の種類及び馬力数並びにシリンダの数及び直径(改造の場合にあつては改造前及び改造後の推進機関の種類及び馬力数並びにシリンダの数及び直径)
九 推進機関の製作所の名称及び所在地
十 起工、進水及びしゆん工、改造工事の着手及び完成又は転用の予定期日
十一 建造、改造又は転用に要する費用及びその調達方法の概要
十二 建造、改造又は転用を必要とする事情
4 農林大臣又は都道府県知事は、第一項又は第二項の許可の申請者に、図面、仕様書その他第一項又は第二項の許可に関し必要な書類を提出させることができる。
5 第三項の申請書の提出があつたときは、農林大臣又は都道府県知事は、その申請書を受理した後、第一項又は第二項の許可に関してした照会中の期間を除いて二箇月以内に、その申請者に対し、許可又は不許可の通知を発しなければならない。
6 都道府県知事は、第一項又は第二項の許可をしたときは、その旨を農林大臣に報告しなければならない。
7 第一項又は第二項の許可を受けた者は、その許可に係る建造、改造又は転用について第三項第三号から第八号までに掲げる事項のいずれかを変更しようとするときは、その変更につき、その許可をした行政庁の許可を受けなければならない。
8 前項の場合には、第四項から第六項までの規定を準用する。
9 第一項又は第二項の許可を受けた者は、その許可に係る建造、改造又は転用について第三項第一号、第二号及び第九号から第十一号までに掲げる事項のいずれかに変更を生じたときは、遅滞なくその旨をその許可をした行政庁に報告しなければならない。
(許可の基準)
第四条 農林大臣又は都道府県知事は、左の各号の一に該当する場合を除き、前条第一項又は第二項の許可をしなければならない。
一 農林大臣が、漁業法第百十二条の規定により設置される中央漁業調整審議会の意見をきき、漁業種類別、操業区域別、根拠地の属する都道府県の区域別又は動力漁船の種類別に漁業(漁場から漁獲物又はその製品を運搬する事業を含む。以下本号において同じ。)に従事することができる動力漁船の隻数又は総トン数の最高限度を定めた場合において、その申請に係る前条第一項又は第二項の許可をすることによつてその漁業に従事する動力漁船の隻数又は総トン数がその最高限度をこえることとなるとき。
二 農林大臣が、中央漁業調整審議会の意見をきき、動力漁船の性能につき漁業種類別又は操業区域別に基準を定めた場合において、その申請に係る動力漁船の性能がその基準に適合しないとき。
三 その申請に係る動力漁船の従事する漁業が漁業法第五十二条の指定遠洋漁業又は同法第六十五条の規定に基く命令により許可を要する漁業に該当し、且つ、同法第五十四条の規定又は同法第六十五条の規定に基く命令により起業の認可を要する場合において、その漁業につき起業の認可がないとき。
四 その申請に係る建造又は改造をその造船所又は推進機関製作所において行うことが技術的に著しく困難と認められるとき。
五 その申請に係る建造、改造又は転用に要する費用の調達が著しく困難と認められるとき。
(許可の失効)
第五条 左の各号の一に該当する場合には、第三条第一項又は第二項の許可は、その効力を失う。
一 その許可が建造に係る場合にあつては、その許可の日から一年以内にしゆん工しないとき。
二 その許可が改造に係る場合にあつては、その許可の日から六箇月以内にその改造の工事が完成しないとき。
三 その許可が転用に係る場合にあつては、その許可の日から二箇月以内に転用による使用を開始しないとき。
四 その許可に係る漁船の従事する漁業が前条第三号の漁業に該当し、且つ、同号の起業の許可を要する場合において、その起業の認可が取り消されたとき。
2 農林大臣又は都道府県知事は、やむを得ない事由があると認めるときは、第三条第一項又は第二項の許可を受けた者の申請により、前項第一号から第三号までの期間を延長することができる。
(許可の取消)
第六条 農林大臣又は都道府県知事は、第三条第一項又は第二項の許可を受けた者が同条第七項の規定に違反したときは、その許可を取り消すことができる。
2 農林大臣又は都道府県知事は、前項の規定による許可の取消をしようとするときは、あらかじめ、その許可を受けた者に対し、取消の理由並びに聴聞の期日及び場所を文書をもつて通知し、その許可を受けた者又はその代理人が公開の聴聞において弁明し、且つ、有利な証拠を提出する機会を与えなければならない。
