毒物劇物営業取締法
法令番号: 法律第206号
公布年月日: 昭和22年12月18日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

終戦後の社会混乱に乗じて毒物・劇物が悪用され、公共の福祉を脅かす事例が多発している。現行の毒物劇物営業取締規則は昭和23年1月1日以降失効するため、これに代わる法律を制定し、毒物及び劇物の営業に関する取締りを遺漏なく実施する必要がある。そのため、新たに毒物劇物営業取締法を制定し、人命に重大な影響を与える毒物及び劇物の取扱いに対して厳重な取締りを行うことを目的とする。

参照した発言:
第1回国会 衆議院 厚生委員会 第33号

審議経過

第1回国会

衆議院
(昭和22年11月24日)
参議院
(昭和22年11月25日)
衆議院
(昭和22年11月27日)
(昭和22年11月28日)
参議院
(昭和22年12月2日)
(昭和22年12月3日)
衆議院
(昭和22年12月10日)
毒物劇物営業取締法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十二年十二月十八日
内閣総理大臣 片山哲
法律第二百六号
毒物劇物営業取締法
第一條 毒物劇物営業の取締に関しては、この法律の定めるところによる。
第二條 この法律で毒物又は劇物とは、医藥以外の用に供する毒性又は劇性の物品で、厚生大臣の指定するものをいう。
この法律で毒物劇物営業とは、毒物又は劇物の製造、輸入又は販賣の業をいう。
第三條 毒物又は劇物の販賣業を営もうとする者は、第二項後段に規定する者を除いては、主たる事業所の所在地を管轄する都道府縣知事の許可を受けなければならない。
毒物又は劇物の製造業又は輸入業を営もうとする者は、主たる事業所の所在地を管轄する都道府縣知事に、その旨を届け出なければならない。藥剤師又は藥剤師を使用している医藥品の製造業者、輸入販賣業者若しくは販賣業者が、毒物又は劇物の販賣業を営もうとするときも、同樣とする。
第四條 毒物劇物営業を営む者は、事業所ごとに、その所在地を管轄する都道府縣知事の許可を受けて定めた事業管理人を置き、その事業所における毒物又は劇物の取扱に関する業務を管理させなければならない。但し、第五條第一項各号の一に該当しない毒物劇物営業を営む者が、その事業所の所在地を管轄する都道府縣知事の許可を受けて、みづからその事業所における毒物又は劇物の取扱に関する業務を管理する場合は、この限りでない。
第五條 左に掲げる者は、事業管理人となることができない。
一 未成年者、禁治産者又は準禁治産者
二 精神病者
三 つんぼ、おし又は盲の者
四 毒物劇物営業に関して罪を犯し、罰金以上の刑に処せられた者
前項に定めるものの外、事業管理人の資格に関する事項は、厚生大臣が、これを定める。
第六條 毒物劇物営業を営む者が、その事業所の所在地を変更し、若しくはその事業の全部若しくは一部を廃止し、又は死亡し、若しくは解散したときは、その事業所の所在地を管轄する都道府縣知事にその旨を届け出なければならない。
第七條 毒物劇物営業を営む者は、その事業所以外の場所で毒物劇物営業を営んではならい。但し、その場所を管轄する都道府縣知事の許可を受けた場合は、この限りでない。
第八條 毒物劇物営業を営む者は、毒物又は劇物を堅固な容器又は被包に容れ、且つ、安全な場所に貯藏し、又は陳列しなければならない。
毒物劇物営業を営む者は、毒物若しくは劇物の容器若しくは被包若しくは貯藏若しくは陳列の場所又は毒物若しくは劇物を取り扱う器具に、一定の標示をしなければならない。
第九條 毒物劇物営業を営む者は、農業上必要な毒物又は劇物であつて厚生大臣の指定するものについては、厚生大臣の定めるところに從つて着色したものでなければ、これを讓り渡してはならない。
第十條 毒物劇物営業を営む者は、讓受人から毒物又は劇物の品名、数量、讓受の年月日並びに讓受人の氏名、職業及び住所(法人にあつては、その名称又は商号及び住所)を記載し、記名して印をおした文書の提出を受け、且つ、その毒物又は劇物が営業、学術その他正当な用途に供される場合に限り、毒物又は劇物を讓り渡すことができる。
毒物劇物営業を営む者は、前項に規定する文書を五年間保存しなければならない。
第十一條 毒物劇物営業を営む者は、毒物又は劇物を年齢十四年未満の者に交付してはならない。
第十二條 都道府縣知事は、必要があると認める場合においては、当該吏員に、毒物若しくは劇物の製造、輸入、貯藏、陳列若しくは販賣の場所に臨檢し、関係者に尋問し、帳簿書類その他の物件を檢査し、又は毒物若しくは劇物の疑のあるものについて、試驗の用に供するために必要な分量に限り、無償でこれを收去させることができる。
前項の場合には、当該吏員は、その身分を示す証票を携帶しなければならない。
第十三條 厚生大臣は、毒物若しくは劇物の製造業若しくは輸入業を営む者又はその事業管理人が、その業務に関して犯罪又は不正の行爲をしたときは、その業務を禁止し、又は期間を定めて停止することができる。
都道府縣知事は、毒物若しくは劇物の販賣業を営む者又は事業管理人が、その業務に関して犯罪又は不正の行爲をしたときは、第三條第一項若しくは第四條の許可を取り消し、又は毒物若しくは劇物の販賣業を営む者の業務を禁止し、若しくは期間を定めて停止することができる。
