災害救助法
法令番号: 法律第118号
公布年月日: 昭和22年10月18日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

明治32年制定の罹災救助基金法では、救助活動の包括的規定がなく活動が不統一となり、現在の物価では基金だけでは不足し、物資確保の規定もないなど、多くの課題があった。そこで、非常災害時における被災者保護と社会秩序維持のため、より実効性のある総合的な法整備が必要とされた。新法では、国と地方公共団体、日本赤十字社等の協力体制を確立し、救助活動の円滑化を図る。また、災害救助対策協議会の設置、都道府県知事による救助の実施、必要な物資・人員確保の権限付与、費用負担における国と都道府県の関係明確化、各都道府県での災害救助基金の設置など、包括的な救助体制を整備することを目的としている。

参照した発言:
第1回国会 衆議院 厚生委員会 第9号

審議経過

第1回国会

参議院
(昭和22年8月7日)
衆議院
(昭和22年8月11日)
(昭和22年8月14日)
(昭和22年8月18日)
(昭和22年8月21日)
(昭和22年8月25日)
参議院
(昭和22年9月22日)
衆議院
(昭和22年9月26日)
(昭和22年9月27日)
参議院
(昭和22年9月29日)
(昭和22年9月30日)
衆議院
(昭和22年10月2日)
災害救助法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十二年十月十八日
内閣総理大臣 片山哲
法律第百十八号
災害救助法
第一章 総則
第一條 この法律は、非常災害に際して、國が地方公共團体、日本赤十字社その他の團体及び國民の協力の下に、應急的に、必要な救助を行い、災害にかかつた者の保護と社会の秩序の保全を図ることを目的とする。
第二條 この法律による救助は、一又は二以上の都道府縣の全部又は一部にわたる非常災害にかかり、現に應急的な救助を必要とする者に対して、これを行う。
災害の範囲が前項に該当しないが、多数の者が同一の災害にかかり、現に應急的な救助を必要とするときも、また同項と同樣とする。
第三條 救助その他緊急措置の適切円滑な実施を図るため、中央災害救助対策協議会及び都道府縣災害救助対策協議会を置く。
都道府縣災害救助対策協議会は、都道府縣ごとにこれを置く。
内閣総理大臣は、必要があると認めるときは、二以上の都道府縣の地域にわたつて地方災害救助対策協議会を置くことができる。
中央災害救助対策協議会、地方災害救助対策協議会及び都道府縣災害救助対策協議会は、内閣総理大臣の管理に属する。
第四條 中央災害救助対策協議会は、左に掲げる事項を掌る。
一 非常災害及び救助に関する情報を集めること。
二 救助その他緊急措置に要する労務、施設、設備、物資及び資金の整備、備蓄等に関する計画を樹立すること。
三 非常災害に際して救助その他緊急措置に要する労務、施設、設備、物資及び資金の調達、配分、輸送等に関する緊急計画を樹立すること。
四 前二号に規定するものの外、救助その他緊急措置に関する計画を樹立すること。
五 第二号から前号までの計画の実施を推進すること。
第五條 中央災害救助対策協議会は、会長及び副会長各一人並びに委員若干人で、これを組織する。
第六條 中央災害救助対策協議会の会長は、内閣総理大臣、副会長は、厚生大臣を以て、これに充てる。
第七條 中央災害救助対策協議会の委員は、内閣総理大臣の指定する関係各大臣その他関係各廳の官吏及び日本赤十字社社長並びに学識経驗のある者の中から内閣総理大臣が命じた者を以て、これに充てる。
特別の事項を協議するため、必要があると認めるときは、内閣総理大臣は、臨時委員を命ずることができる。
第八條 中央災害救助対策協議会を組織する関係各大臣その他関係各廳の官吏及び日本赤十字社社長は、中央災害救助対策協議会において樹立した計画を実施するため、必要な措置をとらなければならない。但し、内閣法の規定の適用を妨げない。
第九條 中央災害救助対策協議会は、地方災害救助対策協議会及び都道府縣災害救助対策協議会に対して、必要な指示をなすことができる。
第十條 中央災害救助対策協議会の事務を掌らせるため、事務局を置く。
事務局の組織に関して必要な事項は、政令でこれを定める。
