(定義)
第一條 この法律において「質屋営業」とは、物品(有価証券を含む。以下同じ。)を質に取り、流質期限までに当該質物で担保される債権の弁済を受けないときは、当該質物をもつてその弁済に充てる約款を附して、金銭を貸し付ける営業をいう。
2 この法律において「質屋」とは、質屋営業を営む者で第二條第一項の規定による許可を受けたものをいう。
(質屋営業の許可)
第二條 質屋になろうとする者は、総理府令(以下「命令」という。)で定める手続により、営業所ごとに、その所在地を管轄する公安委員会の許可を受けなければならない。
2 前項の場合において、質屋になろうとする者は、自ら管理しないで営業所を設けるときは、その営業所の管理者を定めなければならない。
(許可の基準)
第三條 公安委員会は、第二條第一項の規定による許可を受けようとする者が、左の各号の一に該当する場合においては、許可をしてはならない。
一 禁こ以上の刑に処せられその執行を終り、又は執行を受けることのなくなつた後、三年を経過しない者
二 許可の申請前三年以内に、第五條の規定に違反して罰金の刑に処せられた者又は他の法令の規定に違反して罰金の刑に処せられその情状が質屋として不適当な者
四 営業について成年者と同一の能力を有しない未成年者又は禁治産者。但し、その者が質屋の相続人であつて、その法定代理人が前各号の一又は第六号に該当しない場合を除くものとする。
六 第二十五條第一項の規定により許可を取り消され、取消の日から三年を経過していない者
七 同居の親族のうちに前号に該当する者又は営業の停止を受けている者のある者
八 第一号から第六号までの一に該当する管理者を置く者
九 法人である場合においては、その業務を行う役員のうちに第一号から第六号までの一に該当する者がある者
十 第七條第一項の規定により、公安委員会が質物の保管設備について基準を定めた場合においては、その基準に適合する質物の保管設備を有しない者
2 公安委員会は、許可をしないことを決定しようとするときは、当該申請者の意見を聽き、且つ、申請者が許可を受けるためにする証拠の提出を許さなければならない。
3 公安委員会は、許可をしない場合においては、理由を附した書面をもつて申請者にその旨を通知しなければならない。
(営業内容の変更)
第四條 質屋は、同一公安委員会の管轄区域内において営業所を移転し、又は管理者を新たに設け、若しくは変更しようとするときは、命令で定める手続により、管轄公安委員会の許可を受けなければならない。
2 質屋は、廃業したとき若しくは長期休業をしようとするとき又は第二條第一項の規定による許可の申請書の記載事項につき変更を生じたときは、命令で定める手続により、管轄公安委員会に届け出なければならない。
3 質屋が死亡したときは、同居の親族、法定代理人又は管理者は、前項の規定に準じて死亡の届出をしなければならない。
(無許可営業の禁止)
第五條 質屋でない者は、質屋営業を営んではならない。
(名義貸の禁止)
第六條 質屋は、自己の名義をもつて、他人に質屋営業を営ませてはならない。
(保管設備)
第七條 公安委員会は、火災、盜難等の予防のため必要があると認めるときは、質屋の設けるべき質物の保管設備について、一定の基準を定めることができる。
2 公安委員会は、前項の基準を定めた場合は、一定の公告式により、これを告示するものとする。
3 第一項の規定により、公安委員会が質物の保管設備について基準を定めた場合には、質屋は、当該基準に従い質物の保管設備を設けなければならない。
(許可証)
第八條 公安委員会は、第二條第一項の規定による許可をするときは、許可証を交付しなければならない。
2 前項の許可証は、命令で定める手続により、三年ごとに当該公安委員会による更新を受けなければ、その効力を失う。
3 許可証の様式及びその書換、再交付等について必要な事項は、命令で定める。
4 第一項の規定による許可証の交付を受けた者は、当該許可証を亡失し、又は盜み取られたときは、命令で定める手続により、直ちに管轄公安委員会にその旨を届け出なければならない。
(許可証の返納)
第九條 前條の規定により許可証の交付を受けた者は、左の各号の一に該当するに至つた場合においては、命令で定める手続により、十日以内に当該許可証を管轄公安委員会に返納しなければならない。