都道府縣知事は、事業管理人又は第四條但書の許可を受けた毒物劇物営業を営む者が第五條第一項各号の一に該当するに至つたときは、第四條の許可を取り消さなければならない。
第十四條 この法律に定めるものを除いては、毒物劇物営業の取締の実施に関して必要な事項は厚生大臣が、これを定める。
第十五條 左の各号の一に該当する者は、これを三年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
一 第三條第一項の許可を受けず、又は同條第二項の届出をしないで毒物劇物営業を営んだ者
二 第四條、第七條、第九條又は第十一條の規定に違反した者
三 第八條第一項の規定に違反し、又は同條第二項の標示をせず、若しくは虚僞の標示をした者
四 第十條第一項の規定に違反して、文書の提出を受けず、又は営業、学術その他正当な用途に供するものでないことを知つて毒物又は劇物を讓り渡した者
五 第十條第一項の規定による文書に虚僞の記載をし、又はその用途につき虚僞の申述をして、毒物又は劇物を讓り受けた者
六 第十三條第一項又は第二項の規定による業務の禁止又は停止中その業務を営んだ者
前項各号の罪を犯した者には、情状により、懲役及び罰金を併科することができる。
第十六條 左の各号の一に該当する者は、これを五千円以下の罰金に処する。
一 第六條の規定による届出を怠り、又は虚僞の届出をした者
二 第十條第二項の規定に違反した者
三 第十二條第一項の規定による当該官吏の尋問に対して答弁せず、若しくは虚僞の陳述をし、又は臨檢檢査若しくは收去を拒み、妨げ若しくは忌避した者
第十七條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が、その法人又は人の業務に関して、前二條の違反行爲をしたときには、行爲者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本條の罰金刑を科する。
附 則
第十八條 この法律は、昭和二十三年一月一日から、これを施行する。
第十九條 この法律施行前明治四十五年内務省令第五号毒物劇物営業取締規則の規定により毒劇物営業者又は営業管理人に関してした処分その他の行爲は、これをこの法律又はこの法律に基いて発する命令の相当規定により毒物又は劇物の販賣業者、又はその事業管理人に関してした処分その他の行爲とみなす。
第二十條 この法律施行の際現に毒物又は劇物の製造業、又は輸入業を営んでいる者は、第三條第二項前段の規定にかかわらず、この法律施行の日から一箇月間を限り、その営業を継続することができる。
第二十一條 この法律施行の際現に毒物劇物営業を営んでいる者で、その事務所に第十九條の規定により事業管理人とみなされた営業管理人を置いていない者は、第四條の規定にかかわらず、この法律施行の日から一年間を限り、その営業を継続することができる。
厚生大臣 一松定吉
内閣総理大臣 片山哲
毒物劇物営業取締法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十二年十二月十八日
内閣総理大臣 片山哲
法律第二百六号
毒物劇物営業取締法
第一条 毒物劇物営業の取締に関しては、この法律の定めるところによる。
第二条 この法律で毒物又は劇物とは、医薬以外の用に供する毒性又は劇性の物品で、厚生大臣の指定するものをいう。
この法律で毒物劇物営業とは、毒物又は劇物の製造、輸入又は販売の業をいう。
第三条 毒物又は劇物の販売業を営もうとする者は、第二項後段に規定する者を除いては、主たる事業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。
毒物又は劇物の製造業又は輸入業を営もうとする者は、主たる事業所の所在地を管轄する都道府県知事に、その旨を届け出なければならない。薬剤師又は薬剤師を使用している医薬品の製造業者、輸入販売業者若しくは販売業者が、毒物又は劇物の販売業を営もうとするときも、同様とする。
第四条 毒物劇物営業を営む者は、事業所ごとに、その所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けて定めた事業管理人を置き、その事業所における毒物又は劇物の取扱に関する業務を管理させなければならない。但し、第五条第一項各号の一に該当しない毒物劇物営業を営む者が、その事業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けて、みづからその事業所における毒物又は劇物の取扱に関する業務を管理する場合は、この限りでない。
第五条 左に掲げる者は、事業管理人となることができない。
一 未成年者、禁治産者又は準禁治産者
二 精神病者
三 つんぼ、おし又は盲の者
四 毒物劇物営業に関して罪を犯し、罰金以上の刑に処せられた者
前項に定めるものの外、事業管理人の資格に関する事項は、厚生大臣が、これを定める。
第六条 毒物劇物営業を営む者が、その事業所の所在地を変更し、若しくはその事業の全部若しくは一部を廃止し、又は死亡し、若しくは解散したときは、その事業所の所在地を管轄する都道府県知事にその旨を届け出なければならない。
