第十八條 金融機關は、左の各號の一に該當する場合においては、本章の定めるところにより、舊勘定の最終處理を行はなければならない。
一 第八條第一項の評價を行つた結果、同項の規定により主務大臣の指定する時の現在により、左のイに掲げる金額がロに掲げる金額を超える場合において、その超過額の舊勘定の資産の總額に對する割合が主務大臣の指定する割合を超えるとき
イ 舊勘定の第八條第一項の評價による評價益の額と、その他の益の額と、積立金(保險業法第六十五條の積立金を除く外、特別準備金その他名稱の如何を問はず積立金であるものを含む。以下同じ。)の額との合計額
ロ 舊勘定の第八條第一項の評價による評價損の額と、その他の損の額と、繰越損の額との合計額
二 舊勘定の資産及び負債竝びに指定時における新勘定の資産及び負債のうち命令で定めるものについて、確定評價基準が決定されたとき
第十九條 前條第一號に規定する場合において、舊勘定の第八條第一項の評價による評價益の額と、その他の益の額との合計額(以下暫定益の額といふ。)が、前條第一號のロに掲げる金額(以下暫定損の額といふ。)以上であるときは、金融機關は、命令の定めるところにより、書面を以て主務大臣の認可を受け、舊勘定の最終處理を完了しなければならない。
この場合において、暫定益の額が暫定損の額を超えるときは、その超過額は、これを舊勘定の特別準備金として整理しなければならない。
第二十條 第十八條第一號に規定する場合において、暫定益の額が暫定損の額に不足するときは、金融機關は、左の各號に定める順序により、暫定損を填補しなければならない。
一 暫定損の額に對し、暫定益の額の全額を充當して填補する。
二 前號の規定の適用後における暫定損の殘額に對し、舊勘定の積立金を、特別準備金(金融機關經理應急措置法又はこの法律による特別準備金をいふ。以下同じ。)、退職積立金以外の任意積立金、退職積立金及び他の法令(金融機關經理應急措置法を除く。)による積立金の順序により、順次に取り崩して填補する。
前項第二號の場合において、同順位の積立金が二以上あるときは、均等の割合でこれを取り崩して填補する。
前二項の規定により暫定損の全額を填補したときは、金融機關は、命令の定めるところにより、書面を以て主務大臣の認可を受け、舊勘定の最終處理を完了しなければならない。
第二十一條 金融機關は、第十八條第二號の規定に該當する場合においては、同號の規定に該當するに至つた日の屬する月の月末における舊勘定の資産及び負債竝びに指定時における新勘定の資産及び負債について、命令の定めるところにより、各勘定別に、財産目録、貸借對照表及び損益の計算書(損益の計算書は舊勘定の分に限る。)を作成して、主務大臣の指定する日までに、これを主務大臣に提出しなければならない。
第二十二條 金融機關は、前條の規定により作成する舊勘定の財産目録、貸借對照表及び損益の計算書には、命令の定めるところにより、主務大臣の承認を受け、舊勘定の最終處理に必要な費用に充てるため、最終處理費引當金を計上するものとする。
第二十三條 第二十一條に規定する月の月末において、左の各號の一に該當する場合においては、金融機關は、命令の定めるところにより、書面を以て主務大臣の認可を受け、舊勘定の最終處理を完了しなければならない。
一 確定益(舊勘定の第十條第二項及び第十一條の評價益及びその他の益を總稱する。以下同じ。)も、確定損(舊勘定の第十條第二項及び第十一條の評價損、繰越損及びその他の損を總稱する。以下同じ。)もないとき
二 確定益と確定損とがあつて、確定益の額と確定損の額とが同額であるとき
四 確定益と確定損とがあつて、確定益の額が確定損の額を超えるとき
前項第三號の場合における確定益の額、又は同項第四號の場合における確定益の額の確定損の額を超える額は、これを舊勘定の特別準備金として整理しなければならない。
第二十四條 第二十一條に規定する月の月末において、舊勘定に確定損があつて確定益がないとき、又は確定損と確定益とがあつて確定損の額が確定益の額を超えるときは、金融機關は、左の各號の順序により、確定損の整理負擔額を計算しなければならない。
一 確定益があるときは、確定損に對し、確定益の全額を充當するものとする。
二 確定益がないときは確定損の全額に對し、又、確定益があるときは前號の規定の適用後における確定損の殘額に對し、舊勘定の積立金を充當するものとする。
三 前號によるもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額に對し、資本の金額の九割に相當する金額まで、株主(出資者、基金醵出者その他これに準ずるものを含む。以下同じ。)において確定損を負擔するものとする。
