官有財産管理規則
法令番号: 勅令第二百七十五號
公布年月日: 明治23年11月25日
法令の形式: 勅令
朕官有財產管理規則ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十三年十一月二十四日
內閣總理大臣 伯爵 山縣有朋
內務大臣 伯爵 西鄕從道
司法大臣 伯爵 山田顯義
大藏大臣 伯爵 松方正義
陸軍大臣 伯爵 大山巖
遞信大臣 伯爵 後藤象二郞
外務大臣 子爵 靑木周藏
海軍大臣 子爵 樺山資紀
文部大臣 芳川顯正
農商務大臣 陸奧宗光
勅令第二百七十五號
官有財產管理規則
第一條 此ノ規則ニ於テ官有財產ト稱スルハ國ノ所有ニ屬スル土地、森林、原野、營造物、家屋、船舶及其ノ附屬物トス
第二條 官有財產ハ主管ノ各省大臣之ヲ管理ス
第三條 官有財產ノ賣拂、讓與、交換及貸付ハ特別ノ規定アルモノヲ除ク外總テ此ノ規則ニ依ルヘシ
第四條 官有財產賣拂代金ハ其ノ財產引渡ノ際一時ニ納付セシムヘシ
第五條 官有財產ヲ貸付スルトキハ其ノ貸付料ヲ徵收スヘシ但シ公益ノ爲官有財產ヲ貸付シ又ハ森林經濟ノ爲森林ヲ貸付スルトキハ別ニ主管大臣ノ定ムル所ノ規則ニ依ル
第六條 官有財產ノ貸付料ハ每年前納セシムヘシ若シ前納スル能ハサルトキハ相當ノ保證ヲ出サシムヘシ
貸付財產ノ修理其ノ他ノ費用ヲ負擔スル方法ハ貸付契約ヲ爲ストキ之ヲ定ムヘシ
第七條 官有財產ノ貸付ハ左ノ期限ヲ超ユルコトヲ得ス
第一 樹木培養ニ供スル土地ハ八十年以內
第二 農工其ノ他ノ營業及住居ニ供スル土地ハ三十年以內
第三 土地森林ノ使用權ハ十五年以內
第四 右ニ揭ケサル物件ハ三年以內
第八條 官有財產ノ貸付期限中政府ニ於テ之ヲ國ノ使用ニ供スルノ必要アルトキハ貸付ノ契約ヲ解キ之ヲ返還セシムヘシ
前項ノ場合ニ於テ借受人ハ其ノ直接ニ受ケタル損失ニ付賠償ヲ求ムルコトヲ得
第九條 官有財產ノ借受人ニシテ主管大臣ノ許可ヲ得スシテ其ノ財產ノ原形ヲ變シ若ハ故意怠慢ニ由リ之ヲ荒廢ニ歸シ又ハ毀損亡失シタルトキハ主管大臣ハ其ノ損失ヲ賠償セシムヘシ
第十條 官有財產ノ借受人ハ主管大臣ノ許可ヲ得ルニアラサレハ其ノ財產ヲ他人ニ轉貸スルコトヲ得ス
第十一條 官有財產ヲ以テ他人ノ所有物ト交換スルコトヲ得ルハ同一種類ノ財產ニシテ少クトモ評定價格相均キモノニ限ル
森林、原野、田畑ハ同一種類ノ財產ト見做スコトヲ得
營造物、家屋、船舶及其ノ附屬物ハ他人ノ所有物ト交換スルコトヲ得ス
第十二條 府縣郡市町村公共ノ道路、公園、市場、河川竝木敷、堤塘、溝渠等ノ用ニ供スル爲官有ノ土地森林ヲ必要トスルトキハ主管大臣ニ於テ之ヲ其ノ府縣郡市町村ニ讓與スルコトヲ得
第十三條 府縣郡市町村ニ於テ新ニ道路、公園、市場、河川竝木敷、堤塘、溝渠等ヲ開設シ爲ニ不用ニ歸シタル官有ノ舊同種類ノ土地ハ內務大臣ニ於テ其ノ府縣郡市町村ニ讓與スルコトヲ得但シ官林內若ハ官廳使用地內ニ包含セルモノ又ハ他ノ官有財產保護上離權シ難キモノハ此ノ限ニアラス
