国土調査法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十六年六月一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百八十号
国土調査法
目次
第一章
目的及び定義(第一條・第二條)
第二章
計画及び実施(第三條―第十條)
第三章
国土調査審議会及び都道府県国土調査委員会(第十一條―第十六條)
第四章
成果の取扱(第十七條―第二十一條)
第五章
雑則(第二十二條―第三十四條)
第六章
罰則(第三十五條―第三十八條)
附則
第一章 目的及び定義
(目的)
第一條 この法律は、国土の開発及び保全並びにその利用の高度化に資するため、国土の実態を科学的且つ総合的に調査することを目的とする。
(定義)
第二條 この法律において「国土調査」とは、左の各号に掲げる調査をいう。
一 国の機関が行う基本調査、土地分類調査又は水調査
二 都道府県が行う基本調査及び地方公共団体又は土地改良区その他の政令で定める者(以下「土地改良区等」という。)が行う土地分類調査、水調査又は地籍調査で第五條第四項又は第六條第三項の規定による指定を受けたもの
2 前項第一号及び第二号の「基本調査」とは、土地分類調査、水調査及び地籍調査の基礎とするために行う土地及び水面の測量(このために必要な基準点の測量を含む。)並びに土地分類調査及び水調査の基準の設定のための調査を行い、その結果を地図及び簿册に作成することをいう。
3 第一項第一号及び第二号の「土地分類調査」とは、土地をその利用の可能性により分類する目的をもつて、土地の利用現況、土性その他の土じようの物理的及び化学的性質、浸蝕の状況その他の主要な自然的要素並びにその生産力に関する調査を行い、その結果を地図及び簿册に作成することをいう。
4 第一項第一号及び第二号の「水調査」とは、治水及び利水に資する目的をもつて、気象、陸水の流量、水質及び流砂状況並びに取水量、用水量、排水量及び水利慣行等の水利に関する調査を行い、その結果を地図及び簿册に作成することをいう。
5 第一項第二号の「地籍調査」とは、毎筆の土地について、その所有者、地番及び地目の調査並びに境界及び地積に関する測量を行い、その結果を地図及び簿册に作成することをいう。
6 第二項から前項までに規定する地図及び簿册の様式は、政令で定める。
7 第一項第一号に規定する基本調査、土地分類調査又は水調査を行う国の機関は、これらの国土調査の各々について政令で定める。
第二章 計画及び実施
(基礎計画及び作業規程の準則)
第三條 国の機関が行う国土調査及び都道府県が行う基本調査の基礎計画は、経済安定本部総裁(以下「総裁」という。)が定める。
2 国土調査の作業規程の準則は、経済安定本部令で定める。
3 国土調査に関する基礎計画及び国土調査の実施に関する作業規程の準則は、国土調査審議会の調査審議を経て定めなければならない。
(国の機関が行う国土調査の実施に関する計画及び作業規程)
第四條 国の機関が行う国土調査の実施計画は、前條第一項の基礎計画に基いて、当該調査を行う国の機関が作成する。
2 前項の実施計画は、あらかじめ、総裁の承認を得て定めなければならない。
3 第一項の国の機関が行う国土調査の作業規程は、前條第二項の作業規程の準則に基いて、当該調査を行う国の機関が作成して、これを総裁に届け出なければならない。
4 国の機関が第二條第一項第一号の国土調査を行う場合においては、当該調査が行われる都道府県におけるその実施の方法について、当該都道府県の意見を聞かなければならない。
(都道府県が行う国土調査の実施に関する計画及び作業規程)
第五條 都道府県は、国土調査として基本調査を行おうとする場合においては、第三條第一項及び第二項の基礎計画及び作業規程の準則に基いて、その実施に関する計画及び作業規程を作成して、これを主務大臣に届け出なければならない。
2 都道府県は、基本調査の成果に基いて、国土調査として基本調査以外の第二條第一項第二号の調査を行おうとする場合においては、その実施に関する計画を作成して、これを主務大臣に届け出なければならない。
3 都道府県は、第三條第二項の作業規程の準則に基いて、前項の規定による届出をした計画に係る調査の作業規程を作成して、これを主務大臣に届け出なければならない。
4 主務大臣は、前三項の規定による届出があつた場合においては、その届出に係る計画及び作業規程を審査し、その結果に基いて当該調査を国土調査として指定し、又は当該届出に係る計画若しくは作業規程の変更を勧告し、若しくは必要な助言をした場合において当該都道府県がこれに同意したときはその計画若しくは作業規程に変更を加えて国土調査として指定しなければならない。
5 主務大臣は、前項の規程による指定又は勧告若しくは助言をする場合においては、あらかじめ、総裁の承認を得なければならない。
(市町村又は土地改良区等が行う国土調査の実施に関する計画及び作業規程)
第六條 市町村又は土地改良区等は、基本調査の成果に基いて、国土調査として基本調査以外の第二條第一項第二号の調査を行おうとする場合においては、その実施に関する計画を作成して、これを都道府県国土調査委員会に届け出なければならない。
2 市町村又は土地改良区等は、第三條第二項の作業規程の準則に基いて、前項の規定による届出をした計画に係る調査の作業規程を作成して、これを都道府県国土調査委員会に届け出なければならない。
3 都道府県国土調査委員会は、前二項の規定による届出があつた場合においては、その届出に係る計画及び作業規程を審査し、その結果に基いて当該調査を国土調査として指定し、又は当該届出に係る計画若しくは作業規程の変更を勧告し、若しくは必要な助言をした場合において当該市町村又は土地改良区等がこれに同意したときはその計画若しくは作業規程に変更を加えて国土調査として指定しなければならない。
4 都道府県国土調査委員会は、前項の規定によつて当該国土調査の指定をしようとする場合においては、あらかじめ、総裁及び主務大臣の意見を求めることができる。
(国土調査の指定及び実施の公示)
第七條 主務大臣又は都道府県国土調査委員会は、第五條第四項又は前條第三項の規定により国土調査の指定をした場合においては、政令で定める手続により、遅滯なく、その旨を公示しなければならない。
