朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル國有財產法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正十年四月七日
內閣總理大臣 原敬
海軍大臣 男爵 加藤友三郞
外務大臣 伯爵 內田康哉
大藏大臣 子爵 高橋是淸
陸軍大臣 男爵 田中義一
農商務大臣 男爵 山本達雄
內務大臣 床次竹二郞
文部大臣 中橋德五郞
遞信大臣 野田卯太郞
鐵道大臣 元田肇
司法大臣 伯爵 大木遠吉
法律第四十三號
國有財產法
第一條 本法ニ於テ國有財產ト稱スルハ國有ノ不動產竝勅令ヲ以テ定ムル國有ノ動產及權利ヲ謂フ
第二條 國有財產ヲ分チテ左ノ四種トス
一 公共用財產 國ニ於テ直接公共ノ用ニ供シ又ハ供スルモノト決定シタルモノ
二 公用財產 國ニ於テ神社ノ用又ハ國ノ事務、事業若ハ官吏其ノ他ノ職員ノ住居ノ用ニ供シ又ハ供スルモノト決定シタルモノ
三 營林財產 國ニ於テ森林經營ノ目的ニ供シ又ハ供スルモノト決定シタルモノ
四 雜種財產 前各號ニ屬セサルモノ
第三條 國有財產ニ關スル事務ハ各省大臣之ヲ管理シ國有財產ニ關スル總轄事務ハ大藏大臣之ヲ管理スヘシ
第四條 國有財產ハ雜種財產ヲ除クノ外之ヲ讓渡シ又ハ之ニ私權ヲ設定スルコトヲ得ス但シ其ノ用途又ハ目的ヲ妨ケサル限度ニ於テ其ノ使用又ハ收益ヲ爲サシムルハ此ノ限ニ在ラス
第五條 雜種財產ハ左ニ揭クル場合ニ限リ之ヲ讓與スルコトヲ得
一 帝室用又ハ公共團體ニ於テ公共用若ハ公用ニ供スル爲必要アルトキ
二 公共用財產又ハ公用財產ノ用途ヲ廢止シタル場合ニ於テ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ其ノ維持保存ノ費用ヲ負擔シタル者、其ノ用途ニ代ルヘキ他ノ施設ヲ爲シタル者其ノ他ノ緣故者又ハ關係者ニ讓與スルトキ
三 神社、寺院又ハ佛堂ノ合併シタル場合ニ於テ之ニ因リ其ノ供用ヲ止メタル國有財產ヲ其ノ合併シタル神社、寺院又ハ佛堂ニ讓與スルトキ
第六條 雜種財產ハ法律ヲ以テ特別ノ定ヲ爲シタル場合ニ限リ之ヲ出資ノ目的ト爲スコトヲ得
第七條 雜種財產ハ土地及建物以外ノ土地ノ定著物ニ限リ帝室用又ハ國、公共團體若ハ私人ニ於テ公共用、公用若ハ公益事業ニ供スル爲必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ他ノ土地及建物以外ノ土地ノ定著物ト交換ヲ爲スコトヲ得
前項ノ交換ヲ爲ス場合ニ於テ其ノ價格均シカラサルトキハ金錢ヲ以テ補足スヘシ
第八條 用途及期間ヲ指定シテ國有財產ノ賣拂、讓與又ハ交換ヲ爲シタル場合ニ於テ指定期間內ニ之ヲ其ノ用途ニ供セス又ハ之ヲ其ノ用途ニ供シタル後指定期間內ニ其ノ用途ヲ廢止シタルトキハ政府ハ其ノ契約ヲ解除スルコトヲ得
第九條 國有財產ノ賣拂代金又ハ交換差金ハ財產引渡前之ヲ納付セシムヘシ但シ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ延納ノ特約ヲ爲スコトヲ得
第十條 國有財產ニ付境界查定ヲ施行セムトスルトキハ豫メ期日ヲ定メテ隣接地所有者ニ之ヲ通知シ其ノ立會ヲ求ムヘシ
隣接地所有者期日ニ於テ立會ハサルコトアルモ境界查定ヲ施行スルコトヲ得
第十一條 境界查定ヲ了シタルトキハ隣接地所有者ニ之ヲ通知スヘシ
第十二條 前二條ノ規定ニ依リ通知ヲ受クヘキ者ノ住所居所共ニ不明ナルトキハ通知ノ要旨ヲ公告スヘシ
前項ノ規定ニ依リ公告シタル場合ニ於テ公告ノ初日ヨリ起算シ三十日ヲ經過シタルトキハ通知ヲ受ケタルモノト看做ス
