看護婦等の人材確保の促進に関する法律をここに公布する。
御名御璽
平成四年六月二十六日
内閣総理大臣 宮澤喜一
法律第八十六号
看護婦等の人材確保の促進に関する法律
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
看護婦等の人材確保の促進(第三条―第十三条)
第三章
ナースセンター
第一節
都道府県ナースセンター(第十四条―第十九条)
第二節
中央ナースセンター(第二十条―第二十二条)
第四章
雑則(第二十三条―第二十五条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、我が国における急速な高齢化の進展及び保健医療を取り巻く環境の変化等に伴い、看護婦等の確保の重要性が著しく増大していることにかんがみ、看護婦等の確保を促進するための措置に関する基本指針を定めるとともに、看護婦等の養成、処遇の改善、資質の向上。就業の促進等を、看護に対する国民の関心と理解を深めることに配慮しつつ図るための措置を講ずることにより、病院等、看護を受ける者の居宅等看護が提供される場所に、高度な専門知識と技能を有する看護婦等を確保し、もって国民の保健医療の向上に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「看護婦等」とは、保健婦、助産婦、看護婦、看護士、准看護婦及び准看護士をいう。
2 この法律において「病院等」とは、病院(医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第一条の二第一項に規定する病院をいう。以下同じ。)、診療所(同法第二項に規定する診療所をいう。次項において同じ。)、助産所(同法第二条第一項に規定する助産所をいう。次項において同じ。)、老人保健施設(老人保健法(昭和五十七年法律第八十号)第六条第四項に規定する老人保健施設をいう。次項において同じ。)及び指定老人訪問看護事業(同法第四十六条の五の二第一項の指定に係る同法第六条第五項に規定する老人訪問看護事業をいう。)を行う事業所をいう。
3 この法律において「病院等の開設者等」とは、病院、診療所、助産所及び老人保健施設の開設者並びに老人保健法第四十六条の五の二第一項に規定する指定老人訪問看護事業者をいう。
第二章 看護婦等の人材確保の促進
(基本指針)
第三条 厚生大臣、労働大臣及び文部大臣(労働大臣にあっては次項第三号に揚げる事項のうち病院等に勤務する看護婦等の雇用管理に関する事項並びに同項第五号及び第六号に掲げる事項に、文部大臣にあっては同項第二号に掲げる事項に限る。)は、看護婦等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針(以下「基本指針」という。)を定めなければならない。
2 基本指針に定める事項は、次のとおりとする。
一 看護婦等の就業の動向に関する事項
二 看護婦等の養成に関する事項
三 病院等に勤務する看護婦等の処遇の改善(国家公務員及び地方公務員である看護婦等に係るものを除く。次条第一項及び第五条第一項において同じ。)に関する事項
四 看護婦等の資質の向上に関する事項
五 看護婦等の就業の促進に関する事項
六 その他看護婦等の確保の促進に関する重要事項
3 基本指針は、看護が国民の保健医療に関し重要な役割を果たしていることにかんがみ、病院等、看護を受ける者の居宅等看護が提供される場所に、高度な専門知識と技能を有する看護婦等を確保し、あわせて当該看護婦等が適切な処遇の下で、自信と誇りを持って心の通う看護を提供することができるように、看護業務の専門性に配慮した適切な看護業務の在り方を考慮しつつ、高度化し、かつ、多様化する国民の保健医療サービスヘの需要に対応した均衡ある看護婦等の確保対策を適切に講ずることを基本理念として定めるものとする。
4 厚生大臣、労働大臣及び文部大臣は、基本指針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、厚生大臣及び文部大臣にあっては医療関係者審議会の意見を、労働大臣にあっては中央職業安定審議会の意見をそれぞれ聴き、及び都道府県の意見を求めるほか、自治大臣に協議しなければならない。
5 厚生大臣、労働大臣及び文部大臣は、基本指針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(国及び地方公共団体の責務)
第四条 国は、看護婦等の養成、資質の向上及び就業の促進並びに病院等に勤務する看護婦等の処遇の改善その他看護婦等の確保を促進するために必要な財政上及び金融上の措置その他の措置を講ずるよう努めなければならない。
2 国は、看護婦等の処遇の改善に努める病院等の健全な経営が確保されるよう必要な配慮をしなければならない。
