第一條 本法ニ於テ國有財產ト稱スルハ國有ノ不動產竝勅令ヲ以テ定ムル國有ノ動產及權利ヲ謂フ
第三條 國有財產ニ關スル事務ハ各省大臣之ヲ管理シ國有財產ニ關スル總轄事務ハ大藏大臣之ヲ管理スヘシ
第四條 國有財產ハ雜種財產ヲ除クノ外之ヲ讓渡シ又ハ之ニ私權ヲ設定スルコトヲ得ス但シ其ノ用途又ハ目的ヲ妨ケサル限度ニ於テ其ノ使用又ハ收益ヲ爲サシムルハ此ノ限ニ在ラス
第五條 雜種財產ハ左ニ揭クル場合ニ限リ之ヲ讓與スルコトヲ得
一 帝室用又ハ公共團體ニ於テ公共用若ハ公用ニ供スル爲必要アルトキ
二 公共用財產又ハ公用財產ノ用途ヲ廢止シタル場合ニ於テ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ其ノ維持保存ノ費用ヲ負擔シタル者、其ノ用途ニ代ルヘキ他ノ施設ヲ爲シタル者其ノ他ノ緣故者又ハ關係者ニ讓與スルトキ
三 神社、寺院又ハ佛堂ノ合併シタル場合ニ於テ之ニ因リ其ノ供用ヲ止メタル國有財產ヲ其ノ合併シタル神社、寺院又ハ佛堂ニ讓與スルトキ
第六條 雜種財產ハ法律ヲ以テ特別ノ定ヲ爲シタル場合ニ限リ之ヲ出資ノ目的ト爲スコトヲ得
第七條 雜種財產ハ土地及建物以外ノ土地ノ定著物ニ限リ帝室用又ハ國、公共團體若ハ私人ニ於テ公共用、公用若ハ公益事業ニ供スル爲必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ他ノ土地及建物以外ノ土地ノ定著物ト交換ヲ爲スコトヲ得
前項ノ交換ヲ爲ス場合ニ於テ其ノ價格均シカラサルトキハ金錢ヲ以テ補足スヘシ
第八條 用途及期間ヲ指定シテ國有財產ノ賣拂、讓與又ハ交換ヲ爲シタル場合ニ於テ指定期間內ニ之ヲ其ノ用途ニ供セス又ハ之ヲ其ノ用途ニ供シタル後指定期間內ニ其ノ用途ヲ廢止シタルトキハ政府ハ其ノ契約ヲ解除スルコトヲ得
第九條 國有財產ノ賣拂代金又ハ交換差金ハ財產引渡前之ヲ納付セシムヘシ但シ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ延納ノ特約ヲ爲スコトヲ得
第十條 國有財產ニ付境界查定ヲ施行セムトスルトキハ豫メ期日ヲ定メテ隣接地所有者ニ之ヲ通知シ其ノ立會ヲ求ムヘシ
隣接地所有者期日ニ於テ立會ハサルコトアルモ境界查定ヲ施行スルコトヲ得
第十一條 境界查定ヲ了シタルトキハ隣接地所有者ニ之ヲ通知スヘシ
第十二條 前二條ノ規定ニ依リ通知ヲ受クヘキ者ノ住所居所共ニ不明ナルトキハ通知ノ要旨ヲ公告スヘシ
前項ノ規定ニ依リ公告シタル場合ニ於テ公告ノ初日ヨリ起算シ三十日ヲ經過シタルトキハ通知ヲ受ケタルモノト看做ス
第十三條 隣接地所有者其ノ他境界查定ニ對シ不服アル者ハ訴願シ又ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第十四條 國有財產ニ付境界查定又ハ測量ヲ爲ス爲政府ニ於テ他人ノ土地ニ立入リ、目標ヲ設置シ又ハ障害物ヲ除却スルノ必要アルトキハ當該土地又ハ物件ノ所有者及占有者ハ正當ノ理由ナクシテ之ヲ拒ムコトヲ得ス但シ之ニ因リテ生シタル損害ニ付賠償ヲ求ムルコトヲ得
第十五條 國有財產ノ貸付ハ左ノ期間ヲ超ユルコトヲ得ス
一 植樹ヲ目的トシテ土地及建物以外ノ土地ノ定著物ヲ貸付スル場合ニ在リテハ八十年
二 前號ノ場合ヲ除クノ外土地及建物以外ノ土地ノ定著物ヲ貸付スル場合ニ在リテハ三十年
