(保護観察の対象者)
第四十八条 次に掲げる者(以下「保護観察対象者」という。)に対する保護観察の実施については、この章の定めるところによる。
一 少年法第二十四条第一項第一号の保護処分に付されている者(以下「保護観察処分少年」という。)
二 少年院からの仮退院を許されて第四十二条において準用する第四十条の規定により保護観察に付されている者(以下「少年院仮退院者」という。)
三 仮釈放を許されて第四十条の規定により保護観察に付されている者(以下「仮釈放者」という。)
四 刑法第二十五条の二第一項の規定により保護観察に付されている者(以下「保護観察付執行猶予者」という。)
(保護観察の実施方法)
第四十九条 保護観察は、保護観察対象者の改善更生を図ることを目的として、第五十七条に規定する指導監督及び第五十八条に規定する補導援護を行うことにより実施するものとする。
2 保護観察処分少年又は少年院仮退院者に対する保護観察は、保護処分の趣旨を踏まえ、その者の健全な育成を期して実施しなければならない。
(一般遵守事項)
第五十条 保護観察対象者は、次に掲げる事項(以下「一般遵守事項」という。)を遵守しなければならない。
一 再び犯罪をすることがないよう、又は非行をなくすよう健全な生活態度を保持すること。
二 次に掲げる事項を守り、保護観察官及び保護司による指導監督を誠実に受けること。
イ 保護観察官又は保護司の呼出し又は訪問を受けたときは、これに応じ、面接を受けること。
ロ 保護観察官又は保護司から、労働又は通学の状況、収入又は支出の状況、家庭環境、交友関係その他の生活の実態を示す事実であって指導監督を行うため把握すべきものを明らかにするよう求められたときは、これに応じ、その事実を申告し、又はこれに関する資料を提示すること。
三 保護観察に付されたときは、速やかに、住居を定め、その地を管轄する保護観察所の長にその届出をすること(第三十九条第三項(第四十二条において準用する場合を含む。次号において同じ。)の規定により住居を特定された場合及び次条第二項第五号の規定により宿泊すべき特定の場所を定められた場合を除く。)。
四 前号の届出に係る住居(第三十九条第三項の規定により住居を特定された場合には当該住居、次号の転居の許可を受けた場合には当該許可に係る住居)に居住すること(次条第二項第五号の規定により宿泊すべき特定の場所を定められた場合を除く。)。
五 転居又は七日以上の旅行をするときは、あらかじめ、保護観察所の長の許可を受けること。
(特別遵守事項)
第五十一条 保護観察対象者は、一般遵守事項のほか、遵守すべき特別の事項(以下「特別遵守事項」という。)が定められたときは、これを遵守しなければならない。
2 特別遵守事項は、次条の定めるところにより、これに違反した場合に第七十二条第一項、刑法第二十六条の二及び第二十九条第一項並びに少年法第二十六条の四第一項に規定する処分がされることがあることを踏まえ、次に掲げる事項について、保護観察対象者の改善更生のために特に必要と認められる範囲内において、具体的に定めるものとする。
一 犯罪性のある者との交際、いかがわしい場所への出入り、遊興による浪費、過度の飲酒その他の犯罪又は非行に結び付くおそれのある特定の行動をしてはならないこと。
二 労働に従事すること、通学することその他の再び犯罪をすることがなく又は非行のない健全な生活態度を保持するために必要と認められる特定の行動を実行し、又は継続すること。
三 七日未満の旅行、離職、身分関係の異動その他の指導監督を行うため事前に把握しておくことが特に重要と認められる生活上又は身分上の特定の事項について、緊急の場合を除き、あらかじめ、保護観察官又は保護司に申告すること。
四 医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的知識に基づく特定の犯罪的傾向を改善するための体系化された手順による処遇として法務大臣が定めるものを受けること。
五 法務大臣が指定する施設、保護観察対象者を監護すべき者の居宅その他の改善更生のために適当と認められる特定の場所であって、宿泊の用に供されるものに一定の期間宿泊して指導監督を受けること。
(特別遵守事項の設定及び変更)
第五十二条 保護観察所の長は、保護観察処分少年について、法務省令で定めるところにより、少年法第二十四条第一項第一号の保護処分をした家庭裁判所の意見を聴き、これに基づいて、特別遵守事項を定めることができる。これを変更するときも、同様とする。
