農村地域工業導入促進法をここに公布する。
御名御璽
昭和四十六年六月二十一日
内閣総理大臣 佐藤栄作
法律第百十二号
農村地域工業導入促進法
(目的)
第一条 この法律は、農村地域への工業の導入を積極的かつ計画的に促進するとともに農業従事者がその希望及び能力に従つてその導入される工業に就業することを促進するための措置を講じ、並びにこれらの措置と相まつて農業構造の改善を促進するための措置を講ずることにより、農業と工業との均衡ある発展を図るとともに、雇用構造の高度化に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「農村地域」とは、次に掲げる市町村の区域(新産業都市建設促進法(昭和三十七年法律第百十七号)第三条第四項の規定により指定された新産業都市の区域及び工業整備特別地域整備促進法(昭和三十九年法律第百四十六号)第二条第一項に規定する工業整備特別地域並びにこれらの区域に類する工業開発区域で政令で定めるもの、大都市及びその周辺の地域で政令で定めるもの並びにその人口が政令で定める規模以上である市の区域のうち、政令で定める要件に該当するものを除く。)をいう。
一 農業振興地域の整備に関する法律(昭和四十四年法律第五十八号)第六条第一項の規定により指定された農業振興地域又は同法第四条第一項の農業振興地域整備基本方針において農業振興地域として指定することを相当とする地域として定められた地域の区域の全部又は一部がその区域内にある市町村
二 前号に掲げる市町村以外の市町村であつて、山村振興法(昭和四十年法律第六十四号)第七条第一項の規定により指定された振興山村の区域の全部又は一部がその区域内にあるもの
三 前二号に掲げる市町村以外の市町村であつて、過疎地域対策緊急措置法(昭和四十五年法律第三十一号)第二条第一項に規定する過疎地域をその区域とするもの
(農村地域工業導入基本方針)
第三条 主務大臣は、農村地域への工業の導入に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針においては、次に掲げる事項につき、次条第一項の基本計画の指針となるべきものを定めるものとする。
一 農村地域への工業の導入の目標
二 農村地域に導入される工業への農業従事者(その家族を含む。以下同じ。)の就業の目標
三 農村地域への工業の導入と相まつて促進すべき農業構造の改善に関する目標
四 前三号の目標を達成するために必要な事業の実施に関する事項
五 その他農村地域への工業の導入に関する重要事項
3 主務大臣は、経済事情の変動その他情勢の推移により必要が生じたときは、基本方針を変更するものとする。
4 主務大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、関係行政機関の長に協議しなければならない。
5 主務大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(農村地域工業導入基本計画)
第四条 都道府県知事は、当該都道府県における農村地域への工業の導入に関する基本計画(以下「基本計画」という。)を定めることができる。
2 基本計画においては、都道府県の区域又は自然的経済的社会的諸条件を考慮して都道府県の区域を分けて定める区域ごとに、次に掲げる事項の大綱を定めるものとする。
一 導入すべき工業の業種その他農村地域への工業の導入の目標
二 農村地域に導入される工業への農業従事者の就業の目標
三 農村地域への工業の導入と相まつて促進すべき農業構造の改善に関する目標
四 農村地域への工業の導入に伴う工場用地(工場の附帯施設の用に供する土地を含む。以下全じ。)と農用地等(農業振興地域の整備に関する法律第三条に規定する農用地等をいう。以下同じ。)との利用の調整に関する方針
五 工場用地その他の施設の整備に関する事項
六 労働力の需給の調整及び農業従事者の工業への就業の円滑化に関する事項
七 農村地域への工業の導入と相まつて農業構造の改善を促進するために必要な農業生産の基盤の整備及び開発その他の事業に関する事項
八 農村地域への工業の導入に伴う公害の防止に関する事項
九 その他必要な事項
3 基本計画は、基本方針に即するとともに、国土総合開発計画、首都圏整備計画、近畿圏整備計画、中部圏開発整備計画、北海道総合開発計画、新産業都市建設基本計画、工業整備特別地域整備基本計画、山村振興計画、農業振興地域整備計画、過疎地域振興計画その他法律の規定による地域振興に関する計画及び道路、鉄道等の施設に関する国の計画並びに都市計画との調和が保たれたものでなければならない。
