船舶のトン数の測度に関する法律
法令番号: 法律第四十号
公布年月日: 昭和55年5月6日
法令の形式: 法律
船舶のトン数の測度に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和五十五年五月六日
内閣総理大臣臨時代理 国務大臣 倉石忠雄
法律第四十号
船舶のトン数の測度に関する法律
(趣旨)
第一条 この法律は、千九百六十九年の船舶のトン数の測度に関する国際条約(以下「条約」という。)を実施するとともに、海事に関する制度の適正な運営を確保するため、船舶のトン数の測度及び国際トン数証書の交付に関し必要な事項を定めるものとする。
(他の法令との関係)
第二条 船舶のトン数の測度の基準については、他の法律又はこれに基づく命令に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。
(定義)
第三条 この法律において「閉囲場所」とは、外板、仕切り(可動式のものを含む。)若しくは隔壁又は甲板若しくは覆い(天幕を除く。)により閉囲されている船舶内のすべての場所をいう。
2 この法律において「上甲板」とは、外気に面したすべての開口に風雨密閉鎖装置を備えることその他の運輸省令で定める基準に適合する甲板のうち最上層のものをいう。
3 この法律において「貨物積載場所」とは、貨物の運送の用に供される閉囲場所内の場所をいう。
4 この法律において「基準喫水線」とは、船舶安全法(昭和八年法律第十一号)第三条に規定する満載喫水線その他これに相当する喫水線のうち運輸省令で定めるものをいう。
5 この法律において「国際トン数証書」とは、次条第一項の国際総トン数及び第六条第一項の純トン数を記載した証書であつて、この法律の規定に基づき国際航海に従事する長さ二十四メートル以上の日本船舶について交付されるものをいう。
(国際総トン数)
第四条 国際総トン数は、条約及び条約の附属書の規定に従い、主として国際航海に従事する船舶について、その大きさを表すための指標として用いられる指標とする。
2 前項の国際総トン数は、閉囲場所の合計容積を立方メートルで表した数値から除外場所(開口を有する閉囲場所内の場所であつて、当該開口の位置、形態又は大きさが運輸省令で定める基準に該当する場所をいう。以下同じ。)の合計容積を立方メートルで表した数値を控除して得た数値に、当該数値を基準として運輸省令で定める係数を乗じて得た数値にトンを付して表すものとする。
(総トン数)
第五条 総トン数は、我が国における海事に関する制度において、船舶の大きさを表すための主たる指標として用いられる指標とする。
2 前項の総トン数は、前条第二項の規定の例により算定した数値に、当該数値を基準として運輸省令で定める係数を乗じて得た数値にトンを付して表すものとする。
3 二層以上の甲板を備える船舶であつて運輸省令で定めるものについて前項の規定により総トン数の数値を算定する場合においては、同項中「当該数値を基準として運輸省令で定める係数」とあるのは、「当該数値並びに上甲板及び上甲板から第二層にある甲板の位置を基準として運輸省令で定める係数」とする。
(純トン数)
第六条 純トン数は、旅客又は貨物の運送の用に供する場所とされる船舶内の場所の大きさを表すための指標として用いられる指標とする。
2 前項の純トン数は、次に掲げる数値を合算した数値(旅客定員が十三人未満の船舶については、第一号に掲げる数値)にトンを付して表すものとする。
一 貨物積載場所の合計容積を立方メートルで表した数値から当該貨物積載場所に含まれる除外場所の合計容積を立方メートルで表した数値を控除して得た数値に、当該数値並びに上甲板及び基準喫水線の位値を基準として運輸省令で定める係数を乗じて得た数値(その数値が国際総トン数の数値の百分の二十五に満たないときは、当該国際総トン数の数値の百分の二十五に相当する数値)
二 旅客定員の数及び国際総トン数の数値を基準として運輸省令で定めるところにより算定した数値
3 基準喫水線の位置又は旅客定員の数につき運輸省令で定める軽微な変更が行われた場合における純トン数の数値については、運輸省令で、前項に規定する数値の算定の特例を定めることができる。
4 前二項の規定により算定した数値が国際総トン数の数値の百分の三十に満たない場合における純トン数の数値は、これらの規定にかかわらず、当該国際総トン数の数値の百分の三十に相当する数値とする。
(載貨重量トン数)
第七条 載貨重量トン数は、船舶の航行の安全を確保することができる限度内における貨物等の最大積載量を表すための指標として用いられる指標とする。
2 前項の載貨重量トン数は、人又は貨物その他運輸省令で定める物を積載しないものとした場合の船舶の排水量と、比重一・〇二五の水面において基準喫水線に至るまで人又は物を積載するものとした場合の当該船舶の排水量との差をトン(計量法(昭和二十六年法律第二百七号)第六条第一項第二号に規定するトンをいう。)により表すものとする。
(国際トン数証書等)
第八条 長さ二十四メートル以上の日本船舶の船舶所有者(当該船舶が共有されているときは船舶管理人、当該船舶が貸し渡されているときは船舶借入人。以下同じ。)は、運輸大臣から国際トン数証書の交付を受け、これを船舶内に備え置かなければ、当該船舶を国際航海に従事させてはならない。
