(受入移送の実施)
第五条 受入移送は、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、これをすることができる。
三 受入移送犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、その行為が日本国の法令によれば禁錮以上の刑が定められている罪に当たるものでないとき。
四 受入移送犯罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき、又はその事件について、日本国の裁判所において言い渡された無罪の裁判が確定したとき、日本国の裁判所において禁錮以上の刑に処せられその刑の全部若しくは一部の執行を受けたとき若しくはその刑の全部の執行を受けないこととなっていないとき。
(同意の確認)
第六条 前条第一号の同意は、次の各号のいずれかに掲げる職員が確認するものとする。この場合において、当該職員は、受入受刑者をして、第十六条及び第十七条の規定に関する事項その他法務省令で定める事項を記載した書面に、当該職員の面前で、署名押印させるものとする。
一 法務大臣の委任を受けた外国に駐在する日本国の大使、公使若しくは領事官又はこれらの者が指定する職員
(法務大臣の措置)
第七条 法務大臣は、裁判国から受入移送の要請があった場合において、第五条各号のいずれにも該当せず、かつ、要請に応ずることが相当であると認めるときは、東京地方検察庁検事正に対し関係書類を送付して、受入移送をすることができる場合に該当するかどうかについて東京地方裁判所に審査の請求をすることを命じなければならない。
2 裁判国から受入移送の要請がない場合において、法務大臣が、第五条各号のいずれにも該当せず、かつ、裁判国に対し受入移送の要請をすることが相当であると認めるときも、前項と同様とする。
3 法務大臣は、前項の規定に基づき審査の請求をすることを命じようとするときは、あらかじめ外務大臣の意見を聴かなければならない。
(審査の請求)
第八条 東京地方検察庁の検察官は、前条第一項又は第二項の命令があったときは、速やかに、東京地方裁判所に対し、受入移送をすることができる場合に該当するかどうかについて審査の請求をしなければならない。
2 前項の審査の請求は書面で行い、当該書面に関係書類を添付しなければならない。
(東京地方裁判所の審査)
第九条 東京地方裁判所は、前条の審査の請求を受けたときは、速やかに、審査を開始し、決定をするものとする。
(東京地方裁判所の決定)
第十条 東京地方裁判所は、前条の規定による審査の結果に基づいて、次の区別に従い、決定をしなければならない。
一 審査の請求が不適法であるときは、これを却下する決定
二 受入移送をすることができない場合に該当するときは、その旨の決定
三 受入移送をすることができる場合に該当するときは、その旨の決定
2 東京地方裁判所は、前項の決定をしたときは、速やかに、東京地方検察庁の検察官に裁判書の謄本を送達するとともに、関係書類を返還しなければならない。
(裁判書の謄本等の法務大臣への提出)
第十一条 東京地方検察庁検事正は、前条第二項の規定により、裁判書の謄本が東京地方検察庁の検察官に送達されたときは、速やかに、関係書類とともに、これを法務大臣に提出しなければならない。
(裁判国に対する受入移送の要請)
第十二条 法務大臣は、裁判国から受入移送の要請がない場合において、第十条第一項第三号の決定があり、かつ、相当であると認めるときは、裁判国に対し受入移送の要請をすることができる。
(法務大臣の受入移送命令)
第十三条 法務大臣は、裁判国から受入移送の要請があった場合において第十条第一項第三号の決定があったとき、又は前条の規定により裁判国に対し受入移送の要請をした場合において裁判国から要請に応ずる旨の通知があったときは、東京地方検察庁検事正に対し、当該要請に係る受入移送を命じなければならない。ただし、受入移送を命ずることが相当でないと認めるときは、この限りでない。
(受入受刑者に対する通知)
