特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律
法令番号: 法律第72号
公布年月日: 平成5年6月16日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

中山間地域は農林業生産で重要な地位を占め、国土・環境保全等の多様な役割を果たしているが、地理的条件が不利で、担い手の減少や高齢化により生産活動が停滞し、耕作放棄地が増加している。また就業・所得確保の機会が乏しく、地域社会全体の活力が低下している状況にある。このため、農政審議会の「今後の中山間地域対策の方向」に基づき、各地域の創意工夫を活かしながら、農林業の活性化を図るとともに、農林地の効率的・総合的な利用や他産業の導入等により、地域における就業・所得機会の増大を図ることが急務となっている。そこで関係省庁が連携し、中山間地域について、農林業を中心とした活性化のための基盤整備を促進する措置を講ずるため、本法案を提出するものである。

参照した発言:
第126回国会 衆議院 本会議 第18号

審議経過

第126回国会

衆議院
(平成5年4月9日)
(平成5年4月14日)
(平成5年4月20日)
(平成5年4月21日)
(平成5年5月11日)
(平成5年5月12日)
(平成5年5月18日)
(平成5年5月19日)
(平成5年5月20日)
参議院
(平成5年5月26日)
(平成5年5月27日)
(平成5年6月1日)
(平成5年6月2日)
(平成5年6月3日)
(平成5年6月4日)
(平成5年6月8日)
特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律をここに公布する。
御名御璽
平成五年六月十六日
内閣総理大臣 宮澤喜一
法律第七十二号
特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律
(目的)
第一条 この法律は、特定農山村地域について、地域における創意工夫を生かしつつ、農林業その他の事業の活性化のための基盤の整備を促進するための措置を講ずることにより、地域の特性に即した農林業その他の事業の振興を図り、もって豊かで住みよい農山村の育成に寄与することを目的とする。
(定義等)
第二条 この法律において「特定農山村地域」とは、地勢等の地理的条件が悪く、農業の生産条件が不利な地域であり、かつ、土地利用の状況、農林業従事者数等からみて農林業が重要な事業である地域として、政令で定める要件に該当するものをいう。
2 この法律において「農林地等」とは、次に掲げる土地をいう。
一 耕作の目的又は主として耕作若しくは養畜の事業のための採草若しくは家畜の放牧の目的に供される土地(以下「農用地」という。)及び開発して農用地とすることが適当な土地
二 木竹の生育に供され、併せて耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧の目的に供される土地(農用地及び次号に規定する林地を除く。)
三 木竹の集団的な生育に供される土地(主として農用地又は住宅地若しくはこれに準ずる土地として使用される土地を除く。以下「林地」という。)及び林地とすることが適当な土地
四 次項第二号に規定する農林業等活性化基盤施設の用に供される土地及び開発して農林業等活性化基盤施設の用に供されることが適当な土地
五 前各号に掲げる土地のほか、これらの土地との一体的な利用に供されることが適当な土地
3 この法律において「農林業等活性化基盤整備促進事業」とは、この法律で定めるところにより、市町村が行う次に掲げる事業をいう。
一 次に掲げる農林業その他の事業の活性化を図るための措置の実施を促進する事業
イ 新規の作物の導入その他生産方式の改善による農業経営(食用きのこその他の林産物の生産を併せ行うものを含む。以下同じ。)の改善及び安定に関する措置
ロ 農用地及び森林の保全及び農林業上の利用の確保に関する措置
ハ 需要の開拓、新商品の開発その他の地域特産物の生産及び販売に関する措置
ニ 都市住民の農林業の体験その他の都市等との地域間交流に関する措置
ホ その他地域における就業機会の増大に寄与する措置
二 前号に掲げる措置を実施するために必要な農業用施設、林業用施設その他主務省令で定める施設(以下「農林業等活性化基盤施設」という。)の整備を促進する事業
三 農林地(農用地及び林地をいう。以下同じ。)の農林業上の効率的かつ総合的な利用の確保及び農林業等活性化基盤施設の円滑な整備の促進を図るため、農林地等を対象として、所有権の移転又は地上権、賃借権若しくは使用貸借による権利の設定若しくは移転(以下「所有権の移転等」という。)を促進する事業(以下「農林地所有権移転等促進事業」という。)
四 農林業その他の事業を担うべき人材の育成及び確保その他農林業その他の事業の活性化を促進するために必要な事業
4 主務大臣は、第一項の政令で定める要件に該当する特定農山村地域を公示するものとする。
5 主務大臣は、第三項第二号の主務省令を定めようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長と協議するものとする。
(特定農山村地域における農林業等活性化基盤整備促進事業の原則)
第三条 特定農山村地域における農林業等活性化基盤整備促進事業は、地域の農林業その他の事業に従事する者又はその組織する団体が地域の特性に即した農林業その他の事業の振興を図るためにする自主的な努力を助長し、かつ、地域住民の生活の向上が図られること並びに農林業の振興並びに農用地及び森林の保全を通じて国土及び環境の保全等の機能が十分発揮されることを旨として実施するものとする。
(農林業等活性化基盤整備計画)
第四条 その全部又は一部の区域が特定農山村地域である市町村は、当該特定農山村地域における農林業その他の事業の活性化のための基盤の整備に関する計画(以下「基盤整備計画」という。)を作成することができる。
2 基盤整備計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 農林業その他の事業の活性化の目標
二 農林業等活性化基盤整備促進事業の実施に関する事項
三 農林業生産の基盤の整備及び開発並びに産業の振興を図るために必要な道路その他の公共施設の整備であって、農林業等活性化基盤整備促進事業に関連して実施されるものに関する事項
四 その他主務省令で定める事項
3 前項第二号に掲げる事項のうち農林地所有権移転等促進事業に係るものにおいては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 農林地所有権移転等促進事業の実施に関する基本方針
二 移転される所有権の移転の対価の算定基準及び支払の方法
三 設定され、又は移転される地上権、賃借権又は使用貸借による権利の存続期間又は残存期間に関する基準並びに当該設定され、又は移転を受ける権利が地上権又は賃借権である場合における地代又は借賃の算定基準及び支払の方法
四 その他農林水産省令で定める事項
4 市町村は、前項第二号及び第三号に規定する算定基準を定めようとする場合には、適正な地価の形成が図られるよう配慮するものとする。
5 基盤整備計画は、過疎地域活性化計画、山村振興計画、農業振興地域整備計画その他法律の規定による地域振興に関する計画、地域森林計画その他法律の規定による森林の整備に関する計画及び都市計画との調和が保たれ、かつ、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二条第五項の基本構想に即したものでなければならない。
