朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル北海道拓殖銀行法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年三月二十日
內閣總理大臣　侯爵　山縣有朋
大藏大臣　伯爵　松方正義
法律第七十六號
北海道拓殖銀行法
第一章　總則
第一條　北海道拓殖銀行ハ北海道ノ拓殖事業ニ資本ヲ供給スルヲ以テ目的トス
北海道拓殖銀行ハ株式會社トシ其ノ本店ヲ北海道札幌ニ置ク
第二條　北海道拓殖銀行ノ資本金ハ三百萬圓トス但シ政府ノ認可ヲ受ケテ之ヲ增加スルコトヲ得
第三條　北海道拓殖銀行ノ存立時期ハ五十箇年トス但シ政府ノ認可ヲ受ケテ之ヲ延長スルコトヲ得
第二章　重役
第四條　北海道拓殖銀行ニ取締役四人以上監査役三人以上ヲ置ク
第五條　取締役ハ五十株以上ヲ所有スル株主中ヨリ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ其ノ任期ヲ三箇年トス
監査役ハ三十株以上ヲ所有スル株主中ヨリ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ其ノ任期ヲ二箇年トス
第六條　取締役ハ在任中何等ノ名稱ニ拘ラス他ノ職務ニ從事スルコトヲ得ス
第三章　營業
第七條　北海道拓殖銀行ハ左ノ事業ヲ營ムモノトス
一　三十箇年以內ニ於テ年賦償還ノ方法ニ依リ不動產ヲ抵當トスル貸付
二　五箇年以內ニ於テ定期償還ノ方法ニ依リ不動產ヲ抵當トスル貸付
三　北海道ノ拓殖ヲ目的トスル株式會社ノ株券債券ヲ質トスル貸付及其ノ社債券ノ應募、引受
四　北海道ノ農產物ヲ擔保トスル貸付及荷爲替
五　預リ金及保護預リ
前項第三號ノ事業ニ使用スヘキ金額ハ前項第一號及第二號ニ依ル貸付金總高ノ五分ノ一ヲ超過スルコトヲ得ス
第八條　北海道區町村制ヲ施行セル區町村及其ノ他法律ヲ以テ組織セル北海道ノ公共團體ニ對シ北海道拓殖銀行ハ無擔保ニテ年賦若ハ定期償還ノ方法ニ依リ貸付ヲ爲スコトヲ得
第九條　北海道拓殖銀行ハ營業上餘裕金アルトキハ國債證券地方債證券又ハ社債券ヲ買入ルルコトヲ得
第十條　北海道拓殖銀行ハ此ノ法律ニ記載セサル業務ヲ營ムコトヲ得ス
第十一條　北海道拓殖銀行ハ第七條第一號及第二號ノ貸付ヲ爲シタル場合ニ於テ債務者カ貸付ノ目的ニ反シ貸付金ヲ使用シタルトキハ償還期限前ト雖其ノ貸付金全部ノ償還ヲ要求スルコトヲ得
第四章　債券
第十二條　北海道拓殖銀行ハ拂込資本金額ノ五倍ヲ限リ債券ヲ發行スルコトヲ得但シ第七條第一號ニ依ル貸付金總高ヲ超過スルコトヲ得ス
第十三條　北海道拓殖銀行ハ第七條第一號ニ依ル貸付金ノ償還高ニ應シ每年二囘以上抽籤ヲ以テ其ノ債券ヲ償還スヘシ
第十四條　北海道拓殖銀行ハ第七條第一號ニ依ル貸付金ノ償還延滯シテ豫期ノ金額ニ達セサルトキハ前條ト同時期ニ抽籤ヲ以テ延滯金額ニ相當スル債券ヲ償還スヘシ
第十五條　北海道拓殖銀行ハ債券借換ノ爲一時第十二條ノ制限ニ依ラス低利ノ債券ヲ發行スルコトヲ得
低利ノ債券ヲ發行シタルトキハ發行後一箇月以內ニ抽籤ヲ以テ其ノ發行券面金額ニ相當スル舊債券ヲ償還スヘシ
第五章　準備金
第十六條　北海道拓殖銀行ハ每營業年度準備金トシテ資本ノ缺損ヲ補フ爲利益ノ百分ノ八以上ヲ積立テ及利益配當ノ平均ヲ得セシムル爲利益ノ百分ノ二以上ヲ積立ツヘシ
