朕は、昭和二十年勅令第五百四十二号ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く閉鎖機関令を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十二年三月八日
內閣総理大臣兼外務大臣 吉田茂
司法大臣 木村篤太郞
大藏大臣 石橋湛山
運輸大臣 增田甲子七
商工大臣 石井光次郞
勅令第七十四号
閉鎖機関令
第一條 この勅令において閉鎖機関とは、連合國最高司令官の要求に基き、その本邦內における業務を停止し、その資產及び負債の整理をなすべきものとして大藏大臣及び主務大臣の指定する法人その他の團体をいう。
前項の指定は、吿示により、これを行う。
第二條 大藏大臣は、前條の規定による指定をしたときは、当該官吏をして、閉鎖機関の本邦內に在る本店、支店その他の営業所の店舖について、その戶扉を閉鎖し、これを封印し、現場における揭示その他の方法を以て、閉鎖機関たることを明白にして置かなければならない。
大藏大臣は、連合國最高司令官の要求があつた場合において必要があると認めるときは、前條の規定による指定をなす前においても指定をしようとする機関の営業所の店舖について、前項の措置を採ることができる。
前二項の措置をなすため必要があると認めるときは、当該官吏は、警察官吏の援助を求めることができる。
大藏大臣は、第九條に規定する特殊整理人がその職務を行うため必要があると認めるときは、当該官吏をして、第一項の規定による封印を解除させることができる。
第三條 閉鎖機関は、第一條の規定による指定があつた日(以下指定日という。)以後は、大藏大臣及び主務大臣の特に指定する業務(以下指定業務という。)を除く外、その業務を行うことができない。
指定業務の指定及びその解除は、吿示により、これを行う。
第四條 何人も、指定日以後は、閉鎖機関の財產上の権利義務に変更を生ずべき行爲をすることができない。但し、第十條第一項に規定する特殊整理人の職務の執行に係る行爲については、この限りでない。
前項の規定に違反してなした行爲は、これを無効とする。
第五條 本邦法人たる閉鎖機関の理事、取締役、監事、監査役その他の役員及び支配人は、他の法令、定款又は契約にかかわらず、指定日において解任されたものとする。
本邦法人たる閉鎖機関の役員及び支配人の職に当る者は、他の法令又は定款にかかわらず、指定日以後は、これを補充しない。
本邦法人でない閉鎖機関の理事、取締役、監事、監査役その他の役員及び支配人は、指定日以後は、その職務を行うことができない。
閉鎖機関の業務に関し代理権を有する者は、大藏大臣及び主務大臣の定める場合を除く外、指定日以後は、本邦內においては、その権限を失う。
閉鎖機関の代理店の業務を営む者は、指定日以後は、当該閉鎖機関のために、取引の媒介をすることができない。
第一項の規定により解任された者及び第三項の規定により職務を行うことができなくなつた者は、主務大臣の許可を受けなければ、指定日以後は、当該閉鎖機関の営業所又は代理店の店舖に出入してはならない。
第一項乃至第三項において本邦法人とは、日本國の法令により設立された法人をいう。
第六條 閉鎖機関となつた法人の役員又は職員の地位に昭和二十年八月十五日以後在つたことのある者は、主務大臣の定めるところにより、その氏名、住所その他必要な事項を、第九條に規定する特殊整理人に通知しなければならない。
主務大臣は、必要があると認めるときは、当該官吏をして、前項に規定する者に対し、当該閉鎖機関に関する事項について、報吿をなさしめ、又は質問をなさしめることができる。
第七條 指定日において閉鎖機関の本邦內に在る営業所以外の場所で、閉鎖機関の所有に属する財產(帳簿又は営業に関する書類を含む。)又は閉鎖機関の保管に属する財產を所持する者は、他の法令又は契約にかかわらず、主務大臣の定めるところにより、これを第九條に規定する特殊整理人に引き渡さなければならない。
前項に規定する者は、同項の規定により財產の引渡をなすまでは、善良な管理者の注意を以て、これを保管しなければならない。
