(目的)
第一條 この法律は、毒物及び劇物について、保健衞生上の見地から必要な取締を行うことを目的とする。
(定義)
第二條 この法律で「毒物」とは、別表第一に掲げる物であつて、医薬品以外のものをいう。
2 この法律で「劇物」とは、別表第二に掲げる物であつて、医薬品以外のものをいう。
(禁止規定)
第三條 毒物又は劇物の製造業の登録を受けた者でなければ、毒物又は劇物を販売又は授與の目的で製造してはならない。
2 毒物又は劇物の輸入業の登録を受けた者でなければ、毒物又は劇物を販売又は授與の目的で輸入してはならない。
3 毒物又は劇物の販売業の登録を受けた者でなければ、毒物又は劇物を販売し、授與し、又は販売若しくは授與の目的で貯蔵し、運搬し、若しくは陳列してはならない。但し、毒物又は劇物の製造業者又は輸入業者が、その製造し、又は輸入した毒物又は劇物を、他の毒物又は劇物の製造業者、輸入業者又は販売業者に販売し、授與し、又はこれらの目的で貯蔵し、運搬し、若しくは陳列するときは、この限りでない。
(登録)
第四條 毒物又は劇物の製造業又は輸入業の登録は、製造所又は営業所ごとに厚生大臣が、販売業の登録は、店舖ごとにその店舖の所在地の都道府県知事が行う。
2 毒物又は劇物の製造業又は輸入業の登録を受けようとする者は、製造業者にあつては製造所、輸入業者にあつては営業所ごとに、その製造所又は営業所の所在地の都道府県知事を経て、厚生大臣に申請書を出さなければならない。
3 毒物又は劇物の販売業の登録を受けようとする者は、店舖ごとに、その店舖の所在地の都道府県知事に申請書を出さなければならない。
4 製造業又は輸入業の登録は、五年ごとに、販売業の登録は、二年ごとに、更新を受けなければ、その効力を失う。
(登録基準)
第五條 厚生大臣又は都道府県知事は、毒物又は劇物の製造業、輸入業又は販売業の登録を受けようとする者の設備が、左の各号に掲げる基準に適合しないと認めるときは、前條の登録をしてはならない。
一 毒物又は劇物を貯蔵するタンク、ドラムかん、その他の容器は、毒物又は劇物が漏れ、又はしみ出るおそれがないものであること。
二 貯水池その他容器を用いないで毒物又は劇物を貯蔵する設備は、毒物又は劇物が地下にしみ込み、又は流れ出るおそれがないものであること。
三 毒物又は劇物を貯蔵し、又は陳列する場所にかぎをかける設備があること。但し、貯蔵の場所が性質上かぎをかけることのできないものであるときを除く。
四 毒物又は劇物を貯蔵する場所が性質上かぎをかけることのできないものであるときは、その周囲に、堅固なさくが設けてあること。
五 毒物又は劇物の運搬用具は、毒物又は劇物が漏れ、又はしみ出るおそれがないものであること。
(登録事項)
第六條 第四條の登録は、左の各号に掲げる事項について行うものとする。
一 申請者の氏名及び住所(法人にあつては、その名称及び主たる事務所の所在地)
二 製造し、輸入し、又は販売しようとする毒物又は劇物の名称
(事業管理人)
第七條 第四條の登録を受けて、毒物又は劇物の製造業、輸入業又は販売業を営む者(以下「毒物劇物営業者」という。)は、毒物又は劇物の取扱に関する実務を管理させるため、毒物又は劇物を直接に取り扱う製造所、営業所又は店舖ごとに、專任の事業管理人を置かなければならない。但し、自ら事業管理人として管理する製造所、営業所又は店舖については、この限りでない。
2 毒物劇物営業者が毒物又は劇物の製造業、輸入業又は販売業のうち二以上を併せ営む場合において、その製造所、営業所又は店舖が互に隣接しているときは、事業管理人は、前項の規定にかかわらず、これらの施設を通じて一人で足りる。
3 毒物劇物営業者は、事業管理人を置いたときは、三十日以内に、製造業又は輸入業の登録を受けている者にあつては厚生大臣に、販売業の登録を受けている者にあつては都道府県知事に、その事業管理人の氏名を届け出なければならない。事業管理人を変更したときも、同様とする。
(事業管理人の資格)
第八條 左の各号に掲げる者でなければ、前條の事業管理人となることができない。
二 厚生省令で定める学校で、応用化学に関する学課を修了した者
三 厚生省令で定める課目につき、都道府県知事が行う毒物劇物取扱者試験に合格した者
2 左に掲げる者は、前條の事業管理人となることができない。