2 国土調査を実施する者は、当該国土調査の開始前に、政令で定める手続により、その地域、期間その他必要な事項を公示しなければならない。
(国土調査の実施の勧告)
第八條 主務大臣は、都道府県が土地改良事業その他の政令で定める事業を行う場合又はこれらの事業が道若しくは二以上の都府県の区域にわたつて行われる場合においては、当該事業を行う者に対し、国土調査をあわせ行うことを勧告することができる。
2 第五條の規定は、前項の事業を行う者が同項の勧告に基いて国土調査をあわせ行う場合に準用する。この場合において同條中「都道府県」とあるのは「土地改良事業その他の政令で定める事業を行う者」と読み替えるものとする。
3 都道府県国土調査委員会は、当該都道府県の区域内において国の機関及び都道府県以外の者が第一項の事業を行う場合においては、当該事業を行う者に対し、国土調査をあわせ行うことを勧告することができる。
4 第六條の規定は、前項の事業を行う者が同項の勧告に基いて国土調査をあわせ行う場合に準用する。
(補助金の交付)
第九條 国は、左の各号の一に該当する場合においては、当該調査を行う者に対し、政令で定めるところにより、予算の範囲内において補助金を交付することができる。
一 第五條第四項の規定により当該都道府県の届出に係る計画及び作業規程に変更を加えた国土調査の指定があつた場合
二 第六條第三項の規定により当該市町村又は土地改良区等の届出に係る計画及び作業規程に同條第四項の規定による請求があつた場合において総裁及び主務大臣がした勧告又は助言に基く変更を加えた国土調査の指定があつた場合
三 前條第一項に規定する者が同項の勧告に基き、且つ、同條第二項において準用する第五條第四項の規定による指定によつて国土調査をあわせ行う場合
四 前條第三項に規定する者が同項の規定による勧告に基き、且つ、同條第四項において準用する第六條第四項の規定による請求があつた場合において総裁及び主務大臣がした勧告又は助言に基く指定によつて国土調査をあわせ行う場合
(国土調査の実施の委託)
第十條 国の機関、都道府県又は市町村は、国土調査を行おうとする場合においては、国の機関にあつては都道府県又は道若しくは二以上の都府県の区域にわたつて基本調査、土地分類調査又は水調査に類する調査を行う者に、都道府県にあつては市町村又は土地改良区等に、市町村にあつては土地改良区等に、それぞれ当該国土調査の実施を委託することができる。
第三章 国土調査審議会及び都道府県国土調査委員会
(国土調査審議会の設置)
第十一條 経済安定本部に、国土調査審議会(以下「審議会」という。)を置く。
(審議会への諮問事項等)
第十二條 総裁は、左に掲げる事項については、審議会の調査審議を経なければならない。
一 第三條第一項の規定による基礎計画の設定及び第四條第二項の規定による実施計画の承認
二 第三條第二項の規定による作業規程の準則の設定
三 第五條第五項(第八條第二項の規定において準用する場合を含む。)の規定による承認
四 第十九條第二項の規定による国土調査の成果の認証及び同條第三項の規定による承認
五 第十九條第五項の規定による国土調査以外の測量及び調査について作成された地図及び簿册の国土調査の成果としての指定並びに同條第六項の規定による承認
2 審議会は、必要に応じて、国土調査に関し、総裁に勧告し、及び総裁を通じて関係各行政機関の長に意見を申し出ることができる。
(審議会の組織及び運営)
第十三條 審議会は、経済安定本部総務長官及び委員三十人以内で組織する。
2 委員は、関係行政機関の職員及び国土調査に関し学識経験を有する者のうちから、総裁が任命する。
3 学識経験を有する者のうちから任命された委員の任期は、二年とする。但し、再任されることを妨げない。
4 委員は、非常勤とする。
5 経済安定本部総務長官は、会長として会務を総理し、及び審議会を代表する。
6 前各項に定めるものを除く外、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
(都道府県国土調査委員会の設置)
第十四條 都道府県は、その区域内において国土調査が実施される場合においては、都道府県国土調査委員会(以下「委員会」という。)を設置しなければならない。
(所掌事務)
第十五條 委員会は、当該都道府県の区域内における左に掲げる事務をつかさどる。
一 第六條第三項の規定による指定又は勧告若しくは助言をすること。
二 第十九條第二項の規定により国土調査の成果を認証すること。
三 国の機関が行う国土調査に即して、国以外の者が行う国土調査相互間の調整を図り、及び国が行う国土調査の実施に協力すること。
四 国土調査に関する職員の養成及び研修を行うこと。
五 国土調査について普及及び宣伝を行うこと。
(委員会の組織及び運営)
第十六條 委員会は、都道府県知事、当該都道府県の区域内における市及び町村の長を代表する委員二人並びに関係行政機関の職員及び国土調査に関し学識経験を有する者のうちから都道府県知事が任命する委員八人をもつて組織する。
2 学識経験を有する者のうちから任命される委員の任期は、二年とする。但し、再任されることを妨げない。
3 都道府県知事は、会長として会務を総理し、及び委員会を代表する。
4 都道府県は、学識経験を有する者のうちから任命された委員に対し、報酬を支給しなければならない。
5 委員は、その職務を行うために要する費用の弁償を受けることができる。
6 委員会の事務は、当該都道府県において処理する。
7 前各項に定めるものを除く外、委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
第四章 成果の取扱
(地図及び簿册の閲覧)
第十七條 国土調査を行つた者は、その結果に基いて地図及び簿册を作成した場合においては、遅滯なく、その旨を公告し、当該国土調査が行われた市町村の事務所において、その公告の日から二十日間当該地図及び簿册を一般の閲覧に供しなければならない。
2 前項の規定により一般の閲覧に供された地図及び簿册に測量若しくは調査上の誤又は政令で定める限度以上の誤差があると認める者は、同項の期間内に、当該国土調査を行つた者に対して、その旨を申し出ることができる。