第十四條 官有財產ヲ賣拂貸付若ハ交換スル場合ニ於テ其ノ財產ヲ管理シ若ハ其ノ取扱ヲ爲ス官吏ハ之ヲ買受ケ又ハ自己ノ所有物ト交換スルコトヲ得ス
第十五條 此ノ規則施行ノ前ニ官有財產ノ賣拂若ハ貸付ノ契約ヲ爲シタルモノハ其ノ契約ノ滿期マテ總テ舊契約ニ依ルヘシ
貸付ノ期限ナキモノハ此ノ規則施行ノ日ヨリ三箇年以內ニ於テ此ノ規則ニ依リ更ニ契約ヲ爲スヘシ
第十六條 各省大臣ハ每十年其ノ年三月三十一日ニ現在スル所管官有財產ノ目錄ヲ調製シ其ノ年開會ノ帝國議會ニ報吿ノ手續ヲ爲スヘシ
第十七條 各省大臣ハ每會計年度間ニ於ケル所管官有財產ノ增減異動報吿書ヲ調製シ翌年度開會ノ帝國議會ニ報吿ノ手續ヲ爲スヘシ
第十八條 第十六條ノ目錄及第十七條ノ報吿書ハ其ノ事由ニ依テ區別シ左ノ事項ヲ示スヘシ
第一 買入ニ係ルモノハ其ノ代價
第二 賣拂ニ係ルモノハ各廳ニ於テ定メタル最低賣價、實際ノ賣拂代價及目錄價格アルモノハ其ノ價格
第三 讓與交換又ハ亡失毀損等ニ係ルモノハ其ノ目錄價格
第四 交換ニ係ルモノハ其ノ交換ニ由テ得タル財產
第五 買入又ハ賣拂ノ契約ニ特別ノ條件アルモノハ其ノ條件
第十九條 此ノ規則第十六條ニ揭クル官有財產ノ目錄ニシテ第一囘ノモノハ明治二十四年三月三十一日ノ現在高ヲ以テ同年六月三十日マテニ之ヲ調製スヘシ但シ調査未濟ノ官有財產ハ調査ヲ了ルマテ其ノ槪算ヲ目錄ニ揭クヘシ
第二十條 此ノ規則ハ明治二十四年四月一日ヨリ施行ス
朕官有財産管理規則ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十三年十一月二十四日
内閣総理大臣 伯爵 山県有朋
内務大臣 伯爵 西郷従道
司法大臣 伯爵 山田顕義
大蔵大臣 伯爵 松方正義
陸軍大臣 伯爵 大山巌
逓信大臣 伯爵 後藤象二郎
外務大臣 子爵 青木周蔵
海軍大臣 子爵 樺山資紀
文部大臣 芳川顕正
農商務大臣 陸奥宗光
勅令第二百七十五号
官有財産管理規則
第一条 此ノ規則ニ於テ官有財産ト称スルハ国ノ所有ニ属スル土地、森林、原野、営造物、家屋、船舶及其ノ附属物トス
第二条 官有財産ハ主管ノ各省大臣之ヲ管理ス
第三条 官有財産ノ売払、譲与、交換及貸付ハ特別ノ規定アルモノヲ除ク外総テ此ノ規則ニ依ルヘシ
第四条 官有財産売払代金ハ其ノ財産引渡ノ際一時ニ納付セシムヘシ
第五条 官有財産ヲ貸付スルトキハ其ノ貸付料ヲ徴収スヘシ但シ公益ノ為官有財産ヲ貸付シ又ハ森林経済ノ為森林ヲ貸付スルトキハ別ニ主管大臣ノ定ムル所ノ規則ニ依ル
第六条 官有財産ノ貸付料ハ毎年前納セシムヘシ若シ前納スル能ハサルトキハ相当ノ保証ヲ出サシムヘシ
貸付財産ノ修理其ノ他ノ費用ヲ負担スル方法ハ貸付契約ヲ為ストキ之ヲ定ムヘシ
第七条 官有財産ノ貸付ハ左ノ期限ヲ超ユルコトヲ得ス
第一 樹木培養ニ供スル土地ハ八十年以内