6 市町村、基盤整備計画を作成し、又はこれを変更しようとするときは、主務省令で定めるところにより、第二項第二号に掲げる事項について、都道府県知事の承認を受けなければならない。
7 市町村、基盤整備計画を作成し、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(農業経営の改善及び安定のための計画の認定)
第五条 基盤整備計画を作成した市町村(以下「計画作成市町村」という。)は、農業者の組織する団体から、農林水産省令で定めるところにより、その作成した新規の作物の導入その他生産方式の改善による当該団体の構成員の農業経営の改善及び安定を図るための措置の実施並びに当該措置の実施に必要な施設(農林水産省令で定めるものに限る。以下「特定施設」という。)の整備に関する計画が適当である旨の認定の申請があった場合において、その計画が、基盤整備計画に即したものであること、その計画に従って農業経営の改善及び安定を図ろうとする構成員(以下「参加構成員」という。)の農業経営の改善及び安定を図る上で有効かつ適切であることその他農林水産省令で定める基準に適合するものであると認めるときは、その計画が適当である旨の認定をするものとする。
(資金の確保)
第六条 国及び都道府県は、前条の認定を受けた団体及びその参加構成員が当該認定に係る計画に従って同条の措置を実施するのに必要な資金の確保に努めるものとする。
(農林業等活性化基盤施設設置事業計画の認定)
第七条 計画作成市町村は、農林業等活性化基盤施設(特定施設を除く。)の設置に係る事業を行おうとする者から、主務省令で定めるところにより、その作成したその事業に関する計画(以下「事業計画」という。)が適当である旨の認定の申請があった場合において、その事業計画が基盤整備計画に即したものであることその他主務省令で定める基準に適合するものであると認めるときは、その事業計画が適当である旨の認定をするものとする。
(所有権移転等促進計画の作成等)
第八条 計画作成市町村は、第五条の認定を受けた団体若しくはその参加構成員又は前条の認定を受けた者から第五条の認定に係る計画又は前条の認定に係る事業計画に従って農林地等について所有権の移転等を受けたい旨の申出があった場合において必要があるときその他農林地所有権移転等促進事業を行おうとするときは、農林水産省令で定めるところにより、農業委員会の決定を経て、所有権移転等促進計画を定めるものとする。
2 所有権移転等促進計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 所有権の移転等を受ける者の氏名又は名称及び住所
二 前号に規定する者が所有権の移転等を受ける土地の所在、地番、地目及び面積
三 第一号に規定する者に前号に規定する土地について所有権の移転等を行う者の氏名又は名称及び住所
四 第一号に規定する者が移転を受ける所有権の移転の後における土地の利用目的並びに当該所有権の移転の時期並びに移転の対価及びその支払の方法
五 第一号に規定する者が設定又は移転を受ける地上権、賃借権又は使用賃借による権利の種類、内容(土地の利用目的を含む。)、始期又は移転の時期、存続期間又は残存期間並びに当該設定又は移転を受ける権利が地上権又は賃借権である場合にあっては地代又は借賃及びその支払の方法
六 その他農林水産省令で定める事項
3 所有権移転等促進計画は、次に掲げる要件に該当するものでなければならない。
一 所有権移転等促進計画の内容が基盤整備計画に適合するものであること。
二 所有権移転等促進計画において、次に掲げる所有権の移転等のいずれかが定められていること。
イ 農林地の農林業上の効率的かつ総合的な利用を確保するため行う農林地についての地目変換(農用地間又は林地間における地目変換を除く。)を伴う所有権の移転等(ロに該当するものを除く。)
ロ 農林業等活性化基盤施設(特定施設を除く。)の整備を図るため行う農林地等についての所有権の移転等及びこれと併せ行う当該所有権の移転等を円滑に推進するために必要な農林地についての所有権の移転等
三 前項第二号に規定する土地ごとに、同項第一号に規定する者並びに当該土地について所有権、地上権、永小作権、質権、賃借権、使用貸借による権利又はその他の使用及び収益を目的とする権利を有する者のすべての同意が得られていること。
四 前項第四号又は第五号に規定する土地の利用目的が、当該土地に係る農業振興地域整備計画、都市計画その他の土地利用に関する計画に適合すると認められ、かつ、当該土地の位置及び規模並びに周辺の土地利用の状況からみて、当該土地を当該利用目的に供することが適当であると認められること。
五 前項第一号に規定する者が、次に掲げる要件を備えていること。
イ 前項第二号に規定する土地の全部又は一部が農用地であり、かつ、当該農用地に係る同項第四号又は第五号に規定する土地の利用目的が農用地の用に供するためのものである場合にあっては、農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)第三条第二項の規定により同条第一項の許可をすることができない者に該当しないこと。
ロ 前項第四号又は第五号に規定する土地の利用目的が農林業等活性化基盤施設の用に供するためのものである場合にあっては、第五条の認定を受けた団体若しくはその参加構成員(当該認定に係る計画に従って特定施設を設置する者に限る。)、前条の認定を受けた者又は地方公共団体その他の基盤整備計画に即して農林業等活性化基盤施設(特定施設を除く。)を適正かつ確実に整備することができると認められる者として主務省令で定める者であること。
ハ イ及びロ以外の場合にあっては、所有権の移転等が行われた後において、前項第二号に規定する土地を同項第四号又は第五号に規定する土地の利用目的に即して適正かつ確実に利用することができると認められる者であること。
4 計画作成市町村は、第一項の規定により所有権移転等促進計画を定めようとする場合において、当該所有権移転等促進計画が次に掲げる要件のいずれかに該当するときは、当該所有権移転等促進計画について、農林水産省令、建設省令で定めるところにより、あらかじめ、都道府県知事の承認を受けなければならない。
一 第二項第二号に規定する土地の全部又は一部が農用地(当該農用地に係る所有権の移転等の内容が農地法第五条第一項本文に規定する場合に該当するものに限る。)であること。
二 第二項第二号に規定する土地の全部又は一部が、市街化調整区域(都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第七条第一項の規定による市街化調整区域をいう。)内にあり、かつ、所有権の移転等が行われた後において、農林業等活性化基盤施設の用に供されることとなること(同法第二十九条又は同法第四十三条第一項の規定による許可を要する場合に限る。)
5 都道府県知事は、前項第一号に掲げる要件に該当する所有権移転等促進計画について同項の承認をしようとするときは、あらかじめ、都道府県農業会議の意見を聴かなければならない。
(所有権移転等促進計画の公告)
第九条 計画作成市町村は、所有権移転等促進計画を定めたときは、農林水産省令、建設省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を公告しなければならない。