第七条 毒物劇物営業を営む者は、その事業所以外の場所で毒物劇物営業を営んではならい。但し、その場所を管轄する都道府県知事の許可を受けた場合は、この限りでない。
第八条 毒物劇物営業を営む者は、毒物又は劇物を堅固な容器又は被包に容れ、且つ、安全な場所に貯蔵し、又は陳列しなければならない。
毒物劇物営業を営む者は、毒物若しくは劇物の容器若しくは被包若しくは貯蔵若しくは陳列の場所又は毒物若しくは劇物を取り扱う器具に、一定の標示をしなければならない。
第九条 毒物劇物営業を営む者は、農業上必要な毒物又は劇物であつて厚生大臣の指定するものについては、厚生大臣の定めるところに従つて着色したものでなければ、これを譲り渡してはならない。
第十条 毒物劇物営業を営む者は、譲受人から毒物又は劇物の品名、数量、譲受の年月日並びに譲受人の氏名、職業及び住所(法人にあつては、その名称又は商号及び住所)を記載し、記名して印をおした文書の提出を受け、且つ、その毒物又は劇物が営業、学術その他正当な用途に供される場合に限り、毒物又は劇物を譲り渡すことができる。
毒物劇物営業を営む者は、前項に規定する文書を五年間保存しなければならない。
第十一条 毒物劇物営業を営む者は、毒物又は劇物を年齢十四年未満の者に交付してはならない。
第十二条 都道府県知事は、必要があると認める場合においては、当該吏員に、毒物若しくは劇物の製造、輸入、貯蔵、陳列若しくは販売の場所に臨検し、関係者に尋問し、帳簿書類その他の物件を検査し、又は毒物若しくは劇物の疑のあるものについて、試験の用に供するために必要な分量に限り、無償でこれを収去させることができる。
前項の場合には、当該吏員は、その身分を示す証票を携帯しなければならない。
第十三条 厚生大臣は、毒物若しくは劇物の製造業若しくは輸入業を営む者又はその事業管理人が、その業務に関して犯罪又は不正の行為をしたときは、その業務を禁止し、又は期間を定めて停止することができる。
都道府県知事は、毒物若しくは劇物の販売業を営む者又は事業管理人が、その業務に関して犯罪又は不正の行為をしたときは、第三条第一項若しくは第四条の許可を取り消し、又は毒物若しくは劇物の販売業を営む者の業務を禁止し、若しくは期間を定めて停止することができる。
都道府県知事は、事業管理人又は第四条但書の許可を受けた毒物劇物営業を営む者が第五条第一項各号の一に該当するに至つたときは、第四条の許可を取り消さなければならない。
第十四条 この法律に定めるものを除いては、毒物劇物営業の取締の実施に関して必要な事項は厚生大臣が、これを定める。
第十五条 左の各号の一に該当する者は、これを三年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
一 第三条第一項の許可を受けず、又は同条第二項の届出をしないで毒物劇物営業を営んだ者
二 第四条、第七条、第九条又は第十一条の規定に違反した者
三 第八条第一項の規定に違反し、又は同条第二項の標示をせず、若しくは虚偽の標示をした者
四 第十条第一項の規定に違反して、文書の提出を受けず、又は営業、学術その他正当な用途に供するものでないことを知つて毒物又は劇物を譲り渡した者
五 第十条第一項の規定による文書に虚偽の記載をし、又はその用途につき虚偽の申述をして、毒物又は劇物を譲り受けた者
六 第十三条第一項又は第二項の規定による業務の禁止又は停止中その業務を営んだ者
前項各号の罪を犯した者には、情状により、懲役及び罰金を併科することができる。
第十六条 左の各号の一に該当する者は、これを五千円以下の罰金に処する。
一 第六条の規定による届出を怠り、又は虚偽の届出をした者
二 第十条第二項の規定に違反した者
三 第十二条第一項の規定による当該官吏の尋問に対して答弁せず、若しくは虚偽の陳述をし、又は臨検検査若しくは収去を拒み、妨げ若しくは忌避した者
第十七条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前二条の違反行為をしたときには、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
附 則
第十八条 この法律は、昭和二十三年一月一日から、これを施行する。
第十九条 この法律施行前明治四十五年内務省令第五号毒物劇物営業取締規則の規定により毒劇物営業者又は営業管理人に関してした処分その他の行為は、これをこの法律又はこの法律に基いて発する命令の相当規定により毒物又は劇物の販売業者、又はその事業管理人に関してした処分その他の行為とみなす。
第二十条 この法律施行の際現に毒物又は劇物の製造業、又は輸入業を営んでいる者は、第三条第二項前段の規定にかかわらず、この法律施行の日から一箇月間を限り、その営業を継続することができる。
第二十一条 この法律施行の際現に毒物劇物営業を営んでいる者で、その事務所に第十九条の規定により事業管理人とみなされた営業管理人を置いていない者は、第四条の規定にかかわらず、この法律施行の日から一年間を限り、その営業を継続することができる。
厚生大臣 一松定吉
内閣総理大臣 片山哲