第二 農工其ノ他ノ営業及住居ニ供スル土地ハ三十年以内
第三 土地森林ノ使用権ハ十五年以内
第四 右ニ掲ケサル物件ハ三年以内
第八条 官有財産ノ貸付期限中政府ニ於テ之ヲ国ノ使用ニ供スルノ必要アルトキハ貸付ノ契約ヲ解キ之ヲ返還セシムヘシ
前項ノ場合ニ於テ借受人ハ其ノ直接ニ受ケタル損失ニ付賠償ヲ求ムルコトヲ得
第九条 官有財産ノ借受人ニシテ主管大臣ノ許可ヲ得スシテ其ノ財産ノ原形ヲ変シ若ハ故意怠慢ニ由リ之ヲ荒廃ニ帰シ又ハ毀損亡失シタルトキハ主管大臣ハ其ノ損失ヲ賠償セシムヘシ
第十条 官有財産ノ借受人ハ主管大臣ノ許可ヲ得ルニアラサレハ其ノ財産ヲ他人ニ転貸スルコトヲ得ス
第十一条 官有財産ヲ以テ他人ノ所有物ト交換スルコトヲ得ルハ同一種類ノ財産ニシテ少クトモ評定価格相均キモノニ限ル
森林、原野、田畑ハ同一種類ノ財産ト見做スコトヲ得
営造物、家屋、船舶及其ノ附属物ハ他人ノ所有物ト交換スルコトヲ得ス
第十二条 府県郡市町村公共ノ道路、公園、市場、河川並木敷、堤塘、溝渠等ノ用ニ供スル為官有ノ土地森林ヲ必要トスルトキハ主管大臣ニ於テ之ヲ其ノ府県郡市町村ニ譲与スルコトヲ得
第十三条 府県郡市町村ニ於テ新ニ道路、公園、市場、河川並木敷、堤塘、溝渠等ヲ開設シ為ニ不用ニ帰シタル官有ノ旧同種類ノ土地ハ内務大臣ニ於テ其ノ府県郡市町村ニ譲与スルコトヲ得但シ官林内若ハ官庁使用地内ニ包含セルモノ又ハ他ノ官有財産保護上離権シ難キモノハ此ノ限ニアラス
第十四条 官有財産ヲ売払貸付若ハ交換スル場合ニ於テ其ノ財産ヲ管理シ若ハ其ノ取扱ヲ為ス官吏ハ之ヲ買受ケ又ハ自己ノ所有物ト交換スルコトヲ得ス
第十五条 此ノ規則施行ノ前ニ官有財産ノ売払若ハ貸付ノ契約ヲ為シタルモノハ其ノ契約ノ満期マテ総テ旧契約ニ依ルヘシ
貸付ノ期限ナキモノハ此ノ規則施行ノ日ヨリ三箇年以内ニ於テ此ノ規則ニ依リ更ニ契約ヲ為スヘシ
第十六条 各省大臣ハ毎十年其ノ年三月三十一日ニ現在スル所管官有財産ノ目録ヲ調製シ其ノ年開会ノ帝国議会ニ報告ノ手続ヲ為スヘシ
第十七条 各省大臣ハ毎会計年度間ニ於ケル所管官有財産ノ増減異動報告書ヲ調製シ翌年度開会ノ帝国議会ニ報告ノ手続ヲ為スヘシ
第十八条 第十六条ノ目録及第十七条ノ報告書ハ其ノ事由ニ依テ区別シ左ノ事項ヲ示スヘシ
第一 買入ニ係ルモノハ其ノ代価
第二 売払ニ係ルモノハ各庁ニ於テ定メタル最低売価、実際ノ売払代価及目録価格アルモノハ其ノ価格
第三 譲与交換又ハ亡失毀損等ニ係ルモノハ其ノ目録価格
第四 交換ニ係ルモノハ其ノ交換ニ由テ得タル財産
第五 買入又ハ売払ノ契約ニ特別ノ条件アルモノハ其ノ条件
第十九条 此ノ規則第十六条ニ掲クル官有財産ノ目録ニシテ第一回ノモノハ明治二十四年三月三十一日ノ現在高ヲ以テ同年六月三十日マテニ之ヲ調製スヘシ但シ調査未済ノ官有財産ハ調査ヲ了ルマテ其ノ概算ヲ目録ニ掲クヘシ
第二十条 此ノ規則ハ明治二十四年四月一日ヨリ施行ス