4 都道府県知事は、基本計画を定め、又はこれを変更しようとするときは、主務大臣に協議しなければならない。この場合において、主務大臣は、当該協議に応じようとするときは、関係行政機関の長に協議するものとする。
5 都道府県知事は、基本計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(農村地域工業導入実施計画)
第五条 都道府県又は市町村は、次に掲げる要件に該当する場合には、農村地域内の一定の地区を定め、当該地区への工業の導入に関する実施計画(以下「実施計画」という。)を定めることができる。ただし、すでに他の実施計画が定められている地区については、この限りでない。
一 その地区に工業を導入することによりその周辺の農村地域における農業従事者が当該工業に相当数就業することが見込まれること。
二 その地区への工業の導入と相まつてその周辺の農村地域における農業構造の改善を図ることが必要であると認められること。
三 都道府県が定める実施計画にあつては、当該実施計画に係る地区が、地形、地質その他の自然条件及び用水事情、輸送条件その他の立地条件からみて、その地区への工業の導入を促進することにより、当該地区を拠点としてその周辺の農村地域への工業の導入が促進されると認められるものであつて、政令で定める基準に適合するものであること。
四 市町村が定める実施計画にあつては、当該実施計画に係る地区に立地することが適当な工業を導入することにより、その周辺の農村地域における農用地等の保有及び利用の状況、農業就業人口その他の農業経営に関する基本的条件の現況等からみて、当該農村地域における農地保有の合理化が図られると見込まれること。
2 実施計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 工業を導入すべき地区(以下「工業導入地区」という。)の区域
二 導入すべき工業の業種及びその規模
三 導入される工業への農業従事者の就業の目標
四 工業の導入と相まつて促進すべき農業構造の改善に関する目標
五 工業の導入に伴う工場用地と農用地等との利用の調整に関する事項
六 工場用地その他の施設の整備に関する事項
七 労働力の需給の調整及び農業従事者の工業への就業の円滑化に関する事項
八 工業の導入と相まつて農業構造の改善を促進するために必要な農業生産の基盤の整備及び開発その他の事業に関する事項
九 工業の導入に伴う公害の防止に関する事項
十 その他必要な事項
3 実施計画は、基本計画の内容に即するとともに、前条第三項に規定する計画との調和が保たれたものでなければならない。
4 市町村が定める実施計画は、当該市町村の議会の議決を経て定められた当該市町村の建設に関する基本構想に即するものでなければならない。
5 都道府県が実施計画を定める場合における工業導入地区の選定については、工場立地の調査等に関する法律(昭和三十四年法律第二十四号)第二条の規定による工場適地の調査の成果を参酌しなければならない。
6 都道府県は、実施計画を定め、又はこれを変更しようとするときは、関係市町村の意見をきかなければならない。
7 市町村は、実施計画を定め、又はこれを変更しようとするときは、都道府県知事に協議しなければならない。
8 都道府県又は市町村は、実施計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、その概要を公表するとともに、都道府県にあつては主務大臣及び関係市町村に、市町村にあつては都道府県知事を経由して主務大臣に、実施計画書(実施計画を変更した場合にあつては、当該変更後の実施計画書。以下同じ。)の写しを送付しなければならない。
9 主務大臣は、前項の規定により実施計画書の写しの送付があつた場合においては、その内容を関係行政機関の長に通知しなければならない。この場合において、関係行政機関の長は、主務大臣に対し、当該実施計画に関し意見を述べることができる。
10 過疎地域対策緊急措置法第二条第一項に規定する過疎地域の区域内の一定の地区を定めて、これにつき実施計画を定め、又はこれを変更した場合において、当該実施計画(実施計画を変更した場合にあつては、当該変更後の実施計画。以下この項において同じ。)が同法第五条第一項の振興方針に適合するものであるときは、都道府県又は市町村は、当該実施計画を、それぞれ、同法第六条第五項の都道府県計画又は同条第一項の市町村計画の内容の一部とすることができる。ただし、市町村計画の内容の一部とする場合にあつては、当該市町村の議会の議決を経なければならない。