3 前項の規定による申出があつた場合においては、当該国土調査を行つた者は、その申出に係る事実があると認めたときは、遅滯なく、当該地図及び簿册を修正しなければならない。
(地図及び簿册の送付)
第十八條 前條第一項の規定により閲覧に供された地図及び簿册について同項の閲覧期間内に同條第二項の規定による申出がない場合、同項の規定による申出があつた場合において、その申出に係る事実がないと認めた場合又は同條第三項の規定により修正を行つた場合においては、当該地図及び簿册に係る国土調査を行つた者は、それぞれ国の機関にあつては総裁に、都道府県及び第八條第一項の勧告に基いて国土調査を行う者にあつては主務大臣に、その他の者にあつては委員会に、遅滯なく、その地図及び簿册を送付しなければならない。
(成果の認証)
第十九條 国土調査を行つた者は、前條の規定により送付した地図及び簿册(以下「成果」という。)について、それぞれ国の機関にあつては総裁に、都道府県及び第八條第一項の勧告に基いて国土調査を行う者にあつては主務大臣に、その他の者にあつては委員会に、政令で定める手続により、その認証を請求することができる。
2 総裁、主務大臣又は委員会は、前項の規定による請求を受けた場合においては、当該請求に係る国土調査の成果の審査の結果に基いて、その成果に測量若しくは調査上の誤又は政令で定める限度以上の誤差がある場合を除く外、その成果を認証しなければならない。
3 主務大臣又は委員会は、前項の規定により国土調査の成果を認証する場合においては、政令で定める手続により、あらかじめ、それぞれ総裁又は主務大臣の承認を得なければならない。
4 総裁、主務大臣又は委員会は、第二項の規定により国土調査の成果を認証した場合においては、遅滯なく、その旨を公告しなければならない。
5 国土調査以外の測量及び調査を行つた者が当該調査の結果作成された地図及び簿册について政令で定める手続により国土調査の成果としての認証を申請した場合においては、総裁又は主務大臣は、これらの地図及び簿册が第二項の規定により認証を受けた国土調査の成果と同等以上の精度又は正確さを有すると認めたときは、これらを同項の規定によつて認証された国土調査の成果と同一の効果があるものとして指定することができる。
6 主務大臣は、前項の規定による指定をする場合においては、あらかじめ、総裁の承認を得なければならない。
(土地台帳等の訂正)
第二十條 総裁、主務大臣又は委員会は、前條第二項の規定により国土調査の成果を認証した場合又は同條第五項の規定により指定をした場合においては、地籍調査にあつては当該調査に係る土地の登録の事務を掌る登記所に、その他の国土調査にあつては土地台帳以外の台帳で政令で定めるものを備える者に、それぞれ当該成果の写を送付しなければならない。
2 登記所又は前項の土地台帳以外の台帳を備える者は、政令で定めるところにより、前項の規定による送付に係る地図及び簿册に基いて、土地台帳又は同項の土地台帳以外の台帳の記載を改めなければならない。
3 前項の場合において、地籍調査が第三十二條の規定により行われたときは、登記所は、その成果に基いて分筆又は合筆をしなければならない。
(成果の保管)
第二十一條 総裁、主務大臣又は委員会は、第十九條第二項の規定により国土調査の成果を認証した場合においては、その成果の写を、それぞれ当該都道府県知事又は市町村長に、送付しなければならない。
2 都道府県知事又は市町村長は、前項の規定により送付された国土調査の成果の写を保管し、一般の閲覧に供しなければならない。
第五章 雑則
(総裁、主務大臣及び委員会が行う報告の請求及び勧告)
第二十二條 総裁又は主務大臣は、国土調査を実施する者に対し、随時、当該国土調査の実施に関し、報告を求め、又は必要な勧告をすることができる。
2 委員会は、国の機関及び都道府県以外の国土調査を実施する者に対し、随時、当該国土調査の実施に関し、報告を求め、又は必要な勧告をすることができる。
(国土調査に関係がある測量又は調査に関する報告及び資料の提出の請求)
第二十三條 総裁又は主務大臣は、この法律に規定するその権限の行使について必要があると認める場合においては、国土調査と関係がある測量又は調査を行う者に対し、報告及び資料の提出を求めることができる。
2 委員会は、第十五條に規定する事務を行うために必要があると認める場合においては、当該都道府県の区域内における市町村その他の者で国土調査と関係がある測量又は調査を行うものに対し、報告及び資料の提出を求めることができる。
3 国土調査を実施する者は、当該国土調査の実施のために必要がある場合においては、その調査事項について、国土調査と関係がある測量又は調査を行う人又は法人に対して報告及び資料の提出を求めることができる。
(立入)
第二十四條 国土調査を実施する者は、当該国土調査を実施するために必要がある場合においては、当該国土調査に従事する者を他人の土地に立ち入らせることができる。
2 前項の規定により宅地又はかき、さく等で囲まれた土地に立ち入らせる場合においては、国土調査を実施する者は、あらかじめ、当該土地の占有者に通知しなければならない。但し、占有者に対して、あらかじめ通知することが困難である場合においては、この限りでない。
3 第一項の場合においては、国土調査に従事する者は、その旨及びその者の身分を示す証票を携帶し、関係人の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。
(立会又は出頭)
第二十五條 国土調査を実施する者は、その実施のために必要がある場合においては、当該国土調査に係る土地の所有者その他の利害関係人又はこれらの者の代理人を現地に立ち会わせることができる。
2 国土調査を実施する国の機関又は地方公共団体は、その実施のために必要がある場合においては、当該国土調査に係る土地の所有者その他の利害関係人又はこれらの者の代理人に、当該国土調査に係る土地の所在する市町村内の事務所への出頭を求めることができる。
(障害物の除去)
第二十六條 国土調査を実施する者は、その実施のためにやむを得ない必要がある場合においては、あらかじめ所有者又は占有者の承諾を得て、当該国土調査に従事する者に、障害となる植物又はかき、さく等を伐除させることができる。