3 国は、広報活動、啓発活動等を通じて、看護の重要性に対する国民の関心と理解を深め、看護業務に対する社会的評価の向上を図るとともに、看護に親しむ活動(傷病者等に対しその日常生活において必要な援助を行うこと等を通じて、看護に親しむ活動をいう。以下同じ。)への国民の参加を促進することに努めなければならない。
4 地方公共団体は、看護に対する住民の関心と理解を深めるとともに、看護婦等の確保を促進するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(病院等の開設者等の責務)
第五条 病院等の開設者等は、病院等に勤務する看護婦等が適切な処遇の下で、その専門知識と技能を向上させ、かつ、これを看護業務に十分に発揮できるよう、病院等に勤務する看護婦等の処遇の改善その他の措置を講ずるよう努めなければならない。
2 病院等の開設者等は、看護に親しむ活動への国民の参加を促進するために必要な協力を行うよう努めなければならない。
(看護婦等の責務)
第六条 看護婦等は、保健医療の重要な担い手としての自覚の下に、高度化し、かつ、多様化する国民の保健医療サービスヘの需要に対応し、自ら進んでその能力の開発及び向上を図るとともに、自信と誇りを持ってこれを看護業務に発揮するよう努めなければならない。
(国民の責務)
第七条 国民は、看護の重要性に対する関心と理解を深め、看護に従事する者への感謝の念を持つよう心がけるとともに、看護に親しむ活動に参加するよう努めなければならない。
(指導及び助言)
第八条 国及び都道府県は、看護婦等の確保を図るため必要があると認めるときは、病院等の開設者等に対し、基本指針に定める事項について必要な指導及び助言を行うものとする。
(雇用福祉事業としての助成)
第九条 政府は、病院等に勤務する看護婦等の福祉の増進を図るため、雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第六十四条の雇用福祉事業として、病院等の開設者等に対して、雇用管理に関する必要な知識の習得のために必要な助成を行うものとする。
(公共職業安定所の職業紹介等)
第十条 公共職業安定所は、就業を希望する看護婦等の速やかな就職を促進するため、雇用情報の提供、職業指導及び就職のあっせんを行う等必要な措置を講ずるものとする。
(看護婦等就業協力員)
第十一条 都道府県は、社会的信望があり、かつ、看護婦等の業務について識見を有する者のうちから、看護婦等就業協力員を委嘱することができる。
2 看護婦等就業協力員は、都道府県の看護婦等の就業の促進その他看護婦等の確保に関する施策及び看護に対する住民の関心と理解の増進に関する施策への協力その他の活動を行う。
(看護婦等確保推進者の設置等)
第十二条 次の各号のいずれかに該当する病院の開設者は、当該病院に看護婦等確保推進者を置かなければならない。
一 その有する看護婦等の員数が、医療法第二十一条第一項第一号の規定に基づく省令の規定によって定められた員数を著しく下回る病院として厚生省令で定めるもの
二 その他看護婦等の確保が著しく困難な状況にあると認められる病院として厚生省令で定めるもの
2 看護婦等確保推進者は、病院の管理者を補佐し、看護婦等の配置及び業務の改善に関する計画の策定その他看護婦等の確保に関する事項を処理しなければならない。
3 医師、歯科医師、保健婦、助産婦、看護婦、看護士その他看護婦等の確保に関し必要な知識経験を有する者として厚生省令で定めるものでなければ、看護婦等確保推進者となることができない。
4 第一項に規定する病院の開設者は、看護婦等確保推進者を置いたときは、その日から三十日以内に、当該病院の所在地を管轄する都道府県知事に、その看護婦等確保推進者の氏名その他厚生省令で定める事項を届け出なければならない。看護婦等確保推進者を変更したときも、同様とする。
5 都道府県知事は、看護婦等確保推進者が第二項に規定する職務を怠った場合であって、当該看護婦等確保推進者に引き続きその職務を行わせることが適切でないと認めるときは、第一項に規定する病院の開設者に対し、期限を定めて、その変更を命ずることができる。
6 都道府県知事は、前項の規定による処分をしようとするときは、あらかじめ、第一項に規定する病院の開設者にその理由を通知し、弁明及び有利な証拠の提出の機会を与えなければならない。
(国の開設する病院についての特例)
第十三条 国の開設する病院については、政令で、この章の規定の一部の適用を除外し、その他必要な特例を定めることができる。
第三章 ナースセンター
第一節 都道府県ナースセンター
(指定等)
第十四条 都道府県知事は、看護婦等の就業の促進その他の看護婦等の確保を図るための活動を行うことにより保健医療の向上に資することを目的として設立された民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の法人であって、次条に規定する業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、都道府県ごとに一個に限り、都道府県ナースセンター(以下「都道府県センター」という。)として指定することができる。
