幹線道路の沿道の整備に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和五十五年五月一日
内閣総理大臣臨時代理 国務大臣 倉石忠雄
法律第三十四号
幹線道路の沿道の整備に関する法律
目次
第一章
総則(第一条―第四条)
第二章
沿道整備道路の指定等(第五条―第八条)
第三章
沿道整備計画(第九条・第十条)
第四章
沿道整備促進のための施策(第十一条―第十三条)
第五章
雑則(第十四条―第十六条)
第六章
罰則(第十七条・第十八条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、道路交通騒音の著しい幹線道路の沿道について、沿道整備道路の指定、沿道整備計画の決定等に関し必要な事項を定めるとともに、沿道の整備を促進するための措置を講ずることにより、道路交通騒音により生ずる障害を防止し、あわせて適正かつ合理的な土地利用を図り、もつて円滑な道路交通の確保と良好な市街地の形成に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 道路 道路法(昭和二十七年法律第百八十号)による道路をいう。
二 沿道整備道路 第五条第一項の規定により指定された道路をいう。
三 道路管理者 高速自動車国道にあつては建設大臣(道路整備特別措置法(昭和三十一年法律第七号)第十六条の二第一項に規定する日本道路公団の管理する高速自動車国道にあつては、日本道路公団)、高速自動車国道以外の道路にあつては道路法第十八条第一項に規定する道路管理者(同法第十二条本文の規定により建設大臣が新設又は改築を行う同法第十三条第一項に規定する指定区間外の一般国道にあつては建設大臣、道路整備特別措置法第十七条第一項に規定する公団等の管理する一般国道等にあつてはそれぞれ日本道路公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団、本州四国連絡橋公団又は地方道路公社)をいう。
(道路管理者の責務)
第三条 道路管理者は、幹線道路の整備に当たつては、沿道における良好な生活環境の確保が図られるよう道路交通騒音により生ずる障害の防止等に努めなければならない。
(国及び地方公共団体の責務)
第四条 国及び地方公共団体は、幹線道路における円滑な交通及びその沿道における良好な生活環境が確保されるべきものであることにかんがみ、道路交通騒音により生ずる障害の防止と沿道の適正かつ合理的な土地利用が促進されるよう必要な施策の推進に努めるものとする。
第二章 沿道整備道路の指定等
(沿道整備道路の指定)
第五条 都道府県知事は、幹線道路網を構成する道路(高速自動車国道以外の道路にあつては、都市計画において定められたものに限る。)のうち次に掲げる条件に該当する道路について、道路交通騒音により生ずる障害の防止と沿道の適正かつ合理的な土地利用の促進を図るため必要があると認めるときは、区間を定めて、建設大臣の承認を受けて、沿道整備道路として指定することができる。
一 自動車交通量が特に大きいものとして政令で定める基準を超え、又は超えることが確実と見込まれるものであること。
二 道路交通騒音が沿道における生活環境に著しい影響を及ぼすおそれがあるものとして政令で定める基準を超え、又は超えることが確実と見込まれるものであること。
三 当該道路に隣接する地域における土地利用の現況及び推移からみて、当該地域に相当数の住居等が集合し、又は集合することが確実と見込まれるものであること。
2 前項の規定による指定は、当該道路及びこれと密接な関連を有する道路の整備の見通し等を考慮した上でなお必要があると認められる場合に限り、行うものとする。
3 都道府県知事は、第一項の規定による指定をするときは、あらかじめ、当該指定に係る道路及びこれと密接な関連を有する道路の道路管理者並びに関係市町村に協議するとともに、これらの道路に係る交通の規制の観点からする都道府県公安委員会の意見を聴かなければならない。
4 都道府県知事は、第一項の規定による指定をしたときは、建設省令で定めるところにより、その路線名及び区間を公告しなければならない。
5 前各項の規定は、沿道整備道路の指定の変更又は解除について準用する。
(沿道整備道路の指定の特例)
第六条 前条第一項の規定は、二以上の道路が相互に接し、又は重複する場合においては、これらの道路を一の道路とみなして適用する。
(沿道整備道路の整備)
第七条 沿道整備道路の道路管理者は、道路交通騒音により生ずる障害の防止を促進するため、沿道の整備と併せて、必要な道路構造の改善の推進その他の措置を講ずるものとする。
(沿道整備協議会)