第十一條 第三條から前條までに規定するものの外、中央災害救助対策協議会に関して必要な事項は、政令でこれを定める。
第十二條 第八條に規定する関係各大臣その他関係各廳の長は、同條の措置をとるため、特に必要があると認めるときは、救助その他緊急措置に必要な物資の生産、集荷、販賣、配給、保管若しくは輸送を業とする者に対して、その取り扱う物資の保管を命じ、又は救助その他緊急措置に必要な物資を收用することができる。
前項の場合においては、公用令書を交付しなければならない。
第一項の処分を行う場合においては、その処分により通常生ずべき損失を補償しなければならない。
第十三條 前條第一項の規定により物資の保管を命じ、又は物資を收用するため、必要があるときは、第八條に規定する関係各大臣その他関係各廳の長は、当該官吏に物資を保管させる場所又は物資の所在する場所に立ち入り檢査をさせることができる。
第八條に規定する関係各大臣その他関係各廳の長は、前條第一項の規定により物資を保管させた者から、必要な報告を取り、又は当該官吏に当該物資を保管させてある場所に立ち入り檢査をさせることができる。
前二項の規定により立ち入る場合においては、予めその旨をその場所の管理者に通知しなければならない。
当該官吏が第一項又は第二項の規定により立ち入る場合は、その身分を示す証票を携帶しなければならない。
第十四條 地方災害救助対策協議会及び都道府縣災害救助対策協議会は、左に掲げる事項を掌る。
一 非常災害及び救助に関する情報を集め、且つ、これを関係機関に通報すること。
二 救助その他緊急措置に要する労務、施設、設備、物資及び資金の整備、備蓄等に関する計画を樹立すること。
三 非常災害に際して救助その他緊急措置に要する労務、施設、設備、物資及び資金の調達、配分、輸送等に関する緊急計画を樹立すること。
四 前二号に規定するものの外、救助その他緊急措置に関する計画を樹立すること。
五 第二号から前号までの計画の実施を推進すること。
第十五條 地方災害救助対策協議会及び都道府縣災害救助対策協議会は、夫ゝ会長一人及び委員若干人で、これを組織する。
第十六條 地方災害救助対策協議会の会長は、内閣総理大臣の指名する都道府縣知事、都道府縣災害救助対策協議会の会長は、当該都道府縣知事を以て、これに充てる。
第十七條 地方災害救助対策協議会及び都道府縣災害救助対策協議会の委員は、内閣総理大臣の指定する関係行政機関の長及び区域内の日本赤十字社支部の長並びに学識経驗のある者の中から会長たる都道府縣知事が命じた者を以て、これに充てる。
地方災害救助対策協議会又は都道府縣災害救助対策協議会を組織する行政機関の長及び日本赤十字社支部の長は、地方災害救助対策協議会又は都道府縣災害救助対策協議会において樹立した計画を実施するため、必要な措置をとらなければならない。
第十八條 地方災害救助対策協議会は、都道府縣災害救助対策協議会に対して必要な指示をなすことができる。
第十九條 地方災害救助対策協議会及び都道府縣災害救助対策協議会の事務を掌らせるため、夫ゝ事務局を置く。
事務局の組織に関して必要な事項は、政令でこれを定める。
第二十條 第三條及び第十四條から前條までに規定するものの外、地方災害救助対策協議会及び都道府縣災害救助対策協議会に関して必要な事項は、政令でこれを定める。
第二十一條 日本赤十字社は、その使命に鑑み、救助に協力しなければならない。
政府は、日本赤十字社に、政府の指揮監督の下に、救助に関し地方公共團体以外の團体又は個人がなす協力(第二十五條の規定による協力を除く。)の連絡調整を行わせる。
第二章 救助
第二十二條 救助は、救助を要する者の現在地の都道府縣知事にこれを行わせる。
都道府縣知事は、救助その他緊急措置の万全を期するため、常に、必要な計画の樹立、強力な救助組織の確立並びに労務、施設、設備、物資及び資金の整備に努めなければならない。
第二十三條 救助の種類は、左の通りとする。
一 收容施設の供與
二 炊出しその他による食品の給與
三 被服、寢具その他生活必需品の給與又は貸與
四 医療及び助産
五 生業に必要な資金、器具又は資料の給與又は貸與
六 学用品の給與
七 埋葬
八 前各号に規定するものの外、命令で定めるもの