2 都道府県知事は、前項の中請をした者が職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)第三十三条第一項の許可を受けて看護婦等につき無料の職業紹介事業を行う者でないときは、前項の規定による指定をしてはならない。
3 都道府県知事は、第一項の規定による指定をしたときは、当該都道府県センターの名称、住所及び事務所の所在地を公示しなければならない。
4 都道府県センターは、その名称、住所又は事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
5 都道府県知事は、前項の規定による届出があったときは、当該届出に係る事項を公示しなければならない。
(業務)
第十五条 都道府県センターは、当該都道府県の区域内において、次に掲げる業務を行うものとする。
一 病院等における看護婦等の確保の動向及び就業を希望する看護婦等の状況に関する調査を行うこと。
二 訪問看護(傷病者等に対し、その者の居宅において看護婦等が行う療養上の世話又は必要な診療の補助をいう。)その他の看護についての知識及び技能に関し、看護婦等に対して研修を行うこと。
三 前号に掲げるもののほか、看護婦等に対し、看護についての知識及び技能に関する情報の提供、相談その他の援助を行うこと。
四 第十二条第一項に規定する病院その他の病院等の開設者、管理者、看護婦等確保推進者等に対し、看護婦等の確保に関する情報の提供、相談その他の援助を行うこと。
五 看護婦等について、無料の職業紹介事業を行うこと。
六 看護に関する啓発活動を行うこと。
七 前各号に掲げるもののほか、看護婦等の確保を図るために必要な業務を行うこと。
(公共職業安定所との連携)
第十六条 都道府県センターは、公共職業安定所との密接な連携の下に前条第五号に掲げる業務を行わなければならない。
(事業計画等)
第十七条 都道府県センターは、毎事業年度、厚生省令・労働省令で定めるところにより、事業計画書及び収支予算書を作成し、都道府県知事に提出しなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 都道府県センターは、厚生省令・労働省令で定めるところにより、毎事業年度終了後、事業報告書及び収支決算書を作成し、都道府県知事に提出しなければならない。
(監督命令)
第十八条 都道府県知事は、この節の規定を施行するために必要な限度において、都道府県センターに対し、監督上必要な命令をすることができる。
(指定の取消し等)
第十九条 都道府県知事は、都道府県センターが次の各号のいずれかに該当するときは、第十四条第一項の規定による指定(以下この条において「指定」という。)を取り消さなければならない。
一 第十五条第五号に掲げる業務に係る無料の職業紹介事業につき、職業安定法第三十三条第一項の許可を取り消されたとき。
二 職業安定法第三十三条第三項に規定する許可の有効期間(当該許可の有効期間について、同条第四項の規定による更新を受けたときにあっては、当該更新を受けた許可の有効期間)の満了後、同条第四項に規定する許可の有効期間の更新を受けていないとき。
2 都道府県知事は、都道府県センターが次の各号のいずれかに該当するときは、指定を取り消すことができる。
一 第十五条各号に掲げる業務を適正かつ確実に実施することができないと認められるとき。
二 指定に関し不正の行為があったとき。
三 この節の規定又は当該規定に基づく命令若しくは処分に違反したとき。
3 都道府県知事は、前二項の規定により指定を取り消したときは、その旨を公示しなければならない。
4 都道府県知事は、第一項又は第二項の規定による処分をしようとするときは、あらかじめ、都道府県センターにその処分の理由を通知し、弁明及び有利な証拠の提出の機会を与えなければならない。
第二節 中央ナースセンター
(指定)
第二十条 厚生大臣及び労働大臣は、都道府県センターの業務に関する連絡及び援助を行うこと等により、都道府県センターの健全な発展を図るとともに、看護婦等の確保を図り、もって保健医療の向上に資することを目的として設立された民法第三十四条の法人であって、次条に規定する業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、全国を通じて一個に限り、中央ナースセンター(以下「中央センター」という。)として指定することができる。
(業務)
第二十一条 中央センターは、次に掲げる業務を行うものとする。
一 都道府県センターの業務に関する啓発活動を行うこと。
