国家公務員倫理法
法令番号: 法律第百二十九号
公布年月日: 平成11年8月13日
法令の形式: 法律
国家公務員倫理法をここに公布する。
御名御璽
平成十一年八月十三日
内閣総理大臣 小渕恵三
法律第百二十九号
国家公務員倫理法
目次
第一章
総則(第一条―第四条)
第二章
国家公務員倫理規程(第五条)
第三章
贈与等の報告及び公開(第六条―第九条)
第四章
国家公務員倫理審査会(第十条―第三十八条)
第五章
倫理監督官(第三十九条)
第六章
雑則(第四十条―第四十六条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、国家公務員が国民全体の奉仕者であってその職務は国民から負託された公務であることにかんがみ、国家公務員の職務に係る倫理の保持に資するため必要な措置を講ずることにより、職務の執行の公正さに対する国民の疑惑や不信を招くような行為の防止を図り、もって公務に対する国民の信頼を確保することを目的とする。
(定義等)
第二条 この法律(第二十一条第二項及び第四十二条第一項を除く。)において、「職員」とは、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第二条第二項に規定する一般職に属する国家公務員(委員、顧問若しくは参与の職にある者又は人事院の指定するこれらに準ずる職にある者で常勤を要しないものを除く。)をいう。
2 この法律において、「本省課長補佐級以上の職員」とは、次に掲げる職員をいう。
一 一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九十五号。以下「一般職給与法」という。)の適用を受ける職員であって、次に掲げるもの(トからヌまでに掲げるものについては、一般職給与法第十条の二第一項の規定による俸給の特別調整額の支給を受ける者に限る。)
イ 一般職給与法別表第一イ行政職俸給表(一)の職務の級七級以上の職員
ロ 一般職給与法別表第二専門行政職俸給表の職務の級四級以上の職員
ハ 一般職給与法別表第三税務職俸給表の職務の級七級以上の職員
ニ 一般職給与法別表第四イ公安職俸給表(一)の職務の級七級以上の職員
ホ 一般職給与法別表第四ロ公安職俸給表(二)の職務の級七級以上の職員
ヘ 一般職給与法別表第五イ海事職俸給表(一)の職務の級五級以上の職員
ト 一般職給与法別表第六イ教育職俸給表(一)の職務の級四級以上の職員
チ 一般職給与法別表第六ロ教育職俸給表(二)の職務の級三級以上の職員
リ 一般職給与法別表第六ハ教育職俸給表(三)の職務の級三級以上の職員
ヌ 一般職給与法別表第六ニ教育職俸給表(四)の職務の級三級以上の職員
ル 一般職給与法別表第七研究職俸給表の職務の級四級以上の職員
ヲ 一般職給与法別表第八イ医療職俸給表(一)の職務の級三級以上の職員
ワ 一般職給与法別表第八ロ医療職俸給表(二)の職務の級六級以上の職員
カ 一般職給与法別表第八ハ医療職俸給表(三)の職務の級六級以上の職員
ヨ 一般職給与法別表第九指定職俸給表の適用を受ける職員
二 一般職の任期付研究員の採用、給与及び勤務時間の特例に関する法律(平成九年法律第六十五号。以下「任期付研究員法」という。)第六条第一項に規定する俸給表の適用を受ける職員
三 国の経営する企業に勤務する職員の給与等に関する特例法(昭和二十九年法律第百四十一号)の適用を受ける職員であって、その職務と責任が第一号に掲げる職員に相当するものとして主務大臣(同法第四条に規定する主務大臣をいう。)が定めるもの
四 検察官の俸給等に関する法律(昭和二十三年法律第七十六号。以下「検察官俸給法」という。)の適用を受ける職員であって、次に掲げるもの
イ 検事総長、次長検事及び検事長
ロ 検察官俸給法別表検事の項十七号の俸給月額以上の俸給を受ける検事
ハ 検察官俸給法別表副検事の項十一号の俸給月額以上の俸給を受ける副検事
3 この法律において、「指定職以上の職員」とは、次に掲げる職員をいう。
一 一般職給与法別表第九指定職俸給表の適用を受ける職員
二 任期付研究員法第六条第一項に規定する俸給表の適用を受ける職員であって、同表四号俸の俸給月額以上の俸給を受けるもの
三 検察官俸給法の適用を受ける職員であって、次に掲げるもの
イ 検事総長、次長検事及び検事長
ロ 検察官俸給法別表検事の項八号の俸給月額以上の俸給を受ける検事
ハ 検察官俸給法第九条に定める俸給月額の俸給又は検察官俸給法別表副検事の項一号の俸給月額の俸給を受ける副検事
4 この法律において、「本省審議官級以上の職員」とは、次に掲げる職員をいう。
一 一般職給与法別表第九指定職俸給表の適用を受ける職員であって、同表四号俸の俸給月額以上の俸給を受けるもの
二 検察官俸給法の適用を受ける職員であって、次に掲げるもの
イ 検事総長、次長検事及び検事長
ロ 検察官俸給法別表検事の項五号の俸給月額以上の俸給を受ける検事
5 この法律において、「事業者等」とは、法人(法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものを含む。)その他の団体及び事業を行う個人(当該事業の利益のためにする行為を行う場合における個人に限る。)をいう。
6 この法律の規定の適用については、事業者等の利益のためにする行為を行う場合における役員、従業員、代理人その他の者は、前項の事業者等とみなす。
(職員が遵守すべき職務に係る倫理原則)
第三条 職員は、国民全体の奉仕者であり、国民の一部に対してのみの奉仕者ではないことを自覚し、職務上知り得た情報について国民の一部に対してのみ有利な取扱いをする等国民に対し不当な差別的取扱いをしてはならず、常に公正な職務の執行に当たらなければならない。
2 職員は、常に公私の別を明らかにし、いやしくもその職務や地位を自らや自らの属する組織のための私的利益のために用いてはならない。
3 職員は、法律により与えられた権限の行使に当たっては、当該権限の行使の対象となる者からの贈与等を受けること等の国民の疑惑や不信を招くような行為をしてはならない。
(国会報告)
第四条 内閣は、毎年、国会に、職員の職務に係る倫理の保持に関する状況及び職員の職務に係る倫理の保持に関して講じた施策に関する報告書を提出しなければならない。
第二章 国家公務員倫理規程
第五条 内閣は、第三条に掲げる倫理原則を踏まえ、職員の職務に係る倫理の保持を図るために必要な事項に関する政令(以下「国家公務員倫理規程」という。)を定めるものとする。この場合において、国家公務員倫理規程には、職員の職務に利害関係を有する者からの贈与等の禁止及び制限等職員の職務に利害関係を有する者との接触その他国民の疑惑や不信を招くような行為の防止に関し職員の遵守すべき事項が含まれていなければならない。
2 内閣は、国家公務員倫理規程の制定又は改廃に際しては、国家公務員倫理審査会の意見を聴かなければならない。
3 各省各庁の長(内閣総理大臣、各省大臣、会計検査院長、人事院総裁、内閣法制局長官及び警察庁長官並びに各外局の長をいう。以下同じ。)は、国家公務員倫理審査会の同意を得て、当該各省各庁に属する職員の職務に係る倫理に関する訓令を定めることができる。
4 内閣は、国家公務員倫理規程及び前項の訓令の制定又は改廃があったときは、これを国会に報告しなければならない。
第三章 贈与等の報告及び公開
(贈与等の報告)
第六条 本省課長補佐級以上の職員は、事業者等から、金銭、物品その他の財産上の利益の供与若しくは供応接待(以下「贈与等」という。)を受けたとき又は事業者等と職員の職務との関係に基づいて提供する人的役務に対する報酬として国家公務員倫理規程で定める報酬の支払を受けたとき(当該贈与等を受けた時又は当該報酬の支払を受けた時において本省課長補佐級以上の職員であった場合に限り、かつ、当該贈与等により受けた利益又は当該支払を受けた報酬の価額が一件につき五千円を超える場合に限る。)は、一月から三月まで、四月から六月まで、七月から九月まで及び十月から十二月までの各区分による期間(以下「四半期」という。)ごとに、次に掲げる事項を記載した贈与等報告書を、当該四半期の翌四半期の初日から十四日以内に、各省各庁の長又はその委任を受けた者に提出しなければならない。
一 当該贈与等により受けた利益又は当該支払を受けた報酬の価額
二 当該贈与等により利益を受け又は当該報酬の支払を受けた年月日及びその基因となった事実
三 当該贈与等をした事業者等又は当該報酬を支払った事業者等の名称及び住所
四 前三号に掲げるもののほか国家公務員倫理規程で定める事項
2 各省各庁の長又はその委任を受けた者は、前項の規定により贈与等報告書の提出を受けたときは、当該贈与等報告書(指定職以上の職員に係るものに限り、かつ、第九条第二項ただし書に規定する事項に係る部分を除く。)の写しを国家公務員倫理審査会に送付しなければならない。
(株取引等の報告)
第七条 本省審議官級以上の職員は、前年において行った株券等(株券(端株券を含む。)、新株引受権を表示する証券若しくは証書、転換社債券又は新株引受権付社債券をいう。以下この項において同じ。)の取得又は譲渡(本省審議官級以上の職員である間に行ったものに限る。以下「株取引等」という。)について、当該株取引等に係る株券等の種類、銘柄、数及び対価の額並びに当該株取引等の年月日を記載した株取引等報告書を、毎年、三月一日から同月三十一日までの間に、各省各庁の長又はその委任を受けた者に提出しなければならない。
2 各省各庁の長又はその委任を受けた者は、前項の規定により株取引等報告書の提出を受けたときは、当該株取引等報告書の写しを国家公務員倫理審査会に送付しなければならない。
