朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル公益質屋法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二年三月三十日
內閣總理大臣 若槻禮次郞
內務大臣 濱口雄幸
大藏大臣 片岡直溫
法律第三十五號
公益質屋法
第一條 市町村又ハ公益法人ハ本法ニ依リ公益質屋ヲ經營スルコトヲ得
公益法人公益質屋ヲ經營スル場合ニ於テハ業務所ヲ定メ地方長官ノ認可ヲ受クベシ
第二條 本法ニ依ル公益質屋ニ非ザレバ其ノ名稱中ニ公益質屋タルコトヲ示スベキ文字ヲ用フルコトヲ得ズ
第三條 國庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ豫算ノ範圍內ニ於テ市町村又ハ公益法人ニ對シ公益質屋ノ設備ニ要スル經費ノ二分ノ一以內ヲ補助ス
第四條 貸付金額ハ一口ニ付十圓、一世帶ニ付五十圓ヲ超ユルコトヲ得ズ但シ地方長官ノ認可ヲ受ケタル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラズ
第五條 貸付利率ハ一月ニ付百分ノ一・二五ヲ超ユルコトヲ得ズ但シ特別ノ事情アル地方ニ於テ地方長官ノ認可ヲ受ケタル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラズ
利子ノ計算ニ關スル期間ニ付テハ月ヲ以テ計算シ民法第百四十條乃至第百四十三條ノ規定ヲ適用ス但シ一月ニ滿チザル日數ガ十六日以上ナルトキハ之ヲ一月トシ其ノ十六日未滿ナルトキハ之ヲ半月トシテ計算ス
第六條 貸付金ニ對スル利子ニシテ一錢未滿ノ端數ヲ生ジタルトキハ其ノ端數ハ之ヲ切捨ツ其ノ全額一錢未滿ナルトキハ之ヲ一錢トス
第七條 公益質屋ニ於テハ其ノ質契約ニ關シ元金及利子ノ外何等ノ名義ヲ以テスルモ質置主ヨリ金錢其ノ他ノ利益ヲ受クルコトヲ得ズ
第八條 流質期限ハ質契約成立ノ日ヨリ四月未滿ノ期間內ニ於テ之ヲ定ムルコトヲ得ズ四月未滿ノ期間內ニ於テ之ヲ定メタルトキハ其ノ期間ヲ四月トス
第九條 流質期限到來前ニ於テ質物ノ交換又ハ質物ノ一部ノ受戾ヲ爲シタルトキト雖モ利子ノ計算及流質期限ニ付テハ質契約ノ變更ナキモノト看做ス
第十條 質置主ハ命令ノ定ムル所ニ依リ一部辨濟ヲ爲スコトヲ得
第十一條 流質物ハ競爭入札ニ依リ之ヲ賣却スベシ
特別ノ事情アル場合ニ於ケル流質物ノ處分ニ關シテハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十二條 流質物處分前ニ於テ質置主ガ元金、利子及流質期限經過後質契約ガ存續シタリトセバ支拂フコトヲ要スベキ利子ニ相當スル金額ヲ支拂ヒタルトキハ流質物ハ之ヲ返還スベシ
第十三條 流質物ノ賣却代金ヨリ元金及利子ニ相當スル金額竝ニ命令ヲ以テ定ムル手數料ヲ控除シタル殘餘金ハ之ヲ質置主ニ交付スベシ
流質物ヲ一括シテ賣却シタル場合ニ於ケル各流質物ニ對スル代金ノ計算ニ關シテハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十四條 前條第一項ノ規定ニ依リ交付スベキ殘餘金額ハ之ヲ質置主ニ通知スベシ
前項ノ通知ヲ發シタル日ヨリ六月ヲ經過シタルトキハ殘餘金ノ交付ヲ請求スルコトヲ得ズ
第十五條 質屋取締法第二條乃至第八條、第十條乃至第十七條及第二十條ノ規定ハ公益質屋ニ之ヲ準用ス
質屋取締法第十二條ノ規定ハ第十二條ノ流質物ノ返還及第十三條第一項ノ殘餘金ノ交付ニ之ヲ準用ス
第十六條 本法ニ違反スル質契約ニシテ質置主ニ不利ナルモノハ其ノ不利ナル部分ニ限リ之ヲ爲サザルモノト看做ス
第十七條 公益法人ノ經營スル公益質屋ノ監督上必要アルトキハ地方長官ハ其ノ業務ニ關スル諸般ノ報告ヲ爲サシメ、書類帳簿ヲ徵シ及業務又ハ會計ヲ檢閱スルコトヲ得
第十八條 第二條ノ規定ニ違反シタル者ハ百圓以下ノ過料ニ處ス
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
第十九條 公益質屋ヲ經營スル公益法人ノ理事又ハ從業員左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第十五條ノ規定ニ依リ準用スル質屋取締法第二條乃至第四條、第五條第一項第二項、第六條、第七條第一項、第八條第一項、第十四條又ハ第十七條ノ規定ニ違反シタルトキ
二 第十五條ノ規定ニ依リ準用スル質屋取締法第十五條ノ場合ニ於テ虛僞ノ陳述ヲ爲シ又ハ故意ニ物品若ハ帳簿ヲ毀損亡失シタルトキ
第二十條 本法中町村ニ關スル規定ハ町村制ヲ施行セザル地ニ於テハ町村ニ準ズベキモノニ之ヲ適用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ市町村又ハ公益法人ノ經營スル公益質屋ハ本法ニ依ル公益質屋ト看做ス