11 都道府県又は市町村が前項の規定により過疎地域対策緊急措置法第六条第五項の都道府県計画又は同条第一項の市町村計画を変更した場合における同条の規定の適用については、同条第七項において準用する同条第四項中「これを提出し」とあるのは「その旨を報告し」と、同条第七項において準用する同条第五項中「これを自治大臣に提出する」とあるのは「その旨を自治大臣に報告する」と、同条第七項において準用する同条第六項中「の提出があつた場合においては、ただちに、その内容」とあるのは「を変更した旨の報告があつた場合においては、ただちに、その旨」とする。
(基本計画及び実施計画の作成のための援助)
第六条 国は都道府県及び市町村に対し、都道府県は市町村に対し、それぞれ、基本計画又は実施計画の作成のために必要な助言、指導その他の援助を行なうように努めなければならない。
(農用地等の譲渡に係る所得税の軽減)
第七条 個人がその有する工業導入地区内の農用地等(農用地等の上に存する権利を含む。)を実施計画で定める工場用地の用に供するため譲渡した場合には、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)の定めるところにより、その譲渡に係る所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第三十三条第一項に規定する譲渡所得についての所得税を軽減する。
(事業用資産の買換えの場合の課税の特例)
第八条 農村地域以外の地域にある事業用資産を譲渡して工業導入地区内において製造の事業の用に供する事業用資産を取得した場合には、租税特別措置法の定めるところにより、特定の事業用資産の買換えの場合の課税の特例の適用があるものとする。
(減価償却の特例)
第九条 工業導入地区内において製造の事業の用に供する設備を新設し、又は増設した者がある場合には、当該新設又は増設に伴い新たに取得し、又は製作し、若しくは建設した機械及び装置並びに工場用の建物及びその附属設備については、租税特別措置法の定めるところにより、特別償却を行なうことができる。
(地方税の課税免除又は不均一課税に伴う措置)
第十条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第六条の規定により、地方公共団体が、工業導入地区のうち政令で定める地区内において製造の事業の用に供する設備を新設し、又は増設した者について、その事業に対する事業税、その事業に係る工場用の建物若しくはその敷地である土地の取得に対する不動産取得税若しくはその事業に係る機械及び装置若しくはその事業に係る工場用の建物若しくはその敷地である土地に対する固定資産税を課さなかつた場合又はこれらの地方税に係る不均一の課税をした場合において、これらの措置が政令で定める場合に該当するものと認められるときは、地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)第十四条の規定による当該地方公共団体の各年度における基準財政収入額は、同条の規定にかかわらず、自治省令で定める方法によつて算定した当該地方公共団体の当該各年度分の減収額(事業税又は固定資産税に関するこれらの措置による減収額にあつては、これらの措置がされた最初の年度以降三箇年度におけるものに限る。)について同条の規定により当該地方公共団体の当該各年度における基準財政収入額に算入される額に相当する額を同条の規定による当該地方公共団体の当該各年度(これらの措置が自治省令で定める日以後において行なわれたときは、当該減収額について当該各年度の翌年度)における基準財政収入額となるべき額から控除した額とする。
(資金の確保等)
第十一条 国及び地方公共団体は、工業導入地区内において製造の事業の用に供する施設で実施計画に適合するものの整備につき、必要な資金の確保その他の援助に努めなければならない。
(地方債についての配慮)
第十二条 地方公共団体が実施計画を達成するために行なう工場用地の造成その他の事業に要する経費に充てるために起こす地方債については、法令の範囲内において、資金事情及び当該地方公共団体の財政状況が許す限り、適切な配慮をするものとする。
(農林中央金庫からの資金の貸付け)
第十三条 農林中央金庫は、農林中央金庫法(大正十二年法律第四十二号)第十五条第一項の規定にかかわらず、業務上の余裕金をもつて、工業導入地区内において製造の事業の用に供する施設で実施計画に適合するものを新設し若しくは増設する者又は工業導入地区内において実施計画で定める工場用地を取得し若しくは造成する営利を目的としない法人に対し、農林大臣及び大蔵大臣の認可を受けて、償還期限が十年以内の貸付けを行なうことができる。
(施設の整備)
第十四条 国及び地方公共団体は、実施計画で定める農村地域への工業の導入を促進するため、工場用地、道路、工業用水道及び通信運輸施設の整備の促進に努めなければならない。
