通関業法をここに公布する。
御名御璽
昭和四十二年八月一日
内閣総理大臣 佐藤栄作
法律第百二十二号
通関業法
税関貨物取扱人法(明治三十四年法律第二十八号)の全部を改正する。
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
通関業
第一節
許可(第三条―第十二条)
第二節
業務(第十三条―第二十二条)
第三章
通関士
第一節
通関士試験(第二十三条―第三十条)
第二節
通関士の資格(第三十一条―第三十三条)
第四章
通関業者等の責任(第三十四条―第三十八条)
第五章
雑則(第三十九条・第四十条)
第六章
罰則(第四十一条―第四十五条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、通関業を営む者についてその業務の規制、通関士の設置等必要な事項を定め、その業務の適正な運営を図ることにより、関税の申告納付その他貨物の通関に関する手続の適正かつ迅速な実施を確保することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律又はこの法律に基づく命令において、次の各号に掲げる用語は、当該各号に掲げる定義に従うものとする。
一 「通関業務」とは、他人の依頼によつてする次に掲げる事務をいう。
イ 次に掲げる手続又は行為につき、その依頼をした者の代理又は代行をすること。
(1) 関税法(昭和二十九年法律第六十一号)その他関税に関する法令に基づき税関官署に対してする次に掲げる申告又は承認の申請からそれぞれの許可又は承認を得るまでの手続(関税の確定及び納付に関する手続を含み、貨物を保税地域に入れ、又は保税地域から出すことの届出を除く。以下「通関手続」という。)
(一) 輸出(関税法第七十五条に規定する積みもどしを含む。)又は輸入の申告
(二) 本邦と外国との間を往来する船舶又は航空機への船用品又は機用品の積込みの申告
(三) 保税倉庫若しくは保税工場に外国貨物を置くことの承認の申請又は保税展示場に入れる外国貨物に係る関税法第六十二条の三第一項の申告
(2) 関税法その他関税に関する法令によつてされた処分につき、行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)又は関税法の規定に基づいて、税関長又は大蔵大臣に対してする不服申立て
(3) 通関手続、(2)の不服申立て又は関税法その他関税に関する法令の規定に基づく税関官署の調査、検査若しくは処分につき、税関官署に対してする主張又は陳述
ロ 関税法その他関税に関する法令又は行政不服審査法の規定に基づき税関官署又は大蔵大臣に対して提出する通関手続又はイの(2)の不服申立てに係る申告書、申請書、不服申立書その他これらに準ずる書類(以下「通関書類」という。)を作成すること。
二 「通関業」とは、業として通関業務を行なうことをいう。
三 「通関業者」とは、次条第一項の許可を受けた者をいう。
四 「通関士」とは、第三十一条第一項の確認を受けて通関業者の通関業務に従事する者をいう。
第二章 通関業
第一節 許可
(通関業の許可)
第三条 通関業を営もうとする者は、その業に従事しようとする地を管轄する税関長の許可を受けなければならない。
2 税関長は、前項の許可に条件を附することができる。
3 前項の条件は、この法律の目的を達成するために必要な最少限度のものでなければならない。
4 税関長は、第一項の許可をしたときは、遅滞なく、その旨を公告するとともに、許可を受けた者に許可証を交付する。
5 第一項の規定は、弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第三条第一項の規定により弁護士が行なう職務については、適用しない。
(許可の申請)
第四条 通関業の許可を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した許可申請書を税関長に提出しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつてはその役員の氏名及び住所
二 通関業務を行なおうとする営業所の名称及び所在地
三 前号の営業所ごとの責任者の氏名及び第十三条の規定により置こうとする通関士の数
四 通関業務を行なおうとする地域及びその通関業務に係る取扱貨物が一定の種類のもののみに限られる場合には当該貨物の種類
五 通関業以外の事業を営んでいるときは、その事業の種類
2 前項の許可申請書には、申請者の資産の状況を示す書面その他大蔵省令で定める書面を添附しなければならない。
(許可の基準)
第五条 税関長は、通関業の許可をしようとするときは、次の基準に適合するかどうかを審査しなければならない。
一 許可申請に係る通関業の経営の基礎が確実であること。