二 都道府県センターの業務について、連絡調整を図り、及び指導その他の援助を行うこと。
三 都道府県センターの業務に関する情報及び資料を収集し、並びにこれを都道府県センターその他の関係者に対し提供すること。
四 二以上の都道府県の区域における看護に関する啓発活動を行うこと。
五 前各号に掲げるもののほか、都道府県センターの健全な発展及び看護婦等の確保を図るために必要な業務を行うこと。
(準用)
第二十二条 第十四条第三項から第五項まで、第十七条、第十八条及び第十九条第二項から第四項までの規定は、中央センターについて準用する。この場合において、これらの規定中「都道府県知事」とあるのは「厚生大臣及び労働大臣」と、第十四条第三項中「第一項」とあるのは「第二十条」と、第十八条中「この節」とあるのは「次節」と、「監督上」とあるのは「厚生大臣にあっては第二十一条各号に掲げる業務に関し、労働大臣にあっては第二十一条第二号に掲げる業務(都道府県センターの行う第十五条第一号、第四号及び第五号に掲げる業務に係るものに限る。)に関し監督上」と、第十九条第二項中「指定を」とあるのは「第二十条の規定による規定(以下この条において「指定」という。)を」と、「第十五条各号」とあるのは「第二十一条各号」と、「この節」とあるのは「次節」と、同条第三項中「前二項」とあるのは「前項」と、同条第四項中「第一項又は第二項」とあるのは「第二項」と読み替えるものとする。
第四章 雑則
(経過措置)
第二十三条 この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。
(罰則)
第二十四条 次の各号の一に該当する者は、二十万円以下の過料に処する。
一 第十二条第一項の規定に違反して看護婦等確保推進者を置かなかった者
二 第十二条第五項の規定により命令に違反した者
第二十五条 第十二条第四項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、十万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(職業安定法の一部改正)
第二条 職業安定法の一部を次のように改正する。
第十二条第三項中「及び介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成四年法律第六十三号)」を「、介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成四年法律第六十三号)及び看護婦等の人材確保の促進に関する法律(平成四年法律第八十六号)」に改める。
(厚生省設置法の一部改正)
第三条 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。
第五条第三十六号の次に次の一号を加える。
三十六の二 看護婦等の人材確保の促進に関する法律(平成四年法律第八十六号)を施行すること。
第六条第三十二号の次に次の一号を加える。
三十二の二 看護婦等の人材確保の促進に関する法律の定めるところにより、基本指針を定め、並びに同法の規定に基づき中央ナースセンターを指定し、及びこれに対し、監督を行うこと。
第七条第四項中「指定に関する重要事項」の下に「を調査審議し、及び看護婦等の人材確保の促進に関する法律によりその権限に属させられた事項」を加える。
(労働省設置法の一部改正)
第四条 労働省設置法(昭和二十四年法律第百六十二号)の一部を次のように改正する。
第四条第四十三号の五の次に次の二号を加える。
四十三の六 看護婦等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針の策定に関すること。
四十三の七 中央ナースセンターの監督に関すること。
第四条第五十一号中「及び介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成四年法律第六十三号)」を「、介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成四年法律第六十三号)及び看護婦等の人材確保の促進に関する法律(平成四年法律第八十六号)」に改める。
第五条第五十三号の三の次に次の二号を加える。
五十三の四 看護婦等の人材確保の促進に関する法律に基づいて、基本指針を策定すること。
五十三の五 看護婦等の人材確保の促進に関する法律に基づいて、中央ナースセンターを指定し、及びこれに対し監督を行うこと。
(文部省設置法の一部改正)
第五条 文部省設置法(昭和二十四年法律第百四十六号)の一部を次のように改正する。
第五条第三十三号の次に次の一号を加える。
三十三の二 看護婦等の人材確保の促進に関する法律(平成四年法律第八十六号)の施行に関する事務で所掌に属するものを処理すること。
文部大臣 鳩山邦夫
厚生大臣 山下徳夫
労働大臣 近藤鉄雄
内閣総理大臣 宮澤喜一