2 地方委員会は、少年院仮退院者又は仮釈放者について、保護観察所の長の申出により、法務省令で定めるところにより、決定をもって、特別遵守事項を定めることができる。保護観察所の長の申出により、これを変更するときも、同様とする。
3 前項の場合において、少年院からの仮退院又は仮釈放を許す旨の決定による釈放の時までに特別遵守事項を定め、又は変更するときは、保護観察所の長の申出を要しないものとする。
4 保護観察所の長は、保護観察付執行猶予者について、その保護観察の開始に際し、法務省令で定めるところにより、刑法第二十五条の二第一項の規定により保護観察に付する旨の言渡しをした裁判所の意見を聴き、これに基づいて、特別遵守事項を定めることができる。
5 保護観察所の長は、前項の場合のほか、保護観察付執行猶予者について、法務省令で定めるところにより、当該保護観察所の所在地を管轄する地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所に対し、定めようとする又は変更しようとする特別遵守事項の内容を示すとともに、必要な資料を提示して、その意見を聴いた上、特別遵守事項を定め、又は変更することができる。ただし、当該裁判所が不相当とする旨の意見を述べたものについては、この限りでない。
(特別遵守事項の取消し)
第五十三条 保護観察所の長は、保護観察処分少年又は保護観察付執行猶予者について定められている特別遵守事項につき、必要がなくなったと認めるときは、法務省令で定めるところにより、これを取り消すものとする。
2 地方委員会は、保護観察所の長の申出により、少年院仮退院者又は仮釈放者について定められている特別遵守事項につき、必要がなくなったと認めるときは、法務省令で定めるところにより、決定をもって、これを取り消すものとする。
3 前条第三項の規定は、前項の規定により特別遵守事項を取り消す場合について準用する。
(一般遵守事項の通知)
第五十四条 保護観察所の長は、少年法第二十四条第一項第一号の保護処分があったとき又は刑法第二十五条の二第一項の規定により保護観察に付する旨の言渡しがあったときは、法務省令で定めるところにより、保護観察処分少年又は保護観察付執行猶予者に対し、一般遵守事項の内容を記載した書面を交付しなければならない。
2 刑事施設の長又は少年院の長は、第三十九条第一項又は第四十一条の決定により、懲役若しくは禁錮の刑又は保護処分の執行のため収容している者を釈放するときは、法務省令で定めるところにより、その者に対し、一般遵守事項の内容を記載した書面を交付しなければならない。
(特別遵守事項の通知)
第五十五条 保護観察所の長は、保護観察対象者について、特別遵守事項が定められ、又は変更されたときは、法務省令で定めるところにより、当該保護観察対象者に対し、当該特別遵守事項の内容を記載した書面を交付しなければならない。ただし、次項に規定する場合については、この限りでない。
2 刑事施設の長又は少年院の長は、懲役若しくは禁錮の刑又は保護処分の執行のため収容している者について、第三十九条第一項又は第四十一条の決定による釈放の時までに特別遵守事項が定められたときは、法務省令で定めるところにより、その釈放の時に当該特別遵守事項(釈放の時までに変更された場合には、変更後のもの)の内容を記載した書面を交付しなければならない。ただし、その釈放の時までに当該特別遵守事項が取り消されたときは、この限りでない。
(生活行動指針)
第五十六条 保護観察所の長は、保護観察対象者について、保護観察における指導監督を適切に行うため必要があると認めるときは、法務省令で定めるところにより、当該保護観察対象者の改善更生に資する生活又は行動の指針(以下「生活行動指針」という。)を定めることができる。
2 保護観察所の長は、前項の規定により生活行動指針を定めたときは、法務省令で定めるところにより、保護観察対象者に対し、当該生活行動指針の内容を記載した書面を交付しなければならない。
3 保護観察対象者は、第一項の規定により生活行動指針が定められたときは、これに即して生活し、及び行動するよう努めなければならない。
(指導監督の方法)
第五十七条 保護観察における指導監督は、次に掲げる方法によって行うものとする。
一 面接その他の適当な方法により保護観察対象者と接触を保ち、その行状を把握すること。
