朕國有財產法施行令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
攝政名
大正十一年一月二十七日
內閣總理大臣兼大藏大臣 子爵 高橋是淸
臨時海軍大臣事務管理 內閣總理大臣 子爵 高橋是淸
外務大臣 伯爵 內田康哉
農商務大臣 男爵 山本達雄
內務大臣 床次竹二郞
文部大臣 中橋德五郞
遞信大臣 野田卯太郞
鐵道大臣 元田肇
司法大臣 伯爵 大木遠吉
陸軍大臣 山梨半造
勅令第十五號
國有財產法施行令
第一章 總則
第一條 左ニ揭クル動產及權利ニシテ國有ノモノハ之ヲ國有財產法第一條ノ國有財產トス
一 船舶、浮標、浮棧橋及浮船渠
二 不動產又ハ前號ニ揭クル動產ノ從物
三 事業所ニ於ケル機械及重要ナル器具
四 地上權、地役權、鑛業權、砂鑛權其ノ他之ニ準スヘキ權利
五 株式及出資ニ因ル權利
前項第三號ノ事業所ノ範圍ハ所管大臣大藏大臣ト協議シテ之ヲ定ム
第二條 各省大臣公共用財產又ハ公用財產ノ用途ヲ廢止セムトスルトキハ豫メ大藏大臣ニ之ヲ通知シ特ニ大藏大臣ト協定シタルモノヲ除クノ外用途廢止後遲滯ナク之ヲ大藏大臣ニ引繼クヘシ
前項ノ規定ハ用途ノ廢止ト同時ニ國有財產タルノ性質ヲ失フモノ、國有林野法第三條第二項ノ規定ニ依リ營林財產ト爲スノ必要アルモノ、史蹟名勝天然紀念物ニ指定セラレタルモノ及帝國鐵道會計、大學資金、學校及圖書館資金又ハ在外國帝國專管居留地特別會計ニ屬スルモノニ付之ヲ適用セス
第三條 各省大臣國有財產ノ管理換ヲ受ケムトスルトキハ所管大臣及大藏大臣ニ協議スヘシ
第四條 左ニ揭クル場合ニ於テハ所管大臣ハ大藏大臣ニ協議スヘシ
一 公用財產タル土地ノ用途ヲ變更セムトスル場合ニシテ大藏大臣ノ定ムルモノニ該當スルトキ
二 公用財產ト爲スノ目的ヲ以テ土地ノ交換ヲ爲シ又ハ寄附ヲ受ケムトスルトキ
三 雜種財產ヲ公用財產又ハ營林財產ト爲サムトスルトキ
四 營林財產ノ目的ヲ廢止セムトスルトキ
第五條 各省大臣公用財產ト爲スノ目的ヲ以テ土地ノ買入若ハ收用ヲ爲シ又ハ地上權ヲ取得シタルトキハ遲滯ナク之ヲ大藏大臣ニ通知スヘシ
第六條 前二條ノ規定ハ國有財產法施行地外ニ在ル財產及帝國鐵道會計ニ屬シ又ハ屬スヘキ財產ニ付之ヲ適用セス
第七條 國有財產ニ關スル事務ニ從事スル職員ハ其ノ取扱ニ係ル國有財產ヲ讓受ケ又ハ自己ノ所有物ト交換スルコトヲ得ス
第二章 賣拂、讓與及交換
第八條 公共團體ニ於テ維持保存ノ費用ヲ負擔シタル公共用財產ノ用途ヲ廢止シタル場合ニ於テハ之ヲ其ノ公共團體ニ讓與スルコトヲ得但シ特別ノ事由アル場合ヲ除クノ外費用負擔ノ義務ヲ負ヒタル期間カ十年ニ滿タサルモノニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第九條 公共團體又ハ私人ニ於テ公共用財產ノ用途ニ代ルヘキ他ノ施設ヲ爲シタル爲其ノ用途ヲ廢止シタル場合ニ於テハ之ヲ其ノ施設ヲ爲シタル者又ハ其ノ相續人其ノ他ノ包括承繼者ニ讓與スルコトヲ得但シ財產ノ見込價格カ其ノ施設ニ要シタル費用ノ額ヲ超過スルトキハ超過額ニ相當スル部分ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十條 