四 前號によるもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額に對し、整理債務(第十三條第一項、第十四條第一項又は第十五條第一項の規定により舊勘定から新勘定又は新金融機關に移した分を含み、命令で定める分を除く。以下第二十五條まで同じ。)のうち、法人(法人でない社團又は財團を含む。以下同じ。)の預金等で一口五百萬圓を超えるものの、五百萬圓を超える部分の金額の七割に相當する金額まで、その預金等の債權者において確定損を負擔するものとする。
五 前號によるもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額に對し、整理債務のうち、法人の預金等で一口百萬圓を超えるものの、百萬圓を超え五百萬圓以下の部分の金額の五割に相當する金額まで、その預金等の債權者において確定損を負擔するものとする。
六 前號によるもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額に對し、整理債務のうち、法人の預金等で一口十萬圓を超えるものの、十萬圓を超え百萬圓以下の部分の金額の三割に相當する金額まで、その預金等の債權者において確定損を負擔するものとする。
七 前號によるもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額に對し、整理債務のうち、前三號の規定の適用後における法人の預金等の殘額と、その他の整理債務の金額との七割に相當する金額まで、整理債務の債權者において確定損を負擔するものとする。
八 前號によるもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額に對し、第三號の規定の適用後における資本の殘額に相當する金額まで、株主において確定損を負擔するものとする。
九 前號によるもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額に對し、第七號の規定の適用後における整理債務の殘額に相當する金額まで、整理債務の債權者において確定損を負擔するものとする。
十 前號によるもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額に對し、指定債務(命令で定めるものを除く。)の全額まで、指定債務の債權者において、命令で定める順序により、確定損を負擔するものとする。
前項第三號又は第八號の場合における各株主の負擔額は、その所有する株式(出資及び基金を含む。以下同じ。)の金額に應じて均等とする。金融機關が數種の株式を發行してゐる場合においてもまた同じ。
第二十五條 前條の規定により算出した確定損の整理負擔額の處理のため金融機關は、左の各號の定める措置をなさなければならない。
一 前條第一項第一號の場合においては、確定損の額から確定益の額を差し引く。
二 前條第一項第二號の場合においては、舊勘定の積立金を、特別準備金、退職積立金以外の任意準備金、退職積立金及び他の法令(金融機關經理應急措置法を除く。)による積立金の順序により、順次に取り崩す。
三 前條第一項第三號乃至第八號の場合においては、資本に未拂込金があるときは、勅令の定めるところにより拂込をなさしめた後、又、資本に未拂込金がないときは直ちに、前號の措置をなした上、同條第一項第三號又は第八號の規定により株主が負擔すべき金額の合計金額だけ資本を減少する。但し、第二十六條に規定する場合は、この限りでない。
第二十條第二項の規定は、前項第二號の場合に、これを準用する。
前條第一項第四號乃至第十號の場合においては、整理債務又は指定債務の債權は、當該各號の規定によりこれらの債務の債權者が確定損を負擔すべき金額に相當する金額だけ、新勘定及び舊勘定の區分の消滅の日において消滅する。
前項の場合においては、保險會社、生命保險中央會又は損害保險中央會の舊勘定に屬する責任準備金又は支拂備金に對應する保險金(年金を含む。以下同じ。)の債權は、責任準備金又は支拂備金に關する權利の消滅の割合と同一の割合により、新勘定及び舊勘定の區分の消滅の日において消滅する。
第一項第三號の規定による拂込の場合に關しては、他の法令又は定款にかかはらず、勅令で特別の定をなすことができる。
第二十六條 第二十四條第一項第八號の規定により、株主が資本の全額に相當する金額の確定損を負擔しなければならないときは、金融機關は、第二十七條第一項の認可を受けた後(第三十三條第一項の規定により補償を受くべきときは、その補償を受けた後)、遲滯なく舊勘定の資産と、確定損を負擔しない整理債務又は指定債務があるときはその整理債務又は指定債務とを舊勘定から新勘定に移さなければならない。舊勘定の新勘定に對する借は、この措置と同時に消滅する。
前項の場合においては、金融機關は、同項の措置をなした後、主務大臣の指定する日までに、新勘定の事業の全部を他の金融機關に讓渡し、又は新勘定の保險契約の全部を他の金融機關に移轉しなければならない。
