朕は、帝國議會の協贊を經た金融機關再建整備法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十一年十月十八日
内閣總理大臣 吉田茂
司法大臣 木村篤太郎
農林大臣 和田博雄
商工大臣 星島二郎
運輸大臣 平塚常次郎
大藏大臣 石橋湛山
法律第三十九號
金融機關再建整備法目次
第一章
總則
第二章
資産及び負債の調査
第三章
資産及び負債の評價
第四章
舊勘定の資産及び負債の移換
第五章
舊勘定の最終處理
第六章
整備の促進
第七章
決算の特例
第八章
監査及び監督
第九章
雜則
第十章
罰則
金融機關再建整備法
第一章 總則
第一條 この法律は、戰時補償の特別處理等に伴ひ金融機關に生ずべき損失を適正に處理し、國民生活の安定を確保し、金融機關の速かな再建整備を促進し、以て戰後經濟の安定及びその健全なる發達を圖ることを目的とする。
第二條 この法律において、金融機關、指定時又は預金等とは、金融機關經理應急措置法に定める金融機關、指定時又は預金等をいふ。
この法律において、新勘定又は舊勘定とは、金融機關經理應急措置法第一條第一項の規定により設けられた新勘定又は舊勘定をいふ。
この法律において、經濟再建整備委員會とは、企業再建整備法に定める經濟再建整備委員會をいふ。
第三條 金融機關の舊勘定の資産及び負債は、金融機關經理應急措置法及びこの法律の定めるところにより、これを整理する。
第二章 資産及び負債の調査
第四條 金融機關の指定時における舊勘定の負債に關する債權者(その承繼人を含む。以下同じ。)で勅令で定めるものは、命令の定めるところにより、主務大臣の指定する日までに、その債權を當該金融機關に申し出なければならない。
前項の債權者が、同項の期限内に、その債權を申し出ない場合においては、その債權者は、舊勘定の整理から除斥される。
第一項の期日において知れてゐる債權者は、これを舊勘定の整理から除斥することができない。
第五條 金融機關の舊勘定の負債又は指定時における新勘定の負債のうちで、その債權につき異議のあるものその他不確定なものがあるときは、第七條の評價基準の決定されたものを除く外、その確定に至るまでは、金融機關は、命令で定める金額を、假にその負債の確定金額として、舊勘定の整理を行はなければならない。
第六條 金融機關は、命令の定めるところにより、指定時における新勘定及び舊勘定について、各勘定別に、財産目録及び貸借對照表竝びに資産及び負債の明細書を作成し、主務大臣の指定する日までに、これを主務大臣に提出しなければならない。
第三章 資産及び負債の評價
第七條 金融機關の舊勘定の資産及び負債竝びに指定時における新勘定の資産及び負債のうち、命令で定めるもの以外のものについては、評價基準が設けられる。
前項の評價基準は、暫定評價基準及び確定評價基準の二とし、命令の定めるところにより、主務大臣が經濟再建整備委員會の議を經て、これを決定する。
主務大臣は、暫定評價基準又は確定評價基準を決定したときは、これを公告する。
第八條 金融機關は、主務大臣の指定する時において、その時における舊勘定の資産及び負債竝びに指定時における新勘定の資産及び負債について、命令の定めるところにより、暫定評價基準による評價を行はなければならない。この場合において、その資産及び負債のうち確定評價基準の決定したものがあるときは、これについては、確定評價基準による評價を行はなければならない。
金融機關は、前項の評價を行つたときは、命令の定めるところにより、同項に掲げる資産及び負債について、各勘定別に、財産目録、貸借對照表及び損益の計算書(損益の計算書は舊勘定の分に限る。)を作成し、主務大臣の指定する日までに、これを主務大臣に提出しなければならない。
第九條 金融機關は、前條第一項の評價を行つた後、各月末における舊勘定の資産及び負債竝びに指定時における新勘定の資産及び負債のうちに、その月末までに決定されてゐる確定評價基準による評價が行はれてゐないものがあるときは、その資産及び負債について、その月末において、確定評價基準による評價を行はなければならない。
第十條 金融機關は、指定時における新勘定の資産及び負債について、第八條第一項又は前條の評價を行つた結果、評價益が生じたときは、その評價益に相當する金額を新勘定の舊勘定に對する借として整理し、又、評價損が生じたときは、その評價損に相當する金額を新勘定の舊勘定に對する貸として整理する。
金融機關は、前項の場合においては、新勘定の舊勘定に對する借として整理すべき金額に相當する額は、これを舊勘定の評價益として整理し、又、新勘定の舊勘定に對する貸として整理すべき金額に相當する額は、これを舊勘定の評價損として整理する。
第十一條 金融機關は、舊勘定の資産及び負債について、第八條第一項又は第九條の評價を行つた結果、評價益が生じたときは、これを舊勘定の評價益として整理し、又、評價損が生じたときは、これを舊勘定の評價損として整理する。
第四章 舊勘定の資産及び負債の移換
第十二條 金融機關は、第五章に規定する場合を除く外、本章の定めるところにより、舊勘定の資産又は整理債務を移し換へることができる。
前項の整理債務とは、舊勘定に屬する債務(責任準備金及び支拂備金に關する債務を含む。)のうち、主務大臣の指定する債務(以下指定債務といふ。)以外のものをいふ。
第十三條 金融機關は、第八條第一項の評價が行はれる前においても、第一號の金額が第二號の金額を超え、且つ、その超過額の整理債務の金額に對する割合が主務大臣の指定する割合を超えるときは、命令の定めるところにより、書面を以て主務大臣の認可を受け、その超過額の範圍内において、整理債務を舊勘定から新勘定に移すことができる。
一 舊勘定の資産の總額から主務大臣の指定する舊勘定の資産の金額を差し引いた殘額
二 資本(出資金、基金及び保險業法第六十五條の積立金を含む。以下同じ。)の金額の一割に相當する金額と、指定債務の金額と、舊勘定の新勘定に對する借があるときはその金額との合計額
前項の規定による主務大臣の認可があつたときは、その指定する時において、認可に係る整理債務は、新勘定に屬するものとする。
第一項の規定により舊勘定から新勘定に移した整理債務の金額に相當する金額は、これを舊勘定の新勘定に對する借として整理する。
金融機關は、第一項の規定による主務大臣の認可があつたときは、命令の定めるところにより、遲滯なくその旨を公告しなければならない。
第十四條 金融機關は、第八條第一項又は第九條の評價を行つた結果、第一號の金額が第二號の金額を超え、且つ、その超過額の整理債務の金額に對する割合が主務大臣の指定する割合を超えるときは、命令の定めるところにより、書面を以て主務大臣の認可を受け、その超過額の範圍内において、整理債務を舊勘定から新勘定に移さなければならない。
一 舊勘定の資産(舊勘定の新勘定に對する貸があるときは、これを除く。)の評價額(確定評價基準があるものについては、確定評價基準により評價した金額を以て、その他のもののうち暫定評價基準があるものについては、暫定評價基準により評價した金額に對し主務大臣の指定する割合を乘じた金額を以て、各ゝ評價額とする。)と、舊勘定の新勘定に對する貸があるときはその金額との合計額
二 前條第一項第二號に掲げる金額
前條第二項乃至第四項の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第十五條 第四十條第一項又は第四十一條第一項の規定により新勘定の事業の全部若しくは一部を他の金融機關に讓渡し又は新勘定の保險契約の全部若しくは一部を他の金融機關に移轉した金融機關(以下舊金融機關といふ。)は、第八條第一項又は第九條の評價を行つた結果、前條第一項第一號の金額が同項第二號の金額(第四十二條第二項の規定により、又は前に本條第二項の規定により債務を負擔したときは、その金額を含む。)を超える場合において、その超過額の整理債務に對する割合が主務大臣の指定する割合を超えるときは、前條の規定にかかはらず、命令の定めるところにより、書面を以て主務大臣の認可を受け、その超過額の範圍内において、整理債務を舊金融機關から新勘定の事業の全部若しくは一部の讓渡又は新勘定の保險契約の全部若しくは一部の移轉を受けた金融機關(以下新金融機關といふ。)に移すことができる。但し、新金融機關の同意を得なければならない。
前項の場合においては、舊金融機關は、命令の定めるところにより、新金融機關に移した整理債務の金額に相當する金額の債務を、新金融機關に對して負擔する。
銀行法等特例法第一條の規定は、命令の定めるところにより、第一項の規定により整理債務を移す場合に、これを準用する。
第十六條 金融機關は、舊勘定の新勘定に對する借がある場合においては、命令の定めるところにより、その借の金額の範圍内において、舊勘定の資産のうち、第八條第一項又は第九條の規定により確定評價基準により評價したものを、その評價額を以て舊勘定から新勘定に移し、その評價額に相當する金額を、舊勘定の新勘定に對する借の金額から控除しなければならない。
前項の規定により、確定評價基準により評價した資産で命令で定めるものを舊勘定から新勘定に移す場合においては、金融機關は、主務大臣の承認を受けなければならない。
第十七條 第十五條第二項又は第四十二條第二項の規定により、舊金融機關が新金融機關に對し債務を負擔した場合において、舊金融機關に、金融機關經理應急措置法第九條第一項の規定により、舊勘定に屬する現金(小切手を含む。)を生じたときは、舊金融機關は、同法第十條の規定にかかはらず、命令の定めるところにより、これを新金融機關に對する債務の辨濟に充てなければならない。
第十五條第二項又は第四十二條第二項の規定により、舊金融機關が新金融機關に對し債務を負擔した場合においては、舊金融機關は、前項に規定する場合の外、金融機關經理應急措置法第十六條本文及び前條の規定にかかはらず、命令の定めるところにより、その債務の金額の範圍内において、舊勘定の資産のうち、第八條第一項又は第九條の規定により確定評價基準により評價したものを、その債務の辨濟に充てることができる。但し、新金融機關の同意を得なければならない。
前二項の場合においては、新金融機關は、金融機關經理應急措置法第十七條本文の規定にかかはらず、辨濟を受けることができる。
第五章 舊勘定の最終處理
第十八條 金融機關は、左の各號の一に該當する場合においては、本章の定めるところにより、舊勘定の最終處理を行はなければならない。
一 第八條第一項の評價を行つた結果、同項の規定により主務大臣の指定する時の現在により、左のイに掲げる金額がロに掲げる金額を超える場合において、その超過額の舊勘定の資産の總額に對する割合が主務大臣の指定する割合を超えるとき
イ 舊勘定の第八條第一項の評價による評價益の額と、その他の益の額と、積立金(保險業法第六十五條の積立金を除く外、特別準備金その他名稱の如何を問はず積立金であるものを含む。以下同じ。)の額との合計額
ロ 舊勘定の第八條第一項の評價による評價損の額と、その他の損の額と、繰越損の額との合計額
二 舊勘定の資産及び負債竝びに指定時における新勘定の資産及び負債のうち命令で定めるものについて、確定評價基準が決定されたとき
第十九條 前條第一號に規定する場合において、舊勘定の第八條第一項の評價による評價益の額と、その他の益の額との合計額(以下暫定益の額といふ。)が、前條第一號のロに掲げる金額(以下暫定損の額といふ。)以上であるときは、金融機關は、命令の定めるところにより、書面を以て主務大臣の認可を受け、舊勘定の最終處理を完了しなければならない。
この場合において、暫定益の額が暫定損の額を超えるときは、その超過額は、これを舊勘定の特別準備金として整理しなければならない。
第二十條 第十八條第一號に規定する場合において、暫定益の額が暫定損の額に不足するときは、金融機關は、左の各號に定める順序により、暫定損を填補しなければならない。
一 暫定損の額に對し、暫定益の額の全額を充當して填補する。
二 前號の規定の適用後における暫定損の殘額に對し、舊勘定の積立金を、特別準備金(金融機關經理應急措置法又はこの法律による特別準備金をいふ。以下同じ。)、退職積立金以外の任意積立金、退職積立金及び他の法令(金融機關經理應急措置法を除く。)による積立金の順序により、順次に取り崩して填補する。