2 計画作成市町村は、前項の規定による公告をしようとするときは、農林水産省令で定めるところにより、あらかじめ、その旨を都道府県知事に通知しなければならない。ただし、前条第四項の承認を受けた所有権移転等促進計画について前項の規定による公告を行う場合については、この限りではない。
(公告の効果)
第十条 前条第一項の規定による公告があったときは、その公告があった所有権移転等促進計画の定めるところによって所有権が移転し、又は地上権、賃借権若しくは使用貸借による権利が設定され、若しくは移転する。
(登記の特例)
第十一条 第九条第一項の規定による公告があった所有権移転等促進計画に係る土地の登記については、政令で、不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)の特例を定めることができる。
(森林組合法の特例)
第十二条 市町村は、基盤整備計画において第四条第二項第二号に掲げる事項を定めるに当たり、特定農山村地域における農用地の保全のため必要があると認めるときは、同号に掲げる事項に係る農用地及び森林の保全及び農林業上の利用の確保に関する措置として、森林組合が特定農山村地域において委託を受けて農作業を行う事業を実施する旨を、当該森林組合の同意を得て、定めることができる。
2 当該森林組合は、当該市町村が第四条第六項の承認を受けたときは、森林組合法(昭和五十三年法律第三十六号)第九条第一項、第二項及び第七項に規定する事業のほか、前項に規定する事業を実施することができる。
(農業協同組合及び森林組合の連携)
第十三条 基盤整備計画に係る特定農山村地域(以下「対象地域」という。)の全部又は一部をその地区の全部又は一部とする農業協同組合及び森林組合は、当該基盤整備計画の円滑な実施が促進されるよう、農作業又は森林施業の受託等による農用地及び森林の保全、地域特産物の販売又は加工等に関し、相互に連携を図りながら協力するように努めるものとする。
(土地改良法の特例)
第十四条 土地改良区が、土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)第五十二条第一項の規定により、同法第二条第二項に規定する土地改良事業の施行に係る地域(対象地域内の区域に限る。以下「対象施行地域」という。)につき、換地計画を定める場合には、対象施行地域内で農業と併せて林業を営む者の林業経営上必要な施設であって、その者の経営の安定を図り、もって農業構造の改善を図るために必要で欠くことができない施設として基盤整備計画に定められたもの(政令で定める要件に適合するものに限る。)を同法第五十三条の三第一項第二号ロに掲げる施設とみなして、同法の規定を適用する。
2 前項の規定は、次の各号に掲げる者が、それぞれ当該各号に掲げる規定により、対象施行地域につき換地計画を定める場合について準用する。
一 農林水産大臣又は都道府県知事 土地改良法第八十九条の二第一項
二 市町村 土地改良法第九十六条の四において準用する同法第五十二条第一項
(課税の特例)
第十五条 対象地域内において、第七条の認定を受けた者(地方公共団体の出資又は拠出に係る法人に限る。)が当該認定に係る事業計画に従って設置した農林業等活性化基盤施設については、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)で定めるところにより、特別償却をすることができる。
(地方税の不均一課税に伴う措置)
第十六条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第六条第二項の規定により、自治省令で定める地方公共団体が、対象地域内において第七条の認定に係る事業計画に従って農林業等活性化基盤施設のうち自治省令で定めるものを設置した者(自治省令で定める要件に該当する者に限る。)について、当該施設の用に供する家屋若しくはこれらの敷地である土地の取得に対する不動産取得税又は当該施設の用に供する家屋若しくは構築物若しくはその敷地である土地に対する固定資産税に係る不均一の課税をした場合において、これらの措置が自治省令で定める場合に該当すると認められるときは、地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)第十四条の規定による当該地方公共団体の各年度における基準財政収入額は、同条の規定にかかわらず、当該地方公共団体の当該各年度分の減収額(固定資産税に関するこれらの措置による減収額にあっては、これらの措置がなされた最初の年度以降三箇年度におけるものに限る。)のうち自治省令で定めるところにより算定した額を同条の規定による当該地方公共団体の当該各年度(これらの措置が自治省令で定める日以後において行われたときは、当該減収額について当該各年度の翌年度)における基準財政収入額となるべき額から控除した額とする。
(国等の援助)
第十七条 国及び地方公共団体は、基盤整備計画の達成に資するため、基盤整備計画の実施に必要な事業を行う者等に対する助言、指導その他の援助の実施に努めるものとする。
(地方債の特例等)
第十八条 計画作成市町村が、第七条の認定を受けた者のうち自治省令で定めるものが当該認定に係る事業計画に従って行おうとする農林業等活性化基盤施設のうち自治省令で定めるものの設置又は当該施設の用に供する土地の取得若しくは造成に係る経費について出資、補助その他の助成を行おうとする場合において、当該助成に要する経費であって地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)第五条第一項各号に規定する経費に該当しないものは、同項第五号に規定する経費とみなす。
2 地方公共団体が基盤整備計画を達成するために行う事業に要する経費に充てるために起こす地方債については、法令の範囲内において、資金事情及び当該地方公共団体の財政状況が許す限り、特別の配慮をするものとする。
(農業生産の基盤及び林業生産の基盤の一体的な整備及び開発の促進)
第十九条 国及び地方公共団体は、農業生産の基盤及び林業生産の基盤の整備及び開発に関する施策を行うに当たっては、対象地域内において土地改良事業及び造林又は林道の開設の事業の総合的な施行その他の農業生産の基盤及び林業生産の基盤の一体的な整備及び開発が促進されるよう配慮するものとする。
(農地法等による処分についての配慮)
第二十条 国の行政機関の長又は都道府県知事は、対象地域内の土地を基盤整備計画に定める農林業等活性化基盤施設の用に供するため、農地法その他の法律の規定による許可その他の処分を求められたときは、当該施設の設置の促進が図られるよう適切な配慮をするものとする。
(国有林野の活用等)
第二十一条 国は、基盤整備計画の実施を促進するため、国有林野の活用について適切な配慮をするものとする。
2 計画作成市町村は、基盤整備計画の達成のため必要があるときは、関係営林局長又は営林支局長に対し、技術的援助その他の必要な協力を求めることができる。
(生活環境の整備)
第二十二条 国及び地方公共団体は、基盤整備計画の実施の促進に併せて、対象地域における良好な生活環境を確保するための施設の整備を促進するように努めるものとする。
(主務大臣等)
第二十三条 この法律における主務大臣は、国土庁長官、農林水産大臣、通商産業大臣、建設大臣及び自治大臣とする。
2 この法律における主務省令は、主務大臣(国土庁長官にあっては、内閣総理大臣)の発する命令とする。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(検討)