(職業紹介の充実等)
第十五条 国は、実施計画で定めるところに従い導入される工業に農業従事者が円滑に就業することを促進するため、関係団体の協力を得て、雇用情報の提供、職業指導及び職業紹介の充実等必要な措置を講ずるように努めなければならない。
2 国及び地方公共団体は、実施計画で定めるところに従い導入される工業に農業従事者が円滑に就業することを促進するため、職業訓練(作業環境に適応させる訓練を含む。)の実施、職業転換給付金(雇用対策法(昭和四十一年法律第百三十二号)第十三条の職業転換給付金をいう。)の支給等必要な措置を講ずるように努めなければならない。
(農業構造改善の促進)
第十六条 国及び地方公共団体は、実施計画で定める農業構造の改善を促進するため、農業生産の基盤の整備及び開発、農業経営の近代化のための施設の整備等の事業の推進に努めなければならない。
(農地法等による処分についての配慮)
第十七条 国の行政機関の長又は都道府県知事は、土地を実施計画で定める用途に供するため農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)その他の法律の規定による許可その他の処分を求められたときは、当該実施計画で定める農村地域への工業の導入が促進されるよう配慮するものとする。
(都道府県又は市町村の審議会)
第十八条 基本計画及び実施計画の作成その他農村地域への工業の導入の促進に関する重要事項を調査審議させるため、都道府県は、条例で、審議会を置くことができる。
2 実施計画の作成その他農村地域への工業の導入の促進に関する重要事項を調査審議させるため、市町村は、条例で、審議会を置くことができる。
3 前二項に規定するもののほか、都道府県又は市町村に置かれる審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、都道府県又は市町村の条例で定める。
(主務大臣)
第十九条 この法律において主務大臣は、農林大臣、通商産業大臣及び労働大臣とする。
附 則
この法律は、公布の日から施行する。
大蔵大臣 福田赳夫
農林大臣 倉石忠雄
通商産業大臣 宮澤喜一
労働大臣 野原正勝
自治大臣臨時代理 国務大臣 根本龍太郎
内閣総理大臣 佐藤栄作
農村地域工業導入促進法をここに公布する。
御名御璽
昭和四十六年六月二十一日
内閣総理大臣 佐藤栄作
法律第百十二号
農村地域工業導入促進法
(目的)
第一条 この法律は、農村地域への工業の導入を積極的かつ計画的に促進するとともに農業従事者がその希望及び能力に従つてその導入される工業に就業することを促進するための措置を講じ、並びにこれらの措置と相まつて農業構造の改善を促進するための措置を講ずることにより、農業と工業との均衡ある発展を図るとともに、雇用構造の高度化に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「農村地域」とは、次に掲げる市町村の区域(新産業都市建設促進法(昭和三十七年法律第百十七号)第三条第四項の規定により指定された新産業都市の区域及び工業整備特別地域整備促進法(昭和三十九年法律第百四十六号)第二条第一項に規定する工業整備特別地域並びにこれらの区域に類する工業開発区域で政令で定めるもの、大都市及びその周辺の地域で政令で定めるもの並びにその人口が政令で定める規模以上である市の区域のうち、政令で定める要件に該当するものを除く。)をいう。
一 農業振興地域の整備に関する法律(昭和四十四年法律第五十八号)第六条第一項の規定により指定された農業振興地域又は同法第四条第一項の農業振興地域整備基本方針において農業振興地域として指定することを相当とする地域として定められた地域の区域の全部又は一部がその区域内にある市町村
二 前号に掲げる市町村以外の市町村であつて、山村振興法(昭和四十年法律第六十四号)第七条第一項の規定により指定された振興山村の区域の全部又は一部がその区域内にあるもの
三 前二号に掲げる市町村以外の市町村であつて、過疎地域対策緊急措置法(昭和四十五年法律第三十一号)第二条第一項に規定する過疎地域をその区域とするもの
(農村地域工業導入基本方針)
第三条 主務大臣は、農村地域への工業の導入に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針においては、次に掲げる事項につき、次条第一項の基本計画の指針となるべきものを定めるものとする。
一 農村地域への工業の導入の目標
二 農村地域に導入される工業への農業従事者(その家族を含む。以下同じ。)の就業の目標