前項第二號の場合において、同順位の積立金が二以上あるときは、均等の割合でこれを取り崩して填補する。
前二項の規定により暫定損の全額を填補したときは、金融機關は、命令の定めるところにより、書面を以て主務大臣の認可を受け、舊勘定の最終處理を完了しなければならない。
第二十一條 金融機關は、第十八條第二號の規定に該當する場合においては、同號の規定に該當するに至つた日の屬する月の月末における舊勘定の資産及び負債竝びに指定時における新勘定の資産及び負債について、命令の定めるところにより、各勘定別に、財産目録、貸借對照表及び損益の計算書(損益の計算書は舊勘定の分に限る。)を作成して、主務大臣の指定する日までに、これを主務大臣に提出しなければならない。
第二十二條 金融機關は、前條の規定により作成する舊勘定の財産目録、貸借對照表及び損益の計算書には、命令の定めるところにより、主務大臣の承認を受け、舊勘定の最終處理に必要な費用に充てるため、最終處理費引當金を計上するものとする。
第二十三條 第二十一條に規定する月の月末において、左の各號の一に該當する場合においては、金融機關は、命令の定めるところにより、書面を以て主務大臣の認可を受け、舊勘定の最終處理を完了しなければならない。
一 確定益(舊勘定の第十條第二項及び第十一條の評價益及びその他の益を總稱する。以下同じ。)も、確定損(舊勘定の第十條第二項及び第十一條の評價損、繰越損及びその他の損を總稱する。以下同じ。)もないとき
二 確定益と確定損とがあつて、確定益の額と確定損の額とが同額であるとき
三 確定益があつて確定損がないとき
四 確定益と確定損とがあつて、確定益の額が確定損の額を超えるとき
前項第三號の場合における確定益の額、又は同項第四號の場合における確定益の額の確定損の額を超える額は、これを舊勘定の特別準備金として整理しなければならない。
第二十四條 第二十一條に規定する月の月末において、舊勘定に確定損があつて確定益がないとき、又は確定損と確定益とがあつて確定損の額が確定益の額を超えるときは、金融機關は、左の各號の順序により、確定損の整理負擔額を計算しなければならない。
一 確定益があるときは、確定損に對し、確定益の全額を充當するものとする。
二 確定益がないときは確定損の全額に對し、又、確定益があるときは前號の規定の適用後における確定損の殘額に對し、舊勘定の積立金を充當するものとする。
三 前號によるもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額に對し、資本の金額の九割に相當する金額まで、株主(出資者、基金醵出者その他これに準ずるものを含む。以下同じ。)において確定損を負擔するものとする。
四 前號によるもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額に對し、整理債務(第十三條第一項、第十四條第一項又は第十五條第一項の規定により舊勘定から新勘定又は新金融機關に移した分を含み、命令で定める分を除く。以下第二十五條まで同じ。)のうち、法人(法人でない社團又は財團を含む。以下同じ。)の預金等で一口五百萬圓を超えるものの、五百萬圓を超える部分の金額の七割に相當する金額まで、その預金等の債權者において確定損を負擔するものとする。
五 前號によるもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額に對し、整理債務のうち、法人の預金等で一口百萬圓を超えるものの、百萬圓を超え五百萬圓以下の部分の金額の五割に相當する金額まで、その預金等の債權者において確定損を負擔するものとする。
六 前號によるもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額に對し、整理債務のうち、法人の預金等で一口十萬圓を超えるものの、十萬圓を超え百萬圓以下の部分の金額の三割に相當する金額まで、その預金等の債權者において確定損を負擔するものとする。
七 前號によるもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額に對し、整理債務のうち、前三號の規定の適用後における法人の預金等の殘額と、その他の整理債務の金額との七割に相當する金額まで、整理債務の債權者において確定損を負擔するものとする。
八 前號によるもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額に對し、第三號の規定の適用後における資本の殘額に相當する金額まで、株主において確定損を負擔するものとする。
九 前號によるもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額に對し、第七號の規定の適用後における整理債務の殘額に相當する金額まで、整理債務の債權者において確定損を負擔するものとする。
十 前號によるもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額に對し、指定債務(命令で定めるものを除く。)の全額まで、指定債務の債權者において、命令で定める順序により、確定損を負擔するものとする。
前項第三號又は第八號の場合における各株主の負擔額は、その所有する株式(出資及び基金を含む。以下同じ。)の金額に應じて均等とする。金融機關が數種の株式を發行してゐる場合においてもまた同じ。
第二十五條 前條の規定により算出した確定損の整理負擔額の處理のため金融機關は、左の各號の定める措置をなさなければならない。
一 前條第一項第一號の場合においては、確定損の額から確定益の額を差し引く。
二 前條第一項第二號の場合においては、舊勘定の積立金を、特別準備金、退職積立金以外の任意準備金、退職積立金及び他の法令(金融機關經理應急措置法を除く。)による積立金の順序により、順次に取り崩す。
三 前條第一項第三號乃至第八號の場合においては、資本に未拂込金があるときは、勅令の定めるところにより拂込をなさしめた後、又、資本に未拂込金がないときは直ちに、前號の措置をなした上、同條第一項第三號又は第八號の規定により株主が負擔すべき金額の合計金額だけ資本を減少する。但し、第二十六條に規定する場合は、この限りでない。
第二十條第二項の規定は、前項第二號の場合に、これを準用する。
前條第一項第四號乃至第十號の場合においては、整理債務又は指定債務の債權は、當該各號の規定によりこれらの債務の債權者が確定損を負擔すべき金額に相當する金額だけ、新勘定及び舊勘定の區分の消滅の日において消滅する。
前項の場合においては、保險會社、生命保險中央會又は損害保險中央會の舊勘定に屬する責任準備金又は支拂備金に對應する保險金(年金を含む。以下同じ。)の債權は、責任準備金又は支拂備金に關する權利の消滅の割合と同一の割合により、新勘定及び舊勘定の區分の消滅の日において消滅する。
第一項第三號の規定による拂込の場合に關しては、他の法令又は定款にかかはらず、勅令で特別の定をなすことができる。
第二十六條 第二十四條第一項第八號の規定により、株主が資本の全額に相當する金額の確定損を負擔しなければならないときは、金融機關は、第二十七條第一項の認可を受けた後(第三十三條第一項の規定により補償を受くべきときは、その補償を受けた後)、遲滯なく舊勘定の資産と、確定損を負擔しない整理債務又は指定債務があるときはその整理債務又は指定債務とを舊勘定から新勘定に移さなければならない。舊勘定の新勘定に對する借は、この措置と同時に消滅する。
前項の場合においては、金融機關は、同項の措置をなした後、主務大臣の指定する日までに、新勘定の事業の全部を他の金融機關に讓渡し、又は新勘定の保險契約の全部を他の金融機關に移轉しなければならない。
金融機關は、前項の讓渡又は移轉について對價を取得した場合においては(第三十三條第一項の規定による政府の補償があつたときは、先づ、その額まで、これを政府に納付し、なほ殘額があるときは)、命令の定めるところにより、これを處分しなければならない。
金融機關は、第二項の期限内に新勘定の事業の全部の讓渡又は新勘定の保險契約の全部の移轉を終つたときはその讓渡又は移轉を終つた日において、又、同項の期限内にその讓渡又は移轉を終らなかつたときは同項の期限を經過した日において解散する。この場合においては、新勘定及び舊勘定の區分は、解散の日において消滅する。
第三項の規定は、前項の規定による解散の場合に、これを準用する。
前項に定めるものを除く外、第四項の規定による解散の場合に關し必要な事項は、他の法令にかかはらず、命令でこれを定める。
第二十四條第一項第八號の規定により、舊金融機關の株主が資本の全額に相當する金額の確定損を負擔しなければならない場合において、第十五條第二項又は第四十二條第二項の規定により、舊金融機關が新金融機關に對し負擔した債務があるときは、舊金融機關は、第一項の措置をなす前に、命令の定めるところにより、先づ、舊勘定の資産をその債務の辨濟に充てなければならない。但し、現金(小切手を含む。)以外の資産を債務の辨濟に充てるには、新金融機關の同意を得なければならない。
銀行法等特例法第一條の規定は、命令の定めるところにより、第二項の規定による事業の讓渡の場合に、これを準用する。
第二十七條 金融機關の取締役又はこれに準ずる者(以下理事機關といふ。)は、第二十四條第一項に規定する場合においては、命令の定めるところにより、最終處理方法書を作成し、主務大臣の認可を受けなければならない。
前項の場合において、當該金融機關について、第四十七條の監査委員があるときは、理事機關は、前項の規定による認可の申請前、豫め最終處理方法書につき、その承認を受けなければならない。
第二十八條 金融機關の理事機關は、前條第一項の規定による認可があつたときは、舊勘定の最終處理を行ふべき旨を公告し、最終處理方法書及び第二十一條の書類を本店又は主たる事務所及び支店又は從たる事務所に備へ置かなければならない。
金融機關の株主及び舊勘定の負債に關する債權者は、營業時間内、何時でも前項に掲げる書類を閲覽することができる。
第二十九條 金融機關は、第二十七條第一項の認可を受けたときは、最終處理方法書に定めるところにより、遲滯なく舊勘定の最終處理を行はなければならない。
第三十條 第二十七條第一項の認可があつた後、舊勘定の最終處理の完了までに、舊勘定の資産若しくは負債又は指定時における新勘定の資産若しくは負債について、舊勘定の最終處理の結果に影響を及ぼすべき變更を生じたときは、金融機關の理事機關は、その變更に基いて、最終處理方法書を改訂しなければならない。
第二十七條乃至前條の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第三十一條 第二十七條第一項の認可があつたときは、金融機關が舊勘定の最終處理を行ふためになす資本の減少、定款の變更その他の手續については、他の法令又は定款にかかはらず、株主總會若しくはこれに準ずるものの決議又は政府の認可等は、これを必要としない。
商法第三百八十條の規定は、前項の資本の減少については、これを適用しない。
第一項の資本の減少については、資本の減少の日から命令で定める日までの間を限り、他の法令中資本又は株式の金額の制限に關する規定は、これを適用しない。
前三項に定めるものを除く外、第一項の資本の減少に關し必要な事項については、他の法令又は定款にかかはらず、命令で特別の定をなすことができる。
第三十二條 前條第一項の資本の減少の結果、金融機關の債券の發行又は資金の借入若しくは融通の額が、他の法令に規定する債券の發行又は資金の借入若しくは融通に關する制限額を超えるに至つた場合においては、當該資本の減少の際現に存する債券又は資金の借入若しくは融通(その更改に因る債權又は債務を含む。)に限り、他の法令中これらの債權又は債務の金額の制限に關する規定は、これを適用しない。
第三十三條 第二十四條第一項の規定により、確定損の整理負擔額を計算するもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額は、命令の定めるところにより、政府において、これを補償する。但し、その補償の金額は、勅令で定める金額を限度とする。