第二条 政府は、特定農山村地域について、この法律の施行後における農林業従事者その他の地域住民の生活の状況、農林業の振興並びに農用地及び森林の保全を通じた国土及び環境の保全等の状況等を勘案し、豊かで住みよい農山村の育成を図るために必要な方途について検討を加え、必要に応じ所要の措置を講ずるものとする。
(農業委員会等に関する法律の一部改正)
第三条 農業委員会等に関する法律(昭和二十六年法律第八十七号)の一部を次のように改正する。
第六条第一項第一号中「(昭和五十五年法律第六十五号)」の下に「及び特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(平成五年法律第七十二号)」を加える。
(農地法の一部改正)
第四条 農地法の一部を次のように改正する。
第三条第一項第四号の三の次に次の一号を加える。
四の四 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(平成五年法律第七十二号)第九条第一項の規定による公告があつた所有権移転等促進計画の定めるところによつて同法第二条第三項第三号の権利が設定され、又は移転される場合
第四条第一項第三号の二の次に次の一号を加える。
三の三 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律第九条第一項の規定による公告があつた所有権移転等促進計画の定めるところによつて設定され、又は移転された同法第二条第三項第三号の権利に係る農地を当該所有権移転等促進計画に定める利用目的に供する場合
第五条第一項第一号の二の次に次の一号を加える。
一の三 農地又は採草放牧地を特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律第九条第一項の規定による公告があつた所有権移転等促進計画に定める利用目的に供するため当該所有権移転等促進計画の定めるところによつて同法第二条第三項第三号の権利が設定され、又は移転される場合
(都市計画法の一部改正)
第五条 都市計画法の一部を次のように改正する。
第三十四条第四号の次に次の一号を加える。
四の二 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(平成五年法律第七十二号)第九条第一項の規定による公告があつた所有権移転等促進計画の定めるところによつて設定され、又は移転された同法第二条第三項第三号の権利に係る土地において当該所有権移転等促進計画に定める利用目的(同項第二号に規定する農林業等活性化基盤施設である建築物の建築の用に供するためのものに限る。)に従つて行う開発行為
(農業振興地域の整備に関する法律の一部改正)
第六条 農業振興地域の整備に関する法律(昭和四十四年法律第五十八号)の一部を次のように改正する。
第十五条の十五第一項第三号の二の次に次の一号を加える。
三の三 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(平成五年法律第七十二号)第九条第一項の規定による公告があつた所有権移転等促進計画の定めるところによつて設定され、又は移転された同法第二条第三項第三号の権利に係る土地を当該所有権移転等促進計画に定める利用目的に供するために行う行為
(地方税法の一部改正)
第七条 地方税法の一部を次のように改正する。
第五百八十六条第二項第一号の十二の次に次の一号を加える。
一の十三 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(平成五年法律第七十二号)第四条第一項の規定により作成された基盤整備計画に係る同法第二条第一項に規定する特定農山村地域において、同法第七条の規定による認定を受けた者で政令で定めるものが当該認定に係る同条の事業計画に従つて整備する同法第二条第三項第二号に規定する農林業等活性化基盤施設の用に供する家屋で政令で定めるものの敷地の用に供する土地
附則第十一条第二項第一号中「及び次項」を「から第四項まで」に改め、同条第十七項を同条第十八項とし、同条第四項から第十六項までを一項ずつ繰り下げ、同条第三項中「前項」を「第二項及び前項」に改め、同項を同条第四項とし、同条第二項の次に次の一項を加える。
3 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律第九条第一項の規定による公告があつた所有権移転等促進計画に基づき農業振興地域の整備に関する法律第六条第一項に規定する農業振興地域内にある土地(特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律第二条第二項第一号に規定する農用地に限る。)を農業を営む者が同号に規定する農用地の用に供する目的で取得した場合における当該土地の取得に対して課する不動産取得税の課税標準の算定については、当該取得が平成七年三月三十一日までに行われたときに限り、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める額を価格から控除するものとする。
一 当該土地の取得が農用地区域内にある土地以外の土地の取得である場合 当該土地の価格の四分の一に相当する額
二 当該土地の取得が農用地区域内にある土地の取得である場合 当該土地の価格の三分の一に相当する額
附則第十一条の四第一項中「若しくは第三項」を「から第四項まで」に改める。
(国土庁設置法の一部改正)
第八条 国土庁設置法(昭和四十九年法律第九十八号)の一部を次のように改正する。
第四条中第二十五号を第二十六号とし、第二十四号を第二十五号とし、第二十三号を第二十四号とし、第二十二号の次に次の一号を加える。
二十三 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(平成五年法律第七十二号)の施行に関する事務を処理すること。
第七条第一項中「第四条第二十三号」を「第四条第二十四号」に改める。
(農林水産省設置法の一部改正)
第九条 農林水産省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。
第四条第二十七号の四の次に次の一号を加える。
二十七の五 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(平成五年法律第七十二号)の施行に関する事務で所掌に属するものを処理すること。
第二十九条中「第二十号まで」の下に「、第二十七号の五」を加える。
(通商産業省設置法の一部改正)
第十条 通商産業省設置法(昭和二十七年法律第二百七十五号)の一部を次のように改正する。
第四条第三十九号の四の次に次の一号を加える。
三十九の五 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(平成五年法律第七十二号)の施行に関すること。
(建設省設置法の一部改正)
第十一条 建設省設置法(昭和二十三年法律第百十三号)の一部を次のように改正する。
第三条第十一号中「及び地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再配置の促進に関する法律(平成四年法律第七十六号)」を「、地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再配置の促進に関する法律(平成四年法律第七十六号)及び特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(平成五年法律第七十二号)」に改める。