第六章　政府ノ監督及補助
第十七條　政府ハ北海道拓殖銀行ノ業務ヲ監督ス
第十八條　北海道拓殖銀行ハ其ノ定款ヲ變更セントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第十九條　北海道拓殖銀行ハ株主ニ配當金ノ分配ヲ爲サントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第二十條　北海道拓殖銀行ハ第七條第一號ノ貸付金利子ニ付每營業年度ノ初ニ於テ主務大臣ノ認可ヲ經テ其ノ最高步合ヲ定ムヘシ其ノ營業年度內ニ於テ之ヲ變更セントスルトキ亦同シ
第二十一條　主務大臣ハ北海道拓殖銀行ノ營業上法律命令又ハ定款ニ背戾シ若ハ公益ヲ害スル事件アリト認ムルトキハ之ヲ制止スヘシ
第二十二條　北海道拓殖銀行ハ主務大臣ノ命令ニ從ヒ其ノ營業ニ關スル諸般ノ景況及計算報吿書ヲ差出スヘシ
第二十三條　政府ハ北海道拓殖銀行監理官ヲ置キ主務大臣ノ指揮ヲ承ケテ北海道拓殖銀行ノ業務ヲ監視セシム
第二十四條　北海道拓殖銀行監理官ハ何時ニテモ北海道拓殖銀行ノ金庫、券書庫、帳簿及諸般ノ文書ヲ檢査スルコトヲ得
北海道拓殖銀行監理官ハ監視上必要ナリト認ムルトキハ何時ニテモ北海道拓殖銀行ニ命シテ營業ニ關スル諸般ノ景況及計算報吿書ヲ差出サシムルコトヲ得
北海道拓殖銀行監理官ハ株主總會其ノ他諸般ノ會議ニ出席シテ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第二十五條　政府ハ百萬圓ヲ限度トシ北海道拓殖銀行ノ株式ヲ引受クヘシ
第二十六條　前條ニ依リ政府ノ引受ケタル株式ニ對シテハ北海道拓殖銀行ハ其ノ創立初期ノ末日ヨリ十箇年間ハ利益配當ヲ爲スコトヲ要セス
第七章　罰則
第二十七條　北海道拓殖銀行ニ於テ左ノ事犯アルトキハ取締役ヲ百圓以上千圓以下ノ過料ニ處ス
一　第十條ノ規定ニ反シ此ノ法律ニ記載セサル業務ヲ營ミタルトキ
二　第十二條ノ規定ニ反シ債券ヲ發行シタルトキ但シ第十五條第一項ニ依レルモノハ此ノ限ニアラス
三　第十三條第十四條及第十五條第二項ノ規定ニ反シ債券ノ償還ヲ爲ササルトキ
四　本法ニ於テ認可ヲ受クヘキ場合ニ其ノ認可ヲ受ケサルトキ
第二十八條　北海道拓殖銀行ノ取締役第六條ノ規定ヲ犯シタルトキハ二十圓以上二百圓以下ノ過料ニ處ス
第二十九條　北海道拓殖銀行ノ發行スル債券ヲ僞造又ハ變造シテ行使シタル者ハ刑法第二百四條ノ例ニ依リ處罰ス其ノ模造ニ關シテハ明治二十八年法律第二十八號通貨及證券模造取締法ニ依リ處分ス
附　則
第三十條　主務大臣ハ北海道拓殖銀行設立委員ヲ置キ北海道拓殖銀行ノ設立ニ關スル一切ノ事務ヲ處理セシム
第三十一條　設立委員ハ定款ヲ作リ主務大臣ノ認可ヲ受ケタル後株主ヲ募集ス
第三十二條　設立委員ハ株主ノ募集ヲ終リタルトキハ株式申込證ヲ主務大臣ニ提出シ銀行設立ノ認可ヲ稟請スヘシ
前項ノ認可ヲ受ケタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク各株式ニ付第一囘ノ拂込ヲ爲サシムルコトヲ要ス
第三十三條　創立總會終結シタルトキハ設立委員ハ其ノ事務ヲ北海道拓殖銀行取締役ニ引渡スヘシ