政府は、前項の補償の決濟を、國債證券の交付により行ふことができる。
前項の規定による決濟のため交付する國債證券の交付價格は、大藏大臣がこれを定める。
政府は、第一項の補償債務の辨濟のため必要な金額を限り公債を發行することができる。
金融機關が前章に定めるところにより、整理債務を舊勘定から新勘定又は新金融機關に移した場合においては、第一項の規定は、これを適用しない。
第一項の規定による政府の補償の金額は、大藏省預金部等損失特別處理法による補償金の額と合計し、百億圓(第二十六條第三項その他の規定により政府に納付した金額があるときは、その額を加算した金額)を限度とする。
第三十四條 金融機關は、舊勘定の最終處理を完了したときは、遲滯なくその旨を公告しなければならない。
金融機關の新勘定及び舊勘定の區分は、前項の公告(二囘以上公告をなしたときは最初の公告)の日において消滅する。
金融機關は、第一項の公告をなしたときは、その公告(二囘以上公告をなしたときは最初の公告)の後、本店又は主たる事務所の所在地においては二週間以内に、又、支店又は從たる事務所の所在地においては三週間以内に、新勘定及び舊勘定の區分の消滅の登記をしなければならない。
前項の登記に關し必要な事項は、命令でこれを定める。
第三十五條 第四條第一項の規定により債權の申出をなすべき債權者でその申出をしなかつたものが、同項の期限後新勘定及び舊勘定の區分の消滅の日までにその債權を申し出たときは、第十九條若しくは第二十三條に規定する場合又は第二十條第一項第二號若しくは第二十五條第一項第二號の規定の適用後なほ舊勘定の積立金が殘る場合に限り、舊勘定の積立金の金額の範圍内において、その債權の金額に應じ均等の割合で、その債權の辨濟を、金融機關に請求することができる。
前項の場合においては、金融機關は、債權者に對し、その債權の辨濟の請求ができる金額を通知しなければならない。
第四條第一項の規定により申出をなすべき債權で、同項の期限までにその申出のなかつたものは、第一項の規定により辨濟の請求ができる金額を除く外、新勘定及び舊勘定の區分の消滅の日において消滅する。
第一項の場合においては、金融機關は、他の法令又は定款にかかはらず、同項の規定により辨濟の請求を受くべき金額だけ、積立金を、退職積立金以外の任意積立金、退職積立金及び他の法令による積立金の順序により、順序に取り崩すことができる。
第二十條第二項の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第三十六條 金融機關の舊勘定の負債又は指定時における新勘定の負債に關する債權(責任準備金及び支拂備金に關する權利を含む。以下第三十七條まで同じ。)で、舊勘定の最終處理の完了の際不確定であつたものが、舊勘定の最終處理の完了後確定したときは、金融機關の理事機關は、その確定の結果に基いて、第二十四條の規定に準じ、當該債權が確定損を負擔すべきであつた金額を計算し、その金額を當該債權者(責任準備金及び支拂備金に關する權利者を含む。以下第三十八條まで同じ。)に通知しなければならない。
前項の場合においては、當該債權は、同項の規定による通知のあつた時において、その通知に係る金額だけ消滅する。
第二十五條第四項の規定に、前項の場合に、これを準用する。
第三十七條 第二十四條第一項第四號乃至第八號の規定により、金融機關の整理債務の債權者において舊勘定の確定損の負擔した場合において、新勘定及び舊勘定の區分の消滅後、當該金融機關に屬する資産で命令で定めるもののうち、前に舊勘定に屬してゐたものにつき、第八條第一項又は第九條の規定による評價額に比し、價額の増加があつたとき、又はその資産を處分して得た對價が第八條第一項又は第九條の規定による評價額を超えたときは、その増價額又は處分益の額に相當する金額については、當該金融機關は、他の法令にかかはらず、命令の定めるところにより、これを處分しなければならない。
金融機關の舊勘定の負債又は指定時における新勘定の負債に關する債權のうち、舊勘定の最終處理の完了の際不確定であつたものが、舊勘定の最終處理の完了後、初から存在しなかつたものと確定した場合における第一號の金額の處分、又はその確定した金額が第五條の規定に基く命令で定める金額よりも少い場合における第一號の金額から第二號の金額を差し引いた殘額の處分についても、また前項に同じ。
一 その負債に關する債權について、第五條の規定に基く命令で定める金額に對する第二十四條第一項第四號乃至第十號の規定の適用後における殘額
二 その負債に關する債權について、確定した金額に對する前條第一項の規定の適用後における殘額
第三十八條 舊勘定の最終處理が完了したときは、債權者及び株主の權利は、最終處理方法書の定めるところによつて確定する。但し、第三十六條の場合においては、當該債權者の權利は、同條の定めるところによつて確定する。
舊勘定の整理が法令に違反して債權者又は株主に損害を及ぼしたときは、當該金融機關の理事機關は、當該金融機關と連帶してその損害を賠償しなければならない。但し、當該理事機關で、その業務の執行について過失がなかつた者については、この限りでない。
前項の規定は、第二十六條第四項の場合における清算に關する清算人の責任について、これを準用する。
第一項(前項において準用する場合を含む。)の損害賠償の請求權は、新勘定及び舊勘定の區分の消滅の日から五年を經過したときは、時效に因つて消滅する。
第六章 整備の促進
第三十九條 第二十五條第一項第三號の規定により、金融機關が資本の減少を行はなければならない場合においては、その理事機關は、命令の定めるところにより、舊勘定の最終處理の完了後における當該金融機關の事業に關し整備計畫書を作成し、主務大臣の認可を受けなければならない。
前項の規定による整備計畫書の認可があつた場合において、金融機關が主務大臣の指定する日までに、前項の整備計畫書に定める整備計畫を實行することができなかつたときは、その理事機關は、遲滯なくその旨を、書面を以て主務大臣に屆け出なければならない。
第四十條 金融機關は、指定時における新勘定の資産及び負債のうち命令で定めるものについて確定評價基準が決定し、且つ、新勘定の舊勘定に對する借がない場合に限り、命令の定めるところにより、書面を以て主務大臣の認可を受け、新勘定の事業の全部若しくは一部を他の金融機關に讓渡し、又は新勘定の保險契約の全部若しくは一部を他の金融機關に移轉することができる。
前項の規定による認可があつたときは、同一の事項については、同時に他の法令による認可等があつたものとみなす。
第四十一條 主務大臣は、金融機關の整備を促進するため必要があるときは、經濟再建整備委員會の議を經て、新勘定及び舊勘定の區分の存する金融機關に對し、新勘定の事業の全部若しくは一部を他の金融機關に讓渡し、又は新勘定の保險契約の全部若しくは一部を他の金融機關に移轉すべきことを命ずることができる。
主務大臣は、金融機關の舊勘定の最終處理の完了後における事業の状況により、特に必要があると認めるときは、他の法令に規定する場合を除く外、經濟再建整備委員會の議を經て、新勘定及び舊勘定の區分の消滅した金融機關に對し、合併若しくは資本の増加を命じ、その事業の全部若しくは一部を他の金融機關に讓渡すべきことを命じ、又はその保險契約の全部若しくは一部を他の金融機關に移轉すべきことを命ずることができる。
第一項又は前項の規定による主務大臣の命令があつた場合において、命令を受けた日から六箇月以内に、その命令に係る事項に關する契約が成立せず、又は資本の増加に關する株主總會その他これに準ずるものの決議がなかつたときは、命令を受けた金融機關の理事機關は、遲滯なくその旨を、書面を以て主務大臣に屆け出なければならない。
第四十二條 第四十條第一項又は前條第一項若しくは第二項の規定により、金融機關が合併、事業の讓渡又は保險契約の移轉をなす場合においては、當該金融機關は、その合併、事業の讓渡又は保險契約の移轉の相手方を、新勘定及び舊勘定の區分の存しない金融機關(金融機關經理應急措置法第二十七條第二號の金融機關の場合においては、相手方たる者は當該金融機關と同種の法人で金融機關たるもの以外のものを含む。)のうちから選ばなければならない。
第四十條第一項又は前條第一項の場合において、舊金融機關に舊勘定の新勘定に對する借があるときは、命令の定めるところにより、新金融機關に對して、その借の金額に相當する金額(事業の一部を讓渡し又は保險契約の一部を移轉した場合においては、借の金額のうち、その讓渡に係る事業又は移轉に係る保險契約に關する部分とし、又、事業の讓渡又は保險契約の移轉の對價があるときは、その對價の金額を控除したものとする。)の債務を負擔する。
銀行法等特例法第一條の規定は、命令の定めるところにより、第四十條第一項又は前條第一項若しくは第二項の規定により合併又は事業の讓渡をなす場合に、これを準用する。
前三項に定めるものを除く外、第四十條第一項又は前條第一項若しくは第二項の場合において必要な事項は、命令でこれを定める。
第四十三條 主務大臣は、金融機關の整備を促進するため必要があるときは、金融機關に對し、命令の定めるところにより、事業費の支出その他經理に關し必要な事項を命ずることができる。
第七章 決算の特例
第四十四條 金融機關の決算は、當該金融機關に新勘定及び舊勘定の區分の存する間は、新勘定及び舊勘定について、各別に、これを行はなければならない。
他の法令の適用のため必要な金融機關の財産目録、貸借對照表、損益計算書その他の商業帳簿及び營業に關する書類に關しては、命令の定めるところによる。
第四十五條 金融機關は、毎事業年度において、新勘定又は舊勘定に利益金を生じたときは、他の法令又は定款にかかはらず、これを當該勘定の特別準備金として積み立てなければならない。
金融機關は、毎事業年度において、新勘定又は舊勘定に缺損を生じたときは、當該勘定の特別準備金を取り崩して填補し、なほ不足があるときは、これを當該勘定別に繰り越さなければならない。
第四十六條 金融機關の新勘定及び舊勘定の區分が消滅したときは、他の法令又は定款にかかはらず、その區分の消滅した日を含む事業年度は、その區分の消滅した日までで終了するものとし、その事業年度に續く事業年度は、命令で定める日で終了するものとする。
金融機關の新勘定及び舊勘定の區分の消滅の際現に新勘定又は舊勘定に特別準備金がある場合において、當該金融機關に商法第二百八十八條第一項の準備金(その他の法令によるこれに準ずる準備金を含む。以下法定準備金といふ。)があるときは、當該特別準備金は、法定準備金に併せられ、又、法定準備金がないときは、當該特別準備金が、そのまま法定準備金となるものとする。
第八章 監査及び監督
第四十七條 金融機關の舊勘定の整理の適正を圖るため必要があるときは、經濟再建整備委員會は、主務大臣の認可を受け、當該金融機關について、その債權者その他の利害關係人(國、公共團體その他の法人である場合においては、代表者その他の職員)のうちから、五人以内の監査委員を選任することができる。
主務大臣は、金融機關の舊勘定の整理の適正を圖るため必要があるときは、經濟再建整備委員會に對し、當該金融機關につき監査委員を選任すべきことを命ずることができる。
金融機關の監査委員は、當該金融機關の役員と相兼ねることができない。
第四十八條 監査委員は、金融機關の舊勘定の整理を監査することをその職務とする。
監査委員は、前項に規定する職務を行ふため、何時でも金融機關の理事機關に對し舊勘定の整理に關する報告を求め、又は舊勘定の整理の状況を調査することができる。
監査委員の職務及び權限は、第二十七條第二項及び前二項に規定するものを除く外、勅令でこれを定める。
第四十九條 經濟再建整備委員會は、主務大臣の認可を受け、監査委員を解任することができる。
主務大臣は、必要があるときは、經濟再建整備委員會に對し、監査委員を解任すべきことを命ずることができる。
第五十條 主務大臣は、金融機關の役員が金融機關經理應急措置法若しくはこの法律又はこれに基く命令若しくは處分に違反したときは、金融機關に對し、その役員を解任すべきことを命ずることができる。