(自治省設置法の一部改正)
第十二条 自治省設置法(昭和二十七年法律第二百六十一号)の一部を次のように改正する。
第四条第三号の八の次に次の一号を加える。
三の九 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(平成五年法律第七十二号)の施行に関する事務を行うこと。
内閣総理大臣 宮澤喜一
大蔵大臣 林義郎
農林水産大臣 田名部匡省
通商産業大臣 森喜朗
建設大臣 中村喜四郎
自治大臣 村田敬次郎
特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律をここに公布する。
御名御璽
平成五年六月十六日
内閣総理大臣 宮沢喜一
法律第七十二号
特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律
(目的)
第一条 この法律は、特定農山村地域について、地域における創意工夫を生かしつつ、農林業その他の事業の活性化のための基盤の整備を促進するための措置を講ずることにより、地域の特性に即した農林業その他の事業の振興を図り、もって豊かで住みよい農山村の育成に寄与することを目的とする。
(定義等)
第二条 この法律において「特定農山村地域」とは、地勢等の地理的条件が悪く、農業の生産条件が不利な地域であり、かつ、土地利用の状況、農林業従事者数等からみて農林業が重要な事業である地域として、政令で定める要件に該当するものをいう。
2 この法律において「農林地等」とは、次に掲げる土地をいう。
一 耕作の目的又は主として耕作若しくは養畜の事業のための採草若しくは家畜の放牧の目的に供される土地(以下「農用地」という。)及び開発して農用地とすることが適当な土地
二 木竹の生育に供され、併せて耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧の目的に供される土地(農用地及び次号に規定する林地を除く。)
三 木竹の集団的な生育に供される土地(主として農用地又は住宅地若しくはこれに準ずる土地として使用される土地を除く。以下「林地」という。)及び林地とすることが適当な土地
四 次項第二号に規定する農林業等活性化基盤施設の用に供される土地及び開発して農林業等活性化基盤施設の用に供されることが適当な土地
五 前各号に掲げる土地のほか、これらの土地との一体的な利用に供されることが適当な土地
3 この法律において「農林業等活性化基盤整備促進事業」とは、この法律で定めるところにより、市町村が行う次に掲げる事業をいう。
一 次に掲げる農林業その他の事業の活性化を図るための措置の実施を促進する事業
イ 新規の作物の導入その他生産方式の改善による農業経営(食用きのこその他の林産物の生産を併せ行うものを含む。以下同じ。)の改善及び安定に関する措置
ロ 農用地及び森林の保全及び農林業上の利用の確保に関する措置
ハ 需要の開拓、新商品の開発その他の地域特産物の生産及び販売に関する措置
ニ 都市住民の農林業の体験その他の都市等との地域間交流に関する措置
ホ その他地域における就業機会の増大に寄与する措置
二 前号に掲げる措置を実施するために必要な農業用施設、林業用施設その他主務省令で定める施設(以下「農林業等活性化基盤施設」という。)の整備を促進する事業
三 農林地(農用地及び林地をいう。以下同じ。)の農林業上の効率的かつ総合的な利用の確保及び農林業等活性化基盤施設の円滑な整備の促進を図るため、農林地等を対象として、所有権の移転又は地上権、賃借権若しくは使用貸借による権利の設定若しくは移転(以下「所有権の移転等」という。)を促進する事業(以下「農林地所有権移転等促進事業」という。)
四 農林業その他の事業を担うべき人材の育成及び確保その他農林業その他の事業の活性化を促進するために必要な事業
4 主務大臣は、第一項の政令で定める要件に該当する特定農山村地域を公示するものとする。
5 主務大臣は、第三項第二号の主務省令を定めようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長と協議するものとする。
(特定農山村地域における農林業等活性化基盤整備促進事業の原則)
第三条 特定農山村地域における農林業等活性化基盤整備促進事業は、地域の農林業その他の事業に従事する者又はその組織する団体が地域の特性に即した農林業その他の事業の振興を図るためにする自主的な努力を助長し、かつ、地域住民の生活の向上が図られること並びに農林業の振興並びに農用地及び森林の保全を通じて国土及び環境の保全等の機能が十分発揮されることを旨として実施するものとする。
(農林業等活性化基盤整備計画)
第四条 その全部又は一部の区域が特定農山村地域である市町村は、当該特定農山村地域における農林業その他の事業の活性化のための基盤の整備に関する計画(以下「基盤整備計画」という。)を作成することができる。
2 基盤整備計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 農林業その他の事業の活性化の目標
二 農林業等活性化基盤整備促進事業の実施に関する事項
三 農林業生産の基盤の整備及び開発並びに産業の振興を図るために必要な道路その他の公共施設の整備であって、農林業等活性化基盤整備促進事業に関連して実施されるものに関する事項
四 その他主務省令で定める事項
3 前項第二号に掲げる事項のうち農林地所有権移転等促進事業に係るものにおいては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 農林地所有権移転等促進事業の実施に関する基本方針
二 移転される所有権の移転の対価の算定基準及び支払の方法
三 設定され、又は移転される地上権、賃借権又は使用貸借による権利の存続期間又は残存期間に関する基準並びに当該設定され、又は移転を受ける権利が地上権又は賃借権である場合における地代又は借賃の算定基準及び支払の方法
四 その他農林水産省令で定める事項
4 市町村は、前項第二号及び第三号に規定する算定基準を定めようとする場合には、適正な地価の形成が図られるよう配慮するものとする。
5 基盤整備計画は、過疎地域活性化計画、山村振興計画、農業振興地域整備計画その他法律の規定による地域振興に関する計画、地域森林計画その他法律の規定による森林の整備に関する計画及び都市計画との調和が保たれ、かつ、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二条第五項の基本構想に即したものでなければならない。
6 市町村、基盤整備計画を作成し、又はこれを変更しようとするときは、主務省令で定めるところにより、第二項第二号に掲げる事項について、都道府県知事の承認を受けなければならない。
7 市町村、基盤整備計画を作成し、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(農業経営の改善及び安定のための計画の認定)