看護婦等の人材確保の促進に関する法律をここに公布する。
御名御璽
平成四年六月二十六日
内閣総理大臣 宮沢喜一
法律第八十六号
看護婦等の人材確保の促進に関する法律
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
看護婦等の人材確保の促進(第三条―第十三条)
第三章
ナースセンター
第一節
都道府県ナースセンター(第十四条―第十九条)
第二節
中央ナースセンター(第二十条―第二十二条)
第四章
雑則(第二十三条―第二十五条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、我が国における急速な高齢化の進展及び保健医療を取り巻く環境の変化等に伴い、看護婦等の確保の重要性が著しく増大していることにかんがみ、看護婦等の確保を促進するための措置に関する基本指針を定めるとともに、看護婦等の養成、処遇の改善、資質の向上。就業の促進等を、看護に対する国民の関心と理解を深めることに配慮しつつ図るための措置を講ずることにより、病院等、看護を受ける者の居宅等看護が提供される場所に、高度な専門知識と技能を有する看護婦等を確保し、もって国民の保健医療の向上に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「看護婦等」とは、保健婦、助産婦、看護婦、看護士、准看護婦及び准看護士をいう。
2 この法律において「病院等」とは、病院(医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第一条の二第一項に規定する病院をいう。以下同じ。)、診療所(同法第二項に規定する診療所をいう。次項において同じ。)、助産所(同法第二条第一項に規定する助産所をいう。次項において同じ。)、老人保健施設(老人保健法(昭和五十七年法律第八十号)第六条第四項に規定する老人保健施設をいう。次項において同じ。)及び指定老人訪問看護事業(同法第四十六条の五の二第一項の指定に係る同法第六条第五項に規定する老人訪問看護事業をいう。)を行う事業所をいう。
3 この法律において「病院等の開設者等」とは、病院、診療所、助産所及び老人保健施設の開設者並びに老人保健法第四十六条の五の二第一項に規定する指定老人訪問看護事業者をいう。
第二章 看護婦等の人材確保の促進
(基本指針)
第三条 厚生大臣、労働大臣及び文部大臣(労働大臣にあっては次項第三号に揚げる事項のうち病院等に勤務する看護婦等の雇用管理に関する事項並びに同項第五号及び第六号に掲げる事項に、文部大臣にあっては同項第二号に掲げる事項に限る。)は、看護婦等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針(以下「基本指針」という。)を定めなければならない。
2 基本指針に定める事項は、次のとおりとする。
一 看護婦等の就業の動向に関する事項
二 看護婦等の養成に関する事項
三 病院等に勤務する看護婦等の処遇の改善(国家公務員及び地方公務員である看護婦等に係るものを除く。次条第一項及び第五条第一項において同じ。)に関する事項
四 看護婦等の資質の向上に関する事項
五 看護婦等の就業の促進に関する事項
六 その他看護婦等の確保の促進に関する重要事項
3 基本指針は、看護が国民の保健医療に関し重要な役割を果たしていることにかんがみ、病院等、看護を受ける者の居宅等看護が提供される場所に、高度な専門知識と技能を有する看護婦等を確保し、あわせて当該看護婦等が適切な処遇の下で、自信と誇りを持って心の通う看護を提供することができるように、看護業務の専門性に配慮した適切な看護業務の在り方を考慮しつつ、高度化し、かつ、多様化する国民の保健医療サービスヘの需要に対応した均衡ある看護婦等の確保対策を適切に講ずることを基本理念として定めるものとする。
4 厚生大臣、労働大臣及び文部大臣は、基本指針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、厚生大臣及び文部大臣にあっては医療関係者審議会の意見を、労働大臣にあっては中央職業安定審議会の意見をそれぞれ聴き、及び都道府県の意見を求めるほか、自治大臣に協議しなければならない。
5 厚生大臣、労働大臣及び文部大臣は、基本指針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(国及び地方公共団体の責務)
第四条 国は、看護婦等の養成、資質の向上及び就業の促進並びに病院等に勤務する看護婦等の処遇の改善その他看護婦等の確保を促進するために必要な財政上及び金融上の措置その他の措置を講ずるよう努めなければならない。
2 国は、看護婦等の処遇の改善に努める病院等の健全な経営が確保されるよう必要な配慮をしなければならない。