救助は、都道府縣知事が必要があると認めた場合においては、前項の規定にかかわらず、救助を要する者(埋葬については埋葬を行う者)に対し、金銭を支給してこれをなすことができる。
救助の程度、方法及び期間に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第二十四條 都道府縣知事は、救助を行うため、特に必要があると認めるときは、医療、土木建築工事又は輸送関係者を、第三十一條の規定に基く主任大臣の命令を実施するため、必要があると認めるときは、医療又は土木建築工事関係者を、救助に関する業務に從事させることができる。
鉄道局長又は海運局長は、都道府縣知事が第三十一條の規定に基く主任大臣の命令を実施するため、必要があると認めて要求したときは、輸送関係者を救助に関する業務に從事させることができる。
第一項及び第二項に規定する医療、土木建築工事及び輸送関係者の範囲は、政令でこれを定める。
第十二條第二項の規定は、第一項及び第二項の場合に、これを準用する。
第一項又は第二項の規定により救助に從事させる場合においては、その実費を弁償しなければならない。
第二十五條 都道府縣知事は、救助を要する者及びその近隣の者を救助に関する業務に協力させることができる。
第二十六條 都道府縣知事は、救助を行うため、特に必要があると認めるとき、又は第三十一條の規定に基く主任大臣の命令を実施するため、必要があると認めるときは、病院、診療所、旅館その他政令で定める施設を管理し、土地、家屋若しくは物資を使用し、物資の生産、集荷、販賣、配給、保管若しくは輸送を業とする者に対して、その取り扱う物資の保管を命じ、又は物資を收用することができる。
第十二條第二項及び第三項の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第二十七條 前條第一項の規定により施設を管理し、土地、家屋若しくは物資を使用し、物資の保管を命じ、又は物資を收用するため必要があるときは、都道府縣知事は、当該吏員に施設、土地、家屋、物資の所在する場所又は物資を保管させる場所に立ち入り檢査をさせることができる。
都道府縣知事は、前條第一項の規定により物資を保管させた者から、必要な報告を取り、又は当該吏員に当該物資を保管させてある場所に立ち入り檢査をさせることができる。
前二項の規定により立ち入る場合においては、予めその旨をその施設、土地、家屋又は場所の管理者に通知しなければならない。
当該吏員が第一項又は第二項の規定により立ち入る場合は、その身分を示す証票を携帶しなければならない。
第二十八條 行政執行法第五條及び第六條の規定並びにこれに基いて発する命令は、第二十四條から前條までの規定に基いてなす処分によつて負う義務の履行を都道府縣知事が強制する場合に、これを準用する。
第二十九條 第二十四條又は第二十五條の規定により、救助に関する業務に從事し、又は協力する者が、これがため負傷し、疾病にかかり、又は死亡した場合においては、政令の定めるところにより扶助金を支給する。
第三十條 都道府縣知事は、救助を迅速に行うため、必要があると認めるときは、救助の実施に関するその職権の一部を市町村長(特別区長を含む。以下同じ。)に委任することができる。
第三十一條 主任大臣は、都道府縣知事が行う救助につき、他の都道府縣知事に対して、應援をなすべきことを命ずることができる。
第三十二條 都道府縣知事は、救助又はその應援の実施に関して必要な事項を日本赤十字社に委託することができる。
第三章 費用
第三十三條 第二十三條の規定による救助に要する費用は、救助の行われた地の都道府縣が、これを負担する。
第二十四條第五項の規定による実費弁償及び第二十九條の規定による扶助金の支給で、第二十四條第一項の規定による從事命令又は第二十五條の規定による協力命令によつて救助に関する業務に從事し、又は協力した者に係るものに要する費用は、その從事命令又は協力命令を発した都道府縣知事の統轄する都道府縣が、第二十四條第二項の規定による從事命令によつて救助に関する業務に從事した者に係るものに要する費用は、同項の規定による要求をなした都道府縣知事の統轄する都道府縣が、これを負担する。
第二十六條第二項の規定により準用する第十二條第三項の規定による損失補償に要する費用は、管理、使用若しくは收用を行い、又は保管を命じた都道府縣知事の統轄する都道府縣が、これを負担する。