四 毒物若しくは劇物又は薬事に関する罪を犯し、懲役に処せられた者
(登録の変更)
第九條 第四條第二項及び第三項の規定は、毒物劇物営業者が第六條第二号に掲げる事項につき登録の変更を受けようとする場合に準用する。
(届出)
第十條 毒物劇物営業者は、左の各号の一に該当する場合には、三十日以内に、製造業又は輸入業の登録を受けている者にあつては厚生大臣に、販売業の登録を受けている者にあつては都道府県知事に、その旨を届け出なければならない。
一 氏名又は住所(法人にあつては、その名称又は主たる事務所の所在地)を変更したとき。
二 毒物又は劇物を貯蔵し、又は運搬する設備の重要な部分を変更したとき。
三 当該製造所、営業所又は店舖における営業を廃止したとき。
(毒物又は劇物の取扱)
第十一條 毒物劇物営業者は、毒物又は劇物を貯蔵し、運搬し、又は陳列する場合には、堅固な容器又は被包を用い、かぎをかけ、さくを施す等、毒物又は劇物が盜難にあい、紛失し、漏れ、流れ、又はしみ出ることを防ぐのに必要な方法を講じなければならない。
2 毒物劇物営業者は、毒物又は厚生省令で定める劇物については、その容器として、飮食物の容器として通常使用される物を使用してはならない。
(毒物又は劇物の表示)
第十二條 毒物劇物営業者は、毒物又は劇物の容器及び被包に、「医薬用外」の文字及び毒物については赤地に白色をもつて「毒物」の文字、劇物については白地に赤色をもつて「劇物」の文字を表示しなければならない。
2 毒物劇物営業者は、その容器及び被包に、左に掲げる事項を表示しなければ、毒物又は劇物を販売し、又は授與してはならない。
三 厚生省令で定める毒物又は劇物については、それぞれ厚生省令で定めるその解毒剤の名称
四 毒物又は劇物の取扱及び使用上特に必要と認めて、厚生省令で定める事項
3 毒物劇物営業者は、毒物又は劇物を貯蔵し、又は陳列する場所に、「医薬用外」の文字及び毒物については「毒物」、劇物については「劇物」の文字を表示しなければならない。
(農業用毒物又は劇物の着色)
第十三條 毒物劇物営業者は、左に掲げる毒物又は劇物については、厚生省令で定める方法により着色したものでなければ、これを農業用として販売し、又は授與してはならない。
(毒物又は劇物の讓渡手続)
第十四條 毒物劇物営業者は、毒物又は劇物を他の毒物劇物営業者に販売し、又は授與したときは、その都度、左に掲げる事項を書面に記載しておかなければならない。
三 讓受人の氏名、職業及び住所(法人にあつては、その名称及び主たる事務所の所在地)
2 毒物劇物営業者は、讓受人から前項各号に掲げる事項を記載し、印をおした書面の提出を受けなければ、毒物又は劇物を毒物劇物営業者以外の者に販売し、又は授與してはならない。
3 毒物劇物営業者は、販売又は授與の日から五年間、前二項の書面を保存しなければならない。
(毒物又は劇物の交付の制限)
第十五條 毒物劇物営業者は、毒物又は劇物を左に掲げる者に交付してはならない。
(四エチル鉛その他の取扱等)
第十六條 四エチル鉛、モノフルオール醋酸ナトリウムその他これらと同等以上の毒性を有する毒物であつて、政令で指定するものについては、政令で、その製造、貯蔵、運搬、他の物との混入及び使用の方法に関して技術上の基準を定めることができる。
2 前項の規定により政令で技術上の基準が定められたときは、同項の毒物は、その基準によらなければ、製造し、貯蔵し、運搬し、他の物と混入し、又は使用してはならない。
3 第一項の政令で指定された毒物は、同項の規定により政令で技術上の基準が定められるまでの間、製造し、輸入し、他の物と混入し、販売し、又は授與してはならない。
(立入検査等)
第十七條 厚生大臣又は都道府県知事は、保健衞生上必要があると認めるときは、毒物劇物営業者から必要な報告を徴し、又は当該職員に、これらの者の製造所、営業所、店舖その他業務上毒物若しくは劇物を取り扱う場所に立ち入り、帳簿その他の物件を検査させ、関係者に質問させ、試験のため必要な最小限度の分量に限り、毒物、劇物若しくはその疑のある物を收去させることができる。
2 前項の職員は、その身分を示す証票を携帶し、関係者の請求があるときは、これを呈示しなければならない。
3 第一項の規定は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(毒物劇物監視員)