第八条 第五条第一項の規定により沿道整備道路が指定された場合には、道路交通騒音により生ずる障害の防止と沿道の適正かつ合理的な土地利用の促進を図るため、当該沿道整備道路及びその沿道の整備に関し必要となるべき措置について協議するため、都道府県知事、都道府県公安委員会、関係市町村及び当該沿道整備道路の道路管理者は、沿道整備協議会を組織することができる。この場合において、沿道整備協議会の庶務は、当該都道府県知事が統轄する都道府県において処理する。
第三章 沿道整備計画
(沿道整備計画)
第九条 都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第五条の規定により指定された都市計画区域(同法第七条第一項の規定による市街化区域以外の地域にあつては、政令で定める地域に限る。)内において、沿道整備道路に接続する土地の区域で、道路交通騒音により生ずる障害の防止と適正かつ合理的な土地利用の促進を図るため、一体的かつ総合的に市街地を整備することが適切であると認められるものについては、都市計画に沿道整備計画を定めることができる。
2 沿道整備計画については、都市計画法第十二条の四第二項に定める事項のほか、沿道の整備に関する方針及び次に掲げる事項のうち当該区域の特性を考慮して必要と認められる事項を都市計画に定めるものとする。
一 建築物の沿道整備道路に面する部分の長さの敷地の沿道整備道路に接する部分の長さに対する割合の最低限度、建築物の高さの最低限度、建築物の構造に関する防音上又は遮音上必要な制限、壁面の位置の制限、建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合の最低限度、建築物その他の工作物(以下この条及び次条において「建築物等」という。)の用途の制限その他建築物等に関する事項で政令で定めるもの
二 緑地その他の緩衝空地、道路その他政令で定める施設(都市計画法第四条第六項に規定する都市計画施設を除く。)の配置及び規模
三 前二号に掲げるもののほか、土地の利用に関する事項その他の沿道の整備に関する事項で政令で定めるもの
3 沿道整備計画を都市計画に定めるに当たつては、次に掲げるところに従わなければならない。
一 当該区域及びその周辺の地域の土地利用の状況及びその見通しを勘案し、これらの地域について道路交通騒音により生ずる障害を防止し、又は軽減するため、必要に応じ、遮音上有効な機能を有する建築物等又は緑地その他の緩衝空地が沿道整備道路等に面して整備されるとともに、当該道路に面する建築物その他道路交通騒音が著しい土地の区域内に存する建築物について、道路交通騒音により生ずる障害を防止し、又は軽減するため、防音上有効な構造となるように定めること。
二 当該区域が、前号に掲げるところに従つて都市計画に定められるべき事項の内容を考慮し、当該区域及びその周辺において定められている他の都市計画と併せて効果的な配置及び規模の公共施設を備えた健全な都市環境のものとなるように定めること。
三 建築物等が、都市計画上幹線道路の沿道としての当該区域の特性にふさわしい用途、容積、高さ、配列等を備えた適正かつ合理的な土地の利用形態となるように定めること。
(行為の届出等)
第十条 沿道整備計画の区域内において、土地の区画形質の変更、建築物等の新築、改築又は増築その他政令で定める行為を行おうとする者は、当該行為に着手する日の三十日前までに、建設省令で定めるところにより、行為の種類、場所、設計又は施行方法、着手予定日その他の建設省令で定める事項を市町村長に届け出なければならない。ただし、次に掲げる行為については、この限りでない。
一 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの
二 非常災害のため必要な応急措置として行う行為
三 国又は地方公共団体が行う行為
四 都市計画事業の施行として行う行為又はこれに準ずる行為として政令で定める行為
五 都市計画法第二十九条の許可を要する行為その他政令で定める行為
2 前項の規定による届出をした者は、その届出に係る事項のうち建設省令で定める事項を変更しようとするときは、当該事項の変更に係る行為に着手する日の三十日前までに、建設省令で定めるところにより、その旨を市町村長に届け出なければならない。
3 市町村長は、第一項又は前項の規定による届出があつた場合において、その届出に係る行為が沿道整備計画に適合しないと認めるときは、その届出をした者に対し、その届出に係る行為に関し、設計の変更その他の必要な措置を執ることを勧告することができる。この場合において、道路交通騒音により生ずる障害の防止又は軽減を図るため必要があると認めるときは、沿道整備計画に定められた事項その他の事項に関し、適切な措置を執ることについて指導又は助言をするものとする。
