海事代理士法
法令番号: 法律第32号
公布年月日: 昭和26年3月23日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

海事代理士の業務は、海事関係の行政機代行を行うものだが、昭和23年に関連規則が失効して以降、無規制状態となっていた。その結果、不適格者の開業により委託者が被害を受けるケースが発生し、また司法書士法との関係で船舶登記の取扱いに混乱が生じていた。そこで、海事代理士の資格要件を定め、試験・登録制度を設け、報酬額の届出・是正に関する規定を整備することで、委託者の利便性向上と業務の適正化を図るため、本法案を提出することとした。

参照した発言:
第10回国会 衆議院 運輸委員会 第6号

審議経過

第10回国会

衆議院
(昭和26年2月19日)
参議院
(昭和26年2月23日)
(昭和26年2月27日)
衆議院
(昭和26年3月1日)
参議院
(昭和26年3月2日)
衆議院
(昭和26年3月5日)
(昭和26年3月6日)
参議院
(昭和26年3月8日)
(昭和26年3月9日)
(昭和26年3月23日)
衆議院
(昭和26年6月5日)
海事代理士法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十六年三月二十三日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第三十二号
海事代理士法
第一章 総則
(業務)
第一條 海事代理士は、他人の委託により、対価を得て別表第一に定める行政機関に対し、別表第二に定める法令の規定に基く申請、届出、登記その他の手続をし、並びにこれらの手続に関し書類の作製をし、及び相談に応ずることを業とする。
(資格)
第二條 左の各号の一に該当する者は、海事代理士となる資格を有する。
一 海事代理士試験に合格した者
二 行政官庁において十年以上海事に関する事務に従事した者であつて、その職務の経歴により海事代理士の業務を行うのに十分な知識を有していると運輸大臣が認めたもの
(欠格事由)
第三條 左の各号の一に該当する者は、海事代理士となることができない。
一 未成年者
二 禁治産者又は準禁治産者
三 禁こ以上の刑に処せられた者であつて、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつてから二年を経過しないもの
四 国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)又は地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)の規定により懲戒免職の処分を受け、当該処分のあつた日から二年を経過しない者
五 第二十五條第一項の規定により登録のまつ消の処分を受け、その処分の日から五年を経過しない者
第二章 海事代理士試験
(試験の執行)
第四條 海事代理士試験(以下「試験」という。)は、運輸大臣が、毎年一回行う。
(試験方法)
第五條 試験は、海事代理士の業務を行う能力があるかどうかを判定するため、左の事項について筆記又は口述の方法で行う。
一 一般法律常識
二 海事に関する法令についての專門的知識
三 その他海事代理士の業務を行うのに必要な実務上の知識
2 試験に関する規程の制定、試験問題の作成及び試験の合格者の決定は、相当の地位及び海事代理士の業務について広い経験を有する者五名の意見を徴してされなければならない。
3 前項の意見は、海事代理士になるための公正且つ均等な機会を保障するために、十分尊重されなければならない。
(合格証書)
第六條 試験に合格した者には、当該試験に合格したことを証する証書を授與する。
(受験手数料)
第七條 試験を受けようとする者は、受験手数料として五百円を納付しなければならない。
2 前項の規定により納付した受験手数料は、試験を受けなかつた場合においても返還しない。
第三章 登録
(海事代理士名簿)
第八條 海運局長(運輸省設置法(昭和二十四年法律第百五十七号)第三十九條の海運局の長をいう。以下同じ。)は、次條から第十二條までの規定による登録をするため、運輸省令で定める樣式の海事代理士名簿を備え付けておかなければならない。
2 運輸大臣は、前項の規定により各海運局長が備え付ける海事代理士名簿により、全国海事代理士名簿を作製しなければならない。
(登録)
第九條 海事代理士となるには、海事代理士名簿に左の事項について登録を受けなければならない。
一 氏名
二 生年月日
三 事務所の所在地
四 業務に使用する印章
五 第六條の証書の番号(第二條第一号に該当する者に限る。)
2 海運局長は、海事代理士となる資格を有する者が、前項の規定により登録の申請をしたときは、その者が欠格事由に該当する場合を除く外、遅滯なく登録をしなければならない。
(あらたな事務所の設置の登録)