都道府縣災害救助対策協議会に関する費用は、当該都道府縣が、これを負担する。
第三十四條 都道府縣は、当該都道府縣知事が第三十二條の規定により委託した事項を実施するため、日本赤十字社が負担した費用に対し、その費用のための寄附金その他の收入を控除した額を補償する。
第三十五條 都道府縣は、他の都道府縣において行われた救助につきなした應援のため負担した費用について、救助の行われた地の都道府縣に対して、求償することができる。
第三十六條 國庫は、都道府縣が第三十三條第一項から第三項までの規定により負担した費用及び第三十四條の規定による補償に要した費用(前條の規定により求償することができるものを除く。)並びに前條の規定による求償に対する支拂に要した費用の合計額が、標準賦課率で算定した当該都道府縣の前年度における地租、家屋税及び営業税の合計額の百分の五を超過するときは、その超過額に対し、左の区分に從い補助する。
百分の五を超え百分の五十以下の部分の金額については、その金額の百分の五十
百分の五十を超え百分の百以下の部分の金額については、その金額の百分の八十
百分の百を超える部分の金額については、その金額の百分の九十
第三十七條 都道府縣は、前條に規定する費用の負担の財源に充てるため、災害救助基金を積み立てて置かなければならない。
第三十八條 災害救助基金の最少額は五百万円とし、災害救助基金がその最少額に達していない場合は、都道府縣は、政令で定める金額を、毎年度、積み立てなければならない。
第三十九條 災害救助基金から生ずる收入は、すべて災害救助基金に繰り入れなければならない。
第四十條 第三十六條の規定による國庫の補助額が、同條に規定する費用を負担するために災害救助基金以外の財源から支出された額を超過するときは、その超過額は、これを災害救助基金に繰り入れなければならない。
第四十一條 災害救助基金の運用は、左の方法によらなければならない。
一 大藏省預金部又は確実な銀行への預金
二 國債証券、地方債証券、勧業債券その他確実な債券の應募又は買入
三 第二十三條第一項に規定する給與品の事前購入
第四十二條 災害救助基金の管理に要する費用は、災害救助基金から、これを支出することができる。
第四十三條 災害救助基金が五百万円以上積み立てられている都道府縣は、区域内の市町村(特別区を含む。以下同じ。)が非常災害救助の資金を貯蓄しているときは、五百万円を超える部分の金額の範囲内において、災害救助基金から補助することができる。
第四十四條 都道府縣知事は、第三十條の規定により救助の実施に関するその職権の一部を市町村長に委任した場合又は都道府縣が救助に要する費用を負担する暇がない場合においては、救助を必要とする者の現在地の市町村に、救助の実施に要する費用を一時繰替支弁させることができる。
第四章 罰則
第四十五條 左の各号の一に該当する者は、これを六箇月以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。
一 第二十四條第一項又は第二項の規定による從事命令に從わない者
二 第十二條第一項又は第二十六條第一項の規定による保管命令に從わない者
第四十六條 詐僞その他不正の手段により救助を受け、又は受けさせた者は、これを六箇月以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。その刑法に正條があるものは、刑法による。
第四十七條 第十三條第一項、第二項若しくは第二十七條第一項、第二項の規定による当該官吏若しくは吏員の立入檢査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は第十三條第二項若しくは第二十七條第二項の規定による報告をなさず、若しくは虚僞の報告をなした者は、これを三千円以下の罰金に処する。
第四十八條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者がその法人又は人の業務に関し第四十五條又は前條の違反行爲をなしたときは、行爲者を罰するの外、その法人又は人に対し、各本條の罰金刑を科する。
附 則
この法律は、昭和二十二年十月二十日から、これを施行する。