前項の規定による保管のために要した費用について必要な事項は、主務大臣がこれを定める。
第八條 閉鎖機関については、特殊整理(第十一條乃至第十九條の定めるところにより行う資產及び負債の整理をいう。以下同じ。)を行う。
特殊整理は、主務大臣の監督に属する。
第九條 特殊整理は、特殊整理人がこれを行う。
特殊整理人は、閉鎖機関整理委員会を以て、これに充てる。但し、主務大臣は、必要があると認めるときは、閉鎖機関整理委員会以外の者を、特殊整理人に選任することができる。
主務大臣は、特別の事情があると認めるときは、特殊整理人を解任することができる。この場合において、主務大臣が特に特殊整理人の選任をしないときは、閉鎖機関整理委員会が、特殊整理人となる。
主務大臣は、第一項但書の規定により特殊整理人を選任し又は前項の規定によりその解任をしたときは、その旨を公吿する。
第十條 特殊整理人の職務は、左の通りとする。
一 現務の結了
二 債権の取立及び債務の弁済
三 指定業務の執行
特殊整理人は、前項の職務を行うについて、閉鎖機関を代表し一切の裁判上又は裁判外の行爲をなす権限を有する。
第十一條 閉鎖機関の債務の弁済については、その方法、金額及び時期について、主務大臣の指示に從わなければならない。
主務大臣は、前項の指示をなすについては、一般社会の経済秩序の保持を旨とし、特に預金者等小額の債権者の利益を考慮し、且つ、債権者間の衡平を害しないように留意しなければならない。
第十二條 双務契約(指定業務となつた業務に関するものを除く。)について、閉鎖機関及びその相手方が、指定日において、まだ、ともにその履行を完了していないときは、特殊整理人は、その選択に從つて、契約の解除をなし又は、相手方の債務の履行を請求することができる。
前項の場合において、相手方は、特殊整理人に対して相当の期間を定め、その期間內に契約の解除をなすか又は債務の履行を請求するかを確答すべき旨を催吿することができる。特殊整理人がその期間內に確答をなさないときは、契約の解除をなしたものとみなす。
第一項の規定によつて特殊整理人が債務の履行を請求した場合において、その相手方の債務の履行については、民法第五百三十三條の規定は、これを適用しない。
第一項又は第二項の規定により契約の解除があり、その損害の賠償につき爭を生じた場合において、特殊整理人又はその相手方の申立があつたときは、主務大臣の定めるところにより、主務官廳は、その解決を図るため、仲介をしなければならない。
第十三條 閉鎖機関を当事者とする賃貸借(指定業務となつた業務に関するものを除く。)で指定日において現に在するものについては、賃貸借に期間の定がある場合においても、特殊整理人は、民法第六百十七條(借家法施行の地区に在る建物については、同法第三條第一項)の規定により、解約の申入をなすことができる。
第十四條 閉鎖機関を注文者とする請負(指定業務となつた業務に関するものを除く。)で指定日において現に存するものについては、特殊整理人は、契約の解除をなすことができる。
この場合においては、請負人は、その旣になした仕事の報酬及びその報酬中に包含されない費用について、注文者に対して請求することができる。
第十五條 第十二條第二項の規定は、前二條の規定による解除権の行使について、これを準用する。
第十六條 第十三條及び第十四條の規定によつて契約の解除があつたときは、各当事者は、相手方に対して、解約によつて生じた損害の賠償を請求することができない。
第十七條 閉鎖機関を当事者とする貸付金の債権(指定業務となつた業務に関するものを除く。)については、特殊整理人は、主務大臣の許可を受けて、履行期の到來前においても、履行の請求をすることができる。この場合においては、特殊整理人が履行の請求をしたときに、当該債権の履行期が到來したものとみなす。
第十八條 閉鎖機関に対する債権には、他の法令又は契約にかかわらず、指定日以後は、利息を附しない。但し、主務大臣が別段の定をなしたときは、この限りでない。
第十九條 閉鎖機関は、主務大臣の許可を受けたときは、指定日以前の原因に基いて生じた閉鎖機関の金銭債権(指定業務となつた業務に関するものを除く。)の全額について、他の法令にかかわらず、その弁済を受けることができる。