公共用財產又ハ公用財產ノ用途ヲ廢止シタル場合ニ於テ其ノ財產中寄附ニ係ルモノハ之ヲ其ノ寄附者又ハ其ノ相續人其ノ他ノ包括承繼者ニ讓與スルコトヲ得但シ寄附ノ際特約ヲ爲シタル場合ヲ除クノ外寄附ヲ受ケタル後二十年ヲ經過シタルモノニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十一條 國有財產ニ付交換ヲ爲サムトスル場合ニ於テハ當該官廳ハ目的物ノ價格ヲ評定シ其ノ基礎ヲ明ニシタル調書ヲ作成スヘシ
評定價格ノ差額カ其ノ高價ナルモノノ價格ノ四分ノ一ヲ超ユルトキハ交換ヲ爲スコトヲ得ス
第十二條 前條第一項ノ規定ハ隨意契約ニ依リ國有財產ノ賣拂ヲ爲サムトスル場合ニ之ヲ準用ス
第十三條 一定ノ用途ニ供セシムル目的ヲ以テ國有財產ノ賣拂、讓與又ハ交換ヲ爲ス場合ニ於テハ當該官廳ハ其ノ用途竝之ヲ其ノ用途ニ供スヘキ始期及期間ヲ指定スヘシ但シ當該官廳ニ於テ特ニ其ノ必要ナシト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第三章 境界査定
第十四條 國有財產ニ付境界ノ分明ナラサルモノアル場合ニ於テ當該官廳必要ト認メタルトキ又ハ隣接地所有者ノ申請アリタルトキハ當該官廳ハ其ノ境界査定ヲ施行スヘシ
第十五條 境界査定ヲ施行セムトスルトキハ當該官廳ハ其ノ日時及場所ヲ定メ書面ヲ以テ隣接地所有者ニ之ヲ通知スヘシ
前項ノ書面ノ送達ハ期日ニ付豫メ隣接地所有者ノ承諾アリタル場合ヲ除クノ外期日ノ前日ヨリ起算シ少クトモ七日前之ヲ爲スヘシ
第十六條 隣接地所有者期日ニ於テ立會ヲ爲スコト能ハサル事由ヲ申出テタルトキハ當該官廳ハ其ノ期日ヲ變更スルコトヲ得
前條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ適用セス
第十七條 境界査定ヲ了シタルトキハ當該官廳ハ書面ヲ以テ隣接地所有者ニ之ヲ通知スヘシ
隣接地所有者ハ當該官廳又ハ其ノ指定シタル官公署ニ就キ査定圖又ハ其ノ謄本ノ閱覽ヲ求ムルコトヲ得
第十八條 當該官廳第十五條又ハ前條ノ通知ヲ爲シタルトキハ配達證明郵便ニ依リタル場合ヲ除クノ外其ノ受領書ヲ徵スヘシ
第十九條 國有財產法第十二條ノ公告ハ官報ヲ以テ之ヲ爲シ且關係市區町村長又ハ之ニ準スヘキ者ヲシテ揭示其ノ他ノ方法ニ依リ之ヲ爲サシムヘシ
第四章 貸付及準貸付
第二十條 公共用財產又ハ公用財產ト爲スノ目的ヲ以テ寄附ヲ受ケタル國有財產ハ其ノ用途ニ供セサル期間無償ニテ之ヲ其ノ寄附者又ハ其ノ相續人其ノ他ノ包括承繼者ニ貸付スルコトヲ得
第二十一條 隨意契約ニ依リ國有財產ヲ貸付セムトスルトキハ當該官廳ハ貸付料ヲ評定シ其ノ基礎ヲ明ニシタル調書ヲ作成スヘシ國有財產法第十五條第二項ノ規定ニ依リ貸付期間ヲ更新セムトスルトキ亦同シ
第二十二條 前二條ノ規定ハ貸付ニ依ラスシテ國有財產ノ使用又ハ收益ヲ爲サシムル契約ニ付之ヲ準用ス
第二十三條 雜種財產ニ付土地ノ開拓又ハ水面ノ埋立若ハ干拓ノ事業ヲ爲サシムル契約ヲ爲サムトスル場合ニ於テハ當該官廳ハ事業者ヨリ左ノ事項ヲ具シタル事業計畫書ヲ提出セシムヘシ
一 土地又ハ水面ノ所在及面積
二 事業ノ目的
三 事業施行ノ方法及順序
四 成功豫定期間
