(緑地保全地区に関する都市計画)
第三条 都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第五条の規定により指定された都市計画区域内において、樹林地、草地、水辺地、岩石地若しくはその状況がこれらに類する土地が、単独で、若しくは一体となつて、又はこれらに隣接している土地が、これらと一体となつて、良好な自然的環境を形成しているもの(以下「緑地」という。)で、次の各号の一に該当する土地の区域については、都市計画に緑地保全地区を定めることができる。
一 無秩序な市街地化の防止、公害又は災害の防止等のため必要な 遮断地帯、緩衝地帯又は避難地帯として適切な位置、規模及び形態を有するもの
二 神社、寺院等の建造物、遺跡等と一体となつて、又は伝承若しくは風俗慣習と結びついて当該地域において伝統的又は文化的意義を有するもの
三 風致又は景観がすぐれており、かつ、当該地域の住民の健全な生活環境を確保するため必要なもの
2 首都圏近郊緑地保全法(昭和四十一年法律第百一号)第三条第一項の規定による近郊緑地保全区域内及び近畿圏の保全区域の整備に関する法律(昭和四十二年法律第百三号)第五条第一項の規定による近郊緑地保全区域内の緑地保全地区で、それらの近郊緑地保全区域内において近郊緑地の保全のため特に必要とされるものに関する都市計画の策定に関し必要な基準は、前項の規定にかかわらず、それぞれ首都圏近郊緑地保全法第五条第一項及び近畿圏の保全区域の整備に関する法律第六条第一項に定めるところによるものとする。
(標識の設置等)
第四条 都道府県は、緑地保全地区に関する都市計画が定められたときは、その地区内に、緑地保全地区である旨を表示した標識を設けなければならない。
2 緑地保全地区内の土地の所有者又は占有者は、正当な理由がない限り、前項の標識の設置を拒み、又は妨げてはならない。
3 何人も、第一項の規定により設けられた標識を設置者の承諾を得ないで移転し、若しくは除却し、又は汚損し、若しくは損壊してはならない。
4 都道府県は、第一項の規定による行為により損失を受けた者がある場合においては、その損失を受けた者に対して、通常生ずベき損失を補償する。
5 前項の規定による損失の補償については、都道府県知事と損失を受けた者が協議しなければならない。
6 前項の規定による協議が成立しない場合においては、都道府県知事又は損失を受けた者は、政令で定めるところにより、収用委員会に土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第九十四条第二項の規定による裁決を申請することができる。
(緑地保全地区における行為の制限)
第五条 緑地保全地区内においては、次に掲げる行為は、都道府県知事の許可を受けなければ、してはならない。ただし、公益性が特に高いと認められる事業の実施に係る行為のうち当該緑地の保全上著しい支障を及ぼすおそれがないと認められるもので政令で定めるもの、当該緑地保全地区に関する都市計画が定められた際すでに着手していた行為又は非常災害のため必要な応急措置として行なう行為については、この限りでない。
二 宅地の造成、土地の開墾、土石の採取、鉱物の掘採その他の土地の形質の変更
五 前各号に掲げるもののほか、当該緑地の保全に影響を及ぼすおそれのある行為で政令で定めるもの
2 都道府県知事は、前項の許可の申請があつた場合において、その申請に係る行為が当該緑地の保全上支障があると認めるときは、同項の許可をしてはならない。
3 都道府県知事は、第一項の許可の申請があつた場合において、当該緑地の保全のため必要があると認めるときは、許可に期限その他必要な条件を附することができる。
4 緑地保全地区内において第一項ただし書の政令で定める行為に該当する行為で同項各号に掲げるものをしようとする者は、あらかじめ、都道府県知事にその旨を通知しなければならない。
5 緑地保全地区に関する都市計画が定められた際当該緑地保全地区内においてすでに第一項各号に掲げる行為に着手している者は、その都市計画が定められた日から起算して三十日以内に、都道府県知事にその旨を届け出なければならない。
6 緑地保全地区内において非常災害のため必要な応急措置として第一項各号に掲げる行為をした者は、その行為をした日から起算して十四日以内に、都道府県知事にその旨を届け出なければならない。
7 都道府県知事は、第四項の通知又は第五項若しくは前項の届出があつた場合において、当該緑地の保全のため必要があると認めるときは、通知又は届出をした者に対して、必要な助言又は勧告をすることができる。
8 国の機関又は地方公共団体(港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)に規定する港務局を含む。以下この項において同じ。)が行なう行為については、第一項の許可を受けることを要しない。この場合において、当該国の機関又は地方公共団体は、その行為をしようとするときは、あらかじめ、都道府県知事に協議しなければならない。
9 次に掲げる行為については、第一項から第七項まで及び前項後段の規定は、適用しない。
一 首都圏近郊緑地保全法第四条第一項の規定による近郊緑地保全計画に基づいて行なう行為
二 近畿圏の保全区域の整備に関する法律第九条第四項第一号の政令で定める行為に該当する行為
三 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの
(原状回復命令等)