罹災救助基金法は、これを廃止する。
この法律施行の際、現に存する旧法による罹災救助基金は、この法律による災害救助基金とする。
旧法第十七條第一項第一号の規定による貸出金は、その貸出期間満了の日まで、なお從前の規定によりこれを存続させることができる。
第三十六條中「標準賦課率で算定した当該都道府縣の前年度における地租、家屋税及び営業税の合計額」とあるのは、昭和二十二年度においては、「昭和二十一年度における当該都道府縣の還付税額並びに標準賦課率で算定した地租附加税、家屋税附加税及び営業税附加税の合計額」として、これを適用する。
内務大臣 木村小左衞門
大藏大臣 栗栖赳夫
厚生大臣 一松定吉
運輸大臣 苫米地義三
内閣総理大臣 片山哲
災害救助法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十二年十月十八日
内閣総理大臣 片山哲
法律第百十八号
災害救助法
第一章 総則
第一条 この法律は、非常災害に際して、国が地方公共団体、日本赤十字社その他の団体及び国民の協力の下に、応急的に、必要な救助を行い、災害にかかつた者の保護と社会の秩序の保全を図ることを目的とする。
第二条 この法律による救助は、一又は二以上の都道府県の全部又は一部にわたる非常災害にかかり、現に応急的な救助を必要とする者に対して、これを行う。
災害の範囲が前項に該当しないが、多数の者が同一の災害にかかり、現に応急的な救助を必要とするときも、また同項と同様とする。
第三条 救助その他緊急措置の適切円滑な実施を図るため、中央災害救助対策協議会及び都道府県災害救助対策協議会を置く。
都道府県災害救助対策協議会は、都道府県ごとにこれを置く。
内閣総理大臣は、必要があると認めるときは、二以上の都道府県の地域にわたつて地方災害救助対策協議会を置くことができる。
中央災害救助対策協議会、地方災害救助対策協議会及び都道府県災害救助対策協議会は、内閣総理大臣の管理に属する。
第四条 中央災害救助対策協議会は、左に掲げる事項を掌る。
一 非常災害及び救助に関する情報を集めること。
二 救助その他緊急措置に要する労務、施設、設備、物資及び資金の整備、備蓄等に関する計画を樹立すること。
三 非常災害に際して救助その他緊急措置に要する労務、施設、設備、物資及び資金の調達、配分、輸送等に関する緊急計画を樹立すること。
四 前二号に規定するものの外、救助その他緊急措置に関する計画を樹立すること。
五 第二号から前号までの計画の実施を推進すること。
第五条 中央災害救助対策協議会は、会長及び副会長各一人並びに委員若干人で、これを組織する。
第六条 中央災害救助対策協議会の会長は、内閣総理大臣、副会長は、厚生大臣を以て、これに充てる。
第七条 中央災害救助対策協議会の委員は、内閣総理大臣の指定する関係各大臣その他関係各庁の官吏及び日本赤十字社社長並びに学識経験のある者の中から内閣総理大臣が命じた者を以て、これに充てる。
特別の事項を協議するため、必要があると認めるときは、内閣総理大臣は、臨時委員を命ずることができる。
第八条 中央災害救助対策協議会を組織する関係各大臣その他関係各庁の官吏及び日本赤十字社社長は、中央災害救助対策協議会において樹立した計画を実施するため、必要な措置をとらなければならない。但し、内閣法の規定の適用を妨げない。
第九条 中央災害救助対策協議会は、地方災害救助対策協議会及び都道府県災害救助対策協議会に対して、必要な指示をなすことができる。
第十条 中央災害救助対策協議会の事務を掌らせるため、事務局を置く。
事務局の組織に関して必要な事項は、政令でこれを定める。
第十一条 第三条から前条までに規定するものの外、中央災害救助対策協議会に関して必要な事項は、政令でこれを定める。
第十二条 第八条に規定する関係各大臣その他関係各庁の長は、同条の措置をとるため、特に必要があると認めるときは、救助その他緊急措置に必要な物資の生産、集荷、販売、配給、保管若しくは輸送を業とする者に対して、その取り扱う物資の保管を命じ、又は救助その他緊急措置に必要な物資を収用することができる。
前項の場合においては、公用令書を交付しなければならない。
第一項の処分を行う場合においては、その処分により通常生ずべき損失を補償しなければならない。