第五条 基盤整備計画を作成した市町村(以下「計画作成市町村」という。)は、農業者の組織する団体から、農林水産省令で定めるところにより、その作成した新規の作物の導入その他生産方式の改善による当該団体の構成員の農業経営の改善及び安定を図るための措置の実施並びに当該措置の実施に必要な施設(農林水産省令で定めるものに限る。以下「特定施設」という。)の整備に関する計画が適当である旨の認定の申請があった場合において、その計画が、基盤整備計画に即したものであること、その計画に従って農業経営の改善及び安定を図ろうとする構成員(以下「参加構成員」という。)の農業経営の改善及び安定を図る上で有効かつ適切であることその他農林水産省令で定める基準に適合するものであると認めるときは、その計画が適当である旨の認定をするものとする。
(資金の確保)
第六条 国及び都道府県は、前条の認定を受けた団体及びその参加構成員が当該認定に係る計画に従って同条の措置を実施するのに必要な資金の確保に努めるものとする。
(農林業等活性化基盤施設設置事業計画の認定)
第七条 計画作成市町村は、農林業等活性化基盤施設(特定施設を除く。)の設置に係る事業を行おうとする者から、主務省令で定めるところにより、その作成したその事業に関する計画(以下「事業計画」という。)が適当である旨の認定の申請があった場合において、その事業計画が基盤整備計画に即したものであることその他主務省令で定める基準に適合するものであると認めるときは、その事業計画が適当である旨の認定をするものとする。
(所有権移転等促進計画の作成等)
第八条 計画作成市町村は、第五条の認定を受けた団体若しくはその参加構成員又は前条の認定を受けた者から第五条の認定に係る計画又は前条の認定に係る事業計画に従って農林地等について所有権の移転等を受けたい旨の申出があった場合において必要があるときその他農林地所有権移転等促進事業を行おうとするときは、農林水産省令で定めるところにより、農業委員会の決定を経て、所有権移転等促進計画を定めるものとする。
2 所有権移転等促進計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 所有権の移転等を受ける者の氏名又は名称及び住所
二 前号に規定する者が所有権の移転等を受ける土地の所在、地番、地目及び面積
三 第一号に規定する者に前号に規定する土地について所有権の移転等を行う者の氏名又は名称及び住所
四 第一号に規定する者が移転を受ける所有権の移転の後における土地の利用目的並びに当該所有権の移転の時期並びに移転の対価及びその支払の方法
五 第一号に規定する者が設定又は移転を受ける地上権、賃借権又は使用賃借による権利の種類、内容(土地の利用目的を含む。)、始期又は移転の時期、存続期間又は残存期間並びに当該設定又は移転を受ける権利が地上権又は賃借権である場合にあっては地代又は借賃及びその支払の方法
六 その他農林水産省令で定める事項
3 所有権移転等促進計画は、次に掲げる要件に該当するものでなければならない。
一 所有権移転等促進計画の内容が基盤整備計画に適合するものであること。
二 所有権移転等促進計画において、次に掲げる所有権の移転等のいずれかが定められていること。
イ 農林地の農林業上の効率的かつ総合的な利用を確保するため行う農林地についての地目変換(農用地間又は林地間における地目変換を除く。)を伴う所有権の移転等(ロに該当するものを除く。)
ロ 農林業等活性化基盤施設(特定施設を除く。)の整備を図るため行う農林地等についての所有権の移転等及びこれと併せ行う当該所有権の移転等を円滑に推進するために必要な農林地についての所有権の移転等
三 前項第二号に規定する土地ごとに、同項第一号に規定する者並びに当該土地について所有権、地上権、永小作権、質権、賃借権、使用貸借による権利又はその他の使用及び収益を目的とする権利を有する者のすべての同意が得られていること。
四 前項第四号又は第五号に規定する土地の利用目的が、当該土地に係る農業振興地域整備計画、都市計画その他の土地利用に関する計画に適合すると認められ、かつ、当該土地の位置及び規模並びに周辺の土地利用の状況からみて、当該土地を当該利用目的に供することが適当であると認められること。
五 前項第一号に規定する者が、次に掲げる要件を備えていること。
イ 前項第二号に規定する土地の全部又は一部が農用地であり、かつ、当該農用地に係る同項第四号又は第五号に規定する土地の利用目的が農用地の用に供するためのものである場合にあっては、農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)第三条第二項の規定により同条第一項の許可をすることができない者に該当しないこと。
ロ 前項第四号又は第五号に規定する土地の利用目的が農林業等活性化基盤施設の用に供するためのものである場合にあっては、第五条の認定を受けた団体若しくはその参加構成員(当該認定に係る計画に従って特定施設を設置する者に限る。)、前条の認定を受けた者又は地方公共団体その他の基盤整備計画に即して農林業等活性化基盤施設(特定施設を除く。)を適正かつ確実に整備することができると認められる者として主務省令で定める者であること。
ハ イ及びロ以外の場合にあっては、所有権の移転等が行われた後において、前項第二号に規定する土地を同項第四号又は第五号に規定する土地の利用目的に即して適正かつ確実に利用することができると認められる者であること。
4 計画作成市町村は、第一項の規定により所有権移転等促進計画を定めようとする場合において、当該所有権移転等促進計画が次に掲げる要件のいずれかに該当するときは、当該所有権移転等促進計画について、農林水産省令、建設省令で定めるところにより、あらかじめ、都道府県知事の承認を受けなければならない。
一 第二項第二号に規定する土地の全部又は一部が農用地(当該農用地に係る所有権の移転等の内容が農地法第五条第一項本文に規定する場合に該当するものに限る。)であること。
二 第二項第二号に規定する土地の全部又は一部が、市街化調整区域(都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第七条第一項の規定による市街化調整区域をいう。)内にあり、かつ、所有権の移転等が行われた後において、農林業等活性化基盤施設の用に供されることとなること(同法第二十九条又は同法第四十三条第一項の規定による許可を要する場合に限る。)
5 都道府県知事は、前項第一号に掲げる要件に該当する所有権移転等促進計画について同項の承認をしようとするときは、あらかじめ、都道府県農業会議の意見を聴かなければならない。
(所有権移転等促進計画の公告)
第九条 計画作成市町村は、所有権移転等促進計画を定めたときは、農林水産省令、建設省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を公告しなければならない。
2 計画作成市町村は、前項の規定による公告をしようとするときは、農林水産省令で定めるところにより、あらかじめ、その旨を都道府県知事に通知しなければならない。ただし、前条第四項の承認を受けた所有権移転等促進計画について前項の規定による公告を行う場合については、この限りではない。
(公告の効果)
第十条 前条第一項の規定による公告があったときは、その公告があった所有権移転等促進計画の定めるところによって所有権が移転し、又は地上権、賃借権若しくは使用貸借による権利が設定され、若しくは移転する。
(登記の特例)
第十一条 第九条第一項の規定による公告があった所有権移転等促進計画に係る土地の登記については、政令で、不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)の特例を定めることができる。