二 保護観察対象者が一般遵守事項及び特別遵守事項(以下「遵守事項」という。)を遵守し、並びに生活行動指針に即して生活し、及び行動するよう、必要な指示その他の措置をとること。
三 特定の犯罪的傾向を改善するための専門的処遇を実施すること。
2 保護観察所の長は、前項の指導監督を適切に行うため特に必要があると認めるときは、保護観察対象者に対し、当該指導監督に適した宿泊場所を供与することができる。
(補導援護の方法)
第五十八条 保護観察における補導援護は、保護観察対象者が自立した生活を営むことができるようにするため、その自助の責任を踏まえつつ、次に掲げる方法によって行うものとする。
一 適切な住居その他の宿泊場所を得ること及び当該宿泊場所に帰住することを助けること。
六 社会生活に適応させるために必要な生活指導を行うこと。
七 前各号に掲げるもののほか、保護観察対象者が健全な社会生活を営むために必要な助言その他の措置をとること。
(保護者に対する措置)
第五十九条 保護観察所の長は、必要があると認めるときは、保護観察に付されている少年(少年法第二条第一項に規定する少年であって、保護観察処分少年又は少年院仮退院者に限る。)の保護者(同条第二項に規定する保護者をいう。)に対し、その少年の監護に関する責任を自覚させ、その改善更生に資するため、指導、助言その他の適当な措置をとることができる。
(保護観察の管轄)
第六十条 保護観察は、保護観察対象者の居住地(住居がないか、又は明らかでないときは、現在地又は明らかである最後の居住地若しくは所在地)を管轄する保護観察所がつかさどる。
(保護観察の実施者)
第六十一条 保護観察における指導監督及び補導援護は、保護観察対象者の特性、とるべき措置の内容その他の事情を勘案し、保護観察官又は保護司をして行わせるものとする。
2 前項の補導援護は、保護観察対象者の改善更生を図るため有効かつ適切であると認められる場合には、更生保護事業法(平成七年法律第八十六号)の規定により更生保護事業を営む者その他の適当な者に委託して行うことができる。
(応急の救護)
第六十二条 保護観察所の長は、保護観察対象者が、適切な医療、食事、住居その他の健全な社会生活を営むために必要な手段を得ることができないため、その改善更生が妨げられるおそれがある場合には、当該保護観察対象者が公共の衛生福祉に関する機関その他の機関からその目的の範囲内で必要な応急の救護を得られるよう、これを援護しなければならない。
2 前項の規定による援護によっては必要な応急の救護が得られない場合には、保護観察所の長は、予算の範囲内で、自らその救護を行うものとする。
3 前項の救護は、更生保護事業法の規定により更生保護事業を営む者その他の適当な者に委託して行うことができる。
4 保護観察所の長は、第一項又は第二項の規定による措置をとるに当たっては、保護観察対象者の自助の責任の自覚を損なわないよう配慮しなければならない。
(出頭の命令及び引致)
第六十三条 地方委員会又は保護観察所の長は、その職務を行うため必要があると認めるときは、保護観察対象者に対し、出頭を命ずることができる。
2 保護観察所の長は、保護観察対象者について、次の各号のいずれかに該当すると認める場合には、裁判官のあらかじめ発する引致状により、当該保護観察対象者を引致することができる。
一 正当な理由がないのに、第五十条第四号に規定する住居に居住しないとき(第五十一条第二項第五号の規定により宿泊すべき特定の場所を定められた場合には、当該場所に宿泊しないとき)。
二 遵守事項を遵守しなかったことを疑うに足りる十分な理由があり、かつ、正当な理由がないのに、前項の規定による出頭の命令に応ぜず、又は応じないおそれがあるとき。
3 地方委員会は、少年院仮退院者又は仮釈放者について、前項各号のいずれかに該当すると認める場合には、裁判官のあらかじめ発する引致状により、当該少年院仮退院者又は仮釈放者を引致することができる。
4 第二項の引致状は保護観察所の長の請求により、前項の引致状は地方委員会の請求により、その所在地を管轄する地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所の裁判官が発する。
5 第二項又は第三項の引致状は、判事補が一人で発することができる。