三 農村地域への工業の導入と相まつて促進すべき農業構造の改善に関する目標
四 前三号の目標を達成するために必要な事業の実施に関する事項
五 その他農村地域への工業の導入に関する重要事項
3 主務大臣は、経済事情の変動その他情勢の推移により必要が生じたときは、基本方針を変更するものとする。
4 主務大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、関係行政機関の長に協議しなければならない。
5 主務大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(農村地域工業導入基本計画)
第四条 都道府県知事は、当該都道府県における農村地域への工業の導入に関する基本計画(以下「基本計画」という。)を定めることができる。
2 基本計画においては、都道府県の区域又は自然的経済的社会的諸条件を考慮して都道府県の区域を分けて定める区域ごとに、次に掲げる事項の大綱を定めるものとする。
一 導入すべき工業の業種その他農村地域への工業の導入の目標
二 農村地域に導入される工業への農業従事者の就業の目標
三 農村地域への工業の導入と相まつて促進すべき農業構造の改善に関する目標
四 農村地域への工業の導入に伴う工場用地(工場の附帯施設の用に供する土地を含む。以下全じ。)と農用地等(農業振興地域の整備に関する法律第三条に規定する農用地等をいう。以下同じ。)との利用の調整に関する方針
五 工場用地その他の施設の整備に関する事項
六 労働力の需給の調整及び農業従事者の工業への就業の円滑化に関する事項
七 農村地域への工業の導入と相まつて農業構造の改善を促進するために必要な農業生産の基盤の整備及び開発その他の事業に関する事項
八 農村地域への工業の導入に伴う公害の防止に関する事項
九 その他必要な事項
3 基本計画は、基本方針に即するとともに、国土総合開発計画、首都圏整備計画、近畿圏整備計画、中部圏開発整備計画、北海道総合開発計画、新産業都市建設基本計画、工業整備特別地域整備基本計画、山村振興計画、農業振興地域整備計画、過疎地域振興計画その他法律の規定による地域振興に関する計画及び道路、鉄道等の施設に関する国の計画並びに都市計画との調和が保たれたものでなければならない。
4 都道府県知事は、基本計画を定め、又はこれを変更しようとするときは、主務大臣に協議しなければならない。この場合において、主務大臣は、当該協議に応じようとするときは、関係行政機関の長に協議するものとする。
5 都道府県知事は、基本計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(農村地域工業導入実施計画)
第五条 都道府県又は市町村は、次に掲げる要件に該当する場合には、農村地域内の一定の地区を定め、当該地区への工業の導入に関する実施計画(以下「実施計画」という。)を定めることができる。ただし、すでに他の実施計画が定められている地区については、この限りでない。
一 その地区に工業を導入することによりその周辺の農村地域における農業従事者が当該工業に相当数就業することが見込まれること。
二 その地区への工業の導入と相まつてその周辺の農村地域における農業構造の改善を図ることが必要であると認められること。
三 都道府県が定める実施計画にあつては、当該実施計画に係る地区が、地形、地質その他の自然条件及び用水事情、輸送条件その他の立地条件からみて、その地区への工業の導入を促進することにより、当該地区を拠点としてその周辺の農村地域への工業の導入が促進されると認められるものであつて、政令で定める基準に適合するものであること。
四 市町村が定める実施計画にあつては、当該実施計画に係る地区に立地することが適当な工業を導入することにより、その周辺の農村地域における農用地等の保有及び利用の状況、農業就業人口その他の農業経営に関する基本的条件の現況等からみて、当該農村地域における農地保有の合理化が図られると見込まれること。
2 実施計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 工業を導入すべき地区(以下「工業導入地区」という。)の区域
二 導入すべき工業の業種及びその規模
三 導入される工業への農業従事者の就業の目標
四 工業の導入と相まつて促進すべき農業構造の改善に関する目標
五 工業の導入に伴う工場用地と農用地等との利用の調整に関する事項
六 工場用地その他の施設の整備に関する事項
七 労働力の需給の調整及び農業従事者の工業への就業の円滑化に関する事項
八 工業の導入と相まつて農業構造の改善を促進するために必要な農業生産の基盤の整備及び開発その他の事業に関する事項
