(目的)
第一条 この法律は、飛鳥地方の遺跡等の歴史的文化的遺産がその周囲の環境と一体をなして、我が国の律令国家体制が初めて形成された時代における政治及び文化の中心的な地域であつたことをしのばせる歴史的風土が、明日香村の全域にわたつて良好に維持されていることにかんがみ、かつ、その歴史的風土の保存が国民の我が国の歴史に対する認識を深めることに配意し、住民の理解と協力の下にこれを保存するため、古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法(昭和四十一年法律第一号)の特例及び国等において講ずべき特別の措置を定めることを目的とする。
(明日香村歴史的風土保存計画)
第二条 内閣総理大臣は、奈良県、明日香村(奈良県高市郡明日香村をいう。以下同じ。)及び歴史的風土審議会(古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法(以下「古都保存法」という。)第十六条第一項の歴史的風土審議会をいう。以下同じ。)の意見を聴くとともに、関係行政機関の長に協議して、古都保存法第五条第一項の歴史的風土保存計画として、明日香村の区域の全部について、歴史的風土の保存に関する計画(以下「明日香村歴史的風土保存計画」という。)を定めなければならない。
2 明日香村歴史的風土保存計画に定める事項は、次のとおりとする。
一 第一種歴史的風土保存地区と第二種歴史的風土保存地区との区分の基準に関する事項
二 第一種歴史的風土保存地区及び第二種歴史的風土保存地区内における行為の規制に関する事項
三 歴史的風土の保存に配意した土地利用に関する事項
四 歴史的風土の保存に関連して必要とされる施設の整備に関する事項
五 古都保存法第十一条第一項の規定による土地の買入れに関する事項
六 前各号に掲げるもののほか、歴史的風土の維持保存に関し特に必要と認められる事項
3 内閣総理大臣は、明日香村歴史的風土保存計画を定めたときは、これを関係行政機関の長、奈良県及び明日香村に送付するとともに、官報で公示しなげればならない。
4 前三項の規定は、明日香村歴史的風土保存計画の変更について準用する。
(第一種歴史的風土保存地区及び第二種歴史的風土保存地区に関する都市計画)
第三条 明日香村の区域については、明日香村歴史的風土保存計画に基づき、当該区域を区分して、都市計画に第一種歴史的風土保存地区及び第二種歴史的風土保存地区を定めるものとする。
2 第一種歴史的風土保存地区は、歴史的風土の保存上枢要な部分を構成していることにより、現状の変更を厳に抑制し、その状態において歴史的風土の維持保存を図るべき地域とし、第二種歴史的風土保存地区は、著しい現状の変更を抑制し、歴史的風土の維持保存を図るべき地域とする。
3 第一種歴史的風土保存地区及び第二種歴史的風土保存地区は、それぞれ古都保存法第七条の二後段の特別保存地区とする。
(明日香村整備基本方針等)
第四条 内閣総理大臣は、歴史的風土審議会の意見を聴くとともに、関係行政機関の長に協議して、明日香村における歴史的風土の保存と住民の生活との調和を図るため、明日香村における生活環境及び産業基盤の整備等に関する基本方針(以下「明日香村整備基本方針」という。)を定め、これを奈良県知事に示すものとする。
2 奈良県知事は、前項の規定により示された明日香村整備基本方針に基づき、明日香村の意見を聴いて、明日香村における生活環境及び産業基盤の整備等に関する計画を作成し、内閣総理大臣に承認の申請をすることができる。
3 前項に規定する計画に定める事項は、次のとおりとする。
九 農地並びに農業用施設及び林業用施設の整備に関する事項
十一 前各号に掲げるもののほか、明日香村における生活環境及び産業基盤の整備その他歴史的風土の保存と調和が保たれる地域振興に関する事項で特に必要と認められるもの
4 内閣総理大臣は、第二項の規定により申請された計画が適当なものであると認められるときは、これを承認するものとする。この場合において、内閣総理大臣は、歴史的風土審議会の意見を聴くとともに、関係行政機関の長に協議しなければならない。
5 前三項の規定は、明日香村整備計画(前項の規定により承認を受けた第二項に規定する計画をいう。以下同じ。)の変更について準用する。
(特別の助成)
第五条 明日香村整備計画に基づいて、昭和五十五年度から昭和六十四年度までの各年度において明日香村が国又は奈良県から負担金又は補助金の交付を受けて行う事業(奈良県から負担金又は補助金の交付を受けて行うものにあつては、奈良県が負担し、又は補助するために要する費用の一部を国が負担し、又は補助するものに限る。)のうち、次に掲げる事業(災害復旧に係るもの、当該事業に係る経費の全額を国又は奈良県が負担するもの及び当該事業に係る経費を明日香村が負担しないものを除く。)で政令で定めるもの(以下「特定事業」という。)に係る経費に対する国の負担又は補助の割合(明日香村に対する負担又は補助のために奈良県が要する費用の一部を国が負担し、又は補助している場合にあつては、国の負担金又は補助金の当該特定事業に係る経費に対する割合)については、首都圏、近畿及び中部圏の近郊整備地帯等の整備のための国の財政上の特別措置に関する法律(昭和四十一年法律第百十四号)第五条の規定の例による。
一 次の施設の整備に関する事業
ヘ 農地並びに農業用施設及び林業用施設で政令で定めるもの
二 前号に掲げるもののほか、生活環境及び産業基盤の整備のために必要な事業で政令で定めるもの
2 前項の規定により通常の国の負担割合を超えて国が負担し、又は補助することとなる額の交付に関し必要な事項は、政令で定める。
(地方債についての配慮)
第六条 奈良県又は明日香村が明日香村整備計画に基づいて行う事業に要する経費に充てるために起こす地方債については、国は、奈良県又は明日香村の財政状況が許す限り起債できるよう、及び資金事情が許す限り資金運用部資金又は簡易生命保険及郵便年金特別会計の積立金をもつて引き受けるよう特別の配慮をするものとする。
(財政上及び技術上の配慮)
第七条 国は、前二条に定めるもののほか、明日香村整備計画が円滑に達成されるよう、財政上及び技術上の配慮をしなければならない。
(明日香村整備基金)
第八条 明日香村が、次に掲げる事業(特定事業を除く。)に要する経費の全部又は一部を支弁するため、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百四十一条の基金として、明日香村整備基金を設ける場合には、国は、二十四億円を限度として、その財源に充てるために必要な資金の一部を明日香村に対して補助するものとする。
二 土地の形質又は建築物その他の工作物の意匠、形態等を歴史的風土と調和させるために行われる事業
三 住民の生活の安定向上を図り、又は住民の利便を増進させるために行われる事業で歴史的風土の保存に関連して必要とされるもの