第四章 沿道整備促進のための施策
(土地の買入れに関する資金の貸付け)
第十一条 国は、市町村が沿道整備計画の区域内の土地のうち道路交通騒音により生ずる障害の防止又は軽減と当該区域の計画的な整備を図るために有効に利用できる土地で政令で定めるものを買い入れる場合には、当該市町村に対し、その土地の取得に要する費用に充てる資金の額の三分の二以内の金額を無利子で貸し付けることができる。
2 前項の規定による貸付金の償還期間及び償還方法については、政令で定める。
3 市町村は、第一項の規定による貸付けに係る土地をこの法律の目的に従つて適切に管理しなければならない。
(緩衝建築物の建築等に要する費用の負担)
第十二条 沿道整備計画の区域内において、遮音上有効な機能を有する建築物として建設省令で定めるもので沿道整備計画に適合するものを建築する者は、沿道整備道路の道路管理者に対し、道路交通騒音により生ずる障害の防止又は軽減について遮音上当該建築物の建築により得られる効用の限度内において、政令で定めるところにより、当該建築物の建築及びその敷地の整備に要する費用の一部を負担することを求めることができる。
2 前項の規定による費用の負担を求めようとする者は、あらかじめ、道路管理者に当該建築物を建築する旨の申出をし、当該費用の額及びその負担の方法について道路管理者と協議しなければならない。
(防音構造化の促進)
第十三条 道路管理者は、道路交通騒音が特に著しい沿道整備道路の沿道に係る沿道整備計画の区域内において建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第六十八条の二第一項の規定に基づく条例により建築物の構造に関する防音上の制限が定められた際、当該区域内に現に存する人の居住の用に供する建築物又はその部分について、その所有者又は当該建築物若しくはその部分に関する所有権以外の権利を有する者が防音上有効な構造とするために行う工事に関し、必要な助成その他その促進のための措置を講ずるものとする。
2 国は、前項の措置に関し、その費用を負担する地方公共団体に対し、予算の範囲内において、必要な財政上の措置を執ることができる。
第五章 雑則
(権限の委任)
第十四条 この法律に規定する道路管理者である建設大臣の権限は、政令で定めるところにより、地方建設局長又は北海道開発局長に委任することができる。
(政令への委任)
第十五条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、政令で定める。
(経過措置)
第十六条 この法律の規定に基づき政令又は建設省令を制定し、又は改廃する場合においては、それぞれ、政令又は建設省令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。
第六章 罰則
第十七条 第十条第一項又は第二項の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、十万円以下の罰金に処する。
第十八条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(道路法の一部改正)
第二条 道路法の一部を次のように改正する。
第四十八条の二第一項中「供用の開始を除く。」の下に「次項において同じ。」を加え、同条第二項を次のように改める。
2 道路管理者は、交通が著しくふくそうし、又はふくそうすることが見込まれることにより、車両の能率的な運行に支障があり、若しくは道路交通騒音により生ずる障害があり、又はそれらのおそれがある道路(高速自動車国道及び前項の規定により指定された道路を除く。以下この項において同じ。)の区間内において、交通の円滑又は道路交通騒音により生ずる障害の防止を図るために必要があると認めるときは、当該道路(まだ供用の開始がないものに限る。)又は道路の部分について、区域を定めて、自動車のみの一般交通の用に供する道路又は道路の部分を指定することができる。ただし、通常他に道路の通行の方法があつて、自動車以外の方法による通行に支障のない場合に限る。
(道路整備特別会計法の一部改正)
第三条 道路整備特別会計法(昭和三十三年法律第三十五号)の一部を次のように改正する。
第三条中「第八条の三第一項」の下に「又は幹線道路の沿道の整備に関する法律(昭和五十五年法律第三十四号)第十一条第一項」を加える。
(都市計画法の一部改正)
第四条 都市計画法の一部を次のように改正する。
第十二条の三の次に次の一条を加える。
(沿道整備計画)
第十二条の四 都市計画には、当該都市計画区域について必要があるときは、幹線道路の沿道の整備に関する法律(昭和五十五年法律第三十四号)第九条第一項の規定による沿道整備計画を定めるものとする。