第二十條 大藏大臣及び主務大臣は、特殊整理が完了し又は特殊整理の続行の必要がなくなつたときは、第一條の規定による指定の解除をなすものとする。
前項の指定の解除は、吿示により、これを行う。
第二條第四項の規定は、前二項の規定による指定の解除をなした場合に、これを準用する。
第二十一條 淸算中の法人について第一條の規定による指定があつたときは、当該法人が閉鎖機関である間は、その淸算手続は、これを停止する。
前項の場合においては、当該法人の淸算人は、解任されたものとする。
第二十二條 閉鎖機関に対しては、破產の宣吿は、これをすることができない。
閉鎖機関は、その閉鎖機関である間は、存立時期の満了その他の定款に定めた解散事由によつては、解散しない。
第二十三條 主務大臣は、第一條の規定による指定があつたときは、当該閉鎖機関につき、直ちにその本店若しくは主たる事務所又は支店若しくは從たる事務所の所在地において、閉鎖機関である旨及び指定業務の指定があつたときはその指定業務の登記を嘱託しなければならない。
前項の場合において、主務大臣は、前項の登記と同時に、特殊整理人の事務所及び名称の登記を嘱託しなければならない。
前二項の嘱託があつたときは、登記官吏は、その登記をしなければならない。
第二項の登記は、第一項の法人の登記に記載して、これをなす。
主務大臣は、第二十條第一項の規定による指定の解除があつたときは、直ちにその旨の登記の嘱託をしなければならない。
主務大臣は、前項の場合を除き、第一項及び第二項の登記事項について変更があつたときは、直ちに変更の登記の嘱託をしなければならない。
第三項の規定は、前二項の場合に、これを準用する。
第五條第一項及び第二十一條第二項の規定による解任に関する登記は、登記官吏が、職権を以て、これをなす。
第二十四條 大藏大臣は、当該官吏をして第二條(第二十條第三項において準用する場合を含む。)の規定による措置を行わしめるときは、これにその身分を示す証票を携帶させなければならない。
第二十五條 大藏大臣は、その定めるところにより、この勅令の施行に関し必要な事務を、財務局及び稅務署をして、行わしめることができる。
第二十六條 この勅令において主務大臣とは、当該閉鎖機関の業務に係る行政の所管大臣とする。
第二十七條 この勅令において本邦內とは、本州、北海道、四國、九州及びその附属の島の区域內をいう。
第二十八條 この勅令に定めるものの外、閉鎖機関の指定若しくはその解除又は特殊整理に関して必要な事項は、主務大臣がこれを定める。
第二十九條 左の各号の一に該当する者は、これを三年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
一 第四條の規定に違反した者
二 第十一條第一項の規定に違反した者
第三十條 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 第五條第五項の規定に違反した者
二 第五條第六項の規定に違反した者
三 第七條第一項の規定に違反した者
第三十一條 左の各号の一に該当する者は、これを六箇月以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。
一 第六條第一項の規定に違反した者
二 第六條第二項の規定による報吿を怠り又は虛僞の報吿をした者
第三十二條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が、その法人又は人の業務又は財產に関して第二十九條又は第三十條第一号若しくは第三号の違反行爲をしたときは、行爲者を罰する外、その法人又は人に対し、各本條の罰金刑を科する。
附 則
この勅令は、公布の日から、これを施行する。
昭和二十年大藏外務內務司法省令第一号(外地銀行、外國銀行及び特別戰時機関の閉鎖に関する件)及び同年大藏外務內務司法省令第二号(外地銀行、外國銀行及び特別戰時機関の資產及び負債の整理に関する件)は、これを廃止する。