第十三條 隣接地所有者其ノ他境界查定ニ對シ不服アル者ハ訴願シ又ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第十四條 國有財產ニ付境界查定又ハ測量ヲ爲ス爲政府ニ於テ他人ノ土地ニ立入リ、目標ヲ設置シ又ハ障害物ヲ除却スルノ必要アルトキハ當該土地又ハ物件ノ所有者及占有者ハ正當ノ理由ナクシテ之ヲ拒ムコトヲ得ス但シ之ニ因リテ生シタル損害ニ付賠償ヲ求ムルコトヲ得
第十五條 國有財產ノ貸付ハ左ノ期間ヲ超ユルコトヲ得ス
一 植樹ヲ目的トシテ土地及建物以外ノ土地ノ定著物ヲ貸付スル場合ニ在リテハ八十年
二 前號ノ場合ヲ除クノ外土地及建物以外ノ土地ノ定著物ヲ貸付スル場合ニ在リテハ三十年
三 建物其ノ他ノ物件ヲ貸付スル場合ニ在リテハ十年
貸付期間ハ之ヲ更新スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ更新ノ時ヨリ前項ノ期間ヲ超ユルコトヲ得ス
第十六條 國有財產ハ帝室用又ハ公共團體若ハ私人ニ於テ公共用、公用若ハ公益事業ニ供スル爲必要アル場合及勅令ニ特別ノ規定アル場合ヲ除クノ外無償ニテ之ヲ貸付スルコトヲ得ス
第十七條 國有財產ノ貸付料ハ每年定期ニ之ヲ納付セシムヘシ但シ數年分ヲ前納セシムルコトヲ妨ケス
第十八條 國有財產ヲ貸付シタル場合ニ於テ其ノ貸付期間中帝室用又ハ國、公共團體若ハ私人ニ於テ公共用、公用若ハ公益事業ニ供スル爲必要ヲ生シタルトキハ政府ハ其ノ契約ヲ解除スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ契約ヲ解除シタル場合ニ於テハ借受人ハ之ニ因リテ生シタル損害ニ付賠償ヲ求ムルコトヲ得
第十九條 貸付期間ノ終了又ハ貸付契約ノ解除ニ當リ政府ニ於テ時價ヲ提供シ其ノ國有財產ノ上ニ存スル建物其ノ他ノ物件ヲ買取ルヘキ旨通知シタルトキハ其ノ所有者ハ正當ノ理由ナクシテ之ヲ拒ムコトヲ得ス
第二十條 前五條ノ規定ハ貸付ニ依ラスシテ國有財產ノ使用又ハ收益ヲ爲サシムル契約ニ付之ヲ準用ス
第二十一條 雜種財產ニ付土地ノ開拓又ハ水面ノ埋立若ハ干拓ヲ爲サムトスル者アル場合ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ事業者ニ對シ事業ノ成功ヲ條件トシテ其ノ財產ノ賣拂、讓與又ハ貸付ノ豫約ヲ爲シ其ノ事業ヲ爲サシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ事業ヲ爲サシムル契約ヲ爲シタル場合ニ於テハ事業ノ成功ニ要スル豫定期間事業者ヲシテ其ノ成功シタル部分ニ付無償ニテ使用又ハ收益ヲ爲サシムルコトヲ得
第二十二條 前條第一項ノ規定ニ依リ事業ヲ爲サシムル契約ヲ爲シタル場合ニ於テ指定期間內ニ事業者其ノ事業ニ著手セサルトキハ政府ハ其ノ契約ヲ解除スルコトヲ得
第二十三條 第二十一條第一項ノ規定ニ依リ事業ヲ爲サシムル契約ヲ爲シタル場合ニ於テ豫定期間內ニ事業成功セサルトキト雖土地又ハ水面ノ狀況ニ依リ支障ナシト認ムルトキハ事業者ニ對シ其ノ成功シタル部分ノ賣拂、讓與又ハ貸付ヲ爲スコトヲ得
第二十四條 從前ヨリ引續キ寺院又ハ佛堂ノ用ニ供スル雜種財產ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ用ニ供スル間無償ニテ之ヲ當該寺院又ハ佛堂ニ貸付シタルモノト看做ス
寺院又ハ佛堂ノ上地ニ係ル雜種財產ハ其ノ用ニ供スル爲必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ無償ニテ第十五條ノ規定ニ拘ラス之ヲ當該寺院又ハ佛堂ニ貸付スルコトヲ得