3 国は、広報活動、啓発活動等を通じて、看護の重要性に対する国民の関心と理解を深め、看護業務に対する社会的評価の向上を図るとともに、看護に親しむ活動(傷病者等に対しその日常生活において必要な援助を行うこと等を通じて、看護に親しむ活動をいう。以下同じ。)への国民の参加を促進することに努めなければならない。
4 地方公共団体は、看護に対する住民の関心と理解を深めるとともに、看護婦等の確保を促進するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(病院等の開設者等の責務)
第五条 病院等の開設者等は、病院等に勤務する看護婦等が適切な処遇の下で、その専門知識と技能を向上させ、かつ、これを看護業務に十分に発揮できるよう、病院等に勤務する看護婦等の処遇の改善その他の措置を講ずるよう努めなければならない。
2 病院等の開設者等は、看護に親しむ活動への国民の参加を促進するために必要な協力を行うよう努めなければならない。
(看護婦等の責務)
第六条 看護婦等は、保健医療の重要な担い手としての自覚の下に、高度化し、かつ、多様化する国民の保健医療サービスヘの需要に対応し、自ら進んでその能力の開発及び向上を図るとともに、自信と誇りを持ってこれを看護業務に発揮するよう努めなければならない。
(国民の責務)
第七条 国民は、看護の重要性に対する関心と理解を深め、看護に従事する者への感謝の念を持つよう心がけるとともに、看護に親しむ活動に参加するよう努めなければならない。
(指導及び助言)
第八条 国及び都道府県は、看護婦等の確保を図るため必要があると認めるときは、病院等の開設者等に対し、基本指針に定める事項について必要な指導及び助言を行うものとする。
(雇用福祉事業としての助成)
第九条 政府は、病院等に勤務する看護婦等の福祉の増進を図るため、雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第六十四条の雇用福祉事業として、病院等の開設者等に対して、雇用管理に関する必要な知識の習得のために必要な助成を行うものとする。
(公共職業安定所の職業紹介等)
第十条 公共職業安定所は、就業を希望する看護婦等の速やかな就職を促進するため、雇用情報の提供、職業指導及び就職のあっせんを行う等必要な措置を講ずるものとする。
(看護婦等就業協力員)
第十一条 都道府県は、社会的信望があり、かつ、看護婦等の業務について識見を有する者のうちから、看護婦等就業協力員を委嘱することができる。
2 看護婦等就業協力員は、都道府県の看護婦等の就業の促進その他看護婦等の確保に関する施策及び看護に対する住民の関心と理解の増進に関する施策への協力その他の活動を行う。
(看護婦等確保推進者の設置等)
第十二条 次の各号のいずれかに該当する病院の開設者は、当該病院に看護婦等確保推進者を置かなければならない。
一 その有する看護婦等の員数が、医療法第二十一条第一項第一号の規定に基づく省令の規定によって定められた員数を著しく下回る病院として厚生省令で定めるもの
二 その他看護婦等の確保が著しく困難な状況にあると認められる病院として厚生省令で定めるもの
2 看護婦等確保推進者は、病院の管理者を補佐し、看護婦等の配置及び業務の改善に関する計画の策定その他看護婦等の確保に関する事項を処理しなければならない。
3 医師、歯科医師、保健婦、助産婦、看護婦、看護士その他看護婦等の確保に関し必要な知識経験を有する者として厚生省令で定めるものでなければ、看護婦等確保推進者となることができない。
4 第一項に規定する病院の開設者は、看護婦等確保推進者を置いたときは、その日から三十日以内に、当該病院の所在地を管轄する都道府県知事に、その看護婦等確保推進者の氏名その他厚生省令で定める事項を届け出なければならない。看護婦等確保推進者を変更したときも、同様とする。
5 都道府県知事は、看護婦等確保推進者が第二項に規定する職務を怠った場合であって、当該看護婦等確保推進者に引き続きその職務を行わせることが適切でないと認めるときは、第一項に規定する病院の開設者に対し、期限を定めて、その変更を命ずることができる。
6 都道府県知事は、前項の規定による処分をしようとするときは、あらかじめ、第一項に規定する病院の開設者にその理由を通知し、弁明及び有利な証拠の提出の機会を与えなければならない。
(国の開設する病院についての特例)
第十三条 国の開設する病院については、政令で、この章の規定の一部の適用を除外し、その他必要な特例を定めることができる。
第三章 ナースセンター
第一節 都道府県ナースセンター
(指定等)
第十四条 都道府県知事は、看護婦等の就業の促進その他の看護婦等の確保を図るための活動を行うことにより保健医療の向上に資することを目的として設立された民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の法人であって、次条に規定する業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、都道府県ごとに一個に限り、都道府県ナースセンター(以下「都道府県センター」という。)として指定することができる。