金融機關は、前項の讓渡又は移轉について對價を取得した場合においては(第三十三條第一項の規定による政府の補償があつたときは、先づ、その額まで、これを政府に納付し、なほ殘額があるときは)、命令の定めるところにより、これを處分しなければならない。
金融機關は、第二項の期限内に新勘定の事業の全部の讓渡又は新勘定の保險契約の全部の移轉を終つたときはその讓渡又は移轉を終つた日において、又、同項の期限内にその讓渡又は移轉を終らなかつたときは同項の期限を經過した日において解散する。この場合においては、新勘定及び舊勘定の區分は、解散の日において消滅する。
第三項の規定は、前項の規定による解散の場合に、これを準用する。
前項に定めるものを除く外、第四項の規定による解散の場合に關し必要な事項は、他の法令にかかはらず、命令でこれを定める。
第二十四條第一項第八號の規定により、舊金融機關の株主が資本の全額に相當する金額の確定損を負擔しなければならない場合において、第十五條第二項又は第四十二條第二項の規定により、舊金融機關が新金融機關に對し負擔した債務があるときは、舊金融機關は、第一項の措置をなす前に、命令の定めるところにより、先づ、舊勘定の資産をその債務の辨濟に充てなければならない。但し、現金(小切手を含む。)以外の資産を債務の辨濟に充てるには、新金融機關の同意を得なければならない。
銀行法等特例法第一條の規定は、命令の定めるところにより、第二項の規定による事業の讓渡の場合に、これを準用する。
第二十七條 金融機關の取締役又はこれに準ずる者(以下理事機關といふ。)は、第二十四條第一項に規定する場合においては、命令の定めるところにより、最終處理方法書を作成し、主務大臣の認可を受けなければならない。
前項の場合において、當該金融機關について、第四十七條の監査委員があるときは、理事機關は、前項の規定による認可の申請前、豫め最終處理方法書につき、その承認を受けなければならない。
第二十八條 金融機關の理事機關は、前條第一項の規定による認可があつたときは、舊勘定の最終處理を行ふべき旨を公告し、最終處理方法書及び第二十一條の書類を本店又は主たる事務所及び支店又は從たる事務所に備へ置かなければならない。
金融機關の株主及び舊勘定の負債に關する債權者は、營業時間内、何時でも前項に掲げる書類を閲覽することができる。
第二十九條 金融機關は、第二十七條第一項の認可を受けたときは、最終處理方法書に定めるところにより、遲滯なく舊勘定の最終處理を行はなければならない。
第三十條 第二十七條第一項の認可があつた後、舊勘定の最終處理の完了までに、舊勘定の資産若しくは負債又は指定時における新勘定の資産若しくは負債について、舊勘定の最終處理の結果に影響を及ぼすべき變更を生じたときは、金融機關の理事機關は、その變更に基いて、最終處理方法書を改訂しなければならない。
第二十七條乃至前條の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第三十一條 第二十七條第一項の認可があつたときは、金融機關が舊勘定の最終處理を行ふためになす資本の減少、定款の變更その他の手續については、他の法令又は定款にかかはらず、株主總會若しくはこれに準ずるものの決議又は政府の認可等は、これを必要としない。
商法第三百八十條の規定は、前項の資本の減少については、これを適用しない。
第一項の資本の減少については、資本の減少の日から命令で定める日までの間を限り、他の法令中資本又は株式の金額の制限に關する規定は、これを適用しない。
前三項に定めるものを除く外、第一項の資本の減少に關し必要な事項については、他の法令又は定款にかかはらず、命令で特別の定をなすことができる。
第三十二條 前條第一項の資本の減少の結果、金融機關の債券の發行又は資金の借入若しくは融通の額が、他の法令に規定する債券の發行又は資金の借入若しくは融通に關する制限額を超えるに至つた場合においては、當該資本の減少の際現に存する債券又は資金の借入若しくは融通(その更改に因る債權又は債務を含む。)に限り、他の法令中これらの債權又は債務の金額の制限に關する規定は、これを適用しない。
第三十三條 第二十四條第一項の規定により、確定損の整理負擔額を計算するもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額は、命令の定めるところにより、政府において、これを補償する。但し、その補償の金額は、勅令で定める金額を限度とする。
政府は、前項の補償の決濟を、國債證券の交付により行ふことができる。
前項の規定による決濟のため交付する國債證券の交付價格は、大藏大臣がこれを定める。
政府は、第一項の補償債務の辨濟のため必要な金額を限り公債を發行することができる。
金融機關が前章に定めるところにより、整理債務を舊勘定から新勘定又は新金融機關に移した場合においては、第一項の規定は、これを適用しない。