(完了報告)
第七条 第三条第一項又は第二項の許可を受けた者は、省令の定めるところにより、その許可に係る建造若しくは改造の工事の状況又は転用による使用開始につき、その許可をした行政庁に報告しなければならない。
(臨時船舶管理法の適用除外)
第八条 漁船の建造及び改造並びに漁船にするための船舶の改造については、臨時船舶管理法(昭和十二年法律第九十三号)第八条の規定に基く命令の規定による運輸大臣の許可を受けることを要しない。但し、左に掲げる漁船については、この限りでない。
一 母船式漁業(製造、冷蔵その他の処理設備を有する母船又はその附属漁船により営む漁業をいう。)に従事する母船
二 捕鯨業(もりづつを使用してミンクを除くひげ鯨又はまつこう鯨をとる漁業をいう。)に従事する動力漁船
三 トロール漁業(オツタートロール又はビームトロールを使用して営む漁業をいう。)に従事する動力漁船
四 もつぱら漁場から前二号の漁業の漁獲物又はその製品を運搬する動力漁船
第三章 漁船の登録
(漁船の登録)
第九条 漁船は、その所有者がその主たる根拠地を管轄する都道府県知事の備える漁船原簿に登録を受けたものでなければ、これを漁船として使用してはならない。
2 前項の登録を受けようとする者は、左に掲げる事項について記載した申請書を都道府県知事に提出しなければならない。
一 申請者の氏名又は名称及び住所
二 船名
三 総トン数
四 船舶の長さ、幅及び深さ
五 船質(木船又は鋼船の別)
六 進水年月日
七 造船所の名称及び所在地
八 推進機関の種類及び馬力数、シリンダの数及び直径並びに推進機関の製作所の名称
九 燃料の種類
十 無線電波の型式及び空中線電力
十一 漁船の使用者の氏名又は名称及び住所
十二 主たる根拠地
十三 漁業種類又は用途
十四 漁船の建造、取得等登録の原因
3 都道府県知事は、前項の申請者に第三条第一項又は第二項の許可(同条第七項の変更の許可を含む。)を証する書面その他登録に関し必要な書類を提出させることができる。
(登録の基準)
第十条 都道府県知事は、左の各号の一に該当する場合を除き、前条第一項の登録をしなければならない。
一 その申請に係る漁船について第三条第一項又は第二項の許可(同条第七項の変更の許可を含む。)を受けなければならない場合において、その許可がないとき。
二 その申請に係る漁船の従事する漁業が、漁業法第五十二条の指定遠洋漁業又は同法第六十五条の規定に基く命令により許可を要する漁業に該当する場合において、その漁業につき、起業の認可又は許可がないとき。
三 その申請に係る事項が虚偽であるとき。
(登録票の交付)
第十一条 都道府県知事は、第九条第一項の登録をしたときは、申請者に登録票を交付しなければならない。
2 前項の規定により登録票の交付を受けた者がその漁船の使用者でないときは、その交付を受けた者は、遅滞なく登録票をその漁船の使用者に交付しなければならない。
(登録票の備えつけ)
第十二条 漁船の使用者は、漁船を運航し、又は操業する場合には、漁船の船内に前条の登録票を備えつけておかなければならない。但し、省令で定める正当な事由がある場合は、この限りでない。
(登録番号の表示)
第十三条 漁船の所有者は、第十一条第一項の規定により登録票の交付を受けたときは、同条第二項の場合を除き、遅滞なく登録票に記載された登録番号を当該漁船に表示しなければならない。同項の規定により登録票の交付を受けた漁船の使用者についても同様とする。
(変更の登録)
第十四条 第九条第一項の登録を受けた漁船の所有者は、その漁船について同条第二項第一号から第四号まで及び第八号から第十三号までに掲げる事項について変更が生じたときは、その変更の生じた日(第二項の場合にあつては同項の通知を受けた日)から二週間以内に、その変更の事由を具してその登録をした都道府県知事に対し変更の登録を申請しなければならない。
2 第九条第一項の登録を受けた漁船の所有者がその漁船の使用者でない場合において、その漁船について同条第二項第八号から第十三号までに掲げる事項に変更を生じたときは、その使用者は、遅滞なくその旨を所有者に通知しなければならない。
3 都道府県知事は、第一項の申請があつたときは、第十条各号の場合を除き、漁船原簿に変更の登録をするとともに、登録票を書き換えて交付しなければならない。
