少年の保護事件に係る補償に関する法律をここに公布する。
御名御璽
平成四年六月二十六日
内閣総理大臣 宮澤喜一
法律第八十四号
少年の保護事件に係る補償に関する法律
(趣旨)
第一条 この法律は、少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)第二章に定める少年の保護事件(以下「保護事件」という。)に関する手続において同法第三条第一項各号に掲げる審判に付すべき少年に該当する事由(以下「審判事由」という。)の存在が認められるに至らなかった少年等に対し、その身体の自由の拘束等による補償を行う措置を定めるものとする。
(補償の要件)
第二条 少年法第二章に規定する保護事件を終結させるいずれかの決定においてその全部又は一部の審判事由の存在が認められないことにより当該全部又は一部の審判事由につき審判を開始せず又は保護処分に付さない旨の判断がされた場合において、その決定を受けた者が当該全部又は一部の審判事由に関して次に掲げる身体の自由の拘束を受けたものであるときは、国は、その者に対し、この法律の定めるところにより、当該身体の自由の拘束による補償をするものとする。
一 少年法の規定による同行、同法第十七条第一項第二号の措置(同法第十七条の二第一項又は第二十六条の二の規定による措置を含む。)又は同法第二十四条第一項第三号の保護処分(少年院法(昭和二十三年法律第百六十九号)第十一条第四項、第五項若しくは第七項の規定による措置又は犯罪者予防更生法(昭和二十四年法律第百四十二号)第四十三条第一項若しくは第二項の規定による措置を含む。)に基づく身体の自由の拘束並びに犯罪者予防更生法の規定による引致及び留置
二 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定による逮捕、勾留及び勾引、同法第百六十七条第一項(少年法第十四条第二項において準用する場合を含む。)又は刑事訴訟法第二百二十四条第二項の規定による留置並びに刑事補償法(昭和二十五年法律第一号)第二十六条に規定する外国がした抑留又は拘禁
2 審判事由の存在が認められないことにより少年法第二十七条の二第一項の規定による保護処分の取消しの決定があった場合において、当該決定を受けた者が前項各号に掲げる身体の自由の拘束又は同法第二十四条の二の規定による没取を受けたものであるときも、同項と同様とする。
(補償をしないことができる場合)
第三条 次の各号のいずれかに該当するときは、前条の規定にかかわらず、補償の全部又は一部をしないことができる。
一 本人が、家庭裁判所の調査若しくは審判又は捜査を誤らせる目的で、虚偽の自白をし、その他審判事由があることの証拠を作ることにより、身体の自由の拘束を受け、又は没取を受けるに至ったと認められるとき。
二 数個の審判事由のうちその一部のみの存在が認められない場合において、本人が受けた身体の自由の拘束が他の審判事由をも理由とするものであったとき、又は当該身体の自由の拘束がされなかったとしたならば他の審判事由を理由として身体の自由の拘束をする必要があったと認められるとき。
三 本人が補償を辞退しているときその他補償の必要性を失わせ又は減殺する特別の事情があるとき。
(補償の内容)
第四条 身体の自由の拘束による補償においては、その拘束の日数に応じて、刑事補償法第四条第一項に定める一日当たりの割合の範囲内で、相当と認められる額の補償金を交付する。
2 没取による補償においては、没取に係る物を返付し、これを返付することができないときは、その物の時価に等しい額の補償金を交付する。
(補償に関する決定)
第五条 補償の要否及び補償の内容についての判断は、第二条に規定する決定をした家庭裁判所が、決定をもって行う。
2 前項の補償に関する決定は、第二条に規定する決定をした日から三十日以内にするように努めなければならない。
3 家庭裁判所は、第一項の補償に関する決定の告知をした日から十四日以内に本人からその変更をすべき旨の申出があった場合において、相当と認めるときは、決定をもって、これを変更することができる。
(特別関係者に対する補償)
第六条 前条第一項の補償に関する決定を受ける前に本人が死亡した場合において、その特別関係者(本人の配偶者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。)子、父母、祖父母若しくは兄弟姉妹であって本人の死亡の当時本人と生計を同じくしていたもの又はこれらの者以外の者であって第二条に規定する決定の当時本人の保護者(少年法第二条第二項に規定する者をいう。)であったものをいう。以下同じ。)から申出があり、かつ、補償をすることが相当と認められるときは、国は、前条第一項の家庭裁判所の決定により、本人が生存していたとしたならば受けたものと認められる補償と同一の補償をすることができる。