(所得等の報告)
第八条 本省審議官級以上の職員(前年一年間を通じて本省審議官級以上の職員であったものに限る。)は、次に掲げる金額及び課税価格を記載した所得等報告書を、毎年、三月一日から同月三十一日までの間に、各省各庁の長又はその委任を受けた者に提出しなければならない。
一 前年分の所得について同年分の所得税が課される場合における当該所得に係る次に掲げる金額(当該金額が百万円を超える場合にあっては、当該金額及びその基因となった事実)
イ 総所得金額(所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第二十二条第二項に規定する総所得金額をいう。)及び山林所得金額(同条第三項に規定する山林所得金額をいう。)に係る各種所得の金額(同法第二条第一項第二十二号に規定する各種所得の金額をいう。以下同じ。)
ロ 各種所得の金額(退職所得の金額(所得税法第三十条第二項に規定する退職所得の金額をいう。)及び山林所得の金額(同法第三十二条第三項に規定する山林所得の金額をいう。)を除く。)のうち、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)の規定により、所得税法第二十二条の規定にかかわらず、他の所得と区分して計算される所得の金額
二 前年中において贈与により取得した財産について同年分の贈与税が課される場合における当該財産に係る贈与税の課税価格(相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)第二十一条の二に規定する贈与税の課税価格をいう。)
2 前項の所得等報告書の提出は、納税申告書(国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)第二条第六号に規定する納税申告書をいう。以下同じ。)の写しを提出することにより行うことができる。この場合において、同項第一号イ又はロに掲げる金額が百万円を超えるときは、その基因となった事実を当該納税申告書の写しに付記しなければならない。
3 各省各庁の長又はその委任を受けた者は、第一項の所得等報告書又は前項の納税申告書の写し(以下「所得等報告書等」という。)の提出を受けたときは、当該所得等報告書等の写しを国家公務員倫理審査会に送付しなければならない。
(報告書の保存及び閲覧)
第九条 前三条の規定により提出された贈与等報告書、株取引等報告書及び所得等報告書等は、これらを受理した各省各庁の長又はその委任を受けた者において、これらを提出すべき期間の末日の翌日から起算して五年を経過する日まで保存しなければならない。
2 何人も、各省各庁の長又はその委任を受けた者に対し、前項の規定により保存されている贈与等報告書(贈与等により受けた利益又は支払を受けた報酬の価額が一件につき二万円を超える部分に限る。)の閲覧を請求することができる。ただし、次の各号のいずれかに該当するものとしてあらかじめ国家公務員倫理審査会が認めた事項に係る部分については、この限りでない。
一 公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあるもの
二 公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるもの
第四章 国家公務員倫理審査会
(設置)
第十条 人事院に、国家公務員倫理審査会(以下「審査会」という。)を置く。
(所掌事務及び権限)
第十一条 審査会の所掌事務及び権限は、第五条第三項、第九条第二項ただし書、第三十九条第二項、第四十条第三項及び第五項並びに第四十二条第三項に定めるもののほか、次のとおりとする。
一 国家公務員倫理規程の制定又は改廃に関して、案をそなえて、内閣に意見を申し出ること。
二 この法律又はこの法律に基づく命令(第五条第三項の規定に基づく訓令を含む。以下同じ。)に違反した場合に係る懲戒処分の基準の作成及び変更に関すること。
三 職員の職務に係る倫理の保持に関する事項に係る調査研究及び企画を行うこと。
四 職員の職務に係る倫理の保持のための研修に関する総合的企画及び調整を行うこと。
五 国家公務員倫理規程の遵守のための体制整備に関し、各省各庁の長に指導及び助言を行うこと。
六 贈与等報告書、株取引等報告書及び所得等報告書等の審査を行うこと。
七 この法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為に関し、任命権者(国家公務員法第五十五条第一項に規定する任命権者及び法律で別に定められた任命権者並びにその委任を受けた者をいう。以下同じ。)に対し、調査を求め、その経過につき報告を求め及び意見を述ベ、その行う懲戒処分につき承認をし、並びにその懲戒処分の概要の公表について意見を述べること。
八 国家公務員法第十七条の二の規定により委任を受けた権限により調査を行うこと。
九 任命権者に対し、職員の職務に係る倫理の保持を図るため監督上必要な措置を講ずるよう求めること。
十 国家公務員法第八十四条の二の規定により委任を受けた権限により職員を懲戒手続に付し、及び懲戒処分の概要の公表をすること。
十一 前各号に掲げるもののほか、法律又は法律に基づく命令に基づき審査会に属させられた事務及び権限
(職権の行使)
第十二条 審査会の会長及び委員は、独立してその職権を行う。
(組織)
第十三条 審査会は、会長及び委員四人をもって組織する。
2 会長及び委員は、非常勤とすることができる。
3 会長は、会務を総理し、審査会を代表する。
4 会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。
(会長及び委員の任命)
第十四条 会長及び次項に規定する委員以外の委員は、人格が高潔であり、職員の職務に係る倫理の保持に関し公正な判断をすることができ、法律又は社会に関する学識経験を有する者であって、かつ、職員(検察官及び国立大学の教員を除く。)としての前歴を有する者についてはその在職期間が二十年を超えないもののうちから、両議院の同意を得て、内閣が任命する。
2 委員のうち一人は、人事官のうちから、内閣が任命する者をもって充てる。
3 会長又は前項に規定する委員以外の委員の任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣は、第一項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから、会長又は前項に規定する委員以外の委員を任命することができる。
4 前項の場合においては、任命後最初の国会において両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認を得られないときは、内閣は、直ちに、その会長又は第二項に規定する委員以外の委員を罷免しなければならない。
(会長及び委員の任期)
第十五条 会長及び委員の任期は、四年とする。
2 人事官としての残任期間が四年に満たない場合における前条第二項に規定する委員の任期は、前項の規定にかかわらず、当該残任期間とする。
3 補欠の会長及び委員の任期は、前任者の残任期間とする。
4 会長及び委員は、再任されることができる。
5 会長及び委員の任期が満了したときは、当該会長及び委員は、後任者が任命されるまで引き続きその職務を行うものとする。
(身分保障)
第十六条 会長又は委員(第十四条第二項に規定する委員を除く。以下この条、次条、第十八条第二項及び第三項並びに第十九条において同じ。)は、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、在任中、その意に反して罷免されることがない。
一 破産の宣告を受けたとき。
二 禁錮以上の刑に処せられたとき。
三 審査会により、心身の故障のため職務の執行ができないと認められたとき、又は職務上の義務違反その他会長若しくは委員たるに適しない非行があると認められたとき。
(罷免)
第十七条 内閣は、会長又は委員が前条各号のいずれかに該当するときは、その会長又は委員を罷免しなければならない。
(服務)
第十八条 会長及び委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。
2 会長及び委員は、在任中、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。
3 常勤の会長及び常勤の委員は、在任中、営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行い、又は内閣の許可のある場合を除くほか、報酬を得て他の職務に従事してはならない。
(給与)
第十九条 会長及び委員の給与は、別に法律で定める。
(会議)
第二十条 審査会は、会長が招集する。
2 審査会は、会長及び二人以上の委員の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができない。
3 審査会の議事は、出席者の過半数でこれを決し、可否同数のときは、会長の決するところによる。
4 会長に事故がある場合の第二項の規定の適用については、第十三条第四項に規定する委員は、会長とみなす。
(事務局)
第二十一条 審査会の事務を処理させるため、審査会に事務局を置く。
2 事務局に事務局長及び所要の職員を置く。
3 事務局長は、会長の命を受けて、局務を掌理する。
4 審査会の事務に従事する者は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。