2 国土調査を実施する者は、山林、原野又はこれらに類する土地で当該国土調査を実施する場合において、あらかじめ所有者又は占有者の承諾を得ることが困難であり、且つ、植物又はかき、さく等の現状を著しく損傷しないときは前項の規定にかかわらず、所有者又は占有者の承諾を得ないで、当該国土調査に従事する者にこれらを伐除させることができる。この場合においては、遅滯なく、その旨を所有者又は占有者に通知しなければならない。
(土地の使用の一時制限又は土地等の一時使用)
第二十七條 国土調査を実施する者は、第二十八條の規定による試験材料の採取收集及び第三十條の規定による標識等の設置のために必要がある場合においては、あらかじめ占有者に通知して、土地(宅地を除く。)の使用を一時制限し、又は土地(宅地を除く。)、工作物若しくは樹木を一時使用することができる。
(試験材料の採取收集)
第二十八條 国土調査を実施する者は、その実施のために必要がある場合においては、あらかじめ占有者に通知して、当該国土調査が行われる土地にある土じよう、砂れき、水又は草木を試験材料として採取收集することができる。
(損失補償)
第二十九條 第二十六條第一項又は第二項の規定により植物若しくはかき、さく等を伐除し、又は第二十七條の規定により土地の使用を一時制限し、若しくは土地等を一時使用したために損失を生じた場合においては、当該国土調査を実施した者は、その損失を受けた者に対して、相当の価額により、その損失を補償しなければならない。
2 測量法(昭和二十四年法律第百八十八号)第二十條第二項の規定は、前項の場合に準用する。
(標識等の設置及び移転)
第三十條 国土調査を実施する者は、その実施のために必要な標識又は調査設備(以下「標識等」という。)を設置することができる。
2 国土調査を実施する者は、前項の規定により標識等を設置した場合においては、遅滯なく、当該標識等の所在地の市町村長にその旨を通知しなければならない。
3 標識等の敷地又はその附近で、標識等のき損その他その効用を害する虞がある行為をしようとする者は、当該標識等を設置した者に対し、理由を詳記した書面をもつてその標識等の移転を請求することができる。
4 前項の請求に理由があると認める場合においては、当該標識等を設置した者は、これを移転しなければならない。この場合において、その移転に要する費用は、移転を請求した者が負担しなければならない。
(標識等の保全)
第三十一條 何人も移転、き損その他の行為により、標識等の効用を害してはならない。
2 前條第二項の規定による通知を受けた市町村長は、当該通知に係る標識等について滅失、破損その他異状があることを発見した場合においては、遅滯なく、その旨を当該標識等を設置した者に通知しなければならない。
(分筆又は合筆があつたものとして行う地籍調査)
第三十二條 地方公共団体又は土地改良区等は、第五條第四項及び第六條第三項の指定を受けて地籍調査を行うために土地の分筆又は合筆があつたものとして調査を行う必要がある場合において、当該土地の所有者がこれに同意するときは、分筆又は合筆があつたものとして調査を行うことができる。
(特別地方公共団体に関する規定)
第三十三條 この法律中市町村又は市町村長に関する規定は、特別区、特別市又は地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第百五十五條第二項の市においては、それぞれ特別区若しくは特別区長、行政区若しくは行政区長又は地方自治法第百五十五條第二項の市の区若しくは区長に適用する。
2 この法律中町村又は町村長に関する規定は、町村組合で町村の事務の全部、役場事務又は国土調査に関する事務を共同処理するものがある場合においては、当該町村組合又はその管理者に適用する。
(測量法との関係)
第三十四條 国土調査を行うために実施する測量については、この章に特別の定がある場合を除く外、測量法の規定の適用があるものとする。
第六章 罰則
第三十五條 第三十一條第一項の規定に違反した者は、二年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
第三十六條 左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
一 国土調査の成果をして真実に反するものたらしめる行為をした者
二 国土調査に従事する者又はこれに従事した者で、国土調査の実施の際に知つた他人の秘密に属する事項を他に漏し、又は窃用した者
第三十七條 左の各号の一に該当する者は、一万円以下の罰金に処する。
一 国土調査の実施を妨げた者
二 第二十三條の規定により報告又は資料の提出を求められた場合において、報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の記載をした報告をし、若しくは虚偽の資料の提出をした者
三 第二十四條の規定による立入を拒み、又は妨げた者
四 第二十五條第一項の規定による立会又は同條第二項の規定による出頭を拒んだ者
五 第二十七條の規定による土地の使用の一時制限に違反し、又は土地、工作物若しくは樹木の一時使用を拒み、若しくは妨げた者
六 第二十八條の規定による試験材料の採取收集を拒み、又は妨げた者
第三十八條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関して前三條の違反行為をした場合においては、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本條の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため、当該業務に関し相当の注意及び監督が盡されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 経済安定本部設置法(昭和二十四年法律第百六十四号)の一部を次のように改正する。
第十五條第一項の表中土地調査準備会の項を次のように改める。
国土調査審議会
国土調査法(昭和二十六年法律第百八十号)の規定によりその権限に属せしめられた事項を行うこと
内閣総理大臣 吉田茂
法務総裁 大橋武夫
大蔵大臣 池田勇人
厚生大臣臨時代理 国務大臣 保利茂
農林大臣 広川弘禪
通商産業大臣 横尾龍
運輸大臣 山崎猛