第十四条 法務大臣は、第十二条の規定により裁判国に対して受入移送の要請をしたとき及び前条の規定により受入移送の命令をしたときは、当該受入受刑者に書面でその旨を通知しなければならない。裁判国から要請があった場合又は第六条の規定に基づき受入受刑者の同意を確認した場合において、受入移送をしないこととしたときも、同様とする。
(受入移送命令の方式)
第十五条 第十三条の命令は書面によるものとし、当該書面に関係書類の謄本を添付しなければならない。
2 前項の書面には、受入受刑者の氏名、年齢、裁判国の名称、受入移送犯罪の名称、外国刑の刑期、引渡しを受ける日及び場所並びに引致すべき監獄を記載し、法務大臣が記名押印しなければならない。
(共助刑の執行方法)
第十六条 第十三条の命令により裁判国から受入受刑者の引渡しを受けたときは、次の各号に掲げる受入移送犯罪に係る確定裁判において言い渡された外国刑の区分に応じ、当該各号に掲げる種類の共助刑を執行することにより、受入移送犯罪に係る外国刑の確定裁判の執行の共助をするものとする。
一 外国刑が懲役に相当する刑であるとき 当該受入受刑者を監獄に拘置して所定の作業を行わせること。
二 前号に掲げる場合に該当しないとき 当該受入受刑者を監獄に拘置すること。
2 受入移送犯罪に係る確定裁判において言い渡された外国刑が二以上あるときは、これらを一の共助刑として執行する。この場合における共助刑の種類は、当該外国刑のすべてが懲役に相当する刑であるときは、前項第一号に掲げるものとし、当該外国刑のいずれかが懲役に相当する刑でないときは、同項第二号に掲げるものとする。
(共助刑の期間)
第十七条 共助刑の期間は、次の各号に掲げる受入移送犯罪に係る確定裁判において言い渡された外国刑の区分に応じ、当該各号に掲げるものとする。
一 外国刑(二以上あるときは、そのいずれか)が無期であるとき 無期
二 前号に掲げる場合に該当しないとき 次のイ又はロに掲げる裁判国において当該外国刑の執行が開始された日(二以上あるときは、当該日のうち最も早い日。以下同じ。)から受入受刑者の拘禁をすることができるとされる最終日までの日数(裁判国においてその執行としての拘禁をしていないとされる日数を除く。)の区分に応じ、当該イ又はロに定める期間
イ 裁判国において当該外国刑の執行が開始された日から二十年を経過する日までの日数を超えるとき 当該二十年を経過する日までの日数
ロ 裁判国において当該外国刑の執行が開始された日から二十年を経過する日までの日数を超えないとき 当該最終日までの日数
2 受入受刑者が二十歳に満たないときに共助刑に係る外国刑(二以上あるときは、それらのすべて)の言渡しを受けた者である場合における前項の規定の適用については、同項第二号中「二十年」とあるのは「十五年」とする。
(共助刑の刑期の計算)
第十八条 共助刑の刑期は、裁判国において受入移送犯罪に係る確定裁判において言い渡された外国刑の執行が開始された日(二以上あるときは、当該日のうち最も早い日)の午前零時に応当する日本国における時刻の属する日から起算する。
2 裁判国において受入移送犯罪に係る確定裁判において言い渡された外国刑の執行としての拘禁をしていないとされる日数及び第十三条の命令により裁判国から受入受刑者の引渡しを受けた後に当該受入受刑者を拘禁していない日数は、共助刑の刑期に算入しない。
(受入収監状の発付等)
第十九条 東京地方検察庁の検察官は、第十三条の命令があったときは、受入収監状を発しなければならない。
2 前項の受入収監状には、第十五条第二項に掲げる事項を記載し、東京地方検察庁の検察官が記名押印しなければならない。
3 第一項の受入収監状は、勾引状と同一の効力を有するものとし、東京地方検察庁の検察官の指揮によって監獄官吏が執行する。