(登録の失効)
第十五条 左に掲げる場合には、漁船の登録は、その効力を失う。
一 登録を受けた漁船が漁船でなくなつたとき。
二 登録を受けた漁船が滅失し、沈没し、又は解てつされたとき。
三 登録を受けた漁船の存否が三箇月間知れないとき。
四 登録を受けた漁船が譲渡されたとき。
五 登録を受けた漁船の主たる根拠地がその登録をした都道府県知事の管轄する都道府県の区域外に変更されたとき。
六 登録を受けた漁船の所有者が死亡し、又は解散したとき。
2 前項第六号の場合において、相続人又は合併により設立した法人若しくは合併後存続する法人が、死亡又は解散の日から一箇月以内に第九条の規定により登録を申請したときは、これに対する登録に関する処分があるまでは、被相続人又は合併により解散した法人についてした登録及びこれらの者に交付した登録票は、その効力を有し、且つ、その登録又は登録票は、その申請人についてし、又は交付したものとみなす。
(登録の取消)
第十六条 都道府県知事は、第九条第一項の登録を受けた漁船が第三条の規定に違反して改造されたとき、又は老朽若しくは破損等のため漁船として使用することができなくなつたと認めるときは、その漁船の登録を取り消すことができる。この場合には、第六条第二項の規定を準用する。
(登録票の返納及び登録番号のまつ消)
第十七条 左に掲げる場合には、漁船の所有者は、遅滞なく、その登録をした都道府県知事に登録票を返納しなければならない。但し、登録票を返納することができない正当な事由がある場合において、事由を具してその旨をその都道府県知事に届け出たときは、その返納をすることを要しない。
一 第十五条の規定により登録がその効力を失つたとき。
二 前条の規定により登録が取り消されたとき。
2 前項各号の場合において、漁船の所有者が漁船の使用者でないときは、その使用者は、遅滞なく、所有者にその登録票を返還しなければならない。
3 第一項各号の場合には、漁船の所有者(漁船の所有者がその使用者でない場合にあつては、その使用者)は、遅滞なく、第十三条の規定によりその漁船に表示された登録番号をまつ消しなければならない。
(登録謄本の交付)
第十八条 何人でも、都道府県知事に対し、漁船の登録の謄本の交付を請求することができる。
(手数料)
第十九条 左の表の上欄に掲げる者は、それぞれ同表下欄に掲げる金額の範囲内において省令で定める額の手数料を納めなければならない。
手数料を納めなければならない者
金額
第九条第一項の登録の申請をする者
二千円
第十四条第一項の変更の登録又は登録票の再交付を申請する者
千円
前条の登録謄本の交付を請求する者
一枚につき五十円
(船舶法の適用除外)
第二十条 漁船については、船舶法(明治三十二年法律第四十六号)第二十一条の規定に基く命令(船舶の積量の測度に関する部分を除く。)を適用しない。
(省令への委任)
第二十一条 この法律に定めるものの外、漁船の登録に関し必要な事項は、省令で定める。
第四章 漁船に関する検査
(依頼検査)
第二十二条 農林大臣は、漁船の所有者(第三条第一項又は第二項の許可を受けた者を含む。)から、その漁船について左に掲げる事項に関する検査を依頼されたときは、設計及び工事の期間中の省令で定める時並びにしゆん工又は改造工事完成の時において、検査を行わなければならない。
一 船体
二 機関
三 漁ろう設備
四 漁獲物の保蔵又は製造の設備
五 電気設備
六 航海測器設備
2 省令で定める場合は、前項の規定にかかわらず、設計及び工事の期間中の検査を省略することができる。
3 第一項の検査においては、その設計、材料、工事及び性能が省令で定める技術基準に適合しているかどうかを検査するものとする。
4 農林大臣は、前項の技術基準を定めるには、中央漁業調整審議会の意見をきかなければならない。
(検査成績)
第二十三条 農林大臣は、前条第一項のしゆん工若しくは改造工事完成の時における検査又は同条第一項に掲げるすべての事項についての検査の結果、同条第三項の技術基準に適合すると認める場合は、その検査に合格したことを証する検査合格証を、その技術基準に適合しないと認める場合は、改善を要すべき事項を記載した検査成績書を申請者に交付しなければならない。
(手数料)