第十三条 前条第一項の規定により物資の保管を命じ、又は物資を収用するため、必要があるときは、第八条に規定する関係各大臣その他関係各庁の長は、当該官吏に物資を保管させる場所又は物資の所在する場所に立ち入り検査をさせることができる。
第八条に規定する関係各大臣その他関係各庁の長は、前条第一項の規定により物資を保管させた者から、必要な報告を取り、又は当該官吏に当該物資を保管させてある場所に立ち入り検査をさせることができる。
前二項の規定により立ち入る場合においては、予めその旨をその場所の管理者に通知しなければならない。
当該官吏が第一項又は第二項の規定により立ち入る場合は、その身分を示す証票を携帯しなければならない。
第十四条 地方災害救助対策協議会及び都道府県災害救助対策協議会は、左に掲げる事項を掌る。
一 非常災害及び救助に関する情報を集め、且つ、これを関係機関に通報すること。
二 救助その他緊急措置に要する労務、施設、設備、物資及び資金の整備、備蓄等に関する計画を樹立すること。
三 非常災害に際して救助その他緊急措置に要する労務、施設、設備、物資及び資金の調達、配分、輸送等に関する緊急計画を樹立すること。
四 前二号に規定するものの外、救助その他緊急措置に関する計画を樹立すること。
五 第二号から前号までの計画の実施を推進すること。
第十五条 地方災害救助対策協議会及び都道府県災害救助対策協議会は、夫ゝ会長一人及び委員若干人で、これを組織する。
第十六条 地方災害救助対策協議会の会長は、内閣総理大臣の指名する都道府県知事、都道府県災害救助対策協議会の会長は、当該都道府県知事を以て、これに充てる。
第十七条 地方災害救助対策協議会及び都道府県災害救助対策協議会の委員は、内閣総理大臣の指定する関係行政機関の長及び区域内の日本赤十字社支部の長並びに学識経験のある者の中から会長たる都道府県知事が命じた者を以て、これに充てる。
地方災害救助対策協議会又は都道府県災害救助対策協議会を組織する行政機関の長及び日本赤十字社支部の長は、地方災害救助対策協議会又は都道府県災害救助対策協議会において樹立した計画を実施するため、必要な措置をとらなければならない。
第十八条 地方災害救助対策協議会は、都道府県災害救助対策協議会に対して必要な指示をなすことができる。
第十九条 地方災害救助対策協議会及び都道府県災害救助対策協議会の事務を掌らせるため、夫ゝ事務局を置く。
事務局の組織に関して必要な事項は、政令でこれを定める。
第二十条 第三条及び第十四条から前条までに規定するものの外、地方災害救助対策協議会及び都道府県災害救助対策協議会に関して必要な事項は、政令でこれを定める。
第二十一条 日本赤十字社は、その使命に鑑み、救助に協力しなければならない。
政府は、日本赤十字社に、政府の指揮監督の下に、救助に関し地方公共団体以外の団体又は個人がなす協力(第二十五条の規定による協力を除く。)の連絡調整を行わせる。
第二章 救助
第二十二条 救助は、救助を要する者の現在地の都道府県知事にこれを行わせる。
都道府県知事は、救助その他緊急措置の万全を期するため、常に、必要な計画の樹立、強力な救助組織の確立並びに労務、施設、設備、物資及び資金の整備に努めなければならない。
第二十三条 救助の種類は、左の通りとする。
一 収容施設の供与
二 炊出しその他による食品の給与
三 被服、寝具その他生活必需品の給与又は貸与
四 医療及び助産
五 生業に必要な資金、器具又は資料の給与又は貸与
六 学用品の給与
七 埋葬
八 前各号に規定するものの外、命令で定めるもの
救助は、都道府県知事が必要があると認めた場合においては、前項の規定にかかわらず、救助を要する者(埋葬については埋葬を行う者)に対し、金銭を支給してこれをなすことができる。
救助の程度、方法及び期間に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第二十四条 都道府県知事は、救助を行うため、特に必要があると認めるときは、医療、土木建築工事又は輸送関係者を、第三十一条の規定に基く主任大臣の命令を実施するため、必要があると認めるときは、医療又は土木建築工事関係者を、救助に関する業務に従事させることができる。