4 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第七十三条第一項前段及び第七十四条の規定は、第一項の受入収監状の執行について準用する。この場合において、これらの規定中「被告人」とあるのは「国際受刑者移送法第二条第九号の受入受刑者」と、同法第七十三条第一項前段中「勾引状」とあり、及び同法第七十四条中「勾引状又は勾留状」とあるのは「国際受刑者移送法第十九条第一項の受入収監状」と、同法第七十三条第一項前段中「裁判所その他の場所」とあるのは「監獄」と読み替えるものとする。
(共助刑の執行指揮)
第二十条 共助刑の執行は、東京地方検察庁の検察官が指揮する。
2 前項の指揮は書面で行い、当該書面に第十五条第一項の書面の謄本及び関係書類の謄本を添付しなければならない。
(刑法等の適用)
第二十一条 共助刑の執行に関しては、第十六条第一項第一号の共助刑の執行を受ける者を懲役に処せられた者と、同項第二号の共助刑の執行を受ける者を禁錮に処せられた者と、同項第一号の共助刑を懲役と、同項第二号の共助刑を禁錮とそれぞれみなして、刑法(明治四十年法律第四十五号)第二十二条、第二十四条、第二十八条、第二十九条、第三十一条から第三十三条まで及び第三十四条第一項、刑事訴訟法第四百七十四条、第四百八十条から第四百八十二条まで、第四百八十四条から第四百八十九条まで、第五百二条から第五百四条まで及び第五百七条、監獄法(明治四十一年法律第二十八号)第一条、第三条から第七条まで、第十一条から第十六条まで、第十八条から第三十二条まで、第三十四条、第三十六条から第六十六条まで、第六十八条から第七十条まで及び第七十三条から第七十五条まで、少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)第二条第一項、第二十七条第一項、第五十六条、第五十七条及び第六十一条、少年院法(昭和二十三年法律第百六十九号)第一条、第二条、第四条から第九条まで、第十条第一項、第十条の二、第十三条、第十四条第一項、第四項及び第五項、第十四条の二から第十六条まで、第十七条第二項、第十七条の二並びに第十七条の四から第十七条の六まで並びに犯罪者予防更生法(昭和二十四年法律第百四十二号)第二条、第三条、第十二条、第十八条、第二十八条から第三十二条まで、第三十三条第一項及び第二項、第三十四条から第三十七条まで、第三十九条から第四十一条の二まで、第四十二条の二、第四十四条、第四十五条(第三項を除く。)、第四十八条の二から第五十三条まで並びに第五十五条から第六十条までの規定を適用する。この場合において、刑法第二十八条中「三分の一」とあるのは「三分の一(国際受刑者移送法第二条第七号の裁判国(以下「裁判国」という。)において同法第二条第十一号の受入移送犯罪(以下「受入移送犯罪」という。)に係る確定裁判において言い渡された同法第二条第一号の外国刑(以下「外国刑」という。)の執行としての拘禁をしたとされる日数を含む。)」と、「十年」とあるのは「十年(裁判国において受入移送犯罪に係る確定裁判において言い渡された外国刑の執行としての拘禁をしたとされる日数を含む。)」と、同法第三十二条中「刑の言渡しが確定した後」とあるのは「国際受刑者移送法第十三条の命令により裁判国から引渡しを受けた後」と、刑事訴訟法第四百七十四条中「二以上の」とあるのは「国際受刑者移送法第二条第二号の共助刑(以下「共助刑」という。)と」と、「その重いもの」とあり、及び「重い刑」とあるのは「共助刑」と、「他の刑」とあるのは「主刑」と、同法第四百八十条及び第四百八十二条中「刑の言渡をした裁判所に対応する検察庁」とあるのは「東京地方検察庁」と、同法第四百八十七条中「刑名」とあるのは「共助刑の種類」と、同法第五百二条中「裁判の執行を受ける者」とあるのは「共助刑の執行を受ける者」と、「言渡をした裁判所」とあるのは「東京地方裁判所」と、少年法第二十七条第一項中「保護処分の継続中、本人に対して有罪判決が確定した」とあり、及び同法第五十七条中「保護処分の継続中、懲役、禁錮又は拘留の刑が確定した」とあるのは「国際受刑者移送法第二条第二号の共助刑の執行を受ける者が保護処分の継続中である」とし、その他これらの規定の適用に関し必要な技術的読替えは、政令で定める。
(仮出獄の特則)