九 工業の導入に伴う公害の防止に関する事項
十 その他必要な事項
3 実施計画は、基本計画の内容に即するとともに、前条第三項に規定する計画との調和が保たれたものでなければならない。
4 市町村が定める実施計画は、当該市町村の議会の議決を経て定められた当該市町村の建設に関する基本構想に即するものでなければならない。
5 都道府県が実施計画を定める場合における工業導入地区の選定については、工場立地の調査等に関する法律(昭和三十四年法律第二十四号)第二条の規定による工場適地の調査の成果を参酌しなければならない。
6 都道府県は、実施計画を定め、又はこれを変更しようとするときは、関係市町村の意見をきかなければならない。
7 市町村は、実施計画を定め、又はこれを変更しようとするときは、都道府県知事に協議しなければならない。
8 都道府県又は市町村は、実施計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、その概要を公表するとともに、都道府県にあつては主務大臣及び関係市町村に、市町村にあつては都道府県知事を経由して主務大臣に、実施計画書(実施計画を変更した場合にあつては、当該変更後の実施計画書。以下同じ。)の写しを送付しなければならない。
9 主務大臣は、前項の規定により実施計画書の写しの送付があつた場合においては、その内容を関係行政機関の長に通知しなければならない。この場合において、関係行政機関の長は、主務大臣に対し、当該実施計画に関し意見を述べることができる。
10 過疎地域対策緊急措置法第二条第一項に規定する過疎地域の区域内の一定の地区を定めて、これにつき実施計画を定め、又はこれを変更した場合において、当該実施計画(実施計画を変更した場合にあつては、当該変更後の実施計画。以下この項において同じ。)が同法第五条第一項の振興方針に適合するものであるときは、都道府県又は市町村は、当該実施計画を、それぞれ、同法第六条第五項の都道府県計画又は同条第一項の市町村計画の内容の一部とすることができる。ただし、市町村計画の内容の一部とする場合にあつては、当該市町村の議会の議決を経なければならない。
11 都道府県又は市町村が前項の規定により過疎地域対策緊急措置法第六条第五項の都道府県計画又は同条第一項の市町村計画を変更した場合における同条の規定の適用については、同条第七項において準用する同条第四項中「これを提出し」とあるのは「その旨を報告し」と、同条第七項において準用する同条第五項中「これを自治大臣に提出する」とあるのは「その旨を自治大臣に報告する」と、同条第七項において準用する同条第六項中「の提出があつた場合においては、ただちに、その内容」とあるのは「を変更した旨の報告があつた場合においては、ただちに、その旨」とする。
(基本計画及び実施計画の作成のための援助)
第六条 国は都道府県及び市町村に対し、都道府県は市町村に対し、それぞれ、基本計画又は実施計画の作成のために必要な助言、指導その他の援助を行なうように努めなければならない。
(農用地等の譲渡に係る所得税の軽減)
第七条 個人がその有する工業導入地区内の農用地等(農用地等の上に存する権利を含む。)を実施計画で定める工場用地の用に供するため譲渡した場合には、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)の定めるところにより、その譲渡に係る所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第三十三条第一項に規定する譲渡所得についての所得税を軽減する。
(事業用資産の買換えの場合の課税の特例)
第八条 農村地域以外の地域にある事業用資産を譲渡して工業導入地区内において製造の事業の用に供する事業用資産を取得した場合には、租税特別措置法の定めるところにより、特定の事業用資産の買換えの場合の課税の特例の適用があるものとする。
(減価償却の特例)
第九条 工業導入地区内において製造の事業の用に供する設備を新設し、又は増設した者がある場合には、当該新設又は増設に伴い新たに取得し、又は製作し、若しくは建設した機械及び装置並びに工場用の建物及びその附属設備については、租税特別措置法の定めるところにより、特別償却を行なうことができる。
(地方税の課税免除又は不均一課税に伴う措置)