三 許可証の再交付を受けた者が亡失し、又は盜み取られた許可証を回復するに至つたとき。
2 質屋が死亡した場合において、第四條第三項の規定により死亡の届出をする同居の親族、法定代理人又は管理者は、前項の規定により、許可証を返納しなければならない。
3 法人が合併以外の事由に因り解散し、又は合併に因り消滅したときは、合併以外の事由に因る解散の場合にあつては清算人又は破産管財人、合併の場合にあつては消滅した法人の役員であつた者は、第一項の規定により、許可証を返納しなければならない。
(許可の表示)
第十條 第二條第一項の許可を受けた者は、営業所の見易い場所に、命令で定めるところにより、許可を受けたことを証する表示をしなければならない。
(手数料)
第十一條 都道府県公安委員会から第八條の規定により許可証の交付を受け、又は許可証の更新若しくは再交付を受けようとする者は、命令で定めるところにより、それぞれ、許可手数料、更新手数料又は再交付手数料を国庫に納めなければならない。
2 前項の手数料の額は、千円以下の範囲内において、命令で定める。
3 市町村又は都が、市町村公安委員会又は特別区公安委員会の行う第八條の規定による許可証に関する事務について、手数料を徴收する場合においては、その額は、千円をこえることができない。
(営業の制限)
第十二條 質屋は、その営業所又は質置主の住所若しくは居所以外の場所において物品を質に取つてはならない。
(確認及び申告)
第十三條 質屋は、物品を質に取ろうとするときは、命令で定める方法により、質置主の住所、氏名、職業及び年令を確認しなければならない。
不正品の疑がある場合においては、直ちに警察官又は警察吏員にその旨を申告しなければならない。
(帳簿)
第十四條 質屋は、命令で定める様式により、帳簿を備え、質契約並びに質物返還及び流質物処分をしたときは、その都度、その帳簿に左に掲げる事項を記載しなければならない。
第十五條 質屋は、前條の帳簿を廃棄しようとするときは、営業所の所在地の所轄警察署長の承認を受けなければならない。
2 質屋は、前條の帳簿をき損し、亡失し、又は盜み取られたときは、直ちに前項の警察署長に届け出なければならない。
(質受証)
第十六條 質屋は、質契約をしたときは、質札又は通帳を質置主に交付しなければならない。
2 質札及び通帳の様式並びにこれに記載すべき事項は、命令で定める。
(掲示)
第十七條 質屋は、左の事項を営業所内の見易い場所に掲示しなければならない。
四 前各号に掲げるものの外、質契約の内容となるべき事項
2 前項第三号の流質期限は、質契約成立の日から三月未満の期間で定めてはならない。
3 質屋は、第一項第一号から第四号までに掲げる事項に係る掲示の内容と異り、且つ、質置主の不利益となるような質契約をしてはならない。
4 前項の規定に違反する契約は、その違反する部分については、当該掲示の内容によりされたものとみなす。
(質物の返還)
第十八條 質置主は、流質期限前は、いつでも元利金を弁済して、その質物を受け戻すことができる。この場合においては、質置主は、質札を返還し、又は通帳に質物を受け戻した旨の記入を受けるものとする。
2 質置は、質置主又は質物の受取について正当な権限を有することを証するに足りる資料を呈示した者以外の者に質物を返還してはならない。
(流質物の取得及び処分)
第十九條 質屋は、流質期限を経過した時において、その質物の所有権を取得する。但し、質屋は、当該流質物を処分するまでは、質置主が元金及び流質期限までの利子並びに流質期限経過の時に質契約を更新したとすれば支拂うことを要する利子に相当する金額を支拂つたときは、これを返還するように努めるものとする。
2 質屋は、古物営業法(昭和二十四年法律第百八号)第十五條第二項の規定にかかわらず、同法第一條第三項の市場において、流質物の売却をすることができる。
(質物が滅失した場合等の措置)
第二十條 災害その他の事由に因り、質物が滅失し、若しくはき損し、又は盜難にかかつた場合においては、質屋は、遅滯なく、当該質物の質置主にその旨を通知しなければならない。
2 災害その他質屋及び質置主双方の責に帰することのできない事由に因り、質屋が質物の占有を失つた場合においては、質屋は、その質物で担保される債権を失う。