主務大臣は、金融機關の役員の行爲が公益を害する虞があると認めるときは、當該役員に對し、その職務の執行を停止すべきことを命ずることができる。
主務大臣は、必要があるときは、經濟再建整備委員會の議を經て、金融機關に對し、前項の規定により職務の執行を停止した役員を解任すべきことを命ずることができる。
第五十一條 主務大臣は、この法律の施行に關し必要があるときは、金融機關に對し、監督上必要な命令をなすことができる。
主務大臣は、この法律の施行に關し必要があるときは、金融機關をしてその業務及び財産の状況に關して報告せしめ、又は當該官吏をして帳簿、書類その他の物件を檢査せしめることができる。
主務大臣は、前項の規定により、當該官吏をして檢査せしめるときは、その身分を示す證票を携帶せしめなければならない。
第九章 雜則
第五十二條 金融機關經理應急措置法第十四條の規定は、第十條第一項、第十三條第三項(第十四條第二項において準用する場合を含む。)又は第十六條第一項の規定により、新勘定の舊勘定に對する貸又は借として整理さるべき金額について、これを準用する。
第五十三條 金融機關の新勘定又は舊勘定の資産で暫定評價基準又は確定評價基準により評價したものを財産目録に記載する場合においては、その價額については、商法第二百八十五條(保險業法第六十七條において準用する場合を含む。)の規定は、これを適用しない。
第五十四條 金融機關經理應急措置法第十八條第二項の規定により中止された金融機關の財産に對する強制執行、假差押若しくは假處分又は競賣法による競賣手續は、その財産が新勘定に屬するに至つたとき、又は新勘定及び舊勘定の區分が消滅したときは、その日からこれを續行する。但し、新勘定及び舊勘定の區分の消滅前においては、その債權に關する債務の全部又は一部が舊勘定に屬する間は、この限りでない。
第五十五條 金融機關の新勘定及び舊勘定の區分が消滅するまでは、その金融機關に對して破産の宣告、整理開始の命令又は和議開始の決定をなすことができない。
金融機關の新勘定について支拂不能又は債務超過の事實が生じた場合における措置については、勅令の定めるところによる。
金融機關の新勘定及び舊勘定の區分の消滅後においては、その金融機關には、金融機關經理應急措置法第二十二條第二項の規定は、これを適用しない。
第五十六條 舊勘定に屬する責任準備金に對應する生命保險金に關する保險契約(以下舊生命保險契約といふ。)につき指定時後拂ひ込まれた保險料のうち、第二十五條第四項の規定により債權の消滅した生命保險金の部分に對應するものについては、その保險契約をなした生命保險會社又は生命保險中央會(以下生命保險會社等といふ。)は、命令の定めるところにより、當該保險契約者との間に保險契約が現に存する場合においては、これを當該保險契約の保險料に充當するものとし、保險料に充當してなほ殘額がある場合又は當該保險契約者との間に現に保險契約が存しない場合においては、これを當該保險契約者に返濟しなければならない。
新勘定及び舊勘定の區分の消滅の日までに、舊生命保險契約について保險事故が發生した場合において、金融機關經理應急措置法第二十四條第一項の規定により拂ひ込むことを要しなかつた保險料で拂ひ込まれなかつたものがあるときは、生命保險會社等は、命令の定めるところにより、その支拂ふべき生命保險金の額からその保險料に相當する金額を控除した殘額を、保險金受取人に交付する。
第五十七條 地方農業會、市街地信用組合その他命令で定める金融機關の會員(組合員その他これに準ずるものを含む。以下本條中同じ。)で出資の義務を有するもののうち、指定時までに出資をしてゐないもの及び指定時後出資の義務を有する會員となるものは、當該金融機關に新勘定及び舊勘定の區分が存する間に限り、命令の定めるところにより、出資の拂込に代へ、これに相當する金額の保證金を拂ひ込まなければならない。
前項の保證金の拂込をなした者は、資金の貸付、施設の利用その他當該金融機關の會員の受ける利益に關する他の法令の規定の適用については、出資をなしたものとみなす。
前項に定めるものを除く外、第一項の規定による保證金の拂込をなした者に關し必要な事項は、命令でこれを定める。
第五十八條 金融機關で昭和二十年 大藏 外務 内務 司法 省令第一號別表に掲げるものの舊勘定の整理及びその者の債權又は債務の處理については、勅令で特別の定をなすことができる。
第五十九條 第二十五條第三項若しくは第四項又は第三十六條第二項若しくは第三項の規定により、金融機關の整理債務又は指定債務の債權の全部又は一部が消滅した場合において、當該金融機關の發行に係る債券その他命令で定める證券の引換その他に關し必要な事項は、命令でこれを定める。金融機關經理應急措置法第二十條の金融債券の引換その他當該債券に關し必要な事項についてもまた同じ。
第六十條 舊金融機關が、この法律の定めるところにより、新金融機關に對し、不動産、有價證券その他の資産を讓渡する場合においては、その讓渡に關する證書及び帳簿に關しては、印紙税は、これを課さない。
第六十一條 この法律に規定する主務大臣の職權の一部は、命令の定めるところにより、これを地方官衙の長をして行はしめることができる。
第六十二條 金融機關經理應急措置法及びこの法律に規定するものの外、戰時補償の特別處理等に伴ひ金融機關に生ずべき損失の處理及び金融機關の再建整備に關し必要な事項は、命令でこれを定める。
第十章 罰則
第六十三條 左の場合においては、その行爲をなした金融機關の代表者、代理人、使用人その他の從業者は、これを三年以下の懲役又は三萬圓以下の罰金に處する。
一 第十三條第一項又は第十五條第一項の規定による認可の申請書に虚僞の記載をなして提出したとき
二 第十四條第一項、第十九條、第二十條第三項又は第二十三條第一項の規定に違反して認可の申請を怠り、又はその認可の申請書に虚僞の記載をなして提出したとき
三 第二十六條第三項(同條第五項において準用する場合を含む。)の規定に基く命令に違反して同項に規定する對價の處分を怠り、又はその處分をなしたとき
四 第二十六條第六項の規定による命令に違反したとき
五 第二十七條第一項(第三十條第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反して最終處理方法書の認可の申請を怠り、又は虚僞の記載をなした最終處理方法書を提出して認可の申請をなしたとき
六 第二十七條第二項(第三十條第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反して監査委員の承認を受けることを怠り、又は虚僞の記載をなした最終處理方法書につき監査委員の承認を受けたとき
七 第二十九條(第三十條第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反して最終處理方法書に定めるところによる舊勘定の最終處理を行はないとき
八 第三十七條第一項の規定による命令に違反して増價額又は處分益の額の處分を怠り、又はその處分をなしたとき
九 第三十七條第二項の規定による命令に違反して同項に規定する金額の處分を怠り、又はその處分をなしたとき
第六十四條 監査委員がその職務に關して、賄賂を收受し、要求し、又は約束したときは、これを三年以下の懲役又は三千圓以下の罰金に處する。
前項の賄賂を供與し、又はその申込若しくは約束をなした者もまた前項に同じ。
犯人又は情を知る第三者の收受した賄賂は、これを沒收する。その全部又は一部を沒收することができないときは、その價額を追徴する。
第六十五條 左の場合においては、その行爲をなした金融機關の代表者、代理人、使用人その他の從業者は、これを一年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處する。
一 第六條の規定に違反して財産目録、貸借對照表若しくは資産及び負債の明細書の提出を怠り、又は虚僞の記載をなした財産目録、貸借對照表若しくは資産及び負債の明細書を提出したとき
二 第八條第二項又は第二十一條の規定に違反して財産目録、貸借對照表若しくは損益の計算書の提出を怠り、又は虚僞の記載をなした財産目録、貸借對照表若しくは損益の計算書を提出したとき
三 第三十九條第一項の規定に違反して整備計畫書の認可の申請を怠つたとき
四 第四十三條の規定による命令に違反したとき
五 第五十條第一項又は第三項の規定による命令に違反して役員の解任の手續をなさなかつたとき
六 第五十一條第二項の規定による報告を怠り、又は虚僞の報告をなしたとき
第六十六條 第五十條第二項の規定による命令に違反して職務の執行を停止しない者は、これを一年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處する。
第六十七條 第五十一條第二項の規定による檢査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、これを一年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處する。
第六十八條 第五十九條の規定による命令に違反した者は、これを一年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處する。
第六十九條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が、その法人又は人の業務又は財産に關し、第六十三條、第六十五條又は前條の違反行爲をなしたときは、行爲者を罰する外、その法人又は人に對し、各本條の罰金刑を科する。
第七十條 左の場合においては、金融機關の理事機關は、これを五千圓以下の過料に處する。
一 第十三條第四項(第十四條第二項において準用する場合を含む。)又は第三十四條第一項に規定する公告を怠り、又は不正の公告をなしたとき
二 第十七條第一項若しくは第二項又は第二十六條第七項の規定に違反して舊勘定の資産を債務の辨濟に充てることを怠つたとき
三 第二十八條第一項の規定に違反して公告を怠り、書類を備へ置かず、若しくは虚僞の記載をなした書類を備へ置き、又は同條第二項の規定に違反して正當の事由なくして書類の閲覽を拒んだとき
四 第三十四條第三項に規定する登記を怠つたとき
五 第三十六條第一項の規定に違反して通知を怠り、又は虚僞の通知をなしたとき
六 第三十九條第二項の規定に違反して屆出を怠り、又は虚僞の屆出をなしたとき
七 第四十一條第一項の規定による命令に違反して事業の讓渡又は保險契約の移轉に必要な手續をなさなかつたとき
八 第四十一條第二項の規定による命令に違反して合併若しくは資本の増加、事業の讓渡又は保險契約の移轉に必要な手續をなさなかつたとき
九 第四十一條第三項の規定に違反して屆出を怠り、又は虚僞の屆出をなしたとき
十 第四十五條第一項の規定に違反して特別準備金を積み立てず、又は同條第二項の規定に違反して特別準備金を取り崩したとき
十一 第四十八條第二項の規定による報告を怠り、若しくは虚僞の報告をなし、又は同項に規定する調査を妨げたとき
十二 第五十一條第一項の規定による命令に違反したとき
附 則
この法律の施行の期日は、勅令でこれを定める。
戰時補償特別措置法第十五條第二項、第十九條第二項、第三十六條第二項又は第三十八條第二項の規定により金融機關が戰時補償特別税として徴收した金錢(證券を以て徴收した場合における證券を含む。)及びその徴收した戰時補償特別税を政府に納付すべき義務、同法第三十四條の規定により納税義務者に代位して戰時補償特別税を納付すべき義務竝びに同法第四十一條、第四十二條又は第五十三條の規定により求償をなす權利及び求償に應じて履行をなすべき債務その他命令で定める財産上の權利及び義務は、金融機關經理應急措置法第九條第二項の規定にかかはらず、當該金融機關の舊勘定に屬する。
金融機關經理應急措置法の一部を次のやうに改正する。
第二十五條第一項中「指定時においてその新勘定に屬する責任準備金に對應する保險金額と新契約の保險金額との合計額」を「新契約の保險金額」に改める。
第二十七條第一號中「及び市街地信用組合」を「、市街地信用組合及び産業組合(産業組合法第一條第一項第一號に掲げる事項のみを目的とするものに限る。)」に改める。