この勅令施行前なした行爲に対する罰則の適用については、旧昭和二十年大藏外務內務司法省令第一号及び同年大藏外務內務司法省令第二号は、この勅令施行後において、なほその効力を有する。
旧昭和二十年大藏外務內務司法省令第一号別表に揭げる銀行その他の機関は、第一條の規定による指定があつたものとみなす。
この勅令施行前、旧昭和二十年大藏外務內務司法省令第一号及び第二号の規定によつてなされた行爲は、この勅令の相当規定によつてなされたものとする。
第五條第一項乃至第三項及び第十八條並びに第十九條中「指定日」とあるのは、旧昭和二十年大藏外務內務司法省令第一号別表に揭げる銀行その他の機関中、第一号乃至第二十九号に揭げる機関については「昭和二十年九月三十日」、第三十号及び第三十一号に揭げる機関については「昭和二十一年二月十三日」、第三十二号乃至第四十四号に揭げる機関については「昭和二十一年四月四日」、第四十五号乃至第四十七号に揭げる機関については「昭和二十一年十月四日」、第四十八号乃至第五十一号に揭げる機関については「昭和二十一年十一月十八日」、第五十二号に揭げる機関については「昭和二十一年十一月二十五日」、第五十三号に揭げる機関については「昭和二十一年十二月十日」、第五十四号に揭げる機関については「昭和二十一年十二月十八日」、第五十五号に揭げる機関については「昭和二十一年十二月二十三日」、第五十六号に揭げる機関については「昭和二十二年一月十六日」と読み替えるものとする。
前項に規定するものの外、この勅令中「指定日」とあるのは、旧昭和二十年大藏外務內務司法省令第一号別表に揭げる機関については、「この勅令施行の際」と読み替えるものとする。
会社経理應急措置法の一部を次のように改正する。
第一條第一項中「昭和二十年大藏外務內務司法省令第一号第一條の規定する指定機關を、「閉鎖機關令第一條に規定する閉鎖機關」に改める。
金融機関再建整備法の一部を次のように改正する。
第五十八條中「昭和二十年大藏外務內務司法省令第一号別表に揭げるもの」とあるのを「閉鎖機關令第一條に規定する閉鎖機關」に改める。
朕は、昭和二十年勅令第五百四十二号ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く閉鎖機関令を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十二年三月八日
内閣総理大臣兼外務大臣 吉田茂
司法大臣 木村篤太郎
大蔵大臣 石橋湛山
運輸大臣 増田甲子七
商工大臣 石井光次郎
勅令第七十四号
閉鎖機関令
第一条 この勅令において閉鎖機関とは、連合国最高司令官の要求に基き、その本邦内における業務を停止し、その資産及び負債の整理をなすべきものとして大蔵大臣及び主務大臣の指定する法人その他の団体をいう。
前項の指定は、告示により、これを行う。
第二条 大蔵大臣は、前条の規定による指定をしたときは、当該官吏をして、閉鎖機関の本邦内に在る本店、支店その他の営業所の店舗について、その戸扉を閉鎖し、これを封印し、現場における掲示その他の方法を以て、閉鎖機関たることを明白にして置かなければならない。
大蔵大臣は、連合国最高司令官の要求があつた場合において必要があると認めるときは、前条の規定による指定をなす前においても指定をしようとする機関の営業所の店舗について、前項の措置を採ることができる。
前二項の措置をなすため必要があると認めるときは、当該官吏は、警察官吏の援助を求めることができる。
大蔵大臣は、第九条に規定する特殊整理人がその職務を行うため必要があると認めるときは、当該官吏をして、第一項の規定による封印を解除させることができる。
第三条 閉鎖機関は、第一条の規定による指定があつた日(以下指定日という。)以後は、大蔵大臣及び主務大臣の特に指定する業務(以下指定業務という。)を除く外、その業務を行うことができない。
指定業務の指定及びその解除は、告示により、これを行う。
第四条 何人も、指定日以後は、閉鎖機関の財産上の権利義務に変更を生ずべき行為をすることができない。但し、第十条第一項に規定する特殊整理人の職務の執行に係る行為については、この限りでない。