(調査の端緒に係る任命権者の報告)
第二十二条 任命権者は、職員にこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為を行った疑いがあると思料するときは、その旨を審査会に報告しなければならない。
(任命権者による調査)
第二十三条 任命権者は、職員にこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為を行った疑いがあると思料して当該行為に関して調査を行おうとするときは、審査会にその旨を通知しなければならない。
2 審査会は、任命権者に対し、前項の調査の経過について、報告を求め、又は意見を述べることができる。
3 任命権者は、第一項の調査を終了したときは、遅滞なく、審査会に対し、当該調査の結果を報告しなければならない。
(任命権者に対する調査の要求等)
第二十四条 審査会は、職員にこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為を行った疑いがあると思料するときは、任命権者に対し、当該行為に関する調査を行うよう求めることができる。
2 前条第二項及び第三項の規定は、前項の調査について準用する。
(共同調査)
第二十五条 審査会は、第二十三条第二項(前条第二項において準用する場合を含む。)の規定により報告を受けた場合において必要があると認めるときは、この法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為に関し、当該任命権者と共同して調査を行うことができる。この場合においては、審査会は、当該任命権者に対し、共同して調査を行う旨を通知しなければならない。
(任命権者による懲戒)
第二十六条 任命権者は、職員にこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為があることを理由として懲戒処分を行おうとするときは、あらかじめ、審査会の承認を得なければならない。
(任命権者による懲戒処分の概要の公表)
第二十七条 任命権者は、職員にこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為があることを理由として懲戒処分を行った場合において、職員の職務に係る倫理の保持を図るため特に必要があると認めるときは、当該懲戒処分の概要の公表(第七条第一項の株取引等報告書中の当該懲戒処分に係る株取引等についての部分の公表を含む。以下同じ。)をすることができる。
2 審査会は、任命権者が前項の懲戒処分を行った場合において、特に必要があると認めるときは、当該任命権者に対し、当該懲戒処分の概要の公表について意見を述べることができる。
(審査会による調査)
第二十八条 審査会は、第二十二条の報告又はその他の方法により職員にこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為を行った疑いがあると思料する場合であって、職員の職務に係る倫理の保持に関し特に必要があると認めるときは、当該行為に関する調査の開始を決定することができる。この場合においては、審査会は、あらかじめ、当該調査の対象となる職員の任命権者の意見を聴かなければならない。
2 審査会は、前項の決定をしたときは、同項の任命権者にその旨を通知しなければならない。
3 任命権者は、前項の通知を受けたときは、審査会が行う調査に協力しなければならない。
4 任命権者は、第二項の通知を受けた場合において、第一項の調査の対象となっている職員に対する懲戒処分又は退職に係る処分を行おうとするときは、あらかじめ、審査会に協議しなければならない。ただし、次条第一項の規定により懲戒処分の勧告を受けたとき又は第三十一条の規定により通知を受けたときは、この限りでない。
(懲戒処分の勧告)
第二十九条 審査会は、前条の調査の結果、任命権者において懲戒処分を行うことが適当であると思料するときは、任命権者に対し、懲戒処分を行うべき旨の勧告をすることができる。
2 任命権者は、前項の勧告に係る措置について、審査会に対し、報告しなければならない。
(審査会による懲戒)
第三十条 審査会は、第二十八条の調査を経て、必要があると認めるときは、当該調査の対象となっている職員を懲戒手続に付することができる。
(調査終了及び懲戒処分の通知)
第三十一条 審査会は、第二十八条の調査を終了したとき又は前条の規定により懲戒処分を行ったときは、その旨及びその内容を任命権者に通知するものとする。
(審査会による懲戒処分の概要の公表)
第三十二条 審査会は、第三十条の規定により懲戒処分を行った場合において、職員の職務に係る倫理の保持を図るため特に必要があると認めるときは、当該懲戒処分の概要の公表をすることができる。
(刑事裁判との関係の特例)
第三十三条 この法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為に係る懲戒手続に関する国家公務員法第八十五条の規定の適用については、同条中「人事院」とあるのは、「国家公務員倫理審査会」とする。
(秘密を守る義務の特例)
第三十四条 審査会が行う調査に関する国家公務員法第百条第四項の規定の適用については、同項中「人事院」とあるのは「国家公務員倫理審査会」と、「調査又は審理」とあるのは「調査」とする。
(関係行政機関に対する協力要求)
第三十五条 審査会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料又は情報の提供その他必要な協力を求めることができる。
(人事院規則制定の要求)
第三十六条 審査会は、その所掌する事務について、人事院に対し、案をそなえて、人事院規則の制定を求めることができる。
(人事院の報告聴取等)
第三十七条 人事院は、人事行政の公正の確保のため必要があると認めるときは、審査会に報告を求め、又はこれに対し意見を述べることができる。
(人事院規則への委任)
第三十八条 この章に定めるもののほか、審査会に関し必要な事項は、人事院規則で定める。
第五章 倫理監督官
第三十九条 職員の職務に係る倫理の保持を図るため、法律の規定に基づき内閣に置かれる各機関、内閣の統轄の下に行政事務をつかさどる機関として置かれる各機関及び内閣の所轄の下に置かれる機関並びに会計検査院(以下「行政機関」という。)に、それぞれ倫理監督官一人を置く。
2 倫理監督官は、その属する行政機関の職員に対しその職務に係る倫理の保持に関し必要な指導及び助言を行うとともに、審査会の指示に従い、当該行政機関の職員の職務に係る倫理の保持のための体制の整備を行う。
第六章 雑則
(教育公務員に関する特例)
第四十条 教育公務員特例法(昭和二十四年法律第一号)第二条第一項に規定する教育公務員のうち国立大学の学長、教員及び部局長並びに学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第五十八条第一項に規定する助手のうち国立大学に置かれる者(以下「特例教育公務員」という。)に係る第七条及び第八条の規定の適用については、「本省審議官級以上の職員」とあるのは、「国立大学の学長及び副学長(一般職給与法別表第九指定職俸給表四号俸の俸給月額以上の俸給を受けるものに限る。)」とする。
2 第十一条第七号から第十号まで、第二十二条から第二十六条まで及び第二十八条から第三十二条までの規定は、特例教育公務員には、適用しない。
3 審査会は、特例教育公務員にこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為を行った疑いがあると思料する場合であって、職員の職務に係る倫理の保持に関し特に必要があると認めるときは、文部大臣を経由して、当該特例教育公務員が所属する大学の管理機関(学長、教員及び助手にあっては国立学校設置法(昭和二十四年法律第百五十号)第七条の三に規定する評議会(評議会を置かない大学にあっては、教授会)をいい、部局長にあっては学長をいう。以下この条において同じ。)による調査を求めることができる。
4 前項の大学の管理機関は、同項の調査の結果について、文部大臣を経由して、審査会に報告しなければならない。
5 審査会は、前項の報告により、必要があると認めるときは、文部大臣を経由して、第三項の大学の管理機関による懲戒処分に関する教育公務員特例法第九条第一項に規定する審査を求めることができる。
6 特例教育公務員に対する第二十七条第二項の規定の適用については、「任命権者」とあるのは、「任命権者(任命権が国家公務員法第五十五条第二項の規定に基づき文部大臣から委任されている場合にあっては、文部大臣を経由して、任命権者)」とする。
(国の経営する企業に勤務する職員に関する特例)
第四十一条 第四章の規定は、国の経営する企業に勤務する職員の給与等に関する特例法の適用を受ける職員には、適用しない。
2 第四章の規定の適用を受ける国営企業労働関係法(昭和二十三年法律第二百五十七号)第二条第二号の職員に対する同法第四十条第一項第一号の規定の適用については、同号中「第三条第二項から第四項まで、第三条の二」とあるのは「第三条第二項から第四項まで(職務に係る倫理の保持に関する事務を除く。)」と、「第十七条、第十七条の二」とあるのは「第十七条(職員の職務に係る倫理の保持に関して行われるものを除く。)」と、「第八十四条第二項、第八十四条の二」とあるのは「第八十四条第二項(国家公務員倫理法(平成十一年法律第百二十九号)又はこれに基づく命令(同法第五条第三項の規定に基づく訓令を含む。)に違反する行為に関して行われるものを除く。)」と、「第百条第四項」とあるのは「第百条第四項(第十七条の二の規定により権限の委任を受けた国家公務員倫理審査会が行う調査に係るものを除く。)」とする。