第二十五條 政府ハ國有財產ノ種類ニ從ヒ其ノ臺帳ヲ備フヘシ
臺帳ニ記載スヘキ事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十六條 政府ハ每會計年度間ニ於ケル國有財產增減總計算書及每五年三月三十一日現在ノ國有財產現在額總計算書ヲ調製シ會計檢查院ノ檢查ヲ經テ之ヲ帝國議會ニ報告スヘシ
前項ノ國有財產增減總計算書ニハ各省ノ國有財產增減報告書ヲ、國有財產現在額總計算書ニハ各省ノ國有財產現在額報告書ヲ添附スヘシ
附 則
第二十七條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十八條 第二十五條及第二十六條ノ規定ハ當分ノ內公共用財產ニ付之ヲ適用セス
第二十九條 第二十六條ノ規定ニ依ル國有財產增減總計算書ハ本法施行ノ日ノ屬スル年度分ヨリ、國有財產現在額總計算書ノ第一囘分ハ本法施行ノ日ノ現在ニ依リ之ヲ調製スヘシ
第三十條 北海道國有未開地處分法中ノ規定ハ本法ノ規定ニ牴觸スルモノト雖當分ノ內仍其ノ效力ヲ有ス
第三十一條 國有林野法第二條、第四條乃至第七條、第九條、第十二條乃至第十四條、第十六條、第二十四條及第二十五條ノ規定ハ其ノ效力ヲ失フ但シ本法施行前ニ係ル國有林野ノ增減異動報告ニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
第三十二條 從前ノ法令ニ依リテ爲シタル處分、契約其ノ他ノ行爲ハ本法中之ニ相當スル規定アル場合ニ於テハ本法ニ依リテ之ヲ爲シタルモノト看做ス
第三十三條 本法ハ朝鮮、臺灣又ハ樺太ニ施行スル場合ニ於テ必要アルトキハ勅令ヲ以テ特別ノ定ヲ爲スコトヲ得
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル国有財産法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正十年四月七日
内閣総理大臣 原敬
海軍大臣 男爵 加藤友三郎
外務大臣 伯爵 内田康哉
大蔵大臣 子爵 高橋是清
陸軍大臣 男爵 田中義一
農商務大臣 男爵 山本達雄
内務大臣 床次竹二郎
文部大臣 中橋徳五郎
逓信大臣 野田卯太郎
鉄道大臣 元田肇
司法大臣 伯爵 大木遠吉
法律第四十三号
国有財産法
第一条 本法ニ於テ国有財産ト称スルハ国有ノ不動産並勅令ヲ以テ定ムル国有ノ動産及権利ヲ謂フ
第二条 国有財産ヲ分チテ左ノ四種トス
一 公共用財産 国ニ於テ直接公共ノ用ニ供シ又ハ供スルモノト決定シタルモノ
二 公用財産 国ニ於テ神社ノ用又ハ国ノ事務、事業若ハ官吏其ノ他ノ職員ノ住居ノ用ニ供シ又ハ供スルモノト決定シタルモノ
三 営林財産 国ニ於テ森林経営ノ目的ニ供シ又ハ供スルモノト決定シタルモノ
四 雑種財産 前各号ニ属セサルモノ
第三条 国有財産ニ関スル事務ハ各省大臣之ヲ管理シ国有財産ニ関スル総轄事務ハ大蔵大臣之ヲ管理スヘシ
第四条 国有財産ハ雑種財産ヲ除クノ外之ヲ譲渡シ又ハ之ニ私権ヲ設定スルコトヲ得ス但シ其ノ用途又ハ目的ヲ妨ケサル限度ニ於テ其ノ使用又ハ収益ヲ為サシムルハ此ノ限ニ在ラス
第五条 雑種財産ハ左ニ掲クル場合ニ限リ之ヲ譲与スルコトヲ得
一 帝室用又ハ公共団体ニ於テ公共用若ハ公用ニ供スル為必要アルトキ