前項の規定に違反してなした行為は、これを無効とする。
第五条 本邦法人たる閉鎖機関の理事、取締役、監事、監査役その他の役員及び支配人は、他の法令、定款又は契約にかかわらず、指定日において解任されたものとする。
本邦法人たる閉鎖機関の役員及び支配人の職に当る者は、他の法令又は定款にかかわらず、指定日以後は、これを補充しない。
本邦法人でない閉鎖機関の理事、取締役、監事、監査役その他の役員及び支配人は、指定日以後は、その職務を行うことができない。
閉鎖機関の業務に関し代理権を有する者は、大蔵大臣及び主務大臣の定める場合を除く外、指定日以後は、本邦内においては、その権限を失う。
閉鎖機関の代理店の業務を営む者は、指定日以後は、当該閉鎖機関のために、取引の媒介をすることができない。
第一項の規定により解任された者及び第三項の規定により職務を行うことができなくなつた者は、主務大臣の許可を受けなければ、指定日以後は、当該閉鎖機関の営業所又は代理店の店舗に出入してはならない。
第一項乃至第三項において本邦法人とは、日本国の法令により設立された法人をいう。
第六条 閉鎖機関となつた法人の役員又は職員の地位に昭和二十年八月十五日以後在つたことのある者は、主務大臣の定めるところにより、その氏名、住所その他必要な事項を、第九条に規定する特殊整理人に通知しなければならない。
主務大臣は、必要があると認めるときは、当該官吏をして、前項に規定する者に対し、当該閉鎖機関に関する事項について、報告をなさしめ、又は質問をなさしめることができる。
第七条 指定日において閉鎖機関の本邦内に在る営業所以外の場所で、閉鎖機関の所有に属する財産(帳簿又は営業に関する書類を含む。)又は閉鎖機関の保管に属する財産を所持する者は、他の法令又は契約にかかわらず、主務大臣の定めるところにより、これを第九条に規定する特殊整理人に引き渡さなければならない。
前項に規定する者は、同項の規定により財産の引渡をなすまでは、善良な管理者の注意を以て、これを保管しなければならない。
前項の規定による保管のために要した費用について必要な事項は、主務大臣がこれを定める。
第八条 閉鎖機関については、特殊整理(第十一条乃至第十九条の定めるところにより行う資産及び負債の整理をいう。以下同じ。)を行う。
特殊整理は、主務大臣の監督に属する。
第九条 特殊整理は、特殊整理人がこれを行う。
特殊整理人は、閉鎖機関整理委員会を以て、これに充てる。但し、主務大臣は、必要があると認めるときは、閉鎖機関整理委員会以外の者を、特殊整理人に選任することができる。
主務大臣は、特別の事情があると認めるときは、特殊整理人を解任することができる。この場合において、主務大臣が特に特殊整理人の選任をしないときは、閉鎖機関整理委員会が、特殊整理人となる。
主務大臣は、第一項但書の規定により特殊整理人を選任し又は前項の規定によりその解任をしたときは、その旨を公告する。
第十条 特殊整理人の職務は、左の通りとする。
一 現務の結了
二 債権の取立及び債務の弁済
三 指定業務の執行
特殊整理人は、前項の職務を行うについて、閉鎖機関を代表し一切の裁判上又は裁判外の行為をなす権限を有する。
第十一条 閉鎖機関の債務の弁済については、その方法、金額及び時期について、主務大臣の指示に従わなければならない。
主務大臣は、前項の指示をなすについては、一般社会の経済秩序の保持を旨とし、特に預金者等小額の債権者の利益を考慮し、且つ、債権者間の衡平を害しないように留意しなければならない。
第十二条 双務契約(指定業務となつた業務に関するものを除く。)について、閉鎖機関及びその相手方が、指定日において、まだ、ともにその履行を完了していないときは、特殊整理人は、その選択に従つて、契約の解除をなし又は、相手方の債務の履行を請求することができる。
前項の場合において、相手方は、特殊整理人に対して相当の期間を定め、その期間内に契約の解除をなすか又は債務の履行を請求するかを確答すべき旨を催告することができる。特殊整理人がその期間内に確答をなさないときは、契約の解除をなしたものとみなす。