(特殊法人等の講ずる施策等)
第四十二条 法律により直接に設立された法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人(総務庁設置法(昭和五十八年法律第七十九号)第四条第十一号の規定の適用を受けない法人を除く。)その他これらに準ずるものとして政令で定める法人のうち、その設立の根拠となる法律又は法人格を付与する法律において、役員、職員その他の当該法人の業務に従事する者を法令により公務に従事する者とみなすこととされ、かつ、政府の出資を受けているもの(以下「特殊法人等」という。)は、この法律の規定に基づく国の施策に準じて、特殊法人等の職員の職務に係る倫理の保持のために必要な施策を講ずるようにしなければならない。
2 各省各庁の長は、その所管する特殊法人等に対し、前項の規定により特殊法人等が講ずる施策について、必要な監督を行うことができる。
3 審査会は、各省各庁の長に対し、第一項の規定により特殊法人等が講ずる施策について、報告を求め、又は監督上必要な措置を講ずるよう求めることができる。
(地方公共団体の講ずる施策)
第四十三条 地方公共団体は、この法律の規定に基づく国の施策に準じて、地方公務員の職務に係る倫理の保持のために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。
(この法律の所掌)
第四十四条 この法律に基づく職員の職務に係る倫理の保持に関する内閣総理大臣の所掌する事務は、第四条、第五条第四項、第十四条、第十七条及び第十八条第三項に定める事務に関するもののほか、国家公務員倫理規程並びに第四十二条第一項及び次条の政令に関するものに限られるものとする。
2 前項に定めるもの及びこの法律中他の機関が行うこととされるもののほか、この法律に基づく職員の職務に係る倫理の保持に関する事務は、審査会の所掌に属するものとする。
(政令への委任)
第四十五条 この法律に定めるもののほか、この法律(第四章を除く。)の実施に関し必要な事項は、審査会の意見を聴いて、政令で定める。
(罰則)
第四十六条 第十八条第一項又は第二十一条第四項の規定に違反して秘密を漏らした者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、平成十二年四月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一  第四章、第五章、第四十条第二項から第六項まで、第四十一条、附則第五条、附則第六条(国家公務員法第八十二条第一項第一号の改正規定に係る部分を除く。)、附則第七条から第九条まで及び附則第十二条の規定並びに附則第十条中裁判所職員臨時措置法(昭和二十六年法律第二百九十九号)本則の改正規定、同法本則第一号の改正規定及び同法本則に一号を加える改正規定(国家公務員倫理法第十条から第十二条まで及び第二十二条から第三十九条までの規定に係る部分に限る。) 公布の日
二 第二条第一項及び第四項、第八条、第四十条第一項並びに附則第四条の規定 平成十二年一月一日
(経過措置)
第二条 第六条の規定は、この法律の施行の日以後に受けた贈与等又は支払を受けた報酬について適用する。
第三条 第七条の規定は、この法律の施行の日以後に行った株取引等について適用する。
第四条 第八条の規定は、平成十二年分以後の所得及び同年分以後の贈与税に係る贈与について適用する。
第五条 この法律の公布の日から平成十二年三月三十一日までの間における第四十条第三項の規定の適用については、同項中「学長、教員及び助手にあっては国立学校設置法(昭和二十四年法律第百五十号)第七条の三に規定する評議会(評議会を置かない大学にあっては、教授会)をいい、部局長にあっては学長をいう」とあるのは、「教育公務員特例法第九条第一項(同法第二十二条において準用する場合を含む。)に規定する大学管理機関をいい、同法第二十五条第一項第三号の規定により読み替えられたものを含む」とする。
(国家公務員法の一部改正)
第六条 国家公務員法の一部を次のように改正する。
第三条第二項中「苦情の処理」の下に「、職務に係る倫理の保持」を加え、同条の次に次の一条を加える。
(国家公務員倫理審査会)
第三条の二 前条第二項の所掌事務のうち職務に係る倫理の保持に関する事務を所掌させるため、人事院に国家公務員倫理審査会を置く。
国家公務員倫理審査会に関しては、この法律に定めるもののほか、国家公務員倫理法(平成十一年法律第百二十九号)の定めるところによる。
第十七条に次の三項を加える。
人事院は、第一項の調査(職員の職務に係る倫理の保持に関して行われるものに限る。)に関し必要があると認めるときは、当該調査の対象である職員に出頭を求めて質問し、又は同項の規定により指名された者に、当該職員の勤務する場所(職員として勤務していた場所を含む。)に立ち入らせ、帳簿書類その他必要な物件を検査させ、又は関係者に質問させることができる。
前項の規定により立入検査をする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
第三項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第十七条の次に次の一条を加える。
(国家公務員倫理審査会への権限の委任)
第十七条の二 人事院は、前条の規定による権限(職員の職務に係る倫理の保持に関して行われるものに限り、かつ、第九十条第一項に規定する不服申立てに係るものを除く。)を国家公務員倫理審査会に委任する。
第八十二条第一項第一号中「又はこの法律に基づく命令」を「若しくは国家公務員倫理法又はこれらの法律に基づく命令(国家公務員倫理法第五条第三項の規定に基づく訓令を含む。)」に改める。
第八十四条の次に次の一条を加える。
(国家公務員倫理審査会への権限の委任)
第八十四条の二 人事院は、前条第二項の規定による権限(国家公務員倫理法又はこれに基づく命令(同法第五条第三項の規定に基づく訓令を含む。)に違反する行為に関して行われるものに限る。)を国家公務員倫理審査会に委任する。
第九十六条第二項中「この法律」の下に「又は国家公務員倫理法」を加える。
第百十条第一項第五号の次に次の一号を加える。
五の二 第十七条第三項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者(同条第一項の調査の対象である職員を除く。)
(国営企業労働関係法の一部改正)
第七条 国営企業労働関係法の一部を次のように改正する。
第四十条第一項第一号中「第三条第二項から第四項まで」の下に「、第三条の二」を、「第十七条」の下に「、第十七条の二」を、「第八十四条第二項」の下に「、第八十四条の二」を加える。
(教育公務員特例法の一部改正)
第八条 教育公務員特例法の一部を次のように改正する。
第十一条第一項中「第百五条まで」の下に「又は国家公務員倫理法(平成十一年法律第百二十九号)」を加える。
(特別職の職員の給与に関する法律の一部改正)
第九条 特別職の職員の給与に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十二号)の一部を次のように改正する。
第一条第十号の次に次の一号を加える。
十の二 国家公務員倫理審査会の常勤の会長及び常勤の委員
第一条第十七号の二の次に次の一号を加える。
十七の三 国家公務員倫理審査会の非常勤の会長及び非常勤の委員
別表第一官職名の欄中「公正取引委員会委員長」を
公正取引委員会委員長
国家公務員倫理審査会の常勤の会長
に、「公正取引委員会委員」を
公正取引委員会委員
国家公務員倫理審査会の常勤の委員
に改める。
(裁判所職員臨時措置法の一部改正)
第十条 裁判所職員臨時措置法の一部を次のように改正する。
本則中「又は「内閣総理大臣」を「、「内閣総理大臣」又は「内閣」に改め、「最高裁判所規則」と」の下に「、「国家公務員倫理審査会」とあるのは「裁判所職員倫理審査会」と」を加え、本則第一号中「第一条」を「第一条から第三条まで、第四条」に改め、本則に次の一号を加える。
八 国家公務員倫理法(平成十一年法律第百二十九号)(第二条第二項第二号から第四号まで、同条第三項第二号及び第三号、同条第四項第二号、第四条、第五条第四項、第十三条から第二十一条まで、第四十条から第四十三条まで並びに第四十六条の規定を除く。)
(行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の一部改正)
第十一条 行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成十一年法律第四十三号)の一部を次のように改正する。
第二条のうち特別職の職員の給与に関する法律第一条第十七号の二の次に一号を加える改正規定中「第一条第十七号の二」を「第一条第十七号の三を同条第十七号の四とし、同条第十七号の二」に改める。
(国家公務員法等の一部を改正する法律の一部改正)
第十二条 国家公務員法等の一部を改正する法律(平成十一年法律第八十三号)の一部を次のように改正する。
第八条のうち裁判所職員臨時措置法本則の改正規定中「最高裁判所規則」を「裁判所職員倫理審査会」に改める。
内閣総理大臣 小渕恵三
法務大臣 陣内孝雄
外務大臣 高村正彦
大蔵大臣 宮澤喜一
文部大臣 有馬朗人
厚生大臣 宮下創平
農林水産大臣 中川昭一
通商産業大臣 与謝野馨
運輸大臣 川崎二郎
郵政大臣 野田聖子