租税特別措置法の一部を次のやうに改正する。
第十八條第四號中「會社」を「法人」に、「資本増加」を「資本(出資又は基金を含む。)の増加」に、「株金」を「株金(出資金又は基金を含む。)」に改める。
朕は、帝国議会の協賛を経た金融機関再建整備法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十一年十月十八日
内閣総理大臣 吉田茂
司法大臣 木村篤太郎
農林大臣 和田博雄
商工大臣 星島二郎
運輸大臣 平塚常次郎
大蔵大臣 石橋湛山
法律第三十九号
金融機関再建整備法目次
第一章
総則
第二章
資産及び負債の調査
第三章
資産及び負債の評価
第四章
旧勘定の資産及び負債の移換
第五章
旧勘定の最終処理
第六章
整備の促進
第七章
決算の特例
第八章
監査及び監督
第九章
雑則
第十章
罰則
金融機関再建整備法
第一章 総則
第一条 この法律は、戦時補償の特別処理等に伴ひ金融機関に生ずべき損失を適正に処理し、国民生活の安定を確保し、金融機関の速かな再建整備を促進し、以て戦後経済の安定及びその健全なる発達を図ることを目的とする。
第二条 この法律において、金融機関、指定時又は預金等とは、金融機関経理応急措置法に定める金融機関、指定時又は預金等をいふ。
この法律において、新勘定又は旧勘定とは、金融機関経理応急措置法第一条第一項の規定により設けられた新勘定又は旧勘定をいふ。
この法律において、経済再建整備委員会とは、企業再建整備法に定める経済再建整備委員会をいふ。
第三条 金融機関の旧勘定の資産及び負債は、金融機関経理応急措置法及びこの法律の定めるところにより、これを整理する。
第二章 資産及び負債の調査
第四条 金融機関の指定時における旧勘定の負債に関する債権者(その承継人を含む。以下同じ。)で勅令で定めるものは、命令の定めるところにより、主務大臣の指定する日までに、その債権を当該金融機関に申し出なければならない。
前項の債権者が、同項の期限内に、その債権を申し出ない場合においては、その債権者は、旧勘定の整理から除斥される。
第一項の期日において知れてゐる債権者は、これを旧勘定の整理から除斥することができない。
第五条 金融機関の旧勘定の負債又は指定時における新勘定の負債のうちで、その債権につき異議のあるものその他不確定なものがあるときは、第七条の評価基準の決定されたものを除く外、その確定に至るまでは、金融機関は、命令で定める金額を、仮にその負債の確定金額として、旧勘定の整理を行はなければならない。
第六条 金融機関は、命令の定めるところにより、指定時における新勘定及び旧勘定について、各勘定別に、財産目録及び貸借対照表並びに資産及び負債の明細書を作成し、主務大臣の指定する日までに、これを主務大臣に提出しなければならない。
第三章 資産及び負債の評価
第七条 金融機関の旧勘定の資産及び負債並びに指定時における新勘定の資産及び負債のうち、命令で定めるもの以外のものについては、評価基準が設けられる。
前項の評価基準は、暫定評価基準及び確定評価基準の二とし、命令の定めるところにより、主務大臣が経済再建整備委員会の議を経て、これを決定する。
主務大臣は、暫定評価基準又は確定評価基準を決定したときは、これを公告する。
第八条 金融機関は、主務大臣の指定する時において、その時における旧勘定の資産及び負債並びに指定時における新勘定の資産及び負債について、命令の定めるところにより、暫定評価基準による評価を行はなければならない。この場合において、その資産及び負債のうち確定評価基準の決定したものがあるときは、これについては、確定評価基準による評価を行はなければならない。
金融機関は、前項の評価を行つたときは、命令の定めるところにより、同項に掲げる資産及び負債について、各勘定別に、財産目録、貸借対照表及び損益の計算書(損益の計算書は旧勘定の分に限る。)を作成し、主務大臣の指定する日までに、これを主務大臣に提出しなければならない。
第九条 金融機関は、前条第一項の評価を行つた後、各月末における旧勘定の資産及び負債並びに指定時における新勘定の資産及び負債のうちに、その月末までに決定されてゐる確定評価基準による評価が行はれてゐないものがあるときは、その資産及び負債について、その月末において、確定評価基準による評価を行はなければならない。
第十条 金融機関は、指定時における新勘定の資産及び負債について、第八条第一項又は前条の評価を行つた結果、評価益が生じたときは、その評価益に相当する金額を新勘定の旧勘定に対する借として整理し、又、評価損が生じたときは、その評価損に相当する金額を新勘定の旧勘定に対する貸として整理する。
金融機関は、前項の場合においては、新勘定の旧勘定に対する借として整理すべき金額に相当する額は、これを旧勘定の評価益として整理し、又、新勘定の旧勘定に対する貸として整理すべき金額に相当する額は、これを旧勘定の評価損として整理する。
第十一条 金融機関は、旧勘定の資産及び負債について、第八条第一項又は第九条の評価を行つた結果、評価益が生じたときは、これを旧勘定の評価益として整理し、又、評価損が生じたときは、これを旧勘定の評価損として整理する。
第四章 旧勘定の資産及び負債の移換
第十二条 金融機関は、第五章に規定する場合を除く外、本章の定めるところにより、旧勘定の資産又は整理債務を移し換へることができる。
前項の整理債務とは、旧勘定に属する債務(責任準備金及び支払備金に関する債務を含む。)のうち、主務大臣の指定する債務(以下指定債務といふ。)以外のものをいふ。
第十三条 金融機関は、第八条第一項の評価が行はれる前においても、第一号の金額が第二号の金額を超え、且つ、その超過額の整理債務の金額に対する割合が主務大臣の指定する割合を超えるときは、命令の定めるところにより、書面を以て主務大臣の認可を受け、その超過額の範囲内において、整理債務を旧勘定から新勘定に移すことができる。
一 旧勘定の資産の総額から主務大臣の指定する旧勘定の資産の金額を差し引いた残額
二 資本(出資金、基金及び保険業法第六十五条の積立金を含む。以下同じ。)の金額の一割に相当する金額と、指定債務の金額と、旧勘定の新勘定に対する借があるときはその金額との合計額
前項の規定による主務大臣の認可があつたときは、その指定する時において、認可に係る整理債務は、新勘定に属するものとする。
第一項の規定により旧勘定から新勘定に移した整理債務の金額に相当する金額は、これを旧勘定の新勘定に対する借として整理する。
金融機関は、第一項の規定による主務大臣の認可があつたときは、命令の定めるところにより、遅滞なくその旨を公告しなければならない。
第十四条 金融機関は、第八条第一項又は第九条の評価を行つた結果、第一号の金額が第二号の金額を超え、且つ、その超過額の整理債務の金額に対する割合が主務大臣の指定する割合を超えるときは、命令の定めるところにより、書面を以て主務大臣の認可を受け、その超過額の範囲内において、整理債務を旧勘定から新勘定に移さなければならない。
一 旧勘定の資産(旧勘定の新勘定に対する貸があるときは、これを除く。)の評価額(確定評価基準があるものについては、確定評価基準により評価した金額を以て、その他のもののうち暫定評価基準があるものについては、暫定評価基準により評価した金額に対し主務大臣の指定する割合を乗じた金額を以て、各ゝ評価額とする。)と、旧勘定の新勘定に対する貸があるときはその金額との合計額
二 前条第一項第二号に掲げる金額
前条第二項乃至第四項の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第十五条 第四十条第一項又は第四十一条第一項の規定により新勘定の事業の全部若しくは一部を他の金融機関に譲渡し又は新勘定の保険契約の全部若しくは一部を他の金融機関に移転した金融機関(以下旧金融機関といふ。)は、第八条第一項又は第九条の評価を行つた結果、前条第一項第一号の金額が同項第二号の金額(第四十二条第二項の規定により、又は前に本条第二項の規定により債務を負担したときは、その金額を含む。)を超える場合において、その超過額の整理債務に対する割合が主務大臣の指定する割合を超えるときは、前条の規定にかかはらず、命令の定めるところにより、書面を以て主務大臣の認可を受け、その超過額の範囲内において、整理債務を旧金融機関から新勘定の事業の全部若しくは一部の譲渡又は新勘定の保険契約の全部若しくは一部の移転を受けた金融機関(以下新金融機関といふ。)に移すことができる。但し、新金融機関の同意を得なければならない。
前項の場合においては、旧金融機関は、命令の定めるところにより、新金融機関に移した整理債務の金額に相当する金額の債務を、新金融機関に対して負担する。
銀行法等特例法第一条の規定は、命令の定めるところにより、第一項の規定により整理債務を移す場合に、これを準用する。
第十六条 金融機関は、旧勘定の新勘定に対する借がある場合においては、命令の定めるところにより、その借の金額の範囲内において、旧勘定の資産のうち、第八条第一項又は第九条の規定により確定評価基準により評価したものを、その評価額を以て旧勘定から新勘定に移し、その評価額に相当する金額を、旧勘定の新勘定に対する借の金額から控除しなければならない。
前項の規定により、確定評価基準により評価した資産で命令で定めるものを旧勘定から新勘定に移す場合においては、金融機関は、主務大臣の承認を受けなければならない。
第十七条 第十五条第二項又は第四十二条第二項の規定により、旧金融機関が新金融機関に対し債務を負担した場合において、旧金融機関に、金融機関経理応急措置法第九条第一項の規定により、旧勘定に属する現金(小切手を含む。)を生じたときは、旧金融機関は、同法第十条の規定にかかはらず、命令の定めるところにより、これを新金融機関に対する債務の弁済に充てなければならない。
第十五条第二項又は第四十二条第二項の規定により、旧金融機関が新金融機関に対し債務を負担した場合においては、旧金融機関は、前項に規定する場合の外、金融機関経理応急措置法第十六条本文及び前条の規定にかかはらず、命令の定めるところにより、その債務の金額の範囲内において、旧勘定の資産のうち、第八条第一項又は第九条の規定により確定評価基準により評価したものを、その債務の弁済に充てることができる。但し、新金融機関の同意を得なければならない。
前二項の場合においては、新金融機関は、金融機関経理応急措置法第十七条本文の規定にかかはらず、弁済を受けることができる。
第五章 旧勘定の最終処理
第十八条 金融機関は、左の各号の一に該当する場合においては、本章の定めるところにより、旧勘定の最終処理を行はなければならない。
一 第八条第一項の評価を行つた結果、同項の規定により主務大臣の指定する時の現在により、左のイに掲げる金額がロに掲げる金額を超える場合において、その超過額の旧勘定の資産の総額に対する割合が主務大臣の指定する割合を超えるとき
イ 旧勘定の第八条第一項の評価による評価益の額と、その他の益の額と、積立金(保険業法第六十五条の積立金を除く外、特別準備金その他名称の如何を問はず積立金であるものを含む。以下同じ。)の額との合計額
ロ 旧勘定の第八条第一項の評価による評価損の額と、その他の損の額と、繰越損の額との合計額
二 旧勘定の資産及び負債並びに指定時における新勘定の資産及び負債のうち命令で定めるものについて、確定評価基準が決定されたとき
第十九条 前条第一号に規定する場合において、旧勘定の第八条第一項の評価による評価益の額と、その他の益の額との合計額(以下暫定益の額といふ。)が、前条第一号のロに掲げる金額(以下暫定損の額といふ。)以上であるときは、金融機関は、命令の定めるところにより、書面を以て主務大臣の認可を受け、旧勘定の最終処理を完了しなければならない。
この場合において、暫定益の額が暫定損の額を超えるときは、その超過額は、これを旧勘定の特別準備金として整理しなければならない。
第二十条 第十八条第一号に規定する場合において、暫定益の額が暫定損の額に不足するときは、金融機関は、左の各号に定める順序により、暫定損を填補しなければならない。