第一項の規定によつて特殊整理人が債務の履行を請求した場合において、その相手方の債務の履行については、民法第五百三十三条の規定は、これを適用しない。
第一項又は第二項の規定により契約の解除があり、その損害の賠償につき争を生じた場合において、特殊整理人又はその相手方の申立があつたときは、主務大臣の定めるところにより、主務官庁は、その解決を図るため、仲介をしなければならない。
第十三条 閉鎖機関を当事者とする賃貸借(指定業務となつた業務に関するものを除く。)で指定日において現に在するものについては、賃貸借に期間の定がある場合においても、特殊整理人は、民法第六百十七条(借家法施行の地区に在る建物については、同法第三条第一項)の規定により、解約の申入をなすことができる。
第十四条 閉鎖機関を注文者とする請負(指定業務となつた業務に関するものを除く。)で指定日において現に存するものについては、特殊整理人は、契約の解除をなすことができる。
この場合においては、請負人は、その既になした仕事の報酬及びその報酬中に包含されない費用について、注文者に対して請求することができる。
第十五条 第十二条第二項の規定は、前二条の規定による解除権の行使について、これを準用する。
第十六条 第十三条及び第十四条の規定によつて契約の解除があつたときは、各当事者は、相手方に対して、解約によつて生じた損害の賠償を請求することができない。
第十七条 閉鎖機関を当事者とする貸付金の債権(指定業務となつた業務に関するものを除く。)については、特殊整理人は、主務大臣の許可を受けて、履行期の到来前においても、履行の請求をすることができる。この場合においては、特殊整理人が履行の請求をしたときに、当該債権の履行期が到来したものとみなす。
第十八条 閉鎖機関に対する債権には、他の法令又は契約にかかわらず、指定日以後は、利息を附しない。但し、主務大臣が別段の定をなしたときは、この限りでない。
第十九条 閉鎖機関は、主務大臣の許可を受けたときは、指定日以前の原因に基いて生じた閉鎖機関の金銭債権(指定業務となつた業務に関するものを除く。)の全額について、他の法令にかかわらず、その弁済を受けることができる。
第二十条 大蔵大臣及び主務大臣は、特殊整理が完了し又は特殊整理の続行の必要がなくなつたときは、第一条の規定による指定の解除をなすものとする。
前項の指定の解除は、告示により、これを行う。
第二条第四項の規定は、前二項の規定による指定の解除をなした場合に、これを準用する。
第二十一条 清算中の法人について第一条の規定による指定があつたときは、当該法人が閉鎖機関である間は、その清算手続は、これを停止する。
前項の場合においては、当該法人の清算人は、解任されたものとする。
第二十二条 閉鎖機関に対しては、破産の宣告は、これをすることができない。
閉鎖機関は、その閉鎖機関である間は、存立時期の満了その他の定款に定めた解散事由によつては、解散しない。
第二十三条 主務大臣は、第一条の規定による指定があつたときは、当該閉鎖機関につき、直ちにその本店若しくは主たる事務所又は支店若しくは従たる事務所の所在地において、閉鎖機関である旨及び指定業務の指定があつたときはその指定業務の登記を嘱託しなければならない。
前項の場合において、主務大臣は、前項の登記と同時に、特殊整理人の事務所及び名称の登記を嘱託しなければならない。
前二項の嘱託があつたときは、登記官吏は、その登記をしなければならない。
第二項の登記は、第一項の法人の登記に記載して、これをなす。
主務大臣は、第二十条第一項の規定による指定の解除があつたときは、直ちにその旨の登記の嘱託をしなければならない。
主務大臣は、前項の場合を除き、第一項及び第二項の登記事項について変更があつたときは、直ちに変更の登記の嘱託をしなければならない。
第三項の規定は、前二項の場合に、これを準用する。
第五条第一項及び第二十一条第二項の規定による解任に関する登記は、登記官吏が、職権を以て、これをなす。
第二十四条 大蔵大臣は、当該官吏をして第二条(第二十条第三項において準用する場合を含む。)の規定による措置を行わしめるときは、これにその身分を示す証票を携帯させなければならない。