貸付期間ハ之ヲ更新スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ更新ノ時ヨリ前項ノ期間ヲ超ユルコトヲ得ス
第十六條 國有財產ハ帝室用又ハ公共團體若ハ私人ニ於テ公共用、公用若ハ公益事業ニ供スル爲必要アル場合及勅令ニ特別ノ規定アル場合ヲ除クノ外無償ニテ之ヲ貸付スルコトヲ得ス
第十七條 國有財產ノ貸付料ハ每年定期ニ之ヲ納付セシムヘシ但シ數年分ヲ前納セシムルコトヲ妨ケス
第十八條 國有財產ヲ貸付シタル場合ニ於テ其ノ貸付期間中帝室用又ハ國、公共團體若ハ私人ニ於テ公共用、公用若ハ公益事業ニ供スル爲必要ヲ生シタルトキハ政府ハ其ノ契約ヲ解除スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ契約ヲ解除シタル場合ニ於テハ借受人ハ之ニ因リテ生シタル損害ニ付賠償ヲ求ムルコトヲ得
第十九條 貸付期間ノ終了又ハ貸付契約ノ解除ニ當リ政府ニ於テ時價ヲ提供シ其ノ國有財產ノ上ニ存スル建物其ノ他ノ物件ヲ買取ルヘキ旨通知シタルトキハ其ノ所有者ハ正當ノ理由ナクシテ之ヲ拒ムコトヲ得ス
第二十條 前五條ノ規定ハ貸付ニ依ラスシテ國有財產ノ使用又ハ收益ヲ爲サシムル契約ニ付之ヲ準用ス
第二十一條 雜種財產ニ付土地ノ開拓又ハ水面ノ埋立若ハ干拓ヲ爲サムトスル者アル場合ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ事業者ニ對シ事業ノ成功ヲ條件トシテ其ノ財產ノ賣拂、讓與又ハ貸付ノ豫約ヲ爲シ其ノ事業ヲ爲サシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ事業ヲ爲サシムル契約ヲ爲シタル場合ニ於テハ事業ノ成功ニ要スル豫定期間事業者ヲシテ其ノ成功シタル部分ニ付無償ニテ使用又ハ收益ヲ爲サシムルコトヲ得
第二十二條 前條第一項ノ規定ニ依リ事業ヲ爲サシムル契約ヲ爲シタル場合ニ於テ指定期間內ニ事業者其ノ事業ニ著手セサルトキハ政府ハ其ノ契約ヲ解除スルコトヲ得
第二十三條 第二十一條第一項ノ規定ニ依リ事業ヲ爲サシムル契約ヲ爲シタル場合ニ於テ豫定期間內ニ事業成功セサルトキト雖土地又ハ水面ノ狀況ニ依リ支障ナシト認ムルトキハ事業者ニ對シ其ノ成功シタル部分ノ賣拂、讓與又ハ貸付ヲ爲スコトヲ得
第二十四條 從前ヨリ引續キ寺院又ハ佛堂ノ用ニ供スル雜種財產ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ用ニ供スル間無償ニテ之ヲ當該寺院又ハ佛堂ニ貸付シタルモノト看做ス
寺院又ハ佛堂ノ上地ニ係ル雜種財產ハ其ノ用ニ供スル爲必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ無償ニテ第十五條ノ規定ニ拘ラス之ヲ當該寺院又ハ佛堂ニ貸付スルコトヲ得
第二十五條 政府ハ國有財產ノ種類ニ從ヒ其ノ臺帳ヲ備フヘシ
第二十六條 政府ハ每會計年度間ニ於ケル國有財產增減總計算書及每五年三月三十一日現在ノ國有財產現在額總計算書ヲ調製シ會計檢查院ノ檢查ヲ經テ之ヲ帝國議會ニ報告スヘシ
前項ノ國有財產增減總計算書ニハ各省ノ國有財產增減報告書ヲ、國有財產現在額總計算書ニハ各省ノ國有財產現在額報告書ヲ添附スヘシ