五 收支豫算
六 計畫圖
事業成功ノ後公共ノ用ニ供スヘキ部分アルトキハ其ノ位置及面積ヲ事業計畫書ニ記載セシムヘシ
第二十四條 國有財產法第二十一條第一項ノ規定ニ依リ國有財產ノ賣拂又ハ有償貸付ノ豫約ヲ爲サムトスルトキハ當該官廳ハ賣拂價格又ハ貸付料ヲ評定シ其ノ基礎ヲ明ニシタル調書ヲ作成スヘシ
前項ノ規定ハ國有財產ノ讓與又ハ無償貸付ノ豫約ヲ爲サムトスル場合ニ之ヲ準用ス
第二十五條 事業ノ成功ニ要スル豫定期間ハ契約ノ日ヨリ十年以內ニ於テ之ヲ定ムヘシ
天災其ノ他已ムヲ得サル事由ニ因リ必要アリト認ムルトキハ當該官廳ハ前項ノ規定ニ依リ定メタル期間ノ半ニ相當スル期間以內ニ於テ豫定期間ノ延長ヲ承認スルコトヲ得
第二十六條 當該官廳ハ契約ノ日ヨリ二年以內ノ期間ヲ指定シ事業者ヲシテ其ノ事業ニ著手セシムヘシ
前條第二項ノ規定ハ前項ノ期間ニ付之ヲ準用ス
第二十七條 國有財產法第二十三條ノ規定ニ依リ事業者ニ對シ成功部分ノ賣拂、讓與又ハ貸付ヲ爲サムトスル場合ニ於テハ當該官廳ハ特別ノ事由アリト認ムル場合ヲ除クノ外豫約ニ定メタル條項ニ準シテ其ノ契約ヲ爲スヘシ
第二十八條 國有財產法第二十四條第一項ニ規定スル雜種財產ノ使用又ハ收益ニ付テハ寺院又ハ佛堂ニ關スル主務大臣ノ定ムル所ニ依ルヘシ
第二十九條 寺院又ハ佛堂國有財產法第二十四條第二項ノ規定ニ依リ雜種財產ノ貸付ヲ受ケムトスルトキハ地方長官ヲ經由シ主務大臣、其ノ財產ヲ管理スル大臣及大藏大臣ニ願出ツヘシ
前條ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ貸付シタル雜種財產ニ付之ヲ準用ス
第五章 臺帳
第三十條 國有財產ノ臺帳ハ所管ノ各省ニ之ヲ備フヘシ但シ部局ノ長ニ於テ國有財產ニ關スル事務ヲ分掌スル場合ニ於テハ其ノ部局每ニ之ヲ備ヘ各省ニハ其ノ總括簿ヲ備フルモノトス
第三十一條 國有財產ノ臺帳ハ其ノ種類每ニ之ヲ調製シ左ノ事項ヲ記載スヘシ但シ財產ノ性質ニ依リ其ノ記載事項ヲ省略スルコトヲ得
一 種目
二 所在又ハ所屬
三 數量
四 價格
五 得喪變更ノ年月日及事由
六 其ノ他必要ナル事項
第三十二條 國有財產ノ臺帳ニ登錄スヘキ價格ハ購入ニ係ルモノハ購入價格、交換ニ係ルモノハ交換當時ニ於ケル評定價格、收用ニ係ルモノハ補償金額ニ依リ其ノ他ノモノハ左ノ區分ニ依リ之ヲ定ムヘシ
一 土地ニ付テハ類地ノ時價ニ比準シテ算定シタル金額
二 立木竹ニ付テハ其ノ材積ニ單價ヲ乘シテ算定シタル金額、庭木其ノ他材積ヲ基準トシテ算定シ難キ立木竹ハ見込價格
三 建物其ノ他ノ工作物及船舶其ノ他ノ動產ニ付テハ建築費、製造費又ハ見込價格
四 權利ニ付テハ第一條第四號ニ揭クルモノハ見込價格、第五號ニ揭クルモノハ拂込金額又ハ出資金額
第三十三條 土地及立木竹ノ價格ハ國有財產現在額總計算書調製ノ年三月三十一日ノ現況ニ依リ之ヲ改定スヘシ但シ臺帳ニ登錄シタル後二年ヲ經過セサルモノニ付テハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ場合ニ於テ土地ノ價格ハ類地ノ時價ニ比準シ、立木竹ノ價格ハ其ノ材積ニ單價ヲ乘シテ之ヲ算定スヘシ但シ庭木其ノ他材積ヲ基準トシテ算定シ難キ立木竹ニ付テハ見込價格ニ依ル