第二十五条 大蔵大臣は、その定めるところにより、この勅令の施行に関し必要な事務を、財務局及び税務署をして、行わしめることができる。
第二十六条 この勅令において主務大臣とは、当該閉鎖機関の業務に係る行政の所管大臣とする。
第二十七条 この勅令において本邦内とは、本州、北海道、四国、九州及びその附属の島の区域内をいう。
第二十八条 この勅令に定めるものの外、閉鎖機関の指定若しくはその解除又は特殊整理に関して必要な事項は、主務大臣がこれを定める。
第二十九条 左の各号の一に該当する者は、これを三年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
一 第四条の規定に違反した者
二 第十一条第一項の規定に違反した者
第三十条 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 第五条第五項の規定に違反した者
二 第五条第六項の規定に違反した者
三 第七条第一項の規定に違反した者
第三十一条 左の各号の一に該当する者は、これを六箇月以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。
一 第六条第一項の規定に違反した者
二 第六条第二項の規定による報告を怠り又は虚偽の報告をした者
第三十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して第二十九条又は第三十条第一号若しくは第三号の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対し、各本条の罰金刑を科する。
附 則
この勅令は、公布の日から、これを施行する。
昭和二十年大蔵外務内務司法省令第一号(外地銀行、外国銀行及び特別戦時機関の閉鎖に関する件)及び同年大蔵外務内務司法省令第二号(外地銀行、外国銀行及び特別戦時機関の資産及び負債の整理に関する件)は、これを廃止する。
この勅令施行前なした行為に対する罰則の適用については、旧昭和二十年大蔵外務内務司法省令第一号及び同年大蔵外務内務司法省令第二号は、この勅令施行後において、なほその効力を有する。
旧昭和二十年大蔵外務内務司法省令第一号別表に掲げる銀行その他の機関は、第一条の規定による指定があつたものとみなす。
この勅令施行前、旧昭和二十年大蔵外務内務司法省令第一号及び第二号の規定によつてなされた行為は、この勅令の相当規定によつてなされたものとする。
第五条第一項乃至第三項及び第十八条並びに第十九条中「指定日」とあるのは、旧昭和二十年大蔵外務内務司法省令第一号別表に掲げる銀行その他の機関中、第一号乃至第二十九号に掲げる機関については「昭和二十年九月三十日」、第三十号及び第三十一号に掲げる機関については「昭和二十一年二月十三日」、第三十二号乃至第四十四号に掲げる機関については「昭和二十一年四月四日」、第四十五号乃至第四十七号に掲げる機関については「昭和二十一年十月四日」、第四十八号乃至第五十一号に掲げる機関については「昭和二十一年十一月十八日」、第五十二号に掲げる機関については「昭和二十一年十一月二十五日」、第五十三号に掲げる機関については「昭和二十一年十二月十日」、第五十四号に掲げる機関については「昭和二十一年十二月十八日」、第五十五号に掲げる機関については「昭和二十一年十二月二十三日」、第五十六号に掲げる機関については「昭和二十二年一月十六日」と読み替えるものとする。
前項に規定するものの外、この勅令中「指定日」とあるのは、旧昭和二十年大蔵外務内務司法省令第一号別表に掲げる機関については、「この勅令施行の際」と読み替えるものとする。
会社経理応急措置法の一部を次のように改正する。
第一条第一項中「昭和二十年大蔵外務内務司法省令第一号第一条の規定する指定機関を、「閉鎖機関令第一条に規定する閉鎖機関」に改める。
金融機関再建整備法の一部を次のように改正する。
第五十八条中「昭和二十年大蔵外務内務司法省令第一号別表に掲げるもの」とあるのを「閉鎖機関令第一条に規定する閉鎖機関」に改める。