建設大臣 増田甲子七
経済安定本部総裁 吉田茂
国土調査法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十六年六月一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百八十号
国土調査法
目次
第一章
目的及び定義(第一条・第二条)
第二章
計画及び実施(第三条―第十条)
第三章
国土調査審議会及び都道府県国土調査委員会(第十一条―第十六条)
第四章
成果の取扱(第十七条―第二十一条)
第五章
雑則(第二十二条―第三十四条)
第六章
罰則(第三十五条―第三十八条)
附則
第一章 目的及び定義
(目的)
第一条 この法律は、国土の開発及び保全並びにその利用の高度化に資するため、国土の実態を科学的且つ総合的に調査することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「国土調査」とは、左の各号に掲げる調査をいう。
一 国の機関が行う基本調査、土地分類調査又は水調査
二 都道府県が行う基本調査及び地方公共団体又は土地改良区その他の政令で定める者(以下「土地改良区等」という。)が行う土地分類調査、水調査又は地籍調査で第五条第四項又は第六条第三項の規定による指定を受けたもの
2 前項第一号及び第二号の「基本調査」とは、土地分類調査、水調査及び地籍調査の基礎とするために行う土地及び水面の測量(このために必要な基準点の測量を含む。)並びに土地分類調査及び水調査の基準の設定のための調査を行い、その結果を地図及び簿冊に作成することをいう。
3 第一項第一号及び第二号の「土地分類調査」とは、土地をその利用の可能性により分類する目的をもつて、土地の利用現況、土性その他の土じようの物理的及び化学的性質、浸蝕の状況その他の主要な自然的要素並びにその生産力に関する調査を行い、その結果を地図及び簿冊に作成することをいう。
4 第一項第一号及び第二号の「水調査」とは、治水及び利水に資する目的をもつて、気象、陸水の流量、水質及び流砂状況並びに取水量、用水量、排水量及び水利慣行等の水利に関する調査を行い、その結果を地図及び簿冊に作成することをいう。
5 第一項第二号の「地籍調査」とは、毎筆の土地について、その所有者、地番及び地目の調査並びに境界及び地積に関する測量を行い、その結果を地図及び簿冊に作成することをいう。
6 第二項から前項までに規定する地図及び簿冊の様式は、政令で定める。
7 第一項第一号に規定する基本調査、土地分類調査又は水調査を行う国の機関は、これらの国土調査の各々について政令で定める。
第二章 計画及び実施
(基礎計画及び作業規程の準則)
第三条 国の機関が行う国土調査及び都道府県が行う基本調査の基礎計画は、経済安定本部総裁(以下「総裁」という。)が定める。
2 国土調査の作業規程の準則は、経済安定本部令で定める。
3 国土調査に関する基礎計画及び国土調査の実施に関する作業規程の準則は、国土調査審議会の調査審議を経て定めなければならない。
(国の機関が行う国土調査の実施に関する計画及び作業規程)
第四条 国の機関が行う国土調査の実施計画は、前条第一項の基礎計画に基いて、当該調査を行う国の機関が作成する。
2 前項の実施計画は、あらかじめ、総裁の承認を得て定めなければならない。
3 第一項の国の機関が行う国土調査の作業規程は、前条第二項の作業規程の準則に基いて、当該調査を行う国の機関が作成して、これを総裁に届け出なければならない。
4 国の機関が第二条第一項第一号の国土調査を行う場合においては、当該調査が行われる都道府県におけるその実施の方法について、当該都道府県の意見を聞かなければならない。
(都道府県が行う国土調査の実施に関する計画及び作業規程)
第五条 都道府県は、国土調査として基本調査を行おうとする場合においては、第三条第一項及び第二項の基礎計画及び作業規程の準則に基いて、その実施に関する計画及び作業規程を作成して、これを主務大臣に届け出なければならない。
2 都道府県は、基本調査の成果に基いて、国土調査として基本調査以外の第二条第一項第二号の調査を行おうとする場合においては、その実施に関する計画を作成して、これを主務大臣に届け出なければならない。
3 都道府県は、第三条第二項の作業規程の準則に基いて、前項の規定による届出をした計画に係る調査の作業規程を作成して、これを主務大臣に届け出なければならない。
4 主務大臣は、前三項の規定による届出があつた場合においては、その届出に係る計画及び作業規程を審査し、その結果に基いて当該調査を国土調査として指定し、又は当該届出に係る計画若しくは作業規程の変更を勧告し、若しくは必要な助言をした場合において当該都道府県がこれに同意したときはその計画若しくは作業規程に変更を加えて国土調査として指定しなければならない。
5 主務大臣は、前項の規程による指定又は勧告若しくは助言をする場合においては、あらかじめ、総裁の承認を得なければならない。
(市町村又は土地改良区等が行う国土調査の実施に関する計画及び作業規程)
第六条 市町村又は土地改良区等は、基本調査の成果に基いて、国土調査として基本調査以外の第二条第一項第二号の調査を行おうとする場合においては、その実施に関する計画を作成して、これを都道府県国土調査委員会に届け出なければならない。
2 市町村又は土地改良区等は、第三条第二項の作業規程の準則に基いて、前項の規定による届出をした計画に係る調査の作業規程を作成して、これを都道府県国土調査委員会に届け出なければならない。
3 都道府県国土調査委員会は、前二項の規定による届出があつた場合においては、その届出に係る計画及び作業規程を審査し、その結果に基いて当該調査を国土調査として指定し、又は当該届出に係る計画若しくは作業規程の変更を勧告し、若しくは必要な助言をした場合において当該市町村又は土地改良区等がこれに同意したときはその計画若しくは作業規程に変更を加えて国土調査として指定しなければならない。
4 都道府県国土調査委員会は、前項の規定によつて当該国土調査の指定をしようとする場合においては、あらかじめ、総裁及び主務大臣の意見を求めることができる。
(国土調査の指定及び実施の公示)