一 暫定損の額に対し、暫定益の額の全額を充当して填補する。
二 前号の規定の適用後における暫定損の残額に対し、旧勘定の積立金を、特別準備金(金融機関経理応急措置法又はこの法律による特別準備金をいふ。以下同じ。)、退職積立金以外の任意積立金、退職積立金及び他の法令(金融機関経理応急措置法を除く。)による積立金の順序により、順次に取り崩して填補する。
前項第二号の場合において、同順位の積立金が二以上あるときは、均等の割合でこれを取り崩して填補する。
前二項の規定により暫定損の全額を填補したときは、金融機関は、命令の定めるところにより、書面を以て主務大臣の認可を受け、旧勘定の最終処理を完了しなければならない。
第二十一条 金融機関は、第十八条第二号の規定に該当する場合においては、同号の規定に該当するに至つた日の属する月の月末における旧勘定の資産及び負債並びに指定時における新勘定の資産及び負債について、命令の定めるところにより、各勘定別に、財産目録、貸借対照表及び損益の計算書(損益の計算書は旧勘定の分に限る。)を作成して、主務大臣の指定する日までに、これを主務大臣に提出しなければならない。
第二十二条 金融機関は、前条の規定により作成する旧勘定の財産目録、貸借対照表及び損益の計算書には、命令の定めるところにより、主務大臣の承認を受け、旧勘定の最終処理に必要な費用に充てるため、最終処理費引当金を計上するものとする。
第二十三条 第二十一条に規定する月の月末において、左の各号の一に該当する場合においては、金融機関は、命令の定めるところにより、書面を以て主務大臣の認可を受け、旧勘定の最終処理を完了しなければならない。
一 確定益(旧勘定の第十条第二項及び第十一条の評価益及びその他の益を総称する。以下同じ。)も、確定損(旧勘定の第十条第二項及び第十一条の評価損、繰越損及びその他の損を総称する。以下同じ。)もないとき
二 確定益と確定損とがあつて、確定益の額と確定損の額とが同額であるとき
三 確定益があつて確定損がないとき
四 確定益と確定損とがあつて、確定益の額が確定損の額を超えるとき
前項第三号の場合における確定益の額、又は同項第四号の場合における確定益の額の確定損の額を超える額は、これを旧勘定の特別準備金として整理しなければならない。
第二十四条 第二十一条に規定する月の月末において、旧勘定に確定損があつて確定益がないとき、又は確定損と確定益とがあつて確定損の額が確定益の額を超えるときは、金融機関は、左の各号の順序により、確定損の整理負担額を計算しなければならない。
一 確定益があるときは、確定損に対し、確定益の全額を充当するものとする。
二 確定益がないときは確定損の全額に対し、又、確定益があるときは前号の規定の適用後における確定損の残額に対し、旧勘定の積立金を充当するものとする。
三 前号によるもなほ確定損の残額があるときは、その残額に対し、資本の金額の九割に相当する金額まで、株主(出資者、基金醵出者その他これに準ずるものを含む。以下同じ。)において確定損を負担するものとする。
四 前号によるもなほ確定損の残額があるときは、その残額に対し、整理債務(第十三条第一項、第十四条第一項又は第十五条第一項の規定により旧勘定から新勘定又は新金融機関に移した分を含み、命令で定める分を除く。以下第二十五条まで同じ。)のうち、法人(法人でない社団又は財団を含む。以下同じ。)の預金等で一口五百万円を超えるものの、五百万円を超える部分の金額の七割に相当する金額まで、その預金等の債権者において確定損を負担するものとする。
五 前号によるもなほ確定損の残額があるときは、その残額に対し、整理債務のうち、法人の預金等で一口百万円を超えるものの、百万円を超え五百万円以下の部分の金額の五割に相当する金額まで、その預金等の債権者において確定損を負担するものとする。
六 前号によるもなほ確定損の残額があるときは、その残額に対し、整理債務のうち、法人の預金等で一口十万円を超えるものの、十万円を超え百万円以下の部分の金額の三割に相当する金額まで、その預金等の債権者において確定損を負担するものとする。
七 前号によるもなほ確定損の残額があるときは、その残額に対し、整理債務のうち、前三号の規定の適用後における法人の預金等の残額と、その他の整理債務の金額との七割に相当する金額まで、整理債務の債権者において確定損を負担するものとする。
八 前号によるもなほ確定損の残額があるときは、その残額に対し、第三号の規定の適用後における資本の残額に相当する金額まで、株主において確定損を負担するものとする。
九 前号によるもなほ確定損の残額があるときは、その残額に対し、第七号の規定の適用後における整理債務の残額に相当する金額まで、整理債務の債権者において確定損を負担するものとする。
十 前号によるもなほ確定損の残額があるときは、その残額に対し、指定債務(命令で定めるものを除く。)の全額まで、指定債務の債権者において、命令で定める順序により、確定損を負担するものとする。
前項第三号又は第八号の場合における各株主の負担額は、その所有する株式(出資及び基金を含む。以下同じ。)の金額に応じて均等とする。金融機関が数種の株式を発行してゐる場合においてもまた同じ。
第二十五条 前条の規定により算出した確定損の整理負担額の処理のため金融機関は、左の各号の定める措置をなさなければならない。
一 前条第一項第一号の場合においては、確定損の額から確定益の額を差し引く。
二 前条第一項第二号の場合においては、旧勘定の積立金を、特別準備金、退職積立金以外の任意準備金、退職積立金及び他の法令(金融機関経理応急措置法を除く。)による積立金の順序により、順次に取り崩す。
三 前条第一項第三号乃至第八号の場合においては、資本に未払込金があるときは、勅令の定めるところにより払込をなさしめた後、又、資本に未払込金がないときは直ちに、前号の措置をなした上、同条第一項第三号又は第八号の規定により株主が負担すべき金額の合計金額だけ資本を減少する。但し、第二十六条に規定する場合は、この限りでない。
第二十条第二項の規定は、前項第二号の場合に、これを準用する。
前条第一項第四号乃至第十号の場合においては、整理債務又は指定債務の債権は、当該各号の規定によりこれらの債務の債権者が確定損を負担すべき金額に相当する金額だけ、新勘定及び旧勘定の区分の消滅の日において消滅する。
前項の場合においては、保険会社、生命保険中央会又は損害保険中央会の旧勘定に属する責任準備金又は支払備金に対応する保険金(年金を含む。以下同じ。)の債権は、責任準備金又は支払備金に関する権利の消滅の割合と同一の割合により、新勘定及び旧勘定の区分の消滅の日において消滅する。
第一項第三号の規定による払込の場合に関しては、他の法令又は定款にかかはらず、勅令で特別の定をなすことができる。
第二十六条 第二十四条第一項第八号の規定により、株主が資本の全額に相当する金額の確定損を負担しなければならないときは、金融機関は、第二十七条第一項の認可を受けた後(第三十三条第一項の規定により補償を受くべきときは、その補償を受けた後)、遅滞なく旧勘定の資産と、確定損を負担しない整理債務又は指定債務があるときはその整理債務又は指定債務とを旧勘定から新勘定に移さなければならない。旧勘定の新勘定に対する借は、この措置と同時に消滅する。
前項の場合においては、金融機関は、同項の措置をなした後、主務大臣の指定する日までに、新勘定の事業の全部を他の金融機関に譲渡し、又は新勘定の保険契約の全部を他の金融機関に移転しなければならない。
金融機関は、前項の譲渡又は移転について対価を取得した場合においては(第三十三条第一項の規定による政府の補償があつたときは、先づ、その額まで、これを政府に納付し、なほ残額があるときは)、命令の定めるところにより、これを処分しなければならない。
金融機関は、第二項の期限内に新勘定の事業の全部の譲渡又は新勘定の保険契約の全部の移転を終つたときはその譲渡又は移転を終つた日において、又、同項の期限内にその譲渡又は移転を終らなかつたときは同項の期限を経過した日において解散する。この場合においては、新勘定及び旧勘定の区分は、解散の日において消滅する。
第三項の規定は、前項の規定による解散の場合に、これを準用する。
前項に定めるものを除く外、第四項の規定による解散の場合に関し必要な事項は、他の法令にかかはらず、命令でこれを定める。
第二十四条第一項第八号の規定により、旧金融機関の株主が資本の全額に相当する金額の確定損を負担しなければならない場合において、第十五条第二項又は第四十二条第二項の規定により、旧金融機関が新金融機関に対し負担した債務があるときは、旧金融機関は、第一項の措置をなす前に、命令の定めるところにより、先づ、旧勘定の資産をその債務の弁済に充てなければならない。但し、現金(小切手を含む。)以外の資産を債務の弁済に充てるには、新金融機関の同意を得なければならない。
銀行法等特例法第一条の規定は、命令の定めるところにより、第二項の規定による事業の譲渡の場合に、これを準用する。
第二十七条 金融機関の取締役又はこれに準ずる者(以下理事機関といふ。)は、第二十四条第一項に規定する場合においては、命令の定めるところにより、最終処理方法書を作成し、主務大臣の認可を受けなければならない。
前項の場合において、当該金融機関について、第四十七条の監査委員があるときは、理事機関は、前項の規定による認可の申請前、予め最終処理方法書につき、その承認を受けなければならない。
第二十八条 金融機関の理事機関は、前条第一項の規定による認可があつたときは、旧勘定の最終処理を行ふべき旨を公告し、最終処理方法書及び第二十一条の書類を本店又は主たる事務所及び支店又は従たる事務所に備へ置かなければならない。
金融機関の株主及び旧勘定の負債に関する債権者は、営業時間内、何時でも前項に掲げる書類を閲覧することができる。
第二十九条 金融機関は、第二十七条第一項の認可を受けたときは、最終処理方法書に定めるところにより、遅滞なく旧勘定の最終処理を行はなければならない。
第三十条 第二十七条第一項の認可があつた後、旧勘定の最終処理の完了までに、旧勘定の資産若しくは負債又は指定時における新勘定の資産若しくは負債について、旧勘定の最終処理の結果に影響を及ぼすべき変更を生じたときは、金融機関の理事機関は、その変更に基いて、最終処理方法書を改訂しなければならない。
第二十七条乃至前条の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第三十一条 第二十七条第一項の認可があつたときは、金融機関が旧勘定の最終処理を行ふためになす資本の減少、定款の変更その他の手続については、他の法令又は定款にかかはらず、株主総会若しくはこれに準ずるものの決議又は政府の認可等は、これを必要としない。
商法第三百八十条の規定は、前項の資本の減少については、これを適用しない。
第一項の資本の減少については、資本の減少の日から命令で定める日までの間を限り、他の法令中資本又は株式の金額の制限に関する規定は、これを適用しない。
前三項に定めるものを除く外、第一項の資本の減少に関し必要な事項については、他の法令又は定款にかかはらず、命令で特別の定をなすことができる。
第三十二条 前条第一項の資本の減少の結果、金融機関の債券の発行又は資金の借入若しくは融通の額が、他の法令に規定する債券の発行又は資金の借入若しくは融通に関する制限額を超えるに至つた場合においては、当該資本の減少の際現に存する債券又は資金の借入若しくは融通(その更改に因る債権又は債務を含む。)に限り、他の法令中これらの債権又は債務の金額の制限に関する規定は、これを適用しない。
第三十三条 第二十四条第一項の規定により、確定損の整理負担額を計算するもなほ確定損の残額があるときは、その残額は、命令の定めるところにより、政府において、これを補償する。但し、その補償の金額は、勅令で定める金額を限度とする。
政府は、前項の補償の決済を、国債証券の交付により行ふことができる。
前項の規定による決済のため交付する国債証券の交付価格は、大蔵大臣がこれを定める。
政府は、第一項の補償債務の弁済のため必要な金額を限り公債を発行することができる。