第十八條 前條第一項に規定する当該職員の職務を行わせるために、国及び都道府県に毒物劇物監視員を置く。
(登録の取消)
第十九條 厚生大臣は、毒物又は劇物の製造業又は輸入業の登録を受けている者について、都道府県知事は、販売業の登録を受けている者について、これらの者の有する設備が第五條各号の基準に適合しなくなつたと認めるときは、相当の期間を定めて、その設備を同條各号の基準に適合させるために必要な措置をとるべき旨を命ずることができる。
2 前項の命令を受けた者が、その指定された期間内に必要な措置をとらないときは、厚生大臣又は都道府県知事は、その者の登録を取り消さなければならない。
3 厚生大臣は、毒物又は劇物の製造業又は輸入業の登録を受けている者について、都道府県知事は、販売業の登録を受けている者について、これらの者がこの法律の規定に違反したときは、その登録を取り消し、又は期間を定めて、業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
(聽聞)
第二十條 厚生大臣又は都道府県知事は、前條第三項の処分をしようとする場合においては、あらかじめ、その毒物劇物営業者又はその代理人の出頭を求めて、公開による聽聞を行わなければならない。
2 前項の場合において、厚生大臣又は都道府県知事は、処分をしようとする事由並びに聽聞の期日及び場所を、期日の一週間前までに、その毒物劇物営業者に通知し、且つ、聽聞の期日及び場所を公示しなければならない。
3 聽聞の場合においては、その毒物劇物営業者は、自己のために釈明をし、且つ、証拠を提出することができる。
(登録の取消又は廃業の場合の措置)
第二十一條 毒物劇物営業者は、登録を取り消され、又はその営業を廃止したときは、その所有する毒物若しくは劇物又はその営業の設備を他の毒物劇物営業者に讓り渡し、又は保健衞生上危害を生ずるおそれのない方法により処置しなければならない。この場合には、第三條第三項の規定を適用しない。
(毒物劇物営業者以外の者に対する準用)
第二十二條 第十一條第一項、第十二條第一項及び第三項、第十七條並びに前條の規定は、毒物劇物営業者以外の者であつて、厚生省令で定める毒物又は劇物を業務上取り扱う者に準用する。
(手数料)
第二十三條 左の各号に掲げる者は、それぞれ当該各号に定める額の手数料を納めなければならない。
一 毒物又は劇物の製造業又は輸入業の登録を申請する者 千円
二 毒物又は劇物の販売業の登録を申請する者 五百円
2 前項第一号、第三号及び第六号の手数料のうち、その半額は、国庫の收入とし、その残額並びに同項第二号、第四号、第五号及び第七号の手数料は、都道府県の收入とする。
(罰則)
第二十四條 左の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役若しくは五万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
二 第十二條(第二十二條で準用する場合を含む。)の表示をせず、又は虚僞の表示をした者
六 第十九條第三項の規定による業務の停止命令に違反した者
第二十五條 左の各号の一に該当する者は、五千円以下の罰金に処する。
一 第十條第三号に規定する事項につき、その届出を怠り、又は虚僞の届出をした者
三 第十七條第一項(第二十二條で準用する場合を含む。)の規定による厚生大臣又は都道府県知事の要求があつた場合に、報告をせず、又は虚僞の報告をした者
四 第十七條第一項(第二十二條で準用する場合を含む。)の規定による立入、検査、質問又は收去を拒み、妨げ、又は忌避した者
五 第二十一條(第二十二條で準用する場合を含む。)の規定に違反した者
第二十六條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前二條の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本條の罰金を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため、その業務について相当の注意及び監督が盡されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。