6 第二項又は第三項の引致状は、保護観察官に執行させるものとする。ただし、保護観察官に執行させることが困難であるときは、警察官にその執行を嘱託することができる。
7 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第六十四条、第七十三条第一項前段及び第三項、第七十四条並びに第七十六条第一項本文及び第二項の規定(勾引に関する部分に限る。)は、第二項又は第三項の引致状及びこれらの規定による保護観察対象者の引致について準用する。この場合において、同法第六十四条第一項中「罪名、公訴事実の要旨」とあり、同法第七十三条第三項中「公訴事実の要旨」とあり、及び同法第七十六条第一項本文中「公訴事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨並びに貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは弁護人の選任を請求することができる旨」とあるのは「引致の理由」と、同法第六十四条第一項中「裁判長又は受命裁判官」とあるのは「裁判官」と、同法第七十四条中「刑事施設」とあるのは「刑事施設又は少年鑑別所」と、同法第七十六条第二項中「合議体の構成員又は裁判所書記」とあるのは「地方更生保護委員会が引致した場合においては委員又は保護観察官、保護観察所の長が引致した場合においては保護観察官」と読み替えるものとする。
8 第二項又は第三項の引致状により引致された者については、引致すべき場所に引致された時から二十四時間以内に釈放しなければならない。ただし、その時間内に第七十三条第一項、第七十六条第一項又は第八十条第一項の規定によりその者が留置されたときは、この限りでない。
9 地方委員会が行う第一項の規定による命令、第三項の規定による引致に係る判断及び前項本文の規定による釈放に係る判断は、三人の委員をもって構成する合議体(第七十一条の規定による申請、第七十五条第一項の決定又は第八十一条第五項の規定による決定をするか否かに関する審理の開始後においては、当該審理を担当する合議体)で行う。ただし、前項本文の規定による釈放に係る地方委員会の判断については、急速を要するときは、あらかじめ地方委員会が指名する一人の委員で行うことができる。
10 第十三条、第二十三条第三項並びに第二十五条第一項及び第二項の規定は前項に規定する措置のための合議体又は委員による調査について、第二十三条第二項の規定は前項の合議体の議事について、それぞれ準用する。この場合において、第十三条中「、地方更生保護委員会及び保護観察所の長」とあるのは、「及び保護観察所の長」と読み替えるものとする。
(保護観察のための調査)
第六十四条 保護観察所の長は、保護観察のための調査において、必要があると認めるときは、関係人に対し、質問をし、及び資料の提示を求めることができる。
2 前項の規定による質問及び資料の提示の求めは、保護観察官又は保護司をして行わせるものとする。
3 第二十五条第二項の規定は、第一項の規定による質問及び資料の提示の求めについて準用する。
(被害者等の心情等の伝達)
第六十五条 保護観察所の長は、法務省令で定めるところにより、保護観察対象者について、被害者等(当該保護観察対象者が刑若しくは保護処分を言い渡される理由となった犯罪若しくは刑罰法令に触れる行為により害を被った者(以下この項において「被害者」という。)又はその法定代理人若しくは被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう。以下この条において同じ。)から、被害に関する心情、被害者等の置かれている状況又は保護観察対象者の生活若しくは行動に関する意見(以下この条において「心情等」という。)の伝達の申出があったときは、当該心情等を聴取し、当該保護観察対象者に伝達するものとする。ただし、その伝達をすることが当該保護観察対象者の改善更生を妨げるおそれがあり、又は当該被害に係る事件の性質、保護観察の実施状況その他の事情を考慮して相当でないと認めるときは、この限りでない。
2 保護観察所の長は、被害者等の居住地を管轄する他の保護観察所の長に対し、前項の申出の受理及び心情等の聴取に関する事務を嘱託することができる。この場合において、同項ただし書の規定により当該保護観察所の長が心情等の伝達をしないこととするときは、あらかじめ、当該他の保護観察所の長の意見を聴かなければならない。