市町村又ハ公益法人ノ經營スル公益質屋ニ於テ本法施行前ニ爲シタル質契約ハ本法ニ拘ラズ仍其ノ效力ヲ有ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル公益質屋法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二年三月三十日
内閣総理大臣 若槻礼次郎
内務大臣 浜口雄幸
大蔵大臣 片岡直温
法律第三十五号
公益質屋法
第一条 市町村又ハ公益法人ハ本法ニ依リ公益質屋ヲ経営スルコトヲ得
公益法人公益質屋ヲ経営スル場合ニ於テハ業務所ヲ定メ地方長官ノ認可ヲ受クベシ
第二条 本法ニ依ル公益質屋ニ非ザレバ其ノ名称中ニ公益質屋タルコトヲ示スベキ文字ヲ用フルコトヲ得ズ
第三条 国庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ予算ノ範囲内ニ於テ市町村又ハ公益法人ニ対シ公益質屋ノ設備ニ要スル経費ノ二分ノ一以内ヲ補助ス
第四条 貸付金額ハ一口ニ付十円、一世帯ニ付五十円ヲ超ユルコトヲ得ズ但シ地方長官ノ認可ヲ受ケタル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラズ
第五条 貸付利率ハ一月ニ付百分ノ一・二五ヲ超ユルコトヲ得ズ但シ特別ノ事情アル地方ニ於テ地方長官ノ認可ヲ受ケタル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラズ
利子ノ計算ニ関スル期間ニ付テハ月ヲ以テ計算シ民法第百四十条乃至第百四十三条ノ規定ヲ適用ス但シ一月ニ満チザル日数ガ十六日以上ナルトキハ之ヲ一月トシ其ノ十六日未満ナルトキハ之ヲ半月トシテ計算ス
第六条 貸付金ニ対スル利子ニシテ一銭未満ノ端数ヲ生ジタルトキハ其ノ端数ハ之ヲ切捨ツ其ノ全額一銭未満ナルトキハ之ヲ一銭トス
第七条 公益質屋ニ於テハ其ノ質契約ニ関シ元金及利子ノ外何等ノ名義ヲ以テスルモ質置主ヨリ金銭其ノ他ノ利益ヲ受クルコトヲ得ズ
第八条 流質期限ハ質契約成立ノ日ヨリ四月未満ノ期間内ニ於テ之ヲ定ムルコトヲ得ズ四月未満ノ期間内ニ於テ之ヲ定メタルトキハ其ノ期間ヲ四月トス
第九条 流質期限到来前ニ於テ質物ノ交換又ハ質物ノ一部ノ受戻ヲ為シタルトキト雖モ利子ノ計算及流質期限ニ付テハ質契約ノ変更ナキモノト看做ス
第十条 質置主ハ命令ノ定ムル所ニ依リ一部弁済ヲ為スコトヲ得
第十一条 流質物ハ競争入札ニ依リ之ヲ売却スベシ
特別ノ事情アル場合ニ於ケル流質物ノ処分ニ関シテハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十二条 流質物処分前ニ於テ質置主ガ元金、利子及流質期限経過後質契約ガ存続シタリトセバ支払フコトヲ要スベキ利子ニ相当スル金額ヲ支払ヒタルトキハ流質物ハ之ヲ返還スベシ
第十三条 流質物ノ売却代金ヨリ元金及利子ニ相当スル金額並ニ命令ヲ以テ定ムル手数料ヲ控除シタル残余金ハ之ヲ質置主ニ交付スベシ
流質物ヲ一括シテ売却シタル場合ニ於ケル各流質物ニ対スル代金ノ計算ニ関シテハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十四条 前条第一項ノ規定ニ依リ交付スベキ残余金額ハ之ヲ質置主ニ通知スベシ
前項ノ通知ヲ発シタル日ヨリ六月ヲ経過シタルトキハ残余金ノ交付ヲ請求スルコトヲ得ズ
第十五条 質屋取締法第二条乃至第八条、第十条乃至第十七条及第二十条ノ規定ハ公益質屋ニ之ヲ準用ス
質屋取締法第十二条ノ規定ハ第十二条ノ流質物ノ返還及第十三条第一項ノ残余金ノ交付ニ之ヲ準用ス
第十六条 本法ニ違反スル質契約ニシテ質置主ニ不利ナルモノハ其ノ不利ナル部分ニ限リ之ヲ為サザルモノト看做ス
第十七条 公益法人ノ経営スル公益質屋ノ監督上必要アルトキハ地方長官ハ其ノ業務ニ関スル諸般ノ報告ヲ為サシメ、書類帳簿ヲ徴シ及業務又ハ会計ヲ検閲スルコトヲ得
第十八条 第二条ノ規定ニ違反シタル者ハ百円以下ノ過料ニ処ス
非訟事件手続法第二百六条乃至第二百八条ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
第十九条 公益質屋ヲ経営スル公益法人ノ理事又ハ従業員左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ百円以下ノ罰金ニ処ス
一 第十五条ノ規定ニ依リ準用スル質屋取締法第二条乃至第四条、第五条第一項第二項、第六条、第七条第一項、第八条第一項、第十四条又ハ第十七条ノ規定ニ違反シタルトキ
二 第十五条ノ規定ニ依リ準用スル質屋取締法第十五条ノ場合ニ於テ虚偽ノ陳述ヲ為シ又ハ故意ニ物品若ハ帳簿ヲ毀損亡失シタルトキ
第二十条 本法中町村ニ関スル規定ハ町村制ヲ施行セザル地ニ於テハ町村ニ準ズベキモノニ之ヲ適用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ市町村又ハ公益法人ノ経営スル公益質屋ハ本法ニ依ル公益質屋ト看做ス
市町村又ハ公益法人ノ経営スル公益質屋ニ於テ本法施行前ニ為シタル質契約ハ本法ニ拘ラズ仍其ノ効力ヲ有ス