前二項ノ規定ハ帝國鐵道會計ニ屬スルモノニ付之ヲ適用セス
第三十四條 作業會計又ハ造幣局特別會計ノ固定資本ニ屬スルモノノ價格ハ前二條ノ規定ニ拘ラス其ノ資本價格ニ依ルヘシ
第六章 計算書及報告書
第三十五條 各省大臣ハ會計檢査院ニ證明ノ爲國有財產ノ增減計算書ヲ調製シ證憑書類ヲ添ヘ之ヲ會計檢査院ニ送付スヘシ
前項ノ計算書ハ國有財產ニ關スル事務ヲ分掌スル部局ノ長ヨリ直ニ會計檢査院ニ送付セシムルコトヲ得
第三十六條 各省大臣ハ每會計年度間ニ於ケル國有財產增減報告書ヲ調製シ翌年度八月三十一日迄ニ之ヲ大藏大臣ニ送付スヘシ
大藏大臣ハ各省ノ國有財產增減報告書ニ基キ國有財產增減總計算書ヲ調製シ各省ノ國有財產增減報告書ト共ニ之ヲ會計檢査院ニ送付スヘシ
第三十七條 各省大臣ハ每五年三月三十一日現在ニ於ケル國有財產現在額報告書ヲ調製シ其ノ年九月三十日迄ニ之ヲ大藏大臣ニ送付スヘシ
大藏大臣ハ各省ノ國有財產現在額報告書ニ基キ國有財產現在額總計算書ヲ調製シ各省ノ國有財產現在額報告書ト共ニ之ヲ會計檢査院ニ送付スヘシ
第七章 雜則
第三十八條 本令ニ定ムルモノヲ除クノ外國有財產ノ臺帳ニ關シ必要ナル事項ハ大藏大臣之ヲ定ム
第三十九條 第三十五條ニ規定スル計算證明書類ノ樣式及送付期限ニ付テハ會計檢査院ノ定ムル所ニ依ルヘシ
第四十條 前條ニ定ムルモノヲ除クノ外本令ニ定ムル諸計算書ノ樣式ハ大藏大臣之ヲ定ム
第四十一條 本令ニ定ムル帳簿及書類ノ樣式ニハ國防上祕密ヲ要スル國有財產ニ付必要ナル特例ヲ設クヘシ
附 則
第四十二條 本令ハ國有財產法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第四十三條 左ノ命令ハ之ヲ廢止ス但シ官有財產ノ增減異動ニシテ本令施行前ニ係ルモノノ報告ニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
明治七年九月二十三日達皇城周圍內外ノ湟壘等修繕改築ニ關スル件
明治八年第百四十六號達
明治八年第百九十八號達
明治九年第四十六號達
明治十三年第六號達
明治十三年七月八日達皇城周圍內外ノ湟壘外岸接近ノ官有地ヘ家屋等建築ニ關スル件
明治十四年第十號達
明治十六年第四十五號達
官有地特別處分規則
官有財產管理規則
官有地取扱規則
明治二十四年勅令第十五號
明治二十七年勅令第九十二號
明治三十六年勅令第九十六號
明治三十九年勅令第二百二十號
明治四十一年勅令第百十九號
明治四十二年勅令第七十號
大正六年勅令第二百二十四號
第四十四條 本令施行ノ際ニ於ケル各省所管ノ雜種財產ハ國有林野及北海道國有未開地ヲ除クノ外第二條ノ規定ニ準シ本令施行ノ日ノ現在ニ依リ之ヲ大藏大臣ニ引繼クヘシ
第四十五條 本令施行ノ際國有財產ノ臺帳ニ登錄スヘキ土地及立木竹ノ價格ハ其ノ購入、交換又ハ收用ニ係ルモノト雖爾後二年ヲ經過シタルモノニ付テハ帝國鐵道會計ニ屬スルモノヲ除クノ外第三十二條第一號又ハ第二號ノ規定ニ依リ算定シタル金額ニ依ル
第四十六條 各省大臣ハ本令施行ノ日ノ現在ニ於ケル國有財產現在額報告書ヲ調製シ其ノ年十月三十一日迄ニ之ヲ大藏大臣ニ送付スヘシ
第四十七條 前三條ニ規定スルモノヲ除クノ外本令施行ニ關シ必要ナル事項ハ大藏大臣之ヲ定ム
