(目的)
第一条 この法律は、地震による災害から国民の生命、身体及び財産を保護するため、地震防災緊急事業五箇年計画の作成及びこれに基づく事業に係る国の財政上の特別措置について定めるとともに、地震に関する調査研究の推進のための体制の整備等について定めることにより、地震防災対策の強化を図り、もって社会の秩序の維持と公共の福祉の確保に資することを目的とする。
(地震防災緊急事業五箇年計画の作成等)
第二条 都道府県知事は、人口及び産業の集積等の社会的条件、地勢等の自然的条件等を総合的に勘案して、地震により著しい被害が生ずるおそれがあると認められる地区について、災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第四十条に規定する都道府県地域防災計画に定められた事項のうち、地震防災上緊急に整備すべき施設等に関するものについて平成八年度以降の年度を初年度とする五箇年間の計画(以下「地震防災緊急事業五箇年計画」という。)を作成することができる。
2 都道府県知事は、地震防災緊急事業五箇年計画を作成しようとするときは、あらかじめ、関係市町村長の意見を聴かなければならない。
3 都道府県知事は、地震防災緊急事業五箇年計画を作成しようとするときは、あらかじめ、内閣総理大臣に協議しなければならない。この場合において、内閣総理大臣は、関係行政機関の長の意見を聴かなければならない。
4 前三項の規定は、地震防災緊急事業五箇年計画を変更する場合について準用する。
(地震防災緊急事業五箇年計画の内容)
第三条 地震防災緊急事業五箇年計画は、次に掲げる施設等の整備等であって、主務大臣の定める基準に適合するものに関する事項について定めるものとする。
五 緊急輸送を確保するため必要な道路、交通管制施設、ヘリポート、港湾施設(港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)第二条第五項第二号の外かく施設、同項第三号のけい留施設及び同項第四号の臨港交通施設に限る。)又は漁港施設(漁港法(昭和二十五年法律第百三十七号)第三条第一号イの外郭施設、同号ロの係留施設及び同条第二号イの輸送施設に限る。)
六 共同溝、電線共同溝等の電線、水管等の公益物件を収容するための施設
七 医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第三十一条に規定する公的医療機関その他政令で定める医療機関のうち、地震防災上改築又は補強を要するもの
八 社会福祉施設のうち、地震防災上改築又は補強を要するもの
九 公立の小学校又は中学校のうち、地震防災上改築又は補強を要するもの
十 公立の盲学校、ろう学校又は養護学校のうち、地震防災上改築又は補強を要するもの
十一 第七号から前号までに掲げるもののほか、不特定かつ多数の者が利用する公的建造物のうち、地震防災上補強を要するもの
十二 津波により生ずる被害の発生を防止し、又は軽減することにより円滑な避難を確保するため必要な海岸法(昭和三十一年法律第百一号)第二条第一項に規定する海岸保全施設又は河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第三条第二項に規定する河川管理施設
十三 砂防法(明治三十年法律第二十九号)第一条に規定する砂防設備、森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第四十一条に規定する保安施設事業に係る保安施設、地すべり等防止法(昭和三十三年法律第三十号)第二条第三項に規定する地すべり防止施設、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(昭和四十四年法律第五十七号)第二条第二項に規定する急傾斜地崩壊防止施設又は土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)第二条第二項第一号に規定する農業用用排水施設であるため池で、家屋の密集している地域の地震防災上必要なもの
十四 地震災害時において災害応急対策の拠点として機能する地域防災拠点施設
十五 地震災害時において迅速かつ的確な被害状況の把握及び住民に対する災害情報の伝達を行うために必要な防災行政無線設備その他の施設又は設備
十六 地震災害時における飲料水、電源等の確保等により被災者の安全を確保するために必要な井戸、貯水槽、水泳プール、自家発電設備その他の施設又は設備
十七 地震災害時において必要となる非常用食糧、救助用資機材等の物資の備蓄倉庫
十八 負傷者を一時的に収容及び保護するための救護設備等地震災害時における応急的な措置に必要な設備又は資機材
二十 前各号に掲げるもののほか、地震防災上緊急に整備すべき施設等であって政令で定めるもの
2 地震防災緊急事業五箇年計画に定める事業のうち、市町村が実施する事業については、災害対策基本法第四十二条に規定する市町村地域防災計画に定められたものでなければならない。
(地震防災緊急事業に係る国の負担又は補助の特例等)