第二十二条 二十歳に満たないときに共助刑に係る外国刑(二以上あるときは、それらのすべて)の言渡しを受けた受入受刑者には、次の期間(裁判国において当該外国刑の執行としての拘禁をしたとされる日数を含む。)を経過した後、仮出獄を許すことができる。
三 五年を超え十年以下の有期の共助刑については一年八月
四 五年以下の有期の共助刑については、その刑期の三分の一
(施設の長の通告義務の特則)
第二十三条 監獄の長は、第二十条第一項の指揮があった場合において、受入受刑者が第二十一条の規定により適用される刑法第二十八条又はこの法律第二十二条に掲げる期間を既に経過しているときは、速やかに、その旨を地方更生保護委員会に通告しなければならない。
(仮出獄期間の終了の特則)
第二十四条 第二十二条に規定する受入受刑者が無期の共助刑につき仮出獄を許された後、その処分を取り消されないで十年を経過したときは、共助刑の執行を受け終わったものとする。
2 第二十二条に規定する受入受刑者が有期の共助刑につき仮出獄を許された後、その処分を取り消されないで仮出獄前に共助刑の執行を受けた期間(裁判国において受入移送犯罪に係る確定裁判において言い渡された外国刑の執行としての拘禁をしたとされる日数を含む。)と同一の期間又は共助刑の刑期を経過したときは、そのいずれか早い時期において、共助刑の執行を受け終わったものとする。ただし、共助刑の刑期が三年に満たないときは、この限りでない。
(共助刑の執行の減軽等)
第二十五条 中央更生保護審査会は、法務大臣に対し、受入受刑者に対する共助刑の執行の減軽又は免除の実施について申出をすることができる。
2 法務大臣は、前項の申出があったときは、当該受入受刑者に対して共助刑の執行の減軽又は免除をすることができる。
3 法務大臣は、前項の規定により共助刑の執行の減軽又は免除をしたときは、共助刑の執行の減軽状又は共助刑の執行の免除状を当該受入受刑者に下付しなければならない。
4 恩赦法(昭和二十二年法律第二十号)第十一号及び犯罪者予防更生法第五十四条の規定は、共助刑の執行の減軽又は免除について準用する。この場合において、恩赦法第十一条中「有罪の言渡」とあるのは「国際受刑者移送法第十三条の命令」と、「大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除又は復権」とあるのは「同法第二十五条第二項の規定による共助刑の執行の減軽又は免除」と、犯罪者予防更生法第五十四条第一項中「特赦、特定の者に対する減刑、刑の執行の免除又は特定の者に対する復権の実施について申出」とあり、及び同法第五十四条第二項中「特赦、減刑又は刑の執行の免除の申出」とあるのは「国際受刑者移送法第二十五条第一項の申出」と読み替えるものとする。
(外国刑の確定裁判の執行不能等の通知を受けた法務大臣の措置等)
第二十六条 裁判国において受入移送犯罪に係る外国刑の確定裁判(二以上あるときは、それらのすべて)が取り消された場合その他その執行ができなくなった場合において、裁判国からその旨の通知があったときは、法務大臣は、第十三条の命令を撤回し、直ちに、東京地方検察庁検事正に当該受入受刑者の釈放を命じなければならない。
2 東京地方検察庁の検察官は、前項の規定による釈放の命令があったときは、直ちに、当該受入受刑者を釈放しなければならない。
3 第一項に規定する場合を除き、裁判国から、受入移送犯罪に係る確定裁判において言い渡された外国刑について、減刑その他の事由により当該外国刑の種類又は裁判国において受入受刑者の拘禁をすることができるとされる最終日を変更する旨の通知があったときは、当該通知に基づき、第十六条及び第十七条の定めるところに従い、共助刑の種類及び期間を変更するものとする。
(裁判国に対する通知)
第二十七条 法務大臣は、受入受刑者が次の各号のいずれかに該当する場合には、速やかに、裁判国にその旨を通知しなければならない。
一 共助刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなったとき。
二 共助刑の執行が終わる前に死亡し、又は逃走したとき。