朕国有財産法施行令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
摂政名
大正十一年一月二十七日
内閣総理大臣兼大蔵大臣 子爵 高橋是清
臨時海軍大臣事務管理 内閣総理大臣 子爵 高橋是清
外務大臣 伯爵 内田康哉
農商務大臣 男爵 山本達雄
内務大臣 床次竹二郎
文部大臣 中橋徳五郎
逓信大臣 野田卯太郎
鉄道大臣 元田肇
司法大臣 伯爵 大木遠吉
陸軍大臣 山梨半造
勅令第十五号
国有財産法施行令
第一章 総則
第一条 左ニ掲クル動産及権利ニシテ国有ノモノハ之ヲ国有財産法第一条ノ国有財産トス
一 船舶、浮標、浮桟橋及浮船渠
二 不動産又ハ前号ニ掲クル動産ノ従物
三 事業所ニ於ケル機械及重要ナル器具
四 地上権、地役権、鉱業権、砂鉱権其ノ他之ニ準スヘキ権利
五 株式及出資ニ因ル権利
前項第三号ノ事業所ノ範囲ハ所管大臣大蔵大臣ト協議シテ之ヲ定ム
第二条 各省大臣公共用財産又ハ公用財産ノ用途ヲ廃止セムトスルトキハ予メ大蔵大臣ニ之ヲ通知シ特ニ大蔵大臣ト協定シタルモノヲ除クノ外用途廃止後遅滞ナク之ヲ大蔵大臣ニ引継クヘシ
前項ノ規定ハ用途ノ廃止ト同時ニ国有財産タルノ性質ヲ失フモノ、国有林野法第三条第二項ノ規定ニ依リ営林財産ト為スノ必要アルモノ、史蹟名勝天然紀念物ニ指定セラレタルモノ及帝国鉄道会計、大学資金、学校及図書館資金又ハ在外国帝国専管居留地特別会計ニ属スルモノニ付之ヲ適用セス
第三条 各省大臣国有財産ノ管理換ヲ受ケムトスルトキハ所管大臣及大蔵大臣ニ協議スヘシ
第四条 左ニ掲クル場合ニ於テハ所管大臣ハ大蔵大臣ニ協議スヘシ
一 公用財産タル土地ノ用途ヲ変更セムトスル場合ニシテ大蔵大臣ノ定ムルモノニ該当スルトキ
二 公用財産ト為スノ目的ヲ以テ土地ノ交換ヲ為シ又ハ寄附ヲ受ケムトスルトキ
三 雑種財産ヲ公用財産又ハ営林財産ト為サムトスルトキ
四 営林財産ノ目的ヲ廃止セムトスルトキ
第五条 各省大臣公用財産ト為スノ目的ヲ以テ土地ノ買入若ハ収用ヲ為シ又ハ地上権ヲ取得シタルトキハ遅滞ナク之ヲ大蔵大臣ニ通知スヘシ
第六条 前二条ノ規定ハ国有財産法施行地外ニ在ル財産及帝国鉄道会計ニ属シ又ハ属スヘキ財産ニ付之ヲ適用セス
第七条 国有財産ニ関スル事務ニ従事スル職員ハ其ノ取扱ニ係ル国有財産ヲ譲受ケ又ハ自己ノ所有物ト交換スルコトヲ得ス
第二章 売払、譲与及交換
第八条 公共団体ニ於テ維持保存ノ費用ヲ負担シタル公共用財産ノ用途ヲ廃止シタル場合ニ於テハ之ヲ其ノ公共団体ニ譲与スルコトヲ得但シ特別ノ事由アル場合ヲ除クノ外費用負担ノ義務ヲ負ヒタル期間カ十年ニ満タサルモノニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第九条 公共団体又ハ私人ニ於テ公共用財産ノ用途ニ代ルヘキ他ノ施設ヲ為シタル為其ノ用途ヲ廃止シタル場合ニ於テハ之ヲ其ノ施設ヲ為シタル者又ハ其ノ相続人其ノ他ノ包括承継者ニ譲与スルコトヲ得但シ財産ノ見込価格カ其ノ施設ニ要シタル費用ノ額ヲ超過スルトキハ超過額ニ相当スル部分ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十条 