第三十四條　北海道拓殖銀行ニ關シ此ノ法律ニ規定セサル事項ハ明治二十三年法律第七十二號銀行條例ヲ適用ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル北海道拓殖銀行法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年三月二十日
内閣総理大臣　侯爵　山県有朋
大蔵大臣　伯爵　松方正義
法律第七十六号
北海道拓殖銀行法
第一章　総則
第一条　北海道拓殖銀行ハ北海道ノ拓殖事業ニ資本ヲ供給スルヲ以テ目的トス
北海道拓殖銀行ハ株式会社トシ其ノ本店ヲ北海道札幌ニ置ク
第二条　北海道拓殖銀行ノ資本金ハ三百万円トス但シ政府ノ認可ヲ受ケテ之ヲ増加スルコトヲ得
第三条　北海道拓殖銀行ノ存立時期ハ五十箇年トス但シ政府ノ認可ヲ受ケテ之ヲ延長スルコトヲ得
第二章　重役
第四条　北海道拓殖銀行ニ取締役四人以上監査役三人以上ヲ置ク
第五条　取締役ハ五十株以上ヲ所有スル株主中ヨリ株主総会ニ於テ之ヲ選任シ其ノ任期ヲ三箇年トス
監査役ハ三十株以上ヲ所有スル株主中ヨリ株主総会ニ於テ之ヲ選任シ其ノ任期ヲ二箇年トス
第六条　取締役ハ在任中何等ノ名称ニ拘ラス他ノ職務ニ従事スルコトヲ得ス
第三章　営業
第七条　北海道拓殖銀行ハ左ノ事業ヲ営ムモノトス
一　三十箇年以内ニ於テ年賦償還ノ方法ニ依リ不動産ヲ抵当トスル貸付
二　五箇年以内ニ於テ定期償還ノ方法ニ依リ不動産ヲ抵当トスル貸付
三　北海道ノ拓殖ヲ目的トスル株式会社ノ株券債券ヲ質トスル貸付及其ノ社債券ノ応募、引受
四　北海道ノ農産物ヲ担保トスル貸付及荷為替
五　預リ金及保護預リ
前項第三号ノ事業ニ使用スヘキ金額ハ前項第一号及第二号ニ依ル貸付金総高ノ五分ノ一ヲ超過スルコトヲ得ス
第八条　北海道区町村制ヲ施行セル区町村及其ノ他法律ヲ以テ組織セル北海道ノ公共団体ニ対シ北海道拓殖銀行ハ無担保ニテ年賦若ハ定期償還ノ方法ニ依リ貸付ヲ為スコトヲ得
第九条　北海道拓殖銀行ハ営業上余裕金アルトキハ国債証券地方債証券又ハ社債券ヲ買入ルルコトヲ得
第十条　北海道拓殖銀行ハ此ノ法律ニ記載セサル業務ヲ営ムコトヲ得ス
第十一条　北海道拓殖銀行ハ第七条第一号及第二号ノ貸付ヲ為シタル場合ニ於テ債務者カ貸付ノ目的ニ反シ貸付金ヲ使用シタルトキハ償還期限前ト雖其ノ貸付金全部ノ償還ヲ要求スルコトヲ得
第四章　債券
第十二条　北海道拓殖銀行ハ払込資本金額ノ五倍ヲ限リ債券ヲ発行スルコトヲ得但シ第七条第一号ニ依ル貸付金総高ヲ超過スルコトヲ得ス
第十三条　北海道拓殖銀行ハ第七条第一号ニ依ル貸付金ノ償還高ニ応シ毎年二回以上抽籤ヲ以テ其ノ債券ヲ償還スヘシ
第十四条　北海道拓殖銀行ハ第七条第一号ニ依ル貸付金ノ償還延滞シテ予期ノ金額ニ達セサルトキハ前条ト同時期ニ抽籤ヲ以テ延滞金額ニ相当スル債券ヲ償還スヘシ
第十五条　北海道拓殖銀行ハ債券借換ノ為一時第十二条ノ制限ニ依ラス低利ノ債券ヲ発行スルコトヲ得
低利ノ債券ヲ発行シタルトキハ発行後一箇月以内ニ抽籤ヲ以テ其ノ発行券面金額ニ相当スル旧債券ヲ償還スヘシ
第五章　準備金
第十六条　北海道拓殖銀行ハ毎営業年度準備金トシテ資本ノ欠損ヲ補フ為利益ノ百分ノ八以上ヲ積立テ及利益配当ノ平均ヲ得セシムル為利益ノ百分ノ二以上ヲ積立ツヘシ
第六章　政府ノ監督及補助