金融機関が前章に定めるところにより、整理債務を旧勘定から新勘定又は新金融機関に移した場合においては、第一項の規定は、これを適用しない。
第一項の規定による政府の補償の金額は、大蔵省預金部等損失特別処理法による補償金の額と合計し、百億円(第二十六条第三項その他の規定により政府に納付した金額があるときは、その額を加算した金額)を限度とする。
第三十四条 金融機関は、旧勘定の最終処理を完了したときは、遅滞なくその旨を公告しなければならない。
金融機関の新勘定及び旧勘定の区分は、前項の公告(二回以上公告をなしたときは最初の公告)の日において消滅する。
金融機関は、第一項の公告をなしたときは、その公告(二回以上公告をなしたときは最初の公告)の後、本店又は主たる事務所の所在地においては二週間以内に、又、支店又は従たる事務所の所在地においては三週間以内に、新勘定及び旧勘定の区分の消滅の登記をしなければならない。
前項の登記に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第三十五条 第四条第一項の規定により債権の申出をなすべき債権者でその申出をしなかつたものが、同項の期限後新勘定及び旧勘定の区分の消滅の日までにその債権を申し出たときは、第十九条若しくは第二十三条に規定する場合又は第二十条第一項第二号若しくは第二十五条第一項第二号の規定の適用後なほ旧勘定の積立金が残る場合に限り、旧勘定の積立金の金額の範囲内において、その債権の金額に応じ均等の割合で、その債権の弁済を、金融機関に請求することができる。
前項の場合においては、金融機関は、債権者に対し、その債権の弁済の請求ができる金額を通知しなければならない。
第四条第一項の規定により申出をなすべき債権で、同項の期限までにその申出のなかつたものは、第一項の規定により弁済の請求ができる金額を除く外、新勘定及び旧勘定の区分の消滅の日において消滅する。
第一項の場合においては、金融機関は、他の法令又は定款にかかはらず、同項の規定により弁済の請求を受くべき金額だけ、積立金を、退職積立金以外の任意積立金、退職積立金及び他の法令による積立金の順序により、順序に取り崩すことができる。
第二十条第二項の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第三十六条 金融機関の旧勘定の負債又は指定時における新勘定の負債に関する債権(責任準備金及び支払備金に関する権利を含む。以下第三十七条まで同じ。)で、旧勘定の最終処理の完了の際不確定であつたものが、旧勘定の最終処理の完了後確定したときは、金融機関の理事機関は、その確定の結果に基いて、第二十四条の規定に準じ、当該債権が確定損を負担すべきであつた金額を計算し、その金額を当該債権者(責任準備金及び支払備金に関する権利者を含む。以下第三十八条まで同じ。)に通知しなければならない。
前項の場合においては、当該債権は、同項の規定による通知のあつた時において、その通知に係る金額だけ消滅する。
第二十五条第四項の規定に、前項の場合に、これを準用する。
第三十七条 第二十四条第一項第四号乃至第八号の規定により、金融機関の整理債務の債権者において旧勘定の確定損の負担した場合において、新勘定及び旧勘定の区分の消滅後、当該金融機関に属する資産で命令で定めるもののうち、前に旧勘定に属してゐたものにつき、第八条第一項又は第九条の規定による評価額に比し、価額の増加があつたとき、又はその資産を処分して得た対価が第八条第一項又は第九条の規定による評価額を超えたときは、その増価額又は処分益の額に相当する金額については、当該金融機関は、他の法令にかかはらず、命令の定めるところにより、これを処分しなければならない。
金融機関の旧勘定の負債又は指定時における新勘定の負債に関する債権のうち、旧勘定の最終処理の完了の際不確定であつたものが、旧勘定の最終処理の完了後、初から存在しなかつたものと確定した場合における第一号の金額の処分、又はその確定した金額が第五条の規定に基く命令で定める金額よりも少い場合における第一号の金額から第二号の金額を差し引いた残額の処分についても、また前項に同じ。
一 その負債に関する債権について、第五条の規定に基く命令で定める金額に対する第二十四条第一項第四号乃至第十号の規定の適用後における残額
二 その負債に関する債権について、確定した金額に対する前条第一項の規定の適用後における残額
第三十八条 旧勘定の最終処理が完了したときは、債権者及び株主の権利は、最終処理方法書の定めるところによつて確定する。但し、第三十六条の場合においては、当該債権者の権利は、同条の定めるところによつて確定する。
旧勘定の整理が法令に違反して債権者又は株主に損害を及ぼしたときは、当該金融機関の理事機関は、当該金融機関と連帯してその損害を賠償しなければならない。但し、当該理事機関で、その業務の執行について過失がなかつた者については、この限りでない。
前項の規定は、第二十六条第四項の場合における清算に関する清算人の責任について、これを準用する。
第一項(前項において準用する場合を含む。)の損害賠償の請求権は、新勘定及び旧勘定の区分の消滅の日から五年を経過したときは、時効に因つて消滅する。
第六章 整備の促進
第三十九条 第二十五条第一項第三号の規定により、金融機関が資本の減少を行はなければならない場合においては、その理事機関は、命令の定めるところにより、旧勘定の最終処理の完了後における当該金融機関の事業に関し整備計画書を作成し、主務大臣の認可を受けなければならない。
前項の規定による整備計画書の認可があつた場合において、金融機関が主務大臣の指定する日までに、前項の整備計画書に定める整備計画を実行することができなかつたときは、その理事機関は、遅滞なくその旨を、書面を以て主務大臣に届け出なければならない。
第四十条 金融機関は、指定時における新勘定の資産及び負債のうち命令で定めるものについて確定評価基準が決定し、且つ、新勘定の旧勘定に対する借がない場合に限り、命令の定めるところにより、書面を以て主務大臣の認可を受け、新勘定の事業の全部若しくは一部を他の金融機関に譲渡し、又は新勘定の保険契約の全部若しくは一部を他の金融機関に移転することができる。
前項の規定による認可があつたときは、同一の事項については、同時に他の法令による認可等があつたものとみなす。
第四十一条 主務大臣は、金融機関の整備を促進するため必要があるときは、経済再建整備委員会の議を経て、新勘定及び旧勘定の区分の存する金融機関に対し、新勘定の事業の全部若しくは一部を他の金融機関に譲渡し、又は新勘定の保険契約の全部若しくは一部を他の金融機関に移転すべきことを命ずることができる。
主務大臣は、金融機関の旧勘定の最終処理の完了後における事業の状況により、特に必要があると認めるときは、他の法令に規定する場合を除く外、経済再建整備委員会の議を経て、新勘定及び旧勘定の区分の消滅した金融機関に対し、合併若しくは資本の増加を命じ、その事業の全部若しくは一部を他の金融機関に譲渡すべきことを命じ、又はその保険契約の全部若しくは一部を他の金融機関に移転すべきことを命ずることができる。
第一項又は前項の規定による主務大臣の命令があつた場合において、命令を受けた日から六箇月以内に、その命令に係る事項に関する契約が成立せず、又は資本の増加に関する株主総会その他これに準ずるものの決議がなかつたときは、命令を受けた金融機関の理事機関は、遅滞なくその旨を、書面を以て主務大臣に届け出なければならない。
第四十二条 第四十条第一項又は前条第一項若しくは第二項の規定により、金融機関が合併、事業の譲渡又は保険契約の移転をなす場合においては、当該金融機関は、その合併、事業の譲渡又は保険契約の移転の相手方を、新勘定及び旧勘定の区分の存しない金融機関(金融機関経理応急措置法第二十七条第二号の金融機関の場合においては、相手方たる者は当該金融機関と同種の法人で金融機関たるもの以外のものを含む。)のうちから選ばなければならない。
第四十条第一項又は前条第一項の場合において、旧金融機関に旧勘定の新勘定に対する借があるときは、命令の定めるところにより、新金融機関に対して、その借の金額に相当する金額(事業の一部を譲渡し又は保険契約の一部を移転した場合においては、借の金額のうち、その譲渡に係る事業又は移転に係る保険契約に関する部分とし、又、事業の譲渡又は保険契約の移転の対価があるときは、その対価の金額を控除したものとする。)の債務を負担する。
銀行法等特例法第一条の規定は、命令の定めるところにより、第四十条第一項又は前条第一項若しくは第二項の規定により合併又は事業の譲渡をなす場合に、これを準用する。
前三項に定めるものを除く外、第四十条第一項又は前条第一項若しくは第二項の場合において必要な事項は、命令でこれを定める。
第四十三条 主務大臣は、金融機関の整備を促進するため必要があるときは、金融機関に対し、命令の定めるところにより、事業費の支出その他経理に関し必要な事項を命ずることができる。
第七章 決算の特例
第四十四条 金融機関の決算は、当該金融機関に新勘定及び旧勘定の区分の存する間は、新勘定及び旧勘定について、各別に、これを行はなければならない。
他の法令の適用のため必要な金融機関の財産目録、貸借対照表、損益計算書その他の商業帳簿及び営業に関する書類に関しては、命令の定めるところによる。
第四十五条 金融機関は、毎事業年度において、新勘定又は旧勘定に利益金を生じたときは、他の法令又は定款にかかはらず、これを当該勘定の特別準備金として積み立てなければならない。
金融機関は、毎事業年度において、新勘定又は旧勘定に欠損を生じたときは、当該勘定の特別準備金を取り崩して填補し、なほ不足があるときは、これを当該勘定別に繰り越さなければならない。
第四十六条 金融機関の新勘定及び旧勘定の区分が消滅したときは、他の法令又は定款にかかはらず、その区分の消滅した日を含む事業年度は、その区分の消滅した日までで終了するものとし、その事業年度に続く事業年度は、命令で定める日で終了するものとする。
金融機関の新勘定及び旧勘定の区分の消滅の際現に新勘定又は旧勘定に特別準備金がある場合において、当該金融機関に商法第二百八十八条第一項の準備金(その他の法令によるこれに準ずる準備金を含む。以下法定準備金といふ。)があるときは、当該特別準備金は、法定準備金に併せられ、又、法定準備金がないときは、当該特別準備金が、そのまま法定準備金となるものとする。
第八章 監査及び監督
第四十七条 金融機関の旧勘定の整理の適正を図るため必要があるときは、経済再建整備委員会は、主務大臣の認可を受け、当該金融機関について、その債権者その他の利害関係人(国、公共団体その他の法人である場合においては、代表者その他の職員)のうちから、五人以内の監査委員を選任することができる。
主務大臣は、金融機関の旧勘定の整理の適正を図るため必要があるときは、経済再建整備委員会に対し、当該金融機関につき監査委員を選任すべきことを命ずることができる。
金融機関の監査委員は、当該金融機関の役員と相兼ねることができない。
第四十八条 監査委員は、金融機関の旧勘定の整理を監査することをその職務とする。
監査委員は、前項に規定する職務を行ふため、何時でも金融機関の理事機関に対し旧勘定の整理に関する報告を求め、又は旧勘定の整理の状況を調査することができる。
監査委員の職務及び権限は、第二十七条第二項及び前二項に規定するものを除く外、勅令でこれを定める。
第四十九条 経済再建整備委員会は、主務大臣の認可を受け、監査委員を解任することができる。
主務大臣は、必要があるときは、経済再建整備委員会に対し、監査委員を解任すべきことを命ずることができる。
第五十条 主務大臣は、金融機関の役員が金融機関経理応急措置法若しくはこの法律又はこれに基く命令若しくは処分に違反したときは、金融機関に対し、その役員を解任すべきことを命ずることができる。
主務大臣は、金融機関の役員の行為が公益を害する虞があると認めるときは、当該役員に対し、その職務の執行を停止すべきことを命ずることができる。
主務大臣は、必要があるときは、経済再建整備委員会の議を経て、金融機関に対し、前項の規定により職務の執行を停止した役員を解任すべきことを命ずることができる。