第四条 地震防災緊急事業五箇年計画(最初に作成されたものに限る。)に基づいて当該計画期間内の各年度分の事業として実施される事業のうち、別表第一に掲げるもの(主務大臣の定める基準に適合するものに限る。)に要する経費に対する国の負担又は補助の割合(以下「国の負担割合」という。)は、当該事業に関する法令の規定にかかわらず、同表のとおりとする。この場合において、これらの事業のうち、別表第二に掲げるもの(都道府県が実施するものを除き、主務大臣の定める基準に適合するものに限る。)に要する経費に係る都道府県の負担又は補助の割合(以下「都道府県の負担割合」という。)は、同表に掲げる割合とする。
2 前項に規定する事業に係る経費に対する他の法令による国の負担割合が、同項の規定による国の負担割合を超えるときは、当該事業に係る経費に対する国の負担割合又は都道府県の負担割合については、同項の規定にかかわらず、当該他の法令の定める割合による。
(地方債についての配慮)
第五条 地方公共団体が地震防災緊急事業五箇年計画に基づいて実施する事業に要する経費に充てるため起こす地方債については、法令の範囲内において、資金事情及び当該地方公共団体の財政状況が許す限り、特別の配慮をするものとする。
(財政上の配慮等)
第六条 国は、この法律に特別の定めのあるもののほか、地震防災対策の強化のため必要な財政上及び金融上の配慮をするものとする。
(地震調査研究推進本部の設置及び所掌事務)
第七条 総理府に、地震調査研究推進本部(以下「本部」という。)を置く。
2 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進について総合的かつ基本的な施策を立案すること。
二 関係行政機関の地震に関する調査研究予算等の事務の調整を行うこと。
三 地震に関する総合的な調査観測計画を策定すること。
四 地震に関する観測、測量、調査又は研究を行う関係行政機関、大学等の調査結果等を収集し、整理し、及び分析し、並びにこれに基づき総合的な評価を行うこと。
五 前号の規定による評価に基づき、広報を行うこと。
六 前各号に掲げるもののほか、法令の規定により本部に属させられた事務
3 本部は、前項第一号に掲げる事務を行うに当たっては、中央防災会議の意見を聴かなければならない。
4 本部の事務を行うに当たっては、気象業務法(昭和二十七年法律第百六十五号)に基づく業務が円滑に実施されるよう配慮しなければならない。
(本部の組織)
第八条 本部の長は、地震調査研究推進本部長(以下「本部長」という。)とし、科学技術庁長官をもって充てる。
3 本部に、地震調査研究推進本部員を置き、関係行政機関の職員のうちから内閣総理大臣が任命する。
4 本部の庶務は、科学技術庁において総括し、及び処理する。ただし、政令で定めるものについては、科学技術庁及び政令で定める行政機関において共同して処理する。
5 前各項に定めるもののほか、本部の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
(政策委員会)
第九条 本部に、第七条第二項第一号から第三号まで、第五号及び第六号に掲げる事務について調査審議させるため、政策委員会を置く。
2 政策委員会の委員は、関係行政機関の職員及び学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命する。
(地震調査委員会)
第十条 本部に、第七条第二項第四号に掲げる事務を行わせるため、地震調査委員会を置く。
2 地震調査委員会は、前項の事務に関し必要があると認めるときは、本部長に報告するものとする。
3 地震調査委員会の委員は、関係行政機関の職員及び学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命する。
(地域に係る地震に関する情報の収集等)
第十一条 本部長は、気象庁長官に対し、第七条第二項第四号に掲げる事務のうち、地域に係る地震に関する観測、測量、調査又は研究を行う関係行政機関、大学等の調査結果等の収集を行うことを要請することができる。
2 気象庁長官は、前項の規定による要請を受けて収集を行ったときは、その成果を本部長に報告するものとする。
3 気象庁及び管区気象台(沖縄気象台を含む。)は、第一項の事務を行うに当たっては、地域地震情報センターという名称を用いるものとする。
(関係行政機関等の協力)
第十二条 本部長は、その所掌事務に関し、関係行政機関の長その他の関係者に対し、資料の提供、意見の開陳その他の必要な協力を求めることができる。
(調査研究の推進等)
第十三条 国は、地震に関する観測、測量、調査及び研究のための体制の整備に努めるとともに、地震防災に関する科学技術の振興を図るため必要な研究開発を推進し、その成果の普及に努めなければならない。
2 国は、地震に関する観測、測量、調査及び研究を推進するために必要な予算等の確保に努めなければならない。
3 国は、地方公共団体が地震に関する観測、測量、調査若しくは研究を行い、又は研究者等を養成する場合には、必要な技術上及び財政上の援助に努めなければならない。