第七条 主務大臣又は都道府県国土調査委員会は、第五条第四項又は前条第三項の規定により国土調査の指定をした場合においては、政令で定める手続により、遅滞なく、その旨を公示しなければならない。
2 国土調査を実施する者は、当該国土調査の開始前に、政令で定める手続により、その地域、期間その他必要な事項を公示しなければならない。
(国土調査の実施の勧告)
第八条 主務大臣は、都道府県が土地改良事業その他の政令で定める事業を行う場合又はこれらの事業が道若しくは二以上の都府県の区域にわたつて行われる場合においては、当該事業を行う者に対し、国土調査をあわせ行うことを勧告することができる。
2 第五条の規定は、前項の事業を行う者が同項の勧告に基いて国土調査をあわせ行う場合に準用する。この場合において同条中「都道府県」とあるのは「土地改良事業その他の政令で定める事業を行う者」と読み替えるものとする。
3 都道府県国土調査委員会は、当該都道府県の区域内において国の機関及び都道府県以外の者が第一項の事業を行う場合においては、当該事業を行う者に対し、国土調査をあわせ行うことを勧告することができる。
4 第六条の規定は、前項の事業を行う者が同項の勧告に基いて国土調査をあわせ行う場合に準用する。
(補助金の交付)
第九条 国は、左の各号の一に該当する場合においては、当該調査を行う者に対し、政令で定めるところにより、予算の範囲内において補助金を交付することができる。
一 第五条第四項の規定により当該都道府県の届出に係る計画及び作業規程に変更を加えた国土調査の指定があつた場合
二 第六条第三項の規定により当該市町村又は土地改良区等の届出に係る計画及び作業規程に同条第四項の規定による請求があつた場合において総裁及び主務大臣がした勧告又は助言に基く変更を加えた国土調査の指定があつた場合
三 前条第一項に規定する者が同項の勧告に基き、且つ、同条第二項において準用する第五条第四項の規定による指定によつて国土調査をあわせ行う場合
四 前条第三項に規定する者が同項の規定による勧告に基き、且つ、同条第四項において準用する第六条第四項の規定による請求があつた場合において総裁及び主務大臣がした勧告又は助言に基く指定によつて国土調査をあわせ行う場合
(国土調査の実施の委託)
第十条 国の機関、都道府県又は市町村は、国土調査を行おうとする場合においては、国の機関にあつては都道府県又は道若しくは二以上の都府県の区域にわたつて基本調査、土地分類調査又は水調査に類する調査を行う者に、都道府県にあつては市町村又は土地改良区等に、市町村にあつては土地改良区等に、それぞれ当該国土調査の実施を委託することができる。
第三章 国土調査審議会及び都道府県国土調査委員会
(国土調査審議会の設置)
第十一条 経済安定本部に、国土調査審議会(以下「審議会」という。)を置く。
(審議会への諮問事項等)
第十二条 総裁は、左に掲げる事項については、審議会の調査審議を経なければならない。
一 第三条第一項の規定による基礎計画の設定及び第四条第二項の規定による実施計画の承認
二 第三条第二項の規定による作業規程の準則の設定
三 第五条第五項(第八条第二項の規定において準用する場合を含む。)の規定による承認
四 第十九条第二項の規定による国土調査の成果の認証及び同条第三項の規定による承認
五 第十九条第五項の規定による国土調査以外の測量及び調査について作成された地図及び簿冊の国土調査の成果としての指定並びに同条第六項の規定による承認
2 審議会は、必要に応じて、国土調査に関し、総裁に勧告し、及び総裁を通じて関係各行政機関の長に意見を申し出ることができる。
(審議会の組織及び運営)
第十三条 審議会は、経済安定本部総務長官及び委員三十人以内で組織する。
2 委員は、関係行政機関の職員及び国土調査に関し学識経験を有する者のうちから、総裁が任命する。
3 学識経験を有する者のうちから任命された委員の任期は、二年とする。但し、再任されることを妨げない。
4 委員は、非常勤とする。
5 経済安定本部総務長官は、会長として会務を総理し、及び審議会を代表する。
6 前各項に定めるものを除く外、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
(都道府県国土調査委員会の設置)
第十四条 都道府県は、その区域内において国土調査が実施される場合においては、都道府県国土調査委員会(以下「委員会」という。)を設置しなければならない。
(所掌事務)
第十五条 委員会は、当該都道府県の区域内における左に掲げる事務をつかさどる。
一 第六条第三項の規定による指定又は勧告若しくは助言をすること。
二 第十九条第二項の規定により国土調査の成果を認証すること。
三 国の機関が行う国土調査に即して、国以外の者が行う国土調査相互間の調整を図り、及び国が行う国土調査の実施に協力すること。
四 国土調査に関する職員の養成及び研修を行うこと。
五 国土調査について普及及び宣伝を行うこと。
(委員会の組織及び運営)
第十六条 委員会は、都道府県知事、当該都道府県の区域内における市及び町村の長を代表する委員二人並びに関係行政機関の職員及び国土調査に関し学識経験を有する者のうちから都道府県知事が任命する委員八人をもつて組織する。
2 学識経験を有する者のうちから任命される委員の任期は、二年とする。但し、再任されることを妨げない。
3 都道府県知事は、会長として会務を総理し、及び委員会を代表する。
4 都道府県は、学識経験を有する者のうちから任命された委員に対し、報酬を支給しなければならない。
5 委員は、その職務を行うために要する費用の弁償を受けることができる。
6 委員会の事務は、当該都道府県において処理する。
7 前各項に定めるものを除く外、委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
第四章 成果の取扱
(地図及び簿冊の閲覧)
第十七条 国土調査を行つた者は、その結果に基いて地図及び簿冊を作成した場合においては、遅滞なく、その旨を公告し、当該国土調査が行われた市町村の事務所において、その公告の日から二十日間当該地図及び簿冊を一般の閲覧に供しなければならない。
2 前項の規定により一般の閲覧に供された地図及び簿冊に測量若しくは調査上の誤又は政令で定める限度以上の誤差があると認める者は、同項の期間内に、当該国土調査を行つた者に対して、その旨を申し出ることができる。