(森林組合法の特例)
第十二条 市町村は、基盤整備計画において第四条第二項第二号に掲げる事項を定めるに当たり、特定農山村地域における農用地の保全のため必要があると認めるときは、同号に掲げる事項に係る農用地及び森林の保全及び農林業上の利用の確保に関する措置として、森林組合が特定農山村地域において委託を受けて農作業を行う事業を実施する旨を、当該森林組合の同意を得て、定めることができる。
2 当該森林組合は、当該市町村が第四条第六項の承認を受けたときは、森林組合法(昭和五十三年法律第三十六号)第九条第一項、第二項及び第七項に規定する事業のほか、前項に規定する事業を実施することができる。
(農業協同組合及び森林組合の連携)
第十三条 基盤整備計画に係る特定農山村地域(以下「対象地域」という。)の全部又は一部をその地区の全部又は一部とする農業協同組合及び森林組合は、当該基盤整備計画の円滑な実施が促進されるよう、農作業又は森林施業の受託等による農用地及び森林の保全、地域特産物の販売又は加工等に関し、相互に連携を図りながら協力するように努めるものとする。
(土地改良法の特例)
第十四条 土地改良区が、土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)第五十二条第一項の規定により、同法第二条第二項に規定する土地改良事業の施行に係る地域(対象地域内の区域に限る。以下「対象施行地域」という。)につき、換地計画を定める場合には、対象施行地域内で農業と併せて林業を営む者の林業経営上必要な施設であって、その者の経営の安定を図り、もって農業構造の改善を図るために必要で欠くことができない施設として基盤整備計画に定められたもの(政令で定める要件に適合するものに限る。)を同法第五十三条の三第一項第二号ロに掲げる施設とみなして、同法の規定を適用する。
2 前項の規定は、次の各号に掲げる者が、それぞれ当該各号に掲げる規定により、対象施行地域につき換地計画を定める場合について準用する。
一 農林水産大臣又は都道府県知事 土地改良法第八十九条の二第一項
二 市町村 土地改良法第九十六条の四において準用する同法第五十二条第一項
(課税の特例)
第十五条 対象地域内において、第七条の認定を受けた者(地方公共団体の出資又は拠出に係る法人に限る。)が当該認定に係る事業計画に従って設置した農林業等活性化基盤施設については、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)で定めるところにより、特別償却をすることができる。
(地方税の不均一課税に伴う措置)
第十六条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第六条第二項の規定により、自治省令で定める地方公共団体が、対象地域内において第七条の認定に係る事業計画に従って農林業等活性化基盤施設のうち自治省令で定めるものを設置した者(自治省令で定める要件に該当する者に限る。)について、当該施設の用に供する家屋若しくはこれらの敷地である土地の取得に対する不動産取得税又は当該施設の用に供する家屋若しくは構築物若しくはその敷地である土地に対する固定資産税に係る不均一の課税をした場合において、これらの措置が自治省令で定める場合に該当すると認められるときは、地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)第十四条の規定による当該地方公共団体の各年度における基準財政収入額は、同条の規定にかかわらず、当該地方公共団体の当該各年度分の減収額(固定資産税に関するこれらの措置による減収額にあっては、これらの措置がなされた最初の年度以降三箇年度におけるものに限る。)のうち自治省令で定めるところにより算定した額を同条の規定による当該地方公共団体の当該各年度(これらの措置が自治省令で定める日以後において行われたときは、当該減収額について当該各年度の翌年度)における基準財政収入額となるべき額から控除した額とする。
(国等の援助)
第十七条 国及び地方公共団体は、基盤整備計画の達成に資するため、基盤整備計画の実施に必要な事業を行う者等に対する助言、指導その他の援助の実施に努めるものとする。
(地方債の特例等)
第十八条 計画作成市町村が、第七条の認定を受けた者のうち自治省令で定めるものが当該認定に係る事業計画に従って行おうとする農林業等活性化基盤施設のうち自治省令で定めるものの設置又は当該施設の用に供する土地の取得若しくは造成に係る経費について出資、補助その他の助成を行おうとする場合において、当該助成に要する経費であって地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)第五条第一項各号に規定する経費に該当しないものは、同項第五号に規定する経費とみなす。
2 地方公共団体が基盤整備計画を達成するために行う事業に要する経費に充てるために起こす地方債については、法令の範囲内において、資金事情及び当該地方公共団体の財政状況が許す限り、特別の配慮をするものとする。
(農業生産の基盤及び林業生産の基盤の一体的な整備及び開発の促進)
第十九条 国及び地方公共団体は、農業生産の基盤及び林業生産の基盤の整備及び開発に関する施策を行うに当たっては、対象地域内において土地改良事業及び造林又は林道の開設の事業の総合的な施行その他の農業生産の基盤及び林業生産の基盤の一体的な整備及び開発が促進されるよう配慮するものとする。
(農地法等による処分についての配慮)
第二十条 国の行政機関の長又は都道府県知事は、対象地域内の土地を基盤整備計画に定める農林業等活性化基盤施設の用に供するため、農地法その他の法律の規定による許可その他の処分を求められたときは、当該施設の設置の促進が図られるよう適切な配慮をするものとする。
(国有林野の活用等)
第二十一条 国は、基盤整備計画の実施を促進するため、国有林野の活用について適切な配慮をするものとする。
2 計画作成市町村は、基盤整備計画の達成のため必要があるときは、関係営林局長又は営林支局長に対し、技術的援助その他の必要な協力を求めることができる。
(生活環境の整備)
第二十二条 国及び地方公共団体は、基盤整備計画の実施の促進に併せて、対象地域における良好な生活環境を確保するための施設の整備を促進するように努めるものとする。
(主務大臣等)
第二十三条 この法律における主務大臣は、国土庁長官、農林水産大臣、通商産業大臣、建設大臣及び自治大臣とする。
2 この法律における主務省令は、主務大臣(国土庁長官にあっては、内閣総理大臣)の発する命令とする。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(検討)
第二条 政府は、特定農山村地域について、この法律の施行後における農林業従事者その他の地域住民の生活の状況、農林業の振興並びに農用地及び森林の保全を通じた国土及び環境の保全等の状況等を勘案し、豊かで住みよい農山村の育成を図るために必要な方途について検討を加え、必要に応じ所要の措置を講ずるものとする。
(農業委員会等に関する法律の一部改正)
第三条 農業委員会等に関する法律(昭和二十六年法律第八十七号)の一部を次のように改正する。
第六条第一項第一号中「(昭和五十五年法律第六十五号)」の下に「及び特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(平成五年法律第七十二号)」を加える。