鉄道局長又は海運局長は、都道府県知事が第三十一条の規定に基く主任大臣の命令を実施するため、必要があると認めて要求したときは、輸送関係者を救助に関する業務に従事させることができる。
第一項及び第二項に規定する医療、土木建築工事及び輸送関係者の範囲は、政令でこれを定める。
第十二条第二項の規定は、第一項及び第二項の場合に、これを準用する。
第一項又は第二項の規定により救助に従事させる場合においては、その実費を弁償しなければならない。
第二十五条 都道府県知事は、救助を要する者及びその近隣の者を救助に関する業務に協力させることができる。
第二十六条 都道府県知事は、救助を行うため、特に必要があると認めるとき、又は第三十一条の規定に基く主任大臣の命令を実施するため、必要があると認めるときは、病院、診療所、旅館その他政令で定める施設を管理し、土地、家屋若しくは物資を使用し、物資の生産、集荷、販売、配給、保管若しくは輸送を業とする者に対して、その取り扱う物資の保管を命じ、又は物資を収用することができる。
第十二条第二項及び第三項の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第二十七条 前条第一項の規定により施設を管理し、土地、家屋若しくは物資を使用し、物資の保管を命じ、又は物資を収用するため必要があるときは、都道府県知事は、当該吏員に施設、土地、家屋、物資の所在する場所又は物資を保管させる場所に立ち入り検査をさせることができる。
都道府県知事は、前条第一項の規定により物資を保管させた者から、必要な報告を取り、又は当該吏員に当該物資を保管させてある場所に立ち入り検査をさせることができる。
前二項の規定により立ち入る場合においては、予めその旨をその施設、土地、家屋又は場所の管理者に通知しなければならない。
当該吏員が第一項又は第二項の規定により立ち入る場合は、その身分を示す証票を携帯しなければならない。
第二十八条 行政執行法第五条及び第六条の規定並びにこれに基いて発する命令は、第二十四条から前条までの規定に基いてなす処分によつて負う義務の履行を都道府県知事が強制する場合に、これを準用する。
第二十九条 第二十四条又は第二十五条の規定により、救助に関する業務に従事し、又は協力する者が、これがため負傷し、疾病にかかり、又は死亡した場合においては、政令の定めるところにより扶助金を支給する。
第三十条 都道府県知事は、救助を迅速に行うため、必要があると認めるときは、救助の実施に関するその職権の一部を市町村長(特別区長を含む。以下同じ。)に委任することができる。
第三十一条 主任大臣は、都道府県知事が行う救助につき、他の都道府県知事に対して、応援をなすべきことを命ずることができる。
第三十二条 都道府県知事は、救助又はその応援の実施に関して必要な事項を日本赤十字社に委託することができる。
第三章 費用
第三十三条 第二十三条の規定による救助に要する費用は、救助の行われた地の都道府県が、これを負担する。
第二十四条第五項の規定による実費弁償及び第二十九条の規定による扶助金の支給で、第二十四条第一項の規定による従事命令又は第二十五条の規定による協力命令によつて救助に関する業務に従事し、又は協力した者に係るものに要する費用は、その従事命令又は協力命令を発した都道府県知事の統轄する都道府県が、第二十四条第二項の規定による従事命令によつて救助に関する業務に従事した者に係るものに要する費用は、同項の規定による要求をなした都道府県知事の統轄する都道府県が、これを負担する。
第二十六条第二項の規定により準用する第十二条第三項の規定による損失補償に要する費用は、管理、使用若しくは収用を行い、又は保管を命じた都道府県知事の統轄する都道府県が、これを負担する。
都道府県災害救助対策協議会に関する費用は、当該都道府県が、これを負担する。
第三十四条 都道府県は、当該都道府県知事が第三十二条の規定により委託した事項を実施するため、日本赤十字社が負担した費用に対し、その費用のための寄附金その他の収入を控除した額を補償する。
第三十五条 都道府県は、他の都道府県において行われた救助につきなした応援のため負担した費用について、救助の行われた地の都道府県に対して、求償することができる。