3 前項の規定による申出があつた場合においては、当該国土調査を行つた者は、その申出に係る事実があると認めたときは、遅滞なく、当該地図及び簿冊を修正しなければならない。
(地図及び簿冊の送付)
第十八条 前条第一項の規定により閲覧に供された地図及び簿冊について同項の閲覧期間内に同条第二項の規定による申出がない場合、同項の規定による申出があつた場合において、その申出に係る事実がないと認めた場合又は同条第三項の規定により修正を行つた場合においては、当該地図及び簿冊に係る国土調査を行つた者は、それぞれ国の機関にあつては総裁に、都道府県及び第八条第一項の勧告に基いて国土調査を行う者にあつては主務大臣に、その他の者にあつては委員会に、遅滞なく、その地図及び簿冊を送付しなければならない。
(成果の認証)
第十九条 国土調査を行つた者は、前条の規定により送付した地図及び簿冊(以下「成果」という。)について、それぞれ国の機関にあつては総裁に、都道府県及び第八条第一項の勧告に基いて国土調査を行う者にあつては主務大臣に、その他の者にあつては委員会に、政令で定める手続により、その認証を請求することができる。
2 総裁、主務大臣又は委員会は、前項の規定による請求を受けた場合においては、当該請求に係る国土調査の成果の審査の結果に基いて、その成果に測量若しくは調査上の誤又は政令で定める限度以上の誤差がある場合を除く外、その成果を認証しなければならない。
3 主務大臣又は委員会は、前項の規定により国土調査の成果を認証する場合においては、政令で定める手続により、あらかじめ、それぞれ総裁又は主務大臣の承認を得なければならない。
4 総裁、主務大臣又は委員会は、第二項の規定により国土調査の成果を認証した場合においては、遅滞なく、その旨を公告しなければならない。
5 国土調査以外の測量及び調査を行つた者が当該調査の結果作成された地図及び簿冊について政令で定める手続により国土調査の成果としての認証を申請した場合においては、総裁又は主務大臣は、これらの地図及び簿冊が第二項の規定により認証を受けた国土調査の成果と同等以上の精度又は正確さを有すると認めたときは、これらを同項の規定によつて認証された国土調査の成果と同一の効果があるものとして指定することができる。
6 主務大臣は、前項の規定による指定をする場合においては、あらかじめ、総裁の承認を得なければならない。
(土地台帳等の訂正)
第二十条 総裁、主務大臣又は委員会は、前条第二項の規定により国土調査の成果を認証した場合又は同条第五項の規定により指定をした場合においては、地籍調査にあつては当該調査に係る土地の登録の事務を掌る登記所に、その他の国土調査にあつては土地台帳以外の台帳で政令で定めるものを備える者に、それぞれ当該成果の写を送付しなければならない。
2 登記所又は前項の土地台帳以外の台帳を備える者は、政令で定めるところにより、前項の規定による送付に係る地図及び簿冊に基いて、土地台帳又は同項の土地台帳以外の台帳の記載を改めなければならない。
3 前項の場合において、地籍調査が第三十二条の規定により行われたときは、登記所は、その成果に基いて分筆又は合筆をしなければならない。
(成果の保管)
第二十一条 総裁、主務大臣又は委員会は、第十九条第二項の規定により国土調査の成果を認証した場合においては、その成果の写を、それぞれ当該都道府県知事又は市町村長に、送付しなければならない。
2 都道府県知事又は市町村長は、前項の規定により送付された国土調査の成果の写を保管し、一般の閲覧に供しなければならない。
第五章 雑則
(総裁、主務大臣及び委員会が行う報告の請求及び勧告)
第二十二条 総裁又は主務大臣は、国土調査を実施する者に対し、随時、当該国土調査の実施に関し、報告を求め、又は必要な勧告をすることができる。
2 委員会は、国の機関及び都道府県以外の国土調査を実施する者に対し、随時、当該国土調査の実施に関し、報告を求め、又は必要な勧告をすることができる。
(国土調査に関係がある測量又は調査に関する報告及び資料の提出の請求)
第二十三条 総裁又は主務大臣は、この法律に規定するその権限の行使について必要があると認める場合においては、国土調査と関係がある測量又は調査を行う者に対し、報告及び資料の提出を求めることができる。
2 委員会は、第十五条に規定する事務を行うために必要があると認める場合においては、当該都道府県の区域内における市町村その他の者で国土調査と関係がある測量又は調査を行うものに対し、報告及び資料の提出を求めることができる。
3 国土調査を実施する者は、当該国土調査の実施のために必要がある場合においては、その調査事項について、国土調査と関係がある測量又は調査を行う人又は法人に対して報告及び資料の提出を求めることができる。
(立入)
第二十四条 国土調査を実施する者は、当該国土調査を実施するために必要がある場合においては、当該国土調査に従事する者を他人の土地に立ち入らせることができる。
2 前項の規定により宅地又はかき、さく等で囲まれた土地に立ち入らせる場合においては、国土調査を実施する者は、あらかじめ、当該土地の占有者に通知しなければならない。但し、占有者に対して、あらかじめ通知することが困難である場合においては、この限りでない。
3 第一項の場合においては、国土調査に従事する者は、その旨及びその者の身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。
(立会又は出頭)
第二十五条 国土調査を実施する者は、その実施のために必要がある場合においては、当該国土調査に係る土地の所有者その他の利害関係人又はこれらの者の代理人を現地に立ち会わせることができる。
2 国土調査を実施する国の機関又は地方公共団体は、その実施のために必要がある場合においては、当該国土調査に係る土地の所有者その他の利害関係人又はこれらの者の代理人に、当該国土調査に係る土地の所在する市町村内の事務所への出頭を求めることができる。
(障害物の除去)
第二十六条 国土調査を実施する者は、その実施のためにやむを得ない必要がある場合においては、あらかじめ所有者又は占有者の承諾を得て、当該国土調査に従事する者に、障害となる植物又はかき、さく等を伐除させることができる。