2 沿道整備計画については、名称、位置及び区域その他政令で定める事項のほか、別に法律で定める事項を都市計画に定めるものとする。
3 沿道整備計画の区域内における建築物の建築その他の行為に関する制限については、別に法律で定める。
第十三条第一項第七号中「行なう」を「行う」に改め、同号を同項第八号とし、同項第六号の次に次の一号を加える。
七 沿道整備計画は、道路交通騒音により生ずる障害を防止するとともに、適正かつ合理的な土地利用が図られるように定めること。
第十三条第三項中「並びに市街地開発事業等予定区域」を「、市街地開発事業等予定区域」に改め、「除く。)」の下に「並びに沿道整備計画」を加える。
第十四条第二項中「及び市街地開発事業等予定区域の区域」を「、市街地開発事業等予定区域の区域及び沿道整備計画の区域」に改める。
第二十一条第一項中「第七号」を「第八号」に改める。
第三十三条第一項各号列記以外の部分中「行なう」を「行う」に、「第三号、第六号」を「第三号、第五号、第七号」に、「第八号」を「第九号」に、「第十号」を「第十一号」に、「第十三号」を「第十四号」に、「第三号、第四号」を「第三号から第五号まで」に、「第六号から」を「第七号から」に改め、同項第十三号を同項第十四号とし、同項第十二号を同項第十三号とし、同項第十一号中「行なう」を「行う」に改め、同号を同項第十二号とし、同項第八号から第十号までを一号ずつ繰り下げ、同項第七号中「行なう」を「行う」に改め、同号を同項第八号とし、同項第六号中「がけくずれ」を「がけ崩れ」に改め、同号を同項第七号とし、同項第五号を同項第六号とし、同項第四号の次に次の一号を加える。
五 当該申請に係る開発区域内の土地について沿道整備計画が定められているときは、予定建築物等の用途又は開発行為の設計が当該沿道整備計画に定められた内容に即して定められていること。
第三十七条第二号中「第十三号」を「第十四号」に改める。
(都市再開発法の一部改正)
第五条 都市再開発法(昭和四十四年法律第三十八号)の一部を次のように改正する。
第七条の八中「第十三号」を「第十四号」に改める。
(建築基準法の一部改正)
第六条 建築基準法の一部を次のように改正する。
目次中「第六節 美観地区(第六十八条)」を
第六節
美観地区(第六十八条)
第七節
沿道整備計画の区域(第六十八条の二)
に改める。
第二条第十八号中「若しくは第三項」を「、第二項若しくは第四項」に改め、同条第二十二号中「行なう」を「行う」に、「行なわない」を「行わない」に改め、同号を同条第二十三号とし、同条第二十一号の次に次の一号を加える。
二十二 沿道整備計画 都市計画法第十二条の四第一項に規定する沿道整備計画をいう。
第三章に次の一節を加える。
第七節 沿道整備計画の区域
(市町村の条例に基づく制限)
第六十八条の二 市町村は、沿道整備計画の区域内において、建築物の敷地、構造、建築設備又は用途に関する事項で当該沿道整備計画の内容として定められたものを、条例で、これらに関する制限として定めることができる。
2 前項の規定による制限は、建築物の利用上の必要性、当該区域内における土地利用の状況等を考慮し、適正な都市機能と健全な都市環境を確保するため合理的に必要と認められる限度において、同項に規定する事項のうち特に重要な事項につき、政令で定める基準に従い、行うものとする。
第八十七条第二項中「及び第五十条」を「、第五十条及び第六十八条の二第一項」に改め、同条第三項中「若しくは第五十条」を「、第五十条若しくは第六十八条の二第一項」に改める。
第八十八条第二項中「第四十八条から第五十一条まで」の下に「、第六十八条の二第一項」を加え、「及び第四十九条から第五十一条まで」を「、第四十九条から第五十一条まで及び第六十八条の二第一項」に、「、「築造面積」」を「「築造面積」と、第六十八条の二第一項中「敷地、構造、建築設備又は用途」とあるのは「用途」」に改める。
第百二条中「又は第六十八条」を「、第六十八条又は第六十八条の二第一項(第八十七条第二項又は第八十八条第二項において準用する場合を含む。)」に改める。
(建設省設置法の一部改正)
第七条 建設省設置法(昭和二十三年法律第百十三号)の一部を次のように改正する。
第三条第十三号の六の次に次の一号を加える。
十三の七 幹線道路の沿道の整備に関する法律(昭和五十五年法律第三十四号)の施行に関する事務を管理すること。
第四条第六項中「、第十五号」を「に規定する事務、同条第十三号の七に規定する事務(都市局の所掌に属するものを除く。)、同条第十五号」に改める。
大蔵大臣臨時代理 国務大臣 正示啓次郎
建設大臣 渡辺栄一
自治大臣 後藤田正晴
内閣総理大臣臨時代理 国務大臣 倉石忠雄