第三十六条 国庫は、都道府県が第三十三条第一項から第三項までの規定により負担した費用及び第三十四条の規定による補償に要した費用(前条の規定により求償することができるものを除く。)並びに前条の規定による求償に対する支払に要した費用の合計額が、標準賦課率で算定した当該都道府県の前年度における地租、家屋税及び営業税の合計額の百分の五を超過するときは、その超過額に対し、左の区分に従い補助する。
百分の五を超え百分の五十以下の部分の金額については、その金額の百分の五十
百分の五十を超え百分の百以下の部分の金額については、その金額の百分の八十
百分の百を超える部分の金額については、その金額の百分の九十
第三十七条 都道府県は、前条に規定する費用の負担の財源に充てるため、災害救助基金を積み立てて置かなければならない。
第三十八条 災害救助基金の最少額は五百万円とし、災害救助基金がその最少額に達していない場合は、都道府県は、政令で定める金額を、毎年度、積み立てなければならない。
第三十九条 災害救助基金から生ずる収入は、すべて災害救助基金に繰り入れなければならない。
第四十条 第三十六条の規定による国庫の補助額が、同条に規定する費用を負担するために災害救助基金以外の財源から支出された額を超過するときは、その超過額は、これを災害救助基金に繰り入れなければならない。
第四十一条 災害救助基金の運用は、左の方法によらなければならない。
一 大蔵省預金部又は確実な銀行への預金
二 国債証券、地方債証券、勧業債券その他確実な債券の応募又は買入
三 第二十三条第一項に規定する給与品の事前購入
第四十二条 災害救助基金の管理に要する費用は、災害救助基金から、これを支出することができる。
第四十三条 災害救助基金が五百万円以上積み立てられている都道府県は、区域内の市町村(特別区を含む。以下同じ。)が非常災害救助の資金を貯蓄しているときは、五百万円を超える部分の金額の範囲内において、災害救助基金から補助することができる。
第四十四条 都道府県知事は、第三十条の規定により救助の実施に関するその職権の一部を市町村長に委任した場合又は都道府県が救助に要する費用を負担する暇がない場合においては、救助を必要とする者の現在地の市町村に、救助の実施に要する費用を一時繰替支弁させることができる。
第四章 罰則
第四十五条 左の各号の一に該当する者は、これを六箇月以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。
一 第二十四条第一項又は第二項の規定による従事命令に従わない者
二 第十二条第一項又は第二十六条第一項の規定による保管命令に従わない者
第四十六条 詐偽その他不正の手段により救助を受け、又は受けさせた者は、これを六箇月以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。その刑法に正条があるものは、刑法による。
第四十七条 第十三条第一項、第二項若しくは第二十七条第一項、第二項の規定による当該官吏若しくは吏員の立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は第十三条第二項若しくは第二十七条第二項の規定による報告をなさず、若しくは虚偽の報告をなした者は、これを三千円以下の罰金に処する。
第四十八条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関し第四十五条又は前条の違反行為をなしたときは、行為者を罰するの外、その法人又は人に対し、各本条の罰金刑を科する。
附 則
この法律は、昭和二十二年十月二十日から、これを施行する。
罹災救助基金法は、これを廃止する。
この法律施行の際、現に存する旧法による罹災救助基金は、この法律による災害救助基金とする。
旧法第十七条第一項第一号の規定による貸出金は、その貸出期間満了の日まで、なお従前の規定によりこれを存続させることができる。
第三十六条中「標準賦課率で算定した当該都道府県の前年度における地租、家屋税及び営業税の合計額」とあるのは、昭和二十二年度においては、「昭和二十一年度における当該都道府県の還付税額並びに標準賦課率で算定した地租附加税、家屋税附加税及び営業税附加税の合計額」として、これを適用する。
内務大臣 木村小左衛門
大蔵大臣 栗栖赳夫
厚生大臣 一松定吉
運輸大臣 苫米地義三
内閣総理大臣 片山哲