第十條 海事代理士が二以上の事務所を設置しようとするときは、運輸省令で定める手続に従い、既に存する事務所の所在地を管轄する海運局長の許可を受け、且つ、あらたに事務所を設置しようとする場所を管轄する海運局長の備え付ける海事代理士名簿に前條第一項第一号から第三号までに掲げる事項及び同項の規定により登録を受けた印章について登録を受けなければならない。
2 海運局長は、あらたな事務所の設置により当該海事代理士が、みずから誠実且つ敏速にその業務を処理することができなくなるおそれがあると認めるときは、前項の許可をしてはならない。
(登録事項の変更)
第十一條 海事代理士は、登録を受けた第九條第一項各号に掲げる事項に変更を生じたときは、その事由があつた日から七日以内に、海運局長に変更の登録を申請しなければならない。
2 海運局長は、前項の申請があつたときは、遅滯なく変更の登録をしなければならない。
(登録のまつ消)
第十二條 左の各号の一に該当する場合には、海運局長は、海事代理士の登録をまつ消しなければならない。
一 海事代理士が業務を廃止したとき。
二 海事代理士が死亡したとき。
三 海事代理士が第三條第二号から第四号までの一に該当するに至つたとき。
(業務の廃止等)
第十三條 海事代理士がその業務を廃止したとき、又は死亡したときは、当該海事代理士又はその相続人は、その主たる事務所の所在地を管轄する海運局長にその旨を届け出なければならない。
(海事代理士名簿等の閲覽)
第十四條 何人でも、運輸大臣又は海運局長に対し、全国海事代理士名簿又は海事代理士名簿の閲覽を請求することができる。
(登録料)
第十五條 第九條第一項の登録を受けようとする者は、千円、第十條第一項の登録を受けようとする者は、五百円、第十一條第一項の登録を受けようとする者は、二百円の登録料を納付しなければならない。
(登録の細目)
第十六條 この法律に定めるものの外、登録の申請書の樣式その他の海事代理士の登録に関する手続的事項は、運輸省令で定める。
第四章 海事代理士の業務
(海事代理士でない者の業務の制限)
第十七條 海事代理士でない者は、他人の委託により、対価を得て、業として第一條に規定する行為を行つてはならない。但し、他の法令に別段の定がある場合は、この限りでない。
2 海事代理士でない者は、海事代理士又はこれと紛らわしい名称を用いてはならない。
(誠実等の義務)
第十八條 海事代理士は、誠実且つ敏速に、みずからその事務を処理しなければならない。
(秘密を守る義務)
第十九條 海事代理士は、法律に別段の定がある場合を除く外、その業務上取り扱つた事項について知り得た秘密を他に漏してはならない。海事代理士でなくなつた後も、また同樣とする。
(業務に使用する印章)
第二十條 海事代理士は、その業務を行うにあたつて印章を使用するときは、第九條第一項の規定により登録をうけた印章によらなければならない。
(帳簿)
第二十一條 海事代理士は、運輸省令で定める樣式の帳簿を備え、左の事項を記載しなければならない。
一 取り扱つた事項の概要
二 委託者の氏名又は名称及び住所
三 委託者から受けた報酬の額
2 前項の帳簿は、当該帳簿に最終の記載をした日から起算して三年間保存しなければならない。
(報酬)
第二十二條 海事代理士は、あらかじめ、その受けようとする報酬の額を定め、海運局長に届け出なければならない。これを変更したときも同樣とする。
2 前項の報酬の額は、適正な原価を償い、且つ、適正な利潤を含むものでなければならず、また、特定の者に対し、差別的な取扱をするものであつてはならない。
3 委託者、他の海事代理士その他の利害関係人は、第一項の報酬の額が前項の規定に適合しないと認めるときは、その理由を具して海運局長に申し出て、報酬の額の変更を海事代理士に命ずべきことを求めることができる。
4 海運局長は、第一項の規定により届出があつた報酬の額が第二項の規定に適合しないと認めるとき、又は前項の請求に理由があると認めるときは、報酬の額の届出をした海事代理士に、日時及び場所を通知して公開による聽聞をし、その者に、その報酬の額が第二項の規定に適合することを述べる十分な機会を與えた後、その申立に理由がないと認めるときは、海事代理士に対し、理由を示して報酬の額を変更すべきことを命ずることができる。
5 前二項の規定は、海事代理士の受けようとする報酬の額が、事情の著しい変更により第二項の規定に適合しないものとなつた場合に準用する。
第二十三條 海事代理士は、前條第一項の規定により届け出た報酬の額を、その事務所に、公衆の見易いように掲示しなければならない。
第二十四條 海事代理士は、第二十二條第一項の規定により届け出た報酬の額よりも高額又は低額の報酬を受けてはならない。
(懲戒)
第二十五條 海事代理士が、この法律又はこの法律に基く処分に違反したときは、海運局長は、左に掲げる処分をすることができる。
一 戒告
二 一年以内の業務の停止
三 登録のまつ消
2 海運局長は、前項各号の処分をしようとするときは、公開による聽聞を行わなければならない。