2 前項の場合において、二人以上の特別関係者に補償をするときは、これを等分する。ただし、等分することが相当でないと認められる特別の事情があるときは、これと異なる配分を定めることができる。
3 第一項の申出は、本人が死亡した日から六十日以内にしなければならない。
(調査)
第七条 家庭裁判所は、補償に関する決定をするに当たっては、必要な調査を行い、又は家庭裁判所調査官に命じて必要な調査を行わせることができる。この場合における家庭裁判所の調査については、少年法第十四条、第十六条、第三十条及び第三十条の二の規定を準用する。
(補償の払渡し)
第八条 補償金の払渡し及び没取に係る物の返付(以下「補償の払渡し」という。)は、第五条第一項又は第六条第一項の決定をした家庭裁判所が行う。
(準用)
第九条 刑事補償法第五条の規定はこの法律による補償と他の法律による損害賠償との関係について、同法第二十二条の規定は補償の払渡しについて、刑事訴訟法第五十五条第一項及び第三項の規定はこの法律に定める期間の計算について準用する。
(最高裁判所の規則)
第十条 この法律に定めるもののほか、決定の告知及び補償の払渡しの方法その他補償の実施に関して必要な事項は、最高裁判所が定める。
附 則
(施行期日等)
1 この法律は、公布の日から起算して九十日を超えない範囲内において政令で定める日から施行し、この法律の施行後に第二条に規定する決定があった保護事件に係る身体の自由の拘束又は没取について適用する。
(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法等の一部改正)
2 次に掲げる法律の規定中「(昭和二十五年法律第一号)」の下に「又は少年の保護事件に係る補償に関する法律(平成四年法律第八十四号)」を加え、「刑事訴訟法による抑留又は拘禁」を「刑事訴訟法による抑留若しくは拘禁又は少年の保護事件に係る補償に関する法律第二条第一項第二号に掲げる身体の自由の拘束」に改める。
一 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法(昭和二十七年法律第百三十八号)第二十条
二 日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法(昭和二十九年法律第百五十一号)第十二条
法務大臣 田原隆
内閣総理大臣 宮澤喜一
少年の保護事件に係る補償に関する法律をここに公布する。
御名御璽
平成四年六月二十六日
内閣総理大臣 宮沢喜一
法律第八十四号
少年の保護事件に係る補償に関する法律
(趣旨)
第一条 この法律は、少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)第二章に定める少年の保護事件(以下「保護事件」という。)に関する手続において同法第三条第一項各号に掲げる審判に付すべき少年に該当する事由(以下「審判事由」という。)の存在が認められるに至らなかった少年等に対し、その身体の自由の拘束等による補償を行う措置を定めるものとする。
(補償の要件)
第二条 少年法第二章に規定する保護事件を終結させるいずれかの決定においてその全部又は一部の審判事由の存在が認められないことにより当該全部又は一部の審判事由につき審判を開始せず又は保護処分に付さない旨の判断がされた場合において、その決定を受けた者が当該全部又は一部の審判事由に関して次に掲げる身体の自由の拘束を受けたものであるときは、国は、その者に対し、この法律の定めるところにより、当該身体の自由の拘束による補償をするものとする。
一 少年法の規定による同行、同法第十七条第一項第二号の措置(同法第十七条の二第一項又は第二十六条の二の規定による措置を含む。)又は同法第二十四条第一項第三号の保護処分(少年院法(昭和二十三年法律第百六十九号)第十一条第四項、第五項若しくは第七項の規定による措置又は犯罪者予防更生法(昭和二十四年法律第百四十二号)第四十三条第一項若しくは第二項の規定による措置を含む。)に基づく身体の自由の拘束並びに犯罪者予防更生法の規定による引致及び留置
二 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定による逮捕、勾留及び勾引、同法第百六十七条第一項(少年法第十四条第二項において準用する場合を含む。)又は刑事訴訟法第二百二十四条第二項の規定による留置並びに刑事補償法(昭和二十五年法律第一号)第二十六条に規定する外国がした抑留又は拘禁
2 審判事由の存在が認められないことにより少年法第二十七条の二第一項の規定による保護処分の取消しの決定があった場合において、当該決定を受けた者が前項各号に掲げる身体の自由の拘束又は同法第二十四条の二の規定による没取を受けたものであるときも、同項と同様とする。