3 質屋は、その責に帰すべき事由に因り、質物が滅失し、若しくはき損し、又は盜難にかかつた場合における質置主の損害賠償請求権をあらかじめ放棄させる契約をすることはできない。
(品触)
第二十一條 警察長又は警察署長は、必要があると認めるときは、質屋に対して、ぞう物の品触を発することができる。
2 質屋は、前項の品触を受けたときは、その品触書に到達の日付を記載し、その日から六月間これを保存しなければならない。
3 質屋は、品触を受けた日にその物を質物若しくは流質物として所持していたとき、又は前項の期間内に品触に相当する質物を受け取つたときは、その旨を直ちに警察官又は警察吏員に届け出なければならない。
(盜品及び遺失物の回復)
第二十二條 質屋が質物又は流質物として所持する物品が、盜品又は遺失物であつた場合においては、その質屋が当該物品を同種の物を取り扱う営業者から善意で質に取つた場合においても、被害者又は遺失主は、質屋に対し、これを無償で回復することを求めることができる。但し、盜難又は遺失のときから一年を経過した後においては、この限りでない。
(差止)
第二十三條 質屋が質物又は流質物として所持する物品について、ぞう物又は遺失物であると疑うに足りる相当な理由がある場合においては、警察署長は、当該質屋に対し、三十日以内の期間を定めて、その物品の保管を命ずることができる。
(立入及び調査)
第二十四條 警察官又は警察吏員は、必要があると認めるときは、営業時間中において、質屋の営業所及び質物の保管場所に立ち入り、質物及び第十四條の規定による帳簿を検査し、又は関係者に質問することができる。
2 前項の場合においては、警察官又は警察吏員は、その身分を証明する証票を携帶し、関係者に、これを呈示しなければならない。
(許可の取消又は停止)
第二十五條 公安委員会は、左の各号の一に該当する場合において必要があると認めるときは、質屋の許可を取り消し、又は一年以内の期間を定めて質屋営業の停止を命ずることができる。
一 質屋が他の法令に違反して、禁こ以上の刑に処せられたとき、又は罰金の刑に処せられその情状が質屋として不適当なとき。
二 質屋が第三條第一項第三号、第五号若しくは第八号に該当したとき、又は質屋が法人である場合においてその業務を行う役員のうちに第三條第一項第一号若しくは第三号から第六号までの一に該当した者若しくは許可の取消若しくは営業の停止をしようとするとき以前三年以内に第五條の規定に違反して罰金の刑に処せられた者若しくは許可の取消若しくは営業の停止をしようとするとき以前三年以内に他の法令に違反して罰金の刑に処せられその情状が質屋として不適当な者があるに至つたとき。
三 質屋の法定代理人が第三條第一項第一号、第三号若しくは第六号に該当し、若しくは該当するに至つたとき又は許可の取消若しくは営業の停止をしようとするとき以前三年以内に他の法令の規定に違反して罰金の刑に処せられその情状が質屋として不適当なとき。
四 質屋、その代理人、使用人その他の従業者がこの法律又はこの法律に基く命令に違反したとき。但し、質屋の代理人、使用人その他の従業者がこの法律又はこの法律に基く命令に違反した場合においては、質屋(質屋が無能力者である場合においては、その法定代理人)がその代理人又は使用人その他の従業者のした当該違反行為を防止するために相当の注意を怠らなかつたことが証明された場合においては、この限りでない。
五 質屋が正当の理由がなくてその許可証の更新を受けないとき。
2 二以上の営業所を有する質屋が、一の営業所につき、前項の規定により質屋の許可を取り消され、又は質屋営業を停止された場合においては、他の営業所についても、その所在地を管轄する公安委員会は、情状により、その質屋の許可を取り消し、又は営業を停止することができる。この場合においては、前者の所在地が当該公安委員会の管轄に属すると否とを問わない。
(聽聞)
第二十六條 公安委員会は、前條の規定による処分をしようとする場合においては、あらかじめ当該営業者又はその代理人の出頭を求めて、釈明及び証拠の提出の機会を與えるため、公開による聽聞を行わなければならない。
2 前項の場合において、公安委員会は、処分をしようとする事由並びに聽聞の期日及び場所を、期日の一週間前までに、当該営業者に通告し、且つ、聽聞の期日及び場所を公示しなければならない。