第二十四条 第二十二条第一項の規定により検査を受けようとする者は、検査に要する費用の範囲内において省令で定める額の手数料を納めなければならない。
第五章 漁船に関する試験
(設計及び試験の依頼)
第二十五条 何人でも、漁船又は漁船用機関、漁船用機械その他の漁船用施設(以下この章において「漁船等」という。)に関する設計又は試験を農林大臣に依頼することができる。
(模範設計)
第二十六条 農林大臣は、漁船の改善及び発達に資するため、漁船等に関する模範設計を定めて、これを公表するものとする。
第六章 雑則
(訴願)
第二十七条 第三条第一項に掲げる動力漁船の建造、改造若しくは転用又は漁船の登録に関する処分(第六条の規定による農林大臣の処分を除く。)に不服のある者は、農林大臣に訴願することができる。
2 農林大臣は、前項の訴願の裁決をしようとするときは、あらかじめ、その訴願をした者に対し、期日及び場所を文書をもつて通知し、その訴願をした者又はその代理人が公開の聴聞において意見を述べ、且つ、有利な証拠を提出する機会を与えなければならない。
(立入検査)
第二十八条 農林大臣又は都道府県知事は、第二章又は第三章の規定の施行に関し必要があると認めるときは、その職員に、漁船の所有者若しくは管理者の事務所、漁船の建造若しくは改造の工事の場所、漁船用機関、漁船用機械その他の漁船用施設の製作の場所又は漁船(第三条第一項若しくは第二項の許可に係る建造若しくは改造中の船舶又はその許可の申請に係る改造若しくは転用前の船舶を含む。以下本条において同じ。)に立ち入り、漁船若しくは漁船用機関、漁船用機械その他の漁船用施設又は登録票その他の書類を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証票を携帯し、且つ、関係人の請求があるときは、これを示さなければならない。
3 第一項の立入検査は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
第七章 罰則
第二十九条 第三条第一項、第二項若しくは第七項又は第九条第一項の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
第三十条 左の各号の一に該当する者は、一万円以下の罰金に処する。
一 第七条の規定に違反して報告をせず、又は虚偽の報告をした者
二 第十二条、第十三条、第十四条第一項若しくは第二項又は第十七条の規定に違反した者
三 第二十八条第一項の規定による当該職員の立入又は検査を拒み、妨げ又は忌避した者
第三十一条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が法人又は人の業務に関して前二条の違反行為をしたときは、その法人又は人が、違反の計画を知りその防止に必要な措置を講じなかつたとき、違反行為を知りその是正に必要な措置を講じなかつたとき、又は違反を教唆したときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対し各本条の罰金刑を科する。
附 則
1 この法律施行の期日は、公布の日から起算して三箇月をこえない期間内において、政令で定める。
2 漁船登録規則(昭和二十二年総理庁令・農林省令第五号)は、廃止する。但し、この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
3 この法律施行前に漁船登録規則による登録及び登録票は、この法律の規定による登録及び登録票とみなす。
4 この法律施行前に臨時船舶管理法第八条の規定に基く命令の規定により運輸大臣がした建造又は改造の許可は、この法律の規定の適用については、第三条第一項又は第二項の規定により農林大臣又は都道府県知事がこの法律施行の日においてした建造又は改造の許可とみなす。
5 水産庁設置法(昭和二十三年法律第七十八号)の一部を次のように改正する。
第二条第一号中「(漁船及び漁船用機関の生産及び検査に関するものを除く。)」を削る。
第二条第四号を次のように改める。
四 漁船保険に関する事務を処理すること。
同条同号の次に次の一号を加える。
四の二 漁船の建造、改造又は転用の許可、漁船の登録及び漁船の検査に関する事務を処理すること。
農林大臣 森幸太郎
運輸大臣 大屋晋三
内閣総理大臣 吉田茂