(目的)
第一條 國家公務員に貸與すべき宿舍については、この法律の定めるところによる。
2 この法律の規定は、國家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号、今後同法が改正せられたときは、その改正せられた規定を含む。以下同じ。)のいかなる條項をも廃止し、若しくは修正し、又はこれに代わるものではなく、又、この法律に規定する事項は、同法第二十八條に規定する人事院の勧告事項に含まれるものである。
(定義)
第二條 この法律において「宿舍」とは、國がその事務、事業の円滑な運営に資する目的をもつて、國家公務員及び主としてその收入により生計を維持する者を居住させるため設置する宿舍をいう。
(宿舍審議会)
第三條 この法律の完全な実施を確保し、その目的を達成するため、内閣総理大臣の所轄の下に、宿舍審議会(以下審議会という。)を置く。
2 審議会は、内閣総理大臣の諮問に應じ、左に掲げる事項を調査審議するものとする。
三 第十二條の規定による無料宿舍を貸與する者の範囲
四 第十三條の規定による有料宿舍の一坪当りの使用料の基準
3 有料宿舍は、完全な合理的使用料を徴收して貸與するものであり、國家公務員の報酬の一部として貸與するものではないので、使用料の基準は、主として、同一の大きさ、場所及び條件の民間宿舍に対する法定又は公定の標準家賃、法定又は公定の標準家賃がない場合においては、同一又は類似の地において比較することのできる民間宿舍に対する家賃を考慮して定めるものとする。
4 審議会は、宿舍に関する重要事項について、関係機関に随時意見を述べることができる。
第四條 審議会の委員は、左に掲げる者をもつて充てる。
2 前項第一号及び第七号の委員は、内閣総理大臣が命ずる。
第五條 審議会に会長を置く。会長は、内閣官房次長をもつて充てる。
3 会長に事故があるときは、内閣総理大臣の指名する者が、その職務を代理する。
第六條 審議会は、会長が招集し、その議事は、会長を除く出席委員の過半数で決する。可否同数であるときは、会長の決するところによる。
2 審議会は、委員五人以上の出席がなければ議事を開き議決をすることができない。
第七條 第三條第二項に掲げる事項は、政令で定め、その政令は、審議会の決定に基かなければならない。
(宿舍の管理)
第八條 大藏大臣は、前條の規定による政令の定めるところに從い、宿舍の設置、維持及び管理に関する総合調整の事務をつかさどるものとする。
2 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、法務総裁、各省大臣、最高裁判所長官、会計檢査院長及び人事院総裁(以下各省各廳の長という。)は、大藏大臣の定めるところに從い、宿舍の設置、維持及び管理を行うものとする。
(種類)
第九條 宿舍は、公邸、無料宿舍及び有料宿舍の三種とし、無料宿舍及び有料宿舍には、共同宿舍を含むものとする。
(公邸)
第十條 公邸は、左に掲げる國家公務員のために設置し、無料で貸與する。
第十一條 公邸には、いす、テーブル等公邸に必要とする備品を備え付け、無料で貸與する。
(無料宿舍)
第十二條 無料宿舍は、左に掲げる國家公務員のうち政令で定める者のために設置し、無料で貸與する。
一 本來の職務に伴つて、通常の勤務時間外において、生命若しくは財産を保護するための非常勤務、鉄道若しくは通信施設に関連する非常勤務又はこれらと類似の性質を有する勤務に從事しなければならない者
二 研究又は実驗施設に勤務する者であつて継続的に行うことを必要とする研究又は実驗に直接從事するもの
三 へき地にある官署又は特に隔離された官署に勤務する者
四 官署の管理責任者であつて、その職務を遂行するために官署の構内に居住しなければならないもの
2 無料宿舍は、國家公務員の職務に対する給與の一部として貸與されるものとする。
(有料宿舍)
第十三條 有料宿舍は、左に掲げる場合において、公邸又は無料宿舍の貸與を受ける者以外の國家公務員のために予算の範囲内で設置し、有料で貸與することができる。
一 國家公務員の職務に関連して國の事務、事業の運営に必要と認められる場合。
二 國家公務員の在勤地における住宅不足により國の事務、事業の運営に支障を來たす虞があると認められる場合。
(有料宿舍の使用料)
第十四條 有料宿舍の使用料は、月額とし、政令で定める一坪当りの使用料の基準に基いて、各宿舍につき各省各廳の長が決定する。
2 新たに宿舍の貸與を受け、又はこれを明け渡した場合におけるその月分の使用料は、日割により計算した額とする。
3 有料宿舍の貸與を受けた者に報酬を支給する機関は、毎月報酬を支給する際その者の報酬から使用料に相当する金額を控除して、その金額をその者に代りその使用料として國に拂い込まなければならない。
(有料宿舍の居住者の選定)
第十五條 有料宿舍を貸與する者の選定に当つては、各省各廳の長は、政令で定めるところに從い、國の事務、事業の運営の必要に基き公平に行わなければならない。
(宿舍居住者の保管義務)
第十六條 宿舍の居住者は、必要な注意を拂い、宿舍を正常な状態において維持しなければならない。
(宿舍の修繕費等)
第十七條 公邸の修繕に要する費用及び公邸の使用につき必要とする電氣、水道、ガス等に要する費用は、國が負担する。
2 天災、時の経過その他居住者の責に帰することのできない事由に因り無料宿舍又は有料宿舍がき損又は汚損した場合においては、その修繕に要する費用は、國が負担する。
(費用の負担区分)
第十八條 宿舍の設置、維持及び管理に要する費用並びに宿舍の使用料は、それぞれ宿舍の貸與を受けた者の報酬を支弁する会計の所属とする。
2 國有鉄道事業、通信事業その他事業を企業的に運営する特別会計の負担において設置する宿舍の設置、維持及び管理に要する費用の財源については、一般会計から繰入をしてはならない。
(宿舍の明渡)
第十九條 宿舍の貸與を受けた者が左の各号の一に該当した場合においては、居住者は、速かにその宿舍を明け渡さなければならない。但し、公邸及び無料宿舍にあつては、六十日、有料宿舍にあつては、六月をこえてはならない。
三 轉勤又は轉職によりその宿舍に居住する資格を失い、又はその必要がなくなつたとき。
四 國の事務、事業の運営の必要に基き先順位者が生じたとき。
(施行に関する細目)
第二十條 この法律の施行に関し必要な細目は、大藏大臣が定める。