二 許可申請者が、その人的構成に照らして、その行なおうとする通関業務を適正に遂行することができる能力を有し、かつ、十分な社会的信用を有すること。
三 許可申請に係る通関業の開始が、その営まれる地域における通関業務の量及び通関業者の数に照らして、必要かつ適当なものであること。
四 許可申請に係る通関業を営む営業所につき、第十三条第一項の要件を備えることとなつていること。
(欠格事由)
第六条 税関長は、許可申請者が次の各号の一に該当する場合には、通関業の許可をしてはならない。
一 禁治産者又は準禁治産者
二 破産者であつて復権を得ないもの
三 禁錮以上の刑に処せられた者であつて、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつてから三年を経過しないもの
四 次に掲げる法律の規定に該当する違反行為をして罰金の刑に処せられた者又はこれらの規定に該当する違反行為をして関税法(他の関税に関する法律において準用する場合を含む。)若しくは国税犯則取締法(明治三十三年法律第六十七号)(地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)において準用する場合を含む。)の規定により通告処分(科料に相当する金額に係る通告処分を除く。)を受けた者であつて、それぞれの刑の執行を終わり、若しくは執行を受けることがなくなつた日又はその通告の旨を履行した日から三年を経過しないもの
イ 関税法第百九条から第百十二条まで(他の関税に関する法律において準用する場合を含む。)又は第百十三条の二の規定
ロ イに掲げるものを除き、国税又は地方税に関する法律中偽りその他不正の行為により国税又は地方税を免れ、納付せず、若しくはこれらの税の還付を受け、又はこれらの違反行為をしようとすることに関する罪を定めた規定
五 この法律の規定に違反する行為をして罰金の刑に処せられた者であつて、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から三年を経過しないもの
六 第十一条第一項第一号若しくは第三十四条第一項の規定により通関業の許可を取り消された者又は第三十五条第一項の規定により通関業務に従事することを禁止された者であつて、これらの処分を受けた日から二年を経過しないもの
七 公務員で懲戒免職の処分を受け、当該処分を受けた日から二年を経過しないもの
八 法人であつて、その役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。以下同じ。)のうちに前各号の一に該当する者があるもの
(関連業務)
第七条 通関業者は、通関業務のほか、その関連業務として、通関業者の名称を用いて、他人の依頼に応じ、通関業務に先行し、後続し、その他当該業務に関連する業務を行なうことができる。ただし、他の法律においてその業務を行なうことが制限されている事項については、この限りでない。
(営業所の新設)
第八条 通関業者は、その通関業の許可に係る税関の管轄区域内において、通関業務を行なう営業所を新たに設けようとするときは、政令で定めるところにより、その営業所の所在地を管轄する税関長の許可を受けなければならない。
2 第三条第二項から第四項まで及び第五条第二号から第四号までの規定は、前項の許可について準用する。
(営業区域の制限)
第九条 通関業者は、通関業の許可に係る税関の管轄区域(第三条第二項(前条第二項において準用する場合を含む。)の規定により通関業務を行なうことができる地域を限定する条件を附された場合には、当該限定された地域。以下この条において同じ。)内においてのみ、通関業を営むことができる。ただし、同一人から依頼を受けた通関業務その他税関官署に対する手続で相互に関連するものについては、政令で定めるところにより、当該許可に係る税関の管轄区域外においても、当該手続に係る通関業務を行なうことができる。
(許可の消滅)
第十条 通関業者が次の各号の一に該当するときは、当該通関業の許可は、消滅する。
一 通関業を廃止したとき。
二 死亡し、又は法人が解散したとき。
三 破産の宣告を受けたとき。
2 税関長は、通関業の許可が消滅したときは、遅滞なくその旨を公告しなければならない。
3 第一項の規定により通関業の許可が消滅した場合において、現に進行中の通関手続があるときは、当該手続については、当該許可を受けていた者(その者が死亡した場合には、その相続人とし、法人が合併により消滅した場合には、合併後存続する法人又は合併により設立された法人とする。)が引き続き当該許可を受けているものとみなす。
(許可の取消し)
第十一条 税関長は、通関業者が次の各号の一に該当するときは、その許可を取り消すことができる。
一 偽りその他不正の手段により通関業の許可を受けたことが判明したとき。