2 国土調査を実施する者は、山林、原野又はこれらに類する土地で当該国土調査を実施する場合において、あらかじめ所有者又は占有者の承諾を得ることが困難であり、且つ、植物又はかき、さく等の現状を著しく損傷しないときは前項の規定にかかわらず、所有者又は占有者の承諾を得ないで、当該国土調査に従事する者にこれらを伐除させることができる。この場合においては、遅滞なく、その旨を所有者又は占有者に通知しなければならない。
(土地の使用の一時制限又は土地等の一時使用)
第二十七条 国土調査を実施する者は、第二十八条の規定による試験材料の採取収集及び第三十条の規定による標識等の設置のために必要がある場合においては、あらかじめ占有者に通知して、土地(宅地を除く。)の使用を一時制限し、又は土地(宅地を除く。)、工作物若しくは樹木を一時使用することができる。
(試験材料の採取収集)
第二十八条 国土調査を実施する者は、その実施のために必要がある場合においては、あらかじめ占有者に通知して、当該国土調査が行われる土地にある土じよう、砂れき、水又は草木を試験材料として採取収集することができる。
(損失補償)
第二十九条 第二十六条第一項又は第二項の規定により植物若しくはかき、さく等を伐除し、又は第二十七条の規定により土地の使用を一時制限し、若しくは土地等を一時使用したために損失を生じた場合においては、当該国土調査を実施した者は、その損失を受けた者に対して、相当の価額により、その損失を補償しなければならない。
2 測量法(昭和二十四年法律第百八十八号)第二十条第二項の規定は、前項の場合に準用する。
(標識等の設置及び移転)
第三十条 国土調査を実施する者は、その実施のために必要な標識又は調査設備(以下「標識等」という。)を設置することができる。
2 国土調査を実施する者は、前項の規定により標識等を設置した場合においては、遅滞なく、当該標識等の所在地の市町村長にその旨を通知しなければならない。
3 標識等の敷地又はその附近で、標識等のき損その他その効用を害する虞がある行為をしようとする者は、当該標識等を設置した者に対し、理由を詳記した書面をもつてその標識等の移転を請求することができる。
4 前項の請求に理由があると認める場合においては、当該標識等を設置した者は、これを移転しなければならない。この場合において、その移転に要する費用は、移転を請求した者が負担しなければならない。
(標識等の保全)
第三十一条 何人も移転、き損その他の行為により、標識等の効用を害してはならない。
2 前条第二項の規定による通知を受けた市町村長は、当該通知に係る標識等について滅失、破損その他異状があることを発見した場合においては、遅滞なく、その旨を当該標識等を設置した者に通知しなければならない。
(分筆又は合筆があつたものとして行う地籍調査)
第三十二条 地方公共団体又は土地改良区等は、第五条第四項及び第六条第三項の指定を受けて地籍調査を行うために土地の分筆又は合筆があつたものとして調査を行う必要がある場合において、当該土地の所有者がこれに同意するときは、分筆又は合筆があつたものとして調査を行うことができる。
(特別地方公共団体に関する規定)
第三十三条 この法律中市町村又は市町村長に関する規定は、特別区、特別市又は地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第百五十五条第二項の市においては、それぞれ特別区若しくは特別区長、行政区若しくは行政区長又は地方自治法第百五十五条第二項の市の区若しくは区長に適用する。
2 この法律中町村又は町村長に関する規定は、町村組合で町村の事務の全部、役場事務又は国土調査に関する事務を共同処理するものがある場合においては、当該町村組合又はその管理者に適用する。
(測量法との関係)
第三十四条 国土調査を行うために実施する測量については、この章に特別の定がある場合を除く外、測量法の規定の適用があるものとする。
第六章 罰則
第三十五条 第三十一条第一項の規定に違反した者は、二年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
第三十六条 左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
一 国土調査の成果をして真実に反するものたらしめる行為をした者
二 国土調査に従事する者又はこれに従事した者で、国土調査の実施の際に知つた他人の秘密に属する事項を他に漏し、又は窃用した者
第三十七条 左の各号の一に該当する者は、一万円以下の罰金に処する。
一 国土調査の実施を妨げた者
二 第二十三条の規定により報告又は資料の提出を求められた場合において、報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の記載をした報告をし、若しくは虚偽の資料の提出をした者
三 第二十四条の規定による立入を拒み、又は妨げた者
四 第二十五条第一項の規定による立会又は同条第二項の規定による出頭を拒んだ者
五 第二十七条の規定による土地の使用の一時制限に違反し、又は土地、工作物若しくは樹木の一時使用を拒み、若しくは妨げた者
六 第二十八条の規定による試験材料の採取収集を拒み、又は妨げた者
第三十八条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関して前三条の違反行為をした場合においては、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため、当該業務に関し相当の注意及び監督が尽されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 経済安定本部設置法(昭和二十四年法律第百六十四号)の一部を次のように改正する。
第十五条第一項の表中土地調査準備会の項を次のように改める。
国土調査審議会
国土調査法(昭和二十六年法律第百八十号)の規定によりその権限に属せしめられた事項を行うこと
内閣総理大臣 吉田茂
法務総裁 大橋武夫
大蔵大臣 池田勇人
厚生大臣臨時代理 国務大臣 保利茂
農林大臣 広川弘禅
通商産業大臣 横尾龍
運輸大臣 山崎猛
建設大臣 増田甲子七
経済安定本部総裁 吉田茂