2 運輸大臣は、前項の船舶について国際トン数証書の交付の申請があつたときは、当該船舶について国際総トン数及び純トン数の測度を行つた後、国際トン数証書を交付するものとする。
3 船舶所有者は、国際トン数証書の記載事項について変更があつたときは、その変更があつた日から二週間以内に、運輸大臣に対し、その書換えを申請しなければならない。
4 第二項の規定は、前項に規定する記載事項の変更が国際総トン数又は純トン数の変更である場合について準用する。
5 船舶所有者は、国際トン数証書が滅失し、若しくは損傷し、又はその識別が困難となつたときは、運輸大臣に対し、その再交付を申請することができる。
6 船舶所有者は、次に掲げる場合には、その事実を知つた日から二週間以内に、国際トン数証書を運輸大臣に返還しなければならない。ただし、国際トン数証書を返還することができない場合において運輸大臣にその旨を届け出たときは、この限りでない。
一 船舶が滅失し、沈没し、又は解撤されたとき。
二 船舶が日本の国籍を喪失したとき。
三 船舶の存否が三箇月間不明になつたとき。
四 船舶が国際航海に従事する船舶でなくなつたとき。
五 船舶が長さ二十四メートル以上の船舶でなくなつたとき。
7 長さ二十四メートル未満の日本船舶の船舶所有者は、当該船舶を国際航海に従事させようとするときは、運輸大臣から国際総トン数及び純トン数を記載した書面(以下「国際トン数確認書」という。)の交付を受けることができる。
8 第二項から第六項までの規定は、国際トン数確認書について準用する。この場合において、第二項、第三項、第五項及び第六項中「国際トン数証書」とあるのは「国際トン数確認書」と、同項第五号中「長さ二十四メートル以上」とあるのは「長さ二十四メートル未満」と読み替えるものとする。
(外国における事務)
第九条 前条に規定する事務は、外国にあつては、日本の領事官が行う。
2 行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)に定めるもののほか、領事官の行う前項の事務に係る処分又はその不作為についての審査請求に関して必要な事項は、政令で定める。
(手数料)
第十条 国際トン数証書又は国際トン数確認書の交付、書換え又は再交付を申請しようとする者(国を除く。)は、実費を勘案して運輸省令で定める額の手数料を国に納めなければならない。
(運輸省令への委任)
第十一条 閉囲場所、貨物積載場所及び除外場所の容積並びに排水量の算定方法その他船舶のトン数の測度に関し必要な事項並びに国際トン数証書及び国際トン数確認書の記載事項並びにこれらの交付、書換え、再交付及び返還に関し必要な事項は、運輸省令で定める。
(立入検査)
第十二条 運輸大臣は、この法律及び条約を実施するため必要な限度において、その職員に、船舶に立ち入り、国際トン数証書(条約の締約国である外国が条約の規定に基づいて交付した国際トン数証書に相当する書面を含む。)、国際トン数確認書その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者にこれを提示しなげればならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(権限の委任)
第十三条 この法律の規定により運輸大臣の権限に属する事項は、運輸省令で定めるところにより、海運局長に行わせることができる。
2 海運局長は、運輸省令で定めるところにより、前項の規定によりその権限に属させられた事項を海運局支局長に行わせることができる。
(罰則)
第十四条 第八条第一項の規定に違反した船舶所有者は、十万円以下の罰金に処する。
第十五条 次の各号の一に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
一 第八条第三項又は第六項(これらの規定を同条第八項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
二 第十二条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第十六条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の刑を科する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、条約が日本国について効力を生ずる日から施行する。
(船舶積量測度法の廃止等)
第二条 船舶積量測度法(大正三年法律第三十四号。以下「旧測度法」という。)は、廃止する。
2 次に掲げる規定の適用については、旧測度法は、この法律の施行後も、なおその効力を有する。
一 船舶の所有者等の責任の制限に関する法律(昭和五十年法律第九十四号)第八条第一項
二 油濁損害賠償保障法(昭和五十年法律第九十五号)第七条
(経過措置)
第三条 この法律の施行前に建造され、又は建造に着手された日本船舶(以下「現存船」という。)に係る総トン数の測度の基準については、第五条の規定にかかわらず、なお従前の例による。ただし、この法律の施行後に運輸省令で定める修繕(以下「特定修繕」という。)が行われた現存船については、この法律の施行後最初に行われる特定修繕に伴う次条の規定による改正後の船舶法(明治三十二年法律第四十六号。以下「新船舶法」という。)及びこれに基づく命令の規定による改測又は測度(これらに相当する処分を含む。)を受ける日(以下「当初改測日」という。)以後は、この限りでない。