二 第六条第一号、第三号から第五号まで又は第八号の一に該当するに至つたとき。
2 税関長は、前項の規定により通関業の許可の取消しをしようとするときは、あらかじめその者にその旨を通知して、相当の期間内に自ら又はその代理人を通じて弁明する機会を与えるとともに、第三十九条第一項の審査委員の意見を聞かなければならない。
(変更等の届出)
第十二条 通関業者が次の各号の一に該当することとなつた場合には、その者(第三号の場合にあつては、政令で定める者)は、遅滞なくその旨を税関長に届け出なければならない。
一 第四条第一項第一号から第三号まで又は第五号に掲げる事項に変更があつたとき。
二 第六条第一号、第三号から第五号まで又は第八号の一に該当するに至つたとき。
三 第十条第一項の規定により通関業の許可が消滅したとき。
第二節 業務
(通関士の設置)
第十三条 通関業者は、その通関業務を行なう営業所ごとに、政令で定めるところにより、通関士を置かなければならない。ただし、当該営業所が次の各号の一に該当する場合は、この限りでない。
一 その営業所において取り扱う通関業務が、第九条ただし書の場合を除き、政令で定める地域以外の地域においてのみ行なわれることになつている場合
二 その営業所において取り扱う通関業務に係る貨物が第三条第二項(第八条第二項において準用する場合を含む。)の規定により一定の種類の貨物のみに限られている場合
2 通関業者は、前項の規定によるほか、その通関業務を行なう営業所に通関士を置くことができる。
(通関士の審査等)
第十四条 通関業者は、他人の依頼に応じて税関官署に提出する通関書類のうち政令で定めるもの(通関士が通関業務に従事している営業所における通関業務に係るものに限る。)については、通関士にその内容を審査させ、かつ、これに記名押印させなければならない。
(更正に関する意見の聴取)
第十五条 通関業者が他人の依頼に応じて税関官署に対してした納税の申告について、関税法第七条の四第一項又は第三項の規定による更正をすべき場合において、当該更正が、当該申告に係る貨物の関税率表の適用上の所属又は課税価格の相違その他関税に関する法令の適用上の解釈の相違に基因して、納付すべき関税の額を増加するものであるときは、税関長は、当該通関業者に対し、当該相違に関し意見を述べる機会を与えなければならない。ただし、当該関税の額の増加が計算又は転記の誤りその他これに類する客観的に明らかな誤りに基因するものである場合は、この限りでない。
(検査の通知)
第十六条 税関長は、通関業者の行なう通関手続に関し、税関職員に関税法第六十七条の検査その他これに準ずる関税に関する法律の規定に基づく検査で政令で定めるものをさせるときは、当該通関業者又はその従業者の立会いを求めるため、その旨を当該通関業者に通知しなければならない。
(名義貸しの禁止)
第十七条 通関業者は、その名義を他人に通関業のため使用させてはならない。
(料金の掲示等)
第十八条 通関業者は、通関業務(第七条に規定する関連業務を含む。)の料金の額を営業所において依頼者の見やすいように掲示しなければならない。
2 大蔵大臣は、前項の料金の額について必要な定めをすることができるものとし、この定めがされたときは、通関業者は、これに反して料金を受けてはならない。
(秘密を守る義務)
第十九条 通関業者(法人である場合には、その役員)及び通関士その他の通関業務の従業者は、正当な理由がなくて、通関業務に関して知り得た秘密を他に漏らし、又は盗用してはならない。これらの者がこれらの者でなくなつた後も、同様とする。
(信用失墜行為の禁止)
第二十条 通関業者(法人である場合には、その役員)及び通関士は、通関業者又は通関士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。
(押印等の効力)
第二十一条 第十四条の規定による通関士の記名押印又は第十五条若しくは第十六条の規定による税関長の措置の有無は、これらの条に規定する通関書類又は更正若しくは検査に係る処分の効力に影響を及ぼすものと解してはならない。
(記帳、届出、報告等)
第二十二条 通関業者は、政令で定めるところにより、通関業務(第七条に規定する関連業務を含む。以下この項及び第三項において同じ。)に関して帳簿を設け、その収入に関する事項を記載するとともに、その取扱いに係る通関業務に関する書類を一定期間保存しなければならない。
2 通関業者は、政令で定めるところにより、通関士その他の通関業務の従業者(当該通関業者が法人である場合には、通関業務を担当する役員及び通関士その他の通関業務の従業者)の氏名及びその異動を税関長に届け出なければならない。
3 通関業者は、政令で定めるところにより、その取扱いに係る通関業務の件数、これらについて受けた料金の額その他通関業務に係る事項を記載した報告書を毎年一回税関長に提出しなければならない。