第一項の規定による政府の補償の金額は、大藏省預金部等損失特別處理法による補償金の額と合計し、百億圓(第二十六條第三項その他の規定により政府に納付した金額があるときは、その額を加算した金額)を限度とする。
第三十四條 金融機關は、舊勘定の最終處理を完了したときは、遲滯なくその旨を公告しなければならない。
金融機關の新勘定及び舊勘定の區分は、前項の公告(二囘以上公告をなしたときは最初の公告)の日において消滅する。
金融機關は、第一項の公告をなしたときは、その公告(二囘以上公告をなしたときは最初の公告)の後、本店又は主たる事務所の所在地においては二週間以内に、又、支店又は從たる事務所の所在地においては三週間以内に、新勘定及び舊勘定の區分の消滅の登記をしなければならない。
前項の登記に關し必要な事項は、命令でこれを定める。
第三十五條 第四條第一項の規定により債權の申出をなすべき債權者でその申出をしなかつたものが、同項の期限後新勘定及び舊勘定の區分の消滅の日までにその債權を申し出たときは、第十九條若しくは第二十三條に規定する場合又は第二十條第一項第二號若しくは第二十五條第一項第二號の規定の適用後なほ舊勘定の積立金が殘る場合に限り、舊勘定の積立金の金額の範圍内において、その債權の金額に應じ均等の割合で、その債權の辨濟を、金融機關に請求することができる。
前項の場合においては、金融機關は、債權者に對し、その債權の辨濟の請求ができる金額を通知しなければならない。
第四條第一項の規定により申出をなすべき債權で、同項の期限までにその申出のなかつたものは、第一項の規定により辨濟の請求ができる金額を除く外、新勘定及び舊勘定の區分の消滅の日において消滅する。
第一項の場合においては、金融機關は、他の法令又は定款にかかはらず、同項の規定により辨濟の請求を受くべき金額だけ、積立金を、退職積立金以外の任意積立金、退職積立金及び他の法令による積立金の順序により、順序に取り崩すことができる。
第二十條第二項の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第三十六條 金融機關の舊勘定の負債又は指定時における新勘定の負債に關する債權(責任準備金及び支拂備金に關する權利を含む。以下第三十七條まで同じ。)で、舊勘定の最終處理の完了の際不確定であつたものが、舊勘定の最終處理の完了後確定したときは、金融機關の理事機關は、その確定の結果に基いて、第二十四條の規定に準じ、當該債權が確定損を負擔すべきであつた金額を計算し、その金額を當該債權者(責任準備金及び支拂備金に關する權利者を含む。以下第三十八條まで同じ。)に通知しなければならない。
前項の場合においては、當該債權は、同項の規定による通知のあつた時において、その通知に係る金額だけ消滅する。
第二十五條第四項の規定に、前項の場合に、これを準用する。
第三十七條 第二十四條第一項第四號乃至第八號の規定により、金融機關の整理債務の債權者において舊勘定の確定損の負擔した場合において、新勘定及び舊勘定の區分の消滅後、當該金融機關に屬する資産で命令で定めるもののうち、前に舊勘定に屬してゐたものにつき、第八條第一項又は第九條の規定による評價額に比し、價額の増加があつたとき、又はその資産を處分して得た對價が第八條第一項又は第九條の規定による評價額を超えたときは、その増價額又は處分益の額に相當する金額については、當該金融機關は、他の法令にかかはらず、命令の定めるところにより、これを處分しなければならない。
金融機關の舊勘定の負債又は指定時における新勘定の負債に關する債權のうち、舊勘定の最終處理の完了の際不確定であつたものが、舊勘定の最終處理の完了後、初から存在しなかつたものと確定した場合における第一號の金額の處分、又はその確定した金額が第五條の規定に基く命令で定める金額よりも少い場合における第一號の金額から第二號の金額を差し引いた殘額の處分についても、また前項に同じ。
一 その負債に關する債權について、第五條の規定に基く命令で定める金額に對する第二十四條第一項第四號乃至第十號の規定の適用後における殘額
二 その負債に關する債權について、確定した金額に對する前條第一項の規定の適用後における殘額
第三十八條 舊勘定の最終處理が完了したときは、債權者及び株主の權利は、最終處理方法書の定めるところによつて確定する。但し、第三十六條の場合においては、當該債權者の權利は、同條の定めるところによつて確定する。
舊勘定の整理が法令に違反して債權者又は株主に損害を及ぼしたときは、當該金融機關の理事機關は、當該金融機關と連帶してその損害を賠償しなければならない。但し、當該理事機關で、その業務の執行について過失がなかつた者については、この限りでない。
前項の規定は、第二十六條第四項の場合における清算に關する清算人の責任について、これを準用する。
第一項(前項において準用する場合を含む。)の損害賠償の請求權は、新勘定及び舊勘定の區分の消滅の日から五年を經過したときは、時效に因つて消滅する。