2 現存船に係る純トン数の測度の基準については、第六条の規定にかかわらず、なお従前の例による。ただし、次の各号に掲げる現存船については、それぞれ当該各号に定める日以後は、この限りでない。
一 この法律の施行後に特定修繕が行われた現存船(当該特定修繕が行われる日前に次号又は第三号に掲げる現存船となつたものを除く。) 当初改測日
二 国際トン数証書の交付を受ける現存船 第八条第二項の規定による測度を受ける日
三 国際トン数確認書の交付を受ける現存船 第八条第八項において準用する同条第二項の規定による測度を受ける日
3 長さ二十四メートル以上の現存船については、この法律の施行後、条約第十七条(1)の規定により条約が効力を生ずる日から起算して十二年を経過する日(その日前に特定修繕が行われた船舶については、当初改測日)までの間(次項において「猶予期間」という。)は、第八条第一項の規定は、適用しない。
4 前項の規定にかかわらず、同項の船舶の船舶所有者は、猶予期間内においても、国際トン数証書の交付を受けることができる。
(船舶法の一部改正)
第四条 船舶法の一部を次のように改正する。
第四条中「積量」を「総トン数」に改める。
第五条ノ二第二項中「総噸数百噸」を「総トン数百トン」に改める。
第七条及び第九条第一項中「積量」を「総トン数」に改める。
第二十条中「総噸数二十噸」を「総トン数二十トン」に改める。
第二十一条第一項及び第二十一条ノ二中「積量」を「総トン数」に改める。
(船舶法の一部改正に伴う経過措置)
第五条 この法律の施行前に前条の規定による改正前の船舶法第四条若しくは第九条の規定により行われた測度若しくは改測の申請若しくは嘱託又は同法第七条の規定により行われた標示は、それぞれ新船舶法第四条若しくは第九条の規定により行われた測度若しくは改測の申請若しくは嘱託又は新船舶法第七条の規定により行われた標示とみなす。
2 国際航海に従事する長さ二十四メートル以上の現存船に関する新船舶法の規定の適用については、この法律の施行後、条約第十七条(1)の規定により条約が効力を生ずる日から起算して十二年を経過する日(その日前に特定修繕が行われた船舶又は国際トン数証書の交付を受ける船舶については、当初改測日又は第八条第二項の規定による測度を受ける日のいずれか早い日)までの間においては、新船舶法第四条、第七条、第九条第一項、第二十一条第一項及び第二十一条ノ二中「総トン数」とあるのは、「積量」とする。
3 前二項に定めるもののほか、新船舶法の施行に伴い必要となる経過措置は、政令で定める。
(とん税法の一部改正)
第六条 とん税法(昭和三十二年法律第三十七号)の一部を次のように改正する。
第二条第二項を次のように改める。
2 この法律において「純トン数」とは、船舶のトン数の測度に関する法律(昭和五十五年法律第四十号)第六条(純トン数)に規定する純トン数をいう。
第八条(見出しを含む。)及び第九条第一項中「積量」を「純トン数」に改める。
(特別とん税法の一部改正)
第七条 特別とん税法(昭和三十二年法律第三十八号)の一部を次のように改正する。
第六条中「積量」を「純トン数」に改める。
(とん税法及び特別とん税法の一部改正に伴う経過措置)
第八条 前二条の規定による改正後のとん税法及び特別とん税法の規定の適用については、附則第三条第二項の規定により従前の例によることとされる純トン数は、前二条の規定による改正後のとん税法及び特別とん税法に規定する純トン数とみなす。
(地方自治法の一部改正)
第九条 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)の一部を次のように改正する。
別表第三第一号(百五の二)中「基く」を「基づく」に、「積量」を「総トン数」に改める。
(漁船法の一部改正)
第十条 漁船法(昭和二十五年法律第百七十八号)の一部を次のように改正する。
第二十条中「基く」を「基づく」に、「積量」を「総トン数」に改める。
(自衛隊法の一部改正)
第十一条 自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)の一部を次のように改正する。
第百九条第一項中「船舶積量測度法(大正三年法律第三十四号)」を「船舶のトン数の測度に関する法律(昭和五十五年法律第四十号)」に改める。
(運輸省設置法の一部改正)
第十二条 運輸省設置法(昭和二十四年法律第百五十七号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項第十七号、第二十四条第四号及び第四十条第一項第八号中「積量」を「トン数」に改める。
(罰則に関する経過措置)
第十三条 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
内閣総理大臣臨時代理 国務大臣 倉石忠雄
法務大臣 倉石忠雄
外務大臣臨時代理 国務大臣 伊東正義
大蔵大臣 竹下登
農林水産大臣 武藤嘉文
運輸大臣 地崎宇三郎
自治大臣 後藤田正晴