第三章 通関士
第一節 通関士試験
(通関士試験)
第二十三条 通関士になろうとする者は、通関士試験に合格しなければならない。
2 通関士試験は、通関士となるのに必要な知識及び能力を有するかどうかを判定するため、次に掲げる科目について行なう。
一 関税法、関税定率法その他関税に関する法律及び外国為替及び外国貿易管理法(同法第六章に係る部分に限る。)
二 通関書類の作成要領その他通関手続の実務
三 通関業法
(試験科目の一部免除)
第二十四条 次の各号の一に該当する者に対しては、その申請により、通関士試験において当該各号に掲げる科目の試験を免除する。
一 通関業者の通関業務又は官庁における関税その他通関に関する事務で政令で定めるものに従事した期間が通算して十五年以上になる者 前条第二項第一号及び第二号に掲げる科目
二 通関業者の通関業務又は官庁における通関事務で政令で定めるものに従事した期間が通算して五年以上になる者 前条第二項第二号に掲げる科目
(通関士となる資格)
第二十五条 通関士試験に合格した者は、どの税関の管轄区域内においても、通関士となる資格を有する。
(受験手数料)
第二十六条 通関士試験を受けようとする者は、千円をこえない範囲内で政令で定める額の受験手数料を納めなければならない。
2 前項の規定により納付した受験手数料は、通関士試験を受けなかつた場合においても、還付しない。
(試験の執行等)
第二十七条 通関士試験は、毎年一回以上、大蔵大臣が決定する問題により、各税関長が行なう。ただし、試験の採点は、次条第一項の試験委員が行なう。
(試験委員)
第二十八条 大蔵大臣は、毎回の通関士試験の問題の作成及び採点を行なわせるため、十五人以内の試験委員を委嘱するものとする。
2 試験委員は、通関業務に関し学識経験のある者のうちから委嘱する。
(合格の取消し等)
第二十九条 税関長は、不正の手段によつて通関士試験を受け、若しくは受けようとし、又は試験科目の免除を受け、若しくは受けようとした者に対しては、合格の決定を取り消し、又はその試験を受けることを禁止することができる。
2 税関長は、前項の規定による処分を受けた者に対し、情状により二年以内の期間を定めて通関士試験を受けることができないものとすることができる。
(省令への委任)
第三十条 この節に定めるもののほか、通関士試験の受験の手続その他通関士試験に関し必要な事項は、大蔵省令で定める。
第二節 通関士の資格
(確認)
第三十一条 通関業者は、通関士試験に合格した者を通関士という名称を用いてその通関業務に従事させようとするときは、その者の氏名、通関業務に従事させようとする営業所の名称その他政令で定める事項を税関長に届け出て、その者が次項の規定に該当しないことの確認を受けなければならない。
2 次の各号の一に該当する者は、通関士となることができない。
一 第六条第一号から第七号までの一に該当する者
二 第六条第四号イに掲げる法律の規定に該当する違反行為をした者であつて、当該違反行為があつた日から二年を経過しないもの
三 次に該当する者であつて、それぞれの停止の期間が経過しないもの
イ 第三十四条第一項の規定により通関業務の停止の処分を受けた者(当該処分の基因となつた違反行為をした者を含む。)
ロ 第三十五条第一項の規定により通関業務に従事することを停止された者
(通関士の資格の喪失)
第三十二条 通関士は、次の各号の一に該当するときは、通関士でなくなるものとする。
一 前条第一項の確認を受けた通関業者の通関業務に従事しないこととなつたとき。
二 第六条第一号から第七号までの一に該当するに至つたとき。
三 第二十九条第一項の規定により通関士試験の合格の決定が取り消されたとき。
四 偽りその他不正の手段により前条第一項の確認を受けたことが判明したとき。
(名義貸しの禁止)
第三十三条 通関士(前条第一号の規定に該当し、第二十二条第二項の規定による異動の届出がない者を含む。)は、その名義を他人に通関業務のため使用させてはならない。
第四章 通関業者等の責任
(通関業者に対する監督処分)
第三十四条 税関長は、通関業者が次の各号の一に該当するときは、その通関業者に対し、戒告し、一年以内の期間を定めて通関業務の全部若しくは一部の停止を命じ、又は許可の取消しをすることができる。
一 通関業者が、この法律、この法律に基づく命令若しくは第三条第二項(第八条第二項において準用する場合を含む。)の規定により許可に附された条件又は関税法その他関税に関する法令の規定に違反したとき。
二 通関業者の役員その他通関業務に従事する者につき、この法律、この法律に基づく命令若しくは関税法その他関税に関する法令の規定に違反する行為があつた場合又は通関業者の信用を害するような行為があつた場合において、その通関業者の責めに帰すべき理由があるとき。