(公安委員会の通知)
第二十七條 公安委員会は、他の公安委員会の許可を有する質屋又はその代理人、使用人、その他の従業者がこの法律又はこの法律に基く命令に違反したことを認めたときは、遅滯なく、その事実を当該公安委員会に通知しなければならない。
2 公安委員会は、質屋の許可を取り消し、又は営業の停止をした場合において、当該質屋が他の公安委員会の管轄区域内に営業所を有するときは、直ちにその旨を当該公安委員会に通知しなければならない。
(質置主の保護)
第二十八條 質屋が廃業し、又は質屋の許可を取り消された場合においては、質屋であつた者は、廃業又は許可の取消を受けた日以前に成立した質契約については、当該質契約の内容に従い、貸付金の回收、質物の返還その他当該質契約を終了させるため必要な行為をしなければならない。
2 前項の規定は、質屋が営業の停止を受けた場合について準用する。
3 質屋が左の各号の一に該当するに至つた場合においては、当該各号に掲げる者は、当該各号に掲げる事由の発生した日以前に成立した質契約について、当該質契約の内容に従い、貸付金の回收、質物の返還その他当該質契約を終了させるため必要な行為をしなければならない。
一 死亡した場合においては、その相続人のうち当該質屋の営業所ごとに管轄公安委員会の承認を受けたもの又は相続財産管理人
二 法人である場合において、合併以外の事由に因り解散したときは、清算人又は破産管理人
三 法人である場合において、合併に因り消滅したときは、合併後存続する法人又は合併に因り設立した法人
4 第十四條、第十五條、第十八條から第二十四條までの規定の適用については、第一項の者及び前項各号に掲げる者は、質屋とみなす。
5 第一項(第二項において準用する場合を含む。)又は第三項に規定する行為は、管轄公安委員会の承認を受けた場合を除くの外、旧営業所においてしなければならない。
6 公安委員会は、第三項第一号又は前項の場合において、質置主の保護のため必要があると認めるときは、承認を與えないことができる。
(訴の提起)
第二十九條 この法律の規定により公安委員会又は警察署長の処分を受けた者は、行政事件訴訟特例法(昭和二十三年法律第八十一号)により訴を提起することができる。
(罰則)
第三十條 第五條若しくは第六條の規定に違反し、又は第二十五條の規定による処分に違反した者は、三年以下の懲役若しくは十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第三十一條 第十二條の規定に違反した者は、一年以下の懲役若しくは三万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第三十二條 第四條第一項、第十三條前段、第十四條、第十五條第一項又は第二十一條第二項若しくは第三項の規定に違反し、又は第二十三條の規定による処分に違反した者は、六月以下の懲役若しくは一万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第三十三條 左の各号の一に該当する者は、一万円以下の罰金に処する。
一 第四條第二項若しくは第三項、第八條第四項、第九條、第十條、第十五條第二項、第十七條第一項、第二項若しくは第三項、第十八條第二項又は第二十八條第一項(同條第二項において準用する場合を含む。)、第三項若しくは第五項の規定に違反した者
二 第二十四條第一項の規定による警察官又は警察吏員の立入又は質物若しくは帳簿の検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第三十四條 過失により第二十一條第三項の規定に違反した者は、拘留又は科料に処する。
第三十五條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第三十條から第三十三條までの違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本條の罰金刑を科する。但し、人(人が無能力者である場合においては、その法定代理人)がその代理人又は使用人その他従業者のした当該違反行為を防止するために相当の注意を怠らなかつたことが証明された場合においては、その人については、この限りでない。