公共用財産又ハ公用財産ノ用途ヲ廃止シタル場合ニ於テ其ノ財産中寄附ニ係ルモノハ之ヲ其ノ寄附者又ハ其ノ相続人其ノ他ノ包括承継者ニ譲与スルコトヲ得但シ寄附ノ際特約ヲ為シタル場合ヲ除クノ外寄附ヲ受ケタル後二十年ヲ経過シタルモノニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十一条 国有財産ニ付交換ヲ為サムトスル場合ニ於テハ当該官庁ハ目的物ノ価格ヲ評定シ其ノ基礎ヲ明ニシタル調書ヲ作成スヘシ
評定価格ノ差額カ其ノ高価ナルモノノ価格ノ四分ノ一ヲ超ユルトキハ交換ヲ為スコトヲ得ス
第十二条 前条第一項ノ規定ハ随意契約ニ依リ国有財産ノ売払ヲ為サムトスル場合ニ之ヲ準用ス
第十三条 一定ノ用途ニ供セシムル目的ヲ以テ国有財産ノ売払、譲与又ハ交換ヲ為ス場合ニ於テハ当該官庁ハ其ノ用途並之ヲ其ノ用途ニ供スヘキ始期及期間ヲ指定スヘシ但シ当該官庁ニ於テ特ニ其ノ必要ナシト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第三章 境界査定
第十四条 国有財産ニ付境界ノ分明ナラサルモノアル場合ニ於テ当該官庁必要ト認メタルトキ又ハ隣接地所有者ノ申請アリタルトキハ当該官庁ハ其ノ境界査定ヲ施行スヘシ
第十五条 境界査定ヲ施行セムトスルトキハ当該官庁ハ其ノ日時及場所ヲ定メ書面ヲ以テ隣接地所有者ニ之ヲ通知スヘシ
前項ノ書面ノ送達ハ期日ニ付予メ隣接地所有者ノ承諾アリタル場合ヲ除クノ外期日ノ前日ヨリ起算シ少クトモ七日前之ヲ為スヘシ
第十六条 隣接地所有者期日ニ於テ立会ヲ為スコト能ハサル事由ヲ申出テタルトキハ当該官庁ハ其ノ期日ヲ変更スルコトヲ得
前条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ適用セス
第十七条 境界査定ヲ了シタルトキハ当該官庁ハ書面ヲ以テ隣接地所有者ニ之ヲ通知スヘシ
隣接地所有者ハ当該官庁又ハ其ノ指定シタル官公署ニ就キ査定図又ハ其ノ謄本ノ閲覧ヲ求ムルコトヲ得
第十八条 当該官庁第十五条又ハ前条ノ通知ヲ為シタルトキハ配達証明郵便ニ依リタル場合ヲ除クノ外其ノ受領書ヲ徴スヘシ
第十九条 国有財産法第十二条ノ公告ハ官報ヲ以テ之ヲ為シ且関係市区町村長又ハ之ニ準スヘキ者ヲシテ掲示其ノ他ノ方法ニ依リ之ヲ為サシムヘシ
第四章 貸付及準貸付
第二十条 公共用財産又ハ公用財産ト為スノ目的ヲ以テ寄附ヲ受ケタル国有財産ハ其ノ用途ニ供セサル期間無償ニテ之ヲ其ノ寄附者又ハ其ノ相続人其ノ他ノ包括承継者ニ貸付スルコトヲ得
第二十一条 随意契約ニ依リ国有財産ヲ貸付セムトスルトキハ当該官庁ハ貸付料ヲ評定シ其ノ基礎ヲ明ニシタル調書ヲ作成スヘシ国有財産法第十五条第二項ノ規定ニ依リ貸付期間ヲ更新セムトスルトキ亦同シ
第二十二条 前二条ノ規定ハ貸付ニ依ラスシテ国有財産ノ使用又ハ収益ヲ為サシムル契約ニ付之ヲ準用ス
第二十三条 雑種財産ニ付土地ノ開拓又ハ水面ノ埋立若ハ干拓ノ事業ヲ為サシムル契約ヲ為サムトスル場合ニ於テハ当該官庁ハ事業者ヨリ左ノ事項ヲ具シタル事業計画書ヲ提出セシムヘシ
一 土地又ハ水面ノ所在及面積
二 事業ノ目的