第六条 都道府県知事は、前条第一項の規定に違反した者又は同条第三項の規定により許可に附せられた条件に違反した者がある場合においては、これらの者又はこれらの者から当該土地、建築物その他工作物若しくは物件についての権利を承継した者に対して、相当の期限を定めて、当該緑地の保全に対する障害を排除するため必要な限度において、その原状回復を命じ、又は原状回復が著しく困難である場合に、これに代わるべき必要な措置をとるべき旨を命ずることができる。
2 都道府県知事は、前項の規定により原状回復又はこれに代わるべき必要な措置(以下この条において「原状回復等」という。)を命じようとするときは、あらかじめ、当該原状回復等を命ずべき者について聴聞を行なわなければならない。ただし、その者が正当な理由がなくて聴聞に応じないときは、この限りでない。
3 第一項の規定による原状回復等を命じようとする場合において、過失がなくて当該原状回復等を命ずべき者を確知することができないときは、都道府県知事は、その者の負担において、当該原状回復等を自ら行ない、又はその命じた者若しくは委任した者にこれを行なわせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、当該原状回復等を行なうべき旨及びその期限までに当該原状回復等を行なわないときは、都道府県知事又はその命じた者若しくは委任した者が当該原状回復等を行なう旨をあらかじめ公告しなければならない。
4 前項の規定により原状回復等を行なおうとする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつた場合においては、これを提示しなければならない。
(損失の補償)
第七条 都道府県は、第五条第一項の許可を受けることができないため損失を受けた者がある場合においては、その損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償する。ただし、次の各号の一に該当する場合における当該許可の申請に係る行為については、この限りでない。
一 第五条第一項の許可の申請に係る行為をするについて、他に、行政庁の許可その他の処分を受けるべきことを定めている法律(法律に基づく命令及び条例を含むものとし、当該許可、その他の処分を受けることができないため損失を受けた者に対して、その損失を補償すべきことを定めているものを除く。)がある場合において、当該許可その他の処分の申請が却下されたとき、又は却下されるべき場合に該当するとき。
二 第五条第一項の許可の申請に係る行為が社会通念上緑地保全地区に関する都市計画が定められた趣旨に著しく反すると認められるとき。
2 第四条第五項及び第六項の規定は、前項の規定による損失の補償について準用する。
(土地の買入れ)
第八条 都道府県は、緑地保全地区内の土地で当該緑地の保全上必要があると認めるものについて、その所有者から第五条第一項の許可を受けることができないためその土地の利用に著しい支障をきたすこととなることにより当該土地を都道府県において買い入れるべき旨の申出があつた場合においては、これを買い入れるものとする。
2 前項の規定による買入れをする場合における土地の価額は、時価によるものとする。
(買い入れた土地の管理)
第九条 都道府県は、前条第一項の規定により買い入れた土地については、この法律の目的に適合するように管理しなければならない。
(国の補助)
第十条 国は、第七条第一項の規定による損失の補償及び第八条第一項の規定による土地の買入れに要する費用については、予算の範囲内において、政令で定めるところにより、その一部を補助することができる。
(報告及び立入検査等)
第十一条 都道府県知事は、緑地保全地区内の緑地の保全のため必要があると認めるときは、その必要な限度において、第五条第一項の規定による許可を受けた者又はその者から当該土地、建築物その他の工作物若しくは物件についての権利を承継した者に対して、当該行為の実施状況その他必要な事項について報告を求めることができる。
2 都道府県知事は、第五条第一項若しくは第三項又は第六条第一項の規定による処分をするために必要があると認めるときは、その必要な限度において、当該職員をして、緑地保全地区内の土地若しくは建物内に立ち入らせ、又は第五条第一項各号に掲げる行為の実施状況を検査させ、若しくはこれらの行為が当該緑地の保全に及ぼす影響を調査させることができる。
3 前項に規定する職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつた場合においては、これを提示しなければならない。
4 第二項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(大都市の特例)
第十二条 この章の規定により、都道府県が処理することとされている事務又は都道府県知事の権限に属するものとされている事務は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下この条において「指定都市」という。)においては、当該指定都市が処理し、又は当該指定都市の長が行なうものとする。この場合においては、この章の規定中都道府県又は都道府県知事に関する規定は、指定都市又は指定都市の長に関する規定として指定都市又は指定都市の長に適用があるものとする。
(公害等調整委員会の裁定)
第十三条 第五条第一項の規定による処分に不服がある者は、その不服の理由が鉱業、採石業又は砂利採取業との調整に関するものであるときは、公害等調整委員会に裁定の申請をすることができる。この場合においては、行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)による不服申立てをすることができない。
2 行政不服審査法第十八条の規定は、前項に規定する処分につき、処分庁が誤つて審査請求をすることができる旨を教示した場合に準用する。