第十条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第六条の規定により、地方公共団体が、工業導入地区のうち政令で定める地区内において製造の事業の用に供する設備を新設し、又は増設した者について、その事業に対する事業税、その事業に係る工場用の建物若しくはその敷地である土地の取得に対する不動産取得税若しくはその事業に係る機械及び装置若しくはその事業に係る工場用の建物若しくはその敷地である土地に対する固定資産税を課さなかつた場合又はこれらの地方税に係る不均一の課税をした場合において、これらの措置が政令で定める場合に該当するものと認められるときは、地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)第十四条の規定による当該地方公共団体の各年度における基準財政収入額は、同条の規定にかかわらず、自治省令で定める方法によつて算定した当該地方公共団体の当該各年度分の減収額(事業税又は固定資産税に関するこれらの措置による減収額にあつては、これらの措置がされた最初の年度以降三箇年度におけるものに限る。)について同条の規定により当該地方公共団体の当該各年度における基準財政収入額に算入される額に相当する額を同条の規定による当該地方公共団体の当該各年度(これらの措置が自治省令で定める日以後において行なわれたときは、当該減収額について当該各年度の翌年度)における基準財政収入額となるべき額から控除した額とする。
(資金の確保等)
第十一条 国及び地方公共団体は、工業導入地区内において製造の事業の用に供する施設で実施計画に適合するものの整備につき、必要な資金の確保その他の援助に努めなければならない。
(地方債についての配慮)
第十二条 地方公共団体が実施計画を達成するために行なう工場用地の造成その他の事業に要する経費に充てるために起こす地方債については、法令の範囲内において、資金事情及び当該地方公共団体の財政状況が許す限り、適切な配慮をするものとする。
(農林中央金庫からの資金の貸付け)
第十三条 農林中央金庫は、農林中央金庫法(大正十二年法律第四十二号)第十五条第一項の規定にかかわらず、業務上の余裕金をもつて、工業導入地区内において製造の事業の用に供する施設で実施計画に適合するものを新設し若しくは増設する者又は工業導入地区内において実施計画で定める工場用地を取得し若しくは造成する営利を目的としない法人に対し、農林大臣及び大蔵大臣の認可を受けて、償還期限が十年以内の貸付けを行なうことができる。
(施設の整備)
第十四条 国及び地方公共団体は、実施計画で定める農村地域への工業の導入を促進するため、工場用地、道路、工業用水道及び通信運輸施設の整備の促進に努めなければならない。
(職業紹介の充実等)
第十五条 国は、実施計画で定めるところに従い導入される工業に農業従事者が円滑に就業することを促進するため、関係団体の協力を得て、雇用情報の提供、職業指導及び職業紹介の充実等必要な措置を講ずるように努めなければならない。
2 国及び地方公共団体は、実施計画で定めるところに従い導入される工業に農業従事者が円滑に就業することを促進するため、職業訓練(作業環境に適応させる訓練を含む。)の実施、職業転換給付金(雇用対策法(昭和四十一年法律第百三十二号)第十三条の職業転換給付金をいう。)の支給等必要な措置を講ずるように努めなければならない。
(農業構造改善の促進)
第十六条 国及び地方公共団体は、実施計画で定める農業構造の改善を促進するため、農業生産の基盤の整備及び開発、農業経営の近代化のための施設の整備等の事業の推進に努めなければならない。
(農地法等による処分についての配慮)
第十七条 国の行政機関の長又は都道府県知事は、土地を実施計画で定める用途に供するため農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)その他の法律の規定による許可その他の処分を求められたときは、当該実施計画で定める農村地域への工業の導入が促進されるよう配慮するものとする。
(都道府県又は市町村の審議会)
第十八条 基本計画及び実施計画の作成その他農村地域への工業の導入の促進に関する重要事項を調査審議させるため、都道府県は、条例で、審議会を置くことができる。
2 実施計画の作成その他農村地域への工業の導入の促進に関する重要事項を調査審議させるため、市町村は、条例で、審議会を置くことができる。
3 前二項に規定するもののほか、都道府県又は市町村に置かれる審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、都道府県又は市町村の条例で定める。
(主務大臣)
第十九条 この法律において主務大臣は、農林大臣、通商産業大臣及び労働大臣とする。
附 則
この法律は、公布の日から施行する。
大蔵大臣 福田赳夫
農林大臣 倉石忠雄
通商産業大臣 宮沢喜一
労働大臣 野原正勝
自治大臣臨時代理 国務大臣 根本龍太郎
内閣総理大臣 佐藤栄作