2 都道府県知事は、前項の中請をした者が職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)第三十三条第一項の許可を受けて看護婦等につき無料の職業紹介事業を行う者でないときは、前項の規定による指定をしてはならない。
3 都道府県知事は、第一項の規定による指定をしたときは、当該都道府県センターの名称、住所及び事務所の所在地を公示しなければならない。
4 都道府県センターは、その名称、住所又は事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
5 都道府県知事は、前項の規定による届出があったときは、当該届出に係る事項を公示しなければならない。
(業務)
第十五条 都道府県センターは、当該都道府県の区域内において、次に掲げる業務を行うものとする。
一 病院等における看護婦等の確保の動向及び就業を希望する看護婦等の状況に関する調査を行うこと。
二 訪問看護(傷病者等に対し、その者の居宅において看護婦等が行う療養上の世話又は必要な診療の補助をいう。)その他の看護についての知識及び技能に関し、看護婦等に対して研修を行うこと。
三 前号に掲げるもののほか、看護婦等に対し、看護についての知識及び技能に関する情報の提供、相談その他の援助を行うこと。
四 第十二条第一項に規定する病院その他の病院等の開設者、管理者、看護婦等確保推進者等に対し、看護婦等の確保に関する情報の提供、相談その他の援助を行うこと。
五 看護婦等について、無料の職業紹介事業を行うこと。
六 看護に関する啓発活動を行うこと。
七 前各号に掲げるもののほか、看護婦等の確保を図るために必要な業務を行うこと。
(公共職業安定所との連携)
第十六条 都道府県センターは、公共職業安定所との密接な連携の下に前条第五号に掲げる業務を行わなければならない。
(事業計画等)
第十七条 都道府県センターは、毎事業年度、厚生省令・労働省令で定めるところにより、事業計画書及び収支予算書を作成し、都道府県知事に提出しなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 都道府県センターは、厚生省令・労働省令で定めるところにより、毎事業年度終了後、事業報告書及び収支決算書を作成し、都道府県知事に提出しなければならない。
(監督命令)
第十八条 都道府県知事は、この節の規定を施行するために必要な限度において、都道府県センターに対し、監督上必要な命令をすることができる。
(指定の取消し等)
第十九条 都道府県知事は、都道府県センターが次の各号のいずれかに該当するときは、第十四条第一項の規定による指定(以下この条において「指定」という。)を取り消さなければならない。
一 第十五条第五号に掲げる業務に係る無料の職業紹介事業につき、職業安定法第三十三条第一項の許可を取り消されたとき。
二 職業安定法第三十三条第三項に規定する許可の有効期間(当該許可の有効期間について、同条第四項の規定による更新を受けたときにあっては、当該更新を受けた許可の有効期間)の満了後、同条第四項に規定する許可の有効期間の更新を受けていないとき。
2 都道府県知事は、都道府県センターが次の各号のいずれかに該当するときは、指定を取り消すことができる。
一 第十五条各号に掲げる業務を適正かつ確実に実施することができないと認められるとき。
二 指定に関し不正の行為があったとき。
三 この節の規定又は当該規定に基づく命令若しくは処分に違反したとき。
3 都道府県知事は、前二項の規定により指定を取り消したときは、その旨を公示しなければならない。
4 都道府県知事は、第一項又は第二項の規定による処分をしようとするときは、あらかじめ、都道府県センターにその処分の理由を通知し、弁明及び有利な証拠の提出の機会を与えなければならない。
第二節 中央ナースセンター
(指定)
第二十条 厚生大臣及び労働大臣は、都道府県センターの業務に関する連絡及び援助を行うこと等により、都道府県センターの健全な発展を図るとともに、看護婦等の確保を図り、もって保健医療の向上に資することを目的として設立された民法第三十四条の法人であって、次条に規定する業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、全国を通じて一個に限り、中央ナースセンター(以下「中央センター」という。)として指定することができる。
(業務)
第二十一条 中央センターは、次に掲げる業務を行うものとする。
一 都道府県センターの業務に関する啓発活動を行うこと。