労働大臣 甘利明
建設大臣 関谷勝嗣
自治大臣 野田毅
国家公務員倫理法をここに公布する。
御名御璽
平成十一年八月十三日
内閣総理大臣 小渕恵三
法律第百二十九号
国家公務員倫理法
目次
第一章
総則(第一条―第四条)
第二章
国家公務員倫理規程(第五条)
第三章
贈与等の報告及び公開(第六条―第九条)
第四章
国家公務員倫理審査会(第十条―第三十八条)
第五章
倫理監督官(第三十九条)
第六章
雑則(第四十条―第四十六条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、国家公務員が国民全体の奉仕者であってその職務は国民から負託された公務であることにかんがみ、国家公務員の職務に係る倫理の保持に資するため必要な措置を講ずることにより、職務の執行の公正さに対する国民の疑惑や不信を招くような行為の防止を図り、もって公務に対する国民の信頼を確保することを目的とする。
(定義等)
第二条 この法律(第二十一条第二項及び第四十二条第一項を除く。)において、「職員」とは、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第二条第二項に規定する一般職に属する国家公務員(委員、顧問若しくは参与の職にある者又は人事院の指定するこれらに準ずる職にある者で常勤を要しないものを除く。)をいう。
2 この法律において、「本省課長補佐級以上の職員」とは、次に掲げる職員をいう。
一 一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九十五号。以下「一般職給与法」という。)の適用を受ける職員であって、次に掲げるもの(トからヌまでに掲げるものについては、一般職給与法第十条の二第一項の規定による俸給の特別調整額の支給を受ける者に限る。)
イ 一般職給与法別表第一イ行政職俸給表(一)の職務の級七級以上の職員
ロ 一般職給与法別表第二専門行政職俸給表の職務の級四級以上の職員
ハ 一般職給与法別表第三税務職俸給表の職務の級七級以上の職員
ニ 一般職給与法別表第四イ公安職俸給表(一)の職務の級七級以上の職員
ホ 一般職給与法別表第四ロ公安職俸給表(二)の職務の級七級以上の職員
ヘ 一般職給与法別表第五イ海事職俸給表(一)の職務の級五級以上の職員
ト 一般職給与法別表第六イ教育職俸給表(一)の職務の級四級以上の職員
チ 一般職給与法別表第六ロ教育職俸給表(二)の職務の級三級以上の職員
リ 一般職給与法別表第六ハ教育職俸給表(三)の職務の級三級以上の職員
ヌ 一般職給与法別表第六ニ教育職俸給表(四)の職務の級三級以上の職員
ル 一般職給与法別表第七研究職俸給表の職務の級四級以上の職員
ヲ 一般職給与法別表第八イ医療職俸給表(一)の職務の級三級以上の職員
ワ 一般職給与法別表第八ロ医療職俸給表(二)の職務の級六級以上の職員
カ 一般職給与法別表第八ハ医療職俸給表(三)の職務の級六級以上の職員
ヨ 一般職給与法別表第九指定職俸給表の適用を受ける職員
二 一般職の任期付研究員の採用、給与及び勤務時間の特例に関する法律(平成九年法律第六十五号。以下「任期付研究員法」という。)第六条第一項に規定する俸給表の適用を受ける職員
三 国の経営する企業に勤務する職員の給与等に関する特例法(昭和二十九年法律第百四十一号)の適用を受ける職員であって、その職務と責任が第一号に掲げる職員に相当するものとして主務大臣(同法第四条に規定する主務大臣をいう。)が定めるもの
四 検察官の俸給等に関する法律(昭和二十三年法律第七十六号。以下「検察官俸給法」という。)の適用を受ける職員であって、次に掲げるもの
イ 検事総長、次長検事及び検事長
ロ 検察官俸給法別表検事の項十七号の俸給月額以上の俸給を受ける検事
ハ 検察官俸給法別表副検事の項十一号の俸給月額以上の俸給を受ける副検事
3 この法律において、「指定職以上の職員」とは、次に掲げる職員をいう。
一 一般職給与法別表第九指定職俸給表の適用を受ける職員
二 任期付研究員法第六条第一項に規定する俸給表の適用を受ける職員であって、同表四号俸の俸給月額以上の俸給を受けるもの
三 検察官俸給法の適用を受ける職員であって、次に掲げるもの
イ 検事総長、次長検事及び検事長
ロ 検察官俸給法別表検事の項八号の俸給月額以上の俸給を受ける検事
ハ 検察官俸給法第九条に定める俸給月額の俸給又は検察官俸給法別表副検事の項一号の俸給月額の俸給を受ける副検事
4 この法律において、「本省審議官級以上の職員」とは、次に掲げる職員をいう。
一 一般職給与法別表第九指定職俸給表の適用を受ける職員であって、同表四号俸の俸給月額以上の俸給を受けるもの
二 検察官俸給法の適用を受ける職員であって、次に掲げるもの
イ 検事総長、次長検事及び検事長
ロ 検察官俸給法別表検事の項五号の俸給月額以上の俸給を受ける検事
5 この法律において、「事業者等」とは、法人(法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものを含む。)その他の団体及び事業を行う個人(当該事業の利益のためにする行為を行う場合における個人に限る。)をいう。
6 この法律の規定の適用については、事業者等の利益のためにする行為を行う場合における役員、従業員、代理人その他の者は、前項の事業者等とみなす。
(職員が遵守すべき職務に係る倫理原則)
第三条 職員は、国民全体の奉仕者であり、国民の一部に対してのみの奉仕者ではないことを自覚し、職務上知り得た情報について国民の一部に対してのみ有利な取扱いをする等国民に対し不当な差別的取扱いをしてはならず、常に公正な職務の執行に当たらなければならない。
2 職員は、常に公私の別を明らかにし、いやしくもその職務や地位を自らや自らの属する組織のための私的利益のために用いてはならない。
3 職員は、法律により与えられた権限の行使に当たっては、当該権限の行使の対象となる者からの贈与等を受けること等の国民の疑惑や不信を招くような行為をしてはならない。
(国会報告)
第四条 内閣は、毎年、国会に、職員の職務に係る倫理の保持に関する状況及び職員の職務に係る倫理の保持に関して講じた施策に関する報告書を提出しなければならない。
第二章 国家公務員倫理規程
第五条 内閣は、第三条に掲げる倫理原則を踏まえ、職員の職務に係る倫理の保持を図るために必要な事項に関する政令(以下「国家公務員倫理規程」という。)を定めるものとする。この場合において、国家公務員倫理規程には、職員の職務に利害関係を有する者からの贈与等の禁止及び制限等職員の職務に利害関係を有する者との接触その他国民の疑惑や不信を招くような行為の防止に関し職員の遵守すべき事項が含まれていなければならない。
2 内閣は、国家公務員倫理規程の制定又は改廃に際しては、国家公務員倫理審査会の意見を聴かなければならない。
3 各省各庁の長(内閣総理大臣、各省大臣、会計検査院長、人事院総裁、内閣法制局長官及び警察庁長官並びに各外局の長をいう。以下同じ。)は、国家公務員倫理審査会の同意を得て、当該各省各庁に属する職員の職務に係る倫理に関する訓令を定めることができる。
4 内閣は、国家公務員倫理規程及び前項の訓令の制定又は改廃があったときは、これを国会に報告しなければならない。
第三章 贈与等の報告及び公開
(贈与等の報告)
第六条 本省課長補佐級以上の職員は、事業者等から、金銭、物品その他の財産上の利益の供与若しくは供応接待(以下「贈与等」という。)を受けたとき又は事業者等と職員の職務との関係に基づいて提供する人的役務に対する報酬として国家公務員倫理規程で定める報酬の支払を受けたとき(当該贈与等を受けた時又は当該報酬の支払を受けた時において本省課長補佐級以上の職員であった場合に限り、かつ、当該贈与等により受けた利益又は当該支払を受けた報酬の価額が一件につき五千円を超える場合に限る。)は、一月から三月まで、四月から六月まで、七月から九月まで及び十月から十二月までの各区分による期間(以下「四半期」という。)ごとに、次に掲げる事項を記載した贈与等報告書を、当該四半期の翌四半期の初日から十四日以内に、各省各庁の長又はその委任を受けた者に提出しなければならない。
一 当該贈与等により受けた利益又は当該支払を受けた報酬の価額
二 当該贈与等により利益を受け又は当該報酬の支払を受けた年月日及びその基因となった事実
三 当該贈与等をした事業者等又は当該報酬を支払った事業者等の名称及び住所
四 前三号に掲げるもののほか国家公務員倫理規程で定める事項
2 各省各庁の長又はその委任を受けた者は、前項の規定により贈与等報告書の提出を受けたときは、当該贈与等報告書(指定職以上の職員に係るものに限り、かつ、第九条第二項ただし書に規定する事項に係る部分を除く。)の写しを国家公務員倫理審査会に送付しなければならない。
(株取引等の報告)
第七条 本省審議官級以上の職員は、前年において行った株券等(株券(端株券を含む。)、新株引受権を表示する証券若しくは証書、転換社債券又は新株引受権付社債券をいう。以下この項において同じ。)の取得又は譲渡(本省審議官級以上の職員である間に行ったものに限る。以下「株取引等」という。)について、当該株取引等に係る株券等の種類、銘柄、数及び対価の額並びに当該株取引等の年月日を記載した株取引等報告書を、毎年、三月一日から同月三十一日までの間に、各省各庁の長又はその委任を受けた者に提出しなければならない。
2 各省各庁の長又はその委任を受けた者は、前項の規定により株取引等報告書の提出を受けたときは、当該株取引等報告書の写しを国家公務員倫理審査会に送付しなければならない。
(所得等の報告)