二 公共用財産又ハ公用財産ノ用途ヲ廃止シタル場合ニ於テ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ其ノ維持保存ノ費用ヲ負担シタル者、其ノ用途ニ代ルヘキ他ノ施設ヲ為シタル者其ノ他ノ縁故者又ハ関係者ニ譲与スルトキ
三 神社、寺院又ハ仏堂ノ合併シタル場合ニ於テ之ニ因リ其ノ供用ヲ止メタル国有財産ヲ其ノ合併シタル神社、寺院又ハ仏堂ニ譲与スルトキ
第六条 雑種財産ハ法律ヲ以テ特別ノ定ヲ為シタル場合ニ限リ之ヲ出資ノ目的ト為スコトヲ得
第七条 雑種財産ハ土地及建物以外ノ土地ノ定著物ニ限リ帝室用又ハ国、公共団体若ハ私人ニ於テ公共用、公用若ハ公益事業ニ供スル為必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ他ノ土地及建物以外ノ土地ノ定著物ト交換ヲ為スコトヲ得
前項ノ交換ヲ為ス場合ニ於テ其ノ価格均シカラサルトキハ金銭ヲ以テ補足スヘシ
第八条 用途及期間ヲ指定シテ国有財産ノ売払、譲与又ハ交換ヲ為シタル場合ニ於テ指定期間内ニ之ヲ其ノ用途ニ供セス又ハ之ヲ其ノ用途ニ供シタル後指定期間内ニ其ノ用途ヲ廃止シタルトキハ政府ハ其ノ契約ヲ解除スルコトヲ得
第九条 国有財産ノ売払代金又ハ交換差金ハ財産引渡前之ヲ納付セシムヘシ但シ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ延納ノ特約ヲ為スコトヲ得
第十条 国有財産ニ付境界査定ヲ施行セムトスルトキハ予メ期日ヲ定メテ隣接地所有者ニ之ヲ通知シ其ノ立会ヲ求ムヘシ
隣接地所有者期日ニ於テ立会ハサルコトアルモ境界査定ヲ施行スルコトヲ得
第十一条 境界査定ヲ了シタルトキハ隣接地所有者ニ之ヲ通知スヘシ
第十二条 前二条ノ規定ニ依リ通知ヲ受クヘキ者ノ住所居所共ニ不明ナルトキハ通知ノ要旨ヲ公告スヘシ
前項ノ規定ニ依リ公告シタル場合ニ於テ公告ノ初日ヨリ起算シ三十日ヲ経過シタルトキハ通知ヲ受ケタルモノト看做ス
第十三条 隣接地所有者其ノ他境界査定ニ対シ不服アル者ハ訴願シ又ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第十四条 国有財産ニ付境界査定又ハ測量ヲ為ス為政府ニ於テ他人ノ土地ニ立入リ、目標ヲ設置シ又ハ障害物ヲ除却スルノ必要アルトキハ当該土地又ハ物件ノ所有者及占有者ハ正当ノ理由ナクシテ之ヲ拒ムコトヲ得ス但シ之ニ因リテ生シタル損害ニ付賠償ヲ求ムルコトヲ得
第十五条 国有財産ノ貸付ハ左ノ期間ヲ超ユルコトヲ得ス
一 植樹ヲ目的トシテ土地及建物以外ノ土地ノ定著物ヲ貸付スル場合ニ在リテハ八十年
二 前号ノ場合ヲ除クノ外土地及建物以外ノ土地ノ定著物ヲ貸付スル場合ニ在リテハ三十年
三 建物其ノ他ノ物件ヲ貸付スル場合ニ在リテハ十年
貸付期間ハ之ヲ更新スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ更新ノ時ヨリ前項ノ期間ヲ超ユルコトヲ得ス
第十六条 国有財産ハ帝室用又ハ公共団体若ハ私人ニ於テ公共用、公用若ハ公益事業ニ供スル為必要アル場合及勅令ニ特別ノ規定アル場合ヲ除クノ外無償ニテ之ヲ貸付スルコトヲ得ス
第十七条 国有財産ノ貸付料ハ毎年定期ニ之ヲ納付セシムヘシ但シ数年分ヲ前納セシムルコトヲ妨ケス
第十八条 国有財産ヲ貸付シタル場合ニ於テ其ノ貸付期間中帝室用又ハ国、公共団体若ハ私人ニ於テ公共用、公用若ハ公益事業ニ供スル為必要ヲ生シタルトキハ政府ハ其ノ契約ヲ解除スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ契約ヲ解除シタル場合ニ於テハ借受人ハ之ニ因リテ生シタル損害ニ付賠償ヲ求ムルコトヲ得