三 事業施行ノ方法及順序
四 成功予定期間
五 収支予算
六 計画図
事業成功ノ後公共ノ用ニ供スヘキ部分アルトキハ其ノ位置及面積ヲ事業計画書ニ記載セシムヘシ
第二十四条 国有財産法第二十一条第一項ノ規定ニ依リ国有財産ノ売払又ハ有償貸付ノ予約ヲ為サムトスルトキハ当該官庁ハ売払価格又ハ貸付料ヲ評定シ其ノ基礎ヲ明ニシタル調書ヲ作成スヘシ
前項ノ規定ハ国有財産ノ譲与又ハ無償貸付ノ予約ヲ為サムトスル場合ニ之ヲ準用ス
第二十五条 事業ノ成功ニ要スル予定期間ハ契約ノ日ヨリ十年以内ニ於テ之ヲ定ムヘシ
天災其ノ他已ムヲ得サル事由ニ因リ必要アリト認ムルトキハ当該官庁ハ前項ノ規定ニ依リ定メタル期間ノ半ニ相当スル期間以内ニ於テ予定期間ノ延長ヲ承認スルコトヲ得
第二十六条 当該官庁ハ契約ノ日ヨリ二年以内ノ期間ヲ指定シ事業者ヲシテ其ノ事業ニ著手セシムヘシ
前条第二項ノ規定ハ前項ノ期間ニ付之ヲ準用ス
第二十七条 国有財産法第二十三条ノ規定ニ依リ事業者ニ対シ成功部分ノ売払、譲与又ハ貸付ヲ為サムトスル場合ニ於テハ当該官庁ハ特別ノ事由アリト認ムル場合ヲ除クノ外予約ニ定メタル条項ニ準シテ其ノ契約ヲ為スヘシ
第二十八条 国有財産法第二十四条第一項ニ規定スル雑種財産ノ使用又ハ収益ニ付テハ寺院又ハ仏堂ニ関スル主務大臣ノ定ムル所ニ依ルヘシ
第二十九条 寺院又ハ仏堂国有財産法第二十四条第二項ノ規定ニ依リ雑種財産ノ貸付ヲ受ケムトスルトキハ地方長官ヲ経由シ主務大臣、其ノ財産ヲ管理スル大臣及大蔵大臣ニ願出ツヘシ
前条ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ貸付シタル雑種財産ニ付之ヲ準用ス
第五章 台帳
第三十条 国有財産ノ台帳ハ所管ノ各省ニ之ヲ備フヘシ但シ部局ノ長ニ於テ国有財産ニ関スル事務ヲ分掌スル場合ニ於テハ其ノ部局毎ニ之ヲ備ヘ各省ニハ其ノ総括簿ヲ備フルモノトス
第三十一条 国有財産ノ台帳ハ其ノ種類毎ニ之ヲ調製シ左ノ事項ヲ記載スヘシ但シ財産ノ性質ニ依リ其ノ記載事項ヲ省略スルコトヲ得
一 種目
二 所在又ハ所属
三 数量
四 価格
五 得喪変更ノ年月日及事由
六 其ノ他必要ナル事項
第三十二条 国有財産ノ台帳ニ登録スヘキ価格ハ購入ニ係ルモノハ購入価格、交換ニ係ルモノハ交換当時ニ於ケル評定価格、収用ニ係ルモノハ補償金額ニ依リ其ノ他ノモノハ左ノ区分ニ依リ之ヲ定ムヘシ
一 土地ニ付テハ類地ノ時価ニ比準シテ算定シタル金額
二 立木竹ニ付テハ其ノ材積ニ単価ヲ乗シテ算定シタル金額、庭木其ノ他材積ヲ基準トシテ算定シ難キ立木竹ハ見込価格
三 建物其ノ他ノ工作物及船舶其ノ他ノ動産ニ付テハ建築費、製造費又ハ見込価格
四 権利ニ付テハ第一条第四号ニ掲クルモノハ見込価格、第五号ニ掲クルモノハ払込金額又ハ出資金額
第三十三条 土地及立木竹ノ価格ハ国有財産現在額総計算書調製ノ年三月三十一日ノ現況ニ依リ之ヲ改定スヘシ但シ台帳ニ登録シタル後二年ヲ経過セサルモノニ付テハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ場合ニ於テ土地ノ価格ハ類地ノ時価ニ比準シ、立木竹ノ価格ハ其ノ材積ニ単価ヲ乗シテ之ヲ算定スヘシ但シ庭木其ノ他材積ヲ基準トシテ算定シ難キ立木竹ニ付テハ見込価格ニ依ル