(補償をしないことができる場合)
第三条 次の各号のいずれかに該当するときは、前条の規定にかかわらず、補償の全部又は一部をしないことができる。
一 本人が、家庭裁判所の調査若しくは審判又は捜査を誤らせる目的で、虚偽の自白をし、その他審判事由があることの証拠を作ることにより、身体の自由の拘束を受け、又は没取を受けるに至ったと認められるとき。
二 数個の審判事由のうちその一部のみの存在が認められない場合において、本人が受けた身体の自由の拘束が他の審判事由をも理由とするものであったとき、又は当該身体の自由の拘束がされなかったとしたならば他の審判事由を理由として身体の自由の拘束をする必要があったと認められるとき。
三 本人が補償を辞退しているときその他補償の必要性を失わせ又は減殺する特別の事情があるとき。
(補償の内容)
第四条 身体の自由の拘束による補償においては、その拘束の日数に応じて、刑事補償法第四条第一項に定める一日当たりの割合の範囲内で、相当と認められる額の補償金を交付する。
2 没取による補償においては、没取に係る物を返付し、これを返付することができないときは、その物の時価に等しい額の補償金を交付する。
(補償に関する決定)
第五条 補償の要否及び補償の内容についての判断は、第二条に規定する決定をした家庭裁判所が、決定をもって行う。
2 前項の補償に関する決定は、第二条に規定する決定をした日から三十日以内にするように努めなければならない。
3 家庭裁判所は、第一項の補償に関する決定の告知をした日から十四日以内に本人からその変更をすべき旨の申出があった場合において、相当と認めるときは、決定をもって、これを変更することができる。
(特別関係者に対する補償)
第六条 前条第一項の補償に関する決定を受ける前に本人が死亡した場合において、その特別関係者(本人の配偶者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。)子、父母、祖父母若しくは兄弟姉妹であって本人の死亡の当時本人と生計を同じくしていたもの又はこれらの者以外の者であって第二条に規定する決定の当時本人の保護者(少年法第二条第二項に規定する者をいう。)であったものをいう。以下同じ。)から申出があり、かつ、補償をすることが相当と認められるときは、国は、前条第一項の家庭裁判所の決定により、本人が生存していたとしたならば受けたものと認められる補償と同一の補償をすることができる。
2 前項の場合において、二人以上の特別関係者に補償をするときは、これを等分する。ただし、等分することが相当でないと認められる特別の事情があるときは、これと異なる配分を定めることができる。
3 第一項の申出は、本人が死亡した日から六十日以内にしなければならない。
(調査)
第七条 家庭裁判所は、補償に関する決定をするに当たっては、必要な調査を行い、又は家庭裁判所調査官に命じて必要な調査を行わせることができる。この場合における家庭裁判所の調査については、少年法第十四条、第十六条、第三十条及び第三十条の二の規定を準用する。
(補償の払渡し)
第八条 補償金の払渡し及び没取に係る物の返付(以下「補償の払渡し」という。)は、第五条第一項又は第六条第一項の決定をした家庭裁判所が行う。
(準用)
第九条 刑事補償法第五条の規定はこの法律による補償と他の法律による損害賠償との関係について、同法第二十二条の規定は補償の払渡しについて、刑事訴訟法第五十五条第一項及び第三項の規定はこの法律に定める期間の計算について準用する。
(最高裁判所の規則)
第十条 この法律に定めるもののほか、決定の告知及び補償の払渡しの方法その他補償の実施に関して必要な事項は、最高裁判所が定める。
附 則
(施行期日等)
1 この法律は、公布の日から起算して九十日を超えない範囲内において政令で定める日から施行し、この法律の施行後に第二条に規定する決定があった保護事件に係る身体の自由の拘束又は没取について適用する。
(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法等の一部改正)
2 次に掲げる法律の規定中「(昭和二十五年法律第一号)」の下に「又は少年の保護事件に係る補償に関する法律(平成四年法律第八十四号)」を加え、「刑事訴訟法による抑留又は拘禁」を「刑事訴訟法による抑留若しくは拘禁又は少年の保護事件に係る補償に関する法律第二条第一項第二号に掲げる身体の自由の拘束」に改める。
一 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法(昭和二十七年法律第百三十八号)第二十条
二 日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法(昭和二十九年法律第百五十一号)第十二条
法務大臣 田原隆
内閣総理大臣 宮沢喜一