第十九条 貸付期間ノ終了又ハ貸付契約ノ解除ニ当リ政府ニ於テ時価ヲ提供シ其ノ国有財産ノ上ニ存スル建物其ノ他ノ物件ヲ買取ルヘキ旨通知シタルトキハ其ノ所有者ハ正当ノ理由ナクシテ之ヲ拒ムコトヲ得ス
第二十条 前五条ノ規定ハ貸付ニ依ラスシテ国有財産ノ使用又ハ収益ヲ為サシムル契約ニ付之ヲ準用ス
第二十一条 雑種財産ニ付土地ノ開拓又ハ水面ノ埋立若ハ干拓ヲ為サムトスル者アル場合ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ事業者ニ対シ事業ノ成功ヲ条件トシテ其ノ財産ノ売払、譲与又ハ貸付ノ予約ヲ為シ其ノ事業ヲ為サシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ事業ヲ為サシムル契約ヲ為シタル場合ニ於テハ事業ノ成功ニ要スル予定期間事業者ヲシテ其ノ成功シタル部分ニ付無償ニテ使用又ハ収益ヲ為サシムルコトヲ得
第二十二条 前条第一項ノ規定ニ依リ事業ヲ為サシムル契約ヲ為シタル場合ニ於テ指定期間内ニ事業者其ノ事業ニ著手セサルトキハ政府ハ其ノ契約ヲ解除スルコトヲ得
第二十三条 第二十一条第一項ノ規定ニ依リ事業ヲ為サシムル契約ヲ為シタル場合ニ於テ予定期間内ニ事業成功セサルトキト雖土地又ハ水面ノ状況ニ依リ支障ナシト認ムルトキハ事業者ニ対シ其ノ成功シタル部分ノ売払、譲与又ハ貸付ヲ為スコトヲ得
第二十四条 従前ヨリ引続キ寺院又ハ仏堂ノ用ニ供スル雑種財産ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ用ニ供スル間無償ニテ之ヲ当該寺院又ハ仏堂ニ貸付シタルモノト看做ス
寺院又ハ仏堂ノ上地ニ係ル雑種財産ハ其ノ用ニ供スル為必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ無償ニテ第十五条ノ規定ニ拘ラス之ヲ当該寺院又ハ仏堂ニ貸付スルコトヲ得
第二十五条 政府ハ国有財産ノ種類ニ従ヒ其ノ台帳ヲ備フヘシ
台帳ニ記載スヘキ事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十六条 政府ハ毎会計年度間ニ於ケル国有財産増減総計算書及毎五年三月三十一日現在ノ国有財産現在額総計算書ヲ調製シ会計検査院ノ検査ヲ経テ之ヲ帝国議会ニ報告スヘシ
前項ノ国有財産増減総計算書ニハ各省ノ国有財産増減報告書ヲ、国有財産現在額総計算書ニハ各省ノ国有財産現在額報告書ヲ添附スヘシ
附 則
第二十七条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十八条 第二十五条及第二十六条ノ規定ハ当分ノ内公共用財産ニ付之ヲ適用セス
第二十九条 第二十六条ノ規定ニ依ル国有財産増減総計算書ハ本法施行ノ日ノ属スル年度分ヨリ、国有財産現在額総計算書ノ第一回分ハ本法施行ノ日ノ現在ニ依リ之ヲ調製スヘシ
第三十条 北海道国有未開地処分法中ノ規定ハ本法ノ規定ニ牴触スルモノト雖当分ノ内仍其ノ効力ヲ有ス
第三十一条 国有林野法第二条、第四条乃至第七条、第九条、第十二条乃至第十四条、第十六条、第二十四条及第二十五条ノ規定ハ其ノ効力ヲ失フ但シ本法施行前ニ係ル国有林野ノ増減異動報告ニ付テハ仍従前ノ例ニ依ル
第三十二条 従前ノ法令ニ依リテ為シタル処分、契約其ノ他ノ行為ハ本法中之ニ相当スル規定アル場合ニ於テハ本法ニ依リテ之ヲ為シタルモノト看做ス
第三十三条 本法ハ朝鮮、台湾又ハ樺太ニ施行スル場合ニ於テ必要アルトキハ勅令ヲ以テ特別ノ定ヲ為スコトヲ得