二 都道府県センターの業務について、連絡調整を図り、及び指導その他の援助を行うこと。
三 都道府県センターの業務に関する情報及び資料を収集し、並びにこれを都道府県センターその他の関係者に対し提供すること。
四 二以上の都道府県の区域における看護に関する啓発活動を行うこと。
五 前各号に掲げるもののほか、都道府県センターの健全な発展及び看護婦等の確保を図るために必要な業務を行うこと。
(準用)
第二十二条 第十四条第三項から第五項まで、第十七条、第十八条及び第十九条第二項から第四項までの規定は、中央センターについて準用する。この場合において、これらの規定中「都道府県知事」とあるのは「厚生大臣及び労働大臣」と、第十四条第三項中「第一項」とあるのは「第二十条」と、第十八条中「この節」とあるのは「次節」と、「監督上」とあるのは「厚生大臣にあっては第二十一条各号に掲げる業務に関し、労働大臣にあっては第二十一条第二号に掲げる業務(都道府県センターの行う第十五条第一号、第四号及び第五号に掲げる業務に係るものに限る。)に関し監督上」と、第十九条第二項中「指定を」とあるのは「第二十条の規定による規定(以下この条において「指定」という。)を」と、「第十五条各号」とあるのは「第二十一条各号」と、「この節」とあるのは「次節」と、同条第三項中「前二項」とあるのは「前項」と、同条第四項中「第一項又は第二項」とあるのは「第二項」と読み替えるものとする。
第四章 雑則
(経過措置)
第二十三条 この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。
(罰則)
第二十四条 次の各号の一に該当する者は、二十万円以下の過料に処する。
一 第十二条第一項の規定に違反して看護婦等確保推進者を置かなかった者
二 第十二条第五項の規定により命令に違反した者
第二十五条 第十二条第四項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、十万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(職業安定法の一部改正)
第二条 職業安定法の一部を次のように改正する。
第十二条第三項中「及び介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成四年法律第六十三号)」を「、介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成四年法律第六十三号)及び看護婦等の人材確保の促進に関する法律(平成四年法律第八十六号)」に改める。
(厚生省設置法の一部改正)
第三条 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。
第五条第三十六号の次に次の一号を加える。
三十六の二 看護婦等の人材確保の促進に関する法律(平成四年法律第八十六号)を施行すること。
第六条第三十二号の次に次の一号を加える。
三十二の二 看護婦等の人材確保の促進に関する法律の定めるところにより、基本指針を定め、並びに同法の規定に基づき中央ナースセンターを指定し、及びこれに対し、監督を行うこと。
第七条第四項中「指定に関する重要事項」の下に「を調査審議し、及び看護婦等の人材確保の促進に関する法律によりその権限に属させられた事項」を加える。
(労働省設置法の一部改正)
第四条 労働省設置法(昭和二十四年法律第百六十二号)の一部を次のように改正する。
第四条第四十三号の五の次に次の二号を加える。
四十三の六 看護婦等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針の策定に関すること。
四十三の七 中央ナースセンターの監督に関すること。
第四条第五十一号中「及び介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成四年法律第六十三号)」を「、介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成四年法律第六十三号)及び看護婦等の人材確保の促進に関する法律(平成四年法律第八十六号)」に改める。
第五条第五十三号の三の次に次の二号を加える。
五十三の四 看護婦等の人材確保の促進に関する法律に基づいて、基本指針を策定すること。
五十三の五 看護婦等の人材確保の促進に関する法律に基づいて、中央ナースセンターを指定し、及びこれに対し監督を行うこと。
(文部省設置法の一部改正)
第五条 文部省設置法(昭和二十四年法律第百四十六号)の一部を次のように改正する。
第五条第三十三号の次に次の一号を加える。
三十三の二 看護婦等の人材確保の促進に関する法律(平成四年法律第八十六号)の施行に関する事務で所掌に属するものを処理すること。
文部大臣 鳩山邦夫
厚生大臣 山下徳夫
労働大臣 近藤鉄雄
内閣総理大臣 宮沢喜一