前二項ノ規定ハ帝国鉄道会計ニ属スルモノニ付之ヲ適用セス
第三十四条 作業会計又ハ造幣局特別会計ノ固定資本ニ属スルモノノ価格ハ前二条ノ規定ニ拘ラス其ノ資本価格ニ依ルヘシ
第六章 計算書及報告書
第三十五条 各省大臣ハ会計検査院ニ証明ノ為国有財産ノ増減計算書ヲ調製シ証憑書類ヲ添ヘ之ヲ会計検査院ニ送付スヘシ
前項ノ計算書ハ国有財産ニ関スル事務ヲ分掌スル部局ノ長ヨリ直ニ会計検査院ニ送付セシムルコトヲ得
第三十六条 各省大臣ハ毎会計年度間ニ於ケル国有財産増減報告書ヲ調製シ翌年度八月三十一日迄ニ之ヲ大蔵大臣ニ送付スヘシ
大蔵大臣ハ各省ノ国有財産増減報告書ニ基キ国有財産増減総計算書ヲ調製シ各省ノ国有財産増減報告書ト共ニ之ヲ会計検査院ニ送付スヘシ
第三十七条 各省大臣ハ毎五年三月三十一日現在ニ於ケル国有財産現在額報告書ヲ調製シ其ノ年九月三十日迄ニ之ヲ大蔵大臣ニ送付スヘシ
大蔵大臣ハ各省ノ国有財産現在額報告書ニ基キ国有財産現在額総計算書ヲ調製シ各省ノ国有財産現在額報告書ト共ニ之ヲ会計検査院ニ送付スヘシ
第七章 雑則
第三十八条 本令ニ定ムルモノヲ除クノ外国有財産ノ台帳ニ関シ必要ナル事項ハ大蔵大臣之ヲ定ム
第三十九条 第三十五条ニ規定スル計算証明書類ノ様式及送付期限ニ付テハ会計検査院ノ定ムル所ニ依ルヘシ
第四十条 前条ニ定ムルモノヲ除クノ外本令ニ定ムル諸計算書ノ様式ハ大蔵大臣之ヲ定ム
第四十一条 本令ニ定ムル帳簿及書類ノ様式ニハ国防上秘密ヲ要スル国有財産ニ付必要ナル特例ヲ設クヘシ
附 則
第四十二条 本令ハ国有財産法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第四十三条 左ノ命令ハ之ヲ廃止ス但シ官有財産ノ増減異動ニシテ本令施行前ニ係ルモノノ報告ニ付テハ仍従前ノ例ニ依ル
明治七年九月二十三日達皇城周囲内外ノ湟塁等修繕改築ニ関スル件
明治八年第百四十六号達
明治八年第百九十八号達
明治九年第四十六号達
明治十三年第六号達
明治十三年七月八日達皇城周囲内外ノ湟塁外岸接近ノ官有地ヘ家屋等建築ニ関スル件
明治十四年第十号達
明治十六年第四十五号達
官有地特別処分規則
官有財産管理規則
官有地取扱規則
明治二十四年勅令第十五号
明治二十七年勅令第九十二号
明治三十六年勅令第九十六号
明治三十九年勅令第二百二十号
明治四十一年勅令第百十九号
明治四十二年勅令第七十号
大正六年勅令第二百二十四号
第四十四条 本令施行ノ際ニ於ケル各省所管ノ雑種財産ハ国有林野及北海道国有未開地ヲ除クノ外第二条ノ規定ニ準シ本令施行ノ日ノ現在ニ依リ之ヲ大蔵大臣ニ引継クヘシ
第四十五条 本令施行ノ際国有財産ノ台帳ニ登録スヘキ土地及立木竹ノ価格ハ其ノ購入、交換又ハ収用ニ係ルモノト雖爾後二年ヲ経過シタルモノニ付テハ帝国鉄道会計ニ属スルモノヲ除クノ外第三十二条第一号又ハ第二号ノ規定ニ依リ算定シタル金額ニ依ル
第四十六条 各省大臣ハ本令施行ノ日ノ現在ニ於ケル国有財産現在額報告書ヲ調製シ其ノ年十月三十一日迄ニ之ヲ大蔵大臣ニ送付スヘシ
第四十七条 前三条ニ規定スルモノヲ除クノ外本令施行ニ関シ必要ナル事項ハ大蔵大臣之ヲ定ム