第八条 本省審議官級以上の職員(前年一年間を通じて本省審議官級以上の職員であったものに限る。)は、次に掲げる金額及び課税価格を記載した所得等報告書を、毎年、三月一日から同月三十一日までの間に、各省各庁の長又はその委任を受けた者に提出しなければならない。
一 前年分の所得について同年分の所得税が課される場合における当該所得に係る次に掲げる金額(当該金額が百万円を超える場合にあっては、当該金額及びその基因となった事実)
イ 総所得金額(所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第二十二条第二項に規定する総所得金額をいう。)及び山林所得金額(同条第三項に規定する山林所得金額をいう。)に係る各種所得の金額(同法第二条第一項第二十二号に規定する各種所得の金額をいう。以下同じ。)
ロ 各種所得の金額(退職所得の金額(所得税法第三十条第二項に規定する退職所得の金額をいう。)及び山林所得の金額(同法第三十二条第三項に規定する山林所得の金額をいう。)を除く。)のうち、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)の規定により、所得税法第二十二条の規定にかかわらず、他の所得と区分して計算される所得の金額
二 前年中において贈与により取得した財産について同年分の贈与税が課される場合における当該財産に係る贈与税の課税価格(相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)第二十一条の二に規定する贈与税の課税価格をいう。)
2 前項の所得等報告書の提出は、納税申告書(国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)第二条第六号に規定する納税申告書をいう。以下同じ。)の写しを提出することにより行うことができる。この場合において、同項第一号イ又はロに掲げる金額が百万円を超えるときは、その基因となった事実を当該納税申告書の写しに付記しなければならない。
3 各省各庁の長又はその委任を受けた者は、第一項の所得等報告書又は前項の納税申告書の写し(以下「所得等報告書等」という。)の提出を受けたときは、当該所得等報告書等の写しを国家公務員倫理審査会に送付しなければならない。
(報告書の保存及び閲覧)
第九条 前三条の規定により提出された贈与等報告書、株取引等報告書及び所得等報告書等は、これらを受理した各省各庁の長又はその委任を受けた者において、これらを提出すべき期間の末日の翌日から起算して五年を経過する日まで保存しなければならない。
2 何人も、各省各庁の長又はその委任を受けた者に対し、前項の規定により保存されている贈与等報告書(贈与等により受けた利益又は支払を受けた報酬の価額が一件につき二万円を超える部分に限る。)の閲覧を請求することができる。ただし、次の各号のいずれかに該当するものとしてあらかじめ国家公務員倫理審査会が認めた事項に係る部分については、この限りでない。
一 公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあるもの
二 公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるもの
第四章 国家公務員倫理審査会
(設置)
第十条 人事院に、国家公務員倫理審査会(以下「審査会」という。)を置く。
(所掌事務及び権限)
第十一条 審査会の所掌事務及び権限は、第五条第三項、第九条第二項ただし書、第三十九条第二項、第四十条第三項及び第五項並びに第四十二条第三項に定めるもののほか、次のとおりとする。
一 国家公務員倫理規程の制定又は改廃に関して、案をそなえて、内閣に意見を申し出ること。
二 この法律又はこの法律に基づく命令(第五条第三項の規定に基づく訓令を含む。以下同じ。)に違反した場合に係る懲戒処分の基準の作成及び変更に関すること。
三 職員の職務に係る倫理の保持に関する事項に係る調査研究及び企画を行うこと。
四 職員の職務に係る倫理の保持のための研修に関する総合的企画及び調整を行うこと。
五 国家公務員倫理規程の遵守のための体制整備に関し、各省各庁の長に指導及び助言を行うこと。
六 贈与等報告書、株取引等報告書及び所得等報告書等の審査を行うこと。
七 この法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為に関し、任命権者(国家公務員法第五十五条第一項に規定する任命権者及び法律で別に定められた任命権者並びにその委任を受けた者をいう。以下同じ。)に対し、調査を求め、その経過につき報告を求め及び意見を述ベ、その行う懲戒処分につき承認をし、並びにその懲戒処分の概要の公表について意見を述べること。
八 国家公務員法第十七条の二の規定により委任を受けた権限により調査を行うこと。
九 任命権者に対し、職員の職務に係る倫理の保持を図るため監督上必要な措置を講ずるよう求めること。
十 国家公務員法第八十四条の二の規定により委任を受けた権限により職員を懲戒手続に付し、及び懲戒処分の概要の公表をすること。
十一 前各号に掲げるもののほか、法律又は法律に基づく命令に基づき審査会に属させられた事務及び権限
(職権の行使)
第十二条 審査会の会長及び委員は、独立してその職権を行う。
(組織)
第十三条 審査会は、会長及び委員四人をもって組織する。
2 会長及び委員は、非常勤とすることができる。
3 会長は、会務を総理し、審査会を代表する。
4 会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。
(会長及び委員の任命)
第十四条 会長及び次項に規定する委員以外の委員は、人格が高潔であり、職員の職務に係る倫理の保持に関し公正な判断をすることができ、法律又は社会に関する学識経験を有する者であって、かつ、職員(検察官及び国立大学の教員を除く。)としての前歴を有する者についてはその在職期間が二十年を超えないもののうちから、両議院の同意を得て、内閣が任命する。
2 委員のうち一人は、人事官のうちから、内閣が任命する者をもって充てる。
3 会長又は前項に規定する委員以外の委員の任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣は、第一項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから、会長又は前項に規定する委員以外の委員を任命することができる。
4 前項の場合においては、任命後最初の国会において両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認を得られないときは、内閣は、直ちに、その会長又は第二項に規定する委員以外の委員を罷免しなければならない。
(会長及び委員の任期)
第十五条 会長及び委員の任期は、四年とする。
2 人事官としての残任期間が四年に満たない場合における前条第二項に規定する委員の任期は、前項の規定にかかわらず、当該残任期間とする。
3 補欠の会長及び委員の任期は、前任者の残任期間とする。
4 会長及び委員は、再任されることができる。
5 会長及び委員の任期が満了したときは、当該会長及び委員は、後任者が任命されるまで引き続きその職務を行うものとする。
(身分保障)
第十六条 会長又は委員(第十四条第二項に規定する委員を除く。以下この条、次条、第十八条第二項及び第三項並びに第十九条において同じ。)は、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、在任中、その意に反して罷免されることがない。
一 破産の宣告を受けたとき。
二 禁錮以上の刑に処せられたとき。
三 審査会により、心身の故障のため職務の執行ができないと認められたとき、又は職務上の義務違反その他会長若しくは委員たるに適しない非行があると認められたとき。
(罷免)
第十七条 内閣は、会長又は委員が前条各号のいずれかに該当するときは、その会長又は委員を罷免しなければならない。
(服務)
第十八条 会長及び委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。
2 会長及び委員は、在任中、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。
3 常勤の会長及び常勤の委員は、在任中、営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行い、又は内閣の許可のある場合を除くほか、報酬を得て他の職務に従事してはならない。
(給与)
第十九条 会長及び委員の給与は、別に法律で定める。
(会議)
第二十条 審査会は、会長が招集する。
2 審査会は、会長及び二人以上の委員の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができない。
3 審査会の議事は、出席者の過半数でこれを決し、可否同数のときは、会長の決するところによる。
4 会長に事故がある場合の第二項の規定の適用については、第十三条第四項に規定する委員は、会長とみなす。
(事務局)
第二十一条 審査会の事務を処理させるため、審査会に事務局を置く。
2 事務局に事務局長及び所要の職員を置く。
3 事務局長は、会長の命を受けて、局務を掌理する。
4 審査会の事務に従事する者は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。
(調査の端緒に係る任命権者の報告)