3 海運局長は、前項の聽聞を行う場合には、その処分をしようとする事由並びに聽聞の日時及び場所を、その期日の七日前までに、当該海事代理士に通知しなければならない。
4 聽聞においては、当該海事代理士又はその代理人に、自己又は本人のため意見を述べ、且つ、証拠を提出する十分な機会が與えられなければならない。
(報告)
第二十六條 海運局長は、この法律を実施するため必要があると認めるときは、海事代理士に対し、その業務に関し報告を求めることができる。
2 前項の場合において、海運局長は、当該海事代理士に対して、報告について必要な協力をしなければならない。
第五章 罰則
第二十七條 第十七條第一項の規定に違反した者又は第二十五條第一項第二号の処分に違反して業務を行つた者は、六箇月以下の懲役又は二万円以下の罰金に処する。
第二十八條 第十七條第二項の規定に違反した者は、五千円以下の罰金に処する。
第二十九條 第十九條の規定に違反した者は、六箇月以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。
2 前項の罰は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
第三十條 第二十六條第一項の規定による報告をせず、又は虚僞の報告をした者は、五千円以下の罰金に処する。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、昭和二十六年六月一日から施行する。
(経過規定)
2 この法律施行の際現に第一條に規定する行為を業としている者は、この法律施行の日から六箇月間は、第十七條の規定にかかわらず、従前の名称を用いて、第一條に規定する行為を業として行うことができる。
3 旧海事代願人取締規則(明治四十一年逓信省令第五十二号)の規定による海事代願人の許可を受けた者は、この法律に基く海事代理士となる資格を有するものとする。
(運輸省設置法の改正)
4 運輸省設置法(昭和二十四年法律第百五十七号)の一部を次のように改正する。
第二十三條第一項第一号の次に次の一号を加える。
一の二 海事代理士に関すること。
第四十條第一項第二十五号の次に次の一号を加える。
二十五の二 海事代理士に関すること。
別表第一
一 運輸省の機関
二 法務局若しくは地方法務局又はその支局若しくは出張所
三 都道府県の機関
四 市町村の機関
別表第二
一 船舶法(明治三十二年法律第四十六号)
二 船舶安全法(昭和八年法律第十一号)
三 船員法(昭和二十二年法律第百号)
四 船舶職員法(明治二十九年法律第六十八号)
五 海上運送法(昭和二十四年法律第百八十七号)
六 臨時船舶管理法(昭和十二年法律第九十三号)
七 港則法(昭和二十三年法律第百七十四号)
八 造船法(昭和二十五年法律第百二十九号)
九 前各号に掲げる法律に基く命令
十 航海の制限等に関する件(昭和二十年運輸省令第四十号)
法務総裁 大橋武夫
運輸大臣 山崎猛
内閣総理大臣 吉田茂
海事代理士法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十六年三月二十三日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第三十二号
海事代理士法
第一章 総則
(業務)
第一条 海事代理士は、他人の委託により、対価を得て別表第一に定める行政機関に対し、別表第二に定める法令の規定に基く申請、届出、登記その他の手続をし、並びにこれらの手続に関し書類の作製をし、及び相談に応ずることを業とする。
(資格)
第二条 左の各号の一に該当する者は、海事代理士となる資格を有する。
一 海事代理士試験に合格した者
二 行政官庁において十年以上海事に関する事務に従事した者であつて、その職務の経歴により海事代理士の業務を行うのに十分な知識を有していると運輸大臣が認めたもの
(欠格事由)
第三条 左の各号の一に該当する者は、海事代理士となることができない。
一 未成年者
二 禁治産者又は準禁治産者
三 禁こ以上の刑に処せられた者であつて、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつてから二年を経過しないもの
四 国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)又は地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)の規定により懲戒免職の処分を受け、当該処分のあつた日から二年を経過しない者
五 第二十五条第一項の規定により登録のまつ消の処分を受け、その処分の日から五年を経過しない者
第二章 海事代理士試験
(試験の執行)
第四条 海事代理士試験(以下「試験」という。)は、運輸大臣が、毎年一回行う。
(試験方法)