2 税関長は、前項の規定による処分をしたときは、遅滞なくその旨を公告しなければならない。
(通関士に対する懲戒処分)
第三十五条 税関長は、通関士がこの法律又は関税法その他関税に関する法令の規定に違反したときは、その通関士に対し、戒告し、一年以内の期間を定めてその者が通関業務に従事することを停止し、又は二年間その者が通関業務に従事することを禁止することができる。
2 前条第二項の規定は、前項の規定による処分をした場合について準用する。
(調査の申出)
第三十六条 何人も、通関業者又は通関士に第三十四条第一項又は前条第一項に該当する事実があると認めたときは、税関長に対し、その事実を申し出て、適当な措置をとるべきことを求めることができる。
(処分の手続)
第三十七条 税関長は、第三十四条第一項又は第三十五条第一項の規定による処分をしようとするときは、あらかじめ当該通関業者又は通関士にその旨を通知して、相当の期間内に自ら又はその代理人を通じて弁明する機会を与えなければならない。
2 税関長は、第三十四条第一項の規定による処分をしようとするときは、第三十九条第一項の審査委員の意見を、第三十五条第一項の規定による処分をしようとするときは、当該通関士がその業務に従事する通関業者の意見を、それぞれ聞かなければならない。
3 税関長は、第三十四条第一項又は第三十五条第一項の規定による処分をするときは、その理由を附記した書面により、その旨を当該処分を受ける者に通知しなければならない。
(報告の徴取等)
第三十八条 税関長は、この法律の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、通関業者から報告を徴し、又は税関職員をして通関業者に質問させ、若しくはその業務に関する帳簿書類を検査させることができる。
2 税関職員は、前項の規定により質問又は検査をする場合には、その身分を示す証票を携帯し、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。
3 第一項の規定による質問又は検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第五章 雑則
(審査委員)
第三十九条 税関長は、第十一条第一項又は第三十四条第一項の規定による処分について意見を聞くため、必要があるときは、三人以内の審査委員を委嘱するものとする。
2 審査委員は、通関業務に関し学識経験のある者のうちから委嘱する。
(名称の使用制限)
第四十条 通関業者でない者は、通関業者という名称を使用してはならない。
2 通関士でない者は、通関士という名称を使用してはならない。
第六章 罰則
第四十一条 次の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
一 偽りその他不正の手段により第三条第一項又は第八条第一項の許可を受けた者
二 第三条第一項の規定に違反して通関業を営んだ者及び同条第二項(第八条第二項において準用する場合を含む。)の規定により附された条件又は第九条の規定に違反して、当該条件により限定された種類以外の貨物につき、又は同条の規定により通関業を営むことができる地域以外の地域において、通関業を営んだ者
三 第十九条の規定に違反して、通関業務に関して知り得た秘密を他に漏らし、又は盗用した者
四 第三十四条第一項の規定による通関業務の全部又は一部の停止の処分に違反して通関業務を行なつた者
2 前項第三号の罪は、告訴を待つて論ずる。
第四十二条 次の各号の一に該当する者は、六月以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
一 偽りその他不正の手段により第三十一条第一項の確認を受けた者
二 第三十五条第一項の規定による通関業務に従事することの停止又は禁止の処分に違反して通関業務に従事した者
第四十三条 次の各号の一に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
一 第十八条第二項の規定により大蔵大臣がした定めに反して料金を受けた者
二 第三十八条第一項の規定による報告をせず、若しくは偽りの報告をし、若しくは同項の規定による税関職員の質問に答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
第四十四条 次の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第十七条の規定に違反してその名義を他人に使用させた者
二 第三十三条の規定に違反してその名義を他人に使用させた者
三 第四十条の規定に違反して通関業者又は通関士という名称を使用した者