第二十二条 任命権者は、職員にこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為を行った疑いがあると思料するときは、その旨を審査会に報告しなければならない。
(任命権者による調査)
第二十三条 任命権者は、職員にこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為を行った疑いがあると思料して当該行為に関して調査を行おうとするときは、審査会にその旨を通知しなければならない。
2 審査会は、任命権者に対し、前項の調査の経過について、報告を求め、又は意見を述べることができる。
3 任命権者は、第一項の調査を終了したときは、遅滞なく、審査会に対し、当該調査の結果を報告しなければならない。
(任命権者に対する調査の要求等)
第二十四条 審査会は、職員にこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為を行った疑いがあると思料するときは、任命権者に対し、当該行為に関する調査を行うよう求めることができる。
2 前条第二項及び第三項の規定は、前項の調査について準用する。
(共同調査)
第二十五条 審査会は、第二十三条第二項(前条第二項において準用する場合を含む。)の規定により報告を受けた場合において必要があると認めるときは、この法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為に関し、当該任命権者と共同して調査を行うことができる。この場合においては、審査会は、当該任命権者に対し、共同して調査を行う旨を通知しなければならない。
(任命権者による懲戒)
第二十六条 任命権者は、職員にこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為があることを理由として懲戒処分を行おうとするときは、あらかじめ、審査会の承認を得なければならない。
(任命権者による懲戒処分の概要の公表)
第二十七条 任命権者は、職員にこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為があることを理由として懲戒処分を行った場合において、職員の職務に係る倫理の保持を図るため特に必要があると認めるときは、当該懲戒処分の概要の公表(第七条第一項の株取引等報告書中の当該懲戒処分に係る株取引等についての部分の公表を含む。以下同じ。)をすることができる。
2 審査会は、任命権者が前項の懲戒処分を行った場合において、特に必要があると認めるときは、当該任命権者に対し、当該懲戒処分の概要の公表について意見を述べることができる。
(審査会による調査)
第二十八条 審査会は、第二十二条の報告又はその他の方法により職員にこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為を行った疑いがあると思料する場合であって、職員の職務に係る倫理の保持に関し特に必要があると認めるときは、当該行為に関する調査の開始を決定することができる。この場合においては、審査会は、あらかじめ、当該調査の対象となる職員の任命権者の意見を聴かなければならない。
2 審査会は、前項の決定をしたときは、同項の任命権者にその旨を通知しなければならない。
3 任命権者は、前項の通知を受けたときは、審査会が行う調査に協力しなければならない。
4 任命権者は、第二項の通知を受けた場合において、第一項の調査の対象となっている職員に対する懲戒処分又は退職に係る処分を行おうとするときは、あらかじめ、審査会に協議しなければならない。ただし、次条第一項の規定により懲戒処分の勧告を受けたとき又は第三十一条の規定により通知を受けたときは、この限りでない。
(懲戒処分の勧告)
第二十九条 審査会は、前条の調査の結果、任命権者において懲戒処分を行うことが適当であると思料するときは、任命権者に対し、懲戒処分を行うべき旨の勧告をすることができる。
2 任命権者は、前項の勧告に係る措置について、審査会に対し、報告しなければならない。
(審査会による懲戒)
第三十条 審査会は、第二十八条の調査を経て、必要があると認めるときは、当該調査の対象となっている職員を懲戒手続に付することができる。
(調査終了及び懲戒処分の通知)
第三十一条 審査会は、第二十八条の調査を終了したとき又は前条の規定により懲戒処分を行ったときは、その旨及びその内容を任命権者に通知するものとする。
(審査会による懲戒処分の概要の公表)
第三十二条 審査会は、第三十条の規定により懲戒処分を行った場合において、職員の職務に係る倫理の保持を図るため特に必要があると認めるときは、当該懲戒処分の概要の公表をすることができる。
(刑事裁判との関係の特例)
第三十三条 この法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為に係る懲戒手続に関する国家公務員法第八十五条の規定の適用については、同条中「人事院」とあるのは、「国家公務員倫理審査会」とする。
(秘密を守る義務の特例)
第三十四条 審査会が行う調査に関する国家公務員法第百条第四項の規定の適用については、同項中「人事院」とあるのは「国家公務員倫理審査会」と、「調査又は審理」とあるのは「調査」とする。
(関係行政機関に対する協力要求)
第三十五条 審査会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料又は情報の提供その他必要な協力を求めることができる。
(人事院規則制定の要求)
第三十六条 審査会は、その所掌する事務について、人事院に対し、案をそなえて、人事院規則の制定を求めることができる。
(人事院の報告聴取等)
第三十七条 人事院は、人事行政の公正の確保のため必要があると認めるときは、審査会に報告を求め、又はこれに対し意見を述べることができる。
(人事院規則への委任)
第三十八条 この章に定めるもののほか、審査会に関し必要な事項は、人事院規則で定める。
第五章 倫理監督官
第三十九条 職員の職務に係る倫理の保持を図るため、法律の規定に基づき内閣に置かれる各機関、内閣の統轄の下に行政事務をつかさどる機関として置かれる各機関及び内閣の所轄の下に置かれる機関並びに会計検査院(以下「行政機関」という。)に、それぞれ倫理監督官一人を置く。
2 倫理監督官は、その属する行政機関の職員に対しその職務に係る倫理の保持に関し必要な指導及び助言を行うとともに、審査会の指示に従い、当該行政機関の職員の職務に係る倫理の保持のための体制の整備を行う。
第六章 雑則
(教育公務員に関する特例)
第四十条 教育公務員特例法(昭和二十四年法律第一号)第二条第一項に規定する教育公務員のうち国立大学の学長、教員及び部局長並びに学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第五十八条第一項に規定する助手のうち国立大学に置かれる者(以下「特例教育公務員」という。)に係る第七条及び第八条の規定の適用については、「本省審議官級以上の職員」とあるのは、「国立大学の学長及び副学長(一般職給与法別表第九指定職俸給表四号俸の俸給月額以上の俸給を受けるものに限る。)」とする。
2 第十一条第七号から第十号まで、第二十二条から第二十六条まで及び第二十八条から第三十二条までの規定は、特例教育公務員には、適用しない。
3 審査会は、特例教育公務員にこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為を行った疑いがあると思料する場合であって、職員の職務に係る倫理の保持に関し特に必要があると認めるときは、文部大臣を経由して、当該特例教育公務員が所属する大学の管理機関(学長、教員及び助手にあっては国立学校設置法(昭和二十四年法律第百五十号)第七条の三に規定する評議会(評議会を置かない大学にあっては、教授会)をいい、部局長にあっては学長をいう。以下この条において同じ。)による調査を求めることができる。
4 前項の大学の管理機関は、同項の調査の結果について、文部大臣を経由して、審査会に報告しなければならない。
5 審査会は、前項の報告により、必要があると認めるときは、文部大臣を経由して、第三項の大学の管理機関による懲戒処分に関する教育公務員特例法第九条第一項に規定する審査を求めることができる。
6 特例教育公務員に対する第二十七条第二項の規定の適用については、「任命権者」とあるのは、「任命権者(任命権が国家公務員法第五十五条第二項の規定に基づき文部大臣から委任されている場合にあっては、文部大臣を経由して、任命権者)」とする。
(国の経営する企業に勤務する職員に関する特例)
第四十一条 第四章の規定は、国の経営する企業に勤務する職員の給与等に関する特例法の適用を受ける職員には、適用しない。
2 第四章の規定の適用を受ける国営企業労働関係法(昭和二十三年法律第二百五十七号)第二条第二号の職員に対する同法第四十条第一項第一号の規定の適用については、同号中「第三条第二項から第四項まで、第三条の二」とあるのは「第三条第二項から第四項まで(職務に係る倫理の保持に関する事務を除く。)」と、「第十七条、第十七条の二」とあるのは「第十七条(職員の職務に係る倫理の保持に関して行われるものを除く。)」と、「第八十四条第二項、第八十四条の二」とあるのは「第八十四条第二項(国家公務員倫理法(平成十一年法律第百二十九号)又はこれに基づく命令(同法第五条第三項の規定に基づく訓令を含む。)に違反する行為に関して行われるものを除く。)」と、「第百条第四項」とあるのは「第百条第四項(第十七条の二の規定により権限の委任を受けた国家公務員倫理審査会が行う調査に係るものを除く。)」とする。