第五条 試験は、海事代理士の業務を行う能力があるかどうかを判定するため、左の事項について筆記又は口述の方法で行う。
一 一般法律常識
二 海事に関する法令についての専門的知識
三 その他海事代理士の業務を行うのに必要な実務上の知識
2 試験に関する規程の制定、試験問題の作成及び試験の合格者の決定は、相当の地位及び海事代理士の業務について広い経験を有する者五名の意見を徴してされなければならない。
3 前項の意見は、海事代理士になるための公正且つ均等な機会を保障するために、十分尊重されなければならない。
(合格証書)
第六条 試験に合格した者には、当該試験に合格したことを証する証書を授与する。
(受験手数料)
第七条 試験を受けようとする者は、受験手数料として五百円を納付しなければならない。
2 前項の規定により納付した受験手数料は、試験を受けなかつた場合においても返還しない。
第三章 登録
(海事代理士名簿)
第八条 海運局長(運輸省設置法(昭和二十四年法律第百五十七号)第三十九条の海運局の長をいう。以下同じ。)は、次条から第十二条までの規定による登録をするため、運輸省令で定める様式の海事代理士名簿を備え付けておかなければならない。
2 運輸大臣は、前項の規定により各海運局長が備え付ける海事代理士名簿により、全国海事代理士名簿を作製しなければならない。
(登録)
第九条 海事代理士となるには、海事代理士名簿に左の事項について登録を受けなければならない。
一 氏名
二 生年月日
三 事務所の所在地
四 業務に使用する印章
五 第六条の証書の番号(第二条第一号に該当する者に限る。)
2 海運局長は、海事代理士となる資格を有する者が、前項の規定により登録の申請をしたときは、その者が欠格事由に該当する場合を除く外、遅滞なく登録をしなければならない。
(あらたな事務所の設置の登録)
第十条 海事代理士が二以上の事務所を設置しようとするときは、運輸省令で定める手続に従い、既に存する事務所の所在地を管轄する海運局長の許可を受け、且つ、あらたに事務所を設置しようとする場所を管轄する海運局長の備え付ける海事代理士名簿に前条第一項第一号から第三号までに掲げる事項及び同項の規定により登録を受けた印章について登録を受けなければならない。
2 海運局長は、あらたな事務所の設置により当該海事代理士が、みずから誠実且つ敏速にその業務を処理することができなくなるおそれがあると認めるときは、前項の許可をしてはならない。
(登録事項の変更)
第十一条 海事代理士は、登録を受けた第九条第一項各号に掲げる事項に変更を生じたときは、その事由があつた日から七日以内に、海運局長に変更の登録を申請しなければならない。
2 海運局長は、前項の申請があつたときは、遅滞なく変更の登録をしなければならない。
(登録のまつ消)
第十二条 左の各号の一に該当する場合には、海運局長は、海事代理士の登録をまつ消しなければならない。
一 海事代理士が業務を廃止したとき。
二 海事代理士が死亡したとき。
三 海事代理士が第三条第二号から第四号までの一に該当するに至つたとき。
(業務の廃止等)
第十三条 海事代理士がその業務を廃止したとき、又は死亡したときは、当該海事代理士又はその相続人は、その主たる事務所の所在地を管轄する海運局長にその旨を届け出なければならない。
(海事代理士名簿等の閲覧)
第十四条 何人でも、運輸大臣又は海運局長に対し、全国海事代理士名簿又は海事代理士名簿の閲覧を請求することができる。
(登録料)
第十五条 第九条第一項の登録を受けようとする者は、千円、第十条第一項の登録を受けようとする者は、五百円、第十一条第一項の登録を受けようとする者は、二百円の登録料を納付しなければならない。
(登録の細目)
第十六条 この法律に定めるものの外、登録の申請書の様式その他の海事代理士の登録に関する手続的事項は、運輸省令で定める。
第四章 海事代理士の業務
(海事代理士でない者の業務の制限)
第十七条 海事代理士でない者は、他人の委託により、対価を得て、業として第一条に規定する行為を行つてはならない。但し、他の法令に別段の定がある場合は、この限りでない。
2 海事代理士でない者は、海事代理士又はこれと紛らわしい名称を用いてはならない。
(誠実等の義務)
第十八条 海事代理士は、誠実且つ敏速に、みずからその事務を処理しなければならない。
(秘密を守る義務)
第十九条 海事代理士は、法律に別段の定がある場合を除く外、その業務上取り扱つた事項について知り得た秘密を他に漏してはならない。海事代理士でなくなつた後も、また同様とする。
(業務に使用する印章)
第二十条 海事代理士は、その業務を行うにあたつて印章を使用するときは、第九条第一項の規定により登録をうけた印章によらなければならない。
(帳簿)
第二十一条 海事代理士は、運輸省令で定める様式の帳簿を備え、左の事項を記載しなければならない。
一 取り扱つた事項の概要
二 委託者の氏名又は名称及び住所
三 委託者から受けた報酬の額