第四十五条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第四十一条第一項(第三号を除く。)、第四十二条第一号、第四十三条又は前条第一号若しくは第三号の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対し、各本条の罰金刑を科する。
附 則
1 この法律は、公布の日から起算して一月を経過した日から施行する。
2 この法律の施行の際現に税関貨物取扱人法(以下「旧法」という。)第二条第一項の規定による免許の申請をしている者については、第三条から第五条までの規定を適用せず、なお旧法第二条第一項の規定の例による。
3 この法律の施行の際現に旧法第二条第一項の規定による免許を受けている者及び前項の規定の適用を受けて同条第一項の規定の例による免許を受けた者(これらの者で次項の規定による更新の免許を受けたものを含む。)は、この法律の施行の日から三年間は、第三条第一項の規定による税関長の許可(これらの免許に条件が附されているときは、当該条件を附された当該許可)を受けた者とみなす。
4 前項の場合において、同項の免許に附された期限が経過するときは、税関長は、同項の期間内は、従前の例によりその更新をすることができる。
5 附則第三項の規定の適用を受ける者に係る旧法第二条第二項に規定する免許料及び旧法第五条に規定する身元保証物については、なお従前の例による。
6 附則第三項の規定の適用を受ける者については、第十三条第一項の規定は、適用しない。
7 附則第三項及び前項の規定は、同項に規定する者で第十三条第一項の要件を備えるもののうち第六条各号の一に該当しないものにつき、附則第三項の期間内において第三条第一項の許可をすることを妨げない。
8 旧法又はこれに基づく命令によつてした処分(附則第十二項の規定によりされる処分を含む。)、手続その他の行為(附則第二項の免許の申請及び附則第三項の免許を除く。)は、この法律中これに相当する規定がある場合には、この法律の相当規定によつてしたものとみなす。
9 第六条第五号及び第八号、第十一条第一項第二号、第十二条第二号、第三十一条第二項第一号並びに第三十二条第二号の規定の適用については、旧法に基づいて刑に処せられた者は、この法律に基づいて刑に処せられた者とみなす。
10 第二十四条の規定の適用については、旧法に基づく税関貨物取扱人の業務で同条に規定する政令で定める通関業務に相当するものに従事した期間は、通関業者の当該通関業務に従事した期間とみなす。
11 この法律の施行の際現に通関業者という名称を使用している者については、この法律の施行後六月間は、第四十条第一項の規定は、適用しない。
12 この法律の施行前に税関貨物取扱人の業務に関する法令に違反し、又は旧法の規定に基づく税関長の命令に違反した行為に対する税関長の処分については、なお従前の例による。
13 この法律の施行前にした行為及び附則第五項の規定により従前の例によることとされる身元保証物に係るこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
14 大蔵省設置法(昭和二十四年法律第百四十四号)の一部を次のように改正する。
第四条第二十六号を次のように改める。
二十六 通関業の許可をし、これを営む者を監督し、及び通関士試験を行なうこと。
第九条の二第五号を次のように改める。
五 通関業の許可、通関業者の監督及び通関士試験に関すること。
15 関税法の一部を次のように改正する。
第十三条の三中「税関貨物取扱人」を「通関業者」に、「税関貨物取扱人法(明治三十四年法律第二十八号)第一条」を「通関業法(昭和四十二年法律第百二十二号)第二条第三号」に改める。
第百五条第一項第六号及び第百十条第二項中「税関貨物取扱人」を「通関業者」に改める。
第百十三条の二中「税関貨物取扱人又は税関貨物取扱人に通関業務を委託した者」を「通関業者」に改める。
16 登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)の一部を次のように改正する。
附則第八条に次の一項を加える。
3 通関業法(昭和四十二年法律第百二十二号)附則第三項(税関貨物取扱人の経過措置)の規定により同法第三条第一項(通関業の許可)の規定による税関長の許可を受けた者とみなされた者で同法附則第三項の期間内に同条第一項の許可の申請の手続をした者が、当該申請に係る新法別表第一の第二十七号に掲げる通関業の許可を受ける場合における当該許可に係る登録免許税の課税標準及び税率は、新法第九条の規定にかかわらず、当該許可件数一件につき一万円とする。
別表第一の第二十七号中「税関貨物取扱人の免許」を「通関業の許可」に、「税関貨物取扱人法(明治三十四年法律第二十八号)第二条」を「通関業法(昭和四十二年法律第百二十二号)第三条」に、「免許件数」を「許可件数」に改める。
大蔵大臣 水田三喜男
内閣総理大臣 佐藤栄作