(在外資産負債)
第三十八条の二 この章において「在外資産」及び「在外負債」とは、金融機関の支店又は従たる事務所のうち金融機関経理応急措置法の施行の際同法の施行地外にあつたもの(以下「在外店舗」という。)に係る資産及び負債であつて、この法律の施行地外に住所を有する者(閉鎖機関令に規定する閉鎖機関及び旧日本占領地域に本店を有する会社の本邦内にある財産の整理に関する政令に規定する在外会社を除く。)に係る債権及び債務以外のものをいう。
2 在外店舗がこの法律の施行地内にあつた店舗(事務所を含む。以下同じ。)に向けて振り出した送金為替のうち、未払となつている部分に係る支払の債務は、当該振出店舗の属した金融機関が当該為替の所持人に対して当該振出店舗に係る負債としてこれを負うものとする。
3 在外資産に属する債権又は在外負債に属する債務で別表に換算率の定があるものの金額は、同表の換算率により換算した金額とする。但し、在外資産に属する債権のうち、その債務者が閉鎖機関令に規定する閉鎖機関であるものについては同令に定める換算率、旧日本占領地域に本店を有する会社の本邦内にある財産の整理に関する政令に規定する在外会社であるものについては同令に定める換算率を適用するものとする。
4 前項の債権及び債務については、金融機関再建整備法の一部を改正する法律(昭和二十九年法律第百六号)の施行の日以後は、利息は附されないものとする。
(在外資産負債処理勘定の設定)
第三十八条の三 在外資産又は在外負債を有する金融機関(以下この章において単に「金融機関」という。)は、主務大臣の指定する日において在外資産負債処理勘定(以下「在外勘定」という。)を設けなければならない。
2 第三十九条第一項に規定する整備計画書の定めるところにより、事業の全部を譲渡して解散した金融機関が、金融機関経理応急措置法の施行の際、在外資産又は在外負債を有していたときは、当該事業を譲り受けた金融機関は、主務大臣の定めるところにより、当該在外資産又は在外負債をその譲り受けた金融機関の在外資産又は在外負債として引き継ぎ、在外勘定を設けなければならない。
3 在外資産及び在外負債は、在外勘定に属するものとし、他の勘定に属せしめてはならない。
(在外勘定の経理)
第三十八条の四 金融機関の在外負債に関する債権者が、債権者であることを証する物件を添えて、当該金融機関に申し出た場合において、当該金融機関は、その申出が正当であるときは、その申出に係る債権に関する債務を当該金融機関の在外勘定の債務として確認しなければならない。
2 金融機関は、その在外資産については当該金融機関への帰属が確定した金額を在外勘定の資産の部に、在外負債については前項の規定により確認した金額を在外勘定の負債の部に計上するものとする。
3 金融機関は、金融機関経理応急措置法第三十二条第三項の規定により当該金融機関の旧勘定に属させられた在外店舗に対する借のうち、在外勘定の設定の際、当該金融機関の他の勘定に計上されているものを在外勘定に対する借とするものとする。
4 金融機関は、その調整勘定の閉鎖の際、同勘定に利益金の残額があるときは、これをその在外勘定に繰り入れて資産の部に計上するものとする。
5 在外勘定は、他の勘定と区分して経理しなければならない。
6 在外勘定の経理に関し必要な事項は、主務大臣が定める。
(支払)
第三十八条の五 金融機関は、在外勘定に計上された第三十八条の二第二項の未払送金為替に係る債務のうち、主務大臣の指定する日までに前条第一項の債権者の申出があつたものにつき、その指定された日から九十日以内に、在外勘定に計上された資産の範囲内において、一件五万円(当該送金為替につき既に支払われた金額があるときは、その支払われた金額を五万円から差し引いた金額)を限度として支払をしなければならない。
2 金融機関は、前項の規定による支払をした後その在外勘定になお資産が計上されているとき、又はその支払後在外勘定に新たに資産が計上されたときは、主務大臣の認可を受け、省令で定めるところによりあらかじめ公告をして、在外勘定に計上されている債務につき、当該資産の範囲内において、支払をしなければならない。
3 前二項の場合において、支払に充てる資産が不足するときは、在外勘定に計上された債務の債権者に対し、その支払われるべき金額に応じ、それぞれ均等の割合で支払をしなければならない。
(支払資金の繰入)
第三十八条の六 金融機関が前条第一項の規定による支払をする場合に、在外勘定にその支払に充てるべき資産が不足するときは、当該金融機関は、その調整勘定からその利益金の範囲内で当該不足金額の全部又は一部を在外勘定に繰り入れ、その支払に充てることができる。
2 前項の規定により在外勘定への繰入をした金融機関は、前条第一項の規定により支払を行つた後、在外勘定に資産が計上されたときは、同条第二項の規定による支払に先立ち、随時、その繰り入れた金額に相当する金額を返済しなければならない。但し、当該金融機関の調整勘定が第三十七条の三第一項の規定により閉鎖されたときは、この限りでない。
(支払資金の借入)
第三十八条の七 調整勘定を設けなかつた金融機関が第三十八条の五第一項の規定による支払をする場合に、在外勘定にその支払に充てるべき資産が不足するときは、当該金融機関は、旧勘定の最終処理の際における旧勘定の積立金のうち、第二十五条第一項第二号の規定により取りくずされなかつた部分に相当する金額の範囲内で、他の勘定から当該不足金額の全部又は一部を在外勘定に借り入れ、その支払に充てることができる。
2 前条第二項本文の規定は、前項の規定による借入金の返済について準用する。
(在外勘定の閉鎖)
第三十八条の八 金融機関は、在外負債に関する債権者への支払が完了したと認められるときは、主務大臣の認可を受け、省令の定めるところによりあらかじめ公告をして、その在外勘定を閉鎖することができる。
2 金融機関は、前項の規定による閉鎖の際、その在外勘定に資産が計上されているときは、当該資産の範囲内において、第三十八条の五の規定により支払われた債務の債権者に対し、主務大臣の定めるところにより、利息に相当する金額を分配しなければならない。
3 前項の規定による分配をしてもなおその在外勘定に資産があるときは、当該金融機関は、当該資産の範囲内において、第二十五条第一項の規定により株主として確定損を負担した者に対し、第三十七条の三第二項各号の金額を分配しなければならない。
4 第三十七条の三第三項の規定は、前項の規定による分配について準用する。
5 第三項の規定による分配を全額までしてもなおその在外勘定に資産があるときは、これを他の勘定に移し、これに相当する金額は、当該金融機関の利益準備金として積み立てるものとする。
6 調整勘定を有する金融機関の在外勘定の閉鎖の際、その在外勘定に資産があるときは、前三項の規定にかかわらず、当該資産を引当てにこれに見合う利益金をその調整勘定に繰り入れるものとする。
第三十八条の九 金融機関は、在外資産のないことが確定したときは、主務大臣の認可を受け、省令の定めるところにより公告をして、その在外勘定を閉鎖するものとする。
2 金融機関が前項の規定により在外勘定を閉鎖したときは、その在外負債に関する債権は、すべて同勘定の閉鎖の日において消滅するものとする。
(税法上の特例)
第三十八条の十 在外勘定に繰り入れる金額又は在外勘定から支出する金額は、法人税法による各事業年度の所得及び地方税法により事業税を課する場合における各事業年度の所得の計算上、これを益金又は損金に算入しない。
2 第三十七条の七第二項から第四項までの規定は、第三十八条の八第二項又は第三項の規定により分配される金額について準用する。