2 前項の帳簿は、当該帳簿に最終の記載をした日から起算して三年間保存しなければならない。
(報酬)
第二十二条 海事代理士は、あらかじめ、その受けようとする報酬の額を定め、海運局長に届け出なければならない。これを変更したときも同様とする。
2 前項の報酬の額は、適正な原価を償い、且つ、適正な利潤を含むものでなければならず、また、特定の者に対し、差別的な取扱をするものであつてはならない。
3 委託者、他の海事代理士その他の利害関係人は、第一項の報酬の額が前項の規定に適合しないと認めるときは、その理由を具して海運局長に申し出て、報酬の額の変更を海事代理士に命ずべきことを求めることができる。
4 海運局長は、第一項の規定により届出があつた報酬の額が第二項の規定に適合しないと認めるとき、又は前項の請求に理由があると認めるときは、報酬の額の届出をした海事代理士に、日時及び場所を通知して公開による聴聞をし、その者に、その報酬の額が第二項の規定に適合することを述べる十分な機会を与えた後、その申立に理由がないと認めるときは、海事代理士に対し、理由を示して報酬の額を変更すべきことを命ずることができる。
5 前二項の規定は、海事代理士の受けようとする報酬の額が、事情の著しい変更により第二項の規定に適合しないものとなつた場合に準用する。
第二十三条 海事代理士は、前条第一項の規定により届け出た報酬の額を、その事務所に、公衆の見易いように掲示しなければならない。
第二十四条 海事代理士は、第二十二条第一項の規定により届け出た報酬の額よりも高額又は低額の報酬を受けてはならない。
(懲戒)
第二十五条 海事代理士が、この法律又はこの法律に基く処分に違反したときは、海運局長は、左に掲げる処分をすることができる。
一 戒告
二 一年以内の業務の停止
三 登録のまつ消
2 海運局長は、前項各号の処分をしようとするときは、公開による聴聞を行わなければならない。
3 海運局長は、前項の聴聞を行う場合には、その処分をしようとする事由並びに聴聞の日時及び場所を、その期日の七日前までに、当該海事代理士に通知しなければならない。
4 聴聞においては、当該海事代理士又はその代理人に、自己又は本人のため意見を述べ、且つ、証拠を提出する十分な機会が与えられなければならない。
(報告)
第二十六条 海運局長は、この法律を実施するため必要があると認めるときは、海事代理士に対し、その業務に関し報告を求めることができる。
2 前項の場合において、海運局長は、当該海事代理士に対して、報告について必要な協力をしなければならない。
第五章 罰則
第二十七条 第十七条第一項の規定に違反した者又は第二十五条第一項第二号の処分に違反して業務を行つた者は、六箇月以下の懲役又は二万円以下の罰金に処する。
第二十八条 第十七条第二項の規定に違反した者は、五千円以下の罰金に処する。
第二十九条 第十九条の規定に違反した者は、六箇月以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。
2 前項の罰は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
第三十条 第二十六条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、五千円以下の罰金に処する。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、昭和二十六年六月一日から施行する。
(経過規定)
2 この法律施行の際現に第一条に規定する行為を業としている者は、この法律施行の日から六箇月間は、第十七条の規定にかかわらず、従前の名称を用いて、第一条に規定する行為を業として行うことができる。
3 旧海事代願人取締規則(明治四十一年逓信省令第五十二号)の規定による海事代願人の許可を受けた者は、この法律に基く海事代理士となる資格を有するものとする。
(運輸省設置法の改正)
4 運輸省設置法(昭和二十四年法律第百五十七号)の一部を次のように改正する。
第二十三条第一項第一号の次に次の一号を加える。
一の二 海事代理士に関すること。
第四十条第一項第二十五号の次に次の一号を加える。
二十五の二 海事代理士に関すること。
別表第一
一 運輸省の機関
二 法務局若しくは地方法務局又はその支局若しくは出張所
三 都道府県の機関
四 市町村の機関
別表第二
一 船舶法(明治三十二年法律第四十六号)
二 船舶安全法(昭和八年法律第十一号)
三 船員法(昭和二十二年法律第百号)
四 船舶職員法(明治二十九年法律第六十八号)
五 海上運送法(昭和二十四年法律第百八十七号)
六 臨時船舶管理法(昭和十二年法律第九十三号)
七 港則法(昭和二十三年法律第百七十四号)
八 造船法(昭和二十五年法律第百二十九号)
九 前各号に掲げる法律に基く命令
十 航海の制限等に関する件(昭和二十年運輸省令第四十号)
法務総裁 大橋武夫
運輸大臣 山崎猛
内閣総理大臣 吉田茂