(特殊法人等の講ずる施策等)
第四十二条 法律により直接に設立された法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人(総務庁設置法(昭和五十八年法律第七十九号)第四条第十一号の規定の適用を受けない法人を除く。)その他これらに準ずるものとして政令で定める法人のうち、その設立の根拠となる法律又は法人格を付与する法律において、役員、職員その他の当該法人の業務に従事する者を法令により公務に従事する者とみなすこととされ、かつ、政府の出資を受けているもの(以下「特殊法人等」という。)は、この法律の規定に基づく国の施策に準じて、特殊法人等の職員の職務に係る倫理の保持のために必要な施策を講ずるようにしなければならない。
2 各省各庁の長は、その所管する特殊法人等に対し、前項の規定により特殊法人等が講ずる施策について、必要な監督を行うことができる。
3 審査会は、各省各庁の長に対し、第一項の規定により特殊法人等が講ずる施策について、報告を求め、又は監督上必要な措置を講ずるよう求めることができる。
(地方公共団体の講ずる施策)
第四十三条 地方公共団体は、この法律の規定に基づく国の施策に準じて、地方公務員の職務に係る倫理の保持のために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。
(この法律の所掌)
第四十四条 この法律に基づく職員の職務に係る倫理の保持に関する内閣総理大臣の所掌する事務は、第四条、第五条第四項、第十四条、第十七条及び第十八条第三項に定める事務に関するもののほか、国家公務員倫理規程並びに第四十二条第一項及び次条の政令に関するものに限られるものとする。
2 前項に定めるもの及びこの法律中他の機関が行うこととされるもののほか、この法律に基づく職員の職務に係る倫理の保持に関する事務は、審査会の所掌に属するものとする。
(政令への委任)
第四十五条 この法律に定めるもののほか、この法律(第四章を除く。)の実施に関し必要な事項は、審査会の意見を聴いて、政令で定める。
(罰則)
第四十六条 第十八条第一項又は第二十一条第四項の規定に違反して秘密を漏らした者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、平成十二年四月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一  第四章、第五章、第四十条第二項から第六項まで、第四十一条、附則第五条、附則第六条(国家公務員法第八十二条第一項第一号の改正規定に係る部分を除く。)、附則第七条から第九条まで及び附則第十二条の規定並びに附則第十条中裁判所職員臨時措置法(昭和二十六年法律第二百九十九号)本則の改正規定、同法本則第一号の改正規定及び同法本則に一号を加える改正規定(国家公務員倫理法第十条から第十二条まで及び第二十二条から第三十九条までの規定に係る部分に限る。) 公布の日
二 第二条第一項及び第四項、第八条、第四十条第一項並びに附則第四条の規定 平成十二年一月一日
(経過措置)
第二条 第六条の規定は、この法律の施行の日以後に受けた贈与等又は支払を受けた報酬について適用する。
第三条 第七条の規定は、この法律の施行の日以後に行った株取引等について適用する。
第四条 第八条の規定は、平成十二年分以後の所得及び同年分以後の贈与税に係る贈与について適用する。
第五条 この法律の公布の日から平成十二年三月三十一日までの間における第四十条第三項の規定の適用については、同項中「学長、教員及び助手にあっては国立学校設置法(昭和二十四年法律第百五十号)第七条の三に規定する評議会(評議会を置かない大学にあっては、教授会)をいい、部局長にあっては学長をいう」とあるのは、「教育公務員特例法第九条第一項(同法第二十二条において準用する場合を含む。)に規定する大学管理機関をいい、同法第二十五条第一項第三号の規定により読み替えられたものを含む」とする。
(国家公務員法の一部改正)
第六条 国家公務員法の一部を次のように改正する。
第三条第二項中「苦情の処理」の下に「、職務に係る倫理の保持」を加え、同条の次に次の一条を加える。
(国家公務員倫理審査会)
第三条の二 前条第二項の所掌事務のうち職務に係る倫理の保持に関する事務を所掌させるため、人事院に国家公務員倫理審査会を置く。
国家公務員倫理審査会に関しては、この法律に定めるもののほか、国家公務員倫理法(平成十一年法律第百二十九号)の定めるところによる。
第十七条に次の三項を加える。
人事院は、第一項の調査(職員の職務に係る倫理の保持に関して行われるものに限る。)に関し必要があると認めるときは、当該調査の対象である職員に出頭を求めて質問し、又は同項の規定により指名された者に、当該職員の勤務する場所(職員として勤務していた場所を含む。)に立ち入らせ、帳簿書類その他必要な物件を検査させ、又は関係者に質問させることができる。
前項の規定により立入検査をする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
第三項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第十七条の次に次の一条を加える。
(国家公務員倫理審査会への権限の委任)
第十七条の二 人事院は、前条の規定による権限(職員の職務に係る倫理の保持に関して行われるものに限り、かつ、第九十条第一項に規定する不服申立てに係るものを除く。)を国家公務員倫理審査会に委任する。
第八十二条第一項第一号中「又はこの法律に基づく命令」を「若しくは国家公務員倫理法又はこれらの法律に基づく命令(国家公務員倫理法第五条第三項の規定に基づく訓令を含む。)」に改める。
第八十四条の次に次の一条を加える。
(国家公務員倫理審査会への権限の委任)
第八十四条の二 人事院は、前条第二項の規定による権限(国家公務員倫理法又はこれに基づく命令(同法第五条第三項の規定に基づく訓令を含む。)に違反する行為に関して行われるものに限る。)を国家公務員倫理審査会に委任する。
第九十六条第二項中「この法律」の下に「又は国家公務員倫理法」を加える。
第百十条第一項第五号の次に次の一号を加える。
五の二 第十七条第三項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者(同条第一項の調査の対象である職員を除く。)
(国営企業労働関係法の一部改正)
第七条 国営企業労働関係法の一部を次のように改正する。
第四十条第一項第一号中「第三条第二項から第四項まで」の下に「、第三条の二」を、「第十七条」の下に「、第十七条の二」を、「第八十四条第二項」の下に「、第八十四条の二」を加える。
(教育公務員特例法の一部改正)
第八条 教育公務員特例法の一部を次のように改正する。
第十一条第一項中「第百五条まで」の下に「又は国家公務員倫理法(平成十一年法律第百二十九号)」を加える。
(特別職の職員の給与に関する法律の一部改正)
第九条 特別職の職員の給与に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十二号)の一部を次のように改正する。
第一条第十号の次に次の一号を加える。
十の二 国家公務員倫理審査会の常勤の会長及び常勤の委員
第一条第十七号の二の次に次の一号を加える。
十七の三 国家公務員倫理審査会の非常勤の会長及び非常勤の委員
別表第一官職名の欄中「公正取引委員会委員長」を
公正取引委員会委員長
国家公務員倫理審査会の常勤の会長
に、「公正取引委員会委員」を
公正取引委員会委員
国家公務員倫理審査会の常勤の委員
に改める。
(裁判所職員臨時措置法の一部改正)
第十条 裁判所職員臨時措置法の一部を次のように改正する。
本則中「又は「内閣総理大臣」を「、「内閣総理大臣」又は「内閣」に改め、「最高裁判所規則」と」の下に「、「国家公務員倫理審査会」とあるのは「裁判所職員倫理審査会」と」を加え、本則第一号中「第一条」を「第一条から第三条まで、第四条」に改め、本則に次の一号を加える。
八 国家公務員倫理法(平成十一年法律第百二十九号)(第二条第二項第二号から第四号まで、同条第三項第二号及び第三号、同条第四項第二号、第四条、第五条第四項、第十三条から第二十一条まで、第四十条から第四十三条まで並びに第四十六条の規定を除く。)
(行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の一部改正)
第十一条 行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成十一年法律第四十三号)の一部を次のように改正する。
第二条のうち特別職の職員の給与に関する法律第一条第十七号の二の次に一号を加える改正規定中「第一条第十七号の二」を「第一条第十七号の三を同条第十七号の四とし、同条第十七号の二」に改める。
(国家公務員法等の一部を改正する法律の一部改正)
第十二条 国家公務員法等の一部を改正する法律(平成十一年法律第八十三号)の一部を次のように改正する。
第八条のうち裁判所職員臨時措置法本則の改正規定中「最高裁判所規則」を「裁判所職員倫理審査会」に改める。
内閣総理大臣 小渕恵三
法務大臣 陣内孝雄
外務大臣 高村正彦
大蔵大臣 宮沢喜一
文部大臣 有馬朗人
厚生大臣 宮下創平
農林水産大臣 中川昭一
通商産業大臣 与謝野馨
運輸大臣 川崎二郎
郵政大臣 野田聖子
労働大臣 甘利明
建設大臣 関谷勝嗣
自治大臣 野田毅