第五十一条 主務大臣は、この法律の施行に関し必要があるときは、金融機関に対し、監督上必要な命令をなすことができる。
主務大臣は、この法律の施行に関し必要があるときは、金融機関をしてその業務及び財産の状況に関して報告せしめ、又は当該官吏をして帳簿、書類その他の物件を検査せしめることができる。
主務大臣は、前項の規定により、当該官吏をして検査せしめるときは、その身分を示す証票を携帯せしめなければならない。
第九章 雑則
第五十二条 金融機関経理応急措置法第十四条の規定は、第十条第一項、第十三条第三項(第十四条第二項において準用する場合を含む。)又は第十六条第一項の規定により、新勘定の旧勘定に対する貸又は借として整理さるべき金額について、これを準用する。
第五十三条 金融機関の新勘定又は旧勘定の資産で暫定評価基準又は確定評価基準により評価したものを財産目録に記載する場合においては、その価額については、商法第二百八十五条(保険業法第六十七条において準用する場合を含む。)の規定は、これを適用しない。
第五十四条 金融機関経理応急措置法第十八条第二項の規定により中止された金融機関の財産に対する強制執行、仮差押若しくは仮処分又は競売法による競売手続は、その財産が新勘定に属するに至つたとき、又は新勘定及び旧勘定の区分が消滅したときは、その日からこれを続行する。但し、新勘定及び旧勘定の区分の消滅前においては、その債権に関する債務の全部又は一部が旧勘定に属する間は、この限りでない。
第五十五条 金融機関の新勘定及び旧勘定の区分が消滅するまでは、その金融機関に対して破産の宣告、整理開始の命令又は和議開始の決定をなすことができない。
金融機関の新勘定について支払不能又は債務超過の事実が生じた場合における措置については、勅令の定めるところによる。
金融機関の新勘定及び旧勘定の区分の消滅後においては、その金融機関には、金融機関経理応急措置法第二十二条第二項の規定は、これを適用しない。
第五十六条 旧勘定に属する責任準備金に対応する生命保険金に関する保険契約(以下旧生命保険契約といふ。)につき指定時後払ひ込まれた保険料のうち、第二十五条第四項の規定により債権の消滅した生命保険金の部分に対応するものについては、その保険契約をなした生命保険会社又は生命保険中央会(以下生命保険会社等といふ。)は、命令の定めるところにより、当該保険契約者との間に保険契約が現に存する場合においては、これを当該保険契約の保険料に充当するものとし、保険料に充当してなほ残額がある場合又は当該保険契約者との間に現に保険契約が存しない場合においては、これを当該保険契約者に返済しなければならない。
新勘定及び旧勘定の区分の消滅の日までに、旧生命保険契約について保険事故が発生した場合において、金融機関経理応急措置法第二十四条第一項の規定により払ひ込むことを要しなかつた保険料で払ひ込まれなかつたものがあるときは、生命保険会社等は、命令の定めるところにより、その支払ふべき生命保険金の額からその保険料に相当する金額を控除した残額を、保険金受取人に交付する。
第五十七条 地方農業会、市街地信用組合その他命令で定める金融機関の会員(組合員その他これに準ずるものを含む。以下本条中同じ。)で出資の義務を有するもののうち、指定時までに出資をしてゐないもの及び指定時後出資の義務を有する会員となるものは、当該金融機関に新勘定及び旧勘定の区分が存する間に限り、命令の定めるところにより、出資の払込に代へ、これに相当する金額の保証金を払ひ込まなければならない。
前項の保証金の払込をなした者は、資金の貸付、施設の利用その他当該金融機関の会員の受ける利益に関する他の法令の規定の適用については、出資をなしたものとみなす。
前項に定めるものを除く外、第一項の規定による保証金の払込をなした者に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第五十八条 金融機関で昭和二十年 大蔵 外務 内務 司法 省令第一号別表に掲げるものの旧勘定の整理及びその者の債権又は債務の処理については、勅令で特別の定をなすことができる。
第五十九条 第二十五条第三項若しくは第四項又は第三十六条第二項若しくは第三項の規定により、金融機関の整理債務又は指定債務の債権の全部又は一部が消滅した場合において、当該金融機関の発行に係る債券その他命令で定める証券の引換その他に関し必要な事項は、命令でこれを定める。金融機関経理応急措置法第二十条の金融債券の引換その他当該債券に関し必要な事項についてもまた同じ。
第六十条 旧金融機関が、この法律の定めるところにより、新金融機関に対し、不動産、有価証券その他の資産を譲渡する場合においては、その譲渡に関する証書及び帳簿に関しては、印紙税は、これを課さない。
第六十一条 この法律に規定する主務大臣の職権の一部は、命令の定めるところにより、これを地方官衙の長をして行はしめることができる。
第六十二条 金融機関経理応急措置法及びこの法律に規定するものの外、戦時補償の特別処理等に伴ひ金融機関に生ずべき損失の処理及び金融機関の再建整備に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第十章 罰則
第六十三条 左の場合においては、その行為をなした金融機関の代表者、代理人、使用人その他の従業者は、これを三年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
一 第十三条第一項又は第十五条第一項の規定による認可の申請書に虚偽の記載をなして提出したとき
二 第十四条第一項、第十九条、第二十条第三項又は第二十三条第一項の規定に違反して認可の申請を怠り、又はその認可の申請書に虚偽の記載をなして提出したとき
三 第二十六条第三項(同条第五項において準用する場合を含む。)の規定に基く命令に違反して同項に規定する対価の処分を怠り、又はその処分をなしたとき
四 第二十六条第六項の規定による命令に違反したとき
五 第二十七条第一項(第三十条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反して最終処理方法書の認可の申請を怠り、又は虚偽の記載をなした最終処理方法書を提出して認可の申請をなしたとき
六 第二十七条第二項(第三十条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反して監査委員の承認を受けることを怠り、又は虚偽の記載をなした最終処理方法書につき監査委員の承認を受けたとき
七 第二十九条(第三十条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反して最終処理方法書に定めるところによる旧勘定の最終処理を行はないとき
八 第三十七条第一項の規定による命令に違反して増価額又は処分益の額の処分を怠り、又はその処分をなしたとき
九 第三十七条第二項の規定による命令に違反して同項に規定する金額の処分を怠り、又はその処分をなしたとき
第六十四条 監査委員がその職務に関して、賄賂を収受し、要求し、又は約束したときは、これを三年以下の懲役又は三千円以下の罰金に処する。
前項の賄賂を供与し、又はその申込若しくは約束をなした者もまた前項に同じ。
犯人又は情を知る第三者の収受した賄賂は、これを没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
第六十五条 左の場合においては、その行為をなした金融機関の代表者、代理人、使用人その他の従業者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 第六条の規定に違反して財産目録、貸借対照表若しくは資産及び負債の明細書の提出を怠り、又は虚偽の記載をなした財産目録、貸借対照表若しくは資産及び負債の明細書を提出したとき
二 第八条第二項又は第二十一条の規定に違反して財産目録、貸借対照表若しくは損益の計算書の提出を怠り、又は虚偽の記載をなした財産目録、貸借対照表若しくは損益の計算書を提出したとき
三 第三十九条第一項の規定に違反して整備計画書の認可の申請を怠つたとき
四 第四十三条の規定による命令に違反したとき
五 第五十条第一項又は第三項の規定による命令に違反して役員の解任の手続をなさなかつたとき
六 第五十一条第二項の規定による報告を怠り、又は虚偽の報告をなしたとき
第六十六条 第五十条第二項の規定による命令に違反して職務の執行を停止しない者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
第六十七条 第五十一条第二項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
第六十八条 第五十九条の規定による命令に違反した者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
第六十九条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、第六十三条、第六十五条又は前条の違反行為をなしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対し、各本条の罰金刑を科する。
第七十条 左の場合においては、金融機関の理事機関は、これを五千円以下の過料に処する。
一 第十三条第四項(第十四条第二項において準用する場合を含む。)又は第三十四条第一項に規定する公告を怠り、又は不正の公告をなしたとき
二 第十七条第一項若しくは第二項又は第二十六条第七項の規定に違反して旧勘定の資産を債務の弁済に充てることを怠つたとき
三 第二十八条第一項の規定に違反して公告を怠り、書類を備へ置かず、若しくは虚偽の記載をなした書類を備へ置き、又は同条第二項の規定に違反して正当の事由なくして書類の閲覧を拒んだとき
四 第三十四条第三項に規定する登記を怠つたとき
五 第三十六条第一項の規定に違反して通知を怠り、又は虚偽の通知をなしたとき
六 第三十九条第二項の規定に違反して届出を怠り、又は虚偽の届出をなしたとき
七 第四十一条第一項の規定による命令に違反して事業の譲渡又は保険契約の移転に必要な手続をなさなかつたとき
八 第四十一条第二項の規定による命令に違反して合併若しくは資本の増加、事業の譲渡又は保険契約の移転に必要な手続をなさなかつたとき
九 第四十一条第三項の規定に違反して届出を怠り、又は虚偽の届出をなしたとき
十 第四十五条第一項の規定に違反して特別準備金を積み立てず、又は同条第二項の規定に違反して特別準備金を取り崩したとき
十一 第四十八条第二項の規定による報告を怠り、若しくは虚偽の報告をなし、又は同項に規定する調査を妨げたとき
十二 第五十一条第一項の規定による命令に違反したとき
附 則
この法律の施行の期日は、勅令でこれを定める。
戦時補償特別措置法第十五条第二項、第十九条第二項、第三十六条第二項又は第三十八条第二項の規定により金融機関が戦時補償特別税として徴収した金銭(証券を以て徴収した場合における証券を含む。)及びその徴収した戦時補償特別税を政府に納付すべき義務、同法第三十四条の規定により納税義務者に代位して戦時補償特別税を納付すべき義務並びに同法第四十一条、第四十二条又は第五十三条の規定により求償をなす権利及び求償に応じて履行をなすべき債務その他命令で定める財産上の権利及び義務は、金融機関経理応急措置法第九条第二項の規定にかかはらず、当該金融機関の旧勘定に属する。
金融機関経理応急措置法の一部を次のやうに改正する。
第二十五条第一項中「指定時においてその新勘定に属する責任準備金に対応する保険金額と新契約の保険金額との合計額」を「新契約の保険金額」に改める。
第二十七条第一号中「及び市街地信用組合」を「、市街地信用組合及び産業組合(産業組合法第一条第一項第一号に掲げる事項のみを目的とするものに限る。)」に改める。
租税特別措置法の一部を次のやうに改正する。
第十八条第四号中「会社」を「法人」に、「資本増加」を「資本(出資又は基金を含む。)の増加」に、「株金」を「株金(出資金又は基金を含む。)」に改める。