(農地法の一部改正)
第四条 農地法の一部を次のように改正する。
第三条第一項第四号の三の次に次の一号を加える。
四の四 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(平成五年法律第七十二号)第九条第一項の規定による公告があつた所有権移転等促進計画の定めるところによつて同法第二条第三項第三号の権利が設定され、又は移転される場合
第四条第一項第三号の二の次に次の一号を加える。
三の三 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律第九条第一項の規定による公告があつた所有権移転等促進計画の定めるところによつて設定され、又は移転された同法第二条第三項第三号の権利に係る農地を当該所有権移転等促進計画に定める利用目的に供する場合
第五条第一項第一号の二の次に次の一号を加える。
一の三 農地又は採草放牧地を特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律第九条第一項の規定による公告があつた所有権移転等促進計画に定める利用目的に供するため当該所有権移転等促進計画の定めるところによつて同法第二条第三項第三号の権利が設定され、又は移転される場合
(都市計画法の一部改正)
第五条 都市計画法の一部を次のように改正する。
第三十四条第四号の次に次の一号を加える。
四の二 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(平成五年法律第七十二号)第九条第一項の規定による公告があつた所有権移転等促進計画の定めるところによつて設定され、又は移転された同法第二条第三項第三号の権利に係る土地において当該所有権移転等促進計画に定める利用目的(同項第二号に規定する農林業等活性化基盤施設である建築物の建築の用に供するためのものに限る。)に従つて行う開発行為
(農業振興地域の整備に関する法律の一部改正)
第六条 農業振興地域の整備に関する法律(昭和四十四年法律第五十八号)の一部を次のように改正する。
第十五条の十五第一項第三号の二の次に次の一号を加える。
三の三 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(平成五年法律第七十二号)第九条第一項の規定による公告があつた所有権移転等促進計画の定めるところによつて設定され、又は移転された同法第二条第三項第三号の権利に係る土地を当該所有権移転等促進計画に定める利用目的に供するために行う行為
(地方税法の一部改正)
第七条 地方税法の一部を次のように改正する。
第五百八十六条第二項第一号の十二の次に次の一号を加える。
一の十三 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(平成五年法律第七十二号)第四条第一項の規定により作成された基盤整備計画に係る同法第二条第一項に規定する特定農山村地域において、同法第七条の規定による認定を受けた者で政令で定めるものが当該認定に係る同条の事業計画に従つて整備する同法第二条第三項第二号に規定する農林業等活性化基盤施設の用に供する家屋で政令で定めるものの敷地の用に供する土地
附則第十一条第二項第一号中「及び次項」を「から第四項まで」に改め、同条第十七項を同条第十八項とし、同条第四項から第十六項までを一項ずつ繰り下げ、同条第三項中「前項」を「第二項及び前項」に改め、同項を同条第四項とし、同条第二項の次に次の一項を加える。
3 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律第九条第一項の規定による公告があつた所有権移転等促進計画に基づき農業振興地域の整備に関する法律第六条第一項に規定する農業振興地域内にある土地(特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律第二条第二項第一号に規定する農用地に限る。)を農業を営む者が同号に規定する農用地の用に供する目的で取得した場合における当該土地の取得に対して課する不動産取得税の課税標準の算定については、当該取得が平成七年三月三十一日までに行われたときに限り、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める額を価格から控除するものとする。
一 当該土地の取得が農用地区域内にある土地以外の土地の取得である場合 当該土地の価格の四分の一に相当する額
二 当該土地の取得が農用地区域内にある土地の取得である場合 当該土地の価格の三分の一に相当する額
附則第十一条の四第一項中「若しくは第三項」を「から第四項まで」に改める。
(国土庁設置法の一部改正)
第八条 国土庁設置法(昭和四十九年法律第九十八号)の一部を次のように改正する。
第四条中第二十五号を第二十六号とし、第二十四号を第二十五号とし、第二十三号を第二十四号とし、第二十二号の次に次の一号を加える。
二十三 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(平成五年法律第七十二号)の施行に関する事務を処理すること。
第七条第一項中「第四条第二十三号」を「第四条第二十四号」に改める。
(農林水産省設置法の一部改正)
第九条 農林水産省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。
第四条第二十七号の四の次に次の一号を加える。
二十七の五 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(平成五年法律第七十二号)の施行に関する事務で所掌に属するものを処理すること。
第二十九条中「第二十号まで」の下に「、第二十七号の五」を加える。
(通商産業省設置法の一部改正)
第十条 通商産業省設置法(昭和二十七年法律第二百七十五号)の一部を次のように改正する。
第四条第三十九号の四の次に次の一号を加える。
三十九の五 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(平成五年法律第七十二号)の施行に関すること。
(建設省設置法の一部改正)
第十一条 建設省設置法(昭和二十三年法律第百十三号)の一部を次のように改正する。
第三条第十一号中「及び地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再配置の促進に関する法律(平成四年法律第七十六号)」を「、地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再配置の促進に関する法律(平成四年法律第七十六号)及び特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(平成五年法律第七十二号)」に改める。
(自治省設置法の一部改正)
第十二条 自治省設置法(昭和二十七年法律第二百六十一号)の一部を次のように改正する。
第四条第三号の八の次に次の一号を加える。
三の九 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(平成五年法律第七十二号)の施行に関する事務を行うこと。
内閣総理大臣 宮沢喜一
大蔵大臣 林義郎
農林水産大臣 田名部匡省
通商産業大臣 森喜朗
建設大臣 中村喜四郎
自治大臣 村田敬次郎