第十七条　政府ハ北海道拓殖銀行ノ業務ヲ監督ス
第十八条　北海道拓殖銀行ハ其ノ定款ヲ変更セントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第十九条　北海道拓殖銀行ハ株主ニ配当金ノ分配ヲ為サントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第二十条　北海道拓殖銀行ハ第七条第一号ノ貸付金利子ニ付毎営業年度ノ初ニ於テ主務大臣ノ認可ヲ経テ其ノ最高歩合ヲ定ムヘシ其ノ営業年度内ニ於テ之ヲ変更セントスルトキ亦同シ
第二十一条　主務大臣ハ北海道拓殖銀行ノ営業上法律命令又ハ定款ニ背戻シ若ハ公益ヲ害スル事件アリト認ムルトキハ之ヲ制止スヘシ
第二十二条　北海道拓殖銀行ハ主務大臣ノ命令ニ従ヒ其ノ営業ニ関スル諸般ノ景況及計算報告書ヲ差出スヘシ
第二十三条　政府ハ北海道拓殖銀行監理官ヲ置キ主務大臣ノ指揮ヲ承ケテ北海道拓殖銀行ノ業務ヲ監視セシム
第二十四条　北海道拓殖銀行監理官ハ何時ニテモ北海道拓殖銀行ノ金庫、券書庫、帳簿及諸般ノ文書ヲ検査スルコトヲ得
北海道拓殖銀行監理官ハ監視上必要ナリト認ムルトキハ何時ニテモ北海道拓殖銀行ニ命シテ営業ニ関スル諸般ノ景況及計算報告書ヲ差出サシムルコトヲ得
北海道拓殖銀行監理官ハ株主総会其ノ他諸般ノ会議ニ出席シテ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第二十五条　政府ハ百万円ヲ限度トシ北海道拓殖銀行ノ株式ヲ引受クヘシ
第二十六条　前条ニ依リ政府ノ引受ケタル株式ニ対シテハ北海道拓殖銀行ハ其ノ創立初期ノ末日ヨリ十箇年間ハ利益配当ヲ為スコトヲ要セス
第七章　罰則
第二十七条　北海道拓殖銀行ニ於テ左ノ事犯アルトキハ取締役ヲ百円以上千円以下ノ過料ニ処ス
一　第十条ノ規定ニ反シ此ノ法律ニ記載セサル業務ヲ営ミタルトキ
二　第十二条ノ規定ニ反シ債券ヲ発行シタルトキ但シ第十五条第一項ニ依レルモノハ此ノ限ニアラス
三　第十三条第十四条及第十五条第二項ノ規定ニ反シ債券ノ償還ヲ為ササルトキ
四　本法ニ於テ認可ヲ受クヘキ場合ニ其ノ認可ヲ受ケサルトキ
第二十八条　北海道拓殖銀行ノ取締役第六条ノ規定ヲ犯シタルトキハ二十円以上二百円以下ノ過料ニ処ス
第二十九条　北海道拓殖銀行ノ発行スル債券ヲ偽造又ハ変造シテ行使シタル者ハ刑法第二百四条ノ例ニ依リ処罰ス其ノ模造ニ関シテハ明治二十八年法律第二十八号通貨及証券模造取締法ニ依リ処分ス
附　則
第三十条　主務大臣ハ北海道拓殖銀行設立委員ヲ置キ北海道拓殖銀行ノ設立ニ関スル一切ノ事務ヲ処理セシム
第三十一条　設立委員ハ定款ヲ作リ主務大臣ノ認可ヲ受ケタル後株主ヲ募集ス
第三十二条　設立委員ハ株主ノ募集ヲ終リタルトキハ株式申込証ヲ主務大臣ニ提出シ銀行設立ノ認可ヲ稟請スヘシ
前項ノ認可ヲ受ケタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク各株式ニ付第一回ノ払込ヲ為サシムルコトヲ要ス
第三十三条　創立総会終結シタルトキハ設立委員ハ其ノ事務ヲ北海道拓殖銀行取締役ニ引渡スヘシ
第三十四条　北海道拓殖銀行ニ関シ此ノ法律ニ規定セサル事